2007年10月下

●2007年10月31日(水)晴れのち曇り

明日の撮影の準備いろいろ。
掃除をしたり、仕入れに行ったり。
テキパキと動く。
最近、毎日のように聞いているのは、「スカンク兄弟」の新しいCD。
ライブ盤で、郁子ちゃんもケンタロウさんも出ている。
聞くたんびに、ああ、なんで私はこのライブに行かなかったんだろう… と悔やまれる。
だから、何度も聞いている。
今回のアルバムは、聞いてすぐよりも、繰り返し聞いているうちにじわじわと体に入ってきた。
活力のようなものが、腹の底から湧いてきて、跳ねたくなる。
今の自分がそういう気分なのか、誘われているのか。
「スカンク兄弟」って、甘酸っぱいような、眩しいような、切ないような空気がある。
べたべたしてない。
海の風のように乾いている。
でも、情がある。
また、郁子ちゃんのボガンボスのカバーがいいんだ。
畑さんと郁子ちゃんの声って、お腹にくる。
ぞうきん掛けをしながら、青空を眺めながら、しばしジーンとする。
4時過ぎに、走りに行く。
スイセイは走る前に食べ過ぎて、胸焼けがするそう。
なので、私ひとりで走った。
いつもよりピッチを上げ、歩幅も広げて走ってみた。
まるで、空を飛んでいるみたい。
スピードというのは、人類にとって(動物にとっても?)、驚きの発見だっただろう。
スピードの中には根源的な喜びが隠されている。
しかも、乗り物ではなく、自分の体で早く走ることの中に。
夜ごはんは、カニちらし(しらす、いくら、いり卵、みょうが、青じそ、白ごま)、小松菜と水菜のおひたし、味噌汁(豆腐、油揚げ、大根)。

●2007年10月30日(火)晴れのち曇り

朝方トイレに起きて、そのまま眠れなくなってしまう。
明るくなるまで布団の中でウロウロし、7時前に起きた。
朝から人参の皮をむいたり、じゃが芋をゆでたり。
人参は、大量に千切りして塩もみした。
じゃが芋を茹でながら、昨日の続きの再校正をやる。
さんざんやったのに、やっぱりポツポツみつけてしまう。
些細なことで、間違いともいえない小さなことまで気がついてしまう。
人間の作業なのだから限界はあると思うけど、本屋さんに並ぶ本なのだから、そんなことは言ってられない。
ねじりはちまきに、目は皿だ。
とちゅう、じゃが芋をつぶして芋もち団子を作った。
タネちゃんちのおばあちゃんのじゃが芋は、すりこ木のひと突きで、ハラリッとつぶれる。
すり鉢の中で、ホクッホクッと音がするくらい。
熱いうちに片栗粉を混ぜたら、しっかりなじんでうまくいった。
朝ごはんに焼いて食べる。
昨夜の鰯のクリーム天火焼き、人参サラダ(ディル入り)と合わせたら、スウェーデンのランチみたいになった。
黒パンだったし。
ごはんを食べてから、最後の追い込み。
2時半にはひととおり終わった。
とり込んだ布団に寄りかかり、目をつぶると、いつでもスーッと眠れそう。
雨が降る前に散歩に出る。
今日は、コーチ(スイセイ)の提案で、短い距離を決め、そこだけスピードを出して走るというのをやってみた。
ものすごくハアハアする。
でも、走り終わってからが気持ちいい。
癖になる心地よさに、三回やった。
家に帰り着く30メートル前に、最後のダッシュ。
体は軽く、スポーツーマンになったような気分。
夜ごはんは、塩豚のフライパン焼き(焼き肉のたれをからめた。水菜、みょうが、レタス添え)、卵カレー、人参サラダ、らっきょう、福神漬け、玄米。

●2007年10月29日(月)晴れ

みどりちゃんから、昨日、新刊が送られてきた。
『ヨーガンレールの社員食堂』。
わーい!。
まず、タイトルがいい。
最初から少しずつページをめくって、写真に目を近づけて眺め、ひとつひとつのおかずの小さいレシピを読み込んでゆく。
蓮根と椎茸のバルサミコ酢醤油炒めは、真似して昨夜作った。
食堂のお昼ごはんの1年間の記録なのだけど、よくぞ作ったなあ、という本だ。
なんか、この本の中に流れているのは、いい仕事をしている人たち(ヨーガンレールの社員、料理を作っている佐藤さんとスタッフ、そしてみどりちゃん)のすがすがしい空気。
そういう空気が、毎日の献立のレシピを読んでいるだなのに、体の中に入ってくる。
雨の日も台風の日も、寒い日も、カラリと晴れた日も。
春、夏、秋、冬と仕事を続け、毎日を続けていくことのすごさが、この本の厚みの中にこもっている。
たくさんの人たちがこの空気をいいなと思い、真似をして、仕事場の賄いを作るようになったり、私みたいに普段のおかずにとり入れてみたりすることだろう。
なんと、ありがたい本が出たものだ。
これから、少しずつページをめくって楽しもう。
食べでのある、飽きのこない、おいしすぎないお菓子みたいな本だ。
さーて、私も自分の仕事をやろう。
今日からまた、『おかずとご飯の本』の再校正だ。
夜ごはんは、鰯のクリーム天火焼き、温やっこ(油揚げ、水菜、みょうが)、めかぶ、しじみの味噌汁、玄米。

●2007年10月28日(日)快晴

台風一過。
洗濯物を干す時、暑くて汗ばむほどだった。
空は青く、空気もカラッとしている。
陽射しが眩しくて、外を眺める時、目が細くなる。
暑いのでスカートをめくり上げて足を開き、朝ごはんをモリモリ食べていたら、「イタリア女みたいじゃの」と言う。
昨夜のいかパスタの残りと、じゃが芋のお焼きだし。
スイセイは、あんまりお腹が空かないみたい。
フライビーンズの食べ過ぎか?。
じゃが芋は、アムたちが送ってくれたもの。
タネちゃんちのおばあちゃんが自家用に作ったものだそう。
千切りにして、ちょっとベーコンを混ぜて、オリーブオイルでカリッと焼いた。
それが、おいしくておいしくてたまらない。
私は2切れ食べた。
じゃが芋は、東京で買うのと違う味がした。
黄色くて、もっちりホクホクだ。
さすがは北海道!。
スイセイが、外を見ながら「スイスイ君は、よう回っとるのう」と言った。
「スルスル君」だったんだけど、今日から「スイスイ君」に改名。
発明品の風車のことです。
午後からレシピ書きの続きと読書。
4時前に、散歩に出る。
橋のたもとのお地蔵さんトリオは、今日はひとりしかいなかった。
いちばん年上のおばあちゃんが、足をブラブラさせながら、人待ち顔で座っていた。
これから1人ずつ集まるのかもしれない。
グラウンドに足を投げ出し、でっかい太陽が沈むのを眺める。
イチョウ並木はここ2日の雨降りの間に、またいちだんと黄色くなっていた。
夜ごはんは、塩豚のフライパン焼き(出てきた脂でわけぎを炒めた、大根おろし添え)、蓮根と椎茸のバルサミコ酢醤油炒め、トマト、小松菜おひたし、梅干し、大根と青じその味噌汁、玄米。

●2007年10月27日(土)雨、台風

朝、アムたちから荷物が届いた。
泥つきの人参、じゃが芋、南瓜だ。
うわーい!。
さっそく、朝ごはんに人参の千切りサラダを食べる。
収穫が終わった大家さんの畑で、アムとカトキチとムラ(アムプリンの新しい仲間)が、ハネたものをとってくれたそう。
ひねこびていて、大きいのや小さいのやらいろいろで、皮をむいてもちょっと固いんだけど、千切りにして塩をまぶしておいたら、みるみるみずみずしくなった。
色も味も濃いい。
吉祥寺村の皆にも届けるけど、これから毎日せっせと食べよう。
冷たい雨。
午後からは、風も出てきた。
朝からずっとコラムの原稿書き。
書いては消し、加えては消して、何度も最初から読み直す。
足もとが冷えるので、今年になって初めて仕事部屋のロボットストーブ(『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボットみたいな電気ストーブ)をつけた。
大家さんのどんぐりの枝が、ベランダの上まで伸びていて、風にあおられると窓の端からヒョイと顔を出す。
そのたんびに、人が動いたように見え、ドキッとしながらパソコンに向う。
夕方、原稿はどうにか形になってきた模様。
今、スイセイに見てもらっている。
題名を除いては、いっぺんで良しが出る。
い、やったー!。
気分がいいので、来月撮影分のレシピ書きもやり始める。
夜ごはんは、いかのトマトソーススパゲティ、サラダ(人参、キャベツ、玉ねぎ、サラダ菜)、人参のスープ、蓮根の厚切りきんぴら。
人参スープ、超うまーい!。

●2007年10月26日(金)ずっと雨

雨降りの日は、なかなか布団から出られない。
落ち込むように、ずーっと寝ていたくなる。
でも今は、そうもいかず…。
10時半に起きた。
起きてみたら、明るめの雨だった。
今日は3時からインタビューがあるから、それまでにひと仕事やってしまおう。
昨日から書き始めた、コラムの続きです。
インタビューは1時間半ほどで終わり、また続きをやる。
夜ごはんは、いかのワタ詰め焼き、おひたし(蕪の葉、小松菜)、南瓜の塩蒸し、梅干し、落とし卵と葱の味噌汁、玄米。

●2007年10月25日(木)晴れたり曇ったり

朝ごはんを食べてから、ひさしぶりにパンを練った。
ついでに乾物入れの粉や豆類も整理。
スイセイは、カレンダーの作業をしている。
私は畳の部屋でパンを発酵させながら、ずっと本を読んでいるのだけど、スイセイはさっきから何度も休憩しながらやっている。
「みい、そろそろお茶にしなさい。根を詰めると体にええことないで」。
そう言いおいて、自分の部屋に煙草を吸いにいく。
「みい」というのは、「オレ」という意味。
自分でねぎらっているのだ。
中国に行った時、ホテルの洗面所に置いてあるシャワーキャップをもらって帰ってきた。
パンを発酵させる時にボウルにかぶせてみたら、あまりにぴったりで感心した。
これは、しおりちゃんの真似。
永谷(旦那)は、よく海外に出張に行くから、そのたんびにシャワーキャップ(未使用の)をもらってきてもらうのだそう。
しおりちゃんは今、新しい本をアノニマで作っているので、丹治君経由でシャワーキャップ情報が伝わってきた。
今日のパンは型に入れず、楕円形にまるめてみた。
天板の上で2次発酵したパン生地は、赤ん坊の太ももみたいに膨らみ漲っている。
焼く前に米の粉をふりかけた。
ライ麦を少し混ぜたので、形も色もちょっとドイツっぽく、好みの感じに焼けた。
4時前に散歩に出る。
スイセイがいうには、私の足をひきずる走り方が直ったそう。
まったく意識していなかったけど、苦しくなく走れるようになったのと関係があるのかも。
中央公園のグラウンドで、沈む直前にビカーッと輝く太陽が、雲の間からのぞいていた。
おかげでしばらくは、目の前に電気の玉がちらついていた。
夜ごはんは、煮込みハンバーグ(椎茸、エリンギ、赤ピーマン、トマトソース、チーズ)、オレキエッテとキャベツのサラダ(マヨネーズ、ゆで卵、玉葱)、オレキエッテのトマトソース和え、玄米。
玄米ご飯が半端だったので、オレキエッテばかりになった。
オレキエッテというのは、このところ私もスイセイもお気に入り、耳の形のパスタのこと。
今日で1袋食べ終わったが、こんどは粉から練ってみたいものだ。

●2007年10月24日(水)晴れ

のどかな晴れ。
朝のミルクコーヒーがおいしいなあ。
このところ、とてもよく眠れる。
目をつぶったらスイッと眠りがやってくるし、明け方に目覚めることもない。
本のことから手が離れたからだろう。
あとは、再校が出てくるのを待つばかりだ。
さてしかし、そろそろ次のことを始めねば。
今日から、「yom yom」のコラムを書き始めよう。
「チクタク食卓」も、スイセイ本も、やりたいことはまだま山積みだが、1時から新しい出版社の編集の方がご挨拶にいらっしゃる。
なんとなしに、月子さんみたいな方だった。
『センセイの鞄』の。
お会いするまでどうしようかと迷っていたが、2杯目のお茶をいれるころには、フツッフツッと書きたい気持ちが湧いてきた。
多分、来年から始めることになるだろう。
スイセイのカレンダーのセレクトを手伝っているうちに、4時になってしまう。
ス「今日は、1日中みいと一緒におるような感じじゃのう」。
私「うっとうしい?」。
ス「カレンダーをやっとる時、イヤんなりそうになった」。
焼きそばを作って食べ、走りにゆく。
橋のたもとの作りつけの腰かけに、おばあちゃんが3人、いつものように並んで座っている。
今日は、大きなみかんをむいて、分け合いながらおしゃべりしていた。
いつも喋っているのは若めの二人で、いちばん年配のおばあちゃんは聞き役。
いつもにこにこしているだけ。
「生きとるお地蔵さんみたいじゃのう」と、スイセイはうまいこと言った。
夕陽は見れなかったけど、風の感触が気持ちよく、犬の散歩の人たちものんきそうにしていて、地味ないい夕方だった。
イチョウ並木は、昨日よりもまたいちだんと黄色がかったような気がする。
夜ごはんは、ちくわと野菜の炒め物(人参、小松菜、蕪の葉)、焼き厚揚げ、蕪の蒸し煮、納豆、豆腐の味噌汁、玄米。

●2007年10月23日(火)晴れ

すがすがしい空気。
11時から「Lee」の撮影。
みどりちゃんとご一緒。
3品なので、ゆっくりひとつずつ作った。
3時前には終わり、皆でお昼を食べ、解散。
スイセイと散歩。
ひさびさに走った。
線香花火みたいなジリジリした太陽が沈もうとしているところに向って。
でも、公園のグラウンドに座って見たかったなあ。
それには、4時前に家を出ないと間に合わない。
ちょっと太ももが痛くなったが、気持ちがいい痛さ。
ずいぶん見ないうちに、イチョウ並木が黄緑になっていた。
夏の間は、あんなに青々としていたのに。
夕方の風呂上がりに、『おじゃる丸』を見ながら食べるササ坊の葡萄のおいしいこと。
撮影の残りのおでんがあるから、ごはんの支度もしなくていいし。
夜ごはんは、おでん、たくわん、キムチ、玄米。

●2007年10月22日(月)晴れ

朝ごはんの前に、窓拭きをやってしまう。
今日もまた気持ちよく晴れ渡っている。
首筋に当たる陽射しが、けっこう強かった。
今日やることは、明日の撮影のレシピ書きと仕入れ。
サッサカと用事は終わり、あちこち掃除機をかけて明日の支度。
3時ごろ、スイセイと三鷹方面へ散歩に出る。
通り道だったので、ヒラリンの友だちのサンちゃんの工房を覗いてみる。
いつものように窓には布がかかっていたけど、ふたりでぼんやり立っていたら、てぬぐいを頭に巻いて眼鏡をかけたサンちゃんがすぐに出てきた。
通りの方まで甘いいい匂いがしているなと思ったら、やっぱりサンちゃんのところからだった。
業務用のオーブンでスポンジケーキを焼いていて、ちょうど焼き上がりをとり出すところ。
ケーキに串をさして、焼き上がりを調べている。
薄暗い部屋の中で、ひとりごちょごちょ作っていて、きっとそこは、サンちゃんのこれまでの人生で自然に集まってきたものだけが置いてある部屋で。
べつだん、せいせいと明るかったり、ハリハリと張り切っているわけでもないのに、サンちゃんはなんだか幸せそうだった。
三鷹方面で用事をし、帰りぎわにもういちど寄って、ほうじ茶と鮎の形のもなかをいただく。
夜ごはんは、チキンカレー、キャベツサラダ(人参、パセリ、カニカマ)。
風呂から上がってベランダに出ると、葉っぱの下にハルがいた。
月明かりに照らされた、夜のハル。
「ハル〜〜」と呼ぶと、こちらを見上げたままじっとしている。
動かずに、ずーっと見ている。
きっと、風呂上がりで頭に白いタオルをインド人みたいにぐるぐる巻きにしていたから、不思議だったのだろう。

●2007年10月21日(日)快晴

脳みその繊維が、ギューッと密になっているのを1本1本ほぐし、風を入れようとして、ずっと寝ていた。
実際に脳みそを押えたり、もんだりもしてみたけど、そういう時には夢をたくさんみるとほぐれるからということに、夢の中でなっていた。
実家の、もうなくなってしまった古い家の8畳間に布団を敷いて、私は寝ていた。
子供のころ、学校を休むと、いつも寝ていた場所。
10時になると、甘食と温めた牛乳を祖母が運んできてくれる。
目が覚めたら1時半。
ものすごくいい天気。
ああー、ソンをした!。
ぼそぼそと起きてトイレに行ったら、リーダーが来ていた。
スイセイの部屋の、いろんな荷物の山の間にうまいことはまり、打ち合わせをしている。
「おそようございまーす」と言われる。
今日は、窓ガラスのくもりがやけに気になる。
風がまったくなく、静かなのに、空気がムッチリしている。
「チーチーチュイー、チーチーチュイー」とヒヨドリも鳴き、さっきから飛び交っている。
雀も、なんとなしにはしゃいでいる。
熱帯のジャングルみたい。
こんなに天気がいいと、私だけポツンととり残されたような気分。
本のことから、やっと自由になれたというのに。
夜ごはんは、鯵の開き、茄子の醤油煮、甘い卵焼き、大根おろし、納豆、豆腐と葱の味噌汁、玄米。
スイセイは、町工場の職人さんたちのテレビを、体を乗り出して見入りながらごはんを食べていた。
すごく幸せそう。



日々ごはんへ めにうへ