2004年10月中

●2004年10月20日(水)雨、夕方から台風

12時より撮影。
鍋ものが、ぴったしの寒さだった。
3時には終わり、だらだらと仕事をする。
スイセイは、新作の発明品の実験をずっとやっている。
私は畳の部屋で本の案を練ったり、テレビを見たりしていた。
本当は今日、みどりちゃんの所で夕方から打ち合わせだったんだけど、台風がすごそうだからキャンセルさせてもらった。
なので、雨の日の家の中だ。
電気ストーブをつけながら、ミルクコーヒーとビスケットだ。
明日も撮影だけど、昼間のうちに仕込みをしたし、インタビューだから気が楽。
夜ごはんは、藤原さんが持ってきてくれたおにぎり(スイセイ)と、撮影の残りの鍋もののおじや(私)、昨夜のパクチョイ炒めに豚肉と白菜を加えて、中華丼風にした。
今は、それほど雨も風も強くはないけれど、これから大荒れになるんだろうか。
だけど、思っていたよりも、台風は弱まっているんではないだろうか・・・・と、清水さんの畑のことを考え、うーんと、最後の念力を送ったりしている。

●2004年10月19日(火)ずっと雨

昨日清水さんに、「台風が直撃しないように拝んでいてください」と言われたので、気にかけていたが、どうやら確実にじわじわと近づいているらしい。
せっかく巻き始めた小さいキャベツや、「小房に分ける」とレシピによく書いてある、あの小房よりも、もっと小さいブロッコリーの花芽は、豪雨で根腐れし、成長が止まったり病気になってしまうのだそうだ。
うーん。
自然界の恩恵をもらいながらの露地栽培だけど、もちろん良いことばかりではなく、最悪のことも引き受けなければならない。
今年の台風の回数は、本当に異常事態だそうだ。
「よく、畑で叫びたくなりますよ」と、清水さんはあきらめ笑いみたいな顔をして言っていらした。
大変だけど、眉間に皴を寄せたって始まらないのだ。
さて今日は、朝ごはんを食べてから、ずっとパソコンまわりの仕事をしていた。
今週は、4日も撮影を入れてしまい、頭の中がバタバタと忙しくて、鼻のつけ根がツーンとするほど。
こんなことをしていてはダメになる・・・と、私は思う。
夕方からしばし休憩して教育テレビの世界に入るが、どうも身が入らない。
夏の間は、ほんとうに暇だった。
心から、夕方のテレビを味わって、「おじゃる丸」に涙をこぼしたりしていた。
そして、雨の中を明日の撮影用の買い物へ。
帰って来たら、夜ごはんの支度だ。
ごはんの支度をしながら、息をとめて料理をしている自分に、最近よく気がつく。
すぐにスーハーと深呼吸するけれど、時間に追われて料理すると、私はこうなるのだ。
「ゆっくり、ゆっくり」と、初女さんの声を思い出してみるけど、すぐにまた息をとめてはスーハーしている自分。
だけど今日は昼間、スイセイとストーブを出して冬支度をしたな。
そして、網戸ごしの雨ざらしのベランダが綺麗だったので、写真の撮りっこもした。
スイセイも忙しいらしく、部屋で何かをずっと作っている毎日だ。
トイレに行くついでに覗いたら、「新しいのんを作っとるんじゃから、みいはまだ見ちゃだめ!」と言って何かを隠し、背中をこっちに向けていた。
何を作っているのだろう。
さぁさ、私は仕事、仕事。
夜ごはんは、中華そば(自家製焼き豚入り)、ゆで餃子(この間作ったのを冷凍しておいた)、卵とパクチョイの塩炒め。

●2004年10月18日(月)快晴

朝から洗濯大会。
そして仕入れにも行き、11時から撮影。
さくさくと進んで2時に終わったので、ヒラリンと自転車をこいで清水農園へ行く。
三鷹駅の向こう側に渡ると、だんだんに景色が移り変わり、畑が増えてきたなと思ったら、いきなり土の匂いがした場所があった。
私が先頭を走っていたのに、「土の匂いだ!」とヒラリンが後ろで叫んで、私もハッと気がついた。
清水農園は今、何本もある次郎柿がまっ盛りで、清水さんは柿もぎの最中だった。
「熊ではありませんよー」なんて言って顔を出した清水さんは、まさに木の枝に隠れている熊そっくりだった。
そして、清水さんの畑は、ものすごい様変わりしていた。
前回来た時は、夏野菜がそろそろ終わりの頃で、とうもろこしと枝豆を片づけたまっさらの畑が、一面に広がっていた。
茄子だけはまだあったけど、きゅうりもトマトもそろそろ終わりで、葉っぱがずいぶん枯れ初めていた。
ブロッコリーはようやく芽が出て、ハウスの中でスプラウトの状態だった。
それが畑に移され、しっかり肉厚の葉が大きく育って、上からのぞくと小さい花芽がいじらしくできていた。
里芋、ブロッコリー、カリフラワー、大根、蕪、京菜、キャベツ、パクチョイ、香菜、春菊、ほうれん草、白菜、ねぎと勢ぞろいだ。
茄子だけはまだ残っていた。
椎茸小屋の前に、柑橘類がいろいろ(スダチ、カボス、柚子など)実っていて、「それこそもぎたての椎茸を軽く焼いて、きゅっとスダチを絞って食ったらサイコーだよな」と、清水さんが言った時、(あー、もう1年が経ったんだな)とつくづく感じ入り、ちょっと涙がにじんだ。
去年、スカパーの収録で私は初めてここに来て、清水さんにこの場所でカボスを食べさせてもらった。
その時に、今日とまったく同じことを清水さんが言い、そのあぶった椎茸の味が口の中いっぱいになって、目尻に涙がたまったものだ。
春菊、ほうれん草、茄子、米茄子、パクチョイ、香菜、大根、青唐辛子を買って、石榴とカボスをいただき、自転車のカゴをいっぱいにあふれさせて、夕方の道を帰って来る。
子供らが帰る道、買い物帰りのお母さんが通る道、所々の家から夕ごはんの匂いがしていました。
「きんぴらごぼう!」「チキンライスかオムライス!」「いや?ハンバーグかも」「干物焼いてる」とかって、ヒラリンと言い合いながら。
空気が冷たくて、目の縁が乾いて痛くなる。
あちこち紅葉している中、キウイのでっかいのが鈴なりにぶら下がっていた。
「プリッとして、はじけそうな、プッツンプッツンですねー」とヒラリンが言うので、(金玉みたい・・)と秘かに思っていた私は、爆笑した。
夜ごはんは、海老と白菜のタイ風あんかけ(清水さんの香菜たっぷりと、青唐辛子で)、ほうれん草と春菊(清水さんの)とベーコンのバター炒め、焼き茄子、玄米。
小さいけれど、焼き茄子がとても甘くて濃い味だった。
清水さんのところの、今年最後の茄子なのだ。

●2004年10月17日(日)快晴

昨夜は、タクシーの中で吐いてしまった。
持参のビニール袋に。
ヒラリンは、感情に溺れやすい困った姉の面倒を、献身的にみてくれた。
それに感動して、また涙する私。
今朝は2時に起きました。
顔も洗わずに寝たので、まずは風呂に入る。
体重は、1キロ半も減っていた。
ものすごく腹が減って、体が震えるほどだったので、風呂上がりの裸のままでビスケットをむさぼり食った。
そのおいしいこと。
体の中がくたびれているので、なんとなく、だらだらと布団の中で過ごす。
牧野さんが送ってくださった『四月と十月』を、じっくり読み込みながら。
牧野さんが取材した立花君の記事に感動し、また胸がいっぱいになる。
牧野さんの文章って、落ち着いていてとても分かりやすいし、今までの誰よりも立花君の身辺を誠実な態度で観察し、言葉を選び、書き上げた記事だと思う。
たぶん、ものすごく時間をかけて練り上げられたような気がする。
牧野さんも、立花君も、良い仕事をしているなーと、誇らしく嬉しい気持ちになった。
夜ごはんは、ハウスバーモントカレーの甘口と、コールスロー。

●2004年10月16日(土)曇り

晴れだとばかり期待していたので、朝起きて、うす暗い気持ちに。
夢もよくないものだったし・・・。
何人もの知らない人たちに、嫌われる夢だった。
出掛けに、寝ぼけ顔のスイセイから、「ほいじゃが楽しいと思うで」とひとこと言われ、元気に出掛けました。
ムーバスは空いていたので、運転手のおじさんがくしゃみをして(マイクごしに)、車内中に響いていた。
誰も何も言わずに揺られている、のどかなムーバスよ。
1時から、アノニマ・スタジオで「すり鉢教室」。
16人の生徒さんが、ぐるりとキッチンをかこんで、餃子の皮を練ったり、伸ばしたり、包んだり。
丹治君はビデオ撮影をしていたが、その景色を見ながら、ちょっと泣きそうになったんだそうだ。
こういうことを、自分の開いた場所でやることが夢だったから。
アノニマというのは、無名の、とか匿名の、という意味があるそうです。
良いものも悪いものも、日常的に味わっている市井の人ほど、本当の暮しのエキスパートさんだと思う。
私たちは本を作るのが仕事で、ともすると創作の方ばかりに走りがちだが、そういう方々の実際の声を身近に聞いてみたい。
実際というのは、強いことだなーと、今日やってみて思った。
なんだか、私も久しぶりに本当に楽しかった。
人って、いろいろなエネルギーを出すから、そういう場に自分をさらして、人息の中にもまれることが、とても興奮したし、感動もした。
てなわけで、おつかれさーんと軽く打ち上げのつもりが、南ちゃん(アノニマのアルバイトさん)がビールをたくさん買って来てくれたので、どんどん本格的に飲み初めてしまい、薦められるまま赤ワインも飲んで、そのうちに私はかなり爆酔してしまった。
量はそんなに飲んでないんだけどな・・・。

●2004年10月15日(金)秋晴れ

ひさしぶりの素晴らしい天気。
朝、目が覚めた時に洗濯機を回し、起きてからもう1回まわす。
3時から、アノニマ・スタジオへ明日の「すり鉢教室」の準備に、ヒラリンと行く。
明日も晴れらしいのが、とっても嬉しい。
さて、どうなることやら・・・と、私はのんびり構えているが、何しろたのしみなことだから、きっといい時間になるだろう。
電車で帰って来る時、いただいた「日々ごはん」の読書カードを読んで、ぐっと涙をこらえることが2回ほどあった。
料理をするのが重たかったり、苦手だったり、食べることが面倒だったりしていた人が、「日々ごはん」を読んだことで気持ちがらくちんになって、なんだか料理って楽しいことなんだなーって思えるようになった・・・・というメッセージが、何よりも嬉しかった。
拒食症で苦しんでいる人が、田舎のおばさんから送られてきた野菜を、おいしく食べられた!とか。
うーん、すごいことだな。
私がすごいってことではなくて、読んでくれた人が言葉を吸いとるエネルギーと、心が動くエネルギーがすごいと感じるのだ。
感動だ。
私もがんばろう。
ロンロンで、牛カルビ、黄ニラ、しいたけ、あさり、めかぶなど、撮影用ではないスイセイとのごはんのための材料を、いろいろ買って帰る、夕方の幸せよ。
夜ごはんは、焼き肉〔玉ねぎ、ピーマンもいっしょに炒めた)、めかぶ、しいたけと黄ニラの塩炒め、あさりの潮汁、キムチ、玄米。
肉を思う存分食べた。
昨夜のごはんがあまりに地味で、肉、食べたかったんだよなー。
10時には風呂から上がり、テレビを見ながら、パリパリに乾いた大量の洗濯ものをたたむ。

●2004年10月14日(木)薄曇り

曇っているけど、どんよりではない。
軽やかな曇りというところか。
なので、11時くらいに起き、たまっていた洗濯を半分だけやる。
天気予報によると、今日より明日、明日より明後日と、だんだん晴れていくそうなので。
昼過ぎまでに戻さなければならないレシピのゲラを、しっかりと読み込む。
レタスの藤原さんの原稿だが、完結で分かりやすく、まるで直しがなかった。
彼女はいつもそう。
こういう良い仕事をする人は、見えないところで、陰の努力があるにちがいないっていつも思う。たぶん、何度も何度も見直して原稿を作っているのだろう。
昨夜は、ひさびさに「バー高山」を開いて、スイセイとワインを軽く飲んだ。
編集者さんにいただいた、イタリア土産のおいしいパルミジャーノがあったので。
なんだかんだ話して4時に寝た。
けど、何か、いやーな夢をみたな。
それは、無理やりコマーシャルに出なければならない状況に追いつめられた夢。
あまりに私らしくないものだし、絶対にやりたくないと拒否しているのに、えらい人が勝手にどんどん決めていくので、私は逃げ回る。
それを、スイセイが擁護して(実際に私を抱いてかくまって)くれている夢だった。
権力にさらされるみたいで、とても怖かった。
今日は休日ということにして、布団の中で読書でもしよう。
なので、お昼にピザをたのむ。
ひさびさのドミノ・ピザ、アメリカンスペシャルだ。
そして、たかのてるこちゃんの『ダライラマに恋して』を、愉しみに読み始めた。
しかし、夕方から打ち合わせが入っていたことにはたと気がつき、バタバタと支度する。
夜ごはんは、目刺し、玉ねぎ入りオムレツの千キャベツ添え、れんこんのきんぴら、帆立と白菜のスープ、玄米。
食べ終わってしばらくしたら、お腹をこわした。

●2004年10月13日(水)雨のち曇り

11時より撮影。
わが家のおせち料理について、10ページも。
いつも毎年作っているものを、ちゃんと計量して作った。
保存ものが多いので、おとといから仕込み初めていたが、カット数が多かったので、全部終わったのは5時半でした。
ふー、すごくくたびれただ。
雨もようだし、気圧が低いせいか、空気がどよーんと湿って動かない感じで、息苦しいほどだった。
5日も続けて雨だったから、なんだか腰まわりが痛くもある。
でもカメラマンさんも編集さんも、スタイリストさんも、バリバリ元気で、作ったそばからどんどん食べていってくださった。
そしてヒラリンも、きっちり片づけながら、私のスピードについてきてくれた。
私が気持ちよく作れるように、まな板周りや流し周りを、料理が仕上がるごとにピシッとしておいてくれるのだ。
ヒラリンて、どんな時にも手を抜かない。
自分がくたびれればくたびれるほど、そういうヒラリンの真面目さに気がついて、心底ありがたいなぁと思う。
手をぬかない人って、自分の今の仕事に満足しながら働いているからという気がする。
小さな気の迷いや、うっぷんや不満が、適当に気を抜いてもいいやというムードを作るのではないかな、と思う。
そして、それは些細なことのようにも思えるので、その気分を周りに伝えてしまうことに鈍感にもなっている。
そういうのって、その人が自分の人生において甘えているからだと私は思う。
誰がいちばん損をするかというと、その本人だーい!。
そして、ヒラリンみたいにいつも楽しそうに一生懸命やっている人は、どんな職場でもそういう態度だと想像できるので、何か大きな仕事があった時に、任せてみようという気持ちになるし、人に紹介もしたくなる。
そういうものだと思う。
というわけで、ぐったり疲れて6時から9時まで昼寝をしたせいで、私はちょびっと元気になった。
夜ごはんは、スイセイが撮影の残り物でいろいろ勝手に食べているところに、私も参加。
お雑煮、刺し身盛り合わせ、ほうれん草のおひたし、蕪の柚子香漬け、焼き豚、数の子。
「うまいのう。ほんとに正月みたいじゃの、寒いしのう」と、スイセイ。
残り物を冷蔵庫から出してきて、タッパーごとつまむ感じが、わが家の寝正月風なのだ。

●2004年10月12日(火)雨

昨夜は、3時まで「翼の王国」の原稿を書いていた。
今まで何もなかったところに、頭の中だけでぼわっとしていたものが、手ごたえのある確かなひとかたまりになって、景色や温度さえも持って出来上がることって、すごいな。
言葉って、やっぱりすごいことだなーなんて、布団の中で味わいながら寝た。
もしかして天気予報がはずれるかな?とも思っていたが、今日もやっぱり雨。
2時からは打ち合わせ。
さっさかさーっと終わって、スイセイと納豆玄米ごはんを食べる。
これから明日の撮影用の買い物に行ってきます。
みどりちゃんの所へも、ちょっとだけ寄ろう。
なんだか、吉祥寺にみどりちゃんがいるのが嬉しいのだ。
夜ごはんは、天ぷらうどん(買ってきたえび天と、貝柱のかき揚げで)、かぶのお浸し、れんこんの厚切りきんぴら。

●2004年10月11日(月)雨のち曇り

ずっと雨でじめじめしているし、この寒さはいったい何?っていう感じだ。
台風の次の日、普通はものすごい晴れだと思うのだが。
だからというわけでもないが、ずっと布団を敷きっぱなしだから、ますます湿った気分。
けれど、仕事はバリバリやった。
まず、こんどの撮影のレシピ書きを2本分。
暗くなる前に買い物に行き、そして仕込み。
正月用の撮影なので、数の子や、煮豚や、漬物やら仕込んだ。
この寒さなので、クラッと年末の気分になりながら作る。
夜ごはんは、秋刀魚のフライパン焼き(大根おろし、スダチ添え)、しらたきの炒り煮(残っていた切り干し大根煮を細かく切って、いっしょに煮た)、蕪の葉とせりとルッコラ(撮影の残りをかき集めた)と鷄のマスタード炒め、豆腐とねぎの味噌汁、玄米。
ごはんが終わっても、またレシピの続きをやる。
今日は、「翼の王国」の原稿を書き始められたら、これで完ぺきなんだけど。
そういえば、近所のスーパーに、まだ小さめだけど黄色い柚子がもう出ていた。



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