2006年3月上

●2006年3月10日(金)雨、とても寒い

昨日は、とても楽しかった。
商店街で買い物したり、靴屋さんにも行った。
前に、「魯山」で注文して買ったお気に入りの靴のお店が、谷中にあった。
丹治君が連れていってくれました。
お店というよりは、作業場という感じ。
靴用の頑丈なミシンが2台あって、ご夫婦がひとつひとつ手作業で作っていらっしゃる。
自分が履いている靴の、親と生まれた場所に会えるというのは、とても腑に落ちる喜びだった。
作業場の空気はとても落ち着いていて、奥さんの感じも、作っていらっしゃる靴と同じムードが漂っていました。
買いたい靴がすぐにまたみつかったんだけど、足に合うかどうかを、奥さんはじっくり検討してくださった。
私の足をものさしで計ったり、つま先を何度も押さえてみたりして。
壊れたら、修理もしてくれるのだそう。
ここに来て、奥さんにお会いしたことで、今持っている靴を大事に履き続けようという気持ちの重しができた。
行って良かったなあ。いいものを見た気がします。
丹治君の取材のことは、ここにはまだ書けないけれど、途中から倫子ちゃんも来てくれて、とても楽しい夜になった。
普段は編集者と作家の関係なのだけど、なんだか、丹治君のままなんだけど、なんというか、歴史というか厚みというか、親密さも混じった、知らない顔の丹治君を見た。
この取材を初めてみて、人ってほんとうにおもしろいなーというのがいちばんの感想だが、取材が終わるたびに、その人のことをますます好きになってしまっている。
それはたとえば、結婚して相手の家族のことを知ったりすることにも似ている。
きっと、子供のころの話を聞いたりして、いろいろ想像するからだろうな。
今日は、2時に国立で待ち合わせ、『フランス日記』の表紙まわりの打ち合わせ。
なんだか、とても楽しみなことになってきています。
今日の丹治君は、いつもの丹治君にもどっていました。
丹治君がというよりは、私の見え方がという意味だと思うけど。
そういうことも、おもしろい。
というわけで、1時間くらいで終わって三鷹からバスで帰り、スーパーで買い物。
帰ってから、昨日商店街で買った製麺屋さんの蒸し麺を使って、丹治君が作ってくれたのと同じ焼きそばを作る。
オイスターソース味なんだけど、それほど強くなくて、塩とほどよく混ざって、麺のおいしい味が感じられる作り方。
スイセイに食べさせてやりたかったのです。
豆苗も真似して入れた。にらも加えてみた。
でも、生姜を炒めるのを忘れてしまった。
夜ごはんの時間になってもお腹が空かないので、白いご飯を炊いて、浅蜊と小松菜のスープだけ作り、9時半くらいに食べました。
ひさびさの白いご飯は、ピカピカに光っていた。
今日、お米屋さんに注文したから、精米したてなのだ。

●2006年3月9日(木)薄曇り

昨日と打って変わって曇りだけど、そんなには寒くない。
天気予報では、冬の寒さに逆戻りなんて言ってたけど。
今日は、これから丹治君の家に取材に行ってきます。
皆に会えるのが、じんわりと嬉しい気持ち。

●2006年3月8日(水)快晴

ポッカポカ。
天気予報の通りになりました。
あんまり暖かいので、お昼を食べてすぐに街へ買い物に出た。
渋谷に行くスイセイと、自転車をひっぱって歩く。
とちゅう、高校生がアイスを食べていたのがおいしそうで、私もコンビニでカリガリ君のソーダ味を買う。
てろてろ歩きながら食べるアイスは最高だった。
小学校の梅も、紅白のが6部咲きくらいになっていた。
紫陽花の新芽も出始めた。
しばらく出歩かなかったから、あちこち春の匂いがぷんぷんしていました。
紀伊国屋で、大阪鮨の実演のおじさんが来ていた。
なので、好物の鯖姿寿司を買う。
今夜は、鯖姿寿司とうどんにする予定。
昨夜テレビで見た、「葱ごまうどん」というのを真似して作ろう。
あとは、ほうれん草と小松菜のおひたし。
明日は丹治君の家に取材に出掛ける。
楽しみだなあ。
そして毎週水曜日にやるドラマ『神はサイコロを振らない』を、1回目からかかさず見ていて、とても楽しみにしている。
小林聡美も、ともさかりえも、武田真治も、山田太郎も、皆すごくおもしろい。
住んでる家も、『すいか』っぽくていい。
今日はこれから、取材テープを聞き直そう。

●2006年3月7日(火)曇りのち晴れ

昨日は、春一番が吹いたそうだ。
一歩も外に出なかったから、私はぜんぜん知らなかった。
朝方、イタリアの台所の夢をみました。
羊飼いの小屋みたいなところだった。
戸口から陽が当たった庭が見えて、鶏や犬がちょろちょろしていた。
山の途中みたいな、傾斜のある場所だった。
食べ物についてもいちいち覚えているので、起きてからすぐに紙に書き出した。
茹でっぱなしのじゃが芋が出てきたのは、昨夜寝る前に読んでいた『犬が星見た』で、武田百合子さんが「うらごしじゃがいも」をよく食べていたからだろう。
きっとマッシュポテトのことだ。
フィンランドのホテルでだったけど。
こんど、丹治君のところに料理を作りに行くのだが、そのメニューも寝ながら考えていた。
夢から覚めながらも考えていたので、材料や手順なども、バッチリ頭にインプットする。
明日、買い物に出て材料を揃えよう。
「翼の王国」で連載していた「記憶のスパイス」が本になるのだが、そのまえがきについても、昨日から書き始めた。
原稿書きの合間に窓を開けると、森の中に響き渡っているような鳥の声。
みずみずしく、空気もキラキラしている。
大家さんの沈丁花の蕾が、赤紫のボタンみたいに見えます。
3時を過ぎてもまだまだぜんぜん明るくて、4時半を過ぎてもまだ明るい。
庭の方の杏の花は今にも咲きそうだし、白い梅の花は、片側だけ固まりで咲いている。
今がいちばん気持ちがいい時かも。
というわけで、今日も今日とて原稿書き。
夜ごはんは、油揚げとにらの塩炒め、目刺し、ししゃも、大根おろし、白滝の甘辛炒り、わかめの刺し身、温泉卵のおすまし、玄米。
「完ぺきなごはんじゃったの」と褒められた。
スイセイの好物ばかりだし、糖尿病にもよさ気なものばかりだからだ。

●2006年3月6日(月)晴れのち曇り

あちこち埃が気になっていたが、ずっと掃除機をかけないでいた。
顔がかゆくなってきたので、さすがに今日はかける。
お昼に玄米をお粥にして、ひじきだとか菜の花のおひたしとか、ふきのとう味噌だとかいろいろ並べて食べる。
さーて、今日もまたがんばるべ。
何をがんばるかって、もちろん原稿書きです。
スイセイが用事で恵比寿に出掛けたこともあり、ぐっと集中できました。
夕方にはタカシ君の原稿を仕上げ、ひとまずお送りする。
さーて、これからスイセイの分を書き始めよう。
夜ごはんは、焼き肉(サニーレタス、青じそ、にら、キムチで包んで)、わかめスープ、玄米。
昨日スーパーで、サニーレタスの元気なのが100円で売っていた。
群馬産の、春のサニーレタスだそうだ。
ビニールに入ってないから、フリルの部分が自由に広がっていて、すごくおいしそうだった。
サニーレタスを見て、焼き肉にしようと決めた次第。

●2006年3月5日(日)晴れ

昨夜は楽しかったなあ。
「トネリコ」の料理はどれもおいしく、ひと皿出ると4人ががっついて、あっという間になくなった。
食べるたんびに、「あーうまい」「うーんうまい」と口々に言いながら。
アムたちは4月から北海道に行くから、自然と送別会みたいになった。
ふたりとコロちゃんが東京にいなくなることをチラッと思うと、スッと淋しくなるけど、すぐにまた楽しみな気持ちになった。
だってこれは、ふたりの夢の実現だから。
スイセイも手伝いに行くし、私も遊びに行くだろう。
北海道の暮らしを思い描きながら、4人で1冊の本を眺めたり、炬燵を囲むようにして、飲んだり食べたりした。
サンが何か炒め物をして、ちょっとだけ煙が店に充満する時、家族感が増して、幸福な気持ちになりました。
帰りの電車を待っている時、ものすごく寒かった。
国分寺のせいもあるかもしれないけど、世の中がこんなに寒いとは知らなかったなあ。
いつも家の中にこもって、頭の作業ばかりしていたから、冷たい風にさらされているだけで、自然の中にいるみたいな感じがした。
砂ぼこりや、光や、そういうものをひさしぶりに体がかぶった1日だったような気がしました。
というわけで、今日はずーっと寝ていた。
頭の中では、アムとカトキチの原稿を仕上げていました。
3時に起きて風呂に入り、ひさびさに買い物にも行った。
『まる子』も見ずに、さーて、これから原稿を書こう。
夜ごはんは、タコの刺し身、塩鮭(残りもの)大根と油揚げの煮物、菜の花添え、水菜とじゃこのサラダ(辛子酢味噌)、納豆、玉葱の味噌汁、もちきび入り玄米。

●2006年3月4日(土)快晴

10時過ぎに、アムプリンのふたりの家に出掛ける。
今日は皆で、北海道移住で使う工具を買いに行くのです。
アムプリン号に乗って、いざ町田に出発。
どうして町田なのかというと、スイセイがお奨めの100円ショップ(工具が充実している)があるというので。
車っていいな。
陽が当たって中は温かいし、乗っているだけで、いい景色が見られる。
100円ショップは、思ったより規模が縮小され、けっこうショボイ感じだった。
でも、そのことには誰も触れずに、それぞれの買い物をする。
私は、チキンライスを船形に抜く型や、マルタイラーメンのいろんな味のを買った。
たまにスイセイのお供で吉祥寺の100円ショップに行っても、何も買う気にならないんだけど、旅先で、ぶらりと地元スーパーに入り、見るものすべてが物珍しい、というような気持ちになった。
帰りはあっという間に着いてしまったけど、本の取材で聞き逃していたことがあったので、車の中で少しインタビューみたいになった。
コロちゃん(犬)は、スイセイのことを何度見ても覚えられなくて、さっきまでなついていたのに、ちょっと時間がたつと別の人だと思うらしく、うなり声を上げていた。
コロちゃんの散歩にも行った。
野川に沿って、ずっと歩いた。
沈丁花は、下の方から少しだけ開いている花があった。
まだ匂いはしないけど、もうすぐなんだろうな。
コロちゃんに引っぱられて走ってくるアムは、おでこが出て、にこにこして、中学1年生みたいだった。
アムもカトキチも、コロちゃんが行きたい方に向かって、歩いて(引っぱられて)いくという散歩の仕方だった。
(へえ)と、私は感心した。
もう少しで家に着きそうな道で、コロちゃんは歩きながら後ろを振り返り、スイセイのことをじーっと見ていた。
(この人、誰だっけ?)という感じで。
腹ぺこで帰りつき、ちょうど6時前になったので、皆して「トネリコ」へ。

●2006年3月3日(金)晴れ

ひさびさによく晴れたから、布団を干そうと思ったら、よその家族のがいっぱい干してあって干せない、という夢をみて起きる。
洗濯物を干す時、輪を描いて上に上に登っていく黒っぽい鳥を2羽みつけた。
あれは、とんび?。
杏の木には、めじろにつぐみ。
ハルは、せっせとあっちに行ったり、こっちに行ったり忙しそう。
黒猫をみつけたり、散歩の犬をみつけたりすると、大急ぎで柵のところに駆け寄って、吠えている。
「ハル〜」と呼ぶと、今日もまた「クィーン」と甘え声を出した。
昨夜、タカシ君をインタビューした時のテープをまた聞いていたのだけど、ふたりの会話を聞いていて、(私ってずれてるかも)というのを確認した。
何度も同じ質問をしていたり、盛り上がっているタイミングにずれたことを言って、話の腰を折ったりもしている。
本人はつっこみのつもりなんだけど、ぜんぜんつっこみになってない。
相手の話がいちどに頭に入らないみたいで、自分の納得がいくまで、しつこく聞いたりもしている。
マイペースなのはいいんだけど、脳みその容量が少ないのと、思い込みが激しいのと、感覚的なのが合わさってそうなるのだろうか。
とくに、酔っぱらうとその傾向が強くなるみたい。
最近、スイセイに怒られていたことをやっと自覚した。
うーん。やばいな、私って。
今まで皆、そういうことを温かく見守っていてくれたんだな。
こんど、そうなりそうになったら、ぐっと反省の気持ちに立ち戻ってみることにしよう。
さーて、今日もまた原稿書きだ。
夜ごはんは、ひな祭り用のともすけパイを焼く予定。
豚タンと花豆、白インゲン豆と、お芋のパイです。
すごく楽しみ。
パイは、とてもおいしかった。
豆もお芋もねっとりとして、濃厚なおいしさだった。
なんか、外国のレストランに行ったような、贅沢な気持ちになった。
ごぼうと生ハムのサラダを作り、パイだけではお腹がたまらないスイセイには、蕎麦をゆでてやる。

●2006年3月2日(木)雨

雨の中、チーチーと鳥が鳴いている。
裸の木の上の方に、ちびっこいのが1羽とまっているのが見える。
シジュカラだろうか。
なんとなく明るい雨で、外が綺麗に見える。
ベランダの水滴も美しい。
昨夜のスイセイ取材は、とても楽しかった。
こんなに長いこと一緒にいるのに、初めて聞いたような話もあった。
単に、私が忘れてしまっていたのかもしれないが。
長野君と田中君は終電で帰って行ったが、本当はもっとゆっくりしていって欲しかった。
なんか、私ってべたべたしているなあと、昨夜は自分でもすごく思った。
ふだん、ひとりで文章にこもっているからなのか、好きな人たちに会うと、いつまででも一緒にいたくなってしまう。
仕事なのに、困ったものだなあ。
それからも、まだまだスイセイへのインタビューは続き、3時くらいにふたりでバッタリ寝ました。
というわけで、今日は2時まで寝てしまった。
寝ながら、文章の書き出しから1ページ分くらいまでをつらつらと書いていたが、起きてみたらすっかり忘れ去られている。
なんとなく、今日ぐらいはいろんなことを休みにしようと思っていたのだが、やっぱり、新しい原稿を書き始めよう。
夕方、クッキーを焼いた。
夜、田中君が写真のベタ焼きを届けにくるので、おやつにあげようと思って。
夜ごはんは、ラムとキャベツのジンギスカン風炒め、鰤のヅケ(昨夜の残り)、水菜のナムル、さつま芋の味噌汁、白いご飯。

●2006年3月1日(水)曇り

けっこう寒いけど、ベランダから下をのぞいたら、ハルがタイルに腹ばいになっていた。
暖かいんだろうか。
ここ3日くらい続けて、ハルが同じ場所にいるのをちょうど見かけた。
「ハル〜」と呼びかけると、上を向いて、つぶらな目でこっちを見ながら、「ウォーン、クォーン」と、甘える時に出る声で1回だけ鳴く。
起きてすぐに、昨夜のうちに生地だけ作っておいた、サーターアンダギーを揚げる。
ぽっくりと、とても上手にできた。
朝ちゃんのさつま芋も、薄く切って揚げた。
食べたい人がいつでも食べられるように、ざるにのせて出してある。
さーて、今日もまた原稿書きだ。
今日からタカシ君のを書く。



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