●2003年4月10日(木)快晴、桜も終わり
りうの引っ越し。
りうのボーイフレンド君、ヤノ君、クウクウの女の子が手伝ってくれた。
スイセイは仕事だし、私は腰に自信がないので、ぜんぶ若ものたちがやってくれました。
私は弁当を作っただけだ。あと、赤帽のおじさんも汗をたらしながら手伝ってくれた。
りうのアパートは、床もトイレも古くてかわいらしい。窓がたくさんあって、下をのぞくと大きな川が流れていて、鴨がいる。なんか風通しがいい空気の部屋だった。
荷物を運び込み、公園で弁当を、皆でおいしく食べる。
桜も終わりだから、あんまり人がいなくて、うららかな春という感じ。
ビールを飲みたくなったので、駅前に出てやきとり屋に行った。ちょっとした打ち上げだ。夕方の明るいうちに軽くひっかけるのって、かなり幸せ。
そして、朝掘りの筍が300円だったので2本買って、まだ明るいうちにヤノ君とスイセイと3人で、てくてくと歩いて帰って来ました。
とちゅうの骨董屋で買った椅子を抱きかかえながら、桜の終わりを眺めながら、べつにたいしてお喋りもせずにてろてろと歩く、これもまたけっこう幸せだ。
帰ってからすぐに筍をゆでる。
筍をゆでる匂いっていいなあ。そしてゆでている時、「今年は筍を何回食べられるだろうか」と、毎年考えていることを思い出した。
去年はけっきょく1度しか食べなかったな。筍づくしにしてスイセイにいやがられた、あの晩いちどだけだ。
牧野さんから素敵なファックスが届いていた。
わらびといっしょにいただいた、細い筍のような緑色のものが何か分かったらお知らせしますとおっしゃっていたが、「たけのこのようなものは、イタドリというんだそうです。別名スカンポ。北原白秋のうたにスーッカンポ、スーカンポッ、というのがあります」と書いてあった。わらびのアクの抜き方、スカンポのゆで方も書いてある。
りうの部屋はあっけからんとして何もないので、声を出すと響く。
引っ越してきたばかりの時ってそうだった。荷物って音を吸いとるんだ。すごいもんだな。
やけに広々とした部屋の真ん中に立って、さてこれからここをどうやって使おうかと考えるのは嬉しくもあるが、なんとなく心にぽかんと小さい穴があいている感じ。
この穴がだんだん大きくなっていくと、淋しいになるんだろうなと思う。
夜ごはんを作りながら、今夜はスイセイとふたりだと思うと、ひんやりとため息が出ちゃうような、早くもそんな気分になった。やばいやばい。
なんかもしかして、淋しくて泣いちゃうなんてことがありえるのかも?とちらっと思ってしまった。まるで娘が嫁に行ったみたいじゃん。
夜、これからメディアファクトリーのみきちゃんが、本の読者カードを届けてくれるそうだ。こんな遅くに申し訳ないことです。
今夜は風呂に早めに入って、そのカードをひっそりと読もう。
夜ごはんは、若竹煮、わらびのしょうがじょうゆ和え、スカンポのきんぴら、かぼちゃのおかか煮、玄米、姫皮の味噌汁。
味噌汁をひと口飲んだみきちゃんは、「ほーーーっ」と思わず声を上げ、そのあとため息をついていた。昆布がなくて、にぼしとかつお節でだしをとったからおいしくできたのだ。しかも姫皮だし。
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