2004年3月上

●2004年3月10日(水)快晴、風強い

風呂場の窓を開けたら、杏の木にめじろが2羽とまっていた。
黄緑色なのでうぐいすと間違えやすいが、目の回りが白く、ぷっくりと小さくて、すんごく可愛い。
杏の花の蜜を吸いにきたんだろうな。
まだポチポチしか咲いてないけれど、これからどんどん開くから、めじろもたくさん遊びに来るだろう。
ピンクの花と黄緑の小鳥って、すごーく春っぽい。
2時からは打合わせ。
さくさくっと決まって、1時間ほどで終わる。
そしてゲラの直しをしたり、パソコンに向かって過ごす。
今日は風が強いので、洗濯物がすぐに乾いた。
ハンバーグに添えるにんじんのグラッセを煮ながら、原稿を書いていて、みごとに焦がしてしまった。
チリチリと遠くの方から音がして、香ばしい匂いがするけど何だろういい匂い・・と思いながらも、まだ気がつかずに原稿を書いていた私。
「あー!」と走って台所に行き、黒くなったにんじんを見て5秒ほど落ち込んだ。
そしてすぐに、にんじんと鍋に謝った。
自分のことを「だめだなー」とがっかりするのって、自己嫌悪みたいであんまりいいと思わない。ナルシストみたいで。
それより、被害を被ったにんじんと鍋に申し訳ないと思うのだ。
黒いところを切り取って食べたら、焼き芋みたいで甘くておいしかったので、スイセイには何も言わずにだまって出した。
夜ごはんは、ハンバーグきのこソース、にんじんグラッセとほうれん草炒め添え、新玉ねぎとわかめのサラダ(とり皿に梅じょうゆとごま油を入れ、浸けながら食べた)、大根の味噌汁、玄米。
ごはんを食べてから、スイセイが今年初めの事務的な書類を出してきた。
前に起きた事は、どんどん忘れていってしまう私の脳みそ。
「みいはの、普段イメージの世界に住んでるんじゃが(魂が)、今は(現世はたまたま)言葉の世界に旅行をしとるんよ」なんて言う。
それは、私が「ぼんやりさん」という意味だ。
体が希薄で、イメージばっかりで生きているっていう意味。
時々思うのだが、私って、気持ちの動きが激しくて、体がついていかないことがある気がする。

●2004年3月9日(火)快晴、暖かい

昨夜はガーゼのパジャマを着て寝た。
本当はいちど洗濯した方がいいのは分かっているけれど、こういう時の辛抱が私にはできない。
(ガーゼのパジャマだなー)と、何度も思いながら寝た。
そうしたら、とても気持ちよく深々と眠れた。
何か、優しいものに包まれているような夢もみた気がする。
何かって、それはガーゼのパジャマみたいな感触の、人の心使いみたいなものだ。
今日は小春日和。
杏の花が少しだけ咲き始めた。
「ツクピーツクピー」と、澄んだ声が聞こえるのはシジュウカラだ。
姿は見えないが、ひとりで盛んに鳴いている。
雀も負けじとさえずり、飛び回っている。
春だなー。
4時からは打合わせ。
その前に、レシピ書きをやってしまおう。
打合わせが終わってからも、ずっとパソコンに向かって原稿書き。
はっと気がついたら、9時15分前だった。
大急ぎでご飯の支度をする。
夜ごはんは、たらこスパゲッティ、にんじんとレタスのサラダ、れんこんのナンプラー焼き。
にんじんとレタスのサラダは大盛りで、それぞれ一皿ずつ食べた。
「たまにはこういうご飯もええの」と、スイセイは喜んでいました。

●2004年3月8日(月)快晴

11時より「翼の王国」の撮影。
ハワイアンを、だらーっとかけながら。
途中ビールを買いに走る。
もちろん撮影で使う用だが、料理1品のカットなので、ついつい飲んでしまう。
終わってから、本格的に(昼間だから軽くだけど)ビールタイムだ。
あまりに天気がいいし、ハワイアンだからなー。
まだまだ明るいうちに解散となり、スイセイは歯医者、私は街へ買い物に。
本屋やら薬局やら無印やら、あちこち回る。
エスカレーターの鏡を見ると、ぽっと顔が赤くて恥ずかしくなった。
まだ少し酔っぱらっているのだ。
「無印のガーゼのパジャマ、気持ちいいですよー」と、この間丹治君が言っていたのをふと思い出し、買ってきました。
そして、「きょうのできごと」が文庫になっていたので、買ってきて一気に読んだが、おもしろくもつまらなくもなかった。
たぶん私は夢物語みたいにして、小説を読むところがある。
その本の世界に憧れるような、心地良さにぼーっとするような。
「きょうのできごと」の世界は、興味がわかなかったんだろう。
夜ごはんは、魚肉ソーセージ炒め、ほうれん草のバター炒め、鰺のひらき、味噌汁(昨日の芋っこ煮をだしでのばして味噌を入れた〕、玄米。
ソーセージ炒めとほんれん草炒めは、いつもつい組み合わせてしまうメニューだが、スイセイに言われて気がついた。
「家庭科で、オレが初めて作った料理じゃの」。
そういえば、私も小学生の時に作った。
そしてその時に、ものすごくおいしかった。
だからこのメニューは、スイセイも私も大好物なのだ。
夜、ゴミを出しに行く時、杏のぷっくり膨らんだ蕾のシルエットの向こうに月が出ていた。
「倫子ちゃんの月じゃー」と、スイセイ。
ちょっと薄雲がかかって、にじんでいるのだ。

●2004年3月7日(日)晴れ、夕方からすごく寒い

杏、もう少しで咲きそうだ。
しかし夕方買い物に行ったら、風が強くて、ものすごーく寒かった。
やっぱこのぐらいでないと、春が待ち遠しくならないからいいんだけどさ。
昨日はだらだらしたので、日曜日といえど関係なく仕事をする。
本のメニューのまとめだ。
すでに写した料理のポラ(ポラロイドのこと。本番とは別にレイアウト用に撮ってくれる)を切りぬいて、紙に貼ったりして、楽しくまとめる。
子供の頃、チラシ広告のお鍋とか、カルピスとか、食べ物とかの写真を切り抜いて遊んでいたが、今とどこが違うのだろう・・・。
毎週のことだが、サザエさんははずさない。
今日はサザエがちょっと風邪ぎみの声だった。
先週は、ワカメとフネが鼻声であった。
吹き替えの人は、風邪をひいてもやらなければならないんだから、たいへんだ。
というか、「サザエさん」は日常なので、鼻声でもオーケーだし、それがなかなかけっこう生々しいのだ。
夜ごはんは、芋っこ煮(教室の生徒さんの卒業制作のレシピで)、牛ももステーキ(おろし玉ねぎ、酒、しょうゆを煮詰めてソースにする)ゆで辛子菜添え、板麩とねぎの味噌汁、玄米。

●2004年3月6日(土)晴れ

夕方、空があまりに美しくて目が離せない。
刻々と移り変わってゆくので、窓にはりついている。
夕焼けが恐ろしく綺麗なのは、もしや雨でも降ったのだろうか。
私、また寝ぼすけをしていたので、朝と昼の天気が分からないのです。
寝ながらずっと考えていたのは、私の中の純子さんの可能性についてだ。
自分でも知らなかった種みたいなものが、まだまだ自分の中に埋もれているかもなー。
なんて延々思いながら何度も寝た。
さて、こうしてパソコンに向かっているうちにも、どんどん青黒くなって、夜に近づいてゆく空よ。
スイセイは最近、毎日ウォーキングを続けている。
最初は「ウォークド」と言っていたが、最近の言い方は「散歩」に変えたそうだ。
「じゃあの、散歩行ってくるけえ」と、気軽に出掛けて行くようになった。
前は、いちいち自慢してから(いかに毎日続けているかを)おごそかに出掛けていたが。
そして私も、ちょうどスイセイのウォーキングと同じくらい、禁煙している。
吸っていた時は、(なくなったら買いに行かなくちゃ)とか、(ご飯を食べたら吸わなくちゃ)とか、お酒を飲みながらでも(あ、煙草吸うの忘れてた。吸わなきゃ)とかっていつも自分に義務づけていた気がする。
今はそういうことをまったく考えないですむので、ひとつ自由になった気がしている。
いつまで続けられるか分からないけど、調子がいいので、とりあえずはこのまま放っておこう。
夜ごはんは、ニラ、もやし、豚コマのキムチ炒め、大根とハムのサラダ(オイスターソース、しょうゆ、酢、ごま油)、とんぶり納豆、茄子の味噌汁、玄米。
ごはんを食べながら、「あれもついてこれもついて液晶テレビもついている・・ってそういうこと?」というパソコンのコマーシャルをじっと見ていて、「そうゆうこと・・」と低くテレビに答えていたスイセイ。
そのパソコンが欲しいのだそうだ。

●2004年3月5日(金)晴れ、風が強く寒い

今日もまた寒いなー。
そして、風も強いときた。
杏の蕾はどんどんピンクに膨らんでいるけれど。
さて、12時より例のばななさん料理の撮影でした。
うまくいった〜!。いえい!。
とにかく「混ぜごはん」がすごいおいしかった。
暮しの味だ。
何のてらいも気どりもなく、ただただ温かい母の味だ。
こんなのを私が作れるとは・・、と、自分でも驚いた。
だって、普段ではぜったいに私は作らない料理だ。
すぐにコチュジャンとか混ぜちゃったり、何かひと工夫をしてしまいそうだもの。
これは、自分でも新しい展開だと思って興奮している。
うーん。
人々が本当に心から食べたがっている普遍的な味が、私の中からポロリとこぼれてきたことについて、目からウロコだった。
たぶん、私は「アムリタ」の中の純子さんに教わったのだ。
というか、純子さんがのり移っていたのだと思う。
けど100人の読者が、100人の純子さんをイメージするだろうから、完全に私の思い込みなんだけどさ。
「ハネムーン」の釜揚げうどんとか、「野菜スープ」のスープとか、作りたいものがいっぱいあった。
今回の3品のセレクトは、読んでいていかに食べたくなったかですぐに決まったのです。
撮影が終わってからも調子がよく、いつもは嫌いなゲラチェックや、昨日の打合わせのまとめなど、どんどんやってはかどった。
夜ごはんは手抜きメニュー。
昨夜煮込んでおいたキャベツとソーセージのスープに、味噌と牛乳を加えて雑炊にした。
以上。
夜、ばななさんから電話があった。
うっれしー。
今日の撮影の混ぜごはんを、編集さんが届けてくださったのです。

●2004年3月4日(木)曇りのち雨、寒い

ものすごーく寒い。
でも雨が降ると、清水さんの畑の土のことを思い出すので、よかったーとすぐに思う。
2時から打合わせ。
ものすごく細かいメニューまで決まってきた。
こっちの本は、かなりすんなりいきそうだ。
4時半には終わって図書館へ。
10冊借りて帰る。
思い出して、「星の牧場」を借りてきた。
ずいぶん前に読んだけど、今のノリでもういちど浸りたいので。
帰ったら「モエ」(絵本雑誌)が届いていた。
なんと、コロボックル特集で、倫子ちゃんが佐藤さとるさんに会った時の記事が!。
初女さんの取材の翌日に、写真撮りに行くって言ってたやつだ。
今や、コロボックル熱冷めやらずの私なので、とても嬉しい。
そして友人の松成が、桜の木の物語も描いていた。
もうずいぶん前から温めていたお話だ。
こんど絵本にもなるらしい。
これもまたすごーく嬉しかった。
風呂から出たら、ゆっくりと読もう。
夜ごはんは、例のばななさんの試作大会。
「おやじの卵焼き」、これはかなり小説通りの出来だと思う。
甘くて、油っこくて、やけにべったりした感じ。
しょうゆをちょっと垂らして、ご飯にのっけて食べた。
ちょっともたれそうだけど、こういうのを父がたまに作ってくれたら、私は嬉しかったなーという、そういう味。
「純子さんの混ぜごはん」の、具だけ仕込んでおく。
純子さんて、限りなく普通のふんべつを持ったおばさんだけど、いざという時は勇気ある行動をとる、頼りがいのある女性。
そして、あまり料理は得意ではないし、洒落たものは作れないけど、母親か祖母から教わったこの混ぜごはんだけは、何度も作っていて自信がある。
それか、家庭科で習った混ぜごはんを、何度も何度も作っているうちに、ちょっとずつ簡単においしく変化してきて、自分の得意料理になった。
このどちらかだと、私はふんでいる。もちろん私の中でだが。
ふふ。何が入っているかは、「ダ・ヴィンチ」の誌面でおたのしみに。
というわけで、私は元気だ。
早く風呂に入ろう。
新ジャガ、ちくわ、こんにゃく、新玉ねぎの筑前煮、おやじの卵焼き千キャベツ添え、まぐろのブツ切り、わかめの味噌汁、白いご飯。

●2004年3月3日(水)曇り、寒い

最近、急に寒さがもどってきた。
冷えるので5本指くつ下をはいている。
これで体調を壊す人はたくさんいるだろうな。
私は、よく寝ているので元気だが。
今朝、ステンレスの調理台が届いた。
スイセイは嬉しそうに、起きてすぐ組み立てていた。
キャスターつきで、けっこうどっしりと存在感があり、リビングにもなかなか似合う。
これは、こんど本の撮影で使うのです。
ひさびさに洗濯をし、あちこち掃除機もかける。
きれいになったところで、本のためのメニュー出しの続きをやる。
夜ごはんは、豚カツ、新じゃがのフライ、千切りキャベツ、大根と卵(フライの残りの卵。水が混ざっているので、きれいなかき卵になった)の味噌汁、玄米。
新じゃがのフライがとてもおいしかった。下ゆでしてフライにするのだが、皮ごとなのが味があっておいしい。塩と黒こしょうでホクホクと食べた。
今夜から明日にかけて、雪が降るかもしれないそうだ。
早めに風呂に入って、温かくして、本を読みながら寝よう。

●2004年3月2日(火)晴れ

昨日は、本当に楽しかった。
子供たちが元気に遊んでいるというのは、家の中を明るくする。
なんだか、本当に幸せだった。
楽しすぎて、酔いが早く回った感じだった。
せっかくシミズタが来たのに、私はパタンとつぶれて先に寝てしまった。
朝起きたら、テーブルの上はきれいに片づき、お皿も洗ってあって感激する。
クウクウはなくなってしまったけど、クウクウのおかげで出会ったこの子たちって、私の財産だなーと、今日はその想いをずっとかみしめていた。
二日酔いの時って、脳がゆっくりだから、同じことばかりじーっと考えていられる。
しかも、子供まで生まれて・・・なんて、ずっとぐるぐる考えては幸せをかみしめていた。
というわけで、今日は使い物にならないので、仕事は休み。
掃除も洗濯も、なにもかも明日にまわそうと決める。
「アボンリーへの道」は、もう終わっちゃったみたい。
ちょっと淋しいが、夜更かしの悪循環が途切れるから、ほっとしてもいる私。
夜ごはんは、いかの和風カレー、キャベツとにんじんと青じそのコールスロー。

●2004年3月1日(月)雨のち雪のち曇り

マッキーの打合わせについて行く。
こんどマッキーが、アノニマ・スタジオで味噌作り教室をやるので。
マッキーは中期クウクウスタッフで、いちばん最初に子供を産んだ。
今は、2人の子供と漣(小学校の頃から私は知っているんです)と、青梅の方の田舎で暮らしていて、いろんなものを手作りしている。
暮れにも会ったが、会うたびに子供たちがすくすくと成長していて驚く。
今夜は家でご飯を食べることにして、しおりちゃんも呼ぶ。
和楽と、子供らが3人でだんごになって遊んでいるのが、むちゃくちゃ可愛い。
スイセイは床にごろんと寝そべり、子供らに顔をいじられたりしていた。
そんな様子を眺めながら、台所でマッキーとご飯の支度をする楽しさよ。
私は完全におばちゃんになっていた。
ふみさん(漣の母親)も、リーダーも呼ぶ。
ジンとサンが「いせや」で飲んでるというので、呼ぶ。
夜になって永谷(和楽のパパ。クウクウ創立メンバー)も来た。
夜中にシミズタ(サンの奥さん。このホームページのイラスト担当)も来た。
手巻寿司、かぶの柔らか煮、かぶの葉のお浸し、ソーセージいろいろ。



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