2007年4月下

●2007年4月30日(月)快晴

また寝坊してしまった。
12時だ。
春眠暁をおぼえず… 。
スイセイはもうとっくに起きて、ひとりでサンドイッチを食べていた。
さーて、私も気合を入れて頑張ろう。
『日々ごはんH』の最終校正です。
「スカンク兄弟」のCDを、エンドレスでかけながらやった。
「あこがれ」と「サマー太陽」で、どうしても涙がにじむ。
今まで、「太陽」でパーティーがあるごとに聞き、皆で歌った。
あの幸せな空気のエキスが、しっかり保存され、しかもふくらんで厚みもある。
ああ、なんか、音楽ってやっぱりいいな〜って、思う。
畑さんと郁子ちゃんの声はもちろん、長野君もアリヤマ君の声も、すごくいい。
また、長野君の詩がいいんだ。
切なくなる。
窓から入ってくる新緑の風や、明るい陽射し、これから始まる夏の予感にぴったりなCDです。
『おじゃる丸』が始まるまで、集中してやった。
明日もまた、「スカンク兄弟」を聞きながらやるのが楽しみだ。
夜ごはんは、茄子のフライパン焼き、鰺の開き、筍煮、キャベツと胡瓜のサラダ酢油がけ、冷やしトマト、蕪の葉のおかか醤油、塩豚と新じゃがと人参の味噌スープ、玄米。
夜、大家さんがものすごく大きな(1メートルくらい)筍を持ってきてくださった。
お友だちが、今朝掘りに行ったのだそうだ。
根元のぶつぶつが、紫も鮮やかで、すごくでっかい。
どうみても育ち過ぎじゃないかと思うのだが、せっかくいただたし、研究の意味もこめ、いのししみたいな皮をむいて、根元の固いところを切り落とす。
どうにか先の方のやわらかそうなところを、今茹でているところ。
今年は、これが最後の筍になるだろうな。
今夜は、ひさびさに『世界ふれあい街歩き』だ。
夜、ふと思い直し、捨てようとしていた筍の根元も茹でてみる。

●2007年4月29日(日)快晴

穏やかに、まだ気持ちよく晴れている。
もう5時半だというのに。
けっこうな二日酔いで、ずっと布団の中にいた。
さっき、うどんを茹でて、ツルツルと冷たいのをスイセイと食べたところです。
眠りながら、昨夜のともすけの満面のニコニコ顔が、何度も何度も蘇ってきた。
ともすけも、たまちゃんも、本当によくやったな。
他にも、きっとたくさんの友だちが手伝ってくれたことだろう。
本当に、良かったな〜っと、後半はもうそればっかりの想いで飲んでいた。
丹治君も、「よかったですね〜。ほんとうによかったな〜。僕は、うれしいな〜。ああ、いいな〜。僕もがんばろう〜。がんばります!」と、小学生の男の子のようになっていた。
昨日は、清水さんが畑で収穫したての椎茸やのらぼう菜、泥つきの島ラッキョウ、筍などを持ってきてくれた。
それらをいかし、アドリブでメニューはどんどん変化して、ともすけとたまちゃんは皆を楽しませてくれました。
去年1年間、お世話になったNHKの人たちも、清水さんも、それぞれが自由に歓談していてとてもいい時間だった。
というわけで、昨夜はたっぷり食べて飲んだので、今夜の夜ごはんはなし。
変な時間にうどんを食べたし。
スイセイは、自分でもやし炒め入り喜多方ラーメンを作っています。

●2007年4月28日(土)晴れのち嵐

お昼にサンドイッチを作っていたら、ヒラリンから電話があり、お弁当を持ってきてくれるとのこと。
味見だけのつもりが、あまりにおいしいので、スイセイとすっかりたいらげてしまった。
ヒラリンは元気そうだった。
爽やかな5月の風を連れてきたみたいだった。
明日は友だちの結婚式だそうなのに、着る服がないそうなので、いろいろみつくろって貸してやる。
バックもないらしいので、私も冠婚葬祭の時ぐらいしか使わない、でもわりとカジュアルなちょうどいい黒いのがあったので、それも貸してやる。
ゴールデンウィークの間もお弁当作りに励むらしいので、梅干しやゆかりやら、いろんな豆類、黒米など、ごぞごぞと出してきて持たせる。
まるで実の姉のよう。
今日もまた、夕方からごはん会で会うというのに、私も校正の続きをやらないといけないのに、なんとなく引き止めたくなってしまう。
雨が降る前に、帰っていきました。
外は今、たいへんなこといなっている。
晴れ渡っているのにかなりの激しさで天気雨が降ったかと思ったら、こんどは雷だ。
全体にグレーの薄い膜をかけたような、でも黄色も混じっている微妙な明るさで、銀杏の若葉がとても美しい。
風も強く、枝をしならせている。
さて、夕方からともすけが始めた新しいレストランで、NHKの人たちや丹治君、清水さん、ヒラリンとDVDの打ち上げです。
どんなお店なんだろう。
すごーく楽しみです。

●2007年4月27日(金)ぼんやりした晴れ

お昼を食べてから、(今日は何をしようかな、雑誌の整理でもしようかな) と、先月の「ダ・ヴィンチ」を見ていた。
そしたら、「この本にひとめ惚れ」のコーナーが、上田義彦さんの写真集だった。
東大の中にある博物館で、骨などの標本の写真展をやっているから、行くといいよと薦められていた。
それで、行こう行こうとぼんやり思いながらいたことを、いきなりハッ!と思い出した。
しかも今日までと知り、何もやることがないのを幸いに、ぎりぎりセーフで行ってきた。
写真は、とんでもなかった。
私は、「やばいなー」と心の中でずっとつぶやきながら見ていた。
ドキドキしちゃって。
体の中のどっかで泡が立っている感じ。
写真はかなり大きく、この世でいちばん細かいサンドペーパーくらいに、表面がわずかにザラッとしているように見えた。
触りたくて触りたくてたまらなかったが、我慢したから本当のところは分からない。
ツルッとしていたのだろうか。
標本が浸かった瓶の、液体が入っていない上のところの水滴や曇り、蓋にたまった埃の繊維まで、鮮明に写っている。
その埃は、いったいいつから積もったものだろう。
標本にされた年代を見ると、100年前のも、もっと前のもある。
そこに保存されたハ虫類の肌も生々しいけど、瓶の中の底にヒラリと漂う、青いペンで何かを記した黄色っぽい紙。
私が生まれるよりもうずっと前から、この瓶の中に沈んでいる。
写真に写っている標本は、ものすごい精巧なつくりものみたいだった。
というか、上田さんの写真は絵にしか見えなかった。
本物よりもほんもの。
上田さんには、こんな風に見えるのか… 。
電車の行き帰りは、『みずうみ』を読み耽った。
わざと乗り換えをせずに、丸の内線1本で。
夜ごはんは、鮪のにぎり寿司(「東急」の)、コロッケ(「東急」の)と千切りキャベツ、蕗の薄味煮(残りもの)、冷や奴(みょうが、葱、生姜)、蕪の味噌汁。

●2007年4月26日(木)快晴

昨夜は、不思議な夢をみながら寝ていた。
布団の中に生き物がいて、体の中に入ってこようとしている。
肩の先や頬っぺたが、斜め上から吸いとられそう(掃除機みたいなもので)になっては、何度も目が覚める。
『みずうみ』を読んで寝たからだ。
昨夜は終わりの20ページ前くらいで、枕もとに置いた。
スイセイが布団に入ってきたので。
朝、起きがけに、布団の中で続きを読み、終わった。
第2章では、休むことなく車に乗って、つっ走っているような感じだった。
第3章では、胸が痛み、脳みそがちぎれそうだった。
水や果物のような、根源的なものが食べたくなった。
読み終わった時には、自分も大きく深いものに確実につながっているような気がした。
すごい物語りだった。
ものすごい娯楽だった。
こんな小説を読んだのは初めて。
たぶん、こんなのが書けるのは、日本ではいしいさんだけだろう。
物語からぜんぜん抜け出せないので、布団の中で、また最初から読み始める。
今日は1日中、そんな日だった。
夜ごはんはひと皿盛りにした。
鶏ササミのハーブパン粉焼き(トマトソース)、紫キャベツのサラダ、サフランライス。

●2007年4月25日(水)雨時々曇り

薄紫の桐の花、今年もまたポツポツと咲いてきている。
雨が降っているのか、雲っているのか。
よーく見ると、霧のような雨が降っています。
今日は、オナガがたくさん遊びにきている。
お昼を食べて、『日々ごはんH』のあとがき。
校正をやりながら、書きたいことがずいぶんはっきりと見えていたので、調子よく筆が進み、4時くらいに出来上がった。
丹治君にお送りし、機嫌がいいので買い物に出る。
こぬか雨の中、自転車をこいで「紀ノ国屋」へ。
帰りはすっかり冷えてしまったが、おいしいものをいろいろ買ってこれた。
夜ごはんは、ほたるいかの茹でたの(わさび醤油で)、鯖の天日干し、蕗の薄味煮、ひじき煮(ずっと残っていた切り干し大根を加えて)、出し巻き卵、ほうれん草のおひたし、大根の漬物、しじみの赤だし、玄米。
蕗を茹でている時の匂いって、好きだな。
子供のころの懐かしいような気持ちが、フワッとたち昇ってくる。
さー、いろいろなことがひと段落した。
今夜は『みずうみ』に飛び込もうかな。

●2007年4月24日(火)曇り夜になって雨

昨日は、9時くらいに作業が終わった。
大テーブルに3人で並び、それぞれの作業に没頭する感じが、「図書館みたいでした」と萩原さんが言っていた。
ほんとうにそう。
夕方、蒼くなりかけたころ、豆腐屋さんのプ−ーーが聞こえたりして。
丹治君は、「プーーーーがすごく長いですねえ」と嬉しそうに言っていた。
終わってから海老のカレーとベトナム風のコールスローを皆で食べ、軽くビールを飲み、赤ワインへ。
丹治君と、ひさしぶりにいろんな話ができたのがとても良かった。
帰りぎわ、玄関のところでぐっと抱き合った。
というわけで、今日はのんびりと過ごす。
ゲラの校正を1本と、レシピを仕上げてお送りしてからは、だらだらと夕方のテレビを見続ける。
そのまま寝てしまったり。
夜ごはんは、塩豚と小松菜の和風スパゲティ、めかぶ、冷やしトマト。
風呂から上がって、窓を開けるとしっとりした雨。
雨の中でハルが吠えている。
今夜は、お楽しみの『セクシーボイスアンドロボ』がある。

●2007年4月23日(月)曇り

寒いんだか暖かいんだかよく分からない。
ちょっと肌寒いような気がしてカーディガンを羽織ると、暑いような。
朝、また雑巾がけをした。
最近、急に暖かくなったからか、湿気のせいなのか、朝起きた時に生臭いような匂いがする。
有機的な匂いというか、暮している匂いというか。
別にいいんだけど。
お昼ごはんを食べて、『日々ごはんH』校正の見直し。
窓を開け放してやりたいのだけど、子供たちの声が聞こえたり、鳥が鳴いたりして気が散るので、窓をしめた。
よーし、頑張ろう。
4時半から丹治君たちがいらして作業なので、それまでグッと集中しよう。

●2007年4月22日(日)曇り時々晴れ

新聞の天気予報では、ずっと曇りマークだったけど、けっこう晴れている。
風も軽やか。
午前中からハリハリとパソコン仕事をやる。
お昼ごはんを食べていたら、だんだん曇ってきました。
早めにスイセイと選挙に行ってこよう。
薄着で出掛けたのだけど、ずいぶん暖かくなったものだ。
投票をして出てこようとしたら、入浴剤とティッシュが並べてあったので、ひとつずついただく。
午後の早いうちに、夫婦して散歩がてら選挙に出掛けるのは、とてもいい気分だった。
スイセイは、ミサから帰ってきたような気分だそうだ。
ぐるっとスーパーにまわり、買い物。
帰ってきたら、あちこち掃除。
雑巾がけをしていたら、汗ばむほどだった。
まだ3時なのにずいぶん薄暗い。
さ、私は試作をしながらレシピ書きだ。
夜ごはんは、ラムの焼き肉葉っぱ巻き、蕪の塩もみ(辛子醤油)、水菜とみょうがといりごまのご飯、蕪の味噌汁。

●2007年4月21日(土)ぼんやりした晴れ

頭の中に綿。
スイセイが冷蔵庫を開けている音で目が覚めた。
12時まで寝てしまった。
昨夜は、遅くまで『りんこ日記2』を読んでいた。
りんちゃんどうしてるかなー、と思いながら。
この数日、私は『日々ごはんH』の校正のため、去年の今頃の日々にどっぷり寄り添っていた。
というか、すっかり去年を生きていた。
りんちゃんのはそのまた1年前くらいの日記だったので、いろいろ懐かしく、いつが何やら、どこがどこやら、今がいつやら分からなくなるような、眠りの中でこんがらがるような感じになった。
微熱があって、のぼせているような感じもある。
昨日から、体の中のものがどんどん流れ出している感じもある。
さーて、気をとりなおして、今日の仕事を始めよう。
インスタントコーヒーをいれて。
本といえば、いしいさんの『みずうみ』が途中で止っている。
この間、飛行機の中で読んだのだけど、ものすごいゆっくりのスピードでしか読み進めなかった。
気圧のせいもあるかもしれないけど、脳みそではなく、体ごとで読んでいるようなモクモクした感じになった。
みずうみの水が、鼻や耳の穴から頭の中にチョロチョロと浸透してきていた。
いっぱいになったところで、1章が終わった。
2章目のページをめくったら、いきなりタクシーが出てきた。
だから、そこで止めておいた。
帰ってから続きを読み始めたのだけど、20ページほどで本を置いた。
読んでいる間、体中を揺すぶられているような、細かい地震がずっと続いているような。
どっぷりと物語りの中に入ってしまったら、抜け出られないような気がして、今はまだダイビングできないでいる。
いろいろな仕事が終わるまで、楽しみにとっておこうと思う。
枕もとに積み重ねた本のいちばん上で、(いつでも飛び込んでおいで)と、みずうみにつながる蒼い水たまりがたぷたぷしている。
夜ごはんは、生のトマトで作ったトマトソースのスパゲティ、サラダ(人参、ピーマン、サニーレタス)。
今日おやつに作ったもの。
おととい餃子の具が、皮1袋分くらい半端に残っていたので、長野君に去年いただいた中国のミックススパイス(フェンネルが多めの不思議な粉でした。五香粉でもOK)とオイスターソースをほんの少し混ぜておきました。
中国で、屋台や食堂の前で焼いているのをよく見かけたお焼きを作ろうと思って。
ウーエンさんの粉の本を参考にして生地を作ってみたら、これが大成功。
現地のはどうも油っぽく、生地の部分もぶ厚くて、すぐにお腹がいっぱいになってしまったけど、このレシピは薄めの生地で、サクッもちっちと、すごくおいしくできました。
まず、薄力粉200gにぬるま湯130mlをいちどに加えて菜箸で混ぜ、ひとまとまりにします(本当は30分くらいねかすらしいけど、私はすぐに伸ばしてしまった)。
これを、多めに打ち粉をはたいた台の上にとり出し、薄く(5ミリくらい)伸ばします。
丸でも四角でも伸ばしやすい形に。
サラダオイル大さじ1を、2回に分けて生地の上に流し、パタンパタンと折りたたんではまた伸ばすこと2回。
これをやっておくと、パイのように層ができて断然おいしくなります。
伸ばした生地を半分に切り、それぞれ餃子の具をしきつめ(周りは隙間をあけておく)、端から海苔巻きのようにくるくると巻きます。
それをまた折りたたんでなんとなく丸ぼったい形に手で押え、具がはみ出さないようにしながら、こんどは丸く伸ばします。
はみ出しそうになったら、打ち粉をふりかけながら、1センチ厚さの直径20センチくらいまで。
焼き方は、フライパンにごま油大さじ1/2をひいて強火にかけ、まず片面をしっかり焼きます。
とちゅうで蓋をして、カリッと香ばしい色がつくまで焼けたら裏返し、弱火にして中までしっかり焼きます。
わりとすぐに中まで焼けます(金串を真ん中に刺してみて、唇の下の肌に軽く当て、アチッときたらOK)。
ピザのように切って、熱いうちに辛子酢醤油でいただきます。
ジョギングから帰ってお腹ぺこぺこの、お好み焼きなど粉ものが大好物のスイセイは、かなり喜んでいました。
思ったより簡単なので、餃子の具が余った時に、ぜひやってみてください。



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