2007年3月上

●2007年3月10日(土)晴れ?

昨夜は、10時前に寝てしまった。
5時に起きました。
お茶を沸かしてペットボトルに詰め、では中国に行ってきます。
5時45分に、タクシーが迎えにきてくれる。
■■■スイセイ留守ごはんX2・1日目■■■
というわけで、けなげな生き物「みい」が出てった。
幾日も前から、中国行きを楽しみにして暮らしていた。
まるで憑かれたように、なにか大きなものへ捧げるようにして生きてきた。
そういう特別なものとの出会いは幸いである。
合掌。
早朝、みいを見送ってしばらくぼーっとしていた。
故あってキャンセルした方のタクシーが6時に来て、丁重にお帰りいただく。
情けない風のおじさんの姿が残り、胸が苦い。
土曜朝のテレビはどのチャンネルも同じ話題(ニュース)を繰り返している。際限なく。
頭が馬鹿になる。
朝ご飯:昨夜の残りの玄米に、豚と筍炒めたの。
そのまま朝寝?昼寝?

みいが出ていって、やはり何かの留め金がはずれてゆるゆると自我がふくれる。
入れ物からはみ出している。
だらだらと惰眠、惰時間、惰食をむさぼる。
どこまで行くか試すくらいの気持ちで、むさぼるむさぼる。
昼ご飯:ビスケット、ソーセージ生まるかじり、マルタイラーメン。
夜ご飯:うどん乾麺を茹でて、湯を切り、生卵と醤油を加えたの。
椎名林檎のテレビ、椎名林檎はそれ自体を演じている。

●2007年3月9日(金)曇り時々晴れ

12時まで寝てしまった。
おととい昨日あたりから、東京はけっこう肌寒い。
でも、3月というのはこういう感じだったなと思い出す。
三寒四温だもの。
明日からまた中国へ出張なので、旅支度をのんびりやる。
自分のものだという目印をつけたいとスイセイにお願いしたら、スーツケースの取っ手のところに赤いバンドをつけてくれた。
イニシャルのシールも貼ってくれた。
「りうが保育園の時にの、ヒヨコ組じゃったけえ、パンツや持ち物にヒヨコの絵を描かされたのう」。
それにしてもスーツケースって、荷物がたくさん入るんだなぁ。
明日は朝が早いので、夜ごはんはいつもより早めにする予定。
豚こまとクレソンとルッコラの炒めもの、アスパラの鍋焼き(オリーブオイル、塩)、塩もみ人参とひじきとみょうがのサラダ、納豆、たくわん、白菜漬け、大根の味噌汁、玄米。

●2007年3月8日(木)晴れ

風呂場の下の杏、上の方の花が咲き始めた。
11時から「きょうの料理」の撮影。
いつものように、女ばかりの婦人会風でとても楽しかった。
川原さんに私の十八番をお教えするという料理教室風の連載なのだけど、カメラマンのヒロセも、スタイリストの大畑さんも、編集の鷲尾さんも、教わった料理を家で活用しているそうだ。
もともと読者の方々に届けるものなんだけど、まずは身近な人たちが作ってくれているのが、とっても嬉しい。
この連載が終わるころには、皆、かなり料理上手になっていることだろう。
今日は、ヒラリンのかわりにリーダーがアシスタントをしてくれた。
次回の打ち合わせをしたり、前回の校正もやって、4時くらいに全部終わった。
スイセイとリーダーを誘って、てくてく歩いて「横尾」へ。
かおるちゃんとお茶を飲み、そのまま4人で近所のおいしいお蕎麦屋さんへ。
板わさ、ほたるいかの沖漬け、出し巻き卵、蕎麦がき(ひき立てのそば粉で)、そば粉が違うざる蕎麦3種(かおるちゃん、スイセイ、私)、かけ蕎麦(リーダー)。
スイセイはビール、私とリーダーは熱燗をちびちび、かおるちゃんはそば茶。
10時から『拝啓 父上様』があるから、早めに帰るつもりだったが、リーダーの家にお邪魔して、皆で見ることに。
同じアパートのヨウコちゃんも来た。
皆に囲まれて集中できないかと思ったら、八千草さんがとても素晴らしく、ぐいぐい引き込まれて、私はすっかり泣いてしまった。
その後は、お茶を飲みながらひたすらお喋り。
遅くなってナツコが仕事から帰ってきたので、さらにお喋り。
2時くらいに解散となった。

●2007年3月7日(水)快晴

布団を干していたら、「ホケッキョ、ホー、ホケッキョ」という声が聞こえた。
(ウグイスかい?)と思って鳴き声のする方を探すと、梅の木のてっぺんにひよどりが1羽、口も動いています。
ひよどりは、他の鳥の鳴き真似をすることがあるって、前にどこかで読んだ気がする。
どうりで、ウグイスにしてはたどたどしいし、あきらかにちょっと間違ってるんじゃないのっていう感じだった。
朝ごはんを食べ、スイセイとスーツケースを買いに行く。
デパートや鞄屋さんをあちこち巡り、スイセイにも見てもらって、とても気に入ったのがみつかった。
うーんといい物でもないけど、しっかりした作りの日本製。
明日の撮影の仕入れをして、ムーバスで帰ってきた。
うちのムーバスは、子供が「こんにちは」と乗ってくると、運転手のおじさんも「はい、こんにちは」とのんびり返事をする。
年寄りが乗ってきたら、近くの人がサッと席を立ち、気持ちよく替わる。
私たちはスーツケース持参だから、いちばん後ろの席に座っていて、車内の様子がよく見えた。
OL風の女の人は、スーパーの買い物袋をふたつも持っているのに、足の悪いおばあさんに席を譲ったり、そのうち空いた別の座ったり。
また誰かに譲って立ったりして、自分が降りる停留所までに、まったくの善意からバスの中をすごく移動していた。
こういうのを『ピタゴラスイッチ』で、この人が動いた場所を点線でたどってみたりしたらおもしろいんじゃないだろうか。
帰ってから、留守中のスイセイの食糧を買いに近所のスーパーにも買い出しに。
夜ごはんは、塩鮭、たこの刺し身、小松菜と春菊のおひたし、ひたし大豆(パーティーの残り)、ポテトサラダ(スーパーの)、蒟蒻のピリピリ炒め煮、たくわん、白菜漬け、玄米、さとうさやの味噌汁。
ごはんを食べながらとても眠くなり、食べながらうつらうつら。
眠気の方が食欲よりも勝ってしまい、あまり食べられなかった。
スイセイに訴えると、「みいは、何かにすごく安心したんじゃろうの」。
スーツケースを買ったからだろうか。

●2007年3月6日(火)晴れのち曇り時々雨

とても暖かい。
昨夜、ひとしきり吹き荒れた嵐が止んで窓を開けたら、月夜だった。
雲が流れていた。
沈丁花の甘い香が、夜の中しんみりと匂っていた。
さて、今日はこれから打ち合せでランチを食べに青山へ。
その後、あちこちまわって、夜の10時から別件の打ち合わせの予定。

●2007年3月5日(月)曇り

風呂場の下の杏の蕾は、いっそうピンクにぷっくり膨らんできた。
曇ってはいるけれど、さわさわとした風は、もう5月のよう。
吹きぬける風の中、雑巾がけ。
昨日、ひさしぶりに外に出掛けてみて気がついたのだけど、もう、空気の芯まで完全に暖かいのだな。
「ニチニチ」では、入り口をいっぱいに開けて仕込みをしていた。
「今日は暑いくらいだから」と星野君は言っていたし、クマちゃんも「今日はポカポカだねえ」と言っていた。
「ニチニチ」で働いていると、毎日の小さい変化をよく感じられるんだろうな。
1階にあるし、外の空気に近いところにあるし、人が歩いているのもよく見えるお店だから。
料理を仕込みながら、そういう空気が感じられるのって、そうではないのとはうんと違うだろう。
日々のことだし。
「クウクウ」は地下だったから、そういうのが辛かったかも。
今朝はカラスがやたらに騒いでいる。
だんだん雲ゆきも怪しくなってきた。
嵐でも来るのだろうか。
2時からフミさんがいらして、保険の書類を作る。
ひとしきり世間話をして、私はコピーをしに図書館へ。
新しい本のメニュー出しと、明日の打ち合せの準備。
夕方、風が強く横なぐりの雨が。
さーて、夜ごはんはすき焼きだ。
夜ごはんは、すき焼き(牛肉、椎茸、焼き豆腐、白滝、長葱、春菊)、小茄子の辛子漬け、干し大根の紹興酒漬け、カンタン練り梅(梅干しをちょっとくずして醤油とみりんで和えた)、さとうさやの味噌汁、玄米。
すき焼きの割り下を自分で作ったら、甘過ぎず辛過ぎず、とてもおいしかった。
出し汁、酒、醤油、各1/2カップ、みりん1/4カップ、きび砂糖大さじ3をいちど煮立てるだけ。

●2007年3月4日(日)晴れ

ポッカポカ。
窓を開けたら、今日始めて沈丁花の匂いがした。
大家さんの沈丁花、昨日も咲いていることは咲いていたんだけど、どういうわけだか匂いがしなかった。
朝ごはんを軽く食べ、1時に国立で待ち合わせ。
平岩さんのアトリエに、お願いしていた服の試着をしに行った。
平岩さんの自宅兼アトリエは、大きな窓があって、とても気持ちのいいところだった。
大きな作業台と、アイロン台と、棚、テーブル、マック、カーテン。
全体に生成っぽくて、洗面所も植物系のいい匂い。
なんか、平岩さんが作る服に似ていた。
頼んでいた服の他のも、かたっぱしから試着させてもらった。
おやつ(白玉だんごを作ってくれた)をいただいたり、お喋りしたり。
気がついたら3時をまわっていたのだけど、せっかく国立に来たので、ふたりして散歩がてらおいしい紅茶屋さんへダージリンを買いに行った。
そしてそのまま、開店前の「ニチニチ」にお邪魔し、軽く飲む。
平岩さんとはほとんど初対面だったのに、調子にのっていろいろ話した。
ほろ酔いで吉祥寺に帰り着き、買い物。
閉店前のスーパーの空気はどこか荒れていて、自分までそれが伝染しそうだった。
今日は日曜日だけど、ちょっとOLさんの気持ちが分かるような気がした。
帰ったら晩ごはんを作らなければならないんだけど、もうあんまり時間をかけられない。
だから、作れる料理もおのずと限られて、ちゃっちゃと適当なものをみつくろって慌ただしく買い物するしかない。
OLさんの気持ちのまま、帰ってお米を研いですぐにご飯を炊き始め、私が作った料理。
鶏としいたけの醤油炒め(オリーブオイル、にんにく)、ほうれん草のおひたし(昨日ゆでたもの)、アスパラのフライパン焼き、冷やしトマト。
温かい煮物もできないし、味噌汁も作らなかった。
でも、スイセイは「鶏肉がおいしいのう」と喜んで、白いご飯を2杯食べた。

●2007年3月3日(土)快晴

1時半まで寝てしまった!。
昨夜は12時に寝たから13時間半睡眠だ。
最近私は、眠くて眠くてたまらない。
10時前にアムから電話がかかってきて、そのまま起きてしまえばよかったんだけど、なんだか、ポワーンとしてしまった。
アムの声を聞いていたら、遠くでカトキチの声がしたり。
外はまっ白な雪景色で、アムもコロちゃんも、きっと薪ストーブのまわりでゴロゴロしてる… という図が頭の中に浮かんでいた。
花粉で鼻はグズグズするし、のどもガサガサしてるんだけど、なんとなく微熱があるようで。
柔らかい毛布を鼻の上までかぶって、薪ストーブのことを想像しながら、ぬくぬくと眠りをむさぼった。
その、気持ちいいこと。
来週からまたバタバタと忙しい日々がやってくるから、まあよしとしよう。
というわけで、今日もまた本のアイデア出しをやる。
とちゅう、川原さんにもらった酒かす(近所のおいしい酒屋さんで売っていたそう。とてもいい匂いがする)で、甘酒を作った。
こういう時、フードプロセッサーって便利だな。
スイセイは粒々が残った甘酒が嫌いだから。
甘酒は、上品な甘さですごくおいしくできた。
冷蔵庫に入れて、冷やしたのを飲むのもおいしそう。
この間作ったジンジャーシロップ(ウコン炒り)を加えてもよさそうだ。
今、スイセイが台所に来たので出してやったら、「まあ、ようけ作ったのう。お店屋さんができるのう」。
こんど川原さんが来たら、出してやろう。
夜ごはんは、スパゲティ(いかとブロッコリーのトマトソース)、白菜とセロリのサラダ。

●2007年3月2日(金)薄い晴れ

今朝もまた花粉がひどい。
でも、目が痒いのもグズグズいうのも起きがけだけ。
動いているうちに、だんだんそうでもなくなる。
朝ごはんは、自分で写真を撮りながら試作。
午後からは打ち合せの資料まとめと、畳の部屋に紙を広げ、新しい本についてのアイデア出し。
夕方までやって、教育テレビのメドレーを見る。
夜ごはんは、ちらし寿司(スモークサーモン、竹の子甘辛煮、いり卵、さとうさや、豆苗、青じそ、いりごま)、白菜の薄味煮、ひじきの炒り煮(甘くない。ゆでた人参を合わせた)。
パーティーの残りもの整理のつもりでちらし寿司を作ったが、ひな祭りは明日だった。
でも、スイセイはとてもおいしかったみたい。
「今日は何を食べてもうまいのう」。

●2007年3月1日(木)晴れ

朝、大家さんの木に、ひよどり、メジロ、シジュウカラ、雀が勢ぞろい。
柵の外の地面には、ムクドリも歩いている。
ハルもベランダに腹ばいになって、いい子にしている。
しかし、私の鼻はグズグズ。
思いついて、北海道で買ったハッカの精油をマスクにスプレーしてはめてみた。
これがとってもいい具合。
マスクをしたまま布団を干し、パンパンはたき、たたんでとり入れ、あちこち掃除機をかける。
ベランダのすのこにまでかけた。
朝ごはんを食べて図書館へ。
あちこちうろうろと見てまわり、10册借りた。
本脇の椅子に座っているおじいさんが、「サザエさん」を読んでいるんだけど、ポケットにつっこんだ手が、ごそごそ動いている。
辺りを気にしながらだし、確実にせんべいの匂いがするし。
どうみても、ポケットからあられを出して、音を立てないように舐めながら食べているらしい。
しょうがねえなあ、おじいちゃん。
「サザエさん」は借りて帰り、うちであられを食べればいいではないか。
今日は、時間がたっぷりあるので、3階にも上ってみた。
うちの図書館の3階は、全集やらいろんな資料が並んでいて、下の階よりもひっそりとしている。
どれも大事な資料らしく、貸し出しはできないけれど、英語の料理本もけっこうあるし、図鑑や辞典もいろいろな分野にわたって揃っている。
「ベトナム人名辞典」なんていうのもあった。
自習机にはいろんな人が座っており、調べものをしたり、学生が宿題をやったりしている。
私の斜め前の男の人は、分厚い辞典を何冊も積み上げ、レポート用紙にひたすら何かを書き込んでいた。
文筆業の人なのだろうか。
それとも本物の小説家だろうか。
鼻をグズグズさせながら書き物をしている彼に、思わずティッシュをあげたくなった。
とても集中してやってらっしゃるので、あげるのをじっと我慢する。
私はというと、気になる本を取り出してきては陽の当たる窓際に座り、飽きずに眺めていた。
料理本なら辞書がなくても、なんとか英語が理解できる。
なんだか、ここにいるだけで頭が良くなったような気もしてくる。
シーンとして、皆が勉強していて、大人っぽい空気。
これからもたびたび来てみよう。
アッという間に、3時をまわってしまった。
帰ってから、スイセイと散歩がてら郵便局へ。
中国のお土産やワインやらを、雪の中のアムプリンに送ろうと思って。
道路沿いの小道には、もうヨモギがはいつくばっていた。
天を指すハクモクレンの蕾もところどころ割れ始め、白い花弁がのぞいている。
もう、春は目の前にきている。
花粉は辛いけど、私のはぜんぜんたいしたことがない。
世の中には、もっともっとたいへんな人がたくさんいるのだから。
夜ごはんは、きつねうどん、小松菜とほうれん草のおひたし。
『拝啓 父上様』がとても良かった。
主人公の男の子も好きだけど、あのバカっぽい見習いのトキオっていう子が、ぐんぐんと気になってきた。



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