2002年7月下

●2002年7月31日(水)

昨日からはっきりと、夏本番って感じの暑さだ。できるだけクーラーをつけずに頑張っているが、なんか食欲が落ちてきている気がします。
エバ子が近所のプールから、「高山さーん、のど乾いたーそんでもって小腹も減ってるー。」と電話をよこした。
来るなり、「フルーツ、フルーツー」と言うのでぶどうを出してやり、桃を切ってカスピ海ヨーグルトに混ぜてみた。そして目玉焼きを焼いて、冷凍しておいたプラム入りの食パンを焼いて、レタスとマヨネーズを添え、プレートみたいにした。
遠い街に嫁に行って、普段はなかなか外出できないんだけど、今日は姑がクラス会かなんかで出掛けたので、久しぶりに遊びに来たいちばん下の妹って感じ。相変わらずお喋りさんで、華やかでよく響く声なんだこれが。エバ子がクウクウを辞めたのは、3年前だったかな? 夜ごはんは、鮭のムニエルに、ゆでピンクじゃが芋(あっちゃんの実家から送ってきた)と、ゆでカリフラワー添えの1皿。ひじき煮、ゴーやといんげんをごま油でよくよく炒めてから、しょうゆだけで煎り付けるというもの。鮭のムニエルは、ライ麦粉をまぶして焼いてみた。昨日行ったやきとり屋で冷や奴が出てきた時に、スイセイが「俺はの、みいが作る変わった料理も好きじゃがの、ほんとうはこういう普通のもんがいちばん食べたいん。」と訴えていたのを思い出したが、料理研究家の奥さんになった宿命だから、そこらへんは我慢してもらうより他はないだろう。まずオリーブオイルでにんにくを炒めて取り出し、バターを加えて鮭をじっくり焼いて皿に移したら、にんにくをもどし入れ、しょうゆとレモン汁と黒胡椒でソースを作った。けっこう香ばしくて中はしっとり、なかなか良かったです。

●2002年7月30日(火)

どうやら私のケイタイは不良品だったらしい。今りうが電話でいろいろ確認してくれている。見ず知らずの人と電話で応対するのも苦手な私だが、ケイタイのいろいろなおかしな所を、分かりやすく説明して相手に伝えるということも、とてもじゃないが私にはできない。娘ってすごいもんだなあ。
3時から打ち合わせ。ガスコンロの広告で(雑誌に掲載されるやつ)、そのコンロを使って料理を何品かお教えするというもの。
無事打ち合わせも終わり、今日はりうが元家で夜ご飯なので、本澤さんと待ち合わせてクウクウにごはんを食べに行った。とちゅうから浴衣を着たスイセイも参加。
9時にはお開きになったので、てくてくと歩いて帰ろうと思ったが、帰り道、やきとり屋にふらーっと寄ってしまった。

●2002年7月29日(月)

朝起きたらぐったりくたびれていて、まだいくらでも眠れそうな感じだったけれど、がんばって起きてクウクウへ。
三鷹にある「やまもと酒店」の店長がワインの説明にいらっしゃるので。ワインが好きでたまらないというのが、じっとりと伝わってくる。何よりも、やまもとさんが「ワイン」と言う時の発音が、おいしそうで、とても愉しみなものに聞こえる。そして質問すると、分かりやすい言葉で何でも教えてくれる。私が「貴腐ワイン」のことを「腐貴ワイン」と間違えて言っても、訂正せずに笑わずに、ちゃんと聞いてくださった。
炭で焼いている魚屋に寄ったら、うなぎの蒲焼きを焼いていたので買って帰る。紀伊国屋で水茄子の糠漬けというのも買った。ちょっと辛子漬けっぽくおいしい。ぬか床がものすごくたくさん入っていたので、捨てずにタッパーに入れて、きゅうりを塩でもんで漬けてみた。明日が楽しみだ。
月曜日は「濱マイク」があるので、晩ご飯はいつもより早めに9時ごろ食べる。今、玄米を炊きながらみそ汁のだしを取っているところ。
「濱マイク」見ました。
とちゅう、「見て見て!マイクちゃんのと私のケイタイ同じだー」と言って、スイセイに嫌がられる。
ゆうべ寝ながら、ケイタイにまつわるイメージ的なものに、ちょっとうなされる感じになった。ケイタイって便利なくせに、いろいろな約束があるから、持っていることが不安になる。自由がひとつなくなる気もする。そのくせ、ゆうべなんか道路で2本も電話してしまった。さすがに歩きながらというのはまだできないが、すでに便利さの渦に飲み込まれつつある私だ。

●2002年7月28日(日)

ゆうべは、葬式から帰って来た泣き顔の人々と、電車に乗り合わせている夢をみた。知らない人々のはずなのに、気がつくと友人知人たちの顔になっていた。
矢川さんを送る会のケイタリング。
芸術家関係の有名な方々を大勢見かけた。威厳というのかもしれないが、ひじょうに偉そうな感じを振りまいている方と、酔っぱらって真っ赤になってしまった、やきとり屋のおじさんみたいな、可愛らしい方もいた。本当にものすごく有名なのに、地味で腰が低くて余裕がある方もいた。私は裏方さんとして立ち働いていたが、人間の品性についてウォッチングしてもいた。おもしろかったなあ。
「じゃあ、ちょっくらオレはヨ、外で一服してくるからヨ。」と言って出て行ったきりもどって来なかったクマさんは、テレビのまんまで、やっぱり素敵でした。

●2002年7月27日(土)

朝ごはんを食べて洗濯物を干したら、バタンと昼寝してしまった。
ゆうべはおかしな夢をみてうなされたので、熟睡できなかったのです。
得体の知れないものが、自分の中からぶわっと出て来て、それが自分の体に覆いかぶさってくる夢だ。それは目に見えないけれど、力の固まりのようなもの。
寝ぼけながらだから確かなことは言えないが、朝方トイレに行ってもどってきたら、寝室の空気が重たかった。ためしにふすまを開けて寝たら、やっと眠れました。けど、こういう力って、覚醒していたら感じないのではないかと思った。半睡眠のトロトロした状態で、脳が休息しているから、そうでない所が活発になって感知してしまうというような感じがした。
カスピ海のヨーグルトのおかげで毎日快便だ。
何回か仕込んでいるが、いつも出来上がりの様子が微妙に違う。ねっとりとしている時もあるし、ポテッと重たい時もある。どういう加減でそうなるかはまだ不明だが、生き物だからということにしておこう。どっちにしてもおいしいから満足しています。
午後から明日のケイタリングの準備をしにクウクウへ。
タプナードとひよこ豆とクリームチーズのディップを作った。
サンがギリシャから帰って来たので、カウンターで飲み始め、ヤノ君もシタ君も加わって、酒盛りになってしまった。
そして今夜は、可愛い弟たちに教えられました。
何を教えられたかについては、こんどまたゆっくり書くことにします。
なんか良い気分になってしまい、涙もろくもなっていたので、ちょっとクールダウンしようと、ひとりで下田さんの旦那さんがやっている店に行き、赤ワインを2杯ばかし飲んで帰った。とちゅう、自転車でコケた様な気がする。けっこう泥酔状態だったようだ。

●2002年7月26日(金)

午後、病院から帰って来たスイセイ。炎天下の中を歩いて行って来たので、また陽に焼けている。汗も吹き出して、赤茶色いやかんのようになっている。ちょっと傍には近寄りたくない感じ。
「今日は街が変じゃったで。じいさんが自転車で急に転んだりの、トラックが変な止まり方したりの、向こう側を歩いとった若い女が、俺を見て、何でかわからんけどプッて吹き出したん。みんな脳が溶けとったで。」 先週の血液検査の結果が出たらしいのだが、全体的に良くなっているそうだ。体重もこのままで良いと言われたらしい。「ほいじゃが油断はせんけどのー」とご機嫌な様子。早くシャワーを浴びればいいのに。
こんなにも、奇麗だったか、夏の夕方。
いつものように畳の部屋で窓を開けて本を読みくさっていたら、空が青くてたまらなくなり、もう読むのはやめた。
洗濯物がすっかり乾いて風に揺れている。トイレに敷く敷物の毛並みの先が、黄金色に光っている。
昨夜、図書館から借りた「あきらめたから、生きられた」を読んだ。
わりと最近、37日間太平洋を漂流して助かった人の本だ。この人は、石鹸やシャンプーの匂いをかいで、自宅の風呂に入っていることを想像したり、ペットボトルの底に残ったネスカフェの匂いをかいで、コーヒーを飲んでるつもりになり、残り少ない(と思ってあきらめていた)人生最後の時間を愉しみ、満ち足りていたそうだ。
晩ご飯は、昨夜の残りものと、じゃが芋とちくわの天ぷら、塩鮭、わかめとじゃが芋のみそ汁。私もスイセイも心なしか食欲がない。
カスピ海のヨーグルトだけは、昨日、今日と食べている。

●2002年7月25日(木)

朝ごはんは、昨日のサフランライスがまだあるので、かじきまぐろのカレーを作った。トマトっぽくしたかったのだが、トマトがないので、撮影の残りのプラムジャムを加えたら、なかなか良い感じになった。
今、家の冷蔵庫には何もない。ない時には本当に何もないのだ。かじきまぐろだって、撮影の残り物を1枚だけ冷凍してあったものだ。
ケイタイの取り扱い説明書は辞典のようで、まったく初心者の私にはその重さだけで気が遠くなる。ちょっとめくってみたが、じぇんじぇん分かりませーん。
夕方、図書館に行って10冊借りてきました。
私の愛読書ドリトル先生もある。翻訳が井伏鱒二だから読み始めたのだが、一昨年はどっぷりはまって、6巻くらいまで読んだ。その続きを借りてきました。
久々に買い物に行き、野菜をたんまり買って来た。近所の商店街の八百屋で。
じゃが芋が1キロ80円、茄子が80円、ゴーヤが2本で120円、ピーマンがでかい袋入りで100円、いんげんが90円とか、新鮮なぶりぶり野菜がめちゃくちゃ安いんです。
夜ご飯は、小松菜の煮浸し、茄子といんげんの炒め煮(太白の黒ごま油でよく炒めてから、だし汁と醤油と酒で煮含めるだけだが、野菜が良いせいですごくおいしくできた)、サンマの干物、生ゆば、麩とねぎのみそ汁。
りうが帰って来るのを待って、ケイタイについていろいろ教えてもらった。
電話番号を入れるのを教わったので、がんばって全部入れました。私はあまり電話をかけないから、40件くらいしかなかったが、たくさんあると友達が多くて人気者と自分のことを思い込む人の気持ちがふらっとしました。

●2002年7月24日(水)

朝ごはんは、ハトムギ入り玄米と、マルシンハンバーグ、オムレツ、トマト、切り干し大根の煮浸し(甘くない)、里芋のみそ汁。
洗濯はここのところ毎日やっているが、今日は掃除もしっかりめにやり、気になっていた扇風機の埃も拭いた。
同時に頭の掃除もできるのか、こういう日は仕事に取りかかるのがスムーズだし、けっこうはかどる。
原稿を1本書き(超短いもの)、書類を校正し、本の大きなテーマについてのまとめを書き、クウクウの秋のおすすめメニューを考えた。
夕方クウクウに行って、しおりちゃんにメニューについての連絡。
昨日からなんとなくフレンチの本を見ていたので、牛ヒレなんか買って帰って来た。そして、この間から気になっていたじゃが芋のグラタンを仕込んだ。
耐熱皿にじゃが芋のスライスを入れ、上から牛乳をたぷたぷに注いで塩胡椒し、オーブンで焼く。芋が7割り方柔らかくなったら牛乳を捨て、生クリームを注いでチーズをふりかけて焼く、というもの。
山本容子さんがフランスの田舎のお母さんに教わるのを、テレビでやっていたのだ。いつか作ろうと思って、美穂ちゃんから送られてきたおいしいじゃが芋を3個残し、生クリームも買っていつでも作れるようにスタンバイしておいた。
そういえば、昨夜焼いたケーキに添えようと、生クリームとカスピ海のヨーグルトを半々で混ぜてホイップしたら、軽くてなめらかなクリームになりました。市販のヨーグルトだったら、2:1の割り合いでできます(前にやった)。これ、おすすめです。
牛ヒレにもどるが、波々のグリルパンであっさりと焼いて、エシャロットとマッシュルームをよく炒めてバルサミコ酢と醤油のソースを作り、サフランライスも 炊いた。あとはロメインレタスとイタリアンパセリとトマトのサラダだ。
普段のごはんにしてはなかなかしゃれているのは、今日がりうの誕生日だから。24歳になったそうだ。
私だけひとりで赤ワインを飲んで、別に乾杯もおめでとうもせずに、いつものように3人で夜ご飯を食べた。おめでとうは、昼間に一回言ったからもういいのだ。
りうは今日、携帯電話の契約に行き、親子割引で私の分もやってくれた。
今、始めて自分のケイタイというものがここにあります。
嬉しいけれど、なんだかソワソワして落ち着かない。「別にかかってきてもイヤだったら出なくてもいいんだよねー。」と質問したら、「もちろん。」とだけ低く答えていたりう。ばあちゃんみたいな質問ばかりさっきからしているので、ちょっと呆れ顔のりうだ。
なんか、ケイタイって自分がもうひとりいるみたいだな。
ていうか、まるで私の誕生日のよう。

●2002年7月23日(火)

昨日帰って来る時にパン屋に寄ったら、どういうわけかチョコレートデニッシュなんて買ってしまった。で、自転車をこぎながらあっと気がつきました。
この間読んだ、照ちゃんの「モロッコでラマダーン」に出てきたのだ。
失恋の痛手をかかえる照ちゃんが、次の目的地に向かうのに、長距離バスに持ち込んだ昼ごはんだった。
しかしいざ食べようとすると、バスに乗っているモロッコ人たちは、「本当に食うのかそれを?」という強い目をして(無言だが)咎める。その理由はというと、ラマダーンだ。断食なのだ。
日本人なんだから別に構わないのに、照ちゃんはその時からラマダーンを始めてしまうのです。夕べから何も食べていなかったというのに。
それで、あ〜〜チョコレートデニュシュが・・・・ というわけで、照ちゃんが食べてさえおれば、私も食べた気になっていたはずだ。
そんなもんだ、人の食欲って。
昨日占いのおねえさんの所に行ったが、彼女に会うといつも私は元気になる。
がぜんとやる気が出てくる。
いつも良いことばっかり言われるのだ。そしてそれは、だいたい自分でも薄々感じ取っていたことで、そこにさらに強い確信が加わるという感じだ。
今、オレンジバターケーキを焼いているところ。
バター90g、砂糖100g、薄力粉150g、アーモンドプードル50g、卵3個の割りだ。ちょっとマドレーヌ風にしたかったので、アーモンドプードルを入れた。
あーそうだ、今気がついたが、これも今日読んでいた本に影響されている。
江国香織の「流しの下の骨」だ。夜中に姉弟がマドレーヌを食べるシーンが出てくるし、お嫁に行った姉は、なんだかんだとよくケーキを焼いていた。

●2002年7月22日(月)

ここのところ、暑くてうまく眠れない。
明け方鳥たちが鳴き始める頃に寝て、10時には目が覚める。
いつもはだらだらと眠れないまま布団で過ごすのだが、今日は張り切って起きてしまった。スイセイは健やかに隣で寝ている。眼球が時々波打っている。夢をみているんだろうな。
仕事のファックスを1本済ませて、今は、洗濯機をまわしながら、もちきびご飯を炊いてみそ汁のだしをとっているところ。
ファックスの相手の編集者さんは、いつも私が昼過ぎに起きるのを知ってるから、「おっ、高山さん早いじゃーん。」と感心しているだろう。
午後からは炎天下の中、占いのおねえさんの所に行く。

●2002年7月21日(日)

クウクウの日。
忙しかったし、暑かったー。
新井君がいまいち調子が悪いので、今日の厨房は健康のためにクーラーを消して働いたのだ。胸の谷間を腹を、汗がだらだらと流れながら、けど、バリバリ働いてすがすがしく、気持ち良かったっす。
帰ってから、某雑誌社からお中元でいただいたオレンジを大量に絞り、ジュースにした。麦茶の入れ物にたっぷり入れて冷蔵庫へ。この季節、毎年の愉しみなのです。

日々ごはんへ  めにうへ