2008年1月中

●2008年1月20日(日)薄い晴れのち曇り

10時に起きた。
今日もまた寒いけど、昨日アムたちがやっている晩ごはんのホームページを見ていたら、マイナス30度と書いてある日があった。
あたりは真っ白でぶ厚く、シーンと静まり返っているんだろうなあ。
試作をひとつやりながら、ゆっくり静かに過ごす。
2時にはもう薄暗い。
夕方から、東京でも雪が降るかもしれないと、昨夜の天気予報で言っていた。
空が白い。
スイセイは、足に重しをつけて散歩にいった。
さあ、私も買い物に出て、この寒さを味わってこよう。
夜ごはんは、南瓜のポクポク煮、茄子の醤油煮、かじきまぐろのフライパン焼き(ゆでほうれん草添え)、ポテトサラダ(スーパーの)、大根葉の味噌汁、玄米。

●2008年1月19日(土)晴れ

暖かい。
ぐっすり眠って12時に起きた。
洗濯物を干しながら空を仰ぐと、青い空にひとすじの飛行機雲が長く延びているところだった。
遠くの空へとぐんぐん延びてゆく。
もうすぐ、私もそこへ行くよ。
先っぽでキラリと光る飛行機に向って思う。
昨夜は、サン=テグジュペリの『人間の土地』を読んで寝たので、空の方が地面より近く感じる。
雲をつき抜けたところ。
雲海のはるか上の、明るく何もない真空地帯。
かろうじて地球だけれど、宇宙とのはざまにいる時、私の頭も遠くへ飛ばされる。
人間でなくて人類。
人類でなくて生命。
死とか。
高いところからのものさしで思ってしまう。
自分がシューッと縮んでゆく。
それで、ふと視線を戻すと、飛行機の内側では、スチュワーデスが急須を抱えてゆっくり歩き、乗客たちは新聞を読んだり、ビデオを見たりしている。
暖かく、平穏で、安全で、いつもと変わらないように見える場所。
ほんの少しだけ目まいがするのは、私だけ?。
しかし、そんな風になりながらも、地上に降り立ったとたん仕事モードにヒョイと移り変われる自分こそ、不謹慎なような気がする。
さて、ゲラの直しをお送りし、今日の仕事はこれで終わり。
あとで、ひさびさに走りにいこうかな。
4時にスイセイと出る。
無理はしないようにと思っていたが、なんでもなく走り通せた。
道路を横断する時、ベンツのジープを発見。
銀色で四角すぎなくて、ほどよい大きさでカッコイイ。
私はああいうのがいいんだけど、スイセイは本物の三菱ジープがいいらしい。
冷たい水を飲んで中央公園のグラウンドを横切る時、景色が大きくてスカッとした。
卵の黄身のような入り日を眺めながら、帰ってくる。
夜ごはんは、豚バラと大根の角煮(ゆでチンゲン菜添え)、ごま豆腐の生姜あん、切り干し大根、大根と三つ葉の味噌汁(昨夜の)、玄米。
風呂から上がってパジャマに着替え、ふとベランダに出てみると、星。
頭を上げると、月をかすめるようにして、白い龍のような飛行機雲が。
雲はまだ出来立てらしく、もやもやと動いている。
弧を描きながら、はるか向こうに延びてゆく。

●2008年1月18日(金)曇りのち晴れ、寒い

このところ、寒さが本格的になってきた。
陽が射すと少しは暖かいけれど。
これぞ冬!っていう感じ。
11時までたっぷり眠って、あちこち掃除。
3時からは、次の本の打ち合わせ。
赤澤さんはハワイ帰りで、ちょっと陽に焼け、つやつやととても元気そう。
しばらくしてピンポンが鳴り、玄関を開けると、みどりちゃんと丹治君が活力ごと入ってきた。
皆、ひさしぶりなので、自然と30分ほど雑談タイムになる。
終わってからも、赤澤さんが持ってきてくれたロールケーキや、揚げもち(鏡もちと玄米もちを揚げておかきにした)、高知の甘いみかんなどを食べながらお茶飲み話が続き、5時に解散。
いっしょに外に出て、私は自転車で買い物。
来週からまた中国なので、寒さ対策の温かい下着や、保湿クリームなど買う。
夜ごはんは、塩鮭、切り干し大根(萩原さんの東北土産の切り干しで)、飛び魚のはんぺん(わさび醤油)、菜の花のおひたし(昨夜の残り)、大根の味噌汁(白みそ)、玄米。
こういうごはんが、しみじみとてもおいしい今日このごろ。
そういえば、このところスイセイが積極的に洗い物をしてくれる。
洗い上げた食器を並べるのも、前は考えなしにのっけるだけだったのに、最近は同じサイズ別にまとめたりして上達している。
そういうのを見ると、嬉しいんだけど、ちょっとだけ申し訳なく思う。
そんなこと、うまくならなくたっていいのにと思う。

●2008年1月17日(木)晴れ、寒い

昨夜は、10時に早々と布団に入ったのになかなか眠れなかった。
でも、スイセイに背中をもんでもらったら、体がなま温かく、くにゃくにゃになってスーッと眠れた。
10時にシャキッと起きる。
朝から試作。
3時に家を出て、広尾で打ち合わせ。
中国で必要なものをいろいろ買い、夜ごはんの買い物もして、7時に帰宅。
バタバタと忙しい時ほど、買ってきたお総菜やらお弁当を食べるのが辛くなることを知った。
口の中も、内蔵も、気持ちも、すきま風が吹いているような、錆びていくような感じになる。
簡単なものでもいいから、ちゃんとだしをとって、ひとつくらいは温かい煮物かお汁を作ると本当にほっとする。
口の中でもおいしいし、消化され、油になって、体の節々までめぐってゆくのが分かる。
作っている時から、すでにそうなる。
そういう意味で、昨夜作ったごま豆腐の味噌汁は最高だった。
だし汁でごま豆腐を少し煮たからか、トローッとして、ねっとりしたごまの風味が味噌汁の方にも溶け出していて。
味噌のほんのりした甘味が、とても優しい。
とろけた熱々のごま豆腐がのどを通っると、「ハ〜〜〜ッ」とため息が出る。
他には何も食べず、お椀で手のひらを温めながら、ずーっと飲んでいたい。
今夜も、残りをスイセイと半分ずつ飲んだ。
ごま豆腐というのは、冷たくしてわさび醤油とかで食べるものだとばかり思っていて、ほんというと今まで私はそれほど好きではなかった。
でも、味噌汁やお吸い物にして食べるやり方は、目からうろこだ。
これはサンちゃんに教わった。
京都では、冬は温めて食べるのがポピュラーだそう。
精進料理でもよくあるような気がするけど、ここまでおいしいと感じたことはなかった気がする。
夜、天気予報を見たら、アムたちの旭川は最高がマイナス8度、最低がマイナス14度だった。
スイセイと顔を見合わせる。
夜ごはんは、肉豆腐(牛こま、糸こんにゃく、焼き豆腐)、たこの刺し身、菜の花(高知の)のおひたし(高知のじゃこのっけ)、満月卵、ごま豆腐の味噌汁、玄米。

●2008年1月16日(水)晴れ

1時から『チクタク』の打ち合わせ&作業。
ぐっと集中してやる。
4時過ぎに終わり、皆が帰ってから鏡を見ると、げっそりしている。
昨日のくたびれが、ぜんぜん抜けてないことに気がついた。
私は、昔よりも確実に疲れやすくなっている気がする。
でも、明日は朝から試作をしたいので、材料など買い物に出る。
くー、寒いし。
このところずっと玄米を切らしていて、どうしても食べたかったので、お米屋さんにも寄る。
お米屋さんのおじさんは、「今日はいくぶんあったかですか? きのうに比べて」と呑気そうに言っていた。
店の戸を開けて商売しているし、配達もしているから、おじさんは寒さに敏感なのだ。
手のひらをこすりながら奥さんも出てきて、ご夫婦してとても元気だった。
たわいない挨拶だったけど、私は3cmほど元気になった。
夜ごはんは、菜の花のおひたし、ししゃも、大根おろし、冷や奴、黒豆(お正月の残り)、ごま豆腐の味噌汁(白みそ、三つ葉)、玄米。
味噌汁が、ものすごくおいしかった。
ごま豆腐と白みそは、サンちゃんの京都土産。
白みそって、東京で売っているのは甘すぎて閉口するけど、サンちゃんのは実家でいつも使っているのだそうで、舐めてみたらほの甘いくらいだった。
お雑煮や味噌汁にも使うと聞いて、私も味噌汁にしてみた。
それが、ものすごーくおいしかった。
ごま豆腐の味噌汁が、こんなにおいしいとは知らなかった!。
このくたびれた50歳(49歳だけど)の体にしみじみと染みわたった。
正月の残りの、甘い黒豆(買ったもの)もまた。
「ルヴァン」のパンを切り分けて冷凍する時、端っこを食べながらやった。
バターをつけなくても、ものすごくおいしい。
ライ麦パンなど、口の中で噛むほどにじわじわと甘くなり、チーズのような肉のような、香ばしく焼いた油揚げのようなおいしい味がしてくる。

●2008年1月15日(火)曇り時々晴れ

海が出てくる、映画のような長い夢をみた。
見たこともない大きな貝を殺す若者がいて、私も映画の中で、皆といっしょに逃げた。
潮が満ちてくる前に。
不安の象徴みたいな夢だけど、たゆたゆとした清冽な世界で、たっぷり眠った。
さーて、テレビの収録だ。
朝早くないのが、本当に助かります。
1時にお迎えがくる。
では、行ってきます。
しおりちゃんとユミちゃんのサポートのおかげで、無事終わりました。
ひさしぶりのスタジオ収録だったので、リハーサルではとても緊張した。
でも途中から、説明しなければならないことや、モニターとかいっさい気にせずに、料理に集中すればいいんだ!と気がついた。
おかげで、本番ではずいぶん落ち着いてできた。
ふー。
帰りのタクシーを止めてもらい、「ルヴァン」でレーズンパンとライ麦パンを買う。
吉祥寺で降り、本屋とスーパー。
夜ごはんは、寒じめほうれん草とサラミのバター炒め(スイセイ作)、鮭わっぱ弁当(スーパーの)、いなり寿司&海苔巻き(スーパーの)。

●2008年1月14日(月)曇り

寒い。
昨日かおとといあたりから、ガスストーブだけでは寒くなった。
でも、北海道のアムたちはもっと寒いだろうと思って、我慢している。
今朝、目が覚めてから、毛布に顔をうづめながら、(アムたちは、顔の周りが凍るほどなんだろうな… )と思い、エイッと起きた。
そうしたら、9時半に起きれた。
これからは、アムやカトキチのことを思い出しながら起きよう。
東京がこんななんだから、いしいさんのところも、もう雑巾が凍るくらい寒いだろうな。
さーて、ゲラの校正を1本やったら、明日のための準備をやろう。
あさっては『チクタク』の打ち合わせで皆が集まるから、あちこち掃除もしておこう。
あまりに寒く、体がちぢこまってきたので、テーブルの下に足温器をいれる。
2時くらいにあちこち買い物。
豚バラ肉もゆでておく。
着々と準備は整い、あとはエプロンにアイロンをかけるくらいだ。
夜ごはんは、めじ鮪のヅケ、冷や奴、中華スープ(昨夜の中華丼の残りを工夫)、焼き蓮根の炊込みご飯。

●2008年1月13日(日)晴れ

丸二日間、ものすごくよく眠った。
今月は後半からドカドカ忙しくなるし、緊張でまた眠れなくなるのが分かっていて、体がそう仕向けてくれたような気がする。
二日酔いにならなかったら、こんなには眠れなかっただろう。
おととい、酔っぱらって布団の中に入る時、頭も体もスッカラカンになっていた。
アッケカランとした、見事なカラッポさだった。
いろんなことを全部忘れて、自分が誰で、何をしている人なのかとかいうところから、遥か遠い次元の違うところにいた。
隣にスイセイがいてくれるのが、動物の夫婦のように嬉しく温かい。
生きてゆくのが辛くてたまらない人が、お酒に溺れてゆくのって、こういうことなのかも。
そして今日、やっと眠りの底からはい上がってきた。
あさってのテレビ収録と、中国行きに必要なものを揃えたりして、ゆるゆると過ごす。
ゲラの校正を2本やったら、『まる子』と『サザエさん』だ。
夜ごはんは、中華丼(海老、豚こま、白菜、干し椎茸、菜の花、人参、土鍋の白いご飯)、葱の味噌汁。

●2008年1月12日(土)雨

二日酔いで、ひたすら眠っていた。
吐くまで飲んだのは、本当にひさしぶり。
昨夜は、丹治君が帰ってから、続々と常連さんたちがやって来て、ひとりふたりと集まった。
「トネリコ」の正月明けは、昨日からだそうで、皆「ひさしぶりー」とか言いながら。
カウンターにずらり並んだ背中を見ていたら、プチッと飲みのスイッチが入ってしまい、 私たちも一緒に参加させてもらった。
皆、猛烈に酒が強いから、いい気になって一緒に飲んでいたら、最後にウワッときてトイレに駆け込むことになった。
でも、楽しかったなあ。
サンとシミズタの隣に座ったり、いい気分で酔っぱらって、皆の輪の中に加わっているだけで楽しかった。
何を喋っていたのかほとんど思い出せないけど、学校の悪ガキ仲間が、放課後に集まったみたいな感じ。
というわけで、何も食べず延々眠って7時に起きた。
夜ごはんは、干してあった白菜をごま油で炒めてスープを作り、味噌ラーメンに。
干し白菜って、炒めて塩をふっただけでも、甘くてとてもおいしいな。
布団に戻ってテレビを見ているうちに、また眠くなってしまう。
次に起きたのは12時で、やっと正気に戻った。
風呂に入り、こうして日記を書いている。
「クウクウ」の頃は私も30代で、二日酔いでも当たり前のように働いていた。
いつもより味覚が繊細になっているので、何を食べてもおいしく、気分も穏やかで、何に対しても優しくなれる。
そんな二日酔いの日に働くのは、けっこう心地よかった。
一緒に飲んだスタッフがいたりすると、なおのこと楽しい。
お互いの腫れた顔に無言の連帯感を感じながら、がんばって働いた。
サンやシミズタたちは、今そういう日々を過ごしているかもしれない。
常連さんたちも、サンたちも、飲んだ次の日には仕事に出掛け、夕方になってまた顔を会わす。
なんか、お互いにニヤッとしてしまう。
生きてゆくのは、こういうことだ。

●2008年1月11日(金)曇り

どうにも寝つきが悪い。
けっこうくたびれていたのに、中国での仕事のことが気になってしまって。
私は、自分で思っているよりも気が小さい。
きっと、おおらかで図太い私の体の中に、神経が細かい貧相な人がひとり入っている。
というわけで、朝方にやっと眠りがやってきたので、12時になっても目を開けられなかった。
気圧のせいもあるのだろうか。
じっとりと重たい布団をかぶっているような眠りだった。
細々した連絡をすませ、今日の仕事はこれで終わり。
7時から、丹治君と「トネリコ」で夜ごはんだー!。



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