2006年2月上

●2006年2月10日(金)快晴

昨夜は、ごはんが終わってからスイセイと話が始まり、途中から私は泡盛を飲んだ。
ひさしぶりにたくさん話して、お互いに笑ったり、涙ぐんだりしていたんだけど、最後に喧嘩になった。
スイセイに怒られたことに対して、私が素直に謝らないから。
「なんでみいは、自分にできないことがあるのを素直に認めんの?。悪いところや、自分の弱いところを体の中にためて、なかったことにしてしまうの?。素直に外に出して、改めればええじゃん」。
スイセイは、まったく飲んでいない。
どっぷりと暗い気分で風呂に入り、寝たのは5時。
なので今日は12時まで寝る。
スイセイは、朝から作業をしていたらしい。
私は、原稿書きに励みます。
今夜、スイセイはお出掛けなので、ひとりの夜ごはん。
『クレヨンしんちゃん』を見ながら食べる。
きのこご飯(舞茸、エリンギ、干し椎茸、ごぼう)、ほうれん草のおひたし、カマ大根(昨夜の残り)、豚汁。

●2006年2月9日(木)快晴

青い空に、飛行機が、しらすのように飛んでゆく。
飛行機雲がまったくないのだ。
洗濯物を干し、パソコン周りの仕事を片づけ、国立へ。
『フランス日記』の、表紙周りの打ち合わせです。
表紙、とてもたのしみなことになってきている。
まだここには書けないが、どうか皆さんも、楽しみにしていてください。
昔からある、老舗の喫茶店に場所を替え、丹治君と浅井さんと別件の打ち合わせ。
カフェオレをたのむが、向こうでおばさんが食べている料理が超気になってしまう。
マカロニが入って、トマトソースとホワイトソースと両方かかっているみたい。
しかも、ものすごいボリュームだ。
ウェイターのおじいさんに尋ねると、あれはグラタンだそう。
6種類くらいあるグラタンメニューの中から、「茄子のグラタン」をたのむ。
何十年も変わらないような古くさい喫茶店の味で、ちょっとジャンキーさもありました。
ソースもチーズもたっぷりで、茄子よりもマカロニの方が多いし、茹ですぎたみたいなほうれん草(冷凍かも)がたくさん入っている。
私の中のジャンキー魂が、ふっふっと喜んでいるのを感じながら、すっかり平らげてしまった。
丹治君と浅井さんは、シシリア風のスパゲティをたのんだ。
3人分はありそうなスパゲティを、私も分けてもらいながら、ぜんぶ平らげました。
帰りの電車の中で、丹治君と大事な話を、ぽつり、ぽつりとした。
でも、なんだか臭い匂いがしていた。
つばを濃くしたみたいな匂い。
けれど、そんなには気にせずに、丹治君との話の方に気持ちは集中していた。
それでもふと気がついて、自分が巻いているマフラーなのかと思って、くんくんしてみたり、前に座っている作業服を着たおじさんのことを疑って、じろじろと見た。
ふと後ろを振り返ると、ホームレスのおじさんが眠っている。
黒い靴を履いているのかと思ったら、裸足なのだった。
うーん。
いつか何年もたって、丹治君と話たことを思い出す時、この匂いもセットになっているのかもしれない、と思った。
それが人生というものだ。
吉祥寺に着いて美容院に行き、ひさびさに「おいしい魚屋」さんに寄る。
平目のお刺し身を買おうとしたら、アイナメを奨められた。
なので、サヨリとアイナメのお造りをお願いする。
鰤カマも新しそうなのがたっぷり入って380円だったので、買う。
近くの八百屋さんは、店先がなんとなしに華やいでいた。
あさつき、菜花、サラダ玉葱(新玉葱みたいなの)、新じゃが、絹さやなど、すっかり春の野菜がそろっているのだ。
サヨリとアイナメも春の魚だ。
買い物をしていて季節を感じたのは、考えてみるとすごくひさしぶりだったなあ。
夜ごはんは、お刺し身盛り合わせ(アイナメ、サヨリ)、あさつきの辛子酢味噌、カマ大根、浅蜊のそのまま蒸し、すまし汁(おまけでもらったアイナメのアラで)、玄米。
今日はすまし汁にしたけど、だしをとったあとのアイナメは、骨のまわりについた肉までおいしくて、ブイヤベースにしたらさぞかしおいしいだろうなと思った。

●2006年2月8日(水)快晴、暖かい

朝の9時ぐらいに、みどりちゃんに電話をかけた。
窓を開け、まっ青な空を見上げながら。
みどりちゃんは早起きだから、もちろんさっぱりした声をしていました。
話の内容も、目の前がさっぱりと片づいたような、見通しがいいような明るい話だったので、2度寝しようと思っていた私も、つられてスッキリ起きてしまう。
布団を干し、ひさしぶりにガーガーと掃除機をかけ回す。
郁子ちゃんが泊まった時の羽毛が、まだあちこちに落ちているのを、懐かしいような気持ちで思っていたけれど、それもきれいに吸いとりました。
洗濯もバッチリやり、セーターまで洗った。
スイセイも今朝は7時に起きて、部屋で何かをやっている。
「スイセイ・ショー」のもろもろの用事で、やることがたくさんあるらしい。
早めのお昼に、スイセイは玄米チャーハンと餃子の残り、私はカレーうどんとゆかりおにぎり(ふたつとも昨日の残り)を食べ、原稿書きに入る。
大テーブルに、作ったまな板をずらっと並べたまま、スイセイは部屋で休憩中。
窓から黄色い光が入り、まな板のいい匂いもして、郁子ちゃんが忘れていった、女の人のピアノの音楽がとても似合う。
いい景色なので、写真を撮る。
こうやってずらっと並べて、まな板の木目や、節の模様を見比べながら、誰にどれを渡そうか、決めるのだそうだ。
ひとりひとりの名前をパソコンで打ってカードを作り、名前を見ながら、それぞれの人のことを考えながら、まな板の上に置いています。
夜ごはんは、塩鮭、湯豆腐(豚肉、ほうれん草入り)、干し椎茸と長いもの味噌汁、生卵、玄米(ハヅキにもらったもちきび入り)。

●2006年2月7日(火)曇り

昨夜の雪は、どんどん溶けている。
ちょっとだけ淋しいような気もするけれど、少しでも暖かなのが嬉しい。
起きてから、布団の中で取材のテープをえんえん聞く。
風呂に入って、カレーうどんを作ってスイセイと食べ、それからは原稿書きに励む。
スイセイは、注文のまな板を包装したり、クロネコヤマトに持って行ったり。
電話もたくさんかけたり、かかってきたりしていた。
その間、ずっとパソコンに向かう。
ミルクティーをいれたり、ミルクコーヒーをいれたりしながら。
夜ごはんは、餃子を作った。
キャベツは少なめにして、にらとひき肉をたっぷりめにし、長野君にもらったウイキョウの粉もけっこう入れた。
おいしくできました。
あとは、レタス、きゅうり、わかめのサラダと、味噌ラーメン(白菜ともやし入り)。
スイセイは、香西美幸の民謡に聞きほれながら餃子を食べている。
「おいしいか?」と聞くと、思い出したように、「うまいのう」と言った。

●2006年2月6日(月)曇り一時晴れ

昨日の夜ごはんの献立に、納豆を書くのを忘れてしまった。
普通のと、ひきわり納豆を合わせて、5パックも使った。
私は、大きな丼で納豆を作り、向かい合って皆で糸をひきながら食べるのに憧れていたんだな、と食べながら思いました。
子供のころ、うちは大家族だったからな。
多い時は9人いた。
ひい婆さん、おばあちゃん、おじいちゃん、父、母、兄、姉、双子の兄、私だ。
ひい婆さんが幼稚園のころに死んで、それからはずっと8人だった。
朝早く、納豆売りのおばさんが自転車で通ると、母はいつも買った。
紙の包みの間に、黄色い辛子がべったりついて、刻んだ葱もたっぷり挟まっている。
それを大きな丼にあけ、しつこくしつこく混ぜて作った。
私たち子供は、丼に残った最後の納豆にご飯を入れて食べるのが好きだったから、よく取り合いになった。
丼ごと抱えて食べられるからなのか、おいしさのエキスが残っているような、とにかくその食べ方がいちばんおいしかった。
なんてことを、今朝布団の中で思い出していた。
昨日は、なんだか楽しい1日だった。
うちが大家さんで、皆が下宿しているみたいだった。
お酒も飲まずに夜ごはんを囲む感じは、少し照れくさくもありながら、なんか、甘え合っているような、許し合っているような。
買い物には行ってないけど、うちには食べ物がいつもあって、残りご飯でおにぎりを作っておいたら、誰かが食べていつの間にかなくなる、みたいな。
家族って、こんな感じなんだろうな。
もっと広い家に暮らして、それぞれが皆自分の本業の仕事をしていて、こんな風に皆で暮らせたら、すごくおもしろいかもしれない。
なんて思った。
不思議な温かさだった。
というわけで、それなりにぐっとくたびれが出て、昨夜は10時前に寝てしまった。
そして今朝は、2時までぐっすりだった。
洗濯物を干す時、飛行機雲が、まっすぐに空を横切っていた。
太く、長く。
夕方、食料が底をついたので、スイセイと励ましながら買い物に出る。
新聞の天気予報によると、今日もこれから雪マークだし、明日も雪マークなので。
うちの杏の木は、蕾ができつつあった。
まだ固いけど、ピンクっぽくもある。
沈丁花の蕾も、できつつある。
寒い寒いと言っても、自然界はちゃんと春の準備をしているのだな。
いろいろと買い込み、今夜のメニューをスイセイに選んでもらう。
「1番塩鮭とニラ炒め、2番餃子、3番牛丼と茹でブロッコリー」。
すぐに3番に牛丼に決まりました。
冷蔵庫には、撮影の残りの紅しょうがもある。
ちょっと遠回りして、散歩して帰ってきたが、今日の寒さは本格的だ。
スボンの中のお尻や腰にまで、冷えがまわってきた。
帰ってからは、原稿書きをやる。
夜ごはんは、牛丼(もちきびご飯)、めかぶ(新ものと書いてあった)、茹でブロッコリー、トマト(春トマトと書いてあった。熊本産)、サツマ芋の味噌汁。
夜、雪が降ってきた。
しんしんと、静かな夜です。

●2006年2月5日(日)快晴

ぽっかぽかだ。
今朝、起きてリビングを見たら、郁子ちゃんが羽まみれになって寝ていた。
髪の毛や顔の上にも羽毛がのっていて、セーターにもついていて、白鳥の精みたいだった。
羽毛の寝袋に穴が開いていたらしい。
起きてすぐに、まず羽をとる。
ナツコもスイセイの手伝いで来たので、温かいお蕎麦を作って皆で食べる。
昨日は、インタビューが終わって、編集さんにいただいた日本酒を飲み始めたら、くいくいと飲んでしまった。
それで、郁子ちゃんは泊まり、今もまだいる。
畳の部屋で本を読んでいるうちに、ごろごろと寝てしまった。
なんか不思議。
合宿みたい。
鳥がペチャクチャと鳴いている。
『まる子』と『サザエさん』も、皆で一緒に見る。
夜ごはんも、皆で。
ソーセージ炒め、海老と豚とエリンギの中華煮込み、大根の塩もみ、わかめのわさび醤油、厚揚げの味噌汁、玄米ごはん。
買い物に行かなかったので、変なメニューになったが、皆でおいしく食べました。

●2006年2月4日(土)快晴

天気予報では、今日はとても寒いと言っていたけど、あっけらかんと暖かいではないか。
朝起きたら、ナツコがいた。
スイセイの手伝いで来てくれているらしい。
洗濯物を干しながら、ひとつも雲がないまっ青な空を仰ぐ。
風呂にゆっくり入り、あちこち掃除をする。
豆まきのつぶれた豆も吸い込む。
床にワックスも塗った。
全部きれいになってから、太陽が当たっている四角い光のところに寝そべってみる。
目をつぶると、赤い。
やっぱ太陽はすごいな。
温かさがちがう。
なんだか、体の中にワクワクした明るいものがあるのを感じます。
今日は郁子ちゃんがうちに来て、対談をするんです。

●2006年2月3日(金)快晴

ぽっかぽか。
お昼にお弁当を食べていたら、しおり&和楽が来た。
うちの近所の歯医者さんで、幼児の定期検診があったそうだ。
ちょっと見ない間に、すっかり子供の顔になっている和楽。
今年の7月で3歳になる。
「これはなに?」と、なんでも聞いたり、よくお喋りもしていた。鼻の詰まった喋り方で。
驚いたのは、「DVD」とちゃんと分かっていて言えること。
私など、今だに憶えられなくて、MDとかCDとか言っているのに。
ビデオとか、DVDとかの器械が好きみたいで、スイッチを教えるとすぐに憶えて自分でやっていた。
いくつも並んでいるボタンの中から、間違わずにちゃんと押すことに、とても感心しました。
私なんか、何度やっても憶えられないのに。
ふすまのすき間に、DVDのケースをちょうどよく挟んで、喜んだり。
これって、工作の上で、今のスイセイが喜んでいることと同じだ。
「男ゆうのはの、子供の時から物の仕組みに興味があるんじゃ」と言っていた。
本当に、こんなに小さい時から、興味の向かい方がはっきりしているんだな。
節分の豆(甘いの)も、デコポンも、もりもりと食べていた和楽は、体いっぱいに、無邪気さがはち切れそうだった。
DVDを一緒に見る時、隣に座り、私の太ももの上にちょこんと片手をのせていた和楽。
あれはな何なんだろう。
安心するから?。
それとも、一緒に同じ物を見るという喜びが増すからか?。
いつも、しおりちゃんにそうやっているんだろうか。
もう少し大きくなったら、1日中和楽を預かって、いろいろ観察してみたいものだ。
さーて、そろそろ原稿書きを始めよう。
夜ごはんは、カレーにする。
原稿書きにはまりたいので。
この間のビーフシチューの残りをのばして作る予定。
夜ごはんは、カレーライス(ハヅキにもらった波照間島のもちきびをご飯に炊いた)、コールスロー。
夜、12時前にスイセイが気がついて、豆まきをやる。
今年はエバ子にもらった豆で、小さい声でポイントだけまいた。
でも、本物の思いをこめて、1声ずつしっかりやった。
たぶん、スイセイも同じ気持ちだったと思う。
そういう顔をしていた。
「鬼(きたないもの)は外、福(きれいなもの)はうち」と。

●2006年2月2日(木)晴れのち曇り

たまっていた洗濯物を干し、早いうちに買い物に行く。
まるで化粧をせずに、帽子をかぶって。
でも、気分はスッキリと晴れ晴れしている。
この10日間というもの、中身が濃くてとても楽しかったけれど、たくさんの人に会ったり、街へ出掛けたりして、埃のようなものがまとわりついた。
埃と言ったら悪いことのように聞こえるけれど、もちろん良いことも悪いことも混ざっている。
体の周り1cmくらいに舞い上がっていた埃が、やっと落ち着いて肌になじんだような感じ。
やっと戻ってきた感じ。
さーて、今日から原稿書きに入ろう。
夜ごはんは、筑前煮、ホッケの開き、小松菜のおひたし〔生姜醤油)、聖護院大根の塩漬け、わかめの味噌汁、玄米。
味噌汁のだしは薄めに、筑前煮の野菜も小さく切った。
まだ、スイセイのくたびれが元にもどってないから。
お腹も、いまいちみたい。
夜、風呂から上がったスイセイは、痩せて体の幅が狭くなっていた。

●2006年2月1日(水)ずっと雨

冷たい雨が降っている。
じとじという音を聞きながら、眠ったり、本を読んだり、また眠ったり。
1日中パジャマで過ごす。
眠りながらも、いろいろ考えたり。白い紙にメモしたり。
でも、そのまままた眠ってしまったり。
夕方起き出して、ミルクティーをいれていたら、「こういうのを氷雨言うんで」とスイセイが言った。
もう少し寒かったら雪になるような、氷みたいな雨のこと。
外で働いている人はたいへんだろうな、と思いながら窓を開しめる。
夜ごはんは、ずっと冷凍してあったビーフシチューを温め直し、新じゃがの鍋蒸し焼き(みどりちゃんの伝言レシピの鶏とローズマリーぬき)、人参とレタスのサラダ。
じゃが芋が、ねっちりとすごくおいしくできて感動した。
ル・クルーゼの鍋に入れ、塩少しとオリーブオイルをふり、アルミホイルをかぶせて蒸し焼きにしただけなのに。



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