2003年2月下

●2003年2月28日(金)晴れ

リビング系単行本のインタビューの打ちあわせ。4時には終わりました。
まだ明るいうちに出掛け、パルコブックセンターで本を4冊買う。そして帰りにおいしい魚屋さんへ。
魚屋のおじさんは、「毛ガニはどう?」と私の顔を見るなり言っていた。おいしそうだったけど、すでにひと月に3回も食べちゃったからなー。で、ブリの刺し身にした。富山県の氷見海岸の自慢のブリだそうだ。
帰ってから「ぶらんこ乗り」を読み、またしてもだーだーと流れる涙を止められない私だった。
夜ごはんは、ブリの刺し身、かぼちゃの甘辛煮、あさりそのまんま蒸し(酒も水も塩も何も入れずに、あさりだけを鍋に入れて蓋をし、短時間で蒸す)、玄米、小松菜と油揚げの味噌汁。このやり方で蒸すあさりが、いちばんおいしいと思う。カタカタと音がしてきたら要注意、ちょっと鍋をゆすってやると、あっという間に口が開き始めるので、すぐに火を止めること。まだ完全に開いてない貝があっても、ちょいとつついてやればパカッとすぐに開くはず。とにかく蒸しすぎないことが肝心。
富山のブリも身がしまっていて、ほんとうにおいしかった。
今日は本に囲まれて、早めに布団に入ることにしよう。

●2003年2月27日(木)晴れ、風強い

3時までぐっすり寝て、風呂にゆっくり浸かって無理やり目を覚ます。
今日の打ちあわせ、5時にしておいて正解でした。
ライターさんが、新刊のことを褒めてくださった。「若い編集の子たちが高山さんのファンで、発売日をメモして買っていましたよ。」とも言われる。照れ臭いが、とても嬉しかった。私は、自分のファンがいてくださることがほんとうに信じられないのです。本を買ってくださったひとりひとりの方々にお会いして、ありがとうございます、と頭を下げたい気持ちでいっぱいだ。
そして打ちあわせが終わり、また布団にもどる私だった。
夜ごはんは、きのうの撮影の残りの豚肉ソテー、塩鮭、冷やしトマト、小松菜のおひたし梅じょうゆかけ、玉ねぎとキャベツの味噌汁(アゴのだし)。

●2003年2月26日(水)晴れ、春のように暖かい

12時から撮影。たったか進んで3時半には終わりました。
葉ものの野菜が、ものすごくおいしくなっているのに今日気がつきました。サニーレタスもふつうのレタスもブリッとしていて、根元の白いところなどしっかりと甘く、味がある。春はもうすぐそこ、ということだろうか。ゆでたじゃが芋も、塩もふってないのに甘く、モクモクとしておいしかった。
7時に武蔵境の駅に集合して、皆でひばりが丘にタクシーで向かう。本のメンバーが全員集まって、打ち上げなのです。「や〜、ひさしぶりだね〜」なんて、ちょっとずつ集まってくる感じは、同窓会のようでワクワクする。
立花君の友だちがやっている、広島風お好み焼き屋「風々」が今日の会場だ。お好み焼きは、いやー、ほんとおいしかったなー。目の前で焼いてくれるのだが、広島風って小麦粉も少ないし、キャベツ、もやし、豚肉、やきそばのそれぞれの味がけっこう独立していて、ソースも毒々しくなく、いくらでも食べられる。チーズ入りのいか焼きのっけとか、イカ天(駄菓子っぽいやつ)入りとか、青じそとお餅入りとかいろいろ食べたが、ソースは1種類なのに、どれも違う風味でおいしい。良い素材を使って、ひとつひとつの素材をだいじにしているからだと思う。キャベツの切り方ひとつにしても、春キャベツとふつうのキャベツと太さを変えていたり、新鮮ないかや海老は、お好み焼きに混ぜないで、ぷりっと香ばしく焼いて上にのせている。マスターの人柄が味に出ているなーと思った。そっけないんだけど、バイト君を可愛がっているのもじわっと伝わってくるし、実直さが顔にも出ている。
厨房に入らせてもらって、実は私も焼かせてもらったんです。マスターに教わりながら。その放っておいてやらせてくれる感じも、適度なところでていねいに教えてくれるところも、なんかこの人って、キャパシティーが広いというか、短く言うと、ひじょうに優しいんだと思った。なまくらな優しさでなく、厳しく優しいというかなんというか。
ちょっと遠いけど、タクシーに乗ってでもまたぜったいに行きたいと思わせる。しばらくしたら、この味とマスターの空気が猛烈に懐かしくなりそうな予感だ。
そう、そして店の内装は、若き頃(20歳くらい)の立花君なのだそうです。頑丈な床や、壁や天井のむきだし感とか、ポスターの皴ごと壁と一体になって、茶色く古びてきている感じとか、「太陽」ともまた違った潔さだった。そして、鉄板や厨房の金属類のピカピカ度との対比も、男らしいなーと思う。これは女が作れる空間ではないですよ。
たの〜しく12時まで居させてもらったが、まだまだ楽しみたい私たちは、吉祥寺にもどって4時半まで飲んじゃいました。スイセイは焼酎ロックダブルなんかおかわりして、ひとりでぐんぐん酔っ払い、胸にたまっている愛情を発散させていた。スイセイは、この本のスタッフたちのことが、ひとりひとりだーい好きなのです。
打ち上げも終わり、なんとなしに、「今年も終わっちゃった」って感じだった。帰りのタクシーの中で、川原さんとスイセイにはさまれて、忘年会の帰りだっけ?と錯覚してしまった。

●2003年2月25日(火)晴れ、けっこう暖かい

ゆうべは豆腐料理のことを考えながら寝たので、朝起きてミルクコーヒーと食パン(ピザ風にした)を食べながら、どんどんメニューが決まっていった。あとは明日の撮影の準備をすれば、今日の仕事は終わりだ。
畳の部屋で干し上がった布団に寝ころびながら、無人島に持って行きたい1冊の本は?という取材がきているので、そのことについてうーん、と考える。
夕方になったので、明日用の買い物をして、「太陽バンド」のライブへ。
前にも書いたが、池尻にある「太陽」の畑さんがひとりでやっているバンドです。
いちばん前の席だったから、じろじろとよく見た。すごくかっこ良かった。この人って、顔も、のどのあたりも、体の動きも服装も、すごく畑さんらしい。というか、畑さんの音楽に合っている。なんというか、嘘がないっていうか。
「サマータイヨウ」の時に目をつぶって聞いていたら、目の中がオレンジ色になる感じで、じーんとしてしまった。切ない幸福感だ。また、4月6日に吉祥寺スターパインズカフェでやるそうなので、こんどもぜひ行きたい。もっともっと聞きたい。
いっしょに行った川原さんと、クウクウでちょっと一杯飲んで帰って来ました。帰りに無人島に持っていきたい本の取材が来た話をしたら、「うーん、無人島か。私は何の本にしようかな〜」なんて、川原さんは自分のことのように考えこんでいた。自転車をこぎながら。好きな相手と並んで自転車をこいでいる時って、イルカになってスイスイ泳いでいるみたいな感じ。ちょっとほろ酔いでごきげんだし。

●2003年2月24日(月)雨のち小雪

雨の粒が大きく、重みもある気がして触ってみたら、ひんやりと冷たい。もしやと思っていたら、そのあとすぐに雪になった。
カーテンを開けた寝室で、白い窓を時々眺めながら、今日はずっと本を読んでいました。休日ということにして。とちゅう、ベーコン、玉ねぎ、レタスのスパゲッティーを作り、また部屋にもどって続きをひたすら読む、幸せタイムだ。だけど、レタスは入れない方がよかったな。
夜ご飯は、塩豚3日目を薄く切って油もひかずに焼いただけ、ほうれん草と小松菜と海苔のおひたし、厚揚げとしいたけの煮含め、玄米、麩とねぎの味噌汁。塩豚を焼いただけのものって、やきトンのタン塩とかハツとかに似ていて、すごくおいしいと思う。家族にも大好評だ。
そういえばきのう実家に帰った時、母のほっぺたにボールペンで書いたような線がついていたので、こすって消してやろうとしたら、「ボールペンじゃないだよー。ふみちゃん(母の親友のばあさん)ちで酔っぱらって転んだだから、ボールペンなんて言わないでちょうだい。」なんていばっていた。ボールペンの方がましなんじゃないかと思うが、「危ないなー、気をつけなさいよ。」とか、言えない自分がくやしかった。私も酔っぱらって転んだ時の傷が、瞼の脇にまだくっきりと残っているので。

●2003年2月23日(日)曇り時々小雨

実家に日帰り。
天むすなんか食べながら、ぼやーっと新幹線から景色を眺めていた。畑がずっと向こうまで広がり、枯れた小さな山や川を越えてゆく。ふと、秋の景色だなあ・・と思ってしまった。え?秋?とちょっと考えて、ああ冬だと気がついた。
正月に帰ったばかりなのになんでかというと、相続についての話し合いだ。話し合いの最中、私は炬燵に手をつっこんで、ずっと猫をいじっていた。
案外早く話し合いは片付き、8時半の新幹線に乗って帰って来ました。
今日いちばん嬉しかったのは、みっちゃん(双子の)に本のあとがきを褒められたこと。
「いくら料理家って言ったって、あれじゃなきゃ、なみちゃんじゃないよ」と。
家に帰ったら、ちょうどスイセイがご飯を炊いていた。けっこう真っ黒焦げの玄米だったが、昨日のうちに作っておいた豚角煮と、小松菜のおひたし、めかぶ納豆(りうが作った)で、夜ごはんにした。

●2003年2月22日(土)ずっと曇りでけっこう冷える

風呂場の下の杏の木、蕾がピンクがかってきている。
今日も試作の日々だ。そして次の撮影のレシピ書き。
夜ごはんは、豚肉と豆腐(小松菜、絹さや、しいたけ入り)のオイスターソース炒め、白滝の薄味煮、即席カクテキ、大根の味噌汁(アゴのだし)。

●2003年2月21日(金)晴れ、昼間は暖かいが夜はかなり冷える

早起きする予定だったが、胃がムカムカして気分悪く、打ち合わせぎりぎりの時間まで布団に入っていた。ざっと掃除機をかけ、スイセイとりうに玄米チャーハンを作り、胃に良い生姜入りの番茶を煮出しているうちに、だんだん調子が出てきました。
そして2時から打ちあわせ。藤原さんと話しているうちに元気になっちゃいました。本の打ちあわせなので、自然と熱も入ります。
吉祥寺へ出て、撮影用の豚肉など買い込む。駅の本屋をのぞいたら、私の新刊はまだ売り切れのままだ。スイセイの大好物「ぶりの押し寿司」を買って帰ってくる。
塩豚を仕込んだり、テレビ用の試作などもしてゆるやかに仕事。
そう、今日スイセイに言われたのだが、私たちの仕事場は自宅なので、どこからどこまでが仕事って言えない感じ。ゆるやかにずっと仕事している感じだから、「意識して休みを作った方がええで」と。そう言われてみると確かにそうだが、私の場合、読んだ本や昼寝の夢さえも、仕事のネタのもとになっている。
夜ごはんは、ねぎとろユッケ丼、生のりのお吸い物、ほうれん草のおひたし。

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