2004年7月上

●2004年7月10日(土)曇り、風強し

(なんだ雨降ってないじゃん)と思って起き、まず洗濯をする。
風が強くて洗濯物が飛びそうだ。
窓を開け放していたら、部屋じゅうの紙がパタパタとはためく。
壁に貼ってあるメモがいっせいにはためくのを見ると、タルコフスキーの映画を思い出す。
自然にさらされているような・・・うっすらと死の予感さえする。
子供だったら、きっと怖がるんではないかな。
今、大粒の雨が落ちてきました。
大慌てで布団と洗濯物をとりこむ。
久しぶりに、土がめくれるみたいな匂いもする。
風が強く、雨が吹き込んでくるので仕方なく窓を閉める。
原稿を書き上げてお送りし、次回の撮影のレシピ書きもやる。
夜ごはんは、豚のしょうが焼き(粉ふき芋、いんげん炒め添え)、レタスとにんじんのサラダ、わかめとねぎのお清し、玄米。

●2004年7月9日(金)快晴、猛暑

暑いけれど、昨日よりはましだ。
昨夜は12時前にばったり寝てしまったので、今朝は爽やかに起きる。
そして洗濯。
お昼にスイセイとそうめんを食べていたら、やけにカラスが鳴き叫んでいる。
鼻にかかった声や、巻き舌みたいなカラスもいる。
カラスって、なんでこんなに暑っくるしいのだろう。
おととい、昨日と、野菜ばっかりの撮影だったので、お腹の調子がいい。
スイセイもそうだったらしく、「料理が薬みたいじゃった」と言っていた。
あの暑さの中でもりもり食べれる料理は、ほんとに体に効く感じだった。
午後からは「翼の王国」の原稿を書き始める。
仕事場だけクーラーを入れて、部屋から出るたびにムワーンとしながら。
夕方までにシャワーを3回も浴びた。
夜ごはんは、ピーマンとソーセージ炒め、鰺の干物、冷やしトマト、たたききゅり、納豆(私はみょうが、しそ、ねぎ入り、スイセイはねぎと辛子だけ)、里芋とかぼちゃの味噌汁、玄米。
ごはんを食べながら、曽我さんがジエンキンスさんの唇に唇を押しつけ、ぐっとキスをして抱きつくテレビを見る。何度も見て、そのたんびに涙が出る。
スイセイもティッシュで目を拭いていた。
天気予報によると、明日は雨が降るそうだ。

●2004年7月8日(木)快晴、猛暑

今日もまた、11時から本の撮影。
昨日よりさらに暑く、夏本番という感じだ。
36度とかあるんではないだろうか。
クーラーをつけてもぜんぜん効かないので、窓を開け、だらだらと汗をかきながら、首にタオルを巻いてガンガン料理を作る。
赤澤さんが持ってきてくれたスピッツのCDをかけながら。
夏野菜はどうやって料理してもおいしくでき、この暑さにぴったりの料理だから、作ったものは、あっと言う間に皆が、すごい食べっぷりで片づけてくれる。
昨日にも増してそう思ったが、なんと後腐れのない撮影だろう。
スピッツの「ロビンソン」を、こんどカラオケで歌いたい・・・というか、人が歌っているのを聞いて、さびのところを合唱したいものだ。
撮影は4時にはぜんぶ終わり、次回の日どりを決める。
こんど皆がそろうのは秋。秋野菜を使った料理を作るのだ。
5時からはまた、教育テレビの夕方に突入。
夜ごはんは撮影の残りと昨夜の残り(きんぴら、水菜のおひたし、ゴーヤといんげんのしょうゆ炒め煮、ゴーヤカレー、玄米)。
そういえば撮影の時、トッピングのみょうがと青じその千切りをどうしようかと、土壇場で悩んでいたら、みどりちゃんが「味で決めたら?」と、さりげなく言った。
それでハッと目が覚めたというわけ。
その時私の頭は、ビジュアルに傾いていた。
本当においしい料理を作るのが私の仕事であって、おいしそうに見せる誌面作りは私のやるべきことじゃない。
写真や、ページのデザインのことなど、本当は私はぜんぜん分からないのだ。
経験だけで、ちょっと分かったような気分になっているのだ。
これって、本当に今週のテーマだったな。

●2004年7月7日(水)晴れ、ひたすら暑い

11時から本の撮影。
せっかく有山君も来たのに、料理を作り始めたのが遅くて、たたききゅうりしか食べてもらえなかった。
有山君は、本当にお忙しいのだ。
忙しいの度合いが、私なんかとは違うのだ。
だが、ちょっとすねた気持ちになった。
だってお父さんはいつだって忙しいんだもの・・・・娘の気分だ。
今日もスイセイは、新居さんのアシスタントをしていた。
ポラ(ロイド)の紙をはがすのも、距離を計るのも、いっちょまえにやっていた。
盛りつけた器をみどりちゃんに手渡す時、「うわ〜、いいねえ〜」と腹の底から褒めてくれる。
同時にスタッフ皆が集まってきて、歓声が上がる。
その声に私は高揚し、余計なものがはがれて、どんどんダイナミックになってゆく。
夏野菜のぶりぶりしたのを買ってきて、この蒸し暑い日にサッサカと料理し、カメラの前にドンをくと、新居さんがバシッと勢いよく撮ってくれる。
そして、「おいしい〜!」と言い合いながらムシャムシャ食べる。
ほんとの季節を感じながら、野菜を触り、買い、作り、写し、食べる。
これは、なんと贅沢な撮影だろう。
こういう現場全体の勢いって、魂みたいなものだから、ぜったいに本になった時に映り込んでいるはずだ。
すごい幸せなことをやらせてもらっているなーと、丹治君をはじめ、スタッフ皆に感謝の気持ち。
4時半には終わり、「また明日〜」と言い合いながら解散。
赤澤さんと別件の打ち合わせも終え、私は教育テレビの夕方の世界へ。
「ひとりでできるもん」「えほん(ひとりのナレーターがいろんな役の声を全部やるのがおもしろい。今週は小林聡美がやっている。」「ピタゴラスイッチ」「にほんごであそぼ」「ゆうがたクインテッド」「おじゃる丸」を、とりこんだ布団の上に寝ころんだままだらだらと見る。
窓をいっぱいに開け、扇風機をまわして。
まだまだ蒸し暑いけど、空はだんだん薄暗くなってゆく。
そして、そのまま昼寝だ。
夜ごはんは、さんまの干物、ごぼうとにんじんのきんぴら、水菜と三つ葉と油揚げのお浸し、かき玉汁、玄米。
「はぐれ刑事、純情派」がまた始まった。
藤田まことと、婦人警官のおばちゃんが私は好き。
9時からスイセイと楽しみに見る。
けっこういい場面でスイセイが「ブハッ!」とおならをぶっぱなした。
ブとバの間みたいなブの音だ。
すごく臭いし、わざとみたいにやったので、「失礼とか、すまんとか言いながらしてほしい」と私は怒った。
それからは、おならをするたんびに「失礼!」と言うけれど、何度もするからけっきょくすごくうるさくて、「やっぱり何も言わないで」とお願いする。
テレビでは、もうひとつの事件が解決しないまま、予告編となった。
来週がまた楽しみだ。

●2004年7月6日(火)晴れ、蒸し暑い

1時から、パルコのフリーペーパーのインタビュー。
3時からは、打ち合わせ。
その間にレシピ書き。
夕方、ちょっと涼しくなってきた頃に、明日の撮影の仕入れに出掛け、ぶりぶりの夏野菜をたっぷり買って帰る。
ヒラリンは今日、清水農園に行って、とうもろこしをもいできた。
そのおすそ分けを、夕方届けてくれる。
今日の2時くらいに採ったとうもろこしを、7時くらいに茹でて、ふたりで半分ずつ食べた。
とうもろこしの採りたてのおいしさについて、話で聞いてはいたが、ほんとうに、ここまでおいしいとは思っていなかった・・・という旨さだった。
芯からぷりっとして甘く、ひと粒ひと粒に弾みがある。
食べると、元気がのり移ってくる感じ。
昨日、図書館で借りた北原白秋の「やさい」という詩の中で、気に入ったところをここに書きます。
「地面のしたからころげでた やさいのにおいはすばらしい・・・・きゅうりの青いぼ、なすのへた、とても、もぎたて、むずがゆい・・・・サラダと青ねぎ、夏だいこん、朝からぷんぷんにおいます。」 夏野菜礼賛の詩だ。
夜ごはんを作る気持ちが、どうしても沸いてこないので、散歩から帰って来たシャワーを浴びたてのスイセイを誘って、近所のおいしい蕎麦屋に行く。
ビールを2本飲んで、蕎麦がき、だし巻き卵、天せいろ(私)、ざる(スイセイ)。
ほろ酔いで、気分よくてくてく帰って来ました。
さー、明日からまた本の撮影が始まる。
ふんどしの紐をきゅっと締めて、自分の料理を作ろう。

●2004年7月5日(月)曇りのち晴れ、蒸し暑い

12時から「翼の王国」の撮影。
桃ちゃんが「すいか」のビデオを貸してくださった。
うわーい。
2時からはSBSラジオ(静岡放送)の電話インタビュー。
そして3時から、ハナコ・ウエストという雑誌のインタビュー。
「日々ごはん」についてです。
明日もパルコのフリーペーパーのインタビューがある。
「Lee」が届いて、私がやったカレーのページを見ていたら、スイセイが「今夜はカレーにしての」と言う。
撮影の時においしかったのを、思い出したらしい。
それにしても、長尾さんと私の料理の違いは歴然だ。
なんか私の料理って、いつの間にかどんどん庶民ぽくなっている。
どんくさいなー、でもおいしそうだなー、と自分でも思う。
夕方、図書館に行っていろいろ借りてきた。
カレーを煮込みながら、風の通る畳の部屋で、寝転がって読書タイムだ。
夜ごはんは、米茄子とズッキーニとにんじんのチキンカレー、水菜とにんじんとトマトのサラダ(にんにく醤油マヨネーズ)。
米茄子って、あんがいカレーに合うことを発見した。
どうも米茄子って油が染みないとおいしくないと思い込んでいたが、大きく切ってざっと炒め、軽く煮込んだだけで、とろりとおいしくなった。
ズッキーニとのくみ合わせも、夏っぽいカレーになりました。
食べ終わって、また本の続きを読んでいるうちにパタッと寝てしまう。
2時間くらい熟睡してしまった。

●2004年7月4日(日)晴れ、涼しい

やっぱり二日酔い。
昨日はサイン会が終わって、打ち上げでおいしい和食をいただき、その後みどりちゃんの新居に遊びに行ったのです。
前の家も好きだったけど、今度の家もみどりちゃんらしくて、とてもいい感じだった。
6階の窓からは夜景が見渡せ、風がよく通り、都会なのに落ち着く感じ。
なんか強いものに守られているっていう安心な感じがしたのは、古い建物だからだろうか。
朝、布団の中で、昨日いただいたファンレターやアンケートを読み、ちょっと涙ぐむ。
名古屋から来てくれた人もいたみたいで、ほんとうに、こんな私なんかのところにわざわざ会いに来ていただいて、もったいないような気持ちになった。
サイン会など、一生のうちでいちどだけやればもう充分だ。
明日から、また撮影やらインタビューやらいろいろ続くのだけど、今日は何もやらずにボーッと過ごしたい気分。
明日の撮影用にとりがらスープをとりながら、ソファーに寝転がって、ひたすらマンガを読んでいます。
夜ごはんは、いかとズッキーニとしいたけの炒め物、ソーセージ炒め、クレソンと小松菜のおひたし(しらすのっけ)、かき卵のスープ(とりガラスープで)、玄米。
久しぶりにごはんらしいものを作って食べた気がする。

●2004年7月3日(土)カラリとした晴れ

昨夜は11時には寝たので、今朝は爽やかに起きる。
なんか、新しい朝という感じだ。
昨夜、斎藤君と話していて、なんだか私は最近のぼさっとしたモヤモヤが落ちたような気がする。
ノラ・ジョーンズの新しいのを聞きながら、洗濯機を回しているところ。
さーて、これからひと仕事して、さわやかにサイン会に行って来よう。

●2004年7月2日(金)晴れ

今夜は、「斎藤く〜〜ん!」とそれだけ言いたい。
ラブコールだ。
私は、何も考えずに、自分の料理だけを作ろう。
今は酔っぱらっているが、たっぷり眠って、明日のサイン会に備えよう。
夜ごはんは今日はなし。

●2004年7月1日(木)曇りのち晴れ、涼しい

11時より撮影。
のんびりと心地よい、天然生活の撮影でした。
ご飯が炊けるまでの間、みどりちゃんは畳の部屋で本気で昼寝。
私と赤澤さんは、別件の打ち合わせ。
それぞれが好きに過ごす、風通る午後だ。
「人の撮影で、しかも仕事なのに、仕事の疲れが取れるってどういうことなんだろうねー」なんてみどりちゃんは言っていたが、家の撮影でくつろいでくれたら、私は本望だ。
おいしいご飯もあるしね。
4時過ぎに終わり、「じゃあまた明日ね〜」と帰って行った。
「ごちそうさまでした〜」と、編集の中野さんはおっしゃっていた。
明日もまた同じメンバーで撮影だ。
「じゃあまた明日〜」は、いちばん好きな挨拶かも。
また、明日も会える気兼ねのない仕事仲間たち。
クウクウの時も、よくそう思ったものだ。
ゲラチェックをささっとやって、明日の仕入れに行く。
なんかこの頃、急激に陽が短くなったような気がする。
このあいだまで7時でもまだ明るかったのに・・・気のせいではないよな。
今日は、ばななさんの「こんにちわ!赤ちゃん」が送られてきた。
うわーい。
早く風呂に入って、布団の中で読もう。
夜ごはんは、帆立と豆腐と小松菜の和風あんかけ煮、いろいろきのこの煮浸し、以上。
それと、撮影の残りの炊込みご飯をおにぎりにしたもの(スイセイだけ)。
最近、料理を作っていて思うんだが、たとえばお浸しをしようとして、ざるに上げた菜っ葉をしぼって盛りつける。その時に、ざるに残ったちょっとの野菜までもきれいに取って、残らずちゃんと盛りつけている自分。
クウクウの頃は、大忙しで盛りつけをやっていたし、見た目が大事だったから、そんなもの捨ててしまっていた。
そういうことを平気でやっていた頃の自分て、今とは違うものを見ていたんだなーと思う。
料理をしていて手間どることが、たいせつな時間のような気さえする今日この頃だ。



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