2005年11月上

●2005年11月10日(木)秋晴れ

昨夜は、映画も見ず本も読まずに、1時くらいにバッタリと寝てしまった。
ひさびさに熟睡し、だらだらと充分に眠った。
12時に起きました。
あまりに天気がいいので、カーテンを洗濯する。
さて、今日は何をやろうか。
たぶん嵐の前の静けさなので、今日はそれを思う存分満喫しよう。
どこにも出掛けずに、本を読みくさろう。
夕方、『黄色い雨』を読み終わった。
じりじりと、胸の奥にくる小説だった。
自分(体)が死ぬことでやっと自分(魂)が温まるような、辛いことの中にあるほんの少しの温もりのような。
相棒の犬を撃ち殺す所など、キリキリと胸にきたが、井戸の底をのぞいた時の目まいみたいに、愛のようなものがぐらりとくる感じ。
もの悲しくて、今の季節にぴったりの小説だった。
あとで、もう一回読んでみよう。
夜ごはんは、鰤のフライパン焼き(大根おろし、カボス)、焼き豆腐(昨夜の煮物の残り)と天かすの卵とじ、焼き茄子、麩と葱の味噌汁、玄米菜飯(赤米入り、大根の葉の塩もみ)。

●2005年11月9日(水)秋晴れ

12時から「翼の王国」の撮影。
齋藤君は風邪が悪化したらしく、マスクをしてやって来た。
すでにこの間の撮影(「天然生活」)の時からひいていたけど、あれからずっと休めなくて、熱が出たらしい。
のども痛いそうなので、来て早々に生姜をたっぷりおろした梅醤番茶を作ってやる。
「熱々のうちに一気に飲んだ方がいいよ」と言うのに、ガラスのカップを陽にかざして、おもむろに写真を撮り始めた齋藤君。
しょうがないなあ。
料理は、齋藤君の風邪にいいように、思っていたよりもにんにくをたっぷり使ったら、それが大正解だった。
アフリカで買ってきた、桃ちゃんの器を見たせいもある。
今のところ、毎月1品だけのこの撮影がいちばんアドリブを効かせられ、私の料理もはじける。
パンクって感じ。
3時前に終わり、天気がいいし元気が余っているので、スイセイと買い物に。
図書館にも行った。
なんとなく今、私の周辺はワサワサしている。
『じゃがいも料理』の本が大詰め(今日、表紙のカラーコピーが届いた。あまりに良いので、それを見て興奮)で、今日か明日ゲラが届く予定だし、次の本の企画にも昨日から心躍っている。
ワサワサしているのは、私の心の中か?。
焼き豆腐と白滝煮(スイセイが、焼き豆腐を買い物カゴに入れた)、板わさ(編集君にいただいた、山口のおいしいかまぼこで)、塩豚焼いただけ(出てきた脂で椎茸を炒め、クレソン添え)、ポテトサラダ(スーパーの)、わかめの味噌汁、玄米。
風呂から出て、楽しみにしているドラマ『あいのうた』を見る。
1回目からかかさず見ているが、毎回泣いている。
登場人物が全員いいし、べたべたしてなくていい。
和久井映見とか、すごいおもしろい。

●2005年11月8日(火)秋晴れ

今日もまたいい天気。
布団を干し、シーツも洗う。
あちこち掃除機をかけ、雑巾がけ。
何をやっても気持ちがいい日だ。
お昼に玄米のお粥を作り、フランスの塩をかけて食べる。
1時から、「おかずのクッキング」の打ち合わせ。
雑誌の仕事はしばらく遠慮していたけれど、どこか昔気質で芯が通っている気がして今回はお受けしました。
編集者の方も、とても感じがよかった。
次の打ち合わせまでちょいと間があるので、ミルクティーをいれ、いただいたチョコレートブラウニーでお茶にする。
さあ、3時からは、新しい本作りの方と初めてお会いする。
ちょっとドキドキ。
あー、おもしろかった。
担当の編集君(さんていうより君)は、すンばらしい。
まだ磨かれていない宝石みたいな男の子だった。
私は、自分の用意した(温めていた)企画があったんだけど、途中までは一緒なんだけど、彼の考えていることの方がだんぜんおもしろいことになりそうなので、ついて行くことに決めた。
というわけで、スイセイと街へ出て買い物をし、帰りにお蕎麦屋さんで夜ごはん。
ざる蕎麦や蕎麦がきをつまみに、ビール1本ずつと日本酒を2合呑んで、ほろ酔いで帰ってくる。
寝る前に、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』をまた見た。
楽しいことばっかりいつも考えている、超おせっかいで、善良で、イカレた村人たち。
緑の髪の少年や、納屋で宇宙船を作っているその父親。
自分のことを「ぼく」と呼ぶ少女。
皆に馬鹿にされても屋根から降りず、毎日修理している爺さんの情けない金づちの音。
なぜか綱渡りを練習している男。
明るい日差しの下、村人たちはサッカーで盛り上がる。
喧嘩もするけれど、悪いことが起こると顔色を変えて心配し、誰かが泣いていたらそっとしておいてくれる。
私の好きな世界がここにある。
だから、「TSUTAYA」で1週間借りてきたら、期限まで何度でも見るのだ。

●2005年11月7日(月)秋晴れ

キラキラした天気。
昨日、あれだけ雨が降ったから、大掃除されたのかも。
雲は多いんだけど、光が透けたり重なったりして、ラピュタの雲みたい。
スイセイは、「夏みたいな日じゃのう」と言って、めずらしく眺めていた。
お昼に、玄米餅を焼いて食べる。
あとで明日の打ち合わせ準備と、昨日のレシピ直しをしたら今日の仕事はおしまい。
夜ごはんは、肉じゃが、わかめの刺し身、大根の塩もみ(辛子酢みそ)、生ハムのわさび醤油、納豆、三つ葉の味噌汁〔おとといの湯豆腐のだし残りで)玄米。
風呂から上がって窓を開けると、夜なのに青空。
月夜なのだ。
明日もきっと晴れるだろう。
『サイダーハウス・ルール』と同じ監督の、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を見る。
スイセイは途中で寝てしまった。
エンディングの音楽で目を醒まし、自分の部屋に戻っていったスイセイ。
なので、こんどはひとりで最初から見る。
すっかり泣きはらした目で、トイレに行く。
明日は打ち合わせなので、水をかけて目の周りを冷やし、眠る。

●2005年11月6日(日)曇りのち雨

冬のような寒さ。
11時から「天然生活」の撮影だった。
齋藤君、みどりちゃん、赤澤さん、中野さんというひさびさの組み合わせで、心は和気あいあい。
でも、私は料理の方にせいいっぱいであった。
けっこうくたびれたけど、やっぱり楽しかったなあ。
ずっと、気が高ぶっているような感じだった。
まあ、ひさしぶりだからな、撮影自体が。
終わって皆が帰ってから、ヒラリンとちょっと飲む。
料理の残りものをつまみながら、白ワイン、赤ワイン。
ひさびさにヒラリンともちゃんと向き合えて、二人でいろいろ話した。
スイセイは、もそもそと自分の部屋からやって来てお湯を沸かし、カップヌードルを食べていた。
ところで、最近私は、自分の歳を間違って把握していたことにハタと気がつきました。
12月まではまだ46歳と知って、(なんだまだ若いでないの!)と、損をしたような、得をしたような、そんな気持ち。
というわけで、今日が日曜日だということにも、夜9時になってやっと思い出し、風呂に入って『座頭市』を途中から見る。
11時頃に、撮影残りの酒かす汁で雑炊を作り、お盆にのっけて畳の部屋でスイセイと食べる。
なんとなく、『座頭市』風。

●2005年11月5日(土)秋晴れ

土曜日の午前中って静かだな。
ひさびさに早起きしたので、毛布を洗濯する。
あちこち掃除機をかけ、細かい所まで雑巾がけ。
掃除機をかける時、いつも猫村さんのことを考えている。
昨夜は、『黄色い雨』(フリオ・リャマサーレス著)をずいぶん読んだ。
重くて暗くて、寒くてひもじくて… 、というハードな世界だが、じわじわと読み進むのが心地よい。
スペインと言うと明るい情熱ばかりの印象だったが、暗い方の情熱もあるのだな。
重苦しい淀んだ空気の中に、針の先一点だけ光が見え、その周りがボーッとほの温かいような、不思議な現実。
孤独な爺さんの話だけど、その孤独が半端でない。
首をつって死んだ奥さんの荒縄を、おぞましくていちどは山に投げ捨てるのだが、春になったら雪解けのぬかるみから出てきた。
それを、妻の形見だからと無造作に腰に巻くところなんか、ヒリヒリする。
2時くらいに街へ買い物。
気がつくと、忘れていた微熱が戻ってきて、頭がぼーっとする。
鼻の奥とのどの間に、ビニールの厚いのが1枚はさまっているような。
これはやっぱり花粉症なのか?。
街へ出る小道の途中に、私の好きな家がある。
今日も、なんとなくその家を気にしながら帰ってきた。
こぢんまりした茶色い家には、お婆さんがひとり(たぶん)で暮らしている。
ある日は台所に立つ横顔が、今日は、オルガンを弾いている後ろ姿が、レースのカーテン越しに見えた。
帰ったらすぐに、生スジコの醤油漬けを作る。
この間、丹治君に連れていってもらった六本木のお店のいくらごはんがものすごいおいしくて、スイセイにも食べさせてやりたかったから。
彼女は今日漬けたとおっしゃっていたので、もしや夜ごはんで食べられるのではないかと思って。
卵がバラバラにほぐれるように、時間をかけて、すごくていねいに作る。
漬け汁も、醤油が勝ち過ぎないように、味を思い出しながらやる。
夜ごはんは、いくらご飯、湯豆腐(たら、豆腐、白菜、椎茸、セリ、蕪の葉)。
しかしスイセイは、いくらが苦手であった。
ガーン。
プチプチがいやなんだって。

●2005年11月4日(金)秋晴れ

横向きで、柵の向こうをじっと見ているハル。
首輪をしていないので、冬のキツネみたいなハルだ。
「ハルー」と声をかけると、ゆっくり顔を上げ、つぶらな瞳で2秒ほどこっちを見た。
最近、私とハルは心が通じ合っている気がする。
さて、風邪はどうやら治ったみたい。
なんだか前よりも元気になったみたい。
心の底の方で、わくわく(小さく)している感じ。
今日は、レシピ書きを仕上げて、あとで街まで買い物に出よう。
夜ごはんは、ローストポークの蒸しじゃがいもと人参添え、レタスと葱のサラダ、パン。

●2005年11月3日(木)曇りがちの晴れ

ずいぶんいいような気がするが、昨夜はまた熱(7度5分)が出たから、あんまり信用しない方がいいだろう。
と思いながらも、掃除機をかけたり洗濯したりする。
起きていても、昨日ほどぼんやりしないし、ただ鼻がかゆくて鼻水が出るくらい。
もしかしてこれって花粉症?。
花粉症でも熱が出るんだろうか。
ひさびさにベランダに出ると、景色が変わっていて驚いた。
シュロの木はまる裸。
周りの葉っぱがなくなって、オバQ状態(真ん中に1本、扇が閉じたみたいなのがおっ立っているだけ)だ。
すごく変。
柿の木も枝を落としてあって、真っすぐな切り口が痛々しい。
いつの間に切ったのだろう。
ドングリもイチョウの木も、まだ紅葉はしていないけれど、あっという間なんだろうな。
なんだか気分がいいので、レシピ書きをやってしまおう。
しかしキーボードを打ち込んでいたら、くらっと目まいが。
また熱が出てきたので、しばらく布団に入って温まり、買い物に行く。
夜ごはんは、白菜ととり肉の煮込みうどん(白菜を1/4個入れ、くたくたに煮た)、ハマチの刺し身、たこ刺し、芯とり菜のおひたし(おかか醤油)。
夜、『きょうの料理』の自分が出ているのをスイセイと見て、とても褒められた。
「ええのう、今回のんは一生懸命さが出とるのう。じゃがなんだか腹がへったのう」。
私は、風邪治ったみたい。

●2005年11月2日(水)快晴

昨日よりずいぶんいいような気がしたので、軽く風呂に入ったり、洗濯したりするが、また熱が出てきた。
鼻水も出るし、背中も痛い。
食べ物も味がしなくてつまらない。
なので、干した布団を引きずり下ろし、また寝る。
洗い物をしていて、水の冷たさに寒けがすると、それはもう私の場合ヤバイのだな。
これに気がついたのは、一昨日の前くらいであった。
とにかく今日も1日寝ていよう。
夕方になって起き出し、カレーの試作をやる。
夜ごはんは、大根と豚バラのカレー、白菜とクレソンのサラダ、玄米。

●2005年11月1日(火)快晴

やっぱりダウン。
風邪です。
とにかく、あったかくして寝ています。
海にもみくちゃにされるように、とにかく眠たい。
いくらでも眠れるので、それにまかせて眠る。
夕方、スイセイがおいしいヨーグルト(プレミアなんとか)と、鍋焼きうどんを買ってきてくれた。
夜ごはんは、鍋焼きうどん(スイ作)、果物いろいろ。
果物が、とてもおいしい。
皆(ササ坊、マキコちゃん、ちよじ、ヒラリン)にもらった果物をむいてもらって、布団の中で食べる。



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