2005年8月中

●2005年8月20日(土)快晴、風強し

昨夜は、素晴らしい満月でもったいなかったので、窓を開け、網戸も開け放ち、月明かりを浴びながら寝た。
今日は真夏日。
暑い暑いと汗をかきながら、今日もまた洗濯ものを干す。
昨日は、アリヤマ事務所を7時には出、水茄子のぬか漬けだけ買って、まっすぐ吉祥寺に帰ってきた。
暑かったせいか、渋谷駅周辺の街の様子や、歩いている人たちの顔とか、イライラした感じがして少し怖かった。
だからアリヤマ事務所は、オアシスみたいだった。
吉祥寺に着いて、いつものお蕎麦屋さんでぐっと落ち着き、ざる3枚と天ぷら盛り合わせ、冷やっこなどをふたりで食べる。
ビールもゆっくり味わいながら飲んだので、2本で多いくらいだった。
さて、今日の仕事は「クウネル」の原稿書きと、本のための試作をやる予定。
夜ごはんは、ハムとゆで卵と葱のコロッケ、千切りサラダ(キャベツ、にんじん、ピーマン、紫玉葱)、鰺の酢じめ、水茄子のぬか漬け、青海苔の味噌汁(四万十川の青海苔。川原さんの古墳クラブ旅行のお土産です)、玄米。

●2005年8月19日(金)まったくの快晴

真夏日。
カトキチが昼前にアムプリンを持ってきてくれた。
吉祥寺の出店が昼からなので、大急ぎで、汗をかきかき。
私がフランスのマルシェでお土産に買ったバニラビーンズを、「使ってみて」とアムちゃんにあげたんだけど、それを使ってみてくれた。
その第一号をわざわざ持ってきてくれたのです。
ちゃんと小さなお知らせの紙も、かわいく入っている。
いつもはマダガスカルのバニラビーンズを使っているそうだけど、しばらくの間はフランスのブルゴーニュのですと、そういうのをちゃんとお知らせして売っている。
お客さんに対しても、自分たちに対しても、正真正銘真面目なアムプリンよ。
この炎天下、ライトバンでの販売は大変だろう。
身の丈より大きく見せたりなんか絶対にせず、自分たちの出来ることだけを、相談しながら毎日コツコツ続けている、可愛いふたり。
私もスイセイも、そんなふたりを尊敬している。
さて、ベランダのすのこが焼けて焼けて、すごく熱くなっていた。
けど、裸足で洗濯物を干す。
昨日から干していた大根も干す。
干す日和だ。
モーターのうるさい音がするが、清掃員のおじさんが草刈りをしてくれている。
こんなに暑くて、外で働く人々はほんとにご苦労様だ。
2時からは「クロワッサン」のインタビューなので、あちこち掃除機をかけ、雑巾掛けもする。
首にタオルを巻いて、だらだらと汗をかきながら。
一時間半ほどでインタビューは終わった。
アムプリンを食べ、これからアリヤマ事務所に行ってきます。

●2005年8月18日(木)快晴

昨夜は、窓際に頭を向けて寝ていたら、虫の声がした。つかの間だったけど。
遠くから、シッカロールの匂いも。
今日もまた『日々ごはん5』の校正。
もういちど始めから、全体を見直す。
「サヨナラCOLOR」のサントラ版をエンドレスでかけながら。
とちゅう、チーズケーキを焼いたり、ベランダに出て陽を浴びたりしながら。
最近私は、「高山さん日に焼けました?」といろんな人に言われるが、もしかしたらベランダ焼けかもしれないなあ。
どこにも出掛けなくても、洗濯物を干しているだけで焼けてしまうのだ。
日が傾くのと、蝉が盛んに合唱を始めるのは同時。
今日はツクツクボウシも鳴いていた。
ヨガをしながら目をつぶっていると、「ボウシ」の所が口笛みたいになめらかに聞こえた。
このところ夕暮れを観察しているが、日が沈む寸前に空が染まるのって、本当に滅多にないんだと気がついた。
花見の時期、ちょうどいい天気の日が、1日くらいしかないのと同じだな。
夕焼けの素晴らしい日をけっこう見逃しているように思っていたが、案外、「ああ、綺麗」と感心している日だけがそうだったのかもしれない。
たとえばそれは、大雨の次の日とか、風が強い日とか、ちゃんとした天気の法則があるんだろうと思う。
というか、感心したのは、「滅多にない」ということ。
こんど夕焼けになったら、何もかもほっぽりだして、刻々と変わる色を見ていよう。
夜ごはんは、スープ餃子(大根、人参、小松菜入り)、豚コマとキャベツの味噌炒め(マッキーにもらったフミさん作の10年味噌。トウチみたい)、里芋とちくわの含め煮、刺し身蒟蒻2種(にんにく醤油、大根おろしにポン酢醤油)。玄米はなし。

●2005年8月17日(水)快晴

ひさびさにはっきりと晴れている。
蝉も、今だとばかりに大合唱。
でも、ふとした空気に夏の終わりも感じる。
風の後味が、そこはかとなくひんやりしている。
お盆の前から後にかけて、仕事の依頼がけっこうあった。
でも、けっきょくほとんどお断りしてしまい、きれいさっぱりになった。
私は、こうしたらもっとおいしくなるとか、こうしたらもっと便利だとか、こういう時 気持ちがいいなあとか、自分の気がついたことをどんどん皆さんに贈りたい。
良いことは、お腹の中に抱えておかずに、ケチケチせずにどんどん出したい。
だからそこに脚色が加わって、間違って伝わることが分かっているような仕事は、できるだけやりたくない。
スタッフの方々もそういうことを理解していて、労を惜しまずに、本当にいいものを作りたいと思っている人たちとだけやりたい。
などと思っていたら、今やれる仕事がどんどん狭まってしまった。
自分で自分の仕事を減らしているようなものだけど、もっと濃い、未知のことに体も気持ちもどんどん使い切りたい。
(それでいいんだよな、私は…… )なんて、洗濯物のパンツを干しながら思った。
天上は高く、青く、どこまでも晴れ渡っている。
さあ、『日々ごはん5』の校正をもういちど見直そう。
目の前のことを、ひとつずつ心を砕いて真面目にやっていこう。
たぶんこの気持ちは、『ポーの話』を書き上げたいしいしんじさんから伝わり、昨日まで一緒にいた長野君と、何度も足を運んで励ましてくれた岡どんからもらった。
夕方、ヨガをやり終わって寝そべり、ぼうっと空を見ていたら、寝てしまった。
涎が垂れるくらいに、ぐーっと眠った。
撮影が楽しかったから気がつかなかったけど、あんがい私はくたびれているのだな、と思った。
夜ごはんは、フライパン・パエリヤ、キャベツと貝割れと大根のサラダ。
パエリヤは、このところの冷蔵庫整理も兼ねて作った。
にんにくと玉葱とパンチェッタと米をオリーブオイルで炒めて、魚のスープの残りの砕けた魚片とルイユとタイムで味を出し、トマトソース、サフランを加えて作った。
パエリヤって、米を(洗わずに)2合と、スープを2合、あとはたっぷりのオリーブオイルと味だしの具があれば、何でもおいしくできるみたい。
スープを加えてからの火加減は、フタをして最初は強火。沸いてきたら弱火にして水分がなくなるまで炊くだけ。
最後に強火にしてパチパチ音をさせ、お焦げを作って出来上がりだ。
こんど、岡どんにもらった干し貝柱(青森の)をもどして、味出しに使ってみよう。
サラダのドレッシングは真智子(長野君の奥さん)スペシャル。
めんつゆに、酢、ごま油を少しずつ合わせて作った。
酢っぱすぎず、大根と貝割れの辛みもバッチリ合っていた。

●2005年8月16日(火)晴れのち雨のち曇り

朝方は晴れ間も出ていたが、いきなり暗くなって降り出した。
大粒の雨。
そして、地震もあった。
今日もまた1時から撮影。
長野君がいらっしゃる。
お昼を食べ終わって、再放送の『きょうの料理』を見ていたら、丹治君と奥さんのミカちゃんもいらっしゃる。
長野君と別件の打ち合わせがあるらしく、近所の喫茶店を教えると、3人で出掛けて行きました。
その短い時間に、私も丹治君と業務連絡をする。
不思議な感じだ。
長野君はうちの子か? 打ち合わせが終わったら、また戻ってくるそうだ。
私は、次回撮影(本の)のメニューを決めたり、ファックスしたりとぎゅっと集中して仕事をする。
夕方、図書館に行った。
検索用コンピューターが、新しいのに変わってしまって、使い方がぜんぜん分からなかった。
どこをクリックしても、何の変化もない。
隣でやっている中学生に聞こうかとも思ったが、やっぱりやめる。
10冊借りて帰ってくる。
岡戸さんもいらして、その後軽く打ち合わせ。
これから私は文を書かなければならないので。
夜ごはんは、筑前煮、塩鮭、網焼きピーマンの生姜醤油、冷やしトマト、茄子のくたくた煮(昨夜の残り)、大根と葱の味噌汁、玄米。
葱の切ったのが残っていたから使ったが、大根の味噌汁に葱は合わないと思った。
やっぱり青じそを入れればよかったな。それとも何も入れないか、どちらかっていう気がする。
さて、「クウネル」の撮影は今日ですべて終わった。
ごはんを食べ終わって、川原さんにいただいたビールの小瓶を、長野君と3人で小さく乾杯する。
「終わっちゃいましたね…… 」と長野君がぽつりと言った時、私も同じ気持ちだった。
この何日間ずっと一緒にいて、濃い時間を過ごした。
私も長野君も、同じ景色を見ながら、いっぱい喋った。
今思うと、いろんなことが猛スピードで過ぎていったなあ。
楽しかったなあ。
帰り際、玄関で見送る時、あんまりべたべたしたのはイヤだから爽やかに見送ったが、ちょっと切なかった。
これが最後のお別れってわけでもないのに。
「『ウルルン』みたいになりそうになったのう。みいの仕事って、あちこち旅をして回るサーカスみたいじゃのう」と、後でスイセイに言われた。
風呂から上がって窓を開けると、大きな月が出ていた。
空は晴れ渡り、星も出ている。
ひさしぶりに、明日は晴れるんだろうか。

●2005年8月15日(月)曇り一時雷雨

昨夜は楽しかったな。
長野君が夕方来て、奥さんの真智子ちゃん、川原さんも呼んで飲み会になった。
長野夫妻は泊まり、川原さんとは朝の5時くらいまでいろいろ話した。
ちょいと二日酔いだが、けっこう私は元気です。
なんか、ほんとに長野君とは合宿状態になってしまったなぁ。
明日もまた撮影なのだから。
てなわけで、今日はだらだら過ごします。
これから布団にもどって、『しずかに流れるみどりの川』を読むつもり。
夜ごはんは、海老のチリソース、茄子のくたくた煮、茹でおくら、白いご飯。
昨夜、私は大根のマリネと魚のスープを作ったが、真智子ちゃんが作ってくれたロメインレタスのサラダがすごくおいしかった。
ドレッシングはめんつゆ、酢、ごま油が入っているそうだが、どれも控えめで、酸っぱくも油っぽくもない。
ロメインレタスはちゃんとひと口大にちぎってあるし、ドレッシングをかけてから少しもんだのだそうだ。
「最後のシメのサラダだから、さっぱりめがいいと思って」と言っていた通り、レタスの苦味もいきているし、しんなり具合も味つけも、なんだか優しかったなぁ。
人のレシピっておもしろい。

●2005年8月14日(日)晴れ

『ポーの話』、昨夜読み終わった。
荒々しく胸ぐらをつかまれたまま、随分遠くまで行かされた。
頭よりも、心よりも、体の中をかき回されるみたいな感じがあったなあ。
もういちど読み直そうと思うが、その前に『しずかに流れるみどりの川』を読んで、一度飛ばそう。
そして今日の宿題は、『日々ごはん5』の校正の続きだ。
あとで買い物に行って、試作もひとつやろうかなと思っている。
どうやら私は元気みたい。

●2005年8月13日(土)曇り時々晴れのち雨

ぼわっと、だらりとした天気。
プール通いにも飽きたし、友だちに会うのもめんどくさい。
宿題もやらなければならないんだけどやる気になんなくてゴロゴロしている……みたいな、小学生の夏の日を思い出す天気だ。
でも、こういう日も好きだなあ。
お昼はほとんど毎日そうめんだったが、モソモソして、ぜんぜんおいしくない。
実家のそうめんは、茹でたてを食べるんでなく、ざるの上で固まっているみたいなのを箸でつかんで汁につけ、ほぐしながらだった。
そうめんって、そういうものだと思っていた。
さて、起きてすぐにメールを見たり、倫子ちゃんや長野君のホームページを読んだりして、時間を気にせず気ままに過ごす。
お昼を食べてから、昨夜書き上げた原稿の直しをやる。
今日は、暗いような明るいような、不思議な夕暮れだった。
東は雲が多いが、西は青空。
遠くで雷が鳴っているけど、雨は降らない。
オナガが2羽、木の周りをフラフラとふざけるみたいに飛んでいた。
夜ごはんは、手羽元のトマト煮込み(岡どんのベランダ栽培バジルをたっぷり入れたら、カチャットーラ風っていう感じになった)、茹で上げスパゲティー、大根のマリネ(薄切りを塩もみしてしばらくおき、おろしにんにく、ディル、バジル、白ワインビネガー、オリーブオイルで和える。クウクウでさんざん作った)。
夜、風呂から上がったら、沁みるような雨。

●2005年8月12日(金)曇り

今にも雨が降り出しそう。
でも涼しくて、「魂の安息日」っていうような天気だ。
今日はゆっくりしよう。
蝉が鳴いている。
そういえば、夜の蝉のひと声について長野君に聞いてみたら、あれは死ぬ前の鳴き声なのだそうだ。
生まれるのは朝。
たまに朝早く散歩すると、木の所で、蝉が殻からちょうど出ようとしているのを見かけたりするらしい。
さて、今日は原稿を仕上げてしまおう。
そして、早く『ポーの話』の続きが読みたい。
夜ごはんは、カレーライス(昨夜のに茄子を加えて、ナンプラーとガラスープでエスニック味にした)、レタスのサラダ、冷やしトマト、玄米。
風呂上がりに窓を開けると、ポツポツと雨が降ってきた。
地面がめくれるような匂いがして、ひんやりした風が入ってくる。
そのうちに雷が鳴り出し、本格的な雨に突入。
窓を開けたまましばらく見とれるが、雨が入ってくるので仕方なく閉める。
雷は、いつまでも鳴り響いている。

●2005年8月11日(木)ぼんやりした晴れ、一時雨

2日目の「クウネル」撮影。
今日は長野君がひとりで1時に来て、いろいろ写してくれる。
昨日からずっと一緒にいるから、だんだんに、弟といるみたいになってきた。
私には弟がいないけど、いたらこんな感じかもって思う。
ちょっとだけ料理を教えたり、沖縄に行った時の話をしたり、酒も飲まずにけっこうつっこんだ話もしてしまう。
スイセイは、前に「太陽」で飲んでいる時、長野君が偶然店に入ってきたらものすごく喜んだ。
その夜は隣に座って、べたべたとずっとひっついていた。
会ったことは何度もあるが、あんまり話らしい話はしたことがない。
でも、長野君のことが直感的に好きだったらしい。
そしてこうして仕事で会うことになり、いろいろ話すうちに、「やっぱりええのお。正直な人なんよのう」と褒めていた。
『シマノホホエミ』の長野君だ。
「長野さんはいいよー。奥さんもまたいい子なんだよー」と、みどりちゃんに昔から何度も聞かされていた。
「太陽」で会う時は、いつもお互いに酔っぱらっているんだけど、なんか長野君て、にこにこして(いつも笑っているわけではないと思うんだけど、そういう顔)皆の中にいる感じが、なんだかいいなとずっと思っていた。
『シマノホホエミ』の写真を見て、文章を読んだ時に、まだ見ぬ長野陽一さんという人の感性に感動して、(なんていいんだろう、この人)と思った。
その長野君と今一緒にいて、こうして写真を撮ってもらっている。
そういうことを頭で考えると、不思議なような、(なんて幸せなんだろう)とかって思ってしまいそうだけど、なんだかそれは違う。
目の前の長野君のことを、私はまた新しい気持ちで好きになり、(いいなあ、この人)と感じながら、写真を撮ってもらっている。
どんな写真になるのか、ドキドキする。
ものすごく楽しみだ。
夜ごはんは、カレーライス、コールスロー。



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