2007年6月下

●2007年6月30日(土)曇り一時雨

朝からレシピ書き。
洗濯物が気にかかり、何度もベランダに出ながらやった。
晴れではないけど、曇りでもないようなどっちつかずの天気。
3時ごろ、怪しくなり、布団をとりこむ。
シーツやらバスタオルやら、大きめの洗濯物だけは入れるが、空を仰いでみてちょっと考え、他の洗濯物は出しておいた。
その直後にぽつぽつと降り出した。
やっぱり。
考える前の、ぼんやりとした直感の方を信じるべし。
雨が上がって、晴れ間が出た。
ほんのひと時だったけど、もちろん洗濯物を出した。
今日は、レシピと洗濯物の日だったな。
夕暮れ時、風が吹いて、山の上の天気みたいに涼しくなり、長そでを羽織り靴下を履く。
夜ごはんは、沖縄風の炊込み玄米(いつぞやの残りを月桃の葉で包み、せいろで蒸した)、スペアリブの炙り塩焼き、くずし豆腐(長命草、青じそ、みょうが、万能ねぎ、梅じょうゆ、ごま油)、茄子のくったり煮、レタスとみょうがと玉葱のサラダ(かつおぶし、醤油、米酢、ごま油)、紅生姜。
昨夜、新しょうがを薄切りにして赤梅酢に漬けておいたのが、とてもおいしくできた。
これは、日置さんに教わった。
ぜんぶとり出して細切りにし、びんに保存する。
色もきれいな紅生姜ができた。
スイセイも気に入った様子。
今年の夏は、これで乗り切ろう。
風呂に入ったら、今夜もまた『すいか』だ。

●2007年6月29日(金)晴れのち曇り

洗濯物が風に揺れて、気持ちよさそう。
大家さんの庭の木は、どんぐりも柿の木もぐんぐん伸びて、あっという間に三階のベランダを通り越した。
緑が多いのが、とてもありがたい。
昨日の疲れは取れたけど、朝からお腹がピーピー。
次の本の撮影までしばらく間があくので、レシピを書いたり試作をしたり、また態勢をととのえよう。
とりあえず今日はゆっくり休んで、昨日の撮影で気がついたことを、忘れないうちにメモしておく。
あとは、読書の日。
雨がくる前に買い物へ。
帰って、洗濯物をとりこみ始め、ほとんど終わったところで、大粒の雨がいきなり降り出した。
雨よりも、私の方がちょっとだけ早かった。
夕方、なかなか暗くならない。
雨がそぼ降っているのに、そこはかとなく明るい。
窓の外をのぞくと、西の空がうっすらと夕焼けに染まっていた。
晴れながら雨が降ることがあるように、雨なのに夕焼けが出ることもあるんだな。
夜ごはんは、冷や汁(豆腐、いりごま、味噌、だし汁、みょうが、青じそ、万能ねぎ)、まぐろのヅケ(撮影の残り)、焼き茄子、焼きピーマン、玄米。
夜、ひさびさに『すいか』のDVDを2作分見て、泣く。
これは、去年再放送されたのを、星野君が録ってくれたもの。
窓の外には、満々の満月が。

●2007年6月28日(木)晴れ

2日目の撮影。
最後のカットを撮っている時に、たまたま日置さんの後ろにいたので、畳の上にかしこまってみた。
足がパンパンになっているのが分かった。
折り曲げたふくらはぎに、初めて血が流れるような、ジンジンする感じ。
マッサージをしているようで気持ちいい。
それで、朝からほとんど立ちっぱなしでやっていたことに気がついた。
撮影が始まると、私の脳みそや体の中の流れはどうにかなってしまっている。
いつもの使い方と、まるで違う使い方をしている。
自分で気がついて休んであげないと、ずっと突っ走っている。
夢中すぎて。
日置さんの写真が、素晴らしいからだ。
皆が帰ってから、ヒラリンの後片づけの手伝いをして、7時くらいに終わった。
波照間島の産物を、いろいろおすそ分けする。
夕暮れどき、ふたりでてろてろとコンビニまで歩いたのが心地よかった。
私は、ピノ(アイス)と缶ビールを買う。
夜ごはんは、まぐろのヅケ、おくらのおひたし、蕪と人参の塩もみ、おにぎり。
スイセイも私もくたびれ過ぎていて、けっきょくビールは飲まず、ごはんを食べ終わって、ふたりでピノを食べる。
く〜〜〜。
今日は暑い中、よくがんばった。
スイセイの声を聞くと、やけにホッとする日であった。

●2007年6月27日(水)ぼんやりした晴れ

ひさびさに晴れたので、洗濯物をたっぷり干す。
ムシムシと暑い日。
掃除をしたり、明日の仕入れのチェックをしたり。
料理の盛りつけをシミュレーションしたりして。
みどりちゃんが器をひと通り置いていってくれたので、眺めながらやった。
でも、まだぜんぜん決めずに、ぼんやりくらいのままにしておく。
当日のひらめきの方を大事にしたいので。
さて、そろそろ街へ仕入れに行ってこよう。
しかし、自転車のカギをなくしてしまったことに、出掛ける段になって気づく。
あたふたとあちこち探すが、見当たらない。
何度も自転車置き場に行って、階段を上ったり、下りたり。
もしや 開かないかと、カギ穴にヘアピンをつっこんだりもした。
気分を変えて歩いて行けばいいんだけど、そういうことも思いつかず、しばらくウロウロしていた。
自分にとって、自転車というのは、かなり大事な位置を占めているものだったと再確認した。
けっきょく、思い直して歩いて行く。
歩いたら歩いたで、すぐに散歩モードに切り替わり、すっかり気分がよくなった。
自分は、人よりもあきらめが早いかもしれないなと思う。。
帰りは、荷物が多いのでバス。
夜ごはんは、沖縄風の炊込み玄米(塩豚、塩豚のゆで汁、きくらげ、エリンギ、ひじき煮の残り、ピパチの葉)、刺し身蒟蒻&わかめ(にんにく醤油)牛こまともやしのキムチ炒め、かき卵スープ。

●2007年6月26日(火)小雨

梅雨らしい日。
二日酔いで、12時まで寝る。
うどんを茹でて食べてから、布団の中で、昨日の撮影のレシピについて、気がついたことや反省点などをメモしているうちに、また眠りの中へ。
窓を開け、ひんやりと水っぽい空気の中で、寝たり覚めたり。
私は昨日、ひさしぶりの本の撮影で、気持ちが高ぶっていた。
今日のしんみりした空気は、それをクールダウンしてくれる。
まだまだ始まったばかりなのだから、気を落ち着けて、溜まった力をじわじわと発揮してゆこう。
夜ごはんは、とりレバーとつくねの照焼き(自家製焼き肉のタレで。千キャベツ添え)、肉豆腐(残りもの)、茄子のみそ汁、玄米。

●2007年6月25日(月)曇り

10時半に集合で、いよいよ新しい本(『おかずとご飯の本』仮)の撮影。
みどりちゃんは、道が混んでいるのを予測して早めに出たら、30分も早く着いてしまったそうで、10時ちょうどに来た。
ミルクティーを飲みながら、スイセイと3人でしばし近況報告などし合う。
そのうちに、皆続々と集まってきた。
皆の顔は晴れ晴れとして、雑誌とは違う空気を感じた。
何かに挑む前の、スッキリと迷いのない空気。
最初のうち、私はけっこう緊張していたが、日置さんの写真を見るごとに、どんどん刺激され、集中力が増してきた。
雑誌では何度かあったけど、みどりちゃん、日置さん、私のトリオで本の撮影に挑むのは、実はものすごく久しぶり。
『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』以来だから、6〜7年ぶりかな。
でも、6年というのが10年くらい前のような気がする。
この6年で、それぞれいろんなことがあったろうし、新しい仕事もたくさんやって、大人になって、またここで会った。
というような、なんともいえない気持ちにもなった。
アリヤマ君とは『じゃがいも料理』でお世話になったけど、赤澤さんも丹治君も『野菜だより』以来で、また同じメンバーがこの家に集まり、いっしょにもの作りができる。
そういう喜びが、胸の底でヒタヒタと波打っているのを感じながら、ひとつひとつ料理を作っていった。
日置さんが、気合いを入れて1枚1枚に挑んでいることも伝わってきた。
私は、ポラを確認するごとにドキドキして、台所に戻っては次の料理に集中する。
料理本というのはこういう感じだったことを、ひさびさに思い出しました。
終わってから、丹治君と打ち合わせ。
明日はスイセイの教習所が休みなので、お疲れさまの気持ちで、ぼちぼちと白ワインを飲み始めているうちに、気がついたら赤ワイン2本をあけ、ウイスキーも飲んでしまう。
丹治君は11時ころ、ヒラリンは1時くらいに帰っていった。

●2007年6月24日(日)曇りのち雨

午後から小雨が降り出した。
大家さんは、雨の中、庭で作業をしていて、そのまわりをハルがうろうろ。
下の階からは、ギターのいい音色が聞こえてくる。
ひさしぶりの雨だから、木々も喜んでいるだろう。
じっと佇んで、じっくり雨を感じているように見える。
さーて、明日の撮影の準備を始めようか。
掃除をしたり、あとで材料の仕入れに街へ出る予定。
雨の中、行ってきました。
行きは歩いて帰りはムーバス。
雨の日のムーバスって、混んでいるけどなんかあったかい。
夜ごはんは、カレードリア(長ねぎ、椎茸、おくら、牛乳、チキンカレーの残り)もちきび入り玄米)、キャベツと人参のコールスロー。

●2007年6月23日(土)快晴

朝いちばんに、クール宅急便で、波照間島から荷物が届いた。
箱を開けると、緑色の大きな葉っぱで、中身を四角くすっぽり包んである。
葉っぱはサーニンパ(月桃の葉)。
めくると、新聞紙がしんみりして、ひんやりとした森林のような空気がこもっていた。
中から出てきたのは、ススキみたいなバサバサしたみずみずしい葉っぱ。
レモングラスとじゅず玉の葉だそう。
ピパチの葉。
長命草。
島唐辛子。
青じそ。
葉っぱを編み込んで、軒につるして干した、島にんにくのリース。
泥つきの島らっきょう。
穂じそを干したもの。
もちきび。
手紙。
すべてが葉っぱでひとつひとつくるんであって、葉っぱの上に言葉が書いてある。
「ピパチの葉を少しいじめてカピる(かぐ)とすごくよいね。島ではじゅうしいの最後に入れて まぜまぜしてむらすと うまい」。
「ししたまん茶(じゅずだま)生葉でもおいしいお茶になるヨ。薬草です」。
葉っぱは青々として、みずみずしいどころか、モリモリとたくましい。
首やら、二の腕やら、触ったところが赤くなるほど。
波照間島の産物をベランダにひとつずつ並べながら、私は、自分のことがグーンと恥ずかしいような気持ちになった。
波照間島も、良美どんたちも、やっぱりすごいなあ。
自分は、なんてやわやわなんだろう。
このところ私は、ずーっと頭でっかちで、頭の中だけでいろいろ考えたり感じたりして、ぜんぶ分かった気になっていたなあ。
何も分かってなんかいなかったなあ。
島らっきょうの泥は、砂が混じっていて、ジャングルみたいによく茂った、海辺の草むらのトンネルのことを思い出した。
猛烈に波照間島に行きたくなったが、私は自分にやれることを、ひとつずつ、足もとからやってゆこう… と思う。
心を大きく開いて、あさってから始まる撮影に、体の全部をゆだねよう。
ひさしぶりに買い物に行き、帰ってから図書館にも行った。
島らっきょうを塩漬けにし、プラムの漬け込み酒も作った。
お昼にそばを茹でて、ピパチの葉と長命草は天ぷらに。
明日、残りのピパチの葉で、ジューシー(炊込みご飯)を作ろうと思い、夜ごはんの支度をしながら、スペアリブの塩豚を作ってみた。
夜ごはんは、鰹のたたき(みょうが、波照間の青じそ、長命草、葱、生姜、波照間のにんにく、トマト)、焼き茄子、椎茸とエリンギのバター醤油炒め、島らっきょう、ひじき煮、浅蜊の潮汁、もちきび(波照間の)入り玄米。
波照間のにんにくをすりおろしていたら、汁が首筋に飛んで、ピリッとした。
新にんにくのせいもあるかもしれないけど、精が強い。
にんにく醤油にして鰹のたたきを食べたら、すごくおいしかった。

●2007年6月22日(金)雨

昨夜は、偶然会ったかおるちゃんも誘って、4人で沖縄料理屋に行った。
地下に降りると、吉祥寺ではない空気があり、本当に沖縄にいるような気分になった。
島豆腐や島らっきょう、海ぶどう、もずくの天ぷら、ゴーヤチャンプル、ソーミンチャンプルなど、おいしかったな。
お通しで、長命草を刻んで島豆腐に混ぜたのが出てきた。
波照間の良美どんのことを、すぐに思い出した。
スイセイも、ひさしぶりにとても嬉しそうな顔をして、ビールを飲んでいた。
ほろ酔いのいい気分で、12時くらいに帰ってきました。
今日は、しっとりした雨。
ひんやり涼しいし、頭が少しぼんやりしているので、読書の日と決める。
朝から、たたんだ布団によっかかって。
かおるちゃんが貸してくれた、佐藤雅彦さんの小さい本、『トゥーチカと飴』がすごくいい。
ハーブの飴を舐めながら読んだ。
そして、庄野潤三さんの『ザボンの花』。
3人の子供たちと母。
時々出てくると父と、近所の家族との交流。
小さい小さい、たわいのないことが、外の出来事と比べようがないくらいにおもしろい。
穏やかなユーモアが、時々ツボにはまり、「アハハハハハハ」と声を出して笑いながら読む。
スイセイは、雨の中、路上運転をしているころだろうか。
夜ごはんは、豚肉とピーマンの黒ごま味噌炒め、ちまき(中国のお土産)、もやしと葱のスープ、レタスと青じそのサラダ。

●2007年6月21日(木)晴れ、夕立。


ひさびさに寝坊してしまった。
11時です。
レシピも書き終わったし、なんとなく、いろんなことが終わった感があって。
『セクシーボイスアンドロボ』も終わっちゃったし。
昨夜は、ビデオに録った最終回を見てから寝た。
頭の中では、ずっとあのテーマソングが流れ、どこか分からないけど、たぶんロボのアパートとニコの家を中心に、半径1キロメートルくらいの中にあったであろう、原っぱや並木道や、ロボが最後に星空を眺めていた高台(駅だろうか?)が。
人が出てくるのではなく、そんな風な景色の夢をみていた。
終わっちゃったけど、ビデオがあるから、これからもうしばらく楽しめる。
夕方から田中君と打ち合わせなので、それまでに掃除し、ワックスも塗ってピカピカにする予定。
打ち合わせは、とてもいい展開が見えてきた。
田中君はきっと、よっぽど練りに練って、考えをまとめたのだろうと分かる。
そういう企画書ができていた。
私が書くべき文章も、あとはやるのみ。
うっそうと茂った森林の先には、すでに明るい光がチラチラと見えているような、そんな感じがする。
スイセイもホッと安心したらしく、教習所もひと段落ついたので、まだ明るいうちにてくてく歩いて、3人で「横尾」にビールを飲みに行く。



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