2004年6月下

●2004年6月30日(水)雨のち快晴、涼しい風

激しい雨と風の音を頭の外で聞きながら、ずっと寝ていた。
どうやら雨も上がったらしく、雀のさえずりが聞こえてきたので、えいっと起きる。
昨夜は涼しくて、充分眠った感じ。
まっさらな青空に刷毛のような雲、そしてひんやりした風。
これは、天高く馬肥ゆる秋ではないですか。
大雨、大風の翌日って、ほんとうに大気が大掃除されるのだ。
木も、洗い髪をなびかせているみたいに、さっぱりと風にゆれている。
さて、今日は細々としたことをやろう。
具体的な仕事ではないが、仕事のための準備のようなこと。
前々からやらなければと思っていたことだ。
それは、今までの旅行の写真やスライドの整理。
「翼の王国」のこと考えていたら、それがものすごく必要で、大事な資料であることに気がついたので。
夕方、スイセイの散歩について行きながら、農家の野菜をいろいろ(ルッコラ、茄子、ミニトマト、きゅうり)買う。
そして、そのまま明日の撮影の仕入れへ。
帰ってからすぐに夜ごはんの支度をする。
今夜は炊込みごはんの試作。
かぼちゃと生ハムの炊き込みご飯、タイ風照焼きチキン(青じそと香菜をたっぷり刻んでのせた)、ルッコラときゅうりとトマトのサラダ。
炊き込みご飯は、イタリアーンな感じでおいしくできた。
牛乳で炊き込むのをやってみたのだ(もちろん水も混ざっている)。
今、ぼわっとした丸い月が出ています。
「和紙ににじんだような、ちぎれたみたいな月じゃのう」とスイセイが言った。

●2004年6月29日(火)晴れ

11時より撮影。
「いつもの朝ごはん」、ワンカットと簡単なインタビューで12時には終わった。
たまに旅行に出掛けると、時間の感覚がおかしくなるようだ。
私の中では、まる一日がスッコーンとなくなっていた。
つまり、今日が28日のつもりでいたのです。
大阪から帰ったら、次の日は休日だから、ゆっくり休もうと思っていた。
したら、今日が撮影だったというわけ。
それを昨夜寝る前に気がつき、バタバタと支度をした。
今朝も早起きして仕入れに行ったりして。
だけど、おかげですんなり仕事モードにもどれました。
あさってから、怒濤の日々に入るので、今日のうちから準備しておこう。
そして、ばななさんの「海のふた」を、今日はじっくり読むつもり。
昨夜の夜ごはんを書くのを忘れたので、ここに書いておきます。
タコの刺し身、ズッキーニとソーセージの炒めもの、なすと獅子唐の炒め煮、ゴーヤカレー(残り物)、玄米。
午後のいちばん暑い時に買い物に出てしまい、ぐったりして帰ってくる。
シャワーを浴びて、今日2回目の洗濯をした。
「海のふた」、どーっと読み始め、静かに読み終わった。
ちょうど夕方が終わって、夜になりかかる暗さの時に、読み終わった。
何度も何度も涙が出て、出るにまかせてずんずん読み上げた。
気がついたら8時前でした。
夜ごはんを大急ぎで支度する。
鰺の干物、きゅうりとワカメの酢の物、がんもどきの含め煮、納豆、麩と三つ葉の味噌汁、玄米。
玄米はすでに朝炊いてあったので、15分で作った手抜き夜ごはんだった。
風呂上がり、窓から涼しい風がいっぱいに入ってくる。
ベランダに足だけ出し、空を仰いでいると、どうしても波照間のことを思い出してしまう。
雲が流れる夜空と、時々顔を出す明るい月、そしてよく通る風。
きっと「海のふた」を読んだから、海辺の潮風を体が思い出したのだ。

●2004年6月28日(月)曇り

サイン会は無事終わったが、打ち上げで飲みすぎたのと、生理のダブルパンチのため、ホテルでずっと寝ていた。
スイセイは、文句も言わずにずっとテレビを見て待っていてくれた。
3時にチェックアウトをして帰って来る。
大阪の人たちは、皆、なんだかゆっくりだなと思いました。
道を歩くのでも、横断歩道を渡るのでも。
東京の人たちは、セカセカと速足で歩いているのが普通な感じ。
横断歩道の青の時間も、なんだかゆっくりなような気がした。
そして、タクシーの運転手さんも、ホテルのフロントの女の子も、うどん屋の女の子も、駅の人も、ちょっと質問するとぐーっとこっちに近よってきて、とても親身に答えてくれた。
大阪弁もやわらかく、本当に親切。
自分の体調が弱っているから、優しいのが骨身にしみました。
ありがたいことでした。
サイン会に来てくださった方々も、なんだかじわっと温かい感じがして、いちど「うっ・・・」となりました。
サイン会の前は、ちょっとドキドキして緊張していたが、始まってみて私は思い出した。
そうそうサイン会って、楽しいものだったんだ。
私の本を買ってくださった人の顔が見れて、直接お礼が言えるというのは、とってもありがたいことだと思う。

●2004年6月27日(日)薄曇り、わりと涼しい

早起きしました。
これから大阪に向かいます。
サイン会です。

●2004年6月26日(土)薄曇り、風がぜんぜんない

昨夜はなかなか眠れなくて辛かった。
眠くてたまらないのに、ふーっとまどろんだ途端、体のどこかにゆり起こされるのだ。
体があまりにこわばっていて、起こされる感じ。何度も何度も。
それは1箇所のどこかで、どこだろう?と感じていたら、下っ腹だった。
真っ暗な中でストレッチをしたり、足を高く上げてみたりいろいろしてみたが、ぜんぜんだめだった。
それでためしに、タイガーバームを鼻のつけ根と鼻の穴の近くに塗ってみたら、これがバッチリでした。
スースーする強い匂いに気が持っていかれ、するっと眠れた。
それにしても、この2日間のスカパー撮影で、気持ちも頭も体も使い果たした・・という感じ。
だから今日はゆっくりしよう。
と思いながらも、山ほどの洗濯をする。
明日は朝から大阪に出掛ける。スイセイもいっしょ。
サイン会をして、終わってから、お世話になった(これからも)アノニマ・スタジオの皆とおいしいごはんを食べる。
帰って来るのは月曜日だから、このホームページのアップは帰ってからになる予定。
楽しみに待ってくださっている皆さま、申し訳ないです。
夕方、クーラーをつけて窓を開け、干したての温かい布団の上に寝ぞべって、「銀のいす」(ナルニア国ものがたり4。スイセイが図書館のリサイクルでもらってきてくれた)を読みふける。
夜ごはんは、ゴーヤ(清水農園の)カレー、キャベツとレタスのコールスロー。

●2004年6月25日(金)雨のち曇り

スカパーの撮影2日目。
朝、スイセイが起こしてくれる。
二日酔い・・・ていうか、まだ酔っぱらっている感じだが、今日は10時集合なので頑張って起きる。
スイセイは、布団をたたんで掃除機もかけてくれた。
私がやるよりずっと丁寧に、物をどかしながら隅々まできちんと。
私は、じっくりと酔いを水に流すようにイメージしながら風呂に浸かっていただけだ。
化粧をして、着替えて、髪の毛を結っただけ。
「今朝こそ、カップヌードルを食べよう思ったのに」と、スイセイが言う。
「ケサコソ」と言った時、フランス語みたいに聞こえた。
「ケスクセ?」って感じ。
そう、昨夜私は酔っ払いながら必死で風呂に入り、上がってから猛烈にお腹が空いて、カップヌードルを食べたのだ。
清水さんのおいしい新鮮な野菜をたんまり食べたその口で、カップヌードルのおいしさに感動しながら、よく味わって食べた。
窓を開けて、ベランダに足を出しながら、スープも、具も、麺も、なんておいしいんだろうと思いながら食べた。
撮影は6時くらいに全部終わりました。
最後はインタビューで、ディレクターの野副さんと斎藤さんにいろいろ聞かれた。
野副さんは、私がひと言何かについて喋ると、どんどんつっこんで聞いてくる。
そのつっこむ話の内容が、私が自分でも思う、いちばん高山らしい考え方や気持ちのことで、そこを、野副さんはおもしろがってくれているのだな・・というのが伝わってくる。
だから、私もどんどん熱くなってきて、すごくいろいろなことを話してしまった。
正直な気持ちを、それにぴったりくる言葉を捜しながら、一生懸命話した。
だから、気がついたら2時間近くインタビューされていてびっくりしました。
野副さんて、私より10歳以上年下だし、千原兄弟の弟の方にそっくりで、撮影中もおちゃらかばっかり、いい加減なことばっかり言っているような人なんだけど、毎回私は思う。
インタビューの時、製作者としてのすごく真面目な、誠実な野副さんが出てくるなと思う。
それに誘われて、私も自分の気持ちを言葉にすることに、どんどん真面目になってゆくという感じだ。
終わってから、やられちゃったなーって、いつも思うのだ。
ふー。
泡盛と黒砂糖と氷砂糖で漬けたという梅酒を、ヒラリンが小さな瓶に入れて持ってきてくれた。
撮影が終わって、スイセイと3人で小さく乾杯。
氷も何も入れずに、室温でちょっと温まった梅酒は、リキュールのようにおいしいものでした。
3人とも、2日間の撮影を頑張ってやり終え、ふーっという気持ちに、じんわり沁みてくるような味だった。
「お疲れさーん」と、梅酒に言われているような味。
ぐっとくたびれ、8時に倒れ込むようにして寝る。
10時に目覚ましで起きて、「ホームドラマ!」を見る。
最終回でした。またけっこう泣いてしまった。
夜ごはんは、宮古そば(川原さんのお土産。宮古島に行っていたらしい)、冷やしトマト(清水農園の)。

●2004年6月24日(木)快晴

スカパー撮影初日。
9時に清水農園に集合し、夏野菜の収穫の場面など撮る。
畑は、この前行った時とまたぜんぜん違って、夏本番の風景になっていた。
きゅうりの棚の下はワラがしいてあって、青々した葉っぱと黄色い花がアーチになってからんでいる。
「夏すずみ」というきゅうりの品種名といい、そのアーチの奥行きといい、なんて綺麗なんだろう。
トゲトゲのきゅうりがぶら下がっているのを、ハサミでもいでゆく。
ハサミを入れる時、パンッと跳ねるような力が返ってきた。
それは水分をいっぱい湛えた、きゅうりのみずみずしい生命力なんだろうな。
清水さんはもぎたてのきゅうりを半分に割って、私に食べさせてくれた。
樹液じゃないけど、きゅうり液みたいなのが唇につく感じ。
味が濃く、ぎっしりつまっている味。
「ビール飲みたくなりますよね」と私が言ったら、カメラの山本さんも、ディレクターの野副さんも、「うんうんうんうん」と思いっきり同意していた。
帰ってから、収穫した野菜を使って料理を作るのを収録。
6時には終わってどーっとくたびれた。
日に焼けたせいもあるだろうが、私は緊張して上がってしまったんです。
終わってから、皆でビールを飲んで軽く打ち上げ。
つまみは清水さんの野菜の数々を、おおざっぱに、簡単に料理したもの。
8時くらいには解散になったが、それから川原さんが来て、けっきょく12時まで飲んでしまった。
それでもテンションが下がらず、スイセイと2時くらいまで飲む。

●2004年6月23日(水)快晴、暑い

今日もまた素晴らしい天気。
シーツやズックを洗った。
干す時に、ベランダのすのこが足の裏に温かく感じる。
ゆうべも5本指靴下をはいて寝たんだけど、まだ冷えているのだ。
明日からスカパーの収録なので、美容院に行く。
帰ってからは次の撮影のレシピ書き。
まだ先だけど、今週は大阪に行ったり(サイン会)、ラジオ局に行ったり(インタビュー)、バタバタしそうなので。
なんとなく、あんまり気分が外向きでないんだけど、大丈夫なんだろうか私は。
もしかして夏バテか?。
夜ごはんは、えびの刺し身、豚タン塩焼き(万能ねぎを焼いて添えた)、小松菜と油揚げの煮浸し、ワカメのポン酢和え、しじみの味噌汁、玄米。
ご飯を食べながら、ちょっとだけスイセイと言い争いになってしまった。
明日の収録で私はナーバスになっているのは分かっているが、何もご飯の時にそれが爆発しなくても・・。
しじみとか、実が大きくてすごくおいしかったのに。
食べ終わっても、ごはんを食べた気がしないまま風呂に入り、湯船の中で反省する。
しじみやえびの刺し身に申し訳なく思う。
さ、今夜は早く寝よう。

●2004年6月22日(火)快晴、風強し

カラッとさわやか、すごくいい天気。
けど、昨日の撮影でずっとクーラーをつけていたからか、足の裏が冷たい。
5本指のくつ下を履いて過ごしています。
洗濯物を干す時に、ベランダのすのこが温かくて、足の裏がいい感じだった。
干し終わっても、しばらく立っていた。
お昼に辛い焼き飯を、残った玄米で作る。
スパムとピーマンと玉ねぎでチキンライスみたいなのを作ろうと思ったんだけど、サンバルソースで辛くした。目玉焼きと生の玉ねぎを添えて。
スイセイは、「これはインドのピラフの味よのー」と言っていた。
私はナシゴレンみたいだと思って作ったけど、確かに、インドでもこんな感じのを食べた気がする カレー味ではなくて、ソースっぽい辛いチャーハン。
目玉焼きも紫玉ねぎものっていたような・・・。
午後からは、台所の掃除。
壁のタイルや、鍋のフタやら鍋も磨いた。
クレンザーを洗い流す時、油の膜がとれて、1枚痩せたようにスッキリさわやか。
水ですすぎをやると、するっとして気持ち良かった。
汗をかきかき掃除をして、あちこちがこざっぱりすると、暑さも吹き飛ぶ。
夏に掃除をするのって、なかなかいいものかも。
夜ごはんは、いかと豚肉と長ねぎの炒め物、大根とこんにゃくとれんこんの薄味煮(昨夜の残り。スイセイはこれをあまり食べない。好きではないのだ。もう作らないようにしよう)、明太子、白菜漬け、じゃが芋と青じその味噌汁、玄米。

●2004年6月21日(月)台風。小雨だったのが、午後から大荒れ

12時から撮影。
今日は、久家さんのアシスタントをずっとやっていた都ちゃんがカメラマン。
そして都ちゃんのアシスタントは、なんとちよじだった。
昨日別件のメールがきて、「明日みいに会うよ」と書いてあったけど、何のことだか分からなかった。
久家さんのアシスタント見習いをちよじはやっているのだから、そうかー、そんなことがあってもおかしくないよな。
そのうち、ちよじがカメラマンで家に来たりすることもあるわけだ。
ぜんぜん味見ができなかったふたりのために、お弁当にしてやる。
お茶をすすめてもぜったい飲まないし、カメラの機材を山ほど担いで、むだ口をいっさいきかずに帰って行ったちよじ。
うーん、母の気持ちだ。
4時からは打ち合わせ。
1時間ほどで終わりました。
外は雨も風もものすごくて、向こうが見えないほど。
夕方、毛布にくるまってピタゴラ・スイッチを見ていたら、「プ一一」と遠くから聞こえてきた。豆腐屋さんだ。
雨は止んだみたいだけど、木は大揺れに揺れて、なぎ倒しそうな風が吹き荒れている。
こんな台風の日にも、いつものように働いている豆腐屋さん。
おじさんの顔が、ぽわーんと浮かんでくる。
夜ごはんは、塩鮭、とろろめ(この間実家に帰った時、スーパーで買った。子供の頃は「あらめ」と呼んでいたが、水でもどしてきざみ、納豆みたいにねぎを入れてかき混ぜ、ご飯にのっけて食べる)、大根とこんにゃくとれんこんの煮物、スパムとキャベツの炒め物、油揚げの味噌汁、玄米。



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