2005年5月上

●2005年5月10日(火)曇り

NHKのテレビ収録。
また例によって、今にも降り出しそうな曇り空だった。
けど私の好きな後藤アナウンサーだったし、この間の収録からまだ日が浅いこともあり、けっこう落ち着いてやれた。
昨夜もよく眠れたし、いたずらにドキドキすることなく。
ちょっと慣れてきたのかも。
今日もまたケンタロウさんにお会いする。
そして、収録の時に作った料理を試食させてもらった。
おいしかったー!。
簡単なレシピなのに、調味料もとても身近なものばかりなのに、しっかりと安定した味で、誰が作っても「うーん」とおいしがる納得の味だと思った。
牛肉の薄切りを重ねたステーキなど、ガッツリと肉が食べたい時に、癖になるおいしさ。
しかも10分レシピだ。
彼女に作ってあげたらぜったいに尊敬されるし、旦那さんがこれだけおいしいものが作れたら、人生変わるだろう。
ケンタロウさんが人気の秘密が、分かったような気がしました。
さて、私の収録も無事終わり、6時にNHKを出る。
そして本の打ち合わせのため、池尻の「太陽」に向かう。

●2005年5月9日(月)晴れ

12時ごろ街に仕入れに出る。
ゴールデン・ウィークの人込みにうんざりしていたので、いつもの落ち着いた吉祥寺にほっと安心。
この時間はスーパーも人が少なく、優雅な気持ちになりながら買い物をした。
明日はテレビの収録だから、なんとなしに気持ちがハリッとしている。
自転車をこぎながら、紫陽花の小さい花がもう出てきているのを発見。
そしてスーパーでは、コロコロと自然な小ささ(超小粒や、やや小粒が混ざっている)の新じゃがをみつけた。
たっぷり入って298円だ。
フランスの新じゃがを思い出す。
鹿児島産だと書いてあったが、今が本当の時期なのか?。
だとすると、1月の末くらいから出始める新じゃがは、いったいどういう風に育てられたものなのだろう。
この間、別の店でみつけたほどよい小粒の新じゃがを塩ゆでして食べたが、キメが細かくみずみずしく、ねっとりしてとてもおいしかった。
中くらいの粒のものも出ているが、皮がすでに剥けているくらいに薄くて、蒸かして食べたらさぞおいしいだろうなと思わせる。
帰ってから、買ってきたお寿司(きはだまぐろと穴子きゅうり)をスイセイと食べ、郵便局と図書館にも行く。
10冊借りてきました。
おもに、フランス関係の本ばかり。
時々、濃厚なクリームやチーズの料理を強烈に作りたく、食べたくなるのです。
フランスのことが懐かしいような、あの日々に帰りたいような、ホームシックのような、今はそんな気分なのだ。
みどりちゃんは、12日からまたフランス&ベルギーの旅だそう。
心から羨ましい。
というわけで、夜ごはんはなぜか韓国風。
ビビンバ、かまぼこのおつゆ。
玄米がまるで見えないほど、ナムルを山盛りにした。
ナムルは、にんじん、キャベツ、豆もやし。
牛肉はひとり100gほど。
さらに茹で絹さやと茹でカリフラワーを別皿に盛り、顎が痛くなるほど野菜をたっぷり食べました。
早めに風呂に入り、昨日の作業の続きをやる。

●2005年5月8日(日)薄曇り

薄ぼんやりした天気だし、ちょっと肌寒い。
電気ストーブをつけた畳の部屋で、こんどの本で作りたいメニューをどんどん出してゆくのをやった。
大きな紙を広げて、気になったこともどんどん書き込む。
この作業は、とてもだいじ。
やりながら、いろんなことが見えてくるのです。
いつも私はこの作業を畳の部屋でやるが、どうしてかと言うと、空間が広々しているから。
足を伸ばしたり、たまに寝そべったりしながらやると、たまにぜんぜん違う所からアイデアが沸いたり、前に気がついたことを思い出したりもする。
机の上だと、固く小さくまとまってしまいそうな気がするのです。
『ちびまる子』が始まるまで、ずっとやっていた。
まだまだ書き込みたいので、続きは明日にしよう。
夜ごはんは、白菜と小松菜の煮びたし、茄子のくたくた煮(かつおの出し汁でやった)、鮭のかす漬け、辛み大根おろし、かまぼこと葱のおすまし、玄米。

●2005年5月7日(土)曇りのち晴れ

11時から撮影。
朝はどんより曇っていたが、撮影が始まったらどんどん晴れてきた。
終わり頃には、(洗濯をしないともったいない天気だなあ……)と思わせる快晴に。
4品だったし、一人暮らしの男の子でも作れるような(と編集さんに言われた〕ページだったので、サッサカと進んで1時半には終わった。
カメラは、日置さんのアシスタントをずっとやっていた広瀬。
「ひろせ、ひろせ」と皆が呼んでいたので、自然と私も呼び捨てだが、アシスタント時代から可愛がっていた。
そんな娘が、今は一人前になって、また一緒にお仕事できる嬉しさよ。
うちに居候していたちよじも、今は久家さんのアシスタントをやっているが、いつかちよじに撮ってもらったりすることもあるかもしれないなぁ。
さて、撮影が終わって残り物で昼ごはんを食べていたら、窓の外を見ながら食べていたスイセイが、「今日は小さい虫みたいなのがフワフワ飛んどるのう。繁殖期なのかのう。のどかなような気もするし、(動きが)SFみたいにも見えるのう。ようぶつからんの、と思うて」。
ベランダに出て見ると、確かに羽虫みたいなのがいっぱい飛び交っている。
洗濯物を干すのをスイセイにお願いし、私は美容院へ。
帰りの井の頭公園にも、やっぱり同じ虫がたくさん飛び交っていた。
陽の光に反射して、春の埃みたいにちらちら光っている。
スイセイに言われなかったら、たぶん私は何とも思わずに、見逃していただろう。
「おいしい魚屋」さんで、平目の刺し身、さよりの刺し身、しじみ、鮭のかす漬け、はんぺんを買う。
めだい、めばる、真鯛、マガレイなど、ピカピカとおいしそうな魚がいっぱい並んでいた。
久しぶりに行ったが、いつものお兄さんのニコニコも健在で、造ってもらった刺し身も綺麗だし、帰り道の自転車をこぐ足にも、なんだか弾みがつくような感じ。
今夜は、おいしいものを作ってやろう!というような良い気持ち。
長かった連休も明日で終わりだから、ちょっと引き締まったような、でもまだあと1日休みがあるからなと思って、少しだけ大らかな気持ちになるような。
なかなか陽が暮れないし、ベランダに出てビールでも飲もうかな。
今、西日が当たった桐の木に、オナガが来ている。
薄紫の桐の花と若葉の黄緑に、紫に黒い帽子のオナガだ。
写真を撮ろうと思ったが、あまりに絵はがきや切手みたいなのでやめる。
それにしてもオナガって姿は美しいのに、声は「ぎぇーぎぇー」と汚いなあ。
でも、そのくらいがちょうど良いのかも。なんとなく。
夜ごはんは、さよりと平目の刺し身、豚、セロリ、しめじ、クレソンの塩炒め、鰯の梅煮(昨夜の残り)、冷やしトマト、ひき割り納豆、しじみの味噌汁、玄米。
「トマトがフランス味じゃ」と言うので、それはフランスの塩のせいかと思ったら、 トマト自体があまり甘くないし、固いしで、パリの市場で買ったのと同じ味がしたということ。

●2005年5月6日(金)曇りのち雨

冴えない天気だけど、早起きして掃除機をかけたり、じゃが芋をゆでたりする。
12時からは『翼の王国』の撮影。
桃ちゃんはドイツ帰り、私はフランス帰りの土産話をする中、「いいですねえ、ヨーロッパは。俺はラオスですよ」と、斎藤君。
仕事でラオスに行って、ずっと下痢だったのだそう。
市場で、牛の胃液を売っていた話もすごかった。
緑っぽいドロッとした液体がビニール袋に入って、赤いのが入ったビニールと、交互にぶらさがっていたそうだ。
赤いのは牛の血らしい。
辺りには蝿がブーンと飛んでいたそう。
胃液は、煮詰めて調味料にするらしい。
「ちょうど柚子こしょうみたいになるんですよ。屋台のテーブルとかによく置いてあって、麺ものに入れたりするらしいんですけどね」。
もちろん斎藤君は食べなかったそうだけど。
なんかすごいなー。アジアの食欲のそのセンスのことを、私はずいぶん忘れていたな。
フランスに行ってからというもの、今はすっかりヨーロッパの方が近しい感じ。
撮影は無事終わり、明日の撮影の仕入に行く。
それにしても寒い。
夜、電気ストーブをつけたほど。
夜ごはんは、ゆでごぼうと水菜のサラダ、鰯の梅煮、茄子の油焼き、新じゃがの味噌汁、玄米。
なんとなしに、ちょっと落ち込むような、ぼーっとしてしまう1日だった。
天気のせいだろうか。

●2005年5月5日(木)快晴

昨夜は校正をひとまず終え、あとがきも書いた。
そのせいか何だか分からないけれど、布団に入っても眠れずに、本を読んだり、テレビを見たりして、やっと5時くらいに寝た。
フランスではだいたい12時には寝て、朝は7時くらいに起きていた。
日本に比べて8時間遅れだから、まだまだ時差ボケっていうことかもしれない。
今朝は、頑張って1時に起きた。
昨夜のスパゲティを温め直し、丸いオムレツにしてトマトソースをかけ、ナイフとフォークで食べたんだけど、「広島風じゃの」とスイセイが言う。
なんのことはない、焼きそば入りの広島風お好み焼きのことだ。
たしかに、キャベツが入っているところもそんな感じだが。
スイセイも私もナイフとフォークを使い慣れてちょっとうまくなったので、普段のごはんでも気軽に使える。
そして、「ナイフとフォークで食べる旨さも分かるのう」なんて、嬉しいことをスイセイが言うようにもなった。
今まで、スパゲティでも何でも箸で食べていたスイセイが。
さて、『日々ごはん4』がとりあえずひと段落ついたので、心置きなくフランスの日記を書き始められる。
そして、次に出す料理本についても、今日あたりから具体的な頭になりそうな予感。
畳の部屋に資料を広げ、まだ線のようなイメージを、ぼわんとした厚みのあるくらいのイメージに膨らませてゆく脳作業をやった。
そして、明るいうちに買い物に街に出る。
さすがはゴールデン・ウィークの最後の日だけあり、街は賑わっていた。
菖蒲を100円で売っているのを、おばさんたちが争うように買っていたが、レジに並んでお金を払わなければならないことに文句を言うおばさんもいた。
私の後ろで、「お父さん(菖蒲売りのおじさん)がお金をもらってくれりゃあいいのよ。遅いわねえ、皆、忙しいんだからさー」と、他の並んでいる人たちに同意を求めるような大声が聞こえてきた。
私は、そういうおばさんの顔を見たくないので、できるだけ前を向いていた。
そんな人に、菖蒲湯の風流が分かるんだろうか。
レジの人は、ひとりずつに「いらっしゃいませ」と頭を下げてきちんと対応しているのだし、ゴールデン・ウィークの最中にも、頑張って働いているのだ。
旦那さん連れの奥さんが多かったので、案外レジは早くまわってきた。
ロンロンの食品街は、誰も彼も食べ物に群がるみたいになっていて、売る方もやけくそになっているような、むわーっと沸騰した空気が所々にたまっていた。
場所によって、暑い所とぬるい所のムラがある感じ。
私は、さっさといるものだけ買って帰ってきた。
というわけで、夜ごはんの買い物をしなかったので、これから近所の蕎麦屋さんに行ってきます。

●2005年5月4日(水)快晴、穏やか

起きてすぐに校正をやっている。
スイセイは、ずっと寝ている。
このところ広島のかあちゃんから、朝も夜も関係なく、小刻みに電話があったから。
かあちゃんの中で心配ごとがあったらしく、ひどい時には5分おきにかかってきた。
夜中や明け方にあっても、すぐに起きて電話に出ていたスイセイは、決して怒ったりイライラしたりせず、何度かかってきても始終受け答えが穏やかだった。
私だったら家族だからと甘えてしまって、きっとすぐに爆発してしまっただろう。
昨夜、その心配もやっと一段落して、もう電話はかかってこなくなった。
だからスイセイも、やっと安らかに寝ていられる。
校正をしながら、時々ベランダに出る。
最近、洗濯物がすぐに乾くようになったな。
日も長くなった。
日が長くなると、平和な気持ちが長びく気がする。
穏やかな風に吹かれながら、ハルも目をつぶっている。
夜ごはんは、春キャベツと鴨ペーストのスパゲティ。
缶詰めをパリで買って帰ったので。
グラトンというやつで、オイル漬けのペーストみたいになっている。
フライパンにあけ、ちょっと炒めてケッパーも加えた。
キャベツはスパゲティといっしょにゆでた。
でも、夕方にえびせんを食べたので、私はあまり食べられなかった。

●2005年5月3日(火)快晴

まさに、風香る爽やかな5月という感じ。
ハルは、前足を揃えて腹ばいになっている。
ハルの背中にも、緑の木陰がチラチラしている。
12時からはテレビの打ち合わせで、ヒラリンとしおりちゃんが来る。
しおりちゃんは風邪の治りかけだったが、ふたりとも元気そうだった。
こんなに気持ちのいい昼間にせっかく会ったのだから、ゆっくり話をしたかったが、1時間でサクッと切り上げる。
やるべきことは、『日々ごはん4』の校正。
早くきっちり終わらせて、フランスの旅日記に没頭したいのだ。
そして、これから始める本についても、ぎゅっとのめりこんでイメージをしたい。
それにしても外が気持ちよさそうなので、とちゅうで休憩して買い物に行く。
自転車に乗るのももったなく、歩いて行った。
椿の葉の新緑がつやつやとして、触ってみると本当にビニールで出来ているみたい。
これがあんなに固い葉っぱの元なのだ。
帰ってから、ぎゅっと集中して校正をやる。
夜ごはんは、ふきの薄味煮、鰈のみりん漬け、めかぶとみょうがの酢醤油、鮪の切り落とし、浅蜊のおすまし、玄米。

●2005年5月2日(月)晴れ

昨夜は、朝の5時までスイセイとつもる話をした。
それでも1時にはがんばって起きる。
時差ボケも関係あるのか、すっかり夜型になってしまい、困ったものです。
風呂に浸かって目を覚まし、とにかくレシピ書きをやる。
どんどんやる。
夜ごはんの支度をしながら、『日々ごはん4』の再校正もやる。
夜ごはんは、牛丼(新玉ねぎで。紅しょうががないので、みょうがを刻んで梅干しと和えた)、ちんげん菜のおひたし、豆腐と葱の味噌汁。
ごはんを食べ終わってからも、校正の続きをやる。

●2005年5月1日(日)薄曇り、風が強し

朝、下の公園でトランペットの練習をしている音が聞こえ、うるさくて目が覚めた。
しかし、もうちょっと、もうちょっと、と思いながら寝ているうちに、すっかり寝コケてしまい、3時まで寝てしまった。
丹治君の電話で起きました。
今日から5月が始まるというのに。
昨夜は、布団の中で『赤毛のアン』を読み始めた。
綺麗な装丁の文庫本で、読み進むのが楽しい。
フランス帰りでまだ気分が洋風になっているので、ちょうどいいタイミングな気がする。
景色や家の中の作り、登場人物の顔がポワーンとではなく、わりと現実的に浮かぶ。
これから何冊も先があるから、ちょっと楽しみ。
ゆっくりと読んでいこう。
さて、急きょ夕方から丹治君がいらっしゃることになった。



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