2013年     めにうへ

●2013年12月31日(火)晴れ

朝ごはんを食べ終ったら、今日も大掃除の続きをやるつもりで張り切っていたのだけど、どうにも眠くてたまらない。
きのう整体にいって、めいっぱいほぐしてもらったせいだろうか。
なんとなく、大掃除の疲れが出ているような気がする。
このままだと『紅白』まで持ちそうにないので、散歩から帰ってしばし横になる。
ほんの1時間ほどだけど、私はよだれを垂らして寝ていた。
三ちゃんのお母さんから、ダンボール箱いっぱいの荷物が届く。
黒豆煮、聖護院大根の切り干しの煮たの(ちくわ、里いも、にんじん、れんこん、昆布、青山椒、黒ごま)、干し大根のつぼ漬け、京都の白みそ2種、里いも、にんじん、おいしい料理酒、日本酒。
黒豆は去年も煮たのをいただいた。
甘過ぎず、ねっとりとして、豆そのもののおいしさがいきていて、煮汁までごくごく飲んでしまうくらいにおいしいもの。
私の母は料理ベタだけど、料理上手のお母さんを持つ三ちゃんが、その幸運をおすそわけしてくれているよう。
ありがたくて涙がにじむ。夜ごはんにさっそくいただこう。
今日は洗面所とトイレ、玄関まわりの大掃除。
頑張りすぎないよう、ほどほどを心がけながらやる。
けど、どんなに小さな埃でも、目につくと放っておけなくなる。大掃除病だ。
それにしても私の体は、大掃除が少しだけこたえるようになってきたみたい。
気持ちはやりたくても、こうやって少しずつ体が動かなくなるのかな。
来年はどうだろう。まあ、休み休みやればだいじょうぶだろうけど。
きれいになった玄関に、散歩のとちゅうでいただいてきた万両の赤い実を飾った。
これは、上水沿いの木にたわわに実っていたもの。
おとつい、中央公園の地面に落ちていた、剪定された松の木の小枝も飾る。
ぐっとお正月らしくなった。
リビングももういちど掃除して、床にワックスを塗った。
5時過ぎにはどうにか終り、雑巾などを洗濯しながらお風呂に浸かる。
仕事場だけはできなかったけど、お正月の間にゆっくりやろうと思う。
『料理=高山なおみ』のゲラの束など、丁寧な気持ちで片づけたいので、今年の仕事を感謝しながら、落ち着いて整理しよう。
お雑煮用のおつゆ(大根、白菜、里いも)や数の子、煮豚を仕込みながら、ちょこちょことご馳走を並べ、7時に畳の部屋に集合。
『紅白』を見ながら、三ちゃんのお母さんが送ってくださったおいしい日本酒を飲む予定。
夜ごはんは、黒豆、聖護院大根の切り干しの煮たの、真鯛のお刺身、満月卵、煮豚、里いも(三ちゃんのお母さんの)の薄味煮(白みそ添え)、ブリカマの塩焼き(大根おろし)、日本酒、ざる蕎麦(とろろ芋、大根おろし、ねぎ、ワサビ、海苔)。

●2013年12月29日(日)快晴

よく晴れて風もなく、大掃除日和。
きのうから本格的にはじめた。
今朝はまず、朝風呂に入りながらお風呂場の掃除。
朝ごはんを食べ終ったら、台所の掃除。
今日もまた、郁子ちゃんとタムくんの『BAAN』をかけながらやる。
台所は、鍋を棚からぜんぶ下ろし、タイルを磨き、オーブン・レンジを集中的に磨いた。
(今年は料理の本でたいへんお世話になりました)と思いながら。
昼ごはんのカップヌードルのおいしいこと(スイセイがお湯を沸かして作っててくれた)。
「みいの大掃除は、修行なんじゃのう」
そうかも。というか、精神統一だ。
今年の心を腹の底に落としつつ、来年もまた元気で楽しく過ごせますようにと祈る。
スイセイは今年も掃除をしていない。
なんでやらないのか、私は不思議でならない。こんなにすがすがしいのに。
さて、続きをやるべ。
今日は『まる子』と『サザエさん』はもちろん、7時から是枝監督の映画(『希望』)が楽しみだ。
夜ごはんは、塩鮭、大根おろし、ふわふわ卵焼き、ほうれん草のおひたし、煮奴。

●2013年12月25日(水)晴れ

朝いちばんに、畳の部屋のカーテンをはずして洗濯。
ついでに、カーテンレールや鏡台を動かして掃除機をかける。
まだ早いけど、できるところからちょこちょこと大掃除しておこうと思って。
今は、ロールキャベツを煮込みながら、鍋つかみのほつれたところを縫っている。
郁子ちゃんとタムくんの新しいアルバムを、繰り返しかけながらやる。
このアルバムはとても不思議だ。
この間から、ついかけてしまって、なんとはなしに聞いているのだけど、特別意識はしていなくて、ふとしたときにフレーズが体の中に浮かんでくる。あれ?この歌は何だっけ、と思うと、郁子ちゃんたちの歌なのだった。
歌詞が言葉ではなく、音としてすーっと入ってくる。雰囲気のある塊のように。
聞けば聞くほどいい。
歌と歌の間がたっぷりあいている。そこがまたいい。
とても心地いい。やさしい。光りがある。落ち着いた空気。
今年の大掃除ソングにしよう。
夕方、ついに『料理=高山なおみ』の見本を熊谷さんが届けてくださった。
みどりちゃんや立花くん、角ちゃん、川原さんのもとを順番にまわって1册づつ届けてまわったらしい。
熊谷さんはまるでサンタクロースだ。
コーヒーをいれて、じっくり読む。
緊張して手が震える。
本当にいい本ができた。子供のころからずっと憧れていた料理の世界が、この中に詰っている。
私は今日で56歳になった。
明日は「ダ・ヴィンチ」の『料理=高山なおみ』インタビュー。心を落ち着けてやろう。ロールキャベツのグラタンを作ってみなさんにお出しする予定。
サラダ(白菜、にんじん、ルッコラ、玉ねぎドレッシング)、チキンの鍋蒸し焼き(フライパンで鶏ももの皮目をしっかり焼きつけ、まわりにインカのめざめ、アムの小さい玉ねぎを並べてオーブンで焼いた)、ねぎのポタージュ、いちごのチーズケーキ。

●2013年12月24日(火)快晴

今朝、オナガの集団が来ていたのだけど、いつもの森がなくなってめんくらっているようだった。
枝の切り口のてっぺんにとまって、ギョエーギョエーと鳴いたり、シュロの木につかまって頭をキョロキョロさせたりしていた。
今日はひさしぶりの来客なので、あちこち念入りに掃除する。
クリスマスイブだから、いちごのチーズケーキも作った。
11時から『Zの本』の打ち合わせで、河出の高野さんがいらっしゃるのです。
お昼ごはんの休憩もはさみながら、2時近くまでたっぷりやった。
暮れの打ち合わせに相応しく、新しい光の兆しが見えてきた。
この本は、もう、何年も前から積み重ねてきた企画なのだけど、それぞれの想いの足並みがようやく揃ってきたような。
私が料理本にはまっている間に、スイセイががんばってくれたおかげ。
ここからは、三人三脚だ。
お正月の間に、私は次の原稿を書こう。
ひとりで散歩がてら、買い物をして帰ってくる。
いつもの和菓子屋さんでつきたてお餅をつい買ってしまった。お雑煮はお正月まで我慢しようと私が言っていたのに。
今夜は、力うどんとお雑煮を合体させる予定。
夜ごはんの支度をしながら、明日のためにクリスマスのチキン(鶏もも骨つき、パプリカ、チリパウダー、ガーリックパウダー、オリーブオイル、塩、黒こしょう)をマリネした。
土鍋力うどん(白菜、大根、豚こま、ほうれん草、お餅。土鍋で鍋仕立てにした)。スイセイは大よろこび。

●2013年12月22日(日)快晴

今朝はピッカピカの天気。雲ひとつない青空なのだけど、アルプスの雪山のように下の方にだけ雲がある。
あちこち光っていて眩しいくらい。元旦の朝のよう。
きのうは川原さんの家で、リーダーと3人で飲んだ。とちゅうから「ユーチューブ」を見ながらカラオケになった。『夏の終りのセレナーデ』を3人でハモッたりして、楽しかったなあ。
朝ごはんを食べながら窓の外を眺めていたスイセイが、「天使みたいのんがいっぱい下りてきて、『早く早く、朝が来るで!』とかいいながら、ゆうべのうちにそこら中を磨き上げたみたいな天気じゃのう。今日は、連休の中日じゃから、東京の人たちはどっかへ出掛けて車が少ないけえ、空気が澄んどるんかもしれん。山の家は、晴れさえすればこのくらいの空になるんじゃけどのう」
忙しさにかまけて9月に行ったきりだけど、ああ、山の家は今ごろどんな景色だろう。
ひさしぶりの散歩。
中央公園では、娘を肩車したお父さんが落ち葉の上を駆けまわっていたり、息子とボールを蹴り合っていたり。人の数は少ないのだけど、あちこちに日曜日のお父さんがいた。
買い物をして帰ってきた。
さて、『Zの本』の原稿の続きをがんばろう。
夜ごはんは、鍋焼きうどん(海老を買って天ぷらを作った。かまぼこ、ほうれん草、卵、麩、ねぎ)、塩もみ白菜の甘酢がけ、れんこんのきんぴら(ゆずこしょう)。

●2013年12月18日(水)曇りのち雨

今朝はこの冬いちばんの寒さだと思う。
パソコンの前に座ると、白い空がスコーンとぬけている。
席を立ってもどってくるたびに、この空の大きさにいちいち驚いてしまう。けれど、そのうちこの景色も見慣れていくのかな。
今日は午後から雪になるかもしれないとのこと。
図書館で絵本(シンシア・ライラントという人のばかり。前に借りた『わたしが山おくにすんでいたころ』という絵本がとてもよかったので)と、『大草原の小さな家』、『アレクセイと泉』のDVDを借り、買い物もしてしまう。食料を巣に集めてから冬眠に入る動物のような気持ち。
帰りに小雨がぽつぽつときた。ふつうの雨粒と違って、氷が溶けたような冷たさだった。これは本当に雪になるかも。
あちこち掃除してから、大テーブルにずらりと並べ、『気ぬけごはん』のサイン本を100册作った。
スイセイが荷をほどき、私が書く。
それをまたスイセイが10册分ずつまとめ、包み直す。家内制手工業だ。
今日もまた、『Zの本』の原稿書き。締め切りが決められているわけではないので、こつこつと書く。
外は小雨。この雨が夜になって雪になるんだろうか(けっきょく雨のままでした)。
夜ごはんは、北欧風魚のフライ(かじきまぐろの厚切りに小麦粉をまぶし、卵をくぐらせて細かめのパン粉をまぶしてから、バターとサラダオイルを多めに熱したフライパンでじくじくと焼いた。マッシュポテト添え)。

●2013年12月17日(火)晴れたり曇ったり

朝からガーガーと音をたてて作業をしているなと思っていたら、下の公園のシュロの木を切っているのだった。
『Zの本』の原稿書きをやっている間も、いろんな木の枝がどんどん切り落とされてゆく。
下にいるおじさんたちの手で切りそろえられ、トラックの荷台にきっちりと積み重ねられてゆく。
クレーンのカゴのようなところに、人がひとりすっぽり収まっているのが、ときどき窓の四角をいったり来たり(高いところの枝を切っている)。へんな景色だ。
しばらく原稿書きに集中していてふっと見上げると、この間まで大画面テレビのような紅葉だった木々が、すっかり枝葉がなくなって、のっぺらぼうの棒がただ突っ立っている。
小さい森のようだったのに。夕方には鳥たちが集っていたのに。
気づけば、空が思いきり広くなっていた。
窓辺に立つと、遠くの建物までよく見える。なんか、厚着していた服を脱がされたみたいで恥ずかしい。
ここからの景色、これからどんなふうに見えるのだろう。
3時にリーダーがきて、『気ぬけごはん』のサイン本を15册分作った。
原稿をもうひとがんばり。
陽が落ちたら急激に寒くなった。明日は雪の予報が出ているそう。
遅ればせながら、夜ごはんの支度をしながらお正月用の満月卵を仕込んだ。
夜ごはんは、味噌ラーメン(白菜、ほうれん草、コーン、ゆで卵、メンマ)

●2013年12月15日(日)快晴

トークショーは無事に終りました。集ってくださったみなさま、ありがとうございました。
トークのとき、いつも私は自分の言いたいことを勝手に話しているばっかりで、(こんなんで、みなさんはおもしろいと思ってくださっているだろうか? 退屈じゃないだろうか?)と、とても気になる。
寒い中、ご自分の時間をさいて足を運んでくださった方々に、申しわけないような気持ちになって、私の持っているものだったら何でもさし上げたい…というような気持ちになる。
サインのときに、少しでもお話ができたらいいのだけど、後ろに並んでいる人を待たせては申しわけないし。
私はふだん出無精で引っ込み次案なんだけど、たまにこういうことがあるとやたらと気が大きくなって、来てくださった全員を、社会の荒波から守ってあげたいような気持ちになる。
いったいそれはどこかくるんだろうーーと考えていて、そういう気持ちが私に料理を作らせたり、本を作らせたりするのかもしれないなと思った。
思い出してみると、「クウクウ」にいるときもそうだった。
昼間、忙しく働いてきた人たちに、ちょっとでもくつろいでおいしいものを食べていってもらえるように、料理を作っていた気がする。
きっと、世話焼きなのだ。
世話をやく人がいなくなったら、私は生きていけなくなるかも…というくらいに、過剰なのだ。
今日は、アノニマスタジオから台湾版の『チクタク食卓・下』が届いて、そこに『日々ごはん』などの読書カードをコピーしたものが同封してあった。
それを陽の当たる畳の部屋で、ずっと読んでいた。
小さな葉書の四角の中に、細かな字でぎっしりと書き込まれた言葉は、どなたのもとても正直で、熱い心が伝わってきて、涙で眼鏡が何度も濡れた。
私の書いた日記なんかを、みなさん自分の暮らしの近くに持ってきてくださって、支えのようにしてくださって、ありがたくてたまらない。
書きたいことが自由に書けたり、作りたい本をどんどん作らせてもらったり。
私は、本を作る側のスタッフたちと、自分とスイセイの力だけで、今いる場所にやってきたような気になっていた。とくにここ最近は、そんなふうだった。
けれどもそんなことは決してなく、読者の方々の熱意ある言葉に、どれだけ背中を押されてきたかというのを思い出した。
トークショーやサイン会は、そういう感謝の心を表すためにやるんだなと分かった。
なんだか年末チックだけど、今年の大掃除は、そういう気持ちであちこちを雑巾がけして磨き、納めようと思います。
仕事の書類も、そういう気持ちで整理して、新しい年を迎えよう。
今日は大事なことを思い出した日なので、奮発して生うにを買った。夜ごはんは手巻きずしにしようと思う。
夜ごはんは、手巻きずし(ハマチ、いか、サーモン、生うに、きゅうり、納豆、たくわん、青じそ、貝われ菜、海苔)、ほうれん草のすまし汁。

●2013年12月13日(金)快晴、風強し

よく晴れている。
畳の部屋は温室のよう。
「はなべろ読書記」の校正をお送りし、今日のトークショーの準備などやる。
なんだかいそいそとした気持ち。
時間はたっぷりあるので、午後から『Zの本』の原稿を書きはじめる。
今日は4時くらいに出掛ける予定。代官山の蔦屋さんは、どんなところだろう。
さーて、どうなることやら。

●2013年12月10日(火)雨のち曇り

冷たい雨がぼそぼそと降っているけれど、たまには雨もいいもんだ、というような朝。
きのうは「はなべろ読書記」の撮影で、ひさしぶりに人がうちに集った。
なーちゃんはちょっと風邪ぎみだったけど、赤澤さんも関口くんも元気そうで、みんなに会えたのがうれしく、あったかい気持ちで料理を作った。
このところ私は、誰にも会わずにひとり静かに暮らしていた。
好きな時間に簡単なごはんを作って食べ、夜は図書館で借りた『大草原の小さな家』のDVDを見て眠る。
スイセイが広島に帰っていていないのが、ほんのり淋しいような。でも、それがきりっとした冬の空気にぴったりで、なかなか幸せなような。
12月の撮影もきのうですべて終り、急いでやる仕事はもうない。
今日から、しばらく休んでいた『Zの本』にとりかかろう。
スイセイが切り貼りしておいてくれたこれまでの原稿を、読み返すことからはじめるつもり。
12月5日の日記で、『料理』は1月20日ごろの発売と書きましたが、間違いでした。
正しくは1月14日が発売日(大安だそう)。実際に本屋さんに並ぶのは10日くらいだそうです。
しかもタイトルも間違えていました。
正しくは『料理=高山なおみ』。
どうぞ、楽しみにしていてください。
夜ごはんは、きつね蕎麦、ちくわの磯部揚げ、水菜のおひたし。

●2013年12月5日(木)快晴

今朝は大家さんのどんぐりの木にメジロがきていた。オレンジ赤茶と抹茶色の、どんぴしゃな色合わせだ。
ゆうべ、新しい料理本の最終版が上がってきた。
全体がひとつになったことで、とてつもない世界が現われた。
川原さんの絵と立花くんの造本の凄まじさに、私はこの束を抱えて100メートルを全力疾走したいような気持ちになった。
この本は『料理』といいます。
朝風呂にじっくり浸かって、布団も洗濯物もまな板も干し、あちこち掃除をして浄め、心を落ち着けてから、最後の確認に入ろうと思います。
『料理』がみなさんのところに届くのは、来年の1月20日ごろの予定です。
どうか、楽しみにしていてください。
夜ごはんは、お刺身盛り合わせ(ホタテ、えび、いか、サーモン)、蕎麦がきのスイトン風(里いも、ごぼう、鶏肉、油揚げ、ねぎ)。

●2013年12月4日(水)晴れ

ずっと気になっていた窓拭きをしたら、紅葉の大画面テレビのようになった。
銀杏の木のまっ黄色と、手前の木の深緑、その手前にはカサッとした茶色の葉っぱ。
大家さんのどんぐりはオレンジに近い茶色で、今がいちばんきれい。
ときどきそれを眺めながら、「はなべろ読書記」の原稿書き。ようやく形になってきた模様。
3時過ぎには仕上げ、お送りする。
布団をとり込んで、早めに夜ごはんの支度にとりかかる。
あとで熊谷さんが、新しい料理本の最終校正(表紙、もくじ、川原さんの挿絵もすべて入ったもの)を届けてくださる予定。
それが楽しみでたまらない。
今夜は7時半から宇宙のテレビもあるから、早めにお風呂に入ってしまおう。
夜ごはんは、秋刀魚の塩焼き(大根おろし)、ほうれん草と小松菜の煮びたし(ちくわ入り)、赤かぶの浅漬け、とろろ芋、大根と油揚げのみそ汁、白いご飯。
ほうれん草も小松菜も、ずいぶん肉厚になってきた。いよいよ葉もの野菜がおいしい冬到来だ。
最近気に入っているよくやっているほうれん草とちくわの煮びたしは、『気ぬけごはん』のレシピ。
だし汁150ミリリットル、酒大さじ1、薄口しょうゆ小さじ2を煮立てたところに輪切りにしたちくわ2本を加え、ふたたび煮立ったら、ざくざく切ったほうれん草3株分を加えて、まんべんなく煮汁に浸かるよう箸で混ぜながら、しんなりするまで軽く煮る。以上。
今日は小松菜とほうれん草を半々でやってみた。
ただのおひたしだとあまり食べないスイセイも、これだと残さずに食べてくれる。

●2013年12月1日(日)快晴

洗濯物を干す前に、ベランダにたまっていた落ち葉を掃除した。
下の公園の桐の葉と、船の形の何だか分からない葉(端に丸っこい種がついている)、銀杏の葉っぱも少し混じっていた。
ついこの間まで深い緑色だったのに、大家さんのどんぐりの木はすっかり紅葉して赤茶色になっている。
新しい料理本の校正がひと段落ついてから、私は急いでやることが何もなくなって、しばらくぽかーんとしていた。
心のどこかに、ぽっかり穴が空いたよう。
『高山なおみの料理』のときもそうだったけど、重たい本をやり終えた反動だと思う。
母の様子が気になっていたので、火曜、水曜と実家へも帰った。
前回帰ったのは5月だったから、半年ぶりだ。
母は血圧が安定して顔色もよく、想像していたよりずっと元気だった。
前には足が痺れるだとか、頭がフラフラするだとか不調ばかり訴えていたし、昔のアルバムや日記帳を出してきては、私と話をしたがった。
高い声が出なくなって、賛美歌が前のように歌えないとか、どういうお葬式にしてほしいとか、そんなことばかり話していた。
今回は、持って帰った「クウネル」を読んで、いしいさんのことが知りたくなったらしく、『たべる しゃべる』を夢中で捜しはじめたり。
炬燵の上に乗って背伸びをし、本棚の高いところの本を取り出しているうちに、おじいちゃんの聖書がボロボロになっているのをみつけ、修繕したり(ガムテープで貼っていた)。
自分の興味に向かってまっしぐらなところが、昔の母にもどっていた。
母は今年の6月で86歳になったはずなのだけど、84歳だと言い張って、「歳なんてもういいさや。私は気にしないさや」なんて言ってみたり。
私はあちこち掃除をしながら、煮物をこしらえたり、繕い物をしたりして過ごした。その間母は、2階の自分の部屋で領収書やら何やら、整理に熱中していた。
何かを知りたいと思ったり、ちょっとでも居心地よく過ごせるように何かを片づけたりする気持ちは、ごはんがおいしく食べられることと同じくらいに、明日につながる大事なことなんだなと、母を見ていて思った。
ささやかだけど、とても確かで、そこには喜びもある。生きるってそういうことだ。
さて、私も仕事をしよう。
今日は「ロシア日記」の校正と、「はなべろ読書記」の原稿書きをやる予定。
『サザエさん』の特別番組も気になるところだが、9時からはひさしぶりに松ケンのドラマがあるみたい。楽しみだなー。
4時前、布団を入れようとベランダに出た。
西陽のせいでそこらじゅう光っていて、どんぐりの葉も金色だったのだけど、陽が落ちたら赤茶色にもどった。
夜ごはんは、とろろ蕎麦、玉ねぎと桜エビの天ぷら、ごぼうの天ぷら、水菜のおひたし、れんこんの薄味きんぴら。

●2013年11月23日(土)快晴

おとついの夕方、ようやく料理本の本文の受け渡しがすんだ。
最後の2日間は朝4時前に起きて、思うぞんぶん、心おきなく見直しをさせていただいた。
いつかは終りがくるんだけど、そうしないと本は永遠にできないのだけれど、今回はあまりに深く抱え込んでいたので(自分の分身みたいだった)、終ったとたんふぬけになった。
あーとは野となれ山となれーだ。
この本は、1月のはじめに発売される予定です。
そんなわけで、きのうの私は寝たきりみの虫読書。
本は『ムーミン谷の十一月』。
肉桂ビスケというのが気になって、朝、ビスケットを焼いた。ごはんは何も作らなかった。
今朝は7時に起き、ようやくふだん通りの暮らしにもどった。
朝ごはんを食べ終り、洗濯物を干してスイセイと散歩。
中央公園の原っぱは、ヒコーキおじさんと、サッカー父&息子がたくさんいた。
桜の木の高いところにヒコーキがひっかかってしまったのを、持ち主のおじいさんが釣り竿でつついていた。
もうひとりの暇そうなおじいさんが、近くでそれを見守っていた。
ヒコーキはいちど下に落ちそうになった。
そのあと、また枝にひっかかり、風で飛ばされて落ちてくるまで、私は隣の桜の木の下で見ていた。
いつもの和菓子屋さんでつきたてのお餅と、栗蒸し羊羹、おにぎり(赤飯、山菜おこわ)を買って帰ってくる。
私はその足で図書館へもゆき、ムーミンばかり5册借りてきた。
夜ごはんは、スイセイのリクエストでお雑煮鍋(白菜、大根、ほうれん草、お餅)。

●2013年11月18日(月)晴れ 

今朝もまた、洗濯物をたっぷり干す。
スイセイの布団カバーも洗った。
真っ青な空にしらすの飛行機(飛行機雲がない)が飛んでいる。
鰺の干物(きのう2匹分作り、夜ごはんで1匹だけ食べた)は、朝起きたときに出しておいたのだけど、ハエが1匹寄ってきていたので、洗面所に移動させた。
スイセイはきのう、自分の靴下が干してあると思ったのだそう。
今朝はいている靴下を見せて、「ほらの、鰺に似とるじゃろう?」という。
それは、グレーの地にオレンジと黄色の細い線が何本か入っている靴下。うーん、どうだろう。
「はなべろ読書記」の校正をファックスした。着々と仕事が終ってゆく。
「ロシア日記」の仕上げをやってお送りしたら、こんどは「気ぬけごはん」だ。
料理本の最終校正が上がってくるまで、ちょうど間があいてほんとうによかった。奇跡的なスケジュールだ。
今日は、ラジオの収録で2時ごろに出掛ける予定。
さーて、どうなることやら。スイセイも一緒だし、あまりドキドキしていない。
「ラジオ深夜便」は、どこかで飲んでいて終電を逃したときなんかに、タクシーのなかでよくかかっていた。
耳障りのいい落ち着いた低い声で、アナウンサーがとつとつと喋る。音楽はあまりかからない。
夜中に眠れない人たちや、早く目が覚めてしまったおじいちゃんおばあちゃんに向けているようで、とてもいい空気があるように感じていた。
だから、大丈夫。私の声は小さいから、ちょうどいいかも。
この様子は、11月23日の深夜12時台と1時台に放送される予定です。

●2013年11月17日(日)晴れ

朝ごはんを食べ、洗濯物を干してから、ひさしぶりに散歩に出た。
風もなく、きりっとした空気。
スイセイは坊主なので頭が寒いのだそう。タオルを巻いている。
私はちっとも寒くない。背筋をまっすにに伸ばし、ぐんぐん歩いた。
上水沿いも中央公園も、すっかり紅葉していて驚いた。
いったい私はどのくらい散歩をしていなかったんだろう。10日ぶりくらいだろうか。
銀杏並木もまっ黄色。
コーヒー豆を買い、買い物もして帰ってきた(10時ちょうどくらいにスーパーに入った)。
新しい料理本がようやくひと段落したので、「ロシア日記 ウズベキスタン編」を、3日前くらいから書いていたのだけど、もうそろそろ仕上がり間近だ。
私は最近、集中力が鍛えられたような気がする。
料理本と『気ぬけごはん』のことをやりながら、原稿をいくつも書いていたから、脳みそが筋トレされたんだと思う。
スイセイによると、ひとたびパソコンに向かったら、長い間音が聞こえないのだそう。
「みいは文を書きながら、姿を消すことができるようになったのう。頭だけじゃなくて、体ごとウズベキスタンに行っとるんかもわからん」
3時にひと休みして、スイセイとラジオの練習。
明日、NHKのスタジオに出掛け、『ラジオ深夜便』の収録があるのです。
「オトナの生き方」というコーナーで、『明日もいち日、ぶじ日記』についてなど、2時間近く話す(この様子は、11月24日(日)の深夜12時台と1時台に放送される予定です)。
練習が終ったら、また「ロシア日記」の続き。6時までやって、『まる子』に間に合った!
夜ごはんは、鰺の干物(今朝買った鰺を塩水に浸け、夕方まで干していた)、大根おろし、にんじんの塩もみ(ごま油、薄口しょうゆ、いりごま)、赤かぶの甘酢漬け、白菜の薄味煮(片栗粉でとろみをつけた)、自家製なめたけ。
鰺の干物、身がホワホワでとてもおいしくできた。
今夜はピッカピカの満月だ。

●2013年11月10日(日)曇りのち雨

今朝は7時に起きた。朝ごはんを食べ、料理本の校正の続き。
最後の仕上げなので、おへそのあたりに気持ちを集め、たんたんと作業をすすめる。
最終校正のゲラの束を熊谷さんが届けてくださったのは、いつだったろう。このところ、毎日やっている。
スイセイと喧嘩する日もありながら、それでもコツコツと確実に前にすすんでいる。
心はさざ波のように静かなのだけど、時間が過ぎる感覚がおかしい。
とてつもなくゆっくりに感じたり、あっという間で驚いたり。
スイセイが部屋に入ってきて、お昼を食べるのを忘れていたことに気づく。
それぞれが食べたいものをこしらえて、畳の部屋でいっしょに食べた。
川原さんが録画してくれた『私は虫である』のドキュメントのなかに、こんなナレーションがある。
「九月二十四日。
描きはじめてから二ヶ月、いよいよ『コオロギの愛のセレナーデ』の仕上げにかかります。
今日じゅうに仕上げたいと思って、朝、十時からはじめました。
三時すぎに、ひと雨きました。
その雨は五時まで降り続いて、上がりました。
絵の中のコオロギの鳴く声が、わたしのなかで次第に大きくなってきました。
気づいたら、昼食も夕食もとるのを忘れていました。」

私はとくに、「三時すぎに、ひと雨きました。その雨は五時まで降り続いて、上がりました」
のところが好きだ。
ここにはとても、静かな時間が流れている。
ゆっくりな時間のなかにも、おそろしく細密な刻が刻まれている。まるで、このおじいちゃんの絵のように。
さーて、私もがんばろう。
今日は『まる子』と『サザエさん』が見られるだろうか。
夜ごはんは、トマトとキャベツと豚肉のスパゲティーを、スイセイが作ってくれる予定。

●2013年11月4日(月)降ったりやんだりの雨

静かな雨が降っている。
でも、空は暗くない。鳥もチイチイ鳴いている。
さーて、今日も私はがんばろう。
明日は「きょうの料理」の撮影なので、準備をしながら「はなべろ」の原稿の続きを書こう。
そしてまた、料理本の作業。
ここ何日か、文字だけのゲラを読み込んでいて、どこに問題があるのか分かった。
文もレシピも、ほとんどは完成しているのだけど、まだまだダメなところがある。
泥だんごの芯(伝えたいこと)はできているのだけど、まだきれいでないし、それを投げることも、安心してきない… そんな感じかな。
でこぼこはいかしながら、私はもっとツルツルに磨きたい。
あさって、色校正が上がってきたら、また本格的にのめり込む予定。
またごはんがちゃんと作れなくなるだろうし、夜中に急に起き出すこともありそうなので、暮らしに迷惑がかからぬようスイセイにも早めに伝えた。
よーし、がんばるべ。
夕方、撮影の仕入れで買い物に出る。
街はどこも人でいっぱいで、ぐっとくたびれて帰ってきた。
今夜は早く寝る予定。
夜ごはんは、きのこドリア、ロールミート(豚の薄切りと青じそがロールケーキみたいになっているもの、東急で買った)を焼いたの、キャベツとにんじんのサラダ。

●2013年10月27日(日)快晴

ずっと日記が書けなかった。
開いてくださった方、ごめんなさい。
あまりに慌ただしく、時間と時間の狭間を生きているみたいな日々だったのです。
何をしていたかというと、主には新しい料理本のこと。
レイアウト案が上がってきて、夜、立花君に呼び出されたのはいつのことだったろう。
それからはずっと、無我夢中で、文とレシピの校正にはまっていた。
いちど原稿の束を手放し、戻ってくるのを待っている間は、『気ぬけごはん』の校正。
そして、料理本の方が戻ってきてからは、またみっちり校正。
2日しか猶予がなかったので、暗いうちから起き出し、寝ても覚めても、布団の中でもやっていた。
その間、スイセイは広島に用事があり、ちょうど帰省していて留守だった。
私は布団を敷きっぱなしで、毎食、雑炊とかスープみたいなものばかり食べていた。
美しい写真の、手の込んだ料理レシピの校正をしながら、それを作った当人が布団の上で鍋を抱え、豆のスープをもさもさ食べたこともあった。
けれどもこれが、私の仕事。
何をしても満足感でいっぱいだった。
2册の本のことをやりながら、木皿さんの文庫本の解説も書いた(これは奇跡的に、スイセイから一発でオーケーが出た)。
17日に「クウネル」の取材があってからは、誰にも会わず、買い物にも行かず、虫みたいにもくもくと生きていた。
ずっと雨続きで、洗濯物が窓際に干してあり、せいせいと乾かないのも、なんだかよかった。
ひとりの夜は、川原さんが録画してくれた番組をくり返し見ていた。
『私は虫である』と、『楽しいムーミン一家』。
『私は虫である』は、虫をみつけると、草むらでも道ばたでもかまわず腹這いになり、目を凝らして観察しては、気の遠くなるような細密画を描き続けていたおじいちゃんのドキュメント。
きのうは、川原さんの展示会のオープニングで、ひさしぶりに外出した。
終ってから川原さんを囲んで、有山君、立花君、田中ちゃん、三ちゃん、リーダー、カクちゃん、スイセイと、終電くらいまで飲んだ。
会いたい人たちに会えて、喋りたいだけ喋って、楽しかったなあ。
今朝は二日酔いもなく、9時に起きた。
せいせいと、めいっぱい洗濯物を干し、朝ごはんを食べてスイセイと散歩。
雲ひとつない青空。空が高い。
飛行機が1機、飛んでいるのだけど、飛行機雲がないからただ浮かんでいるみたいに見える。
渡る風もすがすがしく、いろんなものが光って見える。
日陰の地面の、石ころや土くれのでこぼこ。そんなものの陰影さえもきれいに見えた。
ランニングをしている人も、歩いている人も、自転車の人も、大人も子供も老人も、ひさしぶりの快晴に、みな気持ちよさそうにしていた。
今日から私にも、スイセイにも、ようやく人間らしい暮しが戻ってきた。
あとで、『気ぬけごはん』の校正をもうひとまわりやったら、『まる子』と『サザエさん』だ。
夜ごはんは、赤魚の干物、水菜の煮びたし、とろろ芋、自家製なめたけ、白いご飯。

●2013年10月9日(水)晴れたり曇ったり 風強し

朝からシルバー人材センターへ行って、きのうのうちに目をつけておいた中古の本棚を買った。
キャリーカートにのせ、スイセイと運ぶ。
背の低い白木の本棚は、角がなめらかで、手触りもよく、ていねいに使われていた感じがする。
ふたつ並べて玄関の廊下に置いた。ちょうどぴったり収まった。
バンザーイ!
これは、ずっと前からの私の夢だったのだけど、「クウネル」や「暮しの手帖」を、番号順にずらりと並べたかった。
「考える人」も、「真夜中」も並べる。
まだまだ隙間があるので、これからも心置きなく並べることができる。
廊下に座って雑誌をとり出し、ここで眺めることができる。図書館にいるみたいに。
トイレの前の廊下だけど、そんなのは気にしない。
午後、原稿を2本仕上げてお送りした。
スイセイに誘われて、イヌイットのテレビを見る。『地球イチバン』という番組だ。
イヌイットの言葉はとてもいいな。ぺらぺらとたくさん喋らなくても、ちょっとだけで通じ合う。
それは猛烈な寒さで自然があまりに過酷だからだろうか。
口をたくさん開かなくてすむように、あるいは人の考えることなど自然に比べたらうんとちっぽけだからかな。
ひとつの言葉に、いろんな意味が詰っているのかも。
詩みたいに。
夕方、暮れかかる空があまりにきれいなので、中央公園の広場まで散歩した。
金の雲と水色の空。
さっき見た、イヌイットの氷の陸と、溶けた海の色のようなところもある。
夕焼けは、空が火事。
サッカー少年が、父親らしき人に怒られて声を上げて泣いていた。
「簡単に泣くな! 男として恥ずかしくないのか! 泣く暇があったら練習しろ!」なんて。
そんなことより、どうしてふたりでこの空を見ないんだろうと私は思った。
買い物をして帰ってきた。
夜ごはんは、手羽元(きのう煮豚を作ったとき、いっしょに煮ておいた)と大根の煮物(煮汁にとろみをつけた)、茄子のフライパン焼き、みそ汁、白いご飯。
手羽元と大根煮をご飯にかけ、粉山椒をふりかけてかっこんだら、ものすごくおいしかった。前に中国で、こんなのを食べたような気がする。

●2013年10月6日(日)晴れだったのかな?

ひきこもりの日。
本当はきのうがそうだったのだけど、午後から打ち合わせが2つ入っていたので、こもったのは12時まで。あちこち掃除をして、むりやり気分を立て直した。
静かで、どんよりした雨が降っていたから、まさにそういう日和だったのだけど。
今日は、きのうの続きをやる。
ゆうべのうちからスイセイに宣言していた通り、パジャマのまま布団の中で本やら雑誌やら読みふけった。
朝ごはんも昼ごはんも作らず、食べず、歯もみがかない。
カーテンを閉めたままでも、金木犀の匂いがずっとしていた。
とちゅうでビスケットと、編集さんにいただいた栗のタルトを食べた。
3時までひきこもったら、飽きてしまい、跳ね起きた。
お風呂にゆっくりと浸かる。
毎朝早起きして、朝、昼、晩とごはんを作り、原稿書きもバリバリやって、たくさんの人たちに会うと、たまにこうしてひきこもりたくなる。
たぶん私の中にいる、どんくさくてわがままな自分が、ストライキをするんだと思う。
ここでその子に甘えさせてやらないと、風邪をひいたりして本格的に寝込むことになるのだから、タイミングを逃さないのが肝心。
スイセイも協力的で、たいへん助かる。
あとで『まる子』と『サザエさん』を見て、明日から、またがんばるべ。
夜ごはんは、キャベツとにんじんのサラダ、ロールキャベツのサワークリーム煮(前に試作した)のスパゲティー。キャベツばかりになってしまった。
ごはんを食べてから、思い出して選挙に行った。

●2013年9月29日(日)晴れ

先週は、山の家に行っていて、日記をアップできませんでした。開いてくださった方、ごめんなさい。
今朝はひさしぶりにスイセイと散歩に出た。
空は、夏の青とは違う色。
道路の上で蜂が死んでいるのを3回見た。
コンビニでカリガリ君を買い、中央公園の原っぱを横断しながら齧る。
飛行機を飛ばしているおじさんたちや、家族連れ、カップルなど、人も犬もたくさんいたけれど、ちっともいやな感じはなくて、青い空と黄緑色の芝生と、ぜんぶが合わさってひとつの景色みたいに見えた。
スイセイは「祝福しとるみたいな景色」と言っていた。
帰ってからは、「新潮」の原稿書きの続き。
来月号が最終回なので、気をひきしめてやる。
5時前に仕上がり、お送りする。
『まる子』に間に合った。
夜ごはんは、ハンバーグ(粉ふきいも、ほうれん草のバター炒め、にんじんグラッセ)、ワカメと玉ねぎのみそ汁、ゴーヤーの松前漬け、白いご飯。

●2013年9月23日(月)快晴

7時のサイレンで起きる。
夢もみたし、ものすごくよく眠れた。
脳みそがよほどくたびれていたんだなあと思うような、東京のくたびれを浄化しているような感じの眠りだった。
山小屋での眠りにも似ている。
空気が肌寒く、でもシュラフの中は暖かく、自分の知っている匂いでできた巣の中で眠りこけているような感じ。
私は、山の家での朝起きてからの順序を思い出してきた。
起き上がったらまず2人分のシュラフをたたむ。寝床を片づけ、シュラフを持って玄関の着替場にいき、棚にのせ、その足でトイレへ。
台所に戻って、歯ブラシに歯磨き粉をつけて庭へ出て、スイセイが作業をしているのを眺めながらゆっくり歯を磨く。
外の水道で口をゆすぎ、顔を洗い、台所につながったホースの蛇口をひねってから部屋に入る。
そして、ゆうべの食器を洗い、朝ごはんの支度。スイセイを呼びにいく。
今朝は『あまちゃん』をやる日なので、カーナビをつないでスイセイが準備をしてくれている。
朝ごはんは、キャベツの塩もみサラダ、プレスハム、チーズオムレツ、おにぎり(私/直売所の)。トーストを焼いたけど、スイセイは食べなかった。
ごはんが終ったら、『あまちゃん』をふたりで見て、あと片づけ。
洗濯して、干したら、日記を書く。
ここまでは、パジャマのまま。
さて、ツナギに着替えて作業をはじめっぺ。
花壇まわりをきれいにしたら、金木犀が暴れているのが気になった。
枝を切るときに木の下にもぐったら、奥の方でひとつふたつ咲いているのがあった。ほんのりと香る。
去年はまったく咲かなかったけど、今年は元気に咲きそうだ。
台所の裏庭の続きもやる。草がからまっているのは表面だけなので、すぐにきれいになる。
塀の近くにムラサキシキブが咲いていた。薄紫のジンタンみたいな花。
今は花が少ないけれど、露草も、やぶランも、みんな紫系統の色だ。秋の空気に似合う色。
昼ごはんは、土鍋ご飯を炊いてカレーライス。コッヘルで食べる。
きのうのおでんのお汁で里いもを煮ながらごろごろする。コーヒーをいれ、こうして日記を書いている。
向こうの方で、草刈り機の音がずっとしている。よっぽど広いところをやっているのだ。
スイセイはちょっと横になっただけで、もう起き上がり、何かしている。窓の外を行ったり来たりしているのが見える。
さて、まだまだ陽が高いから、私も続きの作業をすっぺ。
どこも陽が当たっているので、ゆいいつ日陰のアマゾンをやった。
やりはじめると、つい夢中になってしまう。息が上がり、体はがくがく。
温泉へ。
日暮れどきの露天風呂は、私だけの貸し切り。
山の木の緑が、風で揺れていた。
温泉は汗を流すだけのものじゃない。
作業の疲れも、東京のアカも流して、そして夜を深く眠らせてくれる。
くねくねとなって帰ってくる。
夜ごはんは、もやしとニラの卵炒め、ソーセージ炒め、里いもと厚揚げのおでん、ピーマンのワインしょうゆ漬け、ビール。
9時に寝る。
明日の11時ごろに東京へ帰る予定。

●2013年9月22日(日)快晴

ゆうべは思ったほど寒くもなく、暑くもなく、ちょうどいい具合だった。
いろんな夢をみては、何度も目を覚ました。そのたびに山の家にいることを思い出し、また目をつぶる。その繰り返し。
虫の声や、小さい動物が動いているような、生き物の音がする(カサコソカサコソと、布をこすっているみたいな音だった)。
スイセイは明るくなってすぐに起きた。外で何かしている。
私は7時ちょっと前に起きる。
歯磨きをしながら庭に出ると、畑のススキを刈っていた。
7時半に朝ごはん。
プレスハム、ピーマン炒め、キャベツの塩もみサラダ、トースト、バナナ(私)、紅茶。
食べ終ったスイセイは昼寝。私はきのうのことを思い出しながら日記を書く。そろそろツナギに着替え、草抜きをはじめるべか。
庭の草抜き。驚くほどスッと抜ける。ススキはない。露草やネコジャラシくらい。草マルチが本当に効いている。
資材置き場もやる。ドクダミが枯れていて、地面がたくさん見える。
汗をびっしょりかいて休憩。冷たい麦茶のおいしいこと。ぶどうのおいしいこと。
去年は甲斐路という品種がおいしくて、「生き物が生き物の体に入ってくるのが分かるようなおいしさ」と日記に書いたおぼえがあるけれど、今年は巨峰がたまらなくおいしい。
また続きをやる。玉の汗が流れる。
12時に昼ごはん。焼きそば(キャベツ、にら、ちくわ、牛肉)、目玉焼き。コッヘルによそって庭で食べた。
続きをがんばる。花壇の石が見えるまでやった。
花壇のまわりは今、やぶランの紫色の花が花盛り。これはスイセイが前にラベンダーと間違えた花だ。
台所の裏庭、玄関もやる。
ススキの若葉をみつけては、ゴキブリをみつけたみたいに大急ぎで抜根する。ちょっとしか見当たらず、淋しいくらい。
暑いなかを、息が上がるくらいまでやった。
2時からは、窓から山が見えるところに枕を置いてごろごろする。
新しい家になったら、この窓は全部透明なガラスにしてもらおう。そうすれば、山の折り重なりと空が、端から端までパノラマのように見渡せる。
おでんを煮ながら『明日もいち日、ぶじ日記』も読む。2年前の9月には、まだススキと格闘していたのだな。
山は緑色だけれど、西陽が当たると黄色くなる。あ、また緑に戻った。
5時半に温泉へ。露天風呂にしっかりと浸かる。
夜ごはんは、簡単おでん(厚揚げ、ちくわ、豆腐、ウインナー)、グリルパン焼き(ひらたけ、南瓜、ピーマン)、ポテトサラダ(スーパーの)、わさび漬け、ビール。
おでんが好評だった。
スーパーで買ったひらたけも、すごくおいしい。グリルパンつけ焼きにして、カボスを絞って食べた。長野産と書いてある。今まさに季節なんだろうな。
9時に寝る。

●2013年9月21日(土)快晴

『あまちゃん』を見て、支度をして、9時20分に山の家へ出発する。 
よく晴れて、お出かけ日和だ。陽射しは暑いけど、空気がひんやりしている。
10時、高速に乗ったと同時に渋滞に巻き込まれる。富士山は見えない。
しばらくして抜けたと思ったら、国立からまた長い渋滞となる。
陽射しが強いので、ジープの窓の隙間にストールを挟んでみる。ウズベキスタンのときみたいに。これでうんと楽になった。
12時に高尾。
山々はまだ緑が濃いけれど、なんとなしに黄色味が混じっている。
そんななか、ゆっくりのスピードで進む。
私は渋滞がちっともいやではない。
なぜかというと、何もしなくていいから。
ただラジオを聞きながら、いい景色を眺めたり、のどが乾いたらお茶を飲んだりして、ぼんやりしていればいいから。
それだけでとても楽しい。
どこのサービスエリアも満杯。入り口に続く車線は、長い長い列を作っている。私たちはそこには混じらない。
談合坂も素通り。
その先からスイスイと進む。
12時50分、石狩サービスエリアでトイレ休憩。レモングラスティーを買う。おいしい。今はこういうお茶が売っているんだな。
1時45分に直売所着。
ピーマン、ニラ、南瓜、ぶどう、米、卵、おにぎり、五目おこわ(ひじき、大豆、干し椎茸)、煮卵を買う。
休憩処で昼ごはん。直売所で買ったおにぎりなどを食べる。桃の生ジュースを飲みながら出発。
眩しくて、緑が目にしみる。
田んぼは金の稲穂が首を垂れているところもあれば、刈り入れが終って干してあるところ、今まさに刈り入れをしているところもある。
スーパーに寄る。のぞき富士(山の間からてっぺんだけがのぞいている)が見えた。雪がない富士山は、遠くにあるただの山というふうで、ありがたみがない。
もやし、豆腐、ゆでそば、焼きそば麺、牛肉、牛乳、プロセスチーズ、ビールを買う。
2時半に山の家に着いた。
いのいちばんにお墓へ挨拶にいく。『明日もいち日、ぶじ日記』を掲げ、「おかげさまで、続きの本がぶじに出せました。ありがとうございました」
前に来たとき、抜いた草をかぶせてマルチにしておいたので、雑草はびっくりするほどには生えていない。とくに台所の裏庭は、すごく効果が出ている。うれしい!
部屋の中もほとんどきれいなまま。ざっと掃除機をかけ、雑巾がけをする。スイセイは畑のススキを刈ったり、庭の草を抜いたり。焚き火もはじめた様子。
私はひとつだけ仕事を持ってきた。みどりちゃんの文庫本(『くいしんぼう』)解説の校正だ。きれいになった台所の机で集中する。
5時過ぎ、上の道を通って散歩がてらポストに出しにゆく。
上から眺めてみると、赤い屋根の我が家も、庭で火を焚いているスイセイもちんまりとしてかわいらしく、箱庭と人形のように見えた。
焚き火を囲んで、缶ビール。
「暑くも寒くもなく、ちょうどええんよ。今の時間の、今のこの空気を感じんにゃあ」と、スイセイは何度も言った。
スイセイは渋滞の疲れ(ジープの中もけっこう暑かった)が残っているのか、なんとなしに元気がない。きのう飲んだ(「クウネル」の打ち合わせのあと、近所のお好み焼き屋で軽く乾杯した)疲れもあるそう。
私はとても元気。山に来れたのが嬉しく、にやにやしてしまう。スイセイに怒られても、びくともしない。
暗くなって台所に移動。
夜ごはんは、牛肉のフライパン焼き(出てきた脂でニラを炒めた)、冷や奴、チーズ、柿の種。
運転中から「山の家に着くだけで十分なんじゃけえ、オレは今日は何も作業せんで」と言っていたくせに、スイセイは来てすぐに作業着に着替え、なんやかやと動いていた。
「オレは癒しゆう言葉はあんまり好きじゃないんじゃけど、庭の草を抜いたり、焚き火をするだけで、いやあ、癒されるんよのう。ちょっとやっただけでもの、癒されるの」
8時ごろ、水道を止めに外に出たら、黒い山の上にぽっかりと月が出ていた。花札のような月。
ふたりで月見ヶ丘へ。
あたりは真っ暗で、とても静か。いろんな虫の声がする。虫の声のほかには何も聞こえない。うちの山の方でいちどだけフクロウの声がした。
東京にいると忘れてしまうけど、ここいらは街灯もなく、本当に真っ暗になるのだな。
ススキもあるから、本物のお月見だ。
ウイスキーの水面に満月(ちょっと欠けているけど)を映し、飲んだ。月見酒だ。
9時半、歯を磨いて寝る。

●2013年9月15日(日)雨のち晴れ、降ったり止んだり

今朝は寝坊。8時過ぎに起きた。
なんとなしに体が重たいような、夏の疲れが出ているような、整体のもみ返しが一日遅れできているような。
それでもがんばって起き、朝ごはんを食べて文を書きはじめたら、そのうちしゃんとした。
ゆうべは白いご飯がたくさんあまったので、みどりちゃんの手つきを思い出しながら、ごま油と塩のおむすびをにぎっておいた。
それをお昼に食べようとして、卵などゆでているうち、ついついお弁当のおかずのようなのを作りはじめてしまう。
冷凍シュウマイを蒸し、ピーマンを炒め、彩りに塩もみにんじんを作ってごま和えにした。
本当は文にはまっていたいのだけど、つい台所に立ってしまうのだ。
スイセイに、「みいは料理中毒じゃのう」と言われる。
昨夜からしっかりめに降っていた雨も、お昼には晴れ間が出て、天気雨になった。
晴れてきたので、洗濯物を出す。
さて、続きの文に集中するべ。
これが終ったら、こんどは「気ぬけごはん」だ。
夜ごはんは、塩鮭、自家製なめたけ、ミニきゅうりの塩漬け、にんじんの塩もみ、もずく酢、とろろ芋(貝われ大根、みょうが)、たくわん、白いご飯。

●2013年9月14日(土)くもりのち晴れ、のち雨

明日から雨が続くようなので、洗濯物をたっぷり干しておいたのだけど、気づけば雲ゆきが怪しい。
ベランダに出てみると、あちこちにどんよりした雲がある。
陽は薄っすらと差していたが、ねんのため布団を入れ、洗濯物もとり込む。
ぜんぶとり込んだと同時に、ぽつりぽつり落ちてきて、あっという間に大粒の雨になった。
天気を先取りできた、嬉しい瞬間!
ベランダを濡らす大粒の雨。
降りたての地面からのぼってくる匂いを、何といおう。
ほこりっぽいような、生ぐさいような、なんともいえずいい匂い。
『ユリイカ』の文もぶじに書き終わり、今はみどりちゃんの文庫本のための解説を書いている。
きのうからはじめたのだけど、書きたいことがいっぱいあって胸に詰り、もどかしいような気持ち。
スイセイも「波(新潮社のPR誌)」に載せる文(『明日もいち日、ぶじ日記』について)がようやく仕上がって、きのう送ったそう。
このところ、書いても書いても次に書くべき仕事が湧いてくる。
文筆をなりわいにしている人たちにしてみれば、こんなのは序が五つつくくらい序の口だろうけど、私にとっては大仕事だ。
書くのは楽しいけれど、形になるまではもだえてしまう。
さあ、気を引き締めて続きをやろう。
夜ごはんは、しらたきとえのきのしぐれ煮(登紀子ばあばのレシピで)、ししゃも、ちくわのかば焼き(粉山椒)、ミニきゅうりの塩もみ、ゴーヤーの松前漬け、白いご飯(スイ)、玄米(私)。

●2013年9月2日(月)くもりのち晴れ

5時半に起きてしまった。
雑誌のレシピ書きと、ゲラの校正をやる。
今朝の『あまちゃん』はすごかった。
息をのみ、涙が噴き出した。
ユイちゃんも大吉っつぁんも、北鉄に乗っていたおばあさんや、子供たちやお母さんも、生きていて本当によかった。
揺れがあったとき、東京の人たちの反応が、それぞれの人らしくきちんと描かれていたのもとてもよかった。
これから大地震と大津波がくると知っていながら、今生きている人たちを見ているのは、自分が死んでいるみたいでもあった。すべてがスローモーションで。
時空を超え、天から俯瞰して見ているみたいだった。
人の世が切なく、哀しく、すべての人が愛らしく、雑巾みたいにぎゅーっと胸を絞られ、さめざめと泣いた。
『あまちゃん』を見ながら、私はなんだかんだと毎朝泣いているのだけど、15分が終ると涙をシュッとひと拭きして立ち上がり、日常に戻る。
それが朝ドラのいいところなんだな。
朝ごはんのあと、ひさしぶりに散歩へいった。
上水沿いは、臭木の花ももうお終い。群青色の実がなりはじめていた。
枇杷の木も、小さな小さな青い実をつけて準備をしている。
風はずいぶん涼しかったけど、それでもぐっしょりと汗をかいて帰ってきた。
水風呂を浴び、「小説新潮」の原稿書き。
今日は、『ユリイカ』の武田百合子さんの文も書きはじめよう。
2時くらいに出て美容院へ。
帰りに「東急」に寄ったので、ウナギの蒲焼きを1串だけ買った。スイセイと半分ずつ食べようと思って。
きのうの『まる子』の家でもウナギだったから、目に焼きついていたんだと思う。目というより、お腹に。
夕方三ちゃんが、京都のお母さんから届いた自家製おかずをいろいろ持ってきてくださる。いわしの酢煮、ゴーヤーの松前漬け、干し大根のつぼ漬け、しょうがの甘酢漬け、ごま豆腐。
三ちゃんはちょっと陽に焼けて、なんだかとても元気そうだった。
夜ごはんは、ウナギの蒲焼き丼、里いもの煮っころがし、焼きなす、れんこんの薄味きんぴら、ゴーヤーの松前漬け、干し大根のつぼ漬け(ものすごくおいしい)。

●2013年9月1日(日)快晴

このところ、真夏日がまた戻ってきていたが、仕事部屋のクーラーを入れ、料理本の原稿書きにはまっていた。
やればやるほど、伝えたいことがなめらかに出てくるのがおもしろく、ずっと抱えていたのです。
ひとつのことにのめりこみ、そのことばかりを考えていると、関係することが目についたり、耳からスッとすべり込んできたり、頭に浮かんだりする。
道を歩いていても、料理をしていても、自然と吸い寄せてしまうような。
これは、もの作りのどの世界にも共通しているように思う。
閃くというよりは、いいことを見逃さない体になるというか。
なんか、まみれている感じ。
今日は、夏休み最後の日だ。
カツオもまる子も宿題をやり終える日。
みんなの作業が進まないし、きりがないので私も今日で終りにすっぺ。
こうやって私が作り込んだものを、本作りのメンバーに壊してほしいなあと思う。そうしたら、もっともっと広々とした、さらにおもしろいものになりそうな気がする。
この本は、12月に本屋さんに並ぶ予定です。どうかみなさん、楽しみにしていてください。 
夜ごはんは、カレーライス、夏の庭のサラダ。

●2013年8月27日(火)快晴

キラッキラな秋の光。香ばしいような日だ。この間までの夏だった日々とは、はっきりと空気が違う。
朝ごはんのとき、寒いような気がしてカーディガンを羽織ったのだけど、食べているうちに汗がにじんだ。
肌の皮1枚分の下が、じりじりと暑いような感じがして脱いだ。正確にいうと、ただじりじりして、暑いのか寒いのかよく分からない感じ。
季節の変わり目は、ことにそう。
私は今更年期だから、温度を体感するセンサーがちょっとおかしくなっているんだろうな。
別に困らないけど。
原稿書きが一段落したら、あとで散歩がてら買い物にいってこよう。
4時からは、新潮社の方々がいらっしゃって、『明日もいち日、ぶじ日記』のつき合わせをする。カバーや表紙のサンプルも届けてくださる予定。
これでいよいよ手が離れる。あとは、野となれ花となれだな。
本屋さんには9月の末に並びます。どうか、楽しみにしていてください。
夜ごはんは、ひさしぶりにスイセイと近所のお蕎麦屋さんへ行った。
『明日もいち日、ぶじ日記』がひと区切りついたのと、暑気払いを兼ねて軽く乾杯。7時には帰ってきた。
板わさ、そばがきの素揚げ、油揚げの網焼き、炙りいか、ざる蕎麦、ビール、日本酒。

●2013年8月26日(月)晴れたり曇ったり

ゆうべはタオルケット1枚では肌寒かった。窓もとちゅうで閉めたほど。
洗濯物を干すとき、見上げると秋の雲が広がっていた。鰯雲というんだっけ、ウロコのようなもろもろした雲だ。
大家さんのどんぐりの木は、しばらく見ない間にすっかり枝を伸ばし、青々した葉を茂らせている。ふと見ると、青い実がなっている。
このところ私は、書き物で息が詰ると、ベランダに出て肩凝り体操をしていたのだけど、何も見てはいなかったのだな。
でも、今年のどんぐり、数がとても少ないみたい。そういう年もあるんだろうか。
『明日もいち日、ぶじ日記』の校正は、午前中に終った。
午後からはまた料理本。ちゃくちゃくと、亀のスピードではあるが、確実に進んでいる。
いちおう、8月31日までに終らせなければならないから、まったくもって夏休みの宿題の気分。
今はまさに追い込み。カツオやまる子の気持ちがよく分かる。
夜ごはんは、鰺の干物、大根おろし、ニラとゴーヤーの塩炒め、きのうのきんぴらの残り、納豆、玄米(私)、白いご飯(スイ)。
しばらくぶりに玄米を炊いて食べた。うーん、やっぱりおいしいなあ。

●2013年8月25日(日)雨

朝から静かな雨が降っている。
空気がすがすがしく、秋のように涼しい。
朝ごはんを食べ終り、『明日もいち日、ぶじ日記』の校正の続きをやろうとしたのだけど、パソコンを開いたら、ついつい料理本の原稿書きにのめり込んでしまう。
『ぶじ日記』の方はまだ余裕があるので、気持ちのままに進もうと思う。
文を書くにはぴったりの天気だし。
3時までやって、こんどは校正にはまる。
半分くらいまで進んだ。あとは明日のお楽しみだ。
ウナギを炊き込んだご飯が食べたくて買い物に出るが、あまりの高さに驚き、買わずに帰ってきた。
ゴボウとウナギのご飯、山しょうをきかせて食べたかったんだけどな。
あとで『まる子』と『サザエさん』を見る予定。
夜ごはんは、きんぴら(れんこん、ごぼう、しいたけ、牛コマ、ひじき)、しし唐のしょうゆ炒め、ゴーヤーとみょうがのシャキシャキ和え(ポン酢しょうゆ、ごま油)、かやくご飯(干ししいたけ、油揚げ、ごぼう、にんじん)。

●2013年8月20日(火)晴れ

このところ、夜が涼しくてとても助かる。
ゆうべも、その前も、その前の晩も、窓を開けて網戸だけにし、カーテンを閉めずに月明かりの中で寝た。
明け方にだんだん明るくなって、蝉が鳴きはじめ、いちばん鳥の声がするのをまどろみながら聞いて、起きる。
新聞を読みながら青汁を飲んで、朝風呂で目をさまして洗濯し、天気予報を見て『あまちゃん』。
先週は日記がアップできず、開いてくださった方、ごめんなさい。
雑誌の撮影やら打ち合わせやらで(いちど飲み過ぎてひどい二日酔いにもなった)、目の前のことに必死だったのです。
今朝からようやく、またもとの暮らしに戻った。
今年の夏は暑いけど、暑い暑いと文句ばかり言っているうちに日々がゆき過ぎ、終ってしまうのだから、どうせならこの夏を楽しまねば。
今年もまた、夏休みの宿題が山積みで、蝉時雨を聞きながら没頭するのが喜びでもある。
朝ごはんを食べながら、「ほいじゃがみいよう、ときどき深呼吸息しながらやらんにゃあだめで」と注意される。
さて、今日もまた料理本の原稿書きに励もう。
その前に、「ロシア日記」の校正をやってしまわねば。
午後、『明日もいち日、ぶじ日記』の最終校正が送られてきた。今はまだ見ずに、料理本に没頭すっぺ。
夜ごはんは、スーパーの海苔巻きとお寿司。

●2013年8月11日(日)晴れのち曇り、一時雷雨

朝ごはんを食べ、9時にスイセイと散歩。
大家さんもちょうど散歩に出掛けるところで、ひさしぶりにハルに会えた。
ハルはなんとなくしょぼしょぼしていた。この暑さでは犬もたいへんだろう。
とちゅうで分かれ、私は買い物をして帰ってくる。ミネラル水を飲み飲み、蝉時雨のなか桜並木を歩いた。
今朝も暑いけど、きのうよりはずっとまし。
帰ってから仕事部屋のクーラーをつけ、「ロシア日記」の続きにはまる。
たまにベランダに出ると息ができないこの暑さ、ウズベキスタンを思い出す。
「ロシア日記」はずいぶん書けた。この分なら明日の締めきりに間に合いそうだ。
3時ごろ、ものすごい雷が鳴りはじめた。
パソコンや電気を消し、黄色い稲妻が灰色の空を切り裂くのを、スイセイと窓から眺めた。
こんな凄まじいのははじめてのこと。ずいぶん近くに落ちているみたい。
怖いので、私はとちゅうから見ないようにする。
そのうち雨が窓を打ち流すほどの土砂降りとなった。水族館のガラスのよう。表面に体をつけるとひんやりする。
雨上がり、ベランダに出ると、蝉がいっせいに鳴き出した。
涼しい風が吹きぬける。
あとで、『まる子』と『サザエさん』を見よう。
夜ごはんは、焼きなすと豆腐の冷や汁の予定。この組み合わせをずっとやりたかった。
冷や汁にはみょうがや青じそ、しらすのほか、ゴーヤーを塩でもんでサッとお湯をまわしかけたものをのせるつもり。
このゴーヤーは川原さんのベランダ栽培。緑が鮮やかで、シャッキシャキで、たまらなくみずみずしい。

●2013年8月9日(金)晴れ、猛暑

今日もまた、朝から温度が上がってものすごく暑い。
きのうは、料理本の最後の撮影だった。
4時半には終ったのだけど、ぐったりとくたびれ、お風呂から出たら、ゆですぎた菜っ葉みたいになってしまった。
本当はもっと撮影を味わいたかったのに、私は料理するのに精一杯で時間ばかりが早く流れ、気づいたら終ってしまっていたのだった。
最後、立花君は炎天下のベランダに体半分を出し、黒い布をかぶって撮影していたっけ。
今朝はあちこち掃除しながら、そんなこんなシーンの断片や、みんなの歓声がお化けみたいにふわふわと蘇っては消える。
たまったゲラ校正を大テーブルに広げ、片っぱしからやっていて、タカシ君の『オリビアを聞きながら』が流れたら、急に涙が浮かんでこぼれた。
みどりちゃんは、これがかかると踊ってたな……なんて思い出し、私も真似してひと踊り。
気を取り直して校正に励む。
さあ、私のやるべきことは、料理本のためのレシピと文を頑張るのみ。とても有意義な夏休みの宿題だ。
午前中に干した洗濯物が、昼前には乾いた。とり込んで、2回戦をやる。
夕方から、『明日もいち日、ぶじ日記』のカバー絵のことで美穂ちゃんがいらっしゃる。プラムのソーダ水を出してあげよう。
その前に、「ロシア日記 ウズベキ編」の続きをやってしまわねば。
夜ごはんは、三ちゃんちの近所の蕎麦屋で。揚げだし豆腐、モツ煮込み、せいろ蕎麦(スイ)、かき揚げせいろ(私)、ビール。

●2013年7月29日(月)雨のち晴れ

きのうは日記が書けなかった。
午前中は、裏庭と庭の作業の続きをし、午後からは「あとがき」をずっと書いていたので。
夢中で書いていて、まだ4時だなと思っていたら、あっという間に6時の子供放送が流れたのだった。
きのうのトピックスは、外の流しではじめて髪を洗ったこと。
お風呂場の行水ではシャンプーできないので、ずっと気持ちが悪かったのだ。
洗顔石鹸を泡立てて洗い、水をたっぷり流した。
開いた足の間から、逆さになった山が見えた。
蛇口に当たるところの地肌がひんやりし、爽快だった。
今朝は6時に起きる。
小雨が降っている。
山を眺めながら朝のコーヒーを飲んでいたスイセイが、「何日も降っとらんと、まあ降り方にもよるんじゃけど、雨ゆうのんは地上を洗うんじゃのう」。
ラジオからはバロックが流れ、スイセイが鳥のさえずりを真似している。
「チューイク チューイク チューラレラロ」
うっとりしていたら、大きな音でスイセイが長いゲップをした。
静かな雨が、沁み入るように降り続いている。
今朝もまた、『あまちゃん』を見なくては。
あとで、高速の出口の直売所へ行って、すももをいろいろ買う予定。
明日、東京に帰るのだけど、火曜日で直売所が休みなので。
朝ごはんは、オムレツ、ソーセージ、バナナ、クラッカー、ミルクティー(私)、ミルクコーヒー(スイ)。
直売所には10時に着いたのだけど、とても盛況だった。
野菜も果物も山になって、人もいっぱい。
いつも私たちは11時過ぎに来ていたから、のんびりした空気だったんだな。
なす、きゅうり、ゴーヤー、すもも2種、桃、梨を買った。
生トマトジュースを飲みながら、帰ってきた。
帰ってからは、しっかりした雨。
昼ごはんは、インスタントラーメン(スイ)、ミニバーグ弁当(直売所で買った。とてもおいしい)、コロッケ(直売所の)。
「あとがき」と「小説新潮」の文をやる。
スイセイは雨の中、なにやら作業をしていたらしいけど、戻ってきて昼寝。
雨は3時くらいに上がった。
ふたりで作業の続きをやる。裏庭、庭、駐車場。
晴れ間が出てきた。
畑もやる。東京で育てていた苺を植えかえ、ハワイアンジンジャー(吉祥寺のある家の玄関先で、「ご自由にお持ちください」と書いてあったもの)も植えかえる。
最後に、ぜんぶの草をかぶせて草マルチ。
6時の子供放送が流れると、スイセイは作業をやめ、「集中して聞けよ!」と耳を傾けた。
汗ぐっしょりとなり、温泉へ。
8時までなのでお客さんは2、3人。露天風呂は貸しきりだった。
ひさしぶりに行くと、温泉のありがたみがよーく分かる。
私はぐったぐたのクラゲのようになってしまう。
夜ごはんは、ふきの煮たの、きゅうり&みそ、さつま揚げ、黒はんぺん、茄子のフライパン焼き(醤油、七味)、いなり寿司(直売所の)。
直売所の茄子が、ねっとりとしてとてもおいしい。

●2013年7月27日(土)曇りがちの晴れ

6時半、鳥の声で目が覚める。
窓を開けるともっといろんな鳥の声がする。
外に出て歯磨き。山の家の朝は、林間学校の朝の空気だ。
7時に朝ごはん。ウスベキ丸パン、ハム、ポテトサラダ、きゅうり、ミニトマト、紅茶。
ウズベキ丸パンがとてもおいしい。グリルパンで温め直すととても香ばしく、かみしめるたびパンの元祖みたいにおいしい。
「童話なんかでようある、ポケットに入っとったみたいなパンようのう。うまいのう」
今朝も『あまちゃん』が見れた。
電波の具合が悪く、ちょっとのことで画面が揺らいでしまうので、じっと固まって見た。涙が出ても鼻水が出ても拭けない。
スイセイはとっくに作業をはじめている。
さて、私もそろそろツナギに着がえるべ。
庭の草抜き。ニラみたいな柔らかい草を抜く。ここはちょうど雨水が屋根がら落ちるところなので、おもしろいほどスッと抜ける。
少しずつ進んで、きのうスイセイがやった土蔵側のところと貫通。
麦わら帽子の下から、汗が涙のように頬を伝って流れ落ちる。横の頬だけど。
休憩のたびにツナギの上半身を脱ぐと、中のタンクトップはぐっしょり濡れている。
東京にいるとこんなに汗をかくことなどないから、とても気持ちがいい。
今日は曇り、作業日和だ。
11時までやって、今日の私の作業は終り。
昼ごはんは、冷やし中華(きゅうり、ゴーヤー、錦糸卵、ハム、紅しょうが。
午後からは『明日もいち日、ぶじ日記』のゲラ校正。
窓際に机を運んで、ときどき山を眺めながらやる。
3時過ぎにコンビニまで散歩。今日は坂の上のはじめての道を歩いてみる。
山の中腹みたいないい景色。
晴れていたら富士山が見えたかも。風が猛烈に強かった。
洗剤など買って帰る。私は柚子シャーベット、スイセイはたこ焼き。
スイセイが畑の上をやっている間に、ぼちぼち夜ごはんの支度をする。
裏庭に出てフキを取った。
下ゆでして皮をむき、味見をしてみるが、苦味が強すぎるのでゆでてアクをぬいてから水と醤油だけで煮た。とてもおいしくできた。
今日もまた6時に子供放送が流れる。きのうと違う男の子の声だ。
「遠き山に日が落ちてー 星は空を散りばめぬー」と歌いながら行水する、
きゅうりとゴーヤーの梅和え、ゴーヤーチャンプルみそ味(さつま揚げ、豆腐、ピーマン、青じそ)、助ろく寿司(コンビニの)、ビール。
『明日ぶじ』のカバー案が送られてきた。
美穂ちゃんの絵、すごくいい。
パソコンの画面に映したまま、スイセイと語り合う。
つもる話しで盛り上がり、10時過ぎでしまった。
ふたりで連れ立って外の水洗トイレへ。
星がいっぱい出ていた。
庭にまわってみる。天の川が見えそうなくらい。
ときおり光るのは、どこかで雷が鳴っているのだろうか。
10時半に寝る。

●2013年7月26日(金)晴れ

きのうから山の家に来ています。
私がウズベキスタンに行っている間、スイセイも忙しくて来られなかったから、ずいぶんひさしぶり。
庭も畑もすごいことになっていた。
畑の向こうの桑の木は、去年ヒコバエだったところがもっさりと茂り、小さな森のよう。ススキもさわさわと、子供の髪の毛みたいに若緑の葉を伸ばしている。
庭を見たスイセイの第一声は、「手を叩きたいようなことになっとる!」だった。
一面の草の間から、ヨモギが私の胸のあたりまで伸びている。
とくにたまげたのは、玄関のところにある木の若い幹が地面から伸び、大きな葉っぱを茂らせてもしゃもしゃになっていたこと。
私はがっくりくる。
「ほいじゃがこんなもんで。おれは全然驚かない。ススキはなくなったんじゃけえ、前よりはずっとええんで」
最後に来たのは、5月の半ばくらい。実家に帰ったついでに苺の様子を見に寄ったときだ。
その日は私ひとりだけだったから、作業は何もしないで帰ってきた。
今、日記をふり返ってみたら、スイセイとソファーを運びにきたのが4月23日(作業はせず日帰りで)だから、作業をしたのは3月14日が最後。
なんと、4ヶ月以上も放っておいたのだ。
ゆうべは温泉から帰って、すっかりへろへろになっていたのだけど、玄関の木の葉を根もとから切り落とした。
それだけでずいぶん見通しがよくなり、気が楽になったのだった。
今朝は5時に起きた。
ミルクティーをいれ、こうして日記を書いている。
さあ、暑くなる前に庭の草を引っこ抜こう。スイセイはなぜかまだ寝ている。
朝飯前にヨモギだけひっこ抜く。細いのは、真直ぐに引っ張ってやればすーっと根っこごと抜ける。太いのはバッコンで抜いた。
ヨモギを抜いてゆくと、けっこう地面が見えてくる。
ドクダミももう時期が過ぎたらしく、枯れかけているので、どんどんとれる。
7時に朝ごはん。
ウズベキ丸パン(東京で焼いてきた)、プロセスチーズ(バターのかわり)、ポテトサラダ(スーパーの)、きゅうり、ミニトマト、コーヒー(スイ)、ミルクティー(私)。
カーナビをジープからはずしてきて、テレビを見る。
山の家で『あまちゃん』が見れるなんて!
電波がぎりぎりなので、身動きしないようにして見た。
スイセイはきのうから外の水道を直している。
コンクリートを壊して、中の水道管を掘り出し、水が漏れるのを修繕しているのだ。
きのうからやっているのだけど、どうもうまくいかないらしい。
私は庭の続き。ヨモギが終ったら、花壇まわりをやっつける。ヤブガラシや野ぶどうの蔓がからまっている。すぐにすっきりする。
陽が照り出してきたので、台所裏に移動。
こっちもヤブガラシやドクダミ。抜いたヨモギはよけておく。干してお茶にしようと思って。
最近、春のヨモギのお茶を麦茶に混ぜたのがとてもおいしくて、買おうと思っていたのだけど、山の家にこんなにあったとは。
この間テレビで、夏のヨモギでお団子を作っているのを見た。春に比べて夏のヨモギは香りが強いのだそう。
12時に昼ごはん。
ゆでとうもろこし、ゴーヤーの塩焼き(たて5センチほどに細長く切り、少なめのごま油で焼いてみた。とてもおいしい)、茄子のフライパン焼き(しょうゆ、七味唐辛子)、いなり寿司、コロッケ。
ごはんを食べながら、「今年は、草マルチにしてみようかな」とスイセイに伝える。
「そうで、みいはもう4年生なんじゃけえ、新しいことをどんどんやって試せばええんよ」。4年生というのは、山の家の作業が4年目という意味。
これまでは庭がきれいになるのが嬉しくて、抜いた草はすっかりよけておいた。
草マルチというのは、次の草が生えにくいよう、抜いた草をきれいになったところにかぶせるやり方。
前からスイセイに薦められていたのだけど、せっかくきれいになったところに枯れかかった草をかぶせるなんて、どうしてもやる気になれなかった。
ひと休みしたら、スイセイの水道の開通式だそう。
さて、どうだろう。直ったろうか。これで直らなかったら、「オレはけっこうショック」だそう。
水道はぶじ開通!
グラグラしないよう支えもつけてくれたので、前よりも頑丈になって、安心感がある流しになった。
水が一滴も漏れないし、コンクリートにもしみ出さない。
この水で洗濯をする喜びといったら。
午後は、ヨモギの葉のやわらかいところを枝からはずす作業。これを洗ってざるに広げて干す計画だ。
ざるは納屋にあったもの。ビニールの子供用プールくらいの大きさがある。
ヨモギの作業は、やってもやっても終らない。
スイセイはこの暑い中、焚き火をして、前回切った枝など燃やしている。
コーヒーをいれて、いつもの窓辺に腰掛ける。
桑の木が大きくなりすぎたせいで、遠くの山が隠れて見えない。
昼寝から起きたばかりのスイセイに、「山が見えないの」と言ってみたら、すぐに切ってくれた。
何本にも枝分かれした、葉ももしゃもしゃの大きな枝だ。
おかげですっかり見晴らしがよくなった。
なんだか私は、黒澤明みたいなことを言ってしまったな。
窓辺に腰掛け、『明日もいち日、ぶじ日記』の「まえがき」の推敲をする。
東京で書いていたのは無駄が多いことに気づき、どんどん省く。そして、大事な言葉を加えてゆく。
山で馬鹿になっているかと思いきや、かえって感覚が冴え、装飾みたいなものに敏感になっているみたい。
スイセイは畑の上にいる。柿の木のまわりの畑の上のススキやヨモギを刈っているみたい。
今日は温泉に行かないので、お風呂場で行水。髪も洗った(シャンプーは使わず水洗いだけ)。
今年もまた、夏休みの子供放送。オルガン演奏の『新世界より』が流れる。
「児童、生徒のみなさん、6時になりました。今日も楽しく過ごせましたか?遊びをやめ、気をつけて帰りましょう」
夜ごはんは、さつま揚げ(ぷっくり膨らむまでフライパンで蒸し焼き)、焼きなす、きゅうりの梅しそ和え、豆腐、わさび漬け。
何を食べてもおいしくてたまらない。スイセイはビール、私は梅酒の炭酸割りでいい気持ちとなる。
まだ空が明るいので、グラスを片手に庭へ出て座る。
今日いち日で、ずいぶんはかどった。
庭の草も台所裏の草も、やりはじめたらすぐにすっきりする。もしゃもしゃなのは表面だけという感じがする。やっぱり、年々楽になっているような気がするね、などとスイセイとも言い合う。
歯を磨いて、8時半に寝る。

●2013年7月18日(木)曇りのち晴れ、一時雨

きのうは、楠瀬さんとの打ち合わせのあと、ヨドバシカメラでクーラーを買った。
8月1日にとりつけに来てくれることになった。
朝の散歩から帰って洗濯物を干し、夏の予定についてスイセイと打ち合わせ。ちょっと間があくので、月末に山の家に行けることになった。
それまでにスイセイは『Zの本』のまとめ、私も仕事をがんばろう。
「気ぬけごはん」をお送りし、今日から『明日もいち日、ぶじ日記』の校正にとりかかる。
リビングはクーラーがないけれど、先週の猛暑に比べたらずっとましなので、扇風機を回しながらやる。
「脳みそが海みたいじゃ」と言いながら、スイセイは冷蔵庫を開けて桃のゼリーを食べている。
それまで私も集中していたのだけど、気づけば鼻血が出そう
6時前に夕立ちらしき雨が落ちてきたが、すぐに止んでしまった。
夜ごはんは、ゴーヤーチャンプル、賀茂茄子と南瓜の天ぷら、ししとうのねぎ醤油炒め、ワカメときゅうりの酢のもの(じゃこのっけ)、白いご飯。
今夜は8時から『妻は、くノ一』があるので、早めにお風呂に入ってしまおう。
『妻は、くノ一』は、なんとなく気づいたら毎週見ていた…というドラマなだけど、時代劇なのに人がバサバサと殺されることもないし、大きな事件が起こらないところが好き。
新しくはじまったドラマで、いちばん楽しみにしているのは、なんといっても水曜日の『WOMAN』だ。
「傷は傷で洗われる」という言い方があるかどうか分からないけど、この脚本家の、いつもそこに私はやられる。
『それでも生きてゆく』もそうだった。
映像がきれいなので、映画を見ているよう。

●2013年7月15日(月)晴れ

今朝はようやくふつうのうんちが出た。
ウズベキスタンから帰って、10日間くらい下していたのだけど、治ったと思ったら、そのあとは真反対のコロコロになった。それが、きのうまで続いていた。
帰ってきたのは6月17日だから、もとに戻るのに1ヶ月かかった。やっぱり、内臓がこたえるくらいの旅だったのだな。
今朝はクーラーの修理の人に来てもらった。
スイセイの想像どおり、室外機のキバンというところが壊れているらしい。
古い型なのでもう部品がないそうだ。
買ったのは1996年。
まだ井の頭公園の向こうのアパートにいて、「クウクウ」でバリバリ働いていた頃に買ったのだから、寿命なのかもしれないけれど。
でも、このマンションにはじめからついていた仕事部屋のクーラーは、頑丈でびくともしない。
昭和の電化製品みたいに古くいさい形で、私はとても好きだ。
明日は撮影なので、あとで仕入れにいってこよう。
スイセイはカタログ集めにヨドバシカメラに行った。
※夜ごはん、記録するのを忘れました。

●2013年7月14日(日)晴れのち曇り一時雨

今朝は『あまちゃん』もやらないし、このところの暑さのくたびれが、体の芯にたまっているような気がして、寝坊を決め込んでいたのだけど、起きたらちょうど8時だった。
ゆうべは10時前に寝たから10時間睡眠。
私の体内時計は、『あまちゃん』に合うようになっている。
朝食に、パンを食べる気にはどうしてもなれず、白うり漬けやたくわん、昆布の佃煮、紅しょうがなど細々と並べて、冷たい麦茶でお茶漬け。
スイセイは喜んでいた。
ここ最近の猛々しい暑さに比べたら、きのうも今日もずいぶんと過ごしやすい。
このところずっと書いていた「はなべろ読書記」がようやくできたようなので、「気ぬけごはん」を書きはじめる。
試作をしながら、次の撮影のレシピも書く。
今日の私はくるくるとよく動いて、頭もしゃんとしている。
昼ごはんは、とうもろこしのゆでたのと、じゃがいも(整体の先生から家庭菜園のをいただいた)のガレット。ちりめんじゃこを混ぜて焼いてみた。
遠くの方で雷が鳴っている。
4時すぎに、大粒の雨が降り出す。雨は乾ききったベランダに、大判焼ほどの丸いあとをつけている。
仕事部屋の窓を、鳥が一直線に横切っていった。
大急ぎであちこち窓を閉めてまわるが、あっという間に小雨となった。
雨上がりに窓を開けると、ひんやりした風が吹き抜けた。
天然のクーラーみたい。
どこかで鳥がギョーギョーと鳴いている。
大家さんの庭では、クチナシの花が1輪咲いている。
なんとなしに、西瓜の匂いがする夕方だ。
6時からは、いつものように『まる子』と『サザエさん』。
盆踊りの太鼓の音が、風にのって聞こえてくる。
夜ごはんは、豚のあぶり焼き(ピリ辛ねぎのっけ)、賀茂茄子(三ちゃんのお母さんが送ってくださった)の田楽みそ、生ピーマンの中国風和えもの、大根おろし(ちりめんじゃこ)、白いご飯。

●2013年7月5日(金)曇り

ちょっとくたびれが残っていたけれど、歯医者に行くのでいつもと同じ時間に起きた。
『あまちゃん』のキョンキョンに泣く。
きのうは『きょうの料理』の収録で、朝から夕方まで三ちゃんとスタジオにいた。
2本分だったのでちょっとハードだったけど、テレビの人のいいところをたくさん見ることができた。
メイクさんも、フードさんたちも、ディレクターも、アナウンサーも、スタジオで立ち働く人たちはみな、テレビだからといって華やかなところなどひとつもなく、たんたんと動いていた。
番組を少しでも楽しく、分かりやすく伝えるために、その場でいろいろなことが変更になってもびくともせず、みんながひとつの方向に向かっていた。
けれど私は、ひさしぶりの収録でちょっと舞い上がってしまったみたい。ああすればよかった、こう言えばよかった… などと思いはじめたらきりがないのだけど、ゆうべは後悔が頭をめぐってよく眠れなかった。
まあ、終ったのだからよしとして、次に進もう。
それにしても今日は湿気がものすごく、蒸し暑い。
歯医者の帰りに、商店街の和菓子屋さんで稲荷ずしや太巻き、お赤飯のおにぎりなど昼ごはん用に買って帰る。わらび餅も買った。
スーパーではふんわりした黄色い蒸しパンや、ドーナツも買った。
疲れているときって、甘いものが食べたくなる。
ゲラの校正を2本やり、読書三昧。
本を読みながら、わらび餅や蒸しパンやせんべいなどとりとめなく食べてしまう。
お腹も空かないし、ごはんを作る意欲もない。
きのうさんざんやったから、料理などしたくないのだ。
なので夜ごはんはなし。スイセイは自分で納豆スパゲティを作り、お皿も洗ってくれたもよう。
7時過ぎ、お風呂に入ろうとしたら、洗面所の窓から炊き込みご飯の匂いがしてきた。
懐かしいような、たまらなくいい匂いなので玄関に出てみる。
干ししいたけと鶏肉、にんじんにごぼう、油揚げやコンニャクも入っているだろうか。薄口しょうゆの洒落たのなんかでなく、きっと、しょうゆの色がしっかりついた、ほんのり甘い味つけの五目ご飯だ。
大家さんなのか、下の階からなのか、向かいのアパートからなのか分からないけれど、台所で炊いている湯気が風にのって匂ってくるのだ。
こういうことがあるから、明日からまた、ごはんを作ろうと思ってしまう。
このことは、「気ぬけごはん」に書こう。

●2013年6月25日(火)曇り

きのうは『天然生活』の撮影と、『明日もいち日、ぶじ日記』の単行本の打ち合わせだった。
旅から帰ってすぐの、人に会う仕事がとりあえずすべて終ったので、今日は布団の中で過ごす。
顔も洗わず歯も磨かず、朝ごはんも食べない。
木皿さんの『昨夜のカレー、明日のパン』を読む。
ぐんぐん読んでいるうちに、お腹がすいてたまらなくなった。
編集さんにいただいた水まんじゅうとプリンを食べ、コンビニへ行くというスイセイにたのんでおにぎりも買ってきてもらう。
木皿さんの小説には、本当の日常が書いてある。
いいことばかりの日常ではなく、つまらないところもバカらしいところもあって、誰もがそこにとどまることができないことも書いてある。
私のお腹は固まってきた。
いくら食べても、もうやわらかくなることはなさそう。身も心も、ようやく日本に戻ってきたのだな。
『昨日のカレー、明日のパン』のおかげだ。
このことは「はなべろ読書記」に書こうと思う。
夜ごはんは、かぼちゃ(りうが送ってくれた)の天ぷら、そうめん(みょうが、青じそ、ねぎ)、茄子のくたくた煮。

●2013年6月23日(日)晴れのち雨

朝からよく晴れて、洗濯物をたっぷり干す。布団カバーまで洗った。
きのうあたりから、お腹の様子がようやく落ち着いてきた。
やっぱり正露丸が効いたのかな。
食事の最中や、食べてすぐにお腹が痛くなってトイレに駆け込むこともなくなったし、いちばん嬉しいのはお腹が空くようになってきたこと。
1時からは『きょうの料理』の収録。
ディレクターは矢内さんだし、カメラマンも照明さんも音声さんも「四季の味」のときにお世話になった方々で、7年ぶりにお会いできたのが嬉しく、ぐーんと元気が出た。
4時前にはすべて終った。
スイセイと選挙にいきがてら、夜ごはんは商店街の中華屋さんへ。
近所の家族連れや、ひとり暮らしのおじいさんや若者がぽつりぽつりと入ってきて、5時を過ぎたばかりなのに満席となった。
レバ野菜炒め、春巻き、カニ玉、白いご飯をたのむ。
色もきれいだし、やさしい味つけでとてもおいしかった。カニ玉なんかふわっふわだ。
あとから入ってきた夫婦は私たちよりも少し年上で、旦那さんは海老とアスパラ炒めの定食を、奥さんは五目あんかけの固焼そばをたのんだ。
奥さんが読んでいた文庫本を真ん中に置いて、小声で何か話している。よかったところなど、お互いに伝えあっているのかな。
きっと、子どもたちもひとり立ちしてふたりきりになり、たまにこんなふうに外食をして、奥さんを休ませてあげようとしているような感じがした。
奥さんも、外で食べる味を愉しみにしているみたい。それは、料理が出てきたときの華やいだ顔つきで分かった。
こんどここに来たら、隣のおじいさんが食べていた餃子定食をぜひ食べよう。餃子とご飯に、小さなラーメンがついている。
どうやら私は、ぐずぐずだった体の芯が固まりつつあるみたい。
これまでは図書館の行き帰りだけで、マンションの3階に上るだけで、体力が消耗してハアハアしていた。
それも少しずつよくなっている。
6時に帰りつき、『まる子』に間に合った。
夜、また少しだけお腹を壊す。

●2013年6月21日(金)雨が降ったりやんだり

ぶじ17日にウズベキスタンから帰ってきました。
暑さと乾燥と、油のからまった料理とスパイス、果物の食べ過ぎでお腹の具合がずっとよくなかったけれど、川原さんとふたり、ものすごく充実した楽しい日々を過ごしてきた。
ウズベキスタンは、いろんな意味で色濃いところだった。
砂漠の中にこつ然とできたような国なので、想像以上に自然が荒々しく、光も強く、空はいつでも真っ青で景色や人の輪郭がくっきりしていた。
その様子は、「考える人」にこれから少しずつ書いてゆくので、ここでは詳しくお伝えすることができなくてごめんなさい。
強い太陽と風と砂埃にさらされて、干物のようになって帰ってきた私には、梅雨どきの東京の湿気はとてもありがたい。
帰った次の次の日に、傘をさしてスイセイと近所を散歩した。
雨に濡れた植物は緑が冴えざえとして、葉の1枚1枚が飛び出しているように見えた。
その、したたるようなみずみずしい匂い。
木によって、みな違う匂いの粒を吐き出しているのがよく分かった。
東京は、なんて美しく清潔で過ごしやすいところなんだろうと感心した。
けど私は、どっぷりはまって旅をしていた分、なかなか現実に戻れない。
お腹の調子もよくならず、すぐにくたびれて寝てばかりいる。
いちばん困るのは、いろんな匂いが鼻につくこと。
帰ってきたらあまりに湿度が高くて、どこかの感覚が開いてしまったんだと思う。
きのうは、『きょうの料理』のテレビの打ち合わせだったので、ハリハリとよく動いて好調だった。
しかし今朝、朝ごはんを食べてすぐまたお腹を下した。
体がだるく、昼過ぎまで寝ていた。
まどろんでいるときも、夢でも、まだなんとなしにウズベキスタンをひきずっている。
私のどこかはまだ、むこうにいるつもりになっている。
まあ、慌ててもとに戻そうとせず、ゆっくりいこう。
りうは、6月7日に元気な女の子を産みました!
夜ごはんは、野菜炒め(スイセイ作/にんじん、もやし、ニラ、白菜)、マルタイ棒ラーメン(スープにとろみをつけた)。

●2013年6月2日(日)曇りのち晴れ

朝方はぼんやりした天気だったけど、散歩をしている間にぐんぐん晴れてきた。
中央公園まで大股歩き。
このところ私もスイセイも、小さい子供の声がするとやけに反応する。
すれ違いざま、にやにやして立ち止まって、じっとりと見てしまう。
りうの赤ん坊のことが楽しみでならないからだと思う。
中央公園の原っぱは、飛行機を飛ばしているおじさんたちがいつもよりたくさん集っていた。
りうからは依然として連絡がない。
さーて、いよいよウズベキスタンだ。
明日の午後1時半には川原さんと飛行機に乗って、夜の9時(現地時間)にはタシケントにいる。
今日はいち日、『犬が星見た』のウズベキスタンのところを読んで過ごそう。
あとで『まる子』と『サザエさん』も見よう。
夜ごはんは、鰺の干物、大根おろし、なすのくったり炒め煮、網焼きピーマン、大根のみそ汁、卵ごはん(私だけ)、白いごはん。
というわけで2週間ばかり旅をするので、しばし「日々ごはん」はお休みします。旅の様子は「『犬が星見た』をめぐる旅 高山なおみのロシア日記」の紀行文として、「考える人」の秋号から連載をする予定。6月20日あたりに「日々ごはん」を再開できたらいいなあと思っています。

●2013年5月29日(水)曇り時々小雨

今朝も早起き。
ゆうべも今朝も、とても涼しい。
スイセイは朝ごはんを食べ終るとすぐ、税務署や市役所へ出かけていった。
私はあちこち掃除。
なんとなく、今日あたりりうから連絡がありそうな気がして、念を込めながら雑巾がけをする。洗濯機の排水溝まできれいに洗った。
塩も炒る。
さあ、どうだろう。
りうからメールが届いた。今日はこれから検診なのだそう。
この1週間は、休みをとった旦那さんと家族で魚釣りにいったり、筑波山に登ったりして、楽しく過ごしていたらしい。
あっという間の1週間だったそう。
私も連絡がないのに馴れて、このところは料理本のレシピ書き&切り貼りをのんびりやっていた。
午後、りうから電話。
3200グラムになったけれど、まだ音沙汰がない様子。
先週は私の間違いで、3000グラム弱だった。1週間で200グラムも大きくなったんだな。
夜ごはんは、鰺の干物、大根おろし、焼きなす、大根葉の炒り煮、納豆(私だけ)、麩とねぎのみそ汁、白いご飯。

●2013年5月26日(日)晴れ

ちょっと寝坊、7時20分に起きた。
きのうが満月だったので、もしや……とかなりその気になっていたが、りうからはまだ連絡がない。
今朝は暑くなりそうなので、朝ごはんを食べ終ってすぐにスイセイと散歩。
上水沿いの小道は夏草が伸び、緑がむんむんしていた。クローバーはそろそろ花が枯れかかっている(こんどスイセイは種をもらうんだそう)。
帰ったら、タカシくんの新しいCDが届いていた!
『だれそかれそ』というカバーアルバム。
聞きはじめたら、もう、仕事などやってられぬ。
すごくいい。
生きとる歓びという感じがする。
明るくて、楽しくて、バカらしくて、カッコよく、そしてひとすじの哀しみもある。夏の夕方(夕暮れではない)という感じ。
タカシくんの声は、こういう歌を歌うために生まれてきたようないい声だ。
ああ私は、ベランダでビールを飲みながらこれを聞きたい。聞きながら歌いたい。もう、そうしちゃおうか。
りうのことは知らせがきてから慌てようか。
スイセイは今、経理の仕事でたいへんなので、私の相手などしてくれない。なので、ひとりで5回聞いた。
あとで、『まる子』と『サザエさん』も見よう。
夜ごはんは、たらこスパゲティー、キャベツとにんじんとピーマンのサラダ。

●2013年5月23日(木)晴れ

ゆうべはけっきょく電話がなかった。
スイセイも早起きしたので、私も5時半に起きる。
今日は12時から、「気ぬけごはん」の単行本の大事な打ち合わせがある。
そのあと4時からは「天然生活」の打ち合わせもあるのだけど、心はいつでもスタンバイ。
さて、どうなることやら。
打ち合わせはふたつとも滞りなく、ぶじに終った。ほっとひと安心。
夜ごはんは、キャベツたっぷりソース焼そば(目玉焼き)。
夜ごはんの前にお風呂に入って、いつでも出かけられるようスタンバイしていたが、夜になってもりうからの連絡はなし。

●2013年5月22日(水)快晴

今朝もまた7時に起き、『0655』と『あまちゃん』。
散歩には出ず、朝から「小説新潮」の原稿書きと、「ロシア日記」の校正。
午前中、りうから電話がかかってきた。
今朝は月にいちどの定期検診で、おしるしがあったそう。
予定日は30日だけど、もう3100グラムを超えているので、いつ生まれてもおかしくないという。
まだ陣痛はないようだけど、もしかすると今夜あたりに生まれるかも。
私がどたばたしても仕方がないのだけど、胸が高鳴る。
まずは落ち着いて原稿を仕上げ、お送りしてしまおう。
「気ぬけごはん」の直しもお送りし、ほーっと息をつく。
さて、整体にも行ってきてしまおう。
りうの声は太く、しっかりしていたけれど、「なんか怖くなってきた」と弱気なことを言っていた。
前回は2度目だからと安心してたかをくくっていたら、想像以上にきつく、ずいぶん痛い思いをしたらしい。
こういうとき、子を産んだことのない私は気のきいたひとことが言えず、「とにかく今はよく眠っておきなよ」としか伝えられなかった。
整体に出かける前に、あたふたと励ましメールを送る。
私がどたばたしていたのが部屋まで聞こえたらしく、「サザエさんじゃないんじゃけえ、落ち着つかんとだめで。みいが産むんじゃないんじゃけえの」とスイセイに釘をさされる。
整体から帰り、いつ呼ばれてもいいようごはんの前にお風呂へも入ってしまう。
夜ごはんは、生ハムとなすのトマトスパゲティー、レタスだけのサラダ。
くたびれて9時前に寝てしまう。

●2013年5月21日(火)晴れのち曇り

今朝もまた『0655』で起きる。
朝風呂に浸かり、8時からは『あまちゃん』。
最近、朝ごはんを食べ終って洗濯者を干したら、散歩に出るようになった。
スイセイが走る隣で、私は早歩き。
中央公園の広場も、さっさっと大股歩き。
水を飲んで腕立てを10回と、スクワット10回。
帰り道の公園で、鉄棒にぶら下がるのもここ最近の習慣だ。
はじめてぶら下がったときには、左腕のつけ根が痛かったのだけど、このごろはすっかり違和感がなくなった。
おかげで肩凝りがずいぶんいいような気がする。
いつもの農家で、ぷーんと匂いたつ青ねぎとルッコラを買って帰ってくる。
きのうから『明日もいち日、ぶじ日記』の本作りがはじまった。
窓をいっぱいに開けてパソコンに向かい作業する。
5時までやってお送りした。
夕方、ベランダに出ると、陽が沈む前のいちばん明るい光に照らされて、緑が目にしみる。
麦茶をコップについで戻ってきたら、もう色が変っていた。
夜ごはんは、鰺の干物、ワカメとしらすのさっと炒め、ピーマンのテンメンジャン炒め、きゅうり&みそ、かぶのみそ汁。
早寝早起きになってから、夕飯の時間を6時半にした。
まだ明るいうちに窓を開けて食べる。
「ええ夕方じゃのう」とスイセイ。
さっき、ほんのちょっと小雨がぱらついたからか(ベランダに水玉がついていた)、空き地の雑草や木々の緑がしっとりして見える。

●2013年5月19日(日)晴れのち雨

朝から散らしずしの支度をしたり、いちごのタルトを作ったり。
今日は「Zの会」。これから楽しいことがはじまるので、スイセイも私もそわそわしている。
2時に高野さんがいらっしゃり、軽く打ち合わせ。
3時にデザイナーの寄藤さんがいらっしゃった。
イタリアの生ハムを5種類くらい、お土産で持ってきてくださった。
私はワイン、スイセイはビール、寄藤さんはノンアルコールのワインを飲みながら対談。3人で話すのは何というのだっけ。
緑がさわさわと気持ちいい。窓をいっぱいに開け、話したいこと、聞きたいことがどんどん溢れ出てきた。
窓の外は、いつまでも暗くならなくて、サマータイムみたい。
このまま永遠に、この時間が続いてくれるような気がしていたのだけど、暗くなって窓を閉めてからは、あっという間に11時になってしまった。
最後に、これまでの印象から生まれた本の絵を、寄藤さんがノートに描いてくださる。
この本は、スイセイと私の対談の本なのだけど、寄藤さんも登場する。
そして寄藤さんは、本からぬけ出してデザインもしてくださる。
イタリアの生ハム5種(かぶの塩もみ添え)、三ちゃんのイタリア土産のサラミ2種、フランスのチーズ、きゃらぶき、生ワカメのポン酢醤油、かぶの葉の辛子和え、散らしずし(サーモン、カンパチ、しらす、いり卵、青じそ、みょうが)、デザートはいちごのタルト。
暗くなってからソファーの方に移動して、散らしずしを出した。
寄藤さんは何杯もおかわりした。
私はとても嬉しかった。
明るいうちに話していたとき、人はひとつにはなれないものだけど、食べものが体に入ると、ひとつになれるとおっしゃっていたから。

●2013年5月12日(日)快晴

今朝も7時に起きた。
苺は日に日に大きくなり、丸かったのが苺の形になってきている。ひとつはまわりを覆っている種に赤味が差してきている。
朝ごはんを食べ、散歩に出る。
どこを見ても緑がくっきりとして、空気が澄んでいるのが分かる。
走るスイセイの横を、大股の早足で歩く。ブラジャーするのを忘れたので。
農家の自動販売機でほうれん草と小松菜を買った。
上水沿いには今、ものすごくいい匂いのする蔓性の白い花が咲いている。
ところどころ黄色いところもあり、小さい蘭のような形で、麦わら帽子に飾ったら似合いそう。何の花だろう。
なんとかカヅラという感じがする。
今朝の中央公園は、青い空にぽっかり雲。
紙ひこうきを飛ばしているおじさんたちが、もう集っていた。
帰ってすぐに「ロシア日記」の仕上げをやる。
そろそろできてきた。
今、ネットで花のことを調べてみたら、スイカヅラでした。
夕方、「ロシア日記」の挿絵の相談をしに川原さんがきた。
ふたりで話しているうち、いいアイデアが。
私のアーティストブックも見てもらう。
川原さんに会うと、ついビールでも飲みたくなってしまうのだけど、ぐっと我慢した。今スイセイは事務仕事をがんばっているので。
6時からは、いつものように『まる子』と『サザエさん』。
夜ごはんは、水菜のお焼き(辛子じょうゆ&ピリ辛テンメンジャン)、春雨サラダ(ゆうべの残り)、なすのオイル焼き(しょうがじょうゆ)。

●2013年5月10日(金)晴れ

先週は日記を書けなかった。
開いてくださった方、ごめんなさい。
何をしていたかというと、料理本の文章やレシピを書いては、写真を切り貼りしていた。
やりながら思いついた言葉はメモ用紙に書きとめて、これも貼る。
朝から晩までやっていると、作る料理がいちいち試作のようになって、新しく気づいたレシピのコツなども、どんどん書き込んでいた。
立花くんから教わったのだけど、こういうののことをアーティストブックというらしい。
頭の中の引き出しを全部開け、想像をめぐらしながら大きな紙(雑誌が送られてきた封筒を開いたもの)の上にはき出すのは、これまでもよくやっていたけれど、束になった紙でやったのははじめてだ。
いつも束をそばに置いて、何度となくめくっては書き込みもするけれど、立花くんからは「立ち止まらず、どんどん前に進め」と教わった。
じわじわと厚みが出てくるのがとても嬉しく、励みになる。
一冊分の資料が集まったら、本の卵のようなものができる予定だ。
私にとっては、これも「おこんじきさん」の一種だ。
「おこんじきさん」は子供のころからの得意な遊びだから、楽しくてたまらない。
連休中は1日だけ、近所のみんなが集ってナツコんちでタコ焼きパーティーをした。
夕方からベランダでビールを飲んだ。楽しかったなあ。
でも、そろそろ「ロシア日記」にもとりかからねばならず、ガムテープをべりべり剥がすようにして、今週から書きはじめている。
それもやっと、形になってきた。
今日、明日、あさってで仕上げをして、月曜日にお送りする予定。
このところの私は、毎朝『0655』で目覚め、ベランダの苺に水をあげて洗濯をし、8時からは『あまちゃん』。8時半に朝ごはん。
早起きが続いているのは、苺と『あまちゃん』のおかげだ。
そして最近は、午前中に散歩をして、走ったりもしている。
この間まで肌寒いほどだったが、気づけば初夏のまっただ中、上水沿いの土手も夏草が伸びはじめ、野バラもすっかり開ききってている。
夏みかんの花も咲いている。
きのうあたりから栗の花の匂いもしはじめ、空気がむわっとしている。
今年は、大家さんのジャスミンの方が、ずいぶん先に花盛りとなった。
さて今日も、「ロシア日記」をがんばろう。
夜ごはんは、ささみのチーズカツ(せんキャベツ添え)、焼きなす&焼きピーマン、ワサビ漬け、豆腐とねぎのみそ汁、白いご飯。

●2013年4月23日(火)晴れのち曇り

ちょっと肌寒いけど、気持ちよく晴れている。
きのうシルバー人材センターで、古くて頑丈なソファーに一目惚れし、買うことにした。
それをこれから山の家に持ってゆく。
スイセイはきのうのうちに軽トラのレンタカーを予約して、急きょドライブとなった。
わーい。
スイセイが植えた柿の木も気になるし、イチゴも気になる。
朝9時にシルバー人材センターにひき取りにゆく。
スイセイは、どうせ軽トラを借りるのならと、ずっと目をつけていた美容院用の椅子や(部品を何かに使うのだそう)、ラックなども買った。
山の家の近くの「Jマート」で、ベニア板も買って運ぶのだそう。
10時過ぎに高速に乗った。
山々は今、いろんな色合いの緑がもこもこしている。抹茶色のは広葉樹、深い緑色は針葉樹。
秋は秋で、紅葉した木がパッチワークみたいになるけれど、今は緑の紅葉だ。
11時25分、談合坂サービスエリアでコーヒー。
山の家に近づくと、野生の藤の花があちらこちらで咲いている。
蔓でいろんな木に絡まっているらしく、緑の中の薄紫がとてもきれい。山桜に負けないくらいきれい。
うちのアマゾンにも藤があったから、もしかしたら咲いているかも。
川沿いのいつもの道を走っているとき、「この辺にくると、なんだかくすぐったいのう」とスイセイが言った。
そこらは山の家の赤い屋根が見えてくるあたり。胸がきゅんとなってくすぐったいのだそう。私も同じだ。
買い物をしながら遠回りしてきたので、2時ちょうどに着いた。
庭はスギナとカラスノエンドウがはびこり、ドクダミの若い葉っぱも出てきている。
スイセイがずっと前に植えたクローバーが、立派な葉を広げていた。
いちどはまったく絶えてしまったように見えたのに。根っこが生きていたのだな。これは、武蔵野市のクローバーを移植したもの。
柿の木も若葉が伸びて立派に育っていた。スイセイは、まわりのススキを全部刈ってあった。
おかげでそのあたり一帯がとてもすっきりし、庭からお墓まで見渡せるようになった。きっと昔は、ご先祖さんと暮らしているような気持ちで、庭に立つたびこんなふうに見上げていたんだろうな。
イチゴもたくましく育っていた。うちに持って帰ったのより、ずっと元気で大きい。もう、緑色の小さい実をつけているのもある。
もうひとつ感心したのは、外の水道のところにビワの木が勝手に出ていたこと。1メートルほどもあり、葉っぱもちゃんとしたのがついている。私はとても嬉しい。
庭に椅子を出し、梅干しのおにぎりとスーパーで買ったのり巻きでお昼ごはん。デザートは甘夏とバナナ。
穴の空いた畳の部屋に、スイセイがベニヤ板を敷き詰めている間、私は庭の草取りをする。
フキとヨモギの若葉も摘んだ。ヨモギはお茶にしようと思って。川原さんへのお土産に、イチゴも1株掘る。
ベニアの床の上に、ふたりでソファーを運び入れる。
私がごろんと横になれるくらいゆったりと大きなソファーは、焦茶色の本皮で、ワニみたいな格子の皺が入っている。
使い込まれ、とてもいい味が出ている。30年か、もしかするともっとかも。
シートの裏側には、白っぽい犬の毛がついていた。
このソファーを使っていた家族の飼い犬が、そこに潜って寝ていたのかな。きっとそこは、安心する場所だったんだろうな。
私は、とてもうれしい。生まれてはじめて、心から気に入ったソファーを手に入れることができた。
今は仮のベニア板だけど、このソファーが新しい家の床に置かれるようになったら、庭の緑をこんなふうに寝そべったまま眺めたりするんだろうか。雨の日はどんなだろう。雪の日は、どんな音がするだろう。
4時に出て、東京へ。
短い間だったけど、山の家の息吹きをいっぱい吸って帰ってきた。
夜ごはんは、山の家にいるみたいなつまみを作り、ビールで軽く乾杯。
きゃらぶき、さつま揚げ、きゅうり&大根の味噌添え、のり巻きの残り。

●2013年4月21日(日)雨

雨が降っているとつい寝坊をしてしまう。8時半に起きた。
ストーブをつけ、いつものように窓の外を見ると… イチゴが生き返ってる!
このイチゴは、スイセイが山の家の畑から土ごと持ってきてくれたもの。
植木鉢に移し替え、毎日水をあげてめんどうをみていたのだけど、いつ見てもしんなりして元気がなかった。
私は植物を育てるのが苦手だから、あきらめかけていた。
きのう、ためにしに鉢ごと雨に濡らしておいたのがよかったのかも。そうか、水が足りなかったんだ。
スイセイがプラスチックのトレイ(ハーブが入っていた)を土の部分にかぶせておいてくれたので、寒さ対策にもなっている。
花が散ったあとのガクに包まれているところも、なんとなしに丸く膨らんでいる気がする。
かわいいなあ、これがイチゴになるのだろうな。
このまま観察を続けよう。
今日もまた、原稿の続きをやる。
夜ごはんは、肉じゃが(牛こま、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、絹さや)、ピーマンとハムの炒めもの、もやしのみそ汁、白菜漬け、豆ごはん。

●2013年4月20日(土)曇りのち雨

寒い。ストーブをつけるほどではないにしても、これから冬がくるのかと間違えてしまいそうな寒さだ。
おとついまで緑がサワサワで、散歩がてら中央公園でビールを飲みたいねと、スイセイと話していたのに。
朝ごはんを食べ終って、「小説新潮」と「はなべろ読書記」のゲラ校正。
急いでやることがとりあえずは何もないので、ウズベキスタンの旅のしおりなど読む。
旅程も読み込む。実際にそこにいる自分と川原さんのことをイメージしながら。
今夜は寒いのでラーメンにするつもり。あとで、買い物にもいってこよう。
行ってきました。
ちらほらと小雨が降っていた。
粉雪に変ってもおかしくないような寒さだった。
冬ほどには厚着でないから、体感温度がそう感じさせるんだろうけど。
帰ってから、きのうの撮影で残った野菜を刻んだり、キャベツを刻んだり。これは、朝ごはん用の塩もみサラダだ。
コーヒーをいれ、さ来月分の「はなべろ読書記」を書きはじめる。
こんどは『かのこちゃんとマドレーヌ婦人』だ。
夜ごはんは、みそラーメン(前に鶏肉を焼いたときに出た脂でキャベツ&もやしを炒めた。ゆで卵、メンマ、コーン)、菜花と小松菜のおひたし(おかか醤油)。

●2013年4月13日(土)快晴

きのうは、立花チームの撮影の最終日で、終ってから打ち上げになった。
みどりちゃんも電車で来ていたので、ひさしぶりに一緒に飲めた。
楽しかったなあ。
2時半くらいにみんなを送り出し、顔だけ洗って布団に入ったのだけど、とつぜん涙が噴き出した。
毎月、心震わせてきた撮影も、もうこれで終ってしまうんだなあと思って。
すべては一期一会、流れていってしまう時間をとめることはできない。
『高山なおみの料理』のときもそうだったけど、このメンバーが集って本を作るのは、もうこれで最後かもしれないと毎回思う。
スイセイが山の家に出かけていていなかったし、急にひとりになって、ぽっかり穴が空いたようになった。
せっかくなので、真っ暗な中、「あーーー」と声を上げて泣いた。
今朝は8時に起き、「じぇじぇじぇ」(朝ドラ『あまちゃん』のこと)を見てまた泣く。湿っぽくなっていて、いやだなあ。
布団の中で、「はなべろ読書記」の仕上げ(立花くんの『かたちのみかた』について書いた)や、川上さんの解説の校正などやる。
午後、みどりちゃんが器を取りにきたので、手みやげのケーキをいただきながら、ふたりでお茶。
撮影のことやらそれぞれの仕事のこと、これからのことなどいろいろ話した。
窓の外は緑がきらきらして、いい風が吹いていた。
みどりちゃんを見送りがてら外に出ると、玄関の杏の木は、青い実が膨らんでいるのだった。
葉っぱが増えてきたなあとは思っていたけれど、こんなになっていたとは。
この1、2週間、私は何をしていたんだろう。
散歩にも出ず、夢中で文を書いたり撮影の支度をしたりで、ちっとも外を見ていなかった。大家さんのどんぐりの花も、気づけばすっかり簪になっている。
料理本は、これから文とレシピを書くので、私の役目はまだ終っちゃいない。
赤澤さんも立花くんも、川原さんも、それぞれがやるべき仕事は、まだまだこれからだ。
明日からまた、前に進もう。
4時ごろ、しいたけと大根のみそ汁を作って、撮影の残りのおにぎりを食べ、布団を敷いてごろごろ。
スイセイにも電話した。声の後ろで風がビュービュー吹いているのが聞こえた。
きのうスイセイは、柿の苗木を植えた。朝晩は冷え込むけれど、昼間はカラッとしたいい天気で涼しく、作業がしやすいのだそう。
直売所で買った野菜で、ごはんもちゃんと作っているらしい。きのうは菜の花ラーメン、今朝はストーブで煮ておいたおでんにお蕎麦を入れて食べたそう。
私の方は、だらだらとテレビを見ながらせんべいなど食べたので、夜ごはんはなし。
スイセイは明日帰ってくる。

●2013年3月31日(日)雨のち曇り

寒い日曜日。朝からストーブをつけている。
28日、29日と料理本の撮影だった。
前回にも増してまたしてもとても楽しく、濃く、夢中で駆けぬけた。
きのうはぐったりとくたびれ、布団の中で立花君の『かたちのみかた』を読んだ。
眠っては読み、眠っては読み、最後まで読み切ったところで涙がこぼれた。
この本には、ものづくりの人だけでなく、万人に通じる大事なことが書いてある。
感想文を『はなべろ読書記』で書いてみたい。書けるかどうか分からないけど、やってみようと思う。
今日は、「小説新潮」の原稿書き。3時半には終り、川上さんの文庫解説の仕上げをやる。
あとで、散歩がてら買い物にいってこよう。
桜はどうなったろう。きのうと今日の雨で、ずいぶん散ってしまったかな。
ぐるっとまわって、エプロンをクリーニングに出し、帰ってきた。
桜はまだまだ満開で、とても綺麗だった。
はらり、はらりと散る花弁が、粉雪かと思うほど寒かった。けど、空気がつーんとして、気持ちよかった。
夜ごはんは、若竹煮(ワカメ)、お刺身(カマス、めじまぐろ)、あさつきの辛子酢みそ、ふきのみそ汁、白いご飯、ケチャップごはん(私だけ。川上さんの小説にあった)。
今夜はNHKで見たいテレビがめじろ押しだ。

●2013年3月24日(日)曇り時々晴れ

7時前に起きた。 朝ごはんは8時。いつもより1時間以上早く食べたせいで、午前中の長いこと。
明日の「はなべろ読書記」の撮影や、来週からの料理本撮影の支度をのらりくらりとやっていても、まだ午前中なのだった。
午後からは川上さんの文庫の解説を書きはじめる。
午前中は肌寒かったけど、陽が出ると暖かい。
スイセイはベランダに椅子を出し、繕い物をしている(シュラフに穴があいたのを直しているらしい)。眼鏡をかけた上から、頭にかぶる式のルーペをはめて。 今日はずいぶん静かだな。ハルも外に出ていない。
みんな、お花見に出かけたのだろうか。
もうひとふんばり書いたら、あとで明日の仕入れをしがてら、桜を見てこよう。
近所の並木道をてくてく歩く。
ここは、人が少なくていい。中学生の3人組が自転車をはべらせだらだら歩いている(桜など見ていない)ほかは、ぽつりぽつりと2組くらいの親子がのんびり歩いている。
花曇りというのは、今日みたいな日のことをいうんだろうか。
満開で咲き乱れている桜も、白っぽい空のせいで花の精気が薄ぼけて、なんとなしにやわらかい。
大通りの方は車の往来も激しく、歩いている人たちもセカセカとせちがらい感じ。ここの桜は、あまりきれいでない。
買い物をして帰ってくる。
夜ごはんは、ラム肉の塩焼き(柚子こしょう)、そら豆の白和え、ふきのとうの佃煮(「長男堂」さんにいただいたふきのとうで)、しらたきとちくわの炒り煮、芽かぶ、小松菜のみそ汁、白いご飯。

●2013年3月14日(木)曇り

すごく寒い。
ゆうべは、沁み入るような雨の音を聞きながら眠った。
東京で聞く音と違うのは、土のせいだろうか。地面の奥深くまで染み込むような、静かでやさしい音がするのだ。
夜中は風が強かった。
寝ぼけながら聞いていて、ここの風は、山を下りてくるのだなと分かった。
山を転げ落ちるような、ピューッ!という勢いある音がする。
ノックみたいな音がして目が覚めたのだけど、それは家が鳴っている音なのだった。
ただただ眠たく、雨や風と自分の体が混じり合うような感じがして、私はちっとも怖くなかった。
地震もあったけど、ゆさゆさと揺れる家の体に任せていれば、怖くないのが分かっていたから、すぐにまた寝入ってしまった。
スイセイは夜中にいちど起きて、おそばを作って食べていた。
そのときすでに、もう十分眠ったなと思ったのだけど、時間を聞いたら1時半だった。
きのうは温泉へは行かず(休みだった)、早めに夜ごはんを食べた。
何を食べたのだっけ。どうしても思い出せない。
日本酒をちょこっと飲んだら、私はすぐに酔っぱらってしまい、瞼がくっつきそうになって、8時半には寝床に入った。
私はきのう、畑のススキのバッコンを、苺畑のまわりしかやっていないのに、なんだかものすごくくたびれたのだった。
スイセイもすぐに寝た。
今日は曇りで、とても寒いので、なかなか寝床から出られず、ずっと本を読んでいた。
本は、川上弘美さんの『パスタマシーンの幽霊』。
帰ったら、文庫の解説を書くので。
スイセイはとっくに起きて、仮設トイレを作っていたみたい。
9時にようやく起き、きのうの続きの「気ぬけごはん」を書く。
外に出るには、真冬用のダウンジャケットを着込まないと寒い。
朝ごはんは、おでん(大根、白菜、さつま揚げ、ゆで卵、厚揚げ)。
午後、スイセイの仮設トイレができ上がった。
自分で水を流す方式の、水洗トイレだ。
銀色テント(自転車置き場用だそう)に囲まれた、基地みたいなトイレ。
シートを抜き取った腰掛けに、三角錐の白いもの(カラーコーンというらしい。よく道路工事の目印に立ててあるやつの白いもの。三角の先を切ってある)を逆さに据え、穴のところにはゴムのテニスボールが仕込まれている。これが便器。
テニスボールの上から用を足し、バケツの水を勢いよく流すと、吸い込まれるようにバッと流れ落ちる。新幹線や飛行機のトイレみたいに。
ひもで吊るしてあるテニスボールを引っ張って、もとの位置に戻せば、またぴたりとふたができ、匂いもしない。白くてきれい。
すごいなあスイセイ。水洗トイレまで作ってしまった。
私はまだ、大の方は怖くてできないけど、小は2回した。
エスキモーのお宅へお邪魔したら、「用足しはここよ」と、奥さんに連れてこられたようなトイレ。イベントみたいでなんだか楽しい。
昼ごはんは、サラダ(白菜、にんじん、ゆでほうれん草)と、カレーライス(レトルトの。土鍋でご飯を炊いた)をコッヘルではじめて食べた。
私はまた文の続き。
さっき見にいったら、スイセイはトイレ近辺の地面から飛び出していた切り株を、根っこごと掘り出していた。赤と黒の鉄の機械(テコらしい)で。
根っこは何本かに枝分かれしていたので、途中で切れたのもあったけど、1本は先っぽの尖ったところまで、スーッとごぼうのように抜けた。
この切り株は、通るたび私がけつまづいていたところだ。
私は、苺畑のススキのバッコン。
明日は東京に帰るので、スイセイはジープの棚を直しつつ、焚き火でゴミを燃やしている。
5時過ぎに温泉へ。
帰りに山梨の地酒をお土産に買う。『七賢人』というお酒。
新しい料理本の撮影が終ったら、みんなでこれを飲もう。
夜ごはんは、湯豆腐(ほうれん草)、鶏手羽先のジリジリ焼き(出てきた脂でピーマンを炒めた)、ふきのとうみそ、ハモのさつま揚げ(焼き目がこんがりつき、ぷっくり膨らむまでフライパンで蒸し焼きにした)、ショルダーベーコン&ほうれん草炒め、ビール(スイ)、日本酒(私)。
湯豆腐がたまらなくおいしかった。
いつもの豆腐は大きくて食べ切れないので、小さいのが3パック入った『白州豆腐』というのを買ってみた。なめらかで、大豆のうまみがしっかり残り(やたらと濃厚すぎないところもいい)、私は塩だけで食べた。
こんなにおいしいのに、120円だった。
400円とか、500円もする豆腐みたいに、「私はこんなにおいしいの。特別な豆腐なのよ」といばっていないところがいい。
カッパえびせんみたいに、どこにでも売っているようなただの豆腐だけど、職人さんはふつうに真面目に作っているから、おいしいのだ。
夜、懐中電灯を持ってふたりで仮設トイレに行った。
真っ暗だった。
外はうんと寒いのに、トイレの中は静かでほの暖かい。
9時半に寝る。

●2013年3月13日(水)晴れ

夜中は暖かかったけれど、明け方冷え込んで目が覚めた。肩や顔がすごく寒い。
スイセイは、まだ暗いうちから起き出して、何かしている。
何時かと聞くと、4時だそう。
そのうち外へ出ていった。
私は夢をみたり、覚めたりのくり返し。
台所の庭で作業しているスイセイの音が聞こえる。きのうの続きで、地面を平らにしているのだな。
コツコツ、カツカツ、コツコツ……
子守唄みたいに聞こえる。
7時のサイレンが鳴って、7時半にようやく起きる。
歯を磨きに外へ出ると、スイセイは私の顔を見るなり、嬉しそうに説明する。
雨水が自然に流れるよう、塀からなだらかな傾斜をつけながら、地面をならしたのだそう。
石ころもずいぶん取り除かれている。どかした大きな石を、私に見せる。
ここにスイセイは、仮設トイレを作ろうとしているらしい(水洗のタンクの穴がある)。
朝ごはんができたので呼びにいくと、今度は畑で作業をしていた。
スイセイは山の作業ができるのが、嬉しくてたまらないそう。戻ってくるなり目をキラキラさせてひとしきり喋ってから、ハーッとため息をついて、ようやく食べはじめた。
朝ごはんは、サラダ(大根、にんじん)、フィッシュバーガー(ホイルに包んでストーブで温めた)、ポタージュスープ(インスタントの)、バタートースト、ミルクコーヒー(私)、紅茶(スイ)。
窓をいっぱいに開け、私は日記を書いている。
スイセイは、山へ測量をしにいった。
今日は、夕方から雨になるらしい。
あとで「気ぬけごはん」を書きはじめよう。
作業は、お昼を食べたらにしようと思う。
昼ごはんは、タコ焼き(スイ/ストーブで温めた)、ケチャップ炒めのスパゲティ(スーパーの/スイ)、昆布おにぎり(私)、おでんの大根(私)。
体を動かしていないので、私はあまりお腹が空かない。
スイセイはもりもり食べてよく喋り、今は昼寝している。
お昼前から、急に風が強くなってきた。
文を書いていたら、花火の音が鳴った。ボン!ドッカン!と、お腹に響く音だ。
風の音もビュービューと激しいけれど、ここいらは花火の音も大きいのだな。
外は、びっくりするほど風が吹いている。トイレに入ると、便器の中からも風が吹き、お尻がひやひやする。

●2013年3月12日(火)晴れ

6時50分に起きた。今朝もまた『0655』を見ることができた。
「電車で化粧はやめなはれ」を歌いながら起きる。
今朝は、空気がひんやりしている。陽の当たるところは暖かいけど。
スイセイは大荷物をジープに詰め込むのに手間取って、20分くらいかかって、針金やテープでしばったりしていた。
8時45分に出発。9時半に調布インターに乗る。
わーお、富士山だ!
美穂ちゃんの絵(「小説新潮」に描いてくれた)とまったく同じ富士山だ。挿絵を描くために、美穂ちゃんはここまで見にきたんだろうか。
八王子の辺りで、でっかい富士山の白い頭が見える。
裸の木々は、もう茶色ではない。枝の先に、ピンクと黄色の絵の具を薄く塗り重ねたような感じ。
うっすらと雪が残っている山々、あれは南アルプスだろうか。
遠くの山以外の雪は溶けた。
ラジオでは、少年少女合唱団が「仰げば尊し」を歌っている。
談合坂インターで、いつ食べてもいいように私はおにぎり(梅、昆布)とドーナツ、スイセイはタコヤキを買う。コーヒーを飲んでひと休み。
走りはじめると、片栗粉をていねいにまぶしたみたいな富士山がときどき見える。
頭の角がちょっとだけ見えたり、そうかと思うと、左側にぬっと現われる。
そのたびに私は「はーっ」と声が出る。
「富士山て、みいにとっては双子みたいに大事なもんかもわからんの。生まれたときからいつも目の前にあったわけじゃし」
そうなのかも。
ぬーっと現れ、いつでもそこにいる富士山。
ちょっとガスっただけで見えなくなるけれど、曇りの日も雨の日も、いつでもそこに確かにあり続けている。そのことの、安心。
12時ちょっと過ぎ、山の家に着いた。
庭の梅の花が咲きはじめている。ピンクと白の、千歳飴みたいな色合い。
こんな季節に来れたのは、はじめてのことだ。
スーパーで買ったお弁当を、花を見上げながら庭で食べた。
昼ごはん/スイセイ(鮭、えびフライ、コロッケ)弁当、私(ちらし寿司)。
そうか、うちの梅はピンクと白があるのだな。花の色が違うということは、実の種類も違うのかも。
ここに住むようになったら、実の色づき具合や大きさを観察しながら過ごせるのだな。ふたつに分けた容器で梅干しを漬けて、味の違いを確かめたり。
庭はススキらしいものが見当たらず、短い丈の、いかにもかわいらしい小さな花を咲かせそうなやわらかい草が、ちょろちょろと出ている。
草の種類が入れ代わったみたい。このまま伸ばして様子をみよう。
ふきのとうは、まだ小さい。ふたつみっつ花が開いているのがあるけれど。
家のまわりをまわってみるが、あちこちとてもきれいになっている。
前回、スイセイはひとりで来たのだけど、頑張って作業した形跡があちこちにある。
私はいつものように掃除。くつろげる場所を作る。
おでんを煮ながら、今こうして日記を書いているところ。
6時前に温泉から帰ってきた。
空はまだ、薄明るい。
厚着をして、だんだん暗くなる空を眺めながら缶ビール。
椅子に腰掛け、頭をガクンと後ろに倒し、空と梅の花を眺める。
黒い鳥が集って、空を渡ってゆく。あれはカラスだろうか。
うす桃色の梅の花は、暮れゆく空を背景にしてぼんぼりのよう。
ここに来たのは4ヶ月ぶり。
山の空気のこの感じ、私はすっかり忘れていた。
だいたい、家が山に囲まれているというだけで、すごいことだ。
東京にも空はあるし、木も、土もあって、私は十分満足して暮らしているのだけど、ここに来ると、東京の自然は作り物みたいに感じる。
まだまだ私たちは、東京で仕事をしながら生きてゆくのだけど、そのうち少しずつ山の家の比重の方が濃くなって、いつかはこの場所に腰を落ち着けるのだな。
そういう強いイメージは、前にはなかったこと。
それは、スイセイのおかげでずいぶん平らになった畑の斜面と、梅の花のせいだ。
縁側に腰掛け、梅の花を愛でている自分の姿がありありと思い浮かんだのだ。
空が水色のときには、目をこらさないと分からないくらいだった小さな光は、暗くなるにつれ強まって、いちばん輝く星になった。
左隣には、とてもよく知ってる星座の形。オリオンだ。
夜ごはんは、山菜天ぷら(ふきのとう、よもぎの若葉根っこつき、タンポポの若葉)、わさび漬け、にんじん&大根スティック(味噌)、手羽元の塩焼き(塩を早めにふってジリジリ焼いていたら、出てきた肉汁が焦げてカリカリチーズみたいになった)、おでん(ちくわ、大根、さつま揚げ)、ビール。
今朝4時起きだったスイセイは、山に来れた喜びをさっきまで熱く語っていたのだけど、8時を過ぎたころシューッと気がぬけて、ネジが切れたみたいになった。
9時前に寝る。

●2013年3月11日(月)晴れ

朝ごはんを食べながら、「今日は喪の日じゃのう」とスイセイが言った。
きのうの砂煙は凄まじかった。
大慌てで布団やら洗濯物をとり入れたが間に合わず、部屋の中まで入り込んで、あっちこっちジャリジャリする。
今朝は、それを掃除する。すみずみまで丁寧な気持ちでやる。
腹の底に重しをおき、雑巾がけ。
夕方、郵便局まで散歩。
木蓮の蕾の皮みたいなの(産毛が生えた薄茶色の)がパッカリ割れ、白い花弁が覗いていた。
夜ごはんは、鮭のかす漬け、厚揚げとかぶの煮物、かぶの葉のおひたし、しらすおろし、アオサ(奄美の時代ちゃんが送ってくれた)、白いご飯。

●2013年3月8日(金)晴れ

今朝はひさしぶりに『0655』を見た。
「toi toi toi」を歌いながら起きる。
『0655』は、いつ見てもやっぱりいいなあ。
布団を干すとき、「ツクピー、ツクピー」とさえずりが聞こえた。
青空に響き渡る声。
声のする方を見ると、空き地のはずれの大木のてっぺんに、ちょこんと小さく黒いのが見える。あれはシジュウカラ?
シジュウカラの声が聞こえると、春がくる。
ゆうべもまたあまり眠れなかったのだけど、それはやりたいことがあるから。
きのうのうちに「はなべろ読書記」の原稿を仕上げてお送りしたので、ひとつ荷物が下りた心地。今回は、4日間かかりっきりで書いた。
今日から「気ぬけごはん」をやろうか、それともあとで、『犬が星見た』のコピーをしにいって、旅ノートを作ろうか。
朝の天気予報によると、今日は22度まで上がるそう。
それじゃあまるで、夏じゃん。
夜ごはんは、カキと菜の花のクリームスパゲティ、かぶと白菜のサラダ(しらすをのせた上から玉ねぎドレッシングをかけ、黒こしょうをひいてみた。なかなかおいしい)。

●2013年3月3日(日)曇り

9時に起きる。
このところ、12時前には寝ているのだけど、どうもうまく眠れない。
暖かくなってきたせいか、首のつけ根の辺りが火照って寝苦しい。
これは更年期の症状で、季節の変わり目だからだと思う。
きっと、自律神経がうまいこと働かなくて、体温調節ができないのだ。
朝からそんな話をスイセイにすると、「春になると植物が芽を出すみたいに、みいの体の奥にも、春を感じる力があるんじゃの」という。
昼間に比べて夕方の方が寒くなったとか、きのうより今日の方が暖かいとか、そんなふうにしか気温の変化を感じないものだけど、もっと長いスパンで植物みたいに季節の変化を感じとる能力が、人にはもともと備わっているんじゃないか……という意味らしい。
自律神経の働きが鈍くなったおかげで、私は何かがはずれたのかも。
へえ、そうか。そう思えばいいんだな。
更年期というと、悪いものみたいに思いがちだけど、自分の体の変化について、それは植物や動物に置き換えるとどうなのかとか、ほかの人たちはどんなふうに過ごしているのかとか、年をとるってどういうことなのか、もっともっと私は知りたい。
午後までに「ロシア日記」と「小説新潮」の校正を終え、宅配便に出した。
今日はひな祭り。『サザエさん』を見るのが楽しみだ。
夜ごはんは、手巻きずし(真ダイ、本まぐろ、いか、ブリ、タクワン、納豆、きゅうり)、ほうれん草のおひたし、はまぐりのお吸い物(三つ葉)。食後に『ダーウィンが来た!』を見ながら道明寺。

●2013年2月26日(火)晴れ

9時半に起きた。
ちょっと寝坊だけど、ようやくぐっすり眠れた。
朝ごはんがいつもより遅くなって申し訳ないなあと思いながら、スイセイの部屋を覗くと、誰かに電話をしている。
図がいっぱい書いてあるノートを開き、「360度の回転軸の支点は、高さが100ミリなんですよ」なんて言っている。
お呼びでないので、ひとりで先に食べる。
「小説新潮」の原稿書きをぎりぎりまでやって、4時からはあぜつさんと打ち合わせ。次回のロシア旅行について。
川原さんを迎えにゆきつつ、吉祥寺の喫茶店へ。
 おととしはイルクーツクまで行ったので、その続きの旅を6月くらいに予定している。
もしかするとウズベキスタンに行けるかも。
帰ってから、『犬が星見た』を読み返す。
タシケント、サマルカンド、ブラハ、砂漠の情景が、ふつふつと煮えたぎる鍋のように目に浮かぶ。
ウズベク帽をかぶった浅黒い男たち、色とりどりの民族衣装に身を包んだ目つきの鋭い女たち。
お盆のような丸いパン(中央がへこんでごまがふってある)、ピラフの大鍋、トマト味の肉うどん、「シャシリック!シャシリック!」と叫ぶ羊肉の串焼き売り。ホテルの中庭で、地元の楽隊の演奏を聞きながら食べる夕食。
お風呂から上がっても、ずっとガイド書を読みあさっていた。
今回はシベリア鉄道には乗れないけれど、ウズベキスタンにも寝台車が走っているらしい。
夜ごはんは、崎陽軒のシウマイ弁当(私)、牛丼(スイ)、ほうれん草と小松菜のおひたし、麩とねぎのみそ汁。

●2013年2月23日(土)晴れ

きのうは2日目の撮影で、おとついにも増して大いに興奮した。
まさに、料理が皿からはみ出したような撮影だった。
7時半くらいにみんなが帰ってからは、抜け殻みたいになって、お風呂に浸かった。
泥のように眠って、5時くらいに目が覚めた。まだ撮影が続いているかもしれないと、体のどこかが警戒しているのだな。
9時に起きたのだけど、なんとなしに起き上がるのがもったいなくて布団の中で読書。
今日のような日に読める本は、いしいさんの『その場小説』。
頭も心も体も、場所とか、人の輪郭とかも関係なしにビュンビュン。
ぶっと噴き出しては大笑いし、そのあとぽろんぽろんと涙がこぼれる。
お昼に起き、「ロシア日記」の校正をして、3時にひとりで散歩に出る。
暖かいので、上着を1枚脱いで歩いた。
どの木もどの木も、枯れ枝に芽がふくらんでいる。
葉っぱの赤ちゃんがねじれたようになっている木や、ピンクの蕾らしきものも見える。
見えないところで春の支度をしていたのが、我慢できずにはみ出してきた。
自然界はいつの間にこんなふうになっていたのか。
もうすぐ、騒がしい季節がやってくる。
エプロンをクリーニングに出し、桜餅を買って帰ってきた。
夜ごはんは、お粥と、撮影の残りのおかずいろいろ。しらす、うどのきんぴら、じゃこ天(立花君の助手、角ちゃんのお土産)、うどの辛子酢みそ、小松菜とほうれん草のおひたし。
食後に、テレビを見ながら桜餅。
明日は2度目の「Zちゃん」。今夜も早めに風呂に入り、早寝する予定。

●2013年2月22日(金)晴れ

きのうから、また新しい料理本の撮影がはじまった。
前回にも増して楽しくてたまらず、ぐっとくたびれたので10時過ぎには布団に入った。
目をつぶってすぐ、ぐーっと泥に誘われる感じがあったから、よく眠れるかなと思いきや、やっぱりそんなことはなかった。
撮影のことを、ああだこうだと考えているわけではないのだけど、ただただ楽しみでたまらず、眠れない。
遠足の前の夜みたいに。
ようやくうとうとしたと思ったら、3時に目が覚めてしまい、それからはまったく眠れなかった。
今回とくに気づいたのだけど、撮影前の私は低空飛行。仕入れで自転車をこいでいるときも、スーパーで買い物をしているときも、重しをうんと下にして、怪我のないように、ゆっくりゆっくり動いている。そして、低い声を出す。
たぶん無意識に、精神統一のようなことをしているんだな。
自分の中を空っぽにするというか、透明にするというか。そんな感じかもしれない。お祭りの前の禊というか。
できるだけまっさらな体でいどむことのおもしろさ。
きのうは料理をしている最中、ことばがうまく出てこなかった。
それはきっと、ことばでないところが活発に動いているからで、でも心は、湖の水面のように静か。
川原さんの様子も、なんとなくそんなふうに見えた。外からは分からないけど、感受性がバリバリで、体の中はすごい勢いで巡っていているみたいな。
今朝、洗濯物を干すとき、飛行機雲がずーっと伸びていた。
青い空の端から端まで。2本並んでいるのだけど、少し違う角度で並んでいる。
さーて、今日もふんばるべ。

●2013年2月17日(日)曇りのち晴れ

このところ、ずいぶん寒い日が続いている。
ついこの間まで、昼間はストーブをつけなくてもいいくらいだったのに。
こうして三寒四温をくり返しながら、春へと向かう日々。
朝ごはんを食べ終ってすぐ、ひとりで散歩に出る。
無人野菜売り場(自動販売機の)で、夏ミカンが出ていた。ふたつ入って100円也。
迷わずに2袋買った。マーマレードジャムを作ろうと思って。
帰ってからは、新料理本のレシピ書き。
木曜日(バレンタインの日)は、木皿泉さんのドラマについて、川上弘美さんと対談をした。
私は先週『センセイの鞄』を読み直し、ツキコさんとセンセイが自分のまわりにいるのを感じるくらいはまっていた。
木皿さんの『すいか』も、はじめから見直して準備した。
『すいか』は、何度見てもやっぱりすんばらしく、好きで好きでたまらなかった。メモをとりながらもティッシュがびしょびしょになった。
当日は、本物の川上さんを目の前にして、ドキドキしっぱなしだった。
『すいか』について、どの場面やどの台詞が好きだとか、それは何でなのかとか、料理についても言いたいことがいろいろあったのに、頭の中がぐるぐるしてちゃんと喋れなかった。
対談が終って、私は用意していたお昼ごはんを出した。
メニューは、うどのきんぴら、春呼ぶちらし寿司(菜の花、いり卵、ちりめんじゃこ、青じそ、サーモンと帆立のヅケ、カンピョウと山椒の甘煮、川上さんのお土産のボンタンも散らした)、薄味なめたけ(刻みねぎ入り)、ひたし豆(山形の秘伝豆で)、白菜と青じその塩もみサラダ(黒酢玉ねぎドレッシング)、白菜のくったり煮(大きいままだし汁で煮て、あんかけにした)。
対談がはじまったころにはどんよりしていた空も、ごはんのときにはすっかり晴れていた。
川上さん、編集の女の子、ライターの女の子、カメラマンの男の子、スイセイ、私がいつもの大テーブルで料理を囲む。
なんだかそれは、『すいか』の食卓を再現したみたいでもあった。
料理だったら、私は思う存分できるのになあ。
今日は、6時ぎりぎりまでレシピ書きに専念し、はっと気づいて夜ごはんの支度。
『まる子』を見ながら、川上さんにいただいた伊勢芋の皮をむき、『サザエさん』を見ながらすり鉢であたった。
すりおろした伊勢芋は、指でつかむとひとかたまりになるくらいねっちょりとしていたのに、だし汁を多めに加えたら、ものすごくなめらかなとろろになった。
もったりと、絹のようにきめ細かく、長いもよりずっと色が白くて、泡立てた生クリームみたいに濃厚。
とろろ芋が大好物のスイセイは大喜び。
「うまいのう」「おいしー」と言い合いながら食べた。
夜ごはんは、鰯の酢煮、とろろ芋、冷や奴、ほうれん草のおひたし(おかか)、菜の花漬け、うどと油揚げのみそ汁、白いご飯。

●2013年2月10日(日)晴れ

今週の火曜日から私は実家に、スイセイは山の家に行っていた。
私は1泊だけど、スイセイは4泊5日できのう帰ってきた。
ひさしぶりに会えたので、話したいことがたくさんあり、朝ごはんを食べながらたてつづけに喋る。
「ロシア日記」の続きもやりたいのに、止まらなくなってしまう。
うちの母は今年で84歳になるのだけど、去年の秋ぐらいからガクッと元気がなくなった。
血圧が高めなことが分かり、急に具合が悪くなったり、何度も風邪をひいて寝込んだり。
これまでが元気すぎたから、本人もとまどっているようで、たまに落ち込んだりもするらしい。
そういうとき、私に電話をかけてきて暗い声で話すので、思い切って様子をみにいったのだ。
テレビの体操をいっしょにやったら、体もよく動くし、私の作った料理もよく食べる。
思ったより元気だったけど、耳はどんどん遠くなり、体もひとまわり小さくなった。
今まで盆暮れにも帰らずに、東京で好き勝手に暮らしてきたけれど、そろそろ私も親のめんどうをみなければならない年になったのだ。
老いてゆく母の変化について、今年のはじめから日記のようなものをつけている。
別れがそう遠くないことは、自分にとっても覚悟のいることなので重苦しい気持ちになるけれど、どうせならちゃんと向き合ってじっくり観察してみようと思う。
名づけて『てるこノオト』。
5時半まで「ロシア日記」に集中。
どうやら仕上がったもよう。
夜ごはんの支度をしながら『サザエさん』。
夜ごはんは、ブリ大根、菜の花のおひたし(だし、薄口しょうゆ、ねり辛子)、冷や奴、納豆(私だけ)、ワカメのみそ汁、白いご飯。

●2013年2月2日(土)曇りのち晴れ

朝のうちは曇っていたけれど、だんだん晴れてきた。
今日から「ロシア日記」にとりかかる。
バイカル湖畔のお宅にお昼ごはんをよばれにいったときのことを書いていて、ジャムの入ったピロシキを思い出した。
かわいらしいキッチンの様子や、料理を作ってくれた女の子のことなどもぐんぐん思い出す。
写真を見ているうち、食べたくてたまらなくなる。
気になって仕方がないので、粉を練って発酵させた。
スイセイはジャムパンが大好物だから、きっと喜んでくれるだろう。
散歩がてらいちごジャムを買いに出る。
春のように暖かい。ゆうべの天気予報で20度まで上がるといっていたけれど、本当にその通りになったな。
自転車の人も、歩いている親子連れも、なんとなしに浮かれている。
サフランとギョウザの皮とニラも買う。せっせと歩いて帰り着く。しっとりと汗をかいた。
今夜は、サフランライスを炊いてカレー、明日はギョウザだ。
明日は節分だから、豆まきもしなければ。
夜ごはんは、ビーフカレー(この間作った残り/牛スネ肉、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー)、サフランライス、サラダ(白菜、きゅうり、ルッコラ)。

●2013年1月27日(日)晴れ

ええ天気。 朝ごはんを食べおわって、スイセイと散歩に出た。
「あちこちよう晴れとるんじゃけど、やっぱり空気は冬じゃ、みたいな日じゃのう」
ここ2、3日のことなどいろいろ話しながら歩く。
背筋はまっすぐ、足もスイスイ進む。
おとつい、その前と、新しい料理本の撮影だった。
前回よりも、さらにもうひともぐりしたような、スリリングな撮影だった。
おとついは撮影が終って飲み会になって、2時過ぎまで飲んだので、きのうは1日中、寝たり起きたりしていた。
体はくたびれているんだけど、頭の中がぐるぐるしていたたまれず、噴き出してくるのをメモしたりして。
今日はやっと、ずいぶん着地しつつあるもよう。
中央公園の原っぱでは、凧揚げ大会をやっていた。
クレープ屋やカレー屋の屋台が出ていた。
真っ青な空に、白いスジがいくつもあって、太いのは、あれ? 飛行機雲かなと思うと、それも凧の糸なのだった。
うんと高いところに上っているのは、浮世絵みたいなのが描かれた四角く立派げな大凧か、どらえもんや、アンパンマンの絵の凧だ。
立派な凧は、ただ真直ぐに堂々と上がっているだけで、おもしろくない。
なんかおもしろいのはないかなあ…と、見上げながら原っぱをつっきっるうち、白いだけのハンカチみたいな凧をみつけた。
真ん中に丸い穴が空いているみたいに見える。
しゅるしゅると上ったり、風にもまれたりしながら、縦横無尽に上ったり、流れたりしている。
白い花弁が舞っているようにも、腕白坊主が遊んでいるようにも見える。
その白い糸の先をたどっていったら、さっきから大声でひとりごとを叫んでいるお兄さんだった。
「あーらおもしろい、風にのってますのってますのってます。あーれ、変な凧だなあ。変な動きだなあ。おもしろいなあ。誰ですかあの凧を作ったのは。あれは僕のです。僕が作った凧です」
いつものように水道の冷たい水をひと飲みし、帰ってきた。
あちこち念入りに掃除する。
お酒やワイン、ウイスキーの空き瓶も片づけ、雑巾がけをして、いつもの場所にソファーを戻す。
撮影の間中、みんなが履いていたスリッパの底は、汚れがたくさんついていた。
私が夢中で料理を作っている間、ずっとうちの床を踏みしめ、見守ったり、写真を撮ったり、絵を描いたりしていてくれたのだな。
それをタワシでこすり取り、ベランダに並べて干した。
明日からまた、いつもの仕事をがんばろう。
さーて、『まる子』を見んにゃ。
今日は、スイセイが夜ごはんを作ってくれる。
もやし入りサッポロ一番しょうゆ(スイ)&みそラーメン(私)だ。

●2013年1月18日(金)快晴

うちの前の空き地は、この間の雪で白銀の世界になっている。
少しずつ溶けて、小さな水たまりもところどころにあるようだけど、真っ白な平原にたまたまできた自然の池のように見える。
布団を干すときに見たら、今朝はそこに小さな足跡をみつけた。
猫だろうか、あ、3本スジの鳥らしきものもある。
ここはふだん人が入れないようになっているから、人の足跡はまったくない。
ここだけ、森の中の丘みたいな感じ。
朝からよく晴れて、光がキラキラしているのは雪に反射しているせいもあるのかな。
15日の「はなべろ読書記」の撮影のときも、部屋の奥まで光が入ってきてずいぶん眩しかった。
撮影のとき、薄暗いとカメラマンさんは白い板(レフ板というらしい)を当てたりするけれど、空き地の雪がその役目を果しているのだな。広大なレフ板だ。
今日は3時から「暮らしの手帖」の小さな撮影で、そのあと5時からは文庫本の打ち合わせ。
その前に、美容院に行ってきてしまおう。
行ってきました。
井の頭公園はまだたっぷりと雪が残り、午前中だからか人もほとんどいなくて、とても気持ちがよかった。
ここでも光が雪に反射して、キラキラしていた。
外にあるカフェの看板に、「ホッとワイン」と大きく書いてあるのを見たら、飲みたくなった。
水辺のベンチに座って、池を眺めながら。
雪の中にぽつんとあるベンチに腰掛け、池を眺めているおじいさんの背中が見えたので。
私もそこに腰掛け、ひとりでホットワインを飲んでみたい。
走っている人3人、犬の散歩の人1人としかすれ違わない。
キーンと冷たく、かぐわしい森の空気。
井の頭公園の森を、そこにいる人たちだけで独占しているような。
帰りに寄った「紀ノ国屋」も、気のぬけた感じがしてよかった。
クリスマスからお正月にかけて、ご馳走ずくめのお祭り騒ぎだったのが終り、ぽっかりとすきまができたような。ようやくいつもの日常に着地したような。
店員さんたちもほっとしていて、いつもの業務があたたかく流れている。
でも、鈍い感じではなく、どこかしら新しい空気が流れているような気もした。
なんとなく、雪の光が売り場全体に当たっているみたいな。
お客さんが少ないせいもあったのかな。
夜ごはんは、近所の飲み屋で。
銀杏の塩煎り、しらすおろし、湯豆腐(もめん豆腐、白菜、しいたけ、春菊、タラ)、いかの姿焼き、白菜の漬け物、ビール(スイ)、熱燗(私)。
書くのを忘れていたけれど、『Zの会』は、何から何までとても楽しかった。
『Zちゃん』は、ますますおもしろいことになりそう。これまで続けてきた、私、スイセイ、高野さんとの作業に、新しい突破口が見えてきた。
デザイナーさんは、思った通りの方だった。
詳しいことはまだここには書けないけれど、スイセイにとってデザイナーさんは、ようやく出会えた転校生みたいだった。アシスタントの女の子も、すごくいい。
2月の末にまた集ることになった。私はまた料理を作る。
私は、パーッと浮かれるような感じではなく、じんわりと、楽しみな気持ちがお腹の底に広がっている。大切にしようと思う。

●2013年1月14日(月)雪

朝のうちは雨だったのが、雪になった。
雪になるまで、しばらく見ていた。
雪になってからも、布団にもぐり込んで窓の方に顔を出し、降ってくる空を見上げていた。
空もまわりも雪も白一色なので、ふらふらと舞い落ちてくる雪は埃のようにも見える。あまりきれいではない。
しばらくそうしていたが飽きてしまい、本を読むことにした。
『なずな』を読む。
「はなべろ読書記」に書いた時には、2/3くらいまでしか読んでいなかった。
原稿を書くためだけに読むのがもったいなくて、大事にとっておいた。
それを、思う存分ゆっくり読む。
カーテンを開けたまま。
窓の外は、枯れ木にも物干竿にも、前の広場にも、あとからあとから降り積もる。
ずんずんずんずん、どんどんどんどん、「うどんどんどん(『なずな』に出てくる)」だ。
夜ごはんは、記録するのを忘れました。

●2013年1月13日(日)ぼんやりした晴れ

先週は、日記を書かなかったのだな。
開いてくださったみなさま、ごめんなさい。
私は何をしていたんだろう。
覚えているのは、お正月に飽きるのがうんと早かったこと。
2日の日は、朝ごはんも食べずに布団の中で『ことり』を読み耽り、3日には「はなべろ読書記」の原稿にとりかかった。
「はなべろ」で出したので、くだくだとしたことはここには書かないけれど、『ことり』に夢中で書かずにいられなかった。
新しい料理本の原稿も書きはじめた。自由な気持ちで、胸に浮かんだ言葉を並べるようにして書いた。
散歩もして、いつもとほとんど変わらないペースで仕事をしていたような。
撮影の仕事はじめは7日だった。
気づけば、1月も半分になろうとしているのだな。
新しい料理本は、ごつごつした山道を進もうとしている。蛇が出てくるかもしれないし、野苺をみつけるかもしれない。
山登りの先頭に立っているのは、私というより立花君かも。
まだはじまったばかりだけど、もしかすると、これからふたりが、いやスタッフみんなが、前に行ったり後ろになったり(下から持ち上げる)する本のような気がする。
そうそう。これまで私は、原稿でもレシピでもノートパソコンの小さい画面で書いていたのだけど、今年から大きい画面でも見られるようになった。スイセイが急にやってくれた。
マウスでひきずると、うちのテレビぐらいの大きさの画面に映る。
今も、この日記をそうやって書いている。
おかげで老眼鏡をかけなくても大丈夫になった。背筋も伸びるから、肩凝りの具合も変ってくるかも。
さて。今日は3時半からとても楽しみなことがある。
『Zの本』(きのうからスイセイが『Zちゃん』と呼んでいる。稲垣足穂に出てきそうな感じ)の打ち合わせで、デザイナーがいらっしゃる。
終ったら手料理をお出ししようと思って、ロールキャベツなどいそいそと作っている。
今夜は日記を書けないので、出そうと思っているメニューをここに書いておきます。
長ねぎビネグレット、じゃがいももち、なんとか豆(川原さんにゆでたのをもらった)のオリーブオイルがけ、菜花の白和え、盛り合わせサラダ(にんじん、きゅうり、キャベツ、ルッコラ、玉ねぎ黒酢ドレッシング)、ロシア風ロールキャベツ(サワークリーム、ディル)。
スイセイとデザイナーさんとのご対面。さーて、どうなることやら。

●2013年1月1日(火)快晴

明けましておめでとうございます。
元旦の朝ごはんは、黒豆(三ちゃんのお母さんが煮たのを送ってくださった)、数の子、いくら(撮影で作って冷凍しておいた)おろし、ブリのお刺身、ハム&サラダ(白菜、キャベツ)、お雑煮(白菜、大根、里いも)、磯部巻き、日本酒。
黒豆がとってもおいしい。
ねっとりとやわらかく、甘すぎず、豆自体の味がよくする。煮汁もさらっとしているので、最後まで飲んでしまう。
こんなにおいしい黒豆を食べたのは生まれてはじめて。
三ちゃんのお母さんは、本当に料理上手だな。
こんなふうに黒豆が煮られるようになったら、どんなにいいだろう。お正月だけでなく、ふだんから食べたいくらい。
今年は、お雑煮に里いもを加えてみた。
スイセイのところは白菜とほうれん草だそうだけど、うちの実家は、そういえば大根と里いもだったことを思い出したので。
里いも好きのスイセイも気に入ったようす。
私は前からだけど、スイセイもまた、おもちをたくさん食べられなくなったような気がする。
朝ごはんのあと散歩へ。おちょこ一杯だけしかお酒を飲んでないのに、なんとなしにふらふらする。
筋肉痛なのは、大掃除のせいだろう。
これが年をとるっていうことか。
こうやって少しずつ少しずつ、毎年体が変ってゆくのだな。
雲ひとつない青空に、ひとすじだけ、龍の雲が天に上っていた。
東京のお正月は、人がいなくて本当に静か。
風もなく、車も走っていない。
歩いている人も、ひとりかふたり。どこも動いていないように見える。
どこもかしこも、大掃除をしたみたいにきれい。緑も水をかけて掃除をしたようにピカピカだ。
まっすぐに伸びる道路の白いラインに陽が当たって、もっと真っ白に見える。
中央公園には、子供連れで凧上げをしている人たちが何人もいた。
いつものように広々した原っぱをつっきり、水道の冷たい水を飲んで、出口の手すりで腕立て伏せをして帰ってきた。 さて、今日は何をしようか。
さしあたって、去年のレシートをまとめるのをやろう。
今日だけは、仕事をしないぞ。
夜ごはんは、黒豆、しめ鯖、煮豚&煮卵、数の子、ほうれん草のおひたし、磯部巻き。

いままでの日々ごはん

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