●2003年11月10日(月)ずっと雨
今日は休日と決めて、12時まで寝る。
寝ながら考えていたのは、しおりちゃんと和楽のこと。
最近の、しおりちゃんのまわりに漂う空気のようなものについてだ。
言葉になかなかできないんだけど、しおりちゃんが和楽を産み落とした日を境に、ぐんぐんと強く感じるようになった、この空気。
これはいったい何だろう。
母と子の・・と言ったら、あまりに安易すぎる。
私は今まで10年以上しおりちゃんとつき合ってきて、しおりちゃんという人のイメージは、私の中ででき上がっていた氣がするのだが、それが変わってきたというか、穴があいてあふれてきたというか、そんな感じだろうか。
出産に立ち合った時に、私はしおりちゃんの汗の匂いをかいだ。
そして和楽が生まれてきた時、母と子の間にあるゆるぎない気配を、濃厚な匂いみたいに嗅いだのだと思う。
ああそうだ。きっとそうだ。
その匂いみたいなものが、今もずっとしおりちゃんと和楽のまわりに(世の中から)、膜を作っているのだ。
膜の中の空気はとても温かく、この世の何にもまさるもので、尊く気高い。
そうかー、これが母と子なのかーなどと思いながらもうひと眠りだ。
甘いココアを作り(雨だから)、布団の中でだらだらとビデオを見ながら過ごす。
「高山なおみの料理」の、撮影風景のビデオだ。
明日はデリデリの収録なので、ちょっと私は落ち込みぎみかも。
なんか、自信がなくなってくると、このビデオを見る。
そこには、私の大好きな人たちが、ひとつのものを作り上げるために集まった、それぞれの目に見えない力のようなものが写っているんです。
「スキップ」という、ユニクロ系列の取り寄せ野菜が届いた。
広報誌の中に載る料理レシピの依頼をいただいたので、とりあえずお味見をということで送ってもらいました。
おいしいものを追及してゆくと、どんどん欲が出てくるのが私はイヤで、「お薦めのお取り寄せは?」なんていう取材がくると、ずっとお断りしてきた。
近所の八百屋さんや、スーパーの野菜を買ってきて、ありきたりの調味料でどれだけおいしいものが作れるか、とか、そういう都会の野菜でも、皮もしっぽも無駄にせず、どれだけ大切に使い切れるか、というのが最近の私のテーマだった。
それが、清水さんの畑に行ってから少しだけ変わってきたような氣がする。
で、こんどは「スキップ」だ。
特別なものを使って料理するということが贅沢なような、見せびらかしているような、どうも自分にはしっくりこないので、半分はお断りするつもりで、実を言うと興味本位で送ってもらったんです。
箱を開けたら、トマト、みかん、ピーマン、茄子、かぼちゃ、ブロッコリー、ぴかぴか光ったきれいな野菜が、それぞれちゃんとビニールに入って出てきた。
なんか、都会の贅沢だなーなんて思いながら下を探ると、泥つきの太ったにんじん、じゃが芋、紙に包まれたキャベツが出てきた。
トマトをとり出そうと思ったら、ダンボールのフタの所に、袋の上が貼りつけてある。
たぶん、下の野菜に触ってつぶれないようにという配慮だろう。
それを見た時、「やっぱりやろう!」とすぐに思いましたね。
野菜に対する愛情を感じたのです。
それは、生産者に対する愛情でもあるし、料理する人に対するものでもある。
これは本物だな・・と思ってしまった。
今、昨日教室でとったトリガラスープでもって、さっそくじゃが芋、にんじん、キャベツ(清水さんの)、大根(清水さんの)をコトコトと煮ている。
とんでもなくいい匂いがしています。
味噌味のスープにする予定。
今日やることは、明日の収録の練習をひとつと、ゲラ直し2種、「東京人」の原稿の仕上げ、以上。
夜ごはんは、野菜ゴロゴロ味噌スープ、豚肉の洋風炊込みご飯(生徒さんの実家の庭の月桂樹を入れ、トリガラスープで炊いた。炊き上がりに春菊を混ぜた)、焼き茄子(スキップの)。
デザートは、明日の練習で作った「さつま芋と胡麻の焼き菓子、アイスクリーム添え」だ。
お菓子の粉っぽさ(すりごまたっぷり)とアイスクリームと黒みつが絶妙だった。
われながら、この組みあわせに驚く。
スイセイは、「おいし一一っ!」と言いながら涙をため、もちろん皿もなめていました。
「スキップ」のみかんも小粒で甘く、とてもおいしかった。
ノーワックスなので皮を干している。なんか皮が、オレンジに近い匂いがするのは気のせいだろうか。
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