2007年7月上

●2007年7月10日(火)曇り時々雨

6時くらいに目が覚め、なんとなく本のことを考えていたら、寝ていられなくなった。
しばらく目をつぶったりしてウロウロさせてみるが、みどりちゃんはもう起きているだろうなと思い、私も7時に起きた。
昨夜は『世界ふれあい街歩き』を見終わって、すぐにぐっすりだったので、充分眠った感じがある。
新茶をいれて、レシピの直しなどやる。
あいにくの天気だけど、大雨でないだけでもありがたい。
10時半から本の撮影だが、まだまだたっぷり時間がある。
今朝、4つ目のミニバラが咲いた。
同じピンク色だけど、4つとも色味も形もぜんぜん違ったな。
気温や天気の関係もあると思うけど、最初に咲いたのがいちばんきれいだった。
まだ涼しいころだったからか、蕾の状態から開くまで、いちばん日数がかかった。
じわじわと開いていって、咲いてからも3日間くらいピークがあった。
30度を越えたカラカラの晴天が続いたころに咲いたのは、あっという間に開いて、夕方には白っぽく干からび始めていた。
たとえば垣根をおおうくらいにたくさん花が咲いていたら、目が散って、こんな風には観察できなかっただろう。
たくさんのことがいちどに出来ない。
たくさんのことを抱えていると、すみずみまで目が届かないから、実感できない。
実感できないことがひとつでもあると、気持ち悪い。
自分は、そういう性分なのだ。
仕事も、目と気持ちがゆき届くくらいの量にしぼって、これからもこつこつとやっていこう。

●2007年7月9日(月)ぼんやりした晴れ

昨日は、走っているうちにどんどんスピードが出てしまい、いつもより足も高く上げるようにしていたら、後半がちょっと辛かった。
中央公園の中では、ゴールの水飲み場のことだけを一心に思い描いて走った。
それで、夜ごはんを作っている時、猛烈に眠たくなって、ごはんもあまり食べられなかった。
遊び疲れた夏の子供みたい。
でも、不思議と今朝はまったく筋肉痛がない。
先週はひさしぶりだったから、腕や足のつけ根が痛かったが。
さて、今日もまた試作とレシピの直し。
撮影で夏野菜のカレーを作るので、『すいか』のDVD第一話を見る。
市川実日子ちゃんが作っていたのは、「とりたて夏野菜のカレー」。
畑で採った茄子、ズッキーニ、赤ピーマン、トマト、とうもろこしが入っているようだった。
何度も何度も見ているのに、なんでこんなに涙が出るんじゃろ。
『すいか』の涙って、真っ昼間の晴天の青空という感じがする。
人と人との距離はどうしたって離れていて、いつでも人はひとりぼっち。
さらさらと乾いている。
なのに温かい。
涙は出ても、すぐに乾くぜ!。
さて、あとで、明日の撮影用の買い物に行き、あちこち掃除もする予定。

●2007年7月8日(日)曇り時々晴れ

10時くらいにピンポンが鳴って起きた。
このところ、3回続けて宅配便が届いているが、配達のお兄さんが変わった。
高校生ぐらいにしか見えない華奢な美少年だけど、夏休みのアルバイトだろうか。
たぶん、階段を走って上ってくるんだと思う。
ハアハアと息を弾ませた明るい声で、「こちら、高山さんのお宅ですか?、重たいですから気をつけてくださいね!」なんて言う。
一生懸命で初々しく、とても爽やか。
なのに私は、いつもパジャマのまま出てしまうので、ちゃんと目を見て「ご苦労さまです」と言えない。
ところで、昨日の「チクタク」の打ち合わせの時、川原さんの作ったデザイン案(薄い本の形になっている)を見せてもらった。
内容を見て、川原さんのデザイナーとしての能力に、私はびっくりたまげた。
能力という言葉はなんだかえらそうで、川原さんには似合わない。
もっと、独自の考え方で、体と気持ちを使った仕事の進め方。
私が書いたものを、たぶん繰り返し読み込んで、その世界に入り込み、想像している。
その想像の深さというか濃さにはまれる力が、すごいんだと思う。
きっと、川原さんの普段の暮らしの中にまで、その世界が流れ込んできてしまうくらい。
しつこさとか、ねばり強さとか、集中力とか。
そういうたぐいの、はかり知れないエネルギーを感じた。
いい仕事をするために、自分の今持っている力を惜しまずに出すこと。
妥協しないこと。
こういう人をプロというと私は思う。
中国での仕事もそうだけど、本物のプロと一緒にもの作りができるということに、仕事をする喜びが心の底から湧いてきます。
私も頑張らねばと、フンドシの紐をしめ直すばかりです。
「チクタク」というのは、これから本にしようとしている『チクタク食卓(仮)』のこと。
2005年の1年間、うちで何を作り、何を食べてきたかを記録したものです。
つまり、『日々ごはん』のドキュメント・レシピ本。
「ごはん日記」と自分で名前をつけ、日記帳にイラスト入りで毎日記録していた。
おいしくカンタンに出来ておすすめな料理は、レシピを残した。
日によっては、メモ書き程度のものもあり、イラストのレシピもあり、材料だけのレシピ、まったくレシピがないものもある。
毎日の食卓をデジカメで撮影したが、早く食べたいあまり、時には忘れたり、ピントが合わない写真もある。
季節ならではの保存食作りは、プロセスを追ってスイセイに撮ってもらった。
その「ごはん日記」の内容と写真を切り抜いて、新しいスケッチブックに切り貼りをしていたのが去年の夏で、『日々ごはん9』に出てきます。
スケッチブックは4冊になった(うち1冊は保存食)。
毎日のことなので、日によっては3ページも書き込んでいたり、風邪をひいて寝込んだり、二日酔いの日は半ページも書けなかったり。
そんなランダムな記録を、できるだけそのままの空気を温存させて本にするのには、通常のデザインのやり方では難しい。
川原さんにお願いして、本当によかった。
きっと、川原さんにしか出来ないことだろう。
『日々ごはん9』には、2006年内に出せそうなことを書いてしまったので、楽しみに待っていてくださった読者の方々、ごめんなさい。
この本は2005年のドキュメントだけれど、いつの年にも当てはまる普遍的な記録でもあると感じています。
なので、じっくり時間をかけて作ろうとしています。
発売のメドがついてきたら、この日記でもお知らせしますので、どうか楽しみに待っていてください。
というわけで、私はひとつひとつやっていこうと思う。
今は、『おかずとごはんの本』の方に集中しています。
来週から、また撮影の日々が続くのです。
今日は、レシピの直しと、試作。
夕方、涼しくなってきたらスイセイと走りにいく予定。
夜ごはんは、鰯のコロッケ(千切りキャベツ)、豆腐と野菜(茄子、椎茸、ズッキーニ、赤ピーマン、長ねぎなど)のピリ辛炒め、白いご飯。

●2007年7月7日(土)曇り

ミニバラは4つ目の花が開き始めた。
私はグリーンハンドではないし、万が一ひとつでも花をつけてくれたら。
それはけっこう奇跡的なことで、もしもそうなったらものすごく嬉しいなと思っていた。
小さな苗をスーパーの店先で買った時には、4つも花をつけてくれるなど、まったく想像していなかった。
こんな気まぐれな親でも、子供は育ってくれるんだなあ。
とりあえず水はあげていたけれど、肥料も何もあげないし、ただの楽しみな気持ちで、自分の都合のいい時だけ眺めていた。
まったく眺めない日もあった。
バラは、私の世話や気分とは関係なしに、自分からも花を咲かせようとしていた。
さて、そろそろ皆が集まってくるころだろう。11時から撮影です。
いつもの撮影のあと、川原さんと「チクタク」の打ち合わせ。
買い物に行き、試作をやる。
夜ごはんは、鰯の梅煮、手羽元の黒酢煮、手羽先のナンプラーバター煮、水菜とほうれん草のおひたし、冷やしトマト、白いご飯。

●2007年7月6日(金)快晴

タオルケットを2枚重ねて寝ていると、しんみりと、ヒタリと体にまとわる感じがあって、子供のころの何かを思い出した。
朝方だったので、ぼんやりとしか覚えていないけど。
不安がくるまれた、でもなんともいえず幸せなようなイメージ。
朝から、ゲラの直しを2本やる。
今日は、ほんとうはスイセイとレンタカーでドライブに行く予定だったが、昨日ビールを飲んでしまったので、なんとなくズルズルとした気持ちになり、延期になった。
明日はNHKテキストの撮影だし。
それが終わったら、また来週から本の撮影が始まるし。
あとで、買い物に行って試作をしよう。
夜ごはんは、ハンバーグ(マッシュポテト添え)、サラダ(レタス、胡瓜、トマト、青じそ、玉葱)、にらの味噌汁、玄米。

●2007年7月5日(木)快晴

ひさしぶりの晴れ。
あちこち掃除をして、11時から田中君と打ち合わせ。
これで打ち合わせは3回目になるが、スイセイの本を作ろうとしています。
私も文章を書くので、参加している。
写真家の方もいらっしゃり(まだ秘密にさせてください)、4人でなんだかんだと話をする。
雑談のようなことも話すし、大事な話もする。
扇風機が回り、外ではオナガが「ギエーー、ギエーー」と鳴いている。
ひとくさり話して、皆で「ルウム」に行くことになった。
ひさしぶりに「ルウム」に入ったが、けっこう片づいていた。
クーラーなんかないけど、扇風機で充分涼しい。
コンビニでお茶やおにぎりや缶ビール(私とスイセイだけ1本づつ)を買って、また雑談。
何か、とてもおもしろいことがじわじわと始まりそうな予感。
本を作り始める時って、いつも思うけど、地下室で皆して作戦を練っているような、秘密めいた気持ちになる。
スパイのような、忍者のような、科学者のような。
世界を救うために、自分たちは新しい何かを発明したり、開発の実験をしたりしている。
そんな感じがする。
3時くらいでゆるゆるとお開きになり、私とスイセイは散歩。
変な時間だけど、お腹がすいてきたので蕎麦屋に入った。
板わさ、もつ煮込み、きのこおろしでビールを2本飲み、とろろそば。
昔ながらのお蕎麦屋さんで、誠実そうなおじさんがひとりでやっていた。
すっかり満足し、ふたりとも赤い顔をして帰ってくる。
昼間のビールは、思いのほか酔っぱらう。
プールに行って陽に焼けて帰ってきたような、ぐったりとした脱力感のまま、干した布団に寄っかかり、夕方の教育テレビのメドレーを見る。
続いて、昨夜から読み始めた堀江敏幸さんの『めぐらし屋』を読む。
主人公の蕗子さんが畳に寝そべってうたた寝をする場面で、私もパッタリ本を伏せ、電気をつけたまま眠りに引きずり込まれる。
その、気持ちいいこと。
この本は、とてもおもしろい。
読んでいると、自分が本の中に出てくる、たとえば部屋の中の天井くらいの高さにふわふわと浮かんで、登場人物のことを眺めているような感じになる。
本屋さんの新刊売り場で平積みになっているのを、ひと目見てジャケ買いした。
手に取って、撫でてみて、(いい本だなー)と思って。
中も開いてみて、言葉がとがってない文字組みの感じが、なんか心地いいなあと思って。
それで奥付けを見たら、アリヤマ君の装丁だった。
嬉しくて、すぐ買った。
夜ごはんは、お好み焼き(豚バラ、海老、キャベツたっぷり)、ところ天、冷やし胡瓜とトマト。

●2007年7月4日(水)雨

ずっと雨降り。
こういう日は、うちの中でのんびり仕事。
あっちをやったりこっちをやったり、ふと気がついて、忘れないうちにメモしたり。
床の上には、いろんな仕事の資料が散らばっている。
つまり、おこんじきさんだ。
お昼は、玄米でオムライスを作った。
おととい、布団を敷いてさあ寝ようと思ったら、どこからかチキンライスの匂いがしてきた。
お隣なのか下の階なのか分からないけど、夜中にチキンライスを作って食べるのって、なんかいいなあと思って。
なんとなくケチャップ味が懐かしかったのです。
午後、宅配便を出しにコンビニへ。
小雨の中の散歩も、また気持ちよし。
夜ごはんは、たらこスパゲティ、サラダ(レタス、クレソン、人参)、ゴーヤとズッキーニとピーマンのじゃこ炒め(昨夜の残り)。

●2007年7月3日(火)曇り

ピンポンが鳴って、宅急便が。
陶芸家の島さんが、直火鍋を送ってくださった。
ダンボールを開けると、紙に包まれた鍋の隣に、じゃが芋と玉葱がクッションの役目も含んで詰めてある。
きっと、島さんが畑で作ったものだ。
カッコイイなあ。
島さんが料理上手なのは、みどりちゃんからいつも聞いている。
展示会の時にも、自分の焼いた器に自家製の漬物を盛って、見にきてくださった方々にふるまったりするそうだ。
島さんにとって、鍋も野菜も食べ物も、同じ地平にある。
そういう感じがして、私はとてもいいなあと思う。
ものを生み出す感性に、女の人ならではの肌触りを感じる。
島さんの器にのせると、ほんとに料理がおいしそうだもの。
1時から電信柱の工事だそうで、時間になったとたんプツンと停電になった。
まったく音がしない。
ふだん、冷蔵庫やパソコンや、なんとなしに音がしていたのだなと、改めて感じた。
そんな中、薄暗い台所で朝ごはんの洗い物をやった。
なぜか、ゆっくり、ていねいに洗いたくなる。
心が落ち着く。
不便だけど、自分の手と気持ちさえ使えば、どんなおいしいものも作れる。
そんな、サバイバルな気持ちも湧いてくる。
ていねいな気持ちのまま、梅干しを漬けた。
さて、停電の日に漬けた今年の梅は、どんな出来になるだろう。
パソコンが動かないので、仕事もできず、本を眺めていたら、スイセイが散歩の誘いにきた。
ひさしぶりなので歩くつもりだったが、足が自然に走り始め、中央公園でも走った。
ゴールと決めている水飲み場で、顔を洗い、ゴクゴク飲む水のおいしいこと。
いつものように、腕立て伏せとスクワットもやる。
夜ごはんは、鰯の蒲焼き、鰯の酢じめ、ゴーヤとズッキーニとピーマンのじゃこ炒め、トマトとクレソンのサラダ(塩、ごま油、すだち)、わかめの味噌汁、玄米。

●2007年7月2日(月)雨のち曇り

ひさびさに、1時半まで寝て起きた。
雨の音がいい子守歌だった。
何か、体の奥底から、くたびれのお湯が湧き出てくるような。
その湯だまりにゆらゆらと浸って、何度も目覚めてはまた夢の続きにもぐってゆく。
気持ちよかったー。
スイセイは、こういう時、放っておいてくれる。
勝手にパンを焼いて食べ、出掛けていった様子。
さーて、あとで街に出て南高梅を買ってこよう。
今日はスイセイの誕生日なので、何かおいしいものを作ってあげよう。
夜ごはんは、有頭海老のフライパン焼き(オリーブオイル、おろしにんにく、ナンプラーでマリネ)、鰯のなめろう、鰯の南蛮漬け、レタスサラダ、豆腐の味噌汁(昨夜の残り)、玄米。
海老だけはスイセイの大好物だけど、鰯ものの試作をやったので、へんてこな献立になってしまった。
後片づけをして、夜、梅を水に浸ける。
1年に1回だけの、フルーティーな香り。
今年の南高梅は、小粒だった。
というか、いつもが大粒すぎるから、これは普通の大きさ。
さーて、風呂から上がったら、今夜もお楽しみの『すいか』だ。

●2007年7月1日(日)ぼんやりした晴れ

スイセイが免許の卒業検定なので、今朝は8時前に起きて朝ごはんを作った。
2度寝していたら、ピンポンが鳴って宅配便が。
千葉の農園から、掘りたてのじゃが芋が送られてきた。
ダンボール箱にいっぱい、ごろごろと大きいのが入っている。
ピンポン玉くらいの小さいのもある。
わーい!。
とりあえずそのままにして、今日もまたレシピ書き。
お昼、ヒラリンにメールして、じゃが芋をとりに来てもらった。
お返しに、おいしいパンをもらう。
さっそく大きいのを茹でながら、レシピ書きの続き。
今夜はポテトサラダを作ろうと思って。
2時ごろスイセイから電話があり、無事受かったそう。
きっと大丈夫だとは思っていたけど、あーよかった。
『まる子』と『サザエさん』を見ていたら、今日もまた山の上のような、ひんやりと涼しい風が吹いてきた。
夜ごはんは、ソーセージとほうれん草のバター炒め、ポテトサラダ(農園のじゃがいも、とうもろこし、ピーマン、玉葱、ゆで卵)、わかめのおひたし(おくら添え)、茄子のくったり煮(昨夜の残り)、紅生姜、島らっきょう、豆腐のみそ汁、玄米。



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