2004年2月中

●2004年2月20日(金)晴れ

清水さんの畑に、しいたけ菌打ちに行った。
しおりちゃんとリーダーもいっしょに。
この間の日記に、私は樫の木と書いたが、それはまちがっていた。
クヌギやナラの木に打つのだそうだ。
まず、電気ドリルでガガガガと穴をあけ、しいたけ菌がついた木片を金づちで打ち込んでゆく。
電気ドリルなんて始めて使ったが、あれは凶暴な気持ちになるものだな。
鉄砲みたい。
「おめえら文句あっか!」という、男らしい気分になった。
しおりちゃんは和楽をおんぶして、ドドドドッと穴をあけていた。
和楽は泣きもせず、ぼやぼやと気持ちよさ気にしていた。
炭焼きの匂いや、土の匂いや、風が気持ちいいんだろうな。
この木は、菌が全体に回るまで日陰に置いて、時々湿気をあげるんだそうだ。
1年半かかるのだそう。
私たちの木と分かるように「名前を書いときゃいいよ」なんて、清水さんのお父さんに言われた。やらなかったけど。
なんか、小学生にもどったみたいな気分だった。
楽しかったなー。
ほうれん草と小松菜は、かぶせてあったビニールをはずしてあった。
暖かいので、どんどん大きく育ってしまうからだそうだ。
朝から風邪気味だった私は、帰ってきたらぐっとくたびれていることに気がついた。
顔と足を洗い、布団をしいてとにかく寝る。
夜ごはんは、ほうれん草と小松菜炒めて、豚肉の生姜焼きをのせたもの。しいたけのフライパン焼き(ごま油と塩)、豆腐とねぎの味噌汁、玄米。
夜、クウネルの直しをやってお送りし、薬を飲んで寝る。

●2004年2月19日(木)晴れ、春のよう

クウネルの原稿を2時くらいに仕上げ、美容院に行く。
井の頭公園はあちこち工事中だった。
花見の前になると、なんで毎年工事をするんだろう。
それにしても、たぶん今年の桜は早いだろうな。
この暖かさでは、3月中に咲いてしまうのではないだろうか。
美容院で隣に座ったおばちゃんが、麻雀の話をしているのがおもしろかった。
「男ってのは手がちーちゃいんだよ。機嫌わるくなって文句を言い始める時ってのは、安い駒をひいちゃった時なんだよねー。だから私は旦那とはやらないの」。
髪の毛を誰かにいじってもらっているっていうのは、すごくいい気持ち。
文章書きで頭がこっていたから、シャンプーの後のマッサージの時、口が開いてしまい、まじでよだれが垂れてきた。
帰りにおいしい魚屋さんで、平目の刺し身、しめ鯖、あさりを買う。
今夜は9時から寅さんを見ないと。
夜ごはんは、里芋とにんじんの含め煮、菜の花の辛子和え、平目の刺し身、しめ鯖、にんじんの切り昆布漬け、あさりの潮汁、玄米。
スイセイの好物ばかりだ。
夜、風呂に入ってから原稿を書く。

●2004年2月18日(水)晴れ、温かい

クウネルの原稿は順調だが、もう一つの方の原稿のまたまただめ出しが。
ふーっ。
私はガーンとなって、焼酎のロックを飲む。
ちょっと飲みすぎで、原稿が書ける状態ではないので、夜ごはんをささっーと食べて布団をかぶって寝てしまう。
ゆでうどん、とろろ芋、えのきと油揚げの炒め物、かぶと白菜のサラダ(昨夜の残り)。
このところ買い物にも行ってないし、ご飯らしいものを作ってなくて申し訳なく思っているが、「なんでもええで」とスイセイが理解があるので甘えている。
ほんと私はスイセイに甘えている。
夜中に起きて風呂に入り、コロボックルを読む。
5巻目がまた、とてもよかった。
佐藤さとるさんの本、他のも読んでみたい。

●2004年2月17日(火)晴れ

昨夜書き上げた原稿、まだだめでした。
スイセイは厳しい。
私は、スイセイに文のことで厳しく言われると、血圧が下がって吐きそうになる。
自分を全否定されたような気持ちになる。
そしてまた書き始め、はい上がっていく感じだ。
昔、「cut」で連載していた時のことを思い出す。
私は泣いてスイセイに抵抗したり、喧嘩になったりもした。
だから、たまーにいい文が書けて、いっぺんで良しが出た時など、すぐには信じられず、 涙が出そうに嬉しさがこみ上げたものだ。
まるでバカな犬みたい。
このところずっと、私はスイセイに見せずに文章の仕事をしてきた。
だから、ひさびさの感覚だった。
セイリでお腹も痛いので、ずっと布団の中にいようかと思ったが、気を取り直して本のレシピを仕上げてしまう。
丹治くんが撮ってくれたビデオを見ながら、ポイントを分かりやすくつけ加えたりして。
ふー、そろそろ原稿書きにもどろう。
7時頃、どうにか書き上げお送りしました。
そして、こんどはクウネルの原稿だ。
レイアウトがやっと出来上がり、バイク便のおにいさんが届けてくださる。
うーん、倫子ちゃんの写真いいっすねー。
雪が反射した明るすぎない光・・。ううっ・・・(思い出している)。
夜ごはんは、ベーコンとアンチョビでトマトソースを作り、スパゲティにした。
あとは蕪と白菜の塩もみサラダ。

●2004年2月16日(月)晴れ、風強し

12時より撮影。
夫婦の朝ご飯メニュー(いつもの)なので、1時間ほどで終わった。
最近スイセイは確定申告のことで事務所づいているので、すっかり会社みたいな雰囲気。
「次の打ち合わせの準備をしてください」とか言いにくるし。
私は自分の机でパソコン打ちだ。
4時からは打ちあわせ。
こちらも1時間ほどで終わる。
原稿書きや、レシピ打ちや、複数の仕事をまぜこぜにやっていたから、私はテンションが上がっているみたい。
そうか、撮影もやったんだものな。
夜ごはんは、鷄肉、こんにゃく、いんげんの炒め煮、鯵のひらき、スープ餃子(たっぷり小松菜入り)、玄米。
ごはんを食べながら、スイセイに原稿を見てもらう。
そして、ダメだしが出た。
眉間に皴が刻まれ、ぐっと落ち込んでゆく私。
私はごはんを食べられなくなったが、スイセイもとちゅうで食べられなくなってしまった。
焼酎のお湯割りを作って、私は気を引き締める。
もういちど書き直すことにした。
スイセイのスープ餃子はまったく箸をつけてない。
私のせいですっかり冷めて、餃子が汁を吸ってボテボテになってしまったので謝ると、「ええで。のびた餃子のスープっていう名前にすればええ。あとで食べるからとっといて」なんて言っていた。

●2004年2月15日(日)晴れ

昨日の風は、春いちばんだったそうだ。
そういえば、「翼の王国」の桃ちゃんにもらったサボテン、確実に大きくなってきている。ほんの少しだけど、下のところが伸びているのがわかる。
かわいいやつだな、サボテンて。
引っ込み思案だけど、コツコツと頑張っているタイプ。
というか、こちらがいつも気にとめて可愛がっていることを分かっていて、本当は嬉しいんだけど、それをあんまり見せたくないシャイな奴という感じ。
私の好きなタイプじゃん。
さて、今日はずっと机に向かっている。
昼間ちよじがやって来て、波照間のにんじんとパパイヤをあげる。
そしてまた原稿の続きだ。
昨夜はスイセイが留守だったので、けっこう身を入れてやった。
4時くらいまでやってふらふらしてきたので、風呂に入って終わりにした。
そういう時、ふっとサボテンを見るのを楽しみにしているんです。
サザエさんを見ていたら、確定申告の計算で忙しいスイセイも部屋にきた。
いつも働きづめのフネを、たまの日曜日に休ませてあげようと、家族が協力し合っていると、ご近所にフネが寝ているのが伝わり、病気で寝込んでいるのかと思われて、いろんな人がお見舞いにやって来る・・・という話で、私は少し涙ぐんだ。
「泣けるなあ・・」と私が呟くと、「おれはぜんぜん泣けない」と低く呟くスイセイ。
夜ごはんは、鷄と白菜のマスタード煮、塩鮭、椎茸のちょっと焼き(フライパンで軽く焼いて酒ちょっとで5秒ほど蒸し、しょうゆをかけた)、わかめ酢、にんじん塩もみ、落とし卵の味噌汁、玄米。

●2004年2月14日(土)晴れ、風が強い

自転車をこいで、波照間にんじんとパパイヤを、しおりちゃん宅へ届ける。
「どんぐり舎」でコーヒー豆を買って帰ろうとしたら、立花君がいた。
立花君はよく来ているみたいだけど、ここで会ったのは初めてだ。
すごくびっくりした。
彼は何度会っても憧れのデザイナーさんなので、私はいつもドキドキしてしまって、こっぱずかしい限り。ちょっと話して、さっさと帰ってくる。
今日は帽子をかぶって、マフラーもぐるぐる巻きにして自転車をこいだら、飛ばされそうなくらいに風が強かったけど、そんなに寒くなくてけっこうらくしょうでした。
帰ってからはまた原稿書き。
クウネルの方は、締め切りが伸びて19日になったので、それまで心は缶詰め状態だ。
まだ何日もあるんだから、別に遊んでもいいんだけど、書ける時に書いておかなければという心配が私を縛っている。気が小さい私。
スイセイは広島から友達が来ているので、夕方から飲みに出掛けた。
私もついて行きたいのをぐっとこらえる。
そして、原稿書きに励む。
実は、翼の王国の原稿の方も、書き直しているんです。
ひとりの夜ごはんは、にんじんづくし。
でっかく切ったにんじんのスープ(味噌と牛乳)、にんじんスティックの塩もみ、納豆、白いごはん、を気ままに作って気ままに食べた。
テレビをつけたら、岩井俊二の「ラブレター」をやっていたので、ぐっと入り込んで見てしまう。
中山美穂もよかったけれど、中学生の時の役の子がとてもよかった。
最後にちらっと出てきた岩井俊二もよかった。
顔が好みなのだ。

●2004年2月13日(金)晴れ、少しだけ寒い

昨夜は、コロボックルの3巻目「空からおちた小さな人」を読んで泣いた。
なんていいんだろう。
読み終わってからも、しばらく涙が出ていた。
それでまた今日も、昼間から4巻目を読んでいる。
パソコンに向かって原稿を書きながら、行き詰まるとまたソファーに寝ころんで読む。
原稿書きの方は、どうもノリが悪い。
まだ、満が持してないという感じがする。
何の? 、書き始めるまでの気持ちの準備がだ。
もっともっとあの時の空気の中に、どっぷりともういちどはまりこまないとだめだ。
締め切りが伸びた電話があったので、まあ今日のところはこれで保存しておこう。
夕方、宅配便が届いた。
波照間の良美どんからだ。
野菜を送ったというメールがこないだあったんだけど、開けてびっくり驚いた。
葉っぱがワサワサした人参と、青くて固いパパイヤがぎっしり入っていた。
いやー、さすがは南国だわ。
このところ、冬の野菜ばっかり触っていたから、いきなり私はビューンと沖縄の空にトリップした。
包んであった八重山新聞は、泥がついて少し湿っていて、懐かしい良美どんのイラスト入り手紙も入っていた。
まいった・・。
なんて世界は広いんだろう。
さっきまで私は、初女さんのことをぎゅーとなって書いていたから、すっかり雪景色の青森だったのだ。
とりあえず今夜は人参のサラダと、パパイヤと豚肉を炒めて食べよう。
うわー、会いたいなー良美ちゃん。
けっきょく、パパイヤと人参はカレーにしました。
南国ムードのエスニックサラサラカレーだ。
香菜もあったので、根っこも刻んで入れた。
あとは、砂肝と清水さんのほうれん草と小松菜の塩炒め。

●2004年2月12日(木)晴れ、風もなく暖かい

清水さんの畑のほうれん草ができたそうなので、自転車をこいで行く。
今帰ってきたんだが、あーおもしろかった。
畑に行くと、清水さんは足場を組む金属でサークルを作っていた。
これは、しいたけの菌打ちをする時、樫の木の潅木を立てておく用のものだそうだ。
畑では、茄子が植わっていた跡地で竹炭を作っていた。
焼き釜みたいなものがあるのかと思ったら、畑の土が小山になっているだけ。
中にはドラム缶が埋まっていて、その中に細い竹がぎっしり詰まっているんだそうだ。
なんでも創意工夫の清水さんだ。
炭もいろんなのを作ってみているそうで、後で見せてもらったら、栗のイガやざくろ、れんこんや茄子、桃の種まであった。
商売のために研究しているわけではなく、ひたすら小学生の男の子のような好奇心でいろんなことを試している清水さん。素敵だなー。
前回畑に行ったのはちょうど1ケ月前だった。
ほとんど作物は終わりで畑は淋しく、ほうれん草と小松菜も親指ほどしか伸びていなかった。
今日、ほうれん草は2種類あって、葉に厚みのある「寒じめほうれん草」というのもできていた。
清水さんはこのほうれん草のことを、「寒さを喰っている」と言った。
お節句(3月3日)の頃、畑を耕すんだそうだが、清水さんは耕すことを「うなう」と言った。
前回、切り干し大根を干していたハウスの中には、春大根の種が蒔いてあった。
4日ほど前に蒔いたそうで、まだ芽は出ていなかったが、5月に収穫だそうだ。
「春大根は、暖かい時期だから、どんどん大きくなっちゃうから、売り出したら1週間でなくなるよ」と、話し好きのお父さんが言っていました。
お父さんは、さっき小屋の方で収穫した小松菜を束ねていて、次に見た時には畑で小松菜を抜いていた。今はハウスの中にいる。
ミニトマトとミディートマト(「ゴルフボールくらいのやつ」と清水さんは言った)も連休明けに収穫だそうだ。
楽しみだなー。
私は、少しだけど、だんだんに畑の循環が分かってきた。
畑をうなって、ぼかし肥料(清水さんが米ヌカや、菜種油糟や、魚糟などを混ぜて作った肥料。発酵中のを見せてもらった)を畝の下にまく時にも見に来たい。
これは3月初めの作業。
その前に、しいたけの菌打ちにも行く予定。
ラッパ水仙の黄色い花が咲き始めていた。今年は早いんだそうだ。
土が、ぽこっぽこっとところどころ山になっているのはモグラだそう。
沈丁花の花も蕾になって、今にも咲きそうだった。
清水農園にいると、本当に季節の移り変わりがよく分かる。
今日もまた椎茸もぎをやらせてもらったが、春先に降る小雨(菜種梅雨というんだそうだ)が降ると最後の椎茸が出て、それで今期は終わるのだそうだ。
終いの椎茸だ。
農業の言葉って美しいな。
さて、今夜はもぎたての椎茸で炊込みご飯にしよう。
そういえば、清水さんちの近所の農家の玄関に、「ハチミツは春までありません」と書いたボール紙がぶらさがっていた。
ハチミツが採れるのか?。
そして今日は道に迷って、ぶどう農園というのも見つけた。

●2004年2月11日(水)晴れ、暖かい

宅配便で何度も起こされる。
あちこちからゲラが上がってきているんです。
私は、ほんというとゲラ校正があまり好きでない。
もう終わった撮影のことなので、遥か遠くにあるからだと思う。
といっても、今カレンダーを見たら1ケ月前のことだった。
次々とやりたい新しい仕事がやってきて、気持ちはどんどんそっちに向かっているので、後ろを振り返らねばならぬのが辛い。
今日は、翼の王国の原稿を書き上げた。
スイセイが帰って来たら見てもらおう。
そして、仕方なくゲラチェックを始める。
昨日は、コロボックルを2巻ぶっ続けで読んでしまった。
お菓子を食べながら。
マーブルチョコレートとポテチと醤油せんべい。
まるで小学校の遠足だ。
何で私は子供の頃にコロボックル物語を読まなかったんだろう。
だから、子供になったつもりでお菓子を食べながら読んでいる。
読みながら、襖の隙間や、本棚の隙間をちらっちらっと見る。
もしかして小人が歩いてやしないかと思うのだ。
スイセイは朝から出掛けて、りうの家で工事をしていた。
夕方、りうを連れて腹ぺこで帰ってきたので、冷凍しておいた餃子を焼いて早夕飯にする。
小松菜とかぶの葉の塩炒め、大根、人参、クレソン、ハムのサラダ(玉ねぎドレッシング)、れんこんとコンニャクの薄味煮、玉ねぎとじゃが芋の味噌汁(りうがいちばん好きな味噌汁)、玄米。
私は餃子を3回焼いた。焼き立てを食べて欲しいので。
原稿は、「ほとんどええの」とスイセイに言われました。
明日もういちど推敲して仕上げよう。
なぜか紅白の再放送をやっていたので、引き込まれるようにしてスイセイと見てしまう。
りうは直太郎だけ見てさっさと風呂に入り、台所をきれいさっぱり片づけ、爽やかに帰って行った。
紅白を最後まで見ていたら、年末のような気がしてきた。
明日から正月が始まるような・・・。
原稿が書き上がったから、ひと仕事終えた気分なのだ。



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