2005年6月下

●2005年6月30日(木)曇りのち晴れ

今日もまた涼しく、曇っているけど穏やかな天気。
晴れていて穏やかというのはよくあるけれど、曇りの日でも穏やかと感じることがあるのだな。
それは、その日1日だけをとって感じるのではなく、前の日やその前の日のつながりで印象が決まるのだろう。
しかも感じ方だから、人それぞれでも違うはず。
それってすごいことだなあ。
スイセイは目に見える景色のことを、その人の心の中の景色だと言う。
たとえば、「木々の緑が濃くて、遠くまですっきり見渡せるような天気だ」と日記に書いた時、「みいの精神状態がすっきりしとったんじゃと思う」と言われた。
それについては、なんとなく心当たりがある。
だからたとえば今日の私は、穏やかな心持ちなのかもしれない。
それとも、穏やかになりたいなと感じているのかもしれない。
ささ、今日もまたフランス日記だ。
掃除機をかけたついでに梅の様子を覗いてみたら、もうすっかり梅酢が上がっていた。
昨夜見た時には、まだ塩の粒が上の方に見えていたのだが。
早いなあ。
よく熟していたこともあるだろうし、きっとこの気温と湿度のせいもあるだろう。
夕方から、「トネリコ」にごはんを食べに行ってきます。
りうが彼氏を連れてきて初めて私たちに紹介する、という企画で。

●2005年6月29日(水)雨のち曇り

ひさしぶりに、昨夜は雨の音を聞きながら寝た。
朝はまだ降っていたみたいだけど、昼には上がってしまった。
もっと降ってもいいのに。
今年の梅雨は、奥手な少年少女みたいに遠慮がちで、おばさんとしては少しやきもきしている。
昨日の夕方にも少し降ったけど、いつまでたってもポチポチと控えめで、「もっと思いっ切りやってみな!」と言いたくなる。
でも、おかげさまで今日は涼しく快適だ。
さ、またフランス日記を再開しよう。
『おじゃる丸』が始まるまで、集中してやった。
ようやく6日目に入ったところ。
みどりちゃんたちと別れ、スイセイとふたりだけの旅が始まったところだ。
さて、トイレに行くたびにふわーっと果物のいい香りがして、つい立ち止まる。
それは今、瓶の中で塩が溶け、梅酢がしみ出そうとしている匂いです。
でも、何度目かに気がついたら、もうその匂いはなくなっていた。
何かの具合で、もう果物ではなくなったのだと思う。
夜ごはんは、塩鮭、ゴーヤ、ニラ、豚こまの炒め物(昨日の残りがたっぷりあったので、温め直して)、刺し身蒟蒻とワカメの梅ドレッシング、納豆、南瓜の味噌汁、玄米。
代わり映えしない素朴極まる献立だが、スイセイは文句を言わずに食べていた。
案外私は、こういう抜きだらけの夜ごはんが好きだ。
このくらい抜けていた方が玄米のおいしさが際立つし、明日は「トネリコ」でおいしいものを食べるのだから。

●2005年6月28日(火)快晴、猛暑

昨夜はとても寝苦しかった。
朝方、思いついて氷まくら(アイスノン)をしてみたらずいぶん楽になったが、バスに乗って延々旅をしている苦しい夢をみた。
目的地がどこなのか分からずに、仕事で連れて行かれる夢だ。
スイセイは上半身裸で、首のところにタオルを敷いて寝ている。
それでも枕がしっとり湿ってしまうので、枕カバーは毎日洗濯しているこの頃だ。
今日はシーツも洗う。
12時から『翼の王国』の撮影。
あまりに暑いので、クーラー全開でやった。
たまにベランダに出ると、砂漠のようなものすごい熱風。
クーラーの室外機のせいだけではない。
干しておいた梅干し用の瓶が、素手で持てないほど熱くなっていた。
こんなに暑くて、ハルは大丈夫だろうか。
撮影をしながら、梅干しも漬ける。
夜ごはんは、ゴーヤ、ニラ、豚こま炒め、刺し身蒟蒻、レタスと青じその塩もみ、雑穀おにぎり、キムチスープ。
夜になって、しっとりした雨が降り始める。

●2005年6月27日(月)快晴

今日も暑いです。
朝から掃除機をかけたり、宅急便を出しに行ったりする。
1時からはNHKの打ち合わせ。
2時からも引き続き別件の打ち合わせ。
3時には終わり、梅を捜しにあちこち回る。
近所のスーパーの南高梅は、やっぱり小粒。
紀伊国屋のはわりと大きいが、まだ熟していない。
けっきょく、駅ビルの中の八百屋さんに理想的なのがあった。
黄色く熟して、フルーティーな香り。
その他、明日の撮影の準備でいろいろ買い出しもする。
紫陽花が暑さのためにすっかりくすんだ色に様変わり、ぐったりして気の毒だったなあ。
帰り着いたらシャワーを浴びて簡単服(ムームーみたいなの)に着替え、広島の美穂ちゃんから送っていただいた枇杷を楽しみに食べる。
ベランダに足を出しながら。
小さめの不揃いなのが、ひとつずつ紙袋に包まれているのも可愛らしい。
お店で売っているのより、キュッとしまって酸味があり、とてもおいしい。
無農薬の枇杷だそうだ。
いちどに6個も食べてしまった。
その間に、スイセイは1個だけしか食べない(これって何かのパロディーみたいだが)。
枇杷って、まさに今日みたいな日にこそ食べたい果物だなあ。
りうの好物なので、こんど会う時に持って行ってあげよう。
「トネリコ」にも持って行ってあげよう。
夕方、杏のシロップ煮、スパイスはちみつ、キャラメルクリームを作った。
トイレに行くたびに、(あら?このいい匂いは何?)と思ってしまう。
それは、廊下に置いてある南高梅の匂いでした。
夜ごはんは、喜陽軒の特製シュウマイ、蕎麦(ゆでオクラ、ワカメ、ゆで小松菜、とろろ芋)。
夜、梅を水に漬ける。
部屋の電気を消すと、すもものような甘い香りが広がる。

●2005年6月26日(日)快晴、夏日

暑い。
あまりの暑さのせいなのか、カラスの鳴き方も変になっている。
喋っているみたいに、「ガーオガーオ、フーガフーガ」鳴いて、とてもうるさい。
足の裏が火照るので、風呂場で水をかけ、冷やしながら過ごす。
今日もまた夏バテ状態だ。
お昼は氷茶漬けにした。
永谷園のお茶漬け海苔との組み合わせを、たくあんや、酒盗や、山椒の実の佃煮やらいろいろ試してみるが、やはり梅干しが最高だった。
今日みたいな日は、梅干しのありがたさを実感する。
今年もぜったい漬けよう。
近所のスーパーで見ると、今年の南高梅は小粒のしか出ていないのでのんびりしていたが、うかうかしていると時期を逃してしまいそうだ。
明日、打ち合わせが終わったら、街に出て探してみよう。
というわけで、今、仕事部屋のクーラーを入れてみた。
すごいなあ、涼しいもんだなあクーラーは。
これでやっとやる気になった。
さあ、フランス日記をまた書き始めよう。
夜ごはんは、煮込みうどん(エリンギ、しいたけ、舞茸、鶏肉、ごぼう、三つ葉、万能ネギ)、だし入りオムレツ(だし巻き卵味)、たたききゅうり、セロリ、青じその塩もみ。
夕方、フランス日記を書きながら、ある場面を夢中で書いていて涙が出た。
あの時に見たもの、その時の感動、周りの雰囲気をリアルに思い出したのだ。

●2005年6月25日(土)快晴、真夏日

洗濯物を干す時、ベランダのすのこが最近の中でいちばん熱くなっていた。
梅雨だというのに、夏休みのような天気。
起きてすぐに、またごはんも食べずにゲラの校正をやっていて、目と鼻の間がムーンとする。
お昼ごはんに、スイセイは昨夜の混ぜ寿司の残り、私はお茶漬けを食べるが、ふたりともどうも食欲がない。
早くも夏バテか?。
午後からはフランス日記。
けっこうはかどったけれど、肌が火照るような感じなので、シャワーを浴びたり、ヨガをやったり、深呼吸をしたりして気を紛らわしながらやった。
熱さでフラフラするので、昨日買っておいたアムプリンを食べる。
ちゃんと生クリームも泡立てて添えた。
そのおいしかったこと。
甘味もちょうど良く、ひんやりなめらかにのどを通る。
滋養もあるし、夏バテにはアムプリンがいいかも。
夜ごはんは、新じゃが(静岡産の小粒のものがあった)の肉じゃが、レバーのしょうゆ煮、小松菜とゴーヤの塩炒め、塩鮭、ワカメの味噌汁、玄米。
味噌汁の味噌、今年作った新ものでやってみたら、まだ若いけどスイセイにはウケていた。
しかし、やはり私は食欲がない。
夕方、アムプリンの大きいのをぜんぶひとりで食べたからだが。

●2005年6月24日(金)ぼんやり晴れ

起きてすぐにゲラの校正をやる。
ごはんも食べずにぐっと集中しすぎて、鼻血が出そうになった。
お昼を食べ、今日はこれで仕事を終わりとする。
スイセイを誘って、街に散歩がてら買い物に出かけることにした。
そんなには晴れていないんだけど、歩いているだけでじっとり汗をかく。
たぶんすごく湿度が高いのだと思う。
いつの間にこんなに夏らしくなったのだろう。
しばらく外に出ていなかったから、ちっとも知らなかった。
道行く人たちも皆、うっとうしそうに、怠そうにしている。
でも、あちこち歩いていい運動になった。
スイセイも、アンティークの店でZライトを買っていた。
いったいいくつあるか知らないが、Zライトを見ると買いたくなるらしい。
パリの蚤の市でもいいのを見つけたんだけど、買わなかったことを今でも後悔している。
私もなんだかんだ買いものをし、帰り道はすっかり大荷物になってしまった。
ハアハア言いながらうちに帰って、窓を開け放し、ぐっとくつろぐ。
夕方になって、やっと涼しい風が吹いてきた。
空はほんのり茜色で、「チーチーチュイ、チーチーチュイ」とムクドリが鳴いている。
ちょっと泣きたくなるような良い夕方だ。
昼間がうっとうしかった今日みたいな日は、この気持ちのいい夕方に誘われて、やきとり屋さんが繁盛するんだろうな。
やきとりも食べたいけれど、わが家の夜ごはんは混ぜ寿司。
鰻の蒲焼きが安かったので。
あとはハマチのお刺し身と、青じそ、みょうが、いりごまを混ぜ込む予定。
夜ごはんは、混ぜ寿司、焼き茄子、小松菜おひたし、おぼろ昆布と三つ葉のすまし汁。

●2005年6月23日(木)雨のち曇り

雨は朝方まで降っていたようだが、起きるころには上がっていた。
ので、洗濯をする。
しかしぜんぶ干し終わった時に、ぽつぽつと葉っぱに当たる音がして、また降り出した。
でも、梅雨なんだから、(雨よ降れ、どんどん降っていいよ… )と思う。
最近私は、『赤毛のアン』を読んでいる。
きれいな装丁の文庫本になったのを、毎月1巻ずつ講談社さんから送ってくださるのを、楽しみにして読んでいる。
それで、昨日図書館でおもしろい本を借りてきた。
『「赤毛のアン」の生活事典』テリー神川著、講談社。
寝る前に一気に読んでしまったが、すごい本だった。
テリー神川さんという人は、子供の頃から『赤毛のアン』が大好きで、何度も読んでいるうちにいろんなことが知りたくなり、ついにプリンスエドワード島に移住してしまったんだそうだ。
この本も、きっと何年もかかってできたのだと思う。
昔風の本で、無駄な情報がぜんぜんないし、イラストもいい。
写真も貴重だし、学術的な難しいことが書いてないのがいい。
でも、知りたいことが逃さず書いてあって、地図や植物図鑑まである。
たぶん、すごく愛情をこめて作られた本だと思う。
これを読んでいて、アンの時代って1880年代くらいなのだなと分かった。
前に『アボンリーへの道』というテレビドラマにはまっていたが、たぶんそれも同じ時代だろう。
台所のことや、服装のことなど、とても興味深い。
そして、「タミゼ」で買って私のところにある器は、どれもフランスの1880年台のもの。
アボンリー(プリンスエドワード島にある)はカナダだけど、暮らし向きは同じような感じではないだろうかと、つい想像してしまう。
大きな戦争が始まる前の、質素だけれど自給自足の平和な時代だ。
畑はもちろん、家畜を飼って塩豚やソーセージやバター、チーズも自分たちで作る。
生地を買ってきて、家族の服くらいは母親が仕立て、羊の毛で毛糸をつむいだりもする。
肉料理の時に出たオーブンやフライパンに残った脂を捨てずにとっておき、薪ストーブ(台所用オーブン)の灰を使って、春に1年分の石鹸を作る。
この石鹸で、食器も体も洗濯もする。
塩豚を漬ける大きな瓶(イソップ物語でツルがくちばしをつっこむ水瓶みたいな)は、フランスのある土地に行った時、暮らしの博物館で同じのを見た。
塩水を作って瓶に入れるのだが、じゃがいもを浮かべてみて浮かんだらちょうどいい塩分だという話を、フランスでも聞いた。
そこはじゃがいもと塩の産地だから、もちろん自分のところの塩とじゃがいもを使っていただろう。
アボンリーもじゃがいもの特産地で、秋の収穫の時期には子供たちも総出で手伝った。
洗濯のりの代わりに、じゃがいものでんぷんを使い、炭で温めたアイロンをかける。
冷蔵庫がなかった時代だから、塩豚やソーセージは必需品だった。
冬の間は、部屋の中でレースを編んだり、刺繍をしたり、結婚式の晴れ着も長い時間かけて作った。
「タミゼ」の白い皿に、そんな家の中のイメージを重ねてしまう。
そうやって空想することが私はひじょうに楽しく、血が騒ぐ。
というわけで、今日もまたミントティーをいれて、フランスの日々に行ってきます。
夜ごはんは、生ソーセージとブロッコリーのスパゲティ、ポテトサラダ。

●2005年6月22日(水)雨のち曇り、一時晴れ

朝はひんやりと涼しく、雨が降っていた。
静かなのでいくらでも寝られそうだったが、10時半には起きた。
昨日よりもずっと頭がすっきりし、フランス日記を書けそうなので、フレッシュミントティーをいれて書き始める。
ミントティーの味で思い出したのか、雨のせいで静かなのが良かったのか、またフランスにすーっと戻って行けた。
昨日はどうしようかと思った。
何日か経って日記を書くのはやっぱり無理なのか、やっぱり記憶はどんどん薄れてすり切れてしまうものなのか、と思ってちょいと落ち込んでいた。
帰ってきたばかりの1ヶ月間、フランス、フランスと頭も体もかぶれていたが、2ヶ月経った今は、すっかりそんな気分も落ち着いている。
でも、大丈夫だ。
その気になって入りこめば、メモや写真をきっかけに、また些細なことまで思い出すものだ。
感じなければ書けないのだから、そういう時には休めばいいのだ。昨日みたいに。
けっこうはかどって書いているうちに、雨は止んでさわやかな風が入ってきた。
さて、そろそろ夜ごはんの買い物に出かけようかな。
夜ごはんは、鰤カマの塩焼き、南瓜のポクポク煮、レバーのしょうゆ煮、つまみ菜、おかひじき、しいたけのおひたし(だし汁、薄口しょうゆ、ねり辛子)葱だけの味噌汁、玄米。
とりレバーのしょうゆ煮が、すごくおいしくてびっくり。
砂糖を入れずに、酒としょうゆを1:1で煮た。
しょうががなかったので、にんにくと葱の青いところ、八角を少し加えて。
これは、大田垣晴子さんのレシピを真似て作ってみた。
大田垣さんのは豚レバーで、大きいから40分かけて煮るそうだが、とりレバーだったら10分くらいで味をみて、中まで火が通っていればだいじょうぶだ。
お酒のつまみにも、ワインにも合いそうな濃厚さ。
スイセイの大好物がまたひとつ増えました。

●2005年6月21日(火)晴れ

たらーんとした1日だった。
やる気というものが出ないので、本を読んだりして過ごす。
窓辺に寝そべって、何度もベランダに立っては下を覗き、ハルの姿を探す。
それでも電話やファックスはたくさんかかってきた。
宅配便もきた。
ゲラチェックの時期は、だいたい重なるものなのだ。
やらなければならないことはあるのだが、低血圧なような、頭の中に霧がかかっているような感じで集中できない。
早くも夏バテか?。
そんな日でも、夕方の空は茜色に染まって美しかった。
夜ごはんは、ざるうどんワカメ添え、冷やしトマト、オクラの梅種じょうゆ、ニラの塩炒め、ししゃも。



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