2007年4月上

●2007年4月10日(火)快晴

昨夜、スイセイはけっこう酔っ払ってはじけていた。
きっと、何かが嬉しかったのだと思う。
私も、ひさびさに「クウクウ」マスターやせつ子さんに会え、実家に帰ったような気分になった。
そしたら、ナナオちゃんとえっちゃんも偶然来て、結婚の乾杯をしたりして。
幸せな時間だった。
帰りはすっかり雨が上がっていた。
風呂場の杏の木は葉っぱぐんと伸びて、かなり大きくなっていた。
成田に着いてから、中国での濃厚な日々を思い出し、私とヒラリンで飛行機に乗ってポケットのような濃い時間の流れに巻き込まれて帰ってきたような感じになった。
たったの5日間というのが信じられないし、夢なのか現実なのか分からなくなるような感じなのだけど、杏の木を見たらやけに納得した。
この葉っぱが伸びている間、私たちは確実にここではない場所に出掛けていて、5日分の成長の後、帰ってきたのだ。
今朝は、11時までぐっすりだった。
昨日、中国の空港のレストランで出発前にビールを飲んだのだけど、隣の席のお兄さんたちが食べていたカレーライスがとてもおいしそうだった。
他にも天ぷら蕎麦やラーメンがあったけど、中国のカレーってどんな感じなのだろう。
なので、朝からカレーを作る。
スイセイは、「ひさしぶりに食べ物らしいもんを食べたのう」としみじみつぶやいていた。
食べながら、中国話が尽きない。
これからの仕事のことや、新しい本のアイデアについても話し合う。
本当は、あちこち掃除をしたいのだけど、大量の洗濯をやるだけでせいいっぱい。
留守中に届いていた仕事のファックスやメールの返事を送り終えたところで、電池が切れてしまう。
お腹も壊れているし、地面の底から湧き上がってくるような眠気にあらがえず、また布団の中へ。
ドーンとした眠りの響きに身をまかせる。
その、気持ちいいこと。
8時に起きて、ゆで卵とキャベツのサラダを作るが、ものすごくしょっぱかった。
夜ごはんは、カレーライス、コールスローゆで卵添え。

●2007年4月9日(月)曇りときどき晴れやら雨やら

■■■スイセイ留守ごはんX3・6日目■■■
起きて朝を食べ、いまコーヒーを飲んでいる。
試しに黒砂糖を入れてみた。
同じポリフェノール仲間でいけるようだ。
うちは家人が料理の仕事なので自然に興味をもったが、それまでは無意識だった。水や空気を意識しないように。
それまでは、安楽椅子に座って管から栄養摂取をしながら、ゴーグルに映る無数チャンネルのテレビを見るのが希望だった。
あるとき病に付し、自分のカラダを発見した。
肉体の声を聞いた。
長い間おれの肉体はがまんして、うずくまっていた。
公園に誘うと喜んだ。
話しだすと饒舌だ。
またあるときは叫んだ。
れっきとしたひとつの人格がそこにいた。

風船が割れた。
夕方みいが帰ってきて、いきつけの蕎麦屋に行った。
そしたら、偶然顔なじみと会い、久しぶりに人と話し、楽しく酔っ払った。
後半の記憶がない。
気がつくとポケットに知らない煙草が入っていた。

朝ご飯:おにぎり(白米)。
おれの最後の晩さんはおにぎりだ。
炊きたての熱々を自分の手アチチにぎって、そのままホフホフほおばる。
具なし、塩のみ。以上。
昼ご飯:トマト3個丸かじり。
夜ご飯:かまぼこ、ほたるいか、だし巻き、さとそば、ビール。
■■■スイセイ留守ごはんX3・終わり■■■

●2007年4月8日(日)快晴のち曇り

■■■スイセイ留守ごはんX3・5日目■■■
あさ、全身筋肉痛、頭もふらついている。
最近さぼっていた運動を再開したからだ。
しかしあした、みいが帰ってくるのでぼやぼやしてらんない。
いままで散らかしたとこなんかの片づけモード。
えーと、まずご飯を炊いて、たまった洗濯。それからふとんを干してと。
まるでアリバイを作る犯人のように。
朝を食べたら部屋の掃除だ。

家事は風船ゲームのようだ。
電車が一周して風船を割る前に用事をするという、これの複雑なやつ。
自分の一番の苦手だ。
ぼーとしてたいが、してると死んでしまう。
だが約1名、そのバランスを上手に取るやつを知っている。
身近に。
家事とDeepか。
ああ、風船が割れる。

朝ご飯:生卵、海苔、大根葉っぱの漬け物、玄米。
昼ご飯:塩鮭、海苔、たくあん、玄米。
夜ご飯:たくあん、酒盗、塩鮭、玄米で茶漬け。

●2007年4月7日(土)曇り

■■■スイセイ留守ごはんX3・4日目■■■
曇り空。桜の花びらがはらはら舞う中をくぐって進む。
思えば、2月の風邪がしつこく咽喉の奥に残っていて、やっと治った。
摂生が足りぬ罰か。
運動を再開した。
宿題もある。
より堅牢な日常システムを構築せんにゃと思う。
そう自分と話す。

朝ご飯:海老ともやしと小松菜の玄米チャーハン。
昼ご飯:武蔵野風広島風お好み焼き。
1.家人が野菜をと言うので、キャベツ半分を千切りのつもりの短冊切り。
2.鉄板がないので手順省略の為、うどんはあらかじめ茹でる。
3.うどんを茹でる鍋の上に網を乗せて、そこで牛肉を解凍する。
4.一番大きいフライパンいっぱいに、水で溶いておいた小麦粉でクレープを作る。
5.その上にキャベツを山盛り。牛肉を乗っける。
6.蓋をしてそれらをしばらく蒸す。蒸されたら、別の皿に移す。
7.空いたフライパンでうどんを少し炒める。生卵を乗っける。
8.そこに溶いた小麦粉を上から網状に少しかける。
9.その上に、さっき皿に移したやつを逆さまに乗っけて合体させる。
10.それで5分蒸したらできあがり。
夜ご飯:残ったキャベツで、キャベツ・マルタイラーメン。

●2007年4月6日(金)晴れ

■■■スイセイ留守ごはんX3・3日目■■■
きょうは、前から気になっていたFAXの修理。
紙をカットする時に、つっかかる問題だ。
少し分解して覗いたが、原因不明。
途中ですごく小さな部品をなくして、それを探すのによっぽど多くの時間を費やす。
結局、ふと思い付いてバターをFAXカッターの刃に塗り付けたら、直った。
刃のすべりが良くなったのだ。
しーん。
家にはFAXが2台あって、もう1台も革靴グリースを塗ったら調子よくなったし、ガスファンヒーターのモーターも革靴グリースだった。
みんな、10年以上使ってるやつだが、そうか、もう何年か、あわよくば一生動いてくれ。最後は看取ってやる。
家電の修理が続いたので感じたのは、ちゃんと直すには、それが壊れてもいいくらいの思い切りがいる、ということだ。
これ家電ばかりに有らず、また人の世も。

調子こいて少々ひとり酒が過ぎた。
窓のすぐ外に明日が来ている。

朝ご飯:かけ蕎麦。
昼ご飯:海老ともやしと小松菜の玄米チャーハン。
夜ご飯:海老ともやしと小松菜の玄米チャーハン。

●2007年4月5日(木)晴れ

■■■スイセイ留守ごはんX3・2日目■■■
自分一人でいることは、嫌じゃない。
もともと、子供のころから一人だった気がする。
子供のころは本を読むことが好きだったので、たぶん空想してたんだと思う。
本に比べたら世の中はガシャガシャして、あまり興味がなかった。
だからか子供のころの記憶があまりない。
今はなんとか大人でいるが、そういう子供のころの意識のままじゃないかと思う。
そういえば大人になっても、記憶がつながってないな。
なにかに熱中して、いつのまにか時間が過ぎていくことが一番心地いいように思う。
うちはフウフだが、二人の個人だと思う。
そういえば娘もいたが、たまに思い出して、ああ、いたなと思う。
片時もよく忘れる。
りう、すまん。
いい親じゃないし、いい家族じゃないかも。
でも、もしいい家族の条件を尋ねられたら、家族を個人の集まりだと思うこと、と言いたい。血のつながりは言わない。
個人がそうしようとしてするものだと思う。

朝ご飯:食パン、ウインナ、卵焼き、小松菜みたいのを炒めた。
昼ご飯:玄米のトマト雑炊。
最近トマトが好きになった。大人になって嗜好が変る、こういうこともあるのか。
おやつにも、料理の味付けにもいける。
朝ご飯:玄米のトマト雑炊、食パン。

●2007年4月4日(水)曇り時々雨

■■■スイセイ留守ごはんX3・1日目■■■
朝、みいは家を4時55分に出る予定だったが、目覚まし時計不良で4時55分に起きた。
さあ大変、タクシー会社に電話してもだめで、ふたりで吉祥寺駅までダッシュだ。
おれはキャリーカートにスーツケースを乗っけて、みいと走った。
ま、500メートルくらいで、タクシーを見つけられたのだが、少しひやり。
みいは、もっとひやりとしただろう。
ともかく飛行機に乗れんかったーと、家に帰ってこなかったので、どうやら中国に向かったらしい。

なんだか慣れてきた「スイセイ留守ごはん」だ。
また、どうしてだかどうも留め金がはずれて1日目はゆるくなってしまう。
まるで、疲れがたまってたかのように今日は昼夜問わずよく寝た。
寝るに合う天候、季節外れの寒さと雷、雨、春の嵐、ニュースでは東京に雪とか言ってる。
一回もカーテンを開けなかったのでわからない。

朝ご飯:マルタイラーメン。
昼ご飯:夕べの残り、山かけ玄米ごはん。
夜ご飯:もり蕎麦。

●2007年4月3日(火)雨のち曇り

1時まで寝てしまった。
だらだらとした気分。
中国での日々のために、力を蓄えておこうと思って。
あちこち掃除機をかけ、雑巾がけ。
あとで、スイセイの自炊の助けになるよう、青菜を茹でたり、人参を塩もみにしたりしておこう。
旅行の準備も完了なので、電気ストーブをつけ、毛布をかぶって、いしいさんの『みずうみ』をまた始めから読む。
続きは、空の上で読むためにとっておく。
夜ごはんは、豚と大根葉の塩炒め、さつま揚げの甘辛煮、蕗の煮物(残りもの)、とろろ芋、麩と葱と貝われの味噌汁、玄米。
明日は朝が早いので、夜ごはんを1時間早めにした。
風呂にたっぷり入り、あとは寝るだけです。

●2007年4月2日(月)曇りのち雨

ぼんやりと霞んで、空気が黄色ぼったい。
黄砂だろうか。
朝方、また雨が降ったようだ。
物干しざおに雫がついていた。
新聞によると、昨日静岡では31・8度の真夏日だったそう。
さて、今日は何をしよう。
塩を炒って、お弁当(昨夜作っておいた)を食べたら、郵便局に行ってこよう。
水曜日からまた中国なので、スイセイのための食料をいろいろ買いに。
「東急」で買い物をして外に出たら、霧雨だった。
昨日とはうって変って肌寒いが、鼻歌を歌いながら自転車をこいで帰ってきた。
夕方、ミルクティーとビスケットとチョコをセットし、アキ・カウリスマキの新作映画を鑑賞。
夜ごはんは、いさきの香り蒸し(長葱、生姜、香菜、酒、中国醤油)、茄子のくたくた煮、ミニトマト、春人参の千切りサラダ、大根葉の梅おひたし、筍ご飯。

●2007年4月1日(日)快晴

昨夜、玄米ご飯がたくさん残ったので、おにぎりにしておいた。
それで、寝ながら思いついたのです。
桜を見ながら食べようと。
起きてすぐに買い物ヘ。
桜並木の大通りは、人が鈴なりになっていた。
何ごとかと思ったら、横断歩道の向こうで婦人会のおばちゃん(おばあちゃん)たちが列を作っている。
ピンクと水色の着物姿で、くっきり赤い口紅におしろいの匂いをプンプンさせて。
今日は「桜祭り」で、おばちゃんらは踊りを踊るらしい。
帰ってから、卵焼き、たこウインナーなど大急ぎで作る。
あとは、スーパーの鶏の空揚げ、たくわん、キャベツと胡瓜の塩もみ(昨夜の残り)、プチトマト。
ほうじ茶を水筒につめ、缶ビールとシークワーサー割り焼酎を1缶ずつ。
うちから歩いて3分くらいの、公園ともいえない広場(スイセイが指定工場と呼んでいる)に行った。
近所だから、お皿やお箸も持参。
真ん中の方には、花見のグループが5〜6組すでにお弁当を広げていたので、私たちは椿の根元の奥まったところにした。
桜も満開だけど、椿も満開です。
お弁当を食べながら、桜の花弁が舞ってくる。
木の上の方で、ひよどりが盛んに蜜を吸っている。
花見というのは、夕方から夜にかけてやるものだと若いころには思っていたけど、こうやってお昼を食べに、スイセイとふらっと出てくるのって、気楽でいい。
来年もまた、ここに来よう。
市営グラウンドの桜も気になるので、いちおう一周してみるが、人がいっぱいでかなり賑わっていた。
でも、井の頭公園に比べたら、家族的でずっと和やか。
帰ってすぐ、筍を茹でる。
蕗も茹でて皮をむく。
蕗って1年に何度も食べないけど、水の中で皮をむきながら、いつもほれぼれする。
スッとした緑の姿も、緑の匂いも、また美しい。
佃煮にしようと、蕗の葉をさっと湯がいて刻む。
ふと思いつき、ちょっととっておいた。
浅蜊の味噌汁にフワッと散らそうと思って。
夜ごはんは、筍と蕗の炊き合わせ、鰺のたたき、鰆の西京漬け、小松菜とほうれん草のおひたし、浅蜊と蕗の葉の味噌汁、玄米。



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