2007年6月中

●2007年6月20日(水)快晴

カラッとしてものすごくいい天気。
暑いけど、涼しい風が吹き抜ける。
お昼にカレーを食べながら、「夏の午前中って、風がなかったよのう。止まったみたいな景色で、じーっと動かないような感じよのう」。
夏になると、子供のころをよく思い出す。
プールの帰り道、ジリジリと太陽が照りつけ、早く食べないとアイスがポタポタ溶けてしまう。
帰ったら、お母さんがそうめんを茹でてくれてあって、縁側にテーブルを出し、おばあちゃんと3人で食べる。
そうめんは固まっていて、お汁にひたしてほぐしながら食べた。
私は真っ黒に陽に焼けて、宿題なんかぜーんぜんやらなかった。
さて、今日もまたレシピ書き。
去年の梅干しがまだけっこう残っていたので、思いついて練り梅を作った。
梅干しをざっくり刻み(種をつけたまま周りだけ)、種ごと小鍋に入れる。
酒、みりん、醤油を適当に入れて弱火でふつふつ。
だしをとる時に残った昆布を刻んで、きび砂糖も少し加え、ふつふつ。
かつおぶしも加えてもうしばらくふつふつ。
木べらで混ぜると、鍋底が見えるようになるまで煮る。
種は、食べながら取りのぞけばよし。
夕方にはレシピを書き上げた。
今夜から、少しずつ試作をやろう。
夜ごはんは、塩鮭、肉豆腐(牛こま、長ねぎ、舞茸)、小松菜のおひたし、ひじきの薄味煮(干し椎茸)、練り梅、胡瓜のぬか漬け、はんぺんと海苔のおすまし、玄米。

●2007年6月19日(火)曇り

「シルバー人材センター」に、私が好きそうな、昔ながらの茶色い革張り椅子があるというので、起きてすぐ見にいく。
が、残念ながらもう売り切れていて、スイセイはすごくがっくりきていた。
私はそうでもない。
物というのは出会いだから。
もともと、その椅子はうちに来るようにはなってなかったんだと思う。
まあ、見てないから簡単に思うのだけど。
でもそんな気がする。
いい散歩になったが、私は足のつけ根がどうもギクシャクとし、ちょっと痛い。
しばらく走ってないからなぁ。
帰ってサンドイッチを作って食べ、のんびりする。
どんよりと薄暗く、蒸し暑く、空気が重たい。
スイセイも私も、ちょっと食欲がない。
午後からは、ひたすらレシピ書き。
とちゅうで思い立ち、玉ねぎをじっくり炒めながらやる。
今夜はカレーにしようと思って。
スイセイは4時くらいに教習所へ出掛けてゆきました。
ピンクのミニバラは、今が娘ざかりで、少女マンガのバックに出てくるよう。
おばあちゃんのバラは、微妙に色合いが変わってきている。
花びらの芯の方が白っぽく、まわりは明るい葡萄色。
全体的に透明度も出てきている。
脂が抜けた白い肌に艶が出て、血管が透けて見えるような。
死ぬ前って、人間もそういう綺麗さが出てくるような気がする。
死んだ祖母のことを思い出した。
夜ごはんは、チキンカレー、サラダ(高原レタス、胡瓜、トマト、青じそ、レモン汁、醤油、サラダオイル、黒こしょう) 長野産の高原レタスが、ものすごくおいしかった。
葉っぱの1枚1枚に厚みがあって味があり、白いところなど、何もつけなくてもおいしい。
今の季節は、高原レタスをいっぱい食べよう。
スイセイはカレーを食べながら、「うまいのう」と3回言った。
玉ねぎ、生姜、にんにくを茶色くなるまで炒め、セロリの葉の刻んだのや、CM撮影でもらった中国のミックススパイスも入れた。
エバ子がこの間持ってきてくれた、庭のハーブの花束(フェンネル、ミント、タイム)も刻んで入れた。
カレー粉が主体で、カレールウは2山だけ。
サラサラめの本式チキンカレー。
だけど、昨夜のキャベツのソース炒めが残っていたので、加えて煮込んだ。
今夜、ついに『セクシーボイスアンドロボ』が終わってしまった。
く〜〜〜っ。
でも、とても心地いいラストだった。
ふわっと泣いて、爽やかな風が吹き抜け、涙を乾かした。
人生は、べたべたとしつこく息苦しいより、少し淋しいくらいの方がいい。
明るくて、能天気で、ちょっと切ないのがいい。

●2007年6月18日(月)薄曇り

スイセイは6時半に起きて、8時前に出ていった。
仮免のテストがあるんだそう。
私が忙しくてたいへんな時には、スイセイがいつも応援してくれる。
朝早く飛行機に乗らなければならない時は、スイセイも早起きして見送ってくれる。
だから私も応援しなくちゃと、この間ふと気がついた。
免許を取るのは、これからのふたりの楽しみのためだし。
スイセイのカリキュラムを軸にして、これからの日々、安定した暮らしを守ろう。
ひとりだけ、お酒を飲んで酔っ払ったりせずに。
スイセイに文句を言われたのではなく、自分で気がついてよかった。
晴れて免許が取れたその時には、リーダーたちを呼んで、ベランダ七輪パーティー(焼き鳥)をやろう。
今、電話がかかってきました。
仮免のテスト、合格したそう。
お腹を空かして帰ってくるだろうから、お昼にそうめんを茹でてやろうと、いそいそと支度をする。
午後からは、切り貼り作業の続き。
夕方には原稿も書き上げ、宅配便を出しに、コンビニまでてくてく散歩。
今って、春ほどではないけれど、あじさいの他にもいろいろな花が咲いているのだな。
黄色い百合、ゼラニウム、夾竹桃、ぎぼうし、白っぽいバラ、ライラック、マリーゴールド、どくだみ。
どこかの家の生け垣を通ったら、くちなしの匂いがふわっと香った。
夜ごはんは、鰺の干物、蒟蒻と椎茸の炒り煮、キャベツのソース炒め、はんぺんのつけ焼き、人参とセロリの塩もみ、蕪とセロリのぬか漬け、島らっきょう(宮古島から送られてきたのを、川原さんからいただいた)、葱だけの味噌汁、雑穀入り玄米。

●2007年6月17日(日)快晴

サラサラと気持ちのいい風が吹いている。
静かな日曜日。
ミニバラは、ふたつ目、みっつ目の蕾がずいぶん膨らんできた。
最初に咲いたのは、ベビーピンクだった花びらがすっかりくすんで、ひなびた色合いになっている。
雌しべの黄色も、今では赤茶けたワイン色。
触るとカサッとしてくずれそうなのに、ふんわりした花びらの微妙なカーブや切れ込みはそのまま。
パッチリと開いたまま、太陽の方を向いている。
今朝スイセイが、「すごいのう。ばあさんみたいになったまま咲いとるんじゃのう」と感心していた。
枯れかけたミニバラは、往年の大女優みたいな美しさ。
さて、再来週からいよいよ料理本の撮影が始まるので、そろそろレシピを書いたり試作をしたりする予定。
今日は、切り貼り作業をしながら、別件の文を書き始めよう。
梅干しもそろそろ漬けたいなあ。
ところで、今やっている黒ウーロン茶のコマーシャル(船の上で飲み食いをしているおじさん2人組の)に、料理班で私とヒラリンも参加しました。
今回は、私が料理を作ったわけではなく、屋台の串焼き屋さんとレストランのコックさんに作ってもらったものを、コーディネイトしました。
美術さんに、船の中に小さい台所を作っていただき、私たちは調味料や香味野菜を並べたり、野菜類をざるにのせたりして雰囲気を出しました。
コマーシャルでは手羽先と帆立てが焼けるシーンしか写っていませんが、砂肝、手羽元、羊の串焼きも隣に並んで煙りを上げていました。
中国にやきとりのようなものがあることにも驚いたけど、日本とはちょっと趣きが違うのです。
たぶん、ウイグル族の血をひいた人たちのものだと思うけど、クミンシードにチリなどが混ざったミックススパイス(好然粉という名前らしい)で肉を揉みこんでおいて、焼く時に塩と唐辛子の粉をふりかけると教わりました。
これが、スパイシーでものすごくおいしかったのです。
その撮影の様子が、サントリーのホームページにのっています。
よろしかったら覗いてみてください。
http://www.suntory.co.jp/softdrink/kuro-oolong/cm/cooking.html
そのスパイスをお土産でもらってきたので、ずいぶん前になるけれど、スペアリブのカレーと豆ご飯に使ってみました。
まだ残っているので、今夜は中国のスーパーで買ってきた幅広麺で、中央アジア風の焼そばを作ってみようと思います。
夜ごはんは、中央アジア風焼そば(鶏肉、干し海老、葱、香菜、ミックススパイス、中国醤油、豆板醤)、くらげと胡瓜の黒酢和え。
焼そばは、なんかシルクロードの味がした。

●2007年6月16日(土)快晴

昨日の撮影は、とても楽しかった。
長野君が台所の写真を撮っている時、私はリビングで粉を練っていて、窓からは風が入り、スカンク兄弟の歌が流れていて。
仕事だというのに、一瞬、幸福感にクラ〜ッとした。
そんなわけで、撮影が終わってからシャンパンを飲み始め、なかなか暮れない夕方のベランダで、青空を仰ぎながら白ワインを飲んだ。
部屋に戻って、赤ワイン。
9時前にはお開きになったけど、私はご機嫌で酔っ払った。
長野君に会えたのが、すごく嬉しかったのだ。
長野君といっしょにいたら、『たべる しゃべる』取材の濃密な感じを、懐かしく思い出してしまった。
というわけで、今朝は5時くらいからパッチリ目が覚める。
掃除をしたり、買い物に行ったりして、11時から「きょうの料理」テキストの撮影。
女ばかり6人の、婦人会の料理教室みたいないつもの撮影。
試食の時に、川原さんは、「おいしい。う〜ん、体が震える」と言いながら、ブルッと本当に震えていた。
洗濯物は2時にはパリッと乾き、梅雨を通り越して、すっかり夏になってしまったような日だった。
終わってから、ヒラリンと自転車をこいで、クリーニング屋さんへ。
背中に当たる陽射しが、ジリジリと暑かった。
夜ごはんは、にらレバピーマン炒め、塩もみ胡瓜、冷やしトマト、塩らっきょう、納豆、アオサのおすまし、玄米。
炎天下を歩いて教習所に通っているスイセイは、ちょっと夏バテ気味。
にらレバピーマン炒めが、ちょうどよかったみたい。

●2007年6月15日(金)快晴

晴れた!。
天気予報は大幅にはずれました。
朝からいろいろ準備しながら、洗濯したり、掃除したり。
11時から、「クウネル」の撮影です。

●2007年6月14日(木)曇り時々雨

10時くらいからポツポツ降り始めた。
でも、明るい雨。
すぐに止んだり、またサワサワと降り出したり。
涼しい風が吹きわたって、森林の中にいるみたい。
どうやら、体の調子は盛り返してきたもよう。
のどの痛みも消えた。
やる気が、むくむくと湧いてきている。
昨夜は早めに風呂に入って、11時にはぐっすりだった。
今朝もまたロボの夢をみちゃったのは、『セクシーボイスアンドロボ』を見て寝たからだ(今週のもビデオに撮っておいた)。
来週が最終回だそう。
またひとつ、楽しみが終わってしまうなあ。
明日「クウネル」の撮影なので、今日はあちこち掃除をしたり、準備をしたり。
スイセイは、今日も教習所。
もうすぐ仮免の試験があるそうだけど、それってめちゃめちゃ早いんではないだろうか。
ひょっとして優等生なんだろうか。
夜ごはんは、スパゲティ(昨夜の百合根とセロリの炒め物に、鶏肉、椎茸を加え、生クリームと醤油ちょっとで和えた)、白和え風サラダ(コールスロー、胡瓜、ピーマン)。

●2007年6月13日(水)快晴

夏のような日。
朝からゲラの直しを仕上げ、中国での仕事のまとめなどやる。
お昼を食べて、美容院へ。
風がけっこうあるけれど、自転車をこいでいるだけで汗ばんでくる。
湿気が多いのだ。
私が中国にいる間、スイセイの食生活がかわいそうだったので、「紀ノ国屋」でおいしいものをいろいろ買う。
帰ってから、上海風の焼そば(牛肉、チンゲン菜、色の濃い中国醤油で)を作ってやるが、私はあまり食べられない。
冷たいところてんの、おいしいこと。
大量の洗濯物をたたんでいたら、体がポーッとして火照っているような、微熱があるような。
昨日からのどの端がピリリと痛いし、やたらと怠い。
もしかしたら風邪の前ぶれだろうか。
この先、やらねばならないことが5個くらいあるので、今はまだひきたくない。
なので、ひんぱんに酢水でうがいをしています。
しかし、これを書いている今でも、頭の後ろを引っ張られるように眠たい。
夜ごはんは、真鯛の塩焼き(大根おろし)、白滝のたらこ炒り、百合根とセロリの塩炒め、ぬか漬け(胡瓜)、上海焼そば、豆腐と青じその味噌汁、玄米。
夜ごはんも、食欲なし。

●2007年6月12日(火)快晴

昨夜は、風呂から出てあっという間に寝てしまった。
10時くらいだったと思う。
今朝は10時に起きた。
熟睡だった。
夢もいろいろみたようだけど、すっかり忘れている。
中国にいる間は、11時に寝て、いつも3時半に目が覚めていた。
それから2度寝しようとがんばっても、頭が冴えてしまってちっとも眠れない。
今朝、朝風呂に浸かりながら思ったのだけど、体の中に、ずっと板がはさまっていたみたい。
その板は、胸の下あたりにあった。
昨夜、その板がやっとはずれて、ダーダーといろんなものが流れ始めた。
そんな感じ。
私は胸から頭の間だけで、中国での5日間を生きていた。
働いたり、車に乗ったり、ビールを飲んだり、ごはんを食べたり。
ギュッと押し狭まられた小さい体の中は、時々ぐるぐると洗濯機の中みたいに激しくなった。
楽しくてたまらないような、胸が苦しいような。
今朝は、洗濯を山ほどやり、スーツケースの中を片づけたり、台所を片づけたり。
洗濯物を干していたら、じんわりと汗ばんだ。
この5日の間に、ずいぶんと季節は移り変わったんだな。
さて、クリーニング屋さんをまわりながら、買い物に行ってこよう。
スイセイがお腹をすかして教習所から帰ってくるので。
夜ごはんは、くらげの前菜(香菜、万能葱をのせ、熱したサラダ油とごま油をかける)、胡瓜もみ、冷やしトマト、豚テキ(白ワインと醤油、マスタードのソース、レタス添え)、茄子の古漬け(細かく刻んで、生姜とみょうが炒りごま和え)、豆腐と葱の味噌汁、玄米。
夜、エバ子が来た。
昨夜、大家さんから杏の実をたくさんいただいたので、取りにきてもらった。
今年もジャムにしてもらおうと思って。
エバ子と会うのは1年ぶりくらい。
ひさしぶりだったので、軽くビールなど飲みながら、つもる話をした。
エバ子も「クウクウ」からのつき合いだけど、もう何年になるのだろう。
15年くらいだろうか。
つい実家の姉のような気持ちになり、中国土産の食材をいろいろ持たせる。

●2007年6月11日(月)中国は曇り、肌寒い

夕方、成田に着きました。
帰りの飛行機の中で、黒澤明の『赤ひげ』を見た。
映像の1枚1枚が、白黒写真のように美しく、光と影のせめぎ合いに息をのんだ。
映像を見ているだけで、涙と鼻水。
そして、せりふも内容も、ちっとも古さを感じさせないことに驚いた。
まるで、ずっと先の時代のことまで考え抜かれ、練り上げて作ったような。
黒澤グループのもの作りの気合に、凄みを感じた。
えらそうなことは言えないけど、たぶん、ものごとの本質(本当のこと)に迫った人たちの仕事というのは、時間も場所も人種も、簡単にとび超えられるのだろう。
三船敏郎はもちろん、加山雄三もまた良かった。
左ぼくぜんも良かった。
あまりに迫力なので、見るのがもったいなくなり、途中でやめにした。
こんど、ビデオを借りて改めて見ようと思って。
それで、音楽のプログラムをなにげなく見ていたら、なんとクラムボンの『Musical』があった。
それからはもう、涙涙の空の上だった。
郁子ちゃんたちの音楽もまた、時空を超えたところで踊っていた。
こんな地上何千メートルの上空で、ケンイチ君のコーラスの声が聞こえたり。
郁子ちゃんの、私の知らない声のヒダも聞こえた。
空の上というのは、死んだ人とか、生まれる前の魂とか、今生きている人とかが混ざり合って、でこぼこがないなめらかな世界のような気がする。
そして、クラムボンの音楽を聞きながら、本当は地面に立っている時も、いつでも、感受性はどこへでも飛んでゆけることを思った。
吉祥寺までのバスの中、大手町あたりで、サラリーマンのおじさんたちの姿が見えた。
今日の仕事を終えて、大きな建物の中から、バラバラとはじき出てくる。
脱いだ背広を肩にかけ、襟元を開いた白いワイシャツ。
それが、なんだかとても清々しく、かわいらしく見えた。
まだ明るさが残る、みずみずしいような夕暮れのせいなのか。
もりもりと勢いのいい、緑のせいなのか。
夕方って、いいな。
いつものように、スイセイと近所の蕎麦屋で待ち合わせ。
板わさ、冷や奴、ざる蕎麦、天ぷら盛り合わせでビールを3本飲む。
ビールは味が濃く、キーンと冷えていて、のどに沁みた。
帰ってきたら、リビングにダンボールで出来たパラボラアンテナみたいなおもちゃがある。
スイセイは得意になってソファーに座り、丸いのをぐるぐる回し始めた。
「ブーーン、キキーーーイ」とか言いながら。
それは、運転練習用のハンドルとアクセルの、実物大模型だそう。
私はというと、まだ帰ってきたことの実感がない。
中国のホテルの部屋に、またしても自分の半分を置いてきてしまったような。
風呂から上がって、『日々ごはん』のスイセイ留守番日記を読むが、いろいろ難しいことが書いてあって、なんだか辛そうで、よく意味が分からない。
スイセイはスイセイで、この5日間たいへんだったことは伝わってくるけれど。



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