2020年     めにうへ

●2020年12月31日(木)快晴

ゆうべはカーテンを開けたまま寝た。
お風呂から上がったときには雪はやみ、満月が光っていた。
それでも粉雪がかすかに降っているらしく、ヒマラヤスギの木にうっすらと積もって、クリスマスのもみの木のようだった。
ときどき起きてのぞくと、街の灯りが見えたり、白く覆われたり。
そのうちに寝てしまった。
今朝は7時に起きた。
風が強い。
向かいの建物にうっすらと積もった雪が、砂嵐みたいに巻き上げられている。
サラサラの雪なのだ。
今は10時。
ゴーゴーと風が吹いて、あちこちきらきらしている。
さっき、光の粒みたいな粉雪が舞った。
お天気雪だ。
ゆうべ黒豆を浸けておいたので、ゆでながら大掃除をしよう。
台所から見る海は、いちめんの大鏡。
眩しくて目がくらむほど。
神戸の大晦日は、毎年こんなに晴れているものなんだろうか。
それとも雪のせいだろうか。
家具をどけたりしながら、あちこち掃除機をかけ、食器棚や本棚の中も拭いた。
コピー機のインクも取り替えた。
掃除機のゴミパックも交換した。
どちらも、最初はうまくいかなかったのだけど、ちゃんと眼鏡をかけ、説明書を見ながら落ち着いてやったらできた。
黒豆は半分は浸し豆に、半分はゆで汁ごと冷凍した。 
お雑煮用のだしをとり、ほうれん草が半端にあったのもゆでておく。
へえ。ひとりでも私、いつもみたいにするんだな。
台所の掃除はほとんどできなかったので、明日やることにし、4時半くらいに終わり。
缶ビールを開け、夕空に乾杯。
なんだか、母と友人と3人で年越しをしているような気分になってきた。
今年お世話になったみなさん。
神戸。東京。福岡。
みんな、みんな、ありがとうございました。
さ、早めにお風呂に入ろう。
夜ごはんは、天ぷら蕎麦(海老、レンコン)、稲荷ずし(小)。
紅白を見ながら食べた。
10時には眠たくなってしまう。
そうだ。
中野さんちでごちそうになったクリスマスの献立を、忘れないように書いておこう。
24日の夜ごはんは、すべてお姉さん作。
クリスマスの鶏もも焼き(ふたをしたフライパンで蒸し焼きにしてから、グリルで皮目をカリッと焼き、にんにく入りの甘辛いタレをかけた。持つところにアルミホイルガ巻いてあった)、チューリップ(手羽元)唐揚げ、キャベツとコーンのポタージュ、アボガドとミニトマトとキャベツ(ユウトク君が切った)の甘酸っぱいサラダ(柚子果汁入り。最後の味つけだけ私がやった)。食後にチョコレートケーキ。
ソーセージは、25日のお昼に食べた(ゆでて焼いたのは中野さん。やわらかめのマッシュポテト、ほうれん草炒め添え)。
ユウトク君はおかわりし、ソーセージ(「ウインナー」と呼んでいた)を2本も食べた。作っているときから一緒に見ていたからかな。
25日のクリスマス会は、餃子(お姉さん作。タネは豚ひき肉、白菜、キャベツ、ニラ、竹の子、椎茸。150個もひとりで包んだ。焼いたのは中野さん)。大きなホットプレートにぎっしり並べ、焼き立てを家族7人と私で、ひたすら食べた。
いかのオリーブオイル炒め(中野さん作)。
私が作ったのは、じゃがいものガレット(「フライドポテトみたいな味だよ」と言ったら、ユウトク君がよく食べてくれた)、れんこんフライ、れんこんのキンピラ(クリスマスの鶏もも焼きの甘辛いタレの残りで絡めたら、甘辛くこってりとして好評だった)。
25日は、餃子を焼いている間に、プレゼント交換となった。
私はみんなに冬の靴下を(ユウトク君とソウリン君へは、夕方、サイクリングから帰ってきたときにあげた)。
お姉さんから平皿とお箸、お母さんからは素敵なパンツをいただいた。

●2020年12月30日(水)晴れ

ぐっすり眠って、夢もたくさんみて、起きたら9時だった。
冬の朝は暗いから、このごろ時間がよく分からない。
ラジオも特別番組ばかりやっていて、いつもと違うので。
膀胱炎はもうすっかりよくなった気がする。
朝から美容院へ。
図書館はお休みだったけれど、下の階にある和菓子屋さんで搗き立てのお餅を買えた。
まだ柔らかい。
そうか、関西は丸餅なのだな。
はじめてのお正月は丸餅。
感動というほどではないのだけれど、なんだかじんとした。
スーパーはけっこう混んでいて、みんなものすごい量の買い物をしていた。
ひとり暮らしの私なんか、突き飛ばされそうな勢いだった。
有頭海老、かつお節、伊達巻き、紅鮭の石狩漬け(麹で漬けてある)、牛乳、ヨーグルトなどを買った。
明日は海老の天ぷら蕎麦にしようと思って、ビニール袋に入ったゆで蕎麦も買った。
ひとりの年越しはこれで十分。
紅白を見ながら食べよう。
お正月のお花をと思い、「植物屋」さんで大輪の菊を買った。
深い臙脂色のと、サーモンピンクのを1輪ずつ。
母と、今年亡くなった若い友人のために。
きのうは、夜ごはんの前にピンポンが鳴って、郵便局のいつものおじさんが荷物を届けてくれた。
朱実ちゃんと樹君からのプレゼント。
なんと、赤と黒のふたつきの漆のお椀。
お雑煮にぴったり。
中野さんの分もある。
向かいの空き家が取り壊されたときに、救出したものだそう。
その家は昔、文房具屋さんを営んでいたらしく、古めかしい紙箱の6色色鉛筆も入っていた。
あと、ふたりが最近気に入っている「舌鼓」というお醤油も。
このお醤油で、お正月に磯辺巻きをしよう。
さあ、ゆっくりと大掃除。
といっても、いつもはやらないところに掃除機をかけるくらいだけれど。
風が強く、雲がぐんぐんと流れていく。
海は真っ青。白ウサギがたくさん飛んでいる(白波)。
今夜は雪が降るかもしれないと、天気予報で言っている。
夜ごはんは、豚テキ焼き飯(ルッコラのバター炒め添え)、みかん。
あと片づけをし、今年最後のゴミを出そうと思って玄関を開けたら、裏の家のどんぐりの葉に雪が積もっていた。
外は霙まじりの粉雪。 
風がとても強い。
今夜は『ゆめ』が本当になるかも。

●2020年12月29日(火)ぼんやりした晴れ

きのうの朝、熱が出た。
頭も痛くないし、咳も鼻水もない。
おでこを触っても熱くないし、体もそれほど辛くない。
もしかしたらユウトク君たちと縄跳びしたり、本気で駆けっこしたりしたから、筋肉がびっくりして熱が出たのかな。
そう思って寝ていた。
お昼を過ぎたら少し下がってきた。
このところ膀胱炎の症状があったのに、放っておいたことを思い出し、インターネットで調べてみた。
腎盂炎になると熱が出るらしいと分かり、ゆっくりと坂を下りて病院へ。
やっぱり膀胱炎だった。
腎盂炎ではないでしょう、とのこと。
薬をもらって帰ってきた。
今朝は6度5分。
私の平熱は5度台だから、微熱。
本当は、明日から実家に帰るつもりでいたのだけど、免疫力が落ちると膀胱炎にかかりやすいそうだから、「やっぱり、やめよう」とゆうべ寝ながら決めた。
そしたらすーっと楽になった。
アムとカトキチからじゃがいも、南瓜、玉ねぎが。みどりちゃんからは那須の農園の葉野菜が届いているから、それを食べて過ごしなさいっていうことかも。
ひとりで迎えるはじめてのお正月。
大根も白菜も、中野さんちでいただいた柚子もあるんだから、お雑煮くらいは作ろうかな。
明日は美容院を予約しているので、お餅を買って帰ろう。
なんだか楽しみ。
中野さんの家から帰ってきたのは、いつのことだっけ。
クリスマスの翌日だから26日だ。
その日は、お昼を食べたあともめいっぱい遊んで(二人乗り三輪車にユウトク君とソウリン君を乗せ、ハンドルに結んだヒモの輪っかをお腹で引っ張りながら、中野さんと交代で田んぼのあぜ道を走った)、3時15分の神戸電鉄で帰ってきた。
六甲で軽く買い物し、タクシーに乗ったら、6時を知らせる教会の鐘が鳴った。
「カラーンコローン カラーンコローン コローン コローン」
おかえりと言われたみたいだった。
中野さんの家族との時間は、最高に楽しかった。
24日と25日にあったことをメモしておいたので、いつか書こう。 今日は、ゆっくり動いて、ひさしぶりに掃除機をかけた。
みっちゃんに電話をしたら、「そりゃあ、無理しない方がいいらー。ゆっくり休みな」とやさしい声で言われた。
「なみちゃんの本を見て、塩豚や煮豚を仕込んどいたんだけどな。じゃあ、子どもらを呼ぼうかなあ」なんて、ちょっと嬉しそうだった。
ちょっと前に、「暮れとお正月の家族の宴会は、うちでは開かないということでもいいかな。ふだん一緒に過ごしていない人とのお酒や会食は、やっぱり、気をつけたいです」と、メールで伝えていたので。
去年まで大忙しだったみっちゃんの仕事も、今年はずいぶんと落ち着いて22日から1月3日まで休めることになったのだそう。
母の部屋と隣の和室を大掃除し、いらなくなった家具を片づけたり、畳の表返しをしたらしい。
みっちゃんのことだから、かなりきれいになっているはず。
でも、なんだかよかったな。
いろいろほっとした。
今は5時を少し過ぎたところ。
街の灯りがぽつり、ぽつり。空も茜色に染まってきた。
そういえばこの間、引っ越してから開けていなかったダンボール箱を整理していたら、古いノートが出てきた。
まだ「日々ごはん」をはじめるよりずっと前、「クウクウ」にいたころのノート。
日記ではないのだけど、こんなことが走り書きしてあった。
「約束していた時間について考える。もし会っていれば起こったこと。その、なくなった時間について。風邪をひいたことで」
あれから30年以上がたった今の私は、時間も出来事も、何もなくなりはしないのだと知っている。
反対に、なくなったことで豊かになることも。
「雪とケーキ」という片山令子さんの詩を、ここで引用させていただいても大丈夫だろうか。
年末だから、そして今の季節にぴったりだから、天国の令子さんに許していただきましょう。

「雪とケーキ」
遠い町まで レッスンに出掛けたが
雪のためにバスが遅れ
いつもの町で雪の日、
ということになった。
ケーキが並んだガラスケースと
ガラス窓いっぱいに、
コーンフレークのような大粒の雪が
降っていた。

何かがだめになることで
もたらされるものがある。

熱いコーヒーの後に温かい朝食をとって、
雪を見ていた。
瞳だけでなく顔にも手にも
セーターにも映っていた雪。
ガラスの棚にならんだ
ケーキといっしょにずっと
雪を見ていた。
ケースの中にも、
粉砂糖の雪が少し積もっていて。

空気をたくさん含んで柔らかくなった
丁度よい甘さのケーキ。
ひとつひとつがべつべつに
「おいしい」
とささやかれて
夜までにはみんな
すっかり
きえてゆくケーキ。

ケーキといっしょに雪を見ていた。
灰色の空から降ってくる
真っ白い雪を見ていた。

ーー『ひかりのはこ1』よりーー

夜ごはんは、寄せ集めドリア(おとついのレンコンの肉巻き蒸しの残りをさいの目に切り、ブロッコリーのオイル蒸し、冷やご飯と合わせてホワイトソースでまとめ、チーズをのせてオーブンへ)、みかん。

●2020年12月24日(木)曇り

今朝はなかなか明るくならなくて、6時なのかと思って起きたら、7時だった。
ゆうべは、8時半にはもうベッドに入っていた。
ラジオでいい音楽がかかっていたので、目薬を差して、『ゆめ』のことを思いながらそのまま目をつぶっていた。
9時過ぎには寝てしまったと思う。
5つくらい夢をみた。
笑っちゃうようなおかしな夢もみた。
今年のクリスマスは、中野さん宅に2泊して、家族と一緒に過ごす予定。
毎年、クリスマスにはプレゼント交換をするそうなので、私も少しずつ支度をしておいた。
大人たちには冬の暖かい靴下。
ユウトク君とソウリン君のは、おそろいの赤い靴下に、チョコ、クッキー、あられ、ワッペンや紙せっけんやらを詰めた。
あと肉桂も。
夏に泊まりにいったとき、食べられる木の皮がある話をユウトク君にしたので。
シナモンスティックは売っているのだけど、肉桂はどこを探してもなく、東京でもみつからなかった。
そしたら、リーダーの家にあることが分かり、わざわざ送ってくれたのだった。
ソーセージをお姉さんと作るので、スパイスやら絞り出し袋も支度した。
とても楽しみ。
では、行ってきます。

●2020年12月23日(水)晴れ

8時半に起きた。
寝坊した。
わざとそうした。
朝、起き抜けにまた『ゆめ』を読んだ。
カーテンの隙間の少しの光で。
これは、夢の物語ではなく、夢そのものの絵本。
寝る前に布団をかぶり、ゆっくりゆっくりめくりながら絵を眺め、短い言葉(音)を読んでいると、眠くてたまらなくなる。
お終いまで読んで、絵本を閉じ、電気を消して目を閉じる。
するともうそのまま夢になる。
夢に抱かれて眠る。
赤ちゃん、幼児、小学生、中学生、高校生、大学生、お勤めの人、お母さん、おばあちゃん、おかまちゃんまで。
男の人の中にもいるかもしれない少女へ。
すべての少女に贈りたくなるような絵本。
中野さんの新作は、どこにもでこぼこがない。
しんしんと静かで、どこまでも大きな絵本。

今日はずっと、『帰ってきた 日々ごはん8』の大詰め作業をやっていた。
気づけばもうお昼。
そして、ごはんを食べたらもう2時だ。
そしてそして、今日はもう23日なのだった。
ここ数日、いろいろな楽しいことがあって、ちっとも日記が書けなかった。
つよしさんとのトークイベントで大阪に行ったり、終わってからみんなでごはんを食べたり、中野さんが泊まったり。
中野さんがうちに来たのもひさしぶり。
2泊しかしなかったのだけど、なんだか1週間くらい一緒にいたような感じがした。
さ、そろそろ出かけなくては。
今日は「MORIS」と六甲駅の「ブックファースト」に行って、『自炊。何にしようか』にサインをしてくる。
帰ってきてすぐに食べられるよう、お弁当を作っておいた。
おみそ汁用の昆布とにぼしも浸けてある。
夜ごはんは、そぼろ弁当(肉そぼろ、いり卵、紅ショウガ)、切り干し大根のみそ汁。
切り干し大根は水にもどさず、乾いたままだし汁で煮ると、甘くてとてもおいしいみそ汁になる。

●2020年12月17日(木)晴れ

冬の朝は暗い。
6時少し前に起きて、ラジオをつけた。
今朝の「古楽の楽しみ」は、バロック時代のオルガン曲とキリストの降臨曲。
荘厳な感じのする曲。
窓を開けたら、向かいの建物の屋上に雪がうっすらと積もっていた。
下の道にもほんの少し。
夜中に降ったんだな。
どうりでゆうべは寒かった。
陽の出は雲の上から。
太陽が昇る前、上に浮かんでいる小さな雲が金色に光っていてきれいだった。
窓を開けると、空気がきーんとしている。
でも、それほどには寒くない。
下に下り、いつもみたいに祭壇の水を新しくするとき、「お母さん、もうじきクリスマスだね」と声をかけた。
今年のクリスマスの飾りはとっても地味。
少しずつ、少しずつ分からないくらいに増やしている。
それにしてもいいお天気。
海だけでなく、あちこちがきらきらしている。
このところ勤しんでいた『日めくだより』の単行本の校正が終わったので、郵便局に出しがてらひさしぶりに街へ下りる。
美容院と図書館、「MORIS」にもサインをしに行く予定。
りうのレンコンも持っていこう。
5時くらいに帰ってきた。
ものすごい大荷物で。
買い物もあるけれど、いろいろなお土産をいただいた。
「MORIS」では今日、ケンタ君がスイーツを予約販売していて、お客さんがひっきりなしにやってきた。
みんな、クリームがたっぷり詰まったとっておきのドーナツや、ブラウニー、カスタード・タルトなど、とっておきのお菓子を買って、家族のために持って帰る笑顔。
私はその間、『おにぎりをつくる』と『みそしるをつくる』にサインをしていたのだけれど、なんだか贈り物の季節というか、年末の感じがした。
このところ私はずっとこもって仕事をしていたから、こんなに大勢の人と会ったのはひさしぶり。
なんだか、お客さんたちの声や、それに応える今日子ちゃんやひろみさんの声を聞いているだけで、その場にいるだけで、あったかいような気持ちになった。
がんばったご褒美みたいだった。
図書館ではクリスマスの絵本を1冊借りた。
マーガレット・W・ブラウンの『クリスマス・イブ』、矢川澄子さんの訳だ。
お風呂に入ったら、寝る前に読もう。
夜ごはんは、鍋焼きうどん(白菜、ほうれん草、卵、ノブさんのうどんで)。
窓を開けると西の空に三日月が。

●2020年12月14日(月)曇り一時晴れ

6時に起きた。
ラジオをつけたら、オルガンのミサ曲がかかっていた。
今週の「古楽の楽しみ」は、関根敏子さんだ。
足下のカーテンだけ開けてうとうと。
今朝は雲が厚く、陽の出は見られなかった。
『山の焚き火』と『我ら山人たち』を見にいった日の夜、山にいる夢をみた。
映画館で見ると、映画が体に入ってくるのだな。
『我ら山人たち』は山で暮らす人たちのドキュメンタリーで、言葉は違えど、ひとつのことをいろんな人たちが言っている感じがした。
画面からもそれが伝わってきた。
雪崩や山崩れが起こる斜面に、へばりつくように家を建て、代々暮らしている人たち。
牛や羊を飼い、夏になるとさらに高いところにある山小屋に放牧に行き、数ヶ月を過ごす。
男も女も体を動かしてよく働き、女は子どもを何人も産み、育てる。
山の人たちは孤立している。
羊を解体していたとき、逆さに吊るしているお腹にナイフを入れて開いたら、内臓が地面に落ちた。
奥の奥まで山しかない広大な斜面を背景に、そのドサッという音が体に入ってきた。
映画館で映画を見るって、すごいことだな。
今朝も、『山の焚き火』のことをずっと考えている。
山の神さまへの信仰。
掟を破ると、家族や親族に不幸が起こる。
誰かに出会うというのは、その人の人生を大きく変えること。
婚礼というのは、人と出会うというのは、神聖なことでもある。
さ、校正をやらなくちゃ。
インタビュー記事の赤入れも。
「気ぬけごはん」『帰ってきた 日々ごはん8』など、もろもろの校正が終わった。
やっている途中にいちど晴れ間が見え、パーッと明るくなったけど、夕方にはまた雲が出てきた。
向こうの海が青黒い。
紀伊半島の山々に、雲から雨ができ上がり、降り注いでいるのが見える。
窓を開けると、濡れた花のようないい匂い。
知らないうちにこっちも雨が降ったのかも。
校正をしながら、大かぶらと油揚げの薄味煮を作った。
『自炊。何にしようか』を見ながら。
明日はグラタンにするのが楽しみだ。
そして、今年もまた、りうから霞ヶ浦のレンコンが届いた。
うれしいな。
まずは、じりじり焼きだな。
夜ごはんは、大かぶらと油揚げの薄炊き、れんこんのじりじり焼き(塩)、海苔の佃煮、ご飯。

●2020年12月12日(土)晴れ

6時に起きて、ラジオを聞きながら明るくなるまでうとうと。
ようやくいつもの日々に戻ってきた。
今朝は雲が多いけれど、よく晴れている。
今日は映画館に行く。
『山の焚き火』『我ら山人たち』『緑の山』の、山三部作を元町映画館でやっていることが分かったので。
去年だったか、パンフレットに『高山ふとんシネマ』からの『山の焚き火』感想文の引用が載ったので、招待券をいただいたんだった。
私は今、映画づいているみたい。
さ、もうちょっとしたら出かけよう。
『山の焚き火』はやっぱり、どこをとってもたまらなく好きだった。
映画館で見るのって、いいな。
もしかしたら、映画の中でいちばん好きかも。
『我ら山人たち』もよかったのだけど、途中でうつらうつらしてしまった。
やっぱり、映画を2本続けてみるのはもうやめよう。
三宮では欲しかったものがいろいろ変えた。
靴下の穴を繕うダーニング用きのこ、毛糸などなど。
六甲で食材も買う。
7時過ぎに帰り着き、お腹ぺこぺこですぐに夜ごはんの支度。
トンテキ焼き飯(豚ロース厚切り肉、にんにく、なたね油、スダチ)、キャベツと人参のコールスロー&小松菜の塩炒め添え。
冷やご飯を、お肉を焼いているフライパンの脇で温め(最初は焼きつけた)、木べらでほぐして、お酒をかけてふたして蒸して、水分がなくなってから薄口醤油をまわした。
チャーハンではなく、焼き飯のトンテキ添えというところ。
おいしかった!
そういえば『山の焚き火』では、少年の母親が電球に靴下をかぶせ、かかとの繕いをしていた。
物資が乏しい山では、電球も貴重品なのだ。

●2020年12月11日(金)晴れ

8時に起きた。
寝坊した。
まだ、時差ボケがあるのかな。
窓を開けていても、温かい。
きのうよりもさらに。
朝風呂から上がったら、2階が光でいっぱいになっていた。
天井にぶら下げているガラスの玉は、何という名前だったっけ。
太陽の光を集め、小さな虹を壁や天井に映す。
洗濯物を干しているとき、まん中の海がチラチラと光り、あんまりきれいなのでため息が出た。
でも、じっと見ていられない。
今のこの光は今しかないのに、と思うと、さらにふわふわとした感じになる。
退屈なような、とりとめのないような。
今日は、すぐにやらなければならない仕事がひとつもない、ぽかんとした日。
ポケットから顔を出し、ひろびろとした外を眺めている。
ポケットの内部もわりあい広い。
きのうは、「おまけレシピ」の校正のために、『歩いても 歩いても』を見た。
母親役の樹木希林さんが揚げている「とうもろこしのかき揚げ」について、確認したいことがあったので。
やっぱり、とてもよかった。
2008年が封切りだったのだな。
私はこれを、映画館でひとりで見た。
とても感動し、見終わってからエレベーターに乗り込んだときの自分の様子を覚えてる。
早い夕方、手紙を出しにポストまで散歩した。
海を見ながら下りようか、山を見ながら上ろうか……と一瞬迷い、けっきょく上った。
夕陽が当たる紅葉の山を仰ぎながら。
山の入り口までは上らずに、途中の石段で下り、細い坂道を下り、学校の前の道に出て、ポストに投函。
帰り道はいつもの坂を。
手ぶらなのでスイスイ上り、ちょっと汗をかいた。
夜ごはんは、カレーライス(ゆうべの手羽先とじゃがいものスープに、カレールウとトマトペーストを加えた。らっきょう、福神漬け)、目玉焼き、コールスロー(キャベツ、人参)。

●2020年12月9日(水)晴れ

9時に起きた。
寝坊した。
ゆうべは早めに寝たのだけど、夜中に目が覚めてからは1、2、3、4、5まで、時計の音が聞こえていた。
時差ボケみたい。
東京が楽しかったから、なかなか神戸に戻れない。
三浦さんはとても楽しい方だった。
対談がはじまる前から、「今日は、気ぬけでいきましょう」、「気ぬけでいいんですよね」なんて何度もおっしゃっていた。
なんか、自分に言い聞かせているみたいだった。
頭脳明晰で勘のいい方に、自分のことを分析されるのってとても楽しい。
私は、何を聞いてもおもしろく、時間が足りないくらいだった。
『ココアどこ 私はごまダレ』のこともとてもほめてくださり、嬉しかったなあ。
本の中で体験し、戻ってくる感じが、1本のすばらしい映画を見終わったあとのようだったとか、「映画にしたいくらいです」「僕、微力ながら、脚本を書いてみようかな」なんておっしゃっていた。
『自炊。何にしようか』の制作風景を撮った、立花くんの動画のこともほめてくださった。
ジョナス・メカスみたいだと言っていた。
私はその人のことを知らなかったのだけど、ユーチューブで調べ、きのうからずっと見ている。
10時に朝ごはん。
太陽はもう海の真ん中まできている。
霞がかかった、穏やかないいお天気。
お昼にはずいぶん西に移って、きらきらとさざめいている。
さっき、2階だけ掃除機をかけた。
『おちょやん』を見ながらお昼を食べたら、1階も掃除しよう。
そして、『帰ってきた 日々ごはん8』の「おまけレシピ」と「あとがき」の校正もしなければ。
と思いながらも、ジョナス・メカスのリトアニアの映像を見るのをやめられない。
メカスの母親(おばあさん)が、野外に組んだ炉で煮炊きをしていたり、長いテーブルで家族が食べたり。
婚礼に集まった親戚や家族が、アコーディオンに合わせ、輪になって踊ったり。
昔ながらの暮らしと、民族の料理が写っている。
カメラを向けられた人々の表情もいい。
映像の起源のような、人間礼賛のようなことを感じる。
夜ごはんは、肉豆腐雑炊(卵)、白菜と柿のサラダ、小松菜の塩炒め。

●2020年12月5日(土)晴れ

ゆうべは鼻水がまったく出ず、よく眠れた。
なんだかへんな夢をたくさんみたな。
あさっては東京で、はじめての人との対談だから、いろいろと想像しているんだと思う。
朝、また鼻水が出てきたので病院に行った。
のどの腫れもないし、熱もない。
「そのたらたらした鼻水は、アレルギーの可能性がありますね。今、多いんですよ」と先生がおっしゃった。
ああ、よかった。
薬を処方してもらって帰ってきた。
川原さんの大好きなヨーグルト(「いかりさん」の)も買ってきた。
さあ、支度をしたら出かけよう。
今度の東京は、どんなことになるだろう。 『食べたくなる本』の三浦哲哉さんは、未読だった私の本も読んでくださっているらしい。
きっと、おもしろくなるだろう。
無理をせず、感じるままにおしゃべりをしようと思う。
どうかみなさん、お楽しみに。
何度もお伝えしてしまいますが、「紀伊國屋書店」の配信の申し込みは、明日の14時で締め切りだそうです。
詳しくは「ちかごろの」の「高山なおみの味」をご覧ください。
では、行ってきまーす。

●2020年12月4日(金)晴れ

朝一番で見た佐川さんからメールが、とってもうれしかった。
知人のお母さんが1歳の赤ちゃんに『みそしるをつくる』を見せたら、「食べたくなったのか、いきなり表紙に顔をつけてぺろんと舐めたそうです。長野さんの写真、おいしそうだったんでしょうね〜」。
そういうの、私はいちばんうれしいな。
『おにぎりをつくる』のときには、三歳の娘さんがテッシュをぎゅっぎゅっとにぎって、お父さんにあげた話があったっけ。
小さな子たちが体ごとで反応してくれるって、なんてうれしいんだろう。
こういうとき私は、絵本を作っていてほんとによかったなあと思う。
にやにやがこみ上げてくる。
今朝の太陽の真下の海は、対岸の方までよく光っている。
光の広場が大きく、強烈に眩しく、海にも太陽があるみたい。
そして私は、朝からずっと鼻水が止まらない。
サラッとしたのが出る。
パソコンに向かっていると、つーっと鼻から垂れてくる。
かんでもかんでも出る。
埃のせいかなと思い、あちこち掃除機をかけてもだめ。
窓を閉めても関係ない。
パソコンで調べてみたら、12月でもスギ花粉が飛ぶことがあるのだそう。
そういえば、去年もそんな日があったような気がする。
明日から東京なのだけど、大丈夫なんだろうか。
トークの最中に鼻水が止まらなかったら、困るなあ。
土地が変われば治るんだろうか。
それでもがんばって、『日めくりだより』の「あとがき」に集中した。
書けたかも。
もうじき5時なのだけど、珍しくカラスの声が聞こえない。
もしかしたら、今年の集会は終わったんだろうか。
明日の朝起きて、まだ鼻水がひどかったら、病院に行ってから東京へ出かけよう。
夜ごはんは、雑炊(油揚げ、白菜、落とし卵)、茄子のフライパン焼き(ごま油、かつお節、七味唐辛子)、たくあん。

●2020年12月2日(火)晴れ

このごろ、とてもよく眠れる。
夢もおもしろいのをたくさんみる。
6時くらいに目覚め、ラジオを聞きながら惰眠して、7時半には起きる。
今日はきのうより、少しだけ肌寒いかな。
でも、とてもいいお天気。
海が眩しい。
窓を開けていても大丈夫。
『帰ってきた 日々ごはん8』の「あとがき」を朝からずっと書いていた。
さっき、村上さんにお送りしたところ。
今は5時を過ぎたところ。
もうすっかり夕闇だ。
カラスの集会がはじまっている。
東京は今日、冷たい雨なのだそう。
川原さんからのメールにも、村上さんのメールにも書いていた。
陽が落ちると、六甲もとたんに寒くなる。
今、ヒーターを入れてみた。
まだ、温かい風は出てこない。
夜ごはんは、すき焼き風煮込みうどん(この間の鶏すきの煮汁にだし汁を加え、白菜、しめじ、溶き卵)、キャベツと人参の塩もみサラダ(玉ねぎ黒酢ドレッシング)、さつまいもとじゃがいものサラダ(パセリ、クリームチーズ、自家製マヨネーズ)。
夜ごはんを食べている途中にふと思いつき、「あとがき」を直す。
お風呂から出てからも、また少し直す。
村上さんにメールをし、明日の朝、改めてお送りすることになった。

●2020年11月30日(月)晴れ

朝、あちこち掃除機をかけ終わったころ、潤ちゃんが来た。
サインをする本がたくさんあるのかと思ったら、1冊だけなんだそう。
なのにわざわざ京都から来てくださった。
この間のギャランティーを届けに、来てくださったのかなあ。
あと、トークのときに話していた、お父さんがりんごの皮を長く長くむく絵本『ながいながいりんごのかわ』を持ってきてくれた。
家族みんなの名前がサインがしてある大切な本なのに、貸してくださった。
ちょっとめくってみたら、絵も言葉も好きな感じがした。
今夜読むのが楽しみだな。
朝から私は、きのうのうちから煮込んでおいた鶏のスープに、大きなかぶを半分に切ったのを丸ごと加え、コトコト煮ていた。
潤ちゃんが来てからはふたりで台所に立ち、マヨネーズを作ったり、玉ねぎドレッシングを作ったり。
私が口で言って、潤ちゃんにやってもらった。
なんか、調理実習風。
潤ちゃんは料理上手で食いしん坊だから、何をまかせてもセンスがいい。
メニューは、かぶの厚切りサラダ、人参のサラダ(ゆうべのうちに塩もみしておいた)、鶏とかぶのこっくり煮(中華風味)、きのことフジッリ(おとつい中野さんと食べた残り。牛ひき肉とみじん切りのカリフラワーでラグーのようなものを作って和えたもの)とお麩のグラタン。
台所の立っているところから窓を見ると、海がきらきら光っていて。
よくしゃべり、よく笑い、たくさん食べている間に、光は少しずつ西に移っていった。
潤ちゃんといると、なんだか料理の創作意欲が湧いてくる。
食後においしい紅茶をいれて、お菓子を食べた。
帰る前に屋上に上った。
潤ちゃんは高いところが怖いと言っていたのに、いちばん高いところまでスイスイ上り、「きゃーきゃー」とはしゃいでいた。
2時半くらいにふたりで坂を下り、龍の神社までお見送り。
ああ、なんだかとっても楽しかったな、と思いながら坂を上って帰ってきた。
遊んでばかりいないで、『帰ってきた 日々ごはん8』の「あとがき」を書きはじめないと。
明日から頑張ろう。
そうそう。
潤ちゃんといるとき、中野さんから絵の画像が送られてきた。
ずいぶん昔に描かれた絵。
青いような緑のような、森の奥の絵。
苔の上にシカが立ってこちらを見ている。
ずっと前に書いた私の物語の結末にくる絵みたい……と、今思う。
夜ごはんは、お揚げさん(きつねうどんにのせる用に送ってくださった、ノブさん作)、納豆(卵白、ねぎ)、ソーセージとピーマンとほうれん草炒め、人参の塩もみサラダ(自家製マヨネーズ)、即席みそ汁(とろろ昆布、かつお節)、ご飯。
炊き立ての新米にのせたお揚げさんが、たまらなくおいしかった。

●2020年11月29日(日)曇りのち晴れ

この1週間、日記がまったく書けなかった。
宿題をぶじ終え、火曜日には今日子ちゃんと水道橋筋の憧れのお肉屋さんへ行った。
水曜日は中野さんがいらして、翌日の午前中に電車に乗って京都へ。
「メリーゴーランド」でのトークの前に、宮下さんの家で陶芸をしたり。
陶芸の前には、河原でお弁当を食べたり。
トークの夜は、「草と本」というお宿に泊まった。
空気が澄んでいて、とっても気持ちのいい宿だった。
山科の「MUJI BOOKS」にも行き、『気ぬけごはん2』、『おにぎりをつくる』、『みそしるをつくる』、『本と体』にサインをしてきた。
『たべたあい』、『それから それから』にも中野さんとサインした。
この5日間、楽しいことがたくさんあった。
赤や黄色の葉が光を反射させながら、ちらちらちらちらと舞い落ちるように、いろいろな場面が浮かんでは消えていくのだけど、何だか言葉にできないや。
中野さんはさっき帰っていった。
私も一緒に坂を下り、六甲で買い物をたっぷりして帰ってきた。
明日は潤ちゃんがうちに来る。
神戸の私が京都に行ったかと思ったら、今度は京都の潤ちゃんが神戸にやってくる。
サイン用の本を、わざわざうちまで持ってきてくださる。
お昼ごはんを一緒に食べる予定なので、今、鶏手羽元に塩とごま油をもみ込んで、スープの下煮をしているところ。
皮つきにんにくと生姜、だし昆布も加えた。
明日の朝、ここにかぶを加えて煮ようと思う。
来週は、土曜日からまた東京へ行く。
12月6日(日)に『自炊。何にしようか』の刊行記念イベントがあるので。
お相手は『食べたくなる本』の著者三浦哲哉さん。
詳しくは「ちかごろの」をご覧のうえ、みなさまどうぞご参加ください。
配信の参加申し込みは、サイン本つきの締め切りが12月3日(木)、チケットのみは12月6日(日)の14時までなのだそうです。
『食べたくなる本』を読んだときのことを、去年の日記に書いたような気がして、遡ってみた。
あった、あった!
5月15日の日記だ。
自分の日記を引用するなんておかしいけれど、ここに書き出してみます。

「東京では、中野さんと小野さんがトークをした青山ブックセンターで、『食べたくなる本』を買った。
料理本批評の本だそう。
私はちっとも知らなかったのだけど、自分のことが書いてあった。
私がこれまで書いた本を通して、とても公平な眼差しで、私のことを深く分析してあった。
それを、3回は読んだ。
なんだか、たいへんうまく私のことを表してくださっているようでもあり、誰か知らない、おもしろくて変な人のことが書かれているような気もしたり。
いいお天気の日に、公衆の面前で、体を裏返しにされたみたいな感じもした。
あんまり触れたくないなとつねづね思っている自分の底に、触らざるおえなくなって、触ってみたら、以外とその底に励まされたような。
へえ、そうなんだ。
私はやっぱり、変わっているのか。
理由があってこうなっているので、自分では普通だと思っていたけれど。
そもそも、普通って何なんだろう……とも思うけれど。
私みたいな変な料理家は、ほかにはいない。
だからこうして今でも本を作れたり、新しいことに挑戦できる仕事をいただける。
それはたいへんありがたく、光栄なことだと思う。
著書の三浦哲哉さん、本のなかに、私のような者を取り上げてくださり、ありがとうございました。
いつかお会いして、もっとお話を聞いてみたいです」

そうか私は、あのときから三浦さんにお会いしてみたかったんだったな。
なんだかどきどきするなあ。
みなさま、ぜひ、お見逃しなく!
夜ごはんは、卵とピーマンのチャーハン(中野さん作、お昼の残り)、春巻き(スーパーの)、鶏スープ(手羽元、水菜)。
『機関車トーマス』を見ながら食べよう。

●2020年11月21日(土)曇りのち晴れ

今朝の陽の出は雲が多く、顔を出したかと思ったらすぐに引っ込んだ。
でも、雲に透ける陽光の荘厳さといったら。
雲の穴からオレンジの強烈な光が差し、オレンジの山が海に浮かび上がった。
ベッドに寝そべり仰ぎ見る空。
明けの明星がぽつんと光っている。
西側の雲は、流れては生まれ、また流れる。
窓を開けると、きのうより肌寒い。
空気がキンと尖っている。
さ、今日もまたがんばろう。 
宿題を、ひとつづつ終わらせていかないと。
26日(木)には、京都の「メリーゴーランド」で、店主の鈴木潤ちゃんと対談をする。
閉店後のお店の本棚から、目にとまったものを取り出して、開いて、読んで……気ままにおしゃべりをする絵本談義。
メリーにはエッセイ集や料理本も置いてあるから、そんな本も出てくるかも。
私の好きな絵本はほとんどメリーに揃っているけれど、うちからも何冊か持っていこうと思う。
クリスマスのおすすめ絵本も、お互いに紹介し合いたい。
あと、『本と体』についてはもちろんだけど、私が書いた絵本(8冊ある!)の感想も聞いてみたいな。
私は潤ちゃんの著書『物語を売る小さな本屋の物語』について、質問をしよう。
オンライン配信のみだそうなので、遠くのみなさんもおうちで参加できます。
詳しくは、「ちかごろの」をご覧の上、どうぞご応募ください。
今、こうして日記を書いていたら、部屋が急に明るくなった。
海の光っているところの照り返しが、ここまで入ってくるみたい。
ほんと、今日のは鏡のよう。
あまりに眩しく、目をそらしてしまうほど。
曇りがちな日ほど、海も空も、明るいところと暗いところの対比がくっきりするんだな。
ドラマチック!
夕方の4時には、鈴木さんが原稿(きのう赤を入れたもの)を受け取りにきてくださる。
それまで、『帰ってきた 日々ごはん8』の「おまけレシピ」と、書評(『海と山のオムレツ)の原稿に集中しよう。
夜ごはんは、お弁当(豚のしょうが焼き、ゆで卵、蕪と蕪の葉の鍋蒸し炒め)、ポテトサラダ、味噌汁(ワカメ)。

●2020年11月20日(金)雨のち曇り

ひさしぶりの雨。
朝起きて、窓を開けたら、赤や黄や緑の葉が濡れていい匂いがした。
ほうじ茶系のお茶みたいな匂い。
濡れて、木の葉の色が濃くなっている。
近くの木はよく見えるけど、海も街も上の方がうっすらと霧に覆われている。
今日は11時から「Zoom」の打ち合わせ。
川原さんと鈴木さんと3人でやる。
雨はやんだみたい。
海のまん中へん、太陽の当たっているところが白く発光している。
靄のせいでまわりがぼんやりと白っぽいものだから、大きな広場は白銀。
広場に連なるところは、波がさざめいて薄く伸び、飛行機から見える雲海に似ている。
そうか。
雲海というのは、雲の海と書くのだな。
打ち合わせが終わったら、『エール』を見ながらすぐにご飯が食べられるよう、お弁当も詰めておいた。
おかずは、鯵のかば焼き(ゆうべのお刺身の鯵をとっておいた)、卵焼き、蕪と蕪の葉の鍋蒸し炒め、なすの皮の即席しば漬け。
さ、「Zoom」がはじまる前に、「気ぬけごはん」の校正をやってしまおう。
午後、打ち合わせが終わってからは、猛然と『日めくりだより』の作業に向かう。
原稿に赤を入れ、加えてほしい写真を切り貼りし、キャプションのテキストも書いた。
5時、カラスの集会が絶好調。夕暮れの空に、カアカアカアカアが何重にも響き渡っている。
今は7時。
ふー、終わった。
夜ごはんは、ハンバーグ(「コープさん」のレトルト)、ポテトサラダ(じゃがいもを丸ごとゆで、白菜と人参の塩もみサラダの残りを合わせ、ゆで卵と塩もみきゅうりもプラス)、トマトソース和えフジッリ(いつぞやの)、昆布の薄味佃煮、たくあん、ご飯。

●2020年11月19日(木)晴れ

6時に起きてカーテンを開けた。
街はまだ暗いけれど、空が明るんできている。
寝転んでいると、窓すれすれに飛ぶカラスのお腹が見える。
雲が多いから、陽の出は見られないかなと思っていた。
そしたら、すじ雲が紅くなって、そのうち山の上の雲の輪郭が光り出し……にゅるーっと姿を表した。
今朝のもまた大きいなあ。
ブンタンほどもある。
ラジオの7時のニュースがはじまる前に、もう起きてしまう。
宿題がたまっているので。
まずは、『帰ってきた 日々ごはん8』の校正の続き。
なんだか今日は、陽射しが夏みたい。
玄関を網戸にしていないと暑い。
校正は4時には終わり、ポストに投函がてら「コープさんへ」。
荷物が多かったせいもあるけれど、汗をたっぷりかいて坂を上った。
夏の終わりくらいの暑さだった。
いい運動になったな。
帰りつき、先にお風呂に入ってしまう。
お風呂上がりも半袖で、窓を開けて涼んだ。
ほんとに夏みたい。
夜ごはんは、鯵のごまヅケ、蕪のなたね油焼き、ワカメときゅうりの酢の物(ラッキョウの漬け汁、酢、薄口醤油)、さつま芋の味噌汁、ご飯。

●2020年11月17日(火)晴れ

ゆうべ、東京から帰ってきた。
タクシーから下りたとき、前回と同じく強い風がぴゅーーっと吹いた。
そして、玄関の鍵を開けようとしたら、柱時計の音が部屋から聞こえてきた。
ボーン、ボーン、ボーン……と、ゆっくり10回鳴った。
うちの時計は遅れがちだから、多分10時20分くらいだったと思う。
六甲おろしと柱時計に、「おかえり、よお無事に帰ってきたな」と迎えられたような気がした。
ぐっすり眠って、10時半に起きた。
まだまだ寝たりないけれど、急ぎのメールのお返事をひとつ送らなければならないので。
そしてまたベッドに戻り、けっきょく1時間ほどうとうとして起きた。
日中の光はとても眩しく、暑い。
東京もずいぶん暑かったけれど、ここはさらに暑い。
窓の外の木が急に色づいた。
猫森の木の葉は紅葉を通り越し、ずいぶん落ちている。
わずか3日間留守をしただけなのに。
でも六甲は、時間がたっていない感じがする。
私ひとりが東京に行き、六甲とはまったく違う時間の流れを過ごし、いろいろなことを感じ、あたふたと帰ってきた。
まだ、頭も体もぼんやりしているので、仕事モードではないけれど、『日めくりだより』のデザイン案(本の形に綴じてある)をベッドの中で読んだ。
文と写真が、すーっと体に染み入ってくる。
なんだか甘くやさしい、口のなかですーっと溶けるお菓子のような。
絵本のような。
この本は、くたびれていても、たぶん、病気になったときでもちゃんと読めるものになるんだろうな、と思った。
そういう造本。
「リンネル」で連載していたものが、川原真由美さんのデザインで、新しく生まれ変わります。
今は4時半を過ぎたところ。
空気が黄色がかっている。
なんだかカラスがやけに騒がしい……と思ったら、前の建物の屋上にどんどん集まってきた。
今年初の、集会だ。
夜ごはんは、オムレツ、白菜と豚バラ肉のくったり煮、たくあん、昆布の薄味佃煮、ご飯。

●2020年11月14日(土)晴れ

6時半に起きた。
部屋の中を黄色い光でいっぱいにして、寝ながらストレッチ体操。
朝ごはんのヨーグルトは、柿とバナナ。
海の光っているところは、幻。
とても暖かい。
洗濯物を干しているとき、ちょっと汗ばんだほど。
9月の末くらいの感じ。
今日はこれから美容院に行って、ちょっと買い物し、六甲道から新神戸までバスかタクシー。
そして東京へ。
5時過ぎには吉祥寺に着く予定。
明日はいよいよ、B&Bでのトークショー。
『自炊。何にしようか』の制作秘話を、赤澤さんといろいろ話す。
立花くん、斎藤くんにも参加してもらうつもり。
会場で流す予定の、立花くんのメイキング映像をおとつい見せていただいた。
なんだか、短編映画みたいだった。
会場まで足を運んでくださる方、配信で見てくださる方、映像もまた楽しみにしていてください。
そしてきのうは、『みそしるをつくる』のプロモーション・ビデオもアップされました。
楽しい動画なので、音が聞こえるようにして、ぜひ!
https://www.instagram.com/p/CHhNsYKpHlI/

さ、そろそろ出かけよう。

●2020年11月11日(水)晴れのち曇り

6時にカーテンを開けた。
薄暗い空に、下だけオレンジの帯。
街の灯りもまだついている。
だんだんに明るくなっていく空を、カラスたちが乱舞していた。
6時半に陽の出。
猫森の隙間からのぞいた最初の光は、線香花火の玉みたいなほんのぽっちり。
でも、ものすごく光っていた。
ベッドに立ち上がって見た。
じわじわと昇ってくる。
あれ、すごく大きいぞ。
完全に顔を出した。
そのとき、とても静かだった。
小鳥の声も聞こえなかった。
まっすぐに上っている煙突の煙も、街も、道路も、何もかもが静止していた。
それにしても大きかったな。
みかんかなあと思っていたら、グレープフルーツくらいあった。
今日は11月11日。
1111だから、独身の日なのだとラジオで言っていた。
そうなんだ。
朝ごはんを食べているうちに、ちょっと曇ってきた。
洗濯物を干し終わったら、「気ぬけごはん」を仕上げてお送りしよう。
今日から『帰ってきた 日々ごはん8』の再校正。
その前にあちこち掃除して、スッキリさせよう。
夜ごはんは、カレーライス(いつぞやのミネストローネ・スープの残りに、豚肉とカレールウを加えた。福神漬、らっきょう、紫玉ねぎの即席ピクルス)、さつま芋のフライパン焼き。

●2020年11月10日(火)晴れのち曇り

今週の「古楽の楽しみ」は、関根敏子さんのようだった。
ねぼけた頭に、うっすらと入ってきた。
そのあとのニュースはまったく入ってこなくて、7時半に起き、カーテンを開けた。
今朝もまた、女神さまが現れそうな海の光。
そこだけ金箔を張ったよう。
朝ごはんは、ひさしぶりにクリームチーズのバナナサンドを食べた。
バナナはもう少し熟していると、もっとおいしい。
ラジオからはバッハの無伴奏バイオリン・パルティータ。 
海がさんざめいていても、心は落ち着いている。
さ、今日こそは「気ぬけごはん」だ。
午後から曇りがちになり、気温が下がってきた。
ぐっと集中し、夕方にはだいたい書けた。
本当は今日が締め切りだったのだけど、一日延ばしていただいた。
明日、推敲してお送りしないと。
今日は、『海と山のオムレツ』が届いた。
とっても綺麗な本。
「Title」の辻山さんのインスタグラムで見かけてから、ずっと気になっていた。
たまたま書評の仕事で送っていただいたのだけど、ご褒美みたいに嬉しい。
今夜からベッドの中で読もう。
夜ごはんは、鴨南蛮風釜揚げうどん(鶏肉、干ししいたけ、ほうれん草、スダチの皮、ねぎ)。

●2020年11月9日(月)快晴

8時に起きた。
すっかり寝坊した。
今朝の海は、太陽が当たったところが広く平らに燦然と輝き、そこからすーっと女神が立ち現れてきそう。
「あなたの探しているのは金のお皿? それともふつうのお皿?」の、女神さまだ。
朝ごはんは窓辺のテーブルで食べた。
あまりにも海が光っていて、目が離せないので。
ずいぶん広い範囲で光っている。
さざめく波がきらきらちかちか。
私の心も、さざめいている。
こういうときは文を書けばいいのだけれど。
文は心を鎮めてくれるから。
2階の床にぺたんと座って、干す前の洗濯ものをパタパタと広げながら空を仰ぐ。
今日は海だけでなく、雲もよく光っているのだった。
輪郭が金色。
3時半に「コープさん」へ。
帰りはタクシー。
待っても待っても来ないタクシーを、暮れなずむ道を行ったり来たりしながら、30分くらい待っていた。
ずいぶん寒くなったな。
夜ごはんは、アジフライ&ポテトサラダ(どちらも「コープさん」の。ポテトサラダにはレタスを加え、マヨネーズとフレンチマスタードを加えた)、ゆで卵、味噌汁(ワカメ)、ご飯(新米)。
なんだかお弁当みたいになってしまったけれど、こういうのがずっと食べたかったみたい。
おいしかったな。

●2020年11月8日(日)晴れ

今朝もまた、空と海とに太陽が。
カーテンを開け、黄色い光で寝室をいっぱいにしてから起きた。
体温は5度2分。
風邪はもう、すっかり治った感じがする。
来週はまた東京に行くので、体調を整えながら、ひとつずつやることをやっていこう。
「気ぬけごはん」も書きはじめないと。
こんどの東京は、下北沢にある本屋「B&B」にて、『自炊。何にしようか』のトークイベントと、「ダ・ヴィンチ」の取材。
『本と体』のインタビューもひとつお受けした。
14日(土)の午後から出掛け、川原さんの家に2泊させてもらうつもり。
「B&B」では、『自炊。何にしようか』がどんなふうにしてできたかなどを、私の相棒の編集者、赤澤かおりさんと対談します。
立花くんが撮ってくれた、撮影時の動画も流すそうです。
定員は10名ほどで、すでに満席とのことですが、同時にネット配信もされるようです。
ご興味のある方は、「ちかごろの」をご覧ください。
赤澤さんのインスタグラムでも、撮影風景の写真と共に告知してくださっています。
https://www.instagram.com/p/CHNno79FSjI/

今日はけっきょく、「気ぬけごはん」の冒頭の散文を書いただけ。
トークイベントのための資料を、なんだかんだと支度していた。
もうじき5時。
雲がオレンジ色に染まりはじめた。
夜ごはんは、オイスターソース味の焼きそば(レタス、目玉焼き)、さつま芋のオイル焼き、ワカメたっぷりスープ(だし汁、塩、薄口醤油、生姜、ごま油)の予定。

●2020年11月7日(土)曇り

7時半に起きた。
霧が出て、窓が白い。
地面が濡れている。
ゆうべは、雨が降ったのだな。
ラジオでピーター・バラカンがかかっている。
トム・ペティの曲ばかり、ずっとかかっている。
なんとなしに体が軽く、熱を計ると5度2分。
平熱に戻った!
きのうはまだ体が怠く、鼻水がずるずるして、体が熱かった。
お昼に計ったら6度8分。
私は人より体温が低いので、微熱だ。
それでまた、ベッドに戻って本を読みながら一日中寝ていたのだった。
風邪のひきはじめって、三食しっかり食べ、温かくして睡眠をたっぷりとれば、本当に治るんだな。
今朝は体が軽く、前よりも元気になっているような感じがする。
さ、今日からまた仕事をはじめよう。
まずは、「絵本ナビ」の原稿を確認すること。
さっき、『帰ってきた 日々ごはん8』の2校ゲラも届いた。
お昼ごはんに、さいの目に切った玉ねぎ、人参、大根、白菜をなたね油で順番に炒め、ゆで汁ごとの大豆とトマトソースを加えてミネストローネスープをていねいに作った。
野菜がある程度やわらかくなったころ、さつま芋もさいの目に切って加えた。
大根も人参もさつま芋も、島さんが送ってくださった畑の野菜だ。
夜ごはんは、ドリア(ミネストローネ・スープの残りに冷やご飯を加え、ホワイトソースをかぶせ、エメンタール・チーズをおろして焼いた)、茄子のオイル焼き。
ドリアがたまらなくおいしかった。
まるでドリアにするために、ミネストローネ・スープをていねいに作ったみたいな味。
野菜の甘みがしみたトマト味のご飯に、ホワイトソースと、コクのあるチーズ。
牛乳が足りなかったので、ホワイトソースがぼってりと硬めだったのもよかったんだと思う。
しかも私は慌てていて、ナツメグのふたをホワイトソースの上に落とし、いつもより多めに入ってしまったのだった。
風呂上がり、小さな電気だけつけて顔にクリームを塗っていたら、夜の黒い窓ガラスに、細かな雨が当たっているのが見えた。
窓いっぱいに張りめぐらされたクモの糸に、雫が光っているみたい。
ラジオからはメヌエット。
「私、ここに来られて、本当によかった」などと、母に話しかけたりして。

●2020年11月5日(木)晴れ

7時に起きて、カーテンを開けたら、昇ったばかりの太陽が海に大きく丸く映っていた。
とても眩しい。
太陽がふたつあるみたい。
朝風呂に入り、いつものように朝ごはんを食べているとき、のどの端っこがピリッとした。
もしかしたら風邪のひきはじめかも。
京都に行ったり、その前には東京出張もあったりして、あんがい私はくたびれていたのかな。
月曜からきのうまでは、中野さんと過ごしていたし。
きっと、遊びすぎだ。
今日は一日、温かくして寝ていようと思う。
「気ぬけごはん」の次のメニュー案だけ書いて、村上さんにお送りした。
洗濯物も干した。
お昼ごはんは、ゆうべの白みそのおうどんの残りがあるから、だし汁を足して、あんかけにして、かき玉うどんにしよう。
ニラも入れよう。
しょうがもたっぷりおろして入れよう。
食べながら『エール』を見よう。
今、うがい薬でうがいをしたら、のどの痛みは消えたような気がする。
きのう、島さんが送ってくださった花梨で、ジュレを作っておいてよかった。
花梨はのどにいいから。
とにかく花梨のジュレのお湯割りを飲んで、寝よう。
スパッツはいて、膝丈靴下はいて、あったかくして。
夜ごはんは、野菜スープ(白菜、大根、人参)、ご飯(新米)、海苔の佃煮、たくあん。

●2020年11月1日(日)晴れのち曇り

8時半に起きた。 
ゆうべは帰ってきたのが10時過ぎで、お風呂に入ってすぐに寝た。
もう、バタンキューだった。
きのう私は宮下さん(『本と体』のライター)と、京都の本屋さんめぐりをした。
『それから それから』のポスターを持って、押しかけサインをしに。
六甲道からのJRひとり旅も楽しかったな。
紅葉のはじまっている山々を眺めながら、温かいほうじ茶を飲みながら、とことこと1時間ちょっとで着いた。
まず、山科の「MUJI BOOKS」。
ここは「無印良品 京都山科店」の中にある本屋さん。
オープンしたころに、みどりちゃんや「メリーゴーランド」の潤ちゃん、細川亜衣ちゃんもトークイベントをしていて、いつか行ってみたいなあと思っていたところ。
加藤休ミちゃんが、魚屋さんのコーナーに鯖の大きな絵を描いていたし。
食べものにまつわる本がいっぱいあって、絵本もあって、なんだかおいしそうな本屋さんだった。
黒板に「今日のずっといい言葉」というのを書いたり、本を持って記念撮影をしたり。
そのあと、電車とバスを乗り継いで、浄土寺の「ホホホ座」にも行った。
お昼ごはんは、たまたまみつけた可愛らしいパン屋さんで。
「ホホホ座」で店番をしているとばかり思っていたこのみちゃんが、アルバイトをしていてびっくり。
クロックムッシューと、シナモントースト(メープルシロップ添え)を宮下さんと半分ずつして食べ、お土産に買ったチキンの半身焼き(にんにく風味)をこのみちゃんに渡した。
「ホホホ座」のガレージには、ポケットをその場でつけてくださる出店の方がいて、私は夏用のバックの内側に、水玉のかわいらしいのをつけてもらった。
宮下さんは着ているコートにつけてもらっていた。
「ホホホ座」の山下さんとおしゃべりしながら、『自炊。何にしようか』にサインをしたのも楽しかったな。
山下さんは立花くんの大ファンなのだそう。
店内をぐるりとまわり、大竹昭子さんの『室内室外 しつないしつがい』という小さな本をみつけ、買った。
またバスに乗って、河原町まで下りてきて、「メリーゴーランド」へ。
最後は呑み屋さんのお総菜を買って、ワインも買って、潤ちゃんの家におじゃました。
潤ちゃんが作ってくれたのは、焼き枝豆(丹波の黒枝豆)、焼き百合根(なたね油で焼いたのだそう)、じゃがいもの重ね焼き(チーズ)、焼き万願寺唐辛子のカリカリじゃこのっけ、焼き厚揚げ(鬼おろし、ポン酢醤油)、水菜のサラダ(ごまがたっぷり)。
どれもおいしかったなあ。
今朝は、起きぬけにベッドの中で本を読んだ。
きのう帰りがけにいただいた、山下さんの『にいぜろ にいぜろ にっき 9月』。
おもしろくて途中でやめられず、最後まで読んでしまった。
続いて、『室内室外 しつないしつがい』。
なんだか旅がしたくなる本。
今日は、仕事をまったくせずに、たまっていたメールの返事を送ったり、日記を書いたりして過ごした。
気づけばもう5時。
対岸の山は青灰色に霞んでいる。
海の向こうのオレンジ色の灯りが、ちらほらと灯りはじめた。
「♪ゆーきや こんこん あられーや こんこん ふってもふっても まーだふりやまず」の歌をかけながら、給油の車がうちの前を通っている。
今年はじめて聞いた。
もう、ストーブの季節になったのだな。
夜ごはんは、『機関車トーマス』を見ながら、ピーマンの焼きびたし、フジッリ(きんぴらごぼう、皮をむいた茄子、おろしチーズ)。

●2020年10月28日(水)晴れのち曇り

8時に起きた。
寝坊した。
ゆうべは12時に寝たので、よしとする。
オフィス・ジロチョーさんが送ってくださった、『佐野洋子 100万回だってよみがえる』という赤い本がおもしろくて、やめられなかった。
起きてカーテンを開けたら、海の白く光っているところが、鏡を通り越し、幻みたいに発光していた。
朝風呂から出てきても、まだ幻だった。
着替えている間に、普通のきらきらに戻った。
今朝の茶葉は「うれしの紅茶」。
きのう、長野くんが福岡から送ってくださった。
東京に行ったとき、私はちょうど紅茶を切らしていて、どこかで買って帰るつもりだった。
それを長野くんに話したら、ブロンズ新社の近の紅茶が売っていそうなお店をスマートフォンで探してくれ、帰りの品川駅でも、一緒に探しまわってくれたのだった。
けっきょくみつからず、買わずに帰ってきた。
翌日か翌々日、長野くんは福岡へ出張だったらしい。
「うれしの紅茶」は長いこと私の憧れだった。
「SとN」の取材で佐賀に行ったとき、みんながおいしいおいしいと言っていたので。
ていねいにいれてティーカップに注いだとき、ふわーっと香って、いつものより断然おいしかった。
うれしいなあ。
さて、今日が締め切りなので、『気ぬけごはん2』の校正の続きをがんばろう。
集中してやれるよう、お弁当のおかずも詰めておいた。 
きんぴらごぼう、ひじき煮、ウインナー炒め、甘い卵焼き(コーン)、にらのおひたし。
これでバッチリ。
『エール』がはじまるまで勤しもう。
午後から肌寒くなり、曇ってきた。
さあ、もうひとがんばり。
3時には終わった。
これでもう、思い残すことはない。
宅配便にのせるため、コンビニまで散歩がてら坂を下りる。
『気ぬけごはん2』は、2013年冬から今年の夏までの7年分なので、レシピは120品以上となった。
よくこんなに書いたなあ。
11月24日に発売予定だそうです。
夜ごはんは、クリームシチュー(おとついの残りを温めた)、カレイの照り焼き、ごぼうのサラダ、昆布の佃煮、ご飯。
カレイは眼鏡をかけ、箸で細かくほぐしながら食べた。
もしもまた小骨が刺さったら、病院に行くのはとても恥ずかしいので。

●2020年10月27日(火)晴れ

今日も秋晴れ。
猫森の葉はさらに黄ばんできた。
茶色がかっているところもある。
ピンポンが鳴って、今年もまた、中野さんから新米が届いた。
わーい。
2時まで『気ぬけごはん2』の校正をやって、坂を下りた。
郵便局と、「MORIS」と、耳鼻科へ。
耳鼻科は2年前くらいにも、通っていたことがあるのだけれど、やっぱりとてもいい病院だった。
まず先生が、医師らしくない(いばっていないという意味)。
私が言うことを、パソコンのカルテに打ち込んでいる。
「何の骨ですか?」
「カレイの骨です」
「カレイノホネ」
「いつからですか?」
「おとついです」
「あまり痛みはないけれど、触ると刺さっているのが分かります」
「白いものが見えますが、これかなあ……」と、先生は自信がなさそうにおっしゃって、奥から挟む器具を探して持ってらした。
きっと、滅多に使わないからしまい込んでいるんだ。
私に「エーー」と言わせている間に、のどの奥を覗き込み、迷いなくつかんだら、あっという間に取れた。
ああ、スッキリした。
口中に引っかかるものがないって、なんて気持ちがいいんだろう……と思いながら、跳ねるように帰ってきた。
看護婦さんがティッシュに受けてくださった骨を、記念にもらって帰ってきたのが、今、仕事机の上にある。
測ってみたら、1・5センチもある。
指で触れた先はわずかだったから、尖ったところがずいぶん深く刺さっていたのだな。
帰ってからすぐに、お米を研いだ。
今日は、『それから それから』の「Title」の原画展の最終日なので、お祝いに新米を炊いた。
炊き上がったご飯は、ハッとするほど真っ白だった。
新米って、こんなにぴかぴかだったっけ。
こんなにもちっとして、おいしかったっけ。
おかわりをした。
夜ごはんは、クリームコロッケ(スーパーのを、フライパンに”くっつかないホイル”を敷いて温めた)、ほうれん草のなたね油炒め、ごぼうサラダ、きんぴらごぼう、海苔の佃煮、味噌汁(お麩、ねぎ)、新米。
食後に、「すや」のおいしい栗きんとん(今日子ちゃんにいただいた)。
ああ、お腹いっぱい。
ごちそうさまでした。
のどに骨が刺さっていないって、素晴らしい。
新米は2合炊いたので、お弁当箱に詰め、ごまをふって梅干しをひとつ。
明日のお昼ごはんが愉しみだ。

●2020年10月26日(月)快晴

7時に起きた。
とてもよく眠れた。
カレイの小骨が刺さっていても、寝ると気にならない。
今朝もまた、海が光っている。
ヨーグルトはりんごと柿。おいしいなあ。
骨は、朝ごはんを食べたら少しましになった。
「コープさん」から荷物が届くので、午前中は出かけられない。
『気ぬけごはん2』の校正の続きに集中する。
お昼に、ゆうべのスープの残りにコーンとお麩と牛乳とクリームシチューの素を加え、食べ終わったら、ほとんど気にならなくなった。
でも、まだ刺さっているみたい。
触ると分かる。
もう少し様子をみて、明日になっても変わらなかったら病院に行こう。
『気ぬけごはん2』の校正は、気が散ると窓辺でお裁縫をしながら、200ページくらいまでやった。
あとは、明日。
夜ごはんは、ごぼう尽くし。きんぴらごぼう、ごぼうのサラダ(すりごま、ねり辛子、玉ねぎドレッシング、マヨネーズ)、おでん風煮物(ごぼう巻き、大根、白菜、油揚げ、ゆで卵)、きのこご飯(いつぞやの)。
風呂上がり、空の高いところで月が煌々。

●2020年10月25日(日)快晴

7時半に起きて、ベッドの上で体操をして、カーテンを開けたら真っ青な空。
太陽の真下の海が、ぴかーっと白く光っている。
鏡のよう。
眩しい朝、旅の疲れはまったく残っていない。
日帰りってすごいな。
朝ごはんを食べ、いつものように「高山なおみハッシュタグ」のインスタグラムを見ていたら、とても嬉しいコメントをみつけた。
『自炊。何にしようか』について。
その方は20代のお母さん。
私のファンというわけではなく、たまたま本屋さんで手に取り買ってくださったみたい。
コメントには「日常の流れに寄り添った料理の作り方」「自炊との向き合い方」という言葉があった。
「私はこういうことを教えてほしかったのだな。そういうことを教えてくれる本に初めてであった。もう手放せないなーー」とも書いてあった。
『自炊。何にしようか』は、頭でっかちにならないように、台割や企画などを何も立てずに作りはじめた。
神戸に越してから私がやっていることを、できるだけ正確に、ただただ料理を作り、斎藤くんにそのままを撮っていただいた。
そして、今の自分にいちばん近い言葉で文とレシピを書いた。
どんな本にしようとかいうのは、私には何もなかった。
すべて分かっていて形にしてくださったのは、赤澤さんと立花くん。
そうか、私はそのような本を、こういう人たちに向かって作りたかったんだな……と気づいた朝。
『自炊。何にしようか』が、このコメントを書いてくださった方のもとに届くことができてよかった。
かけがえがないな。
よーし、次の本もがんばるぞう。
今日から『気ぬけごはん2』の、最後の見直しをやろう。
大豆をゆでながらやるつもり。
100ページまでやって(全部で300ページくらいある)、3時ごろ坂を下りて買い物へ。
『コープさん』は、いつもよりずっと賑わっていた。
夫婦で来ている人たちが多かった。
日曜日のせいかな。
帰り道、金木犀の花はすっかり散り落ち、道路の隅にオレンジ色が集まって、桜の葉もところどころ赤くなっていた。
荷物をかついで坂を上っても、もうそれほど汗をかかない。
東の空には白い半月。
夜ごはんは、ゆで大豆と野菜のスープ(大根、人参、白菜、粗びきソーセージ)、カレイのオリーブオイル塩焼き(にんにく)、トースト。食後に柿。
カレイの小骨がのどにささってしまった。
縁側の香ばしく焼けたことろがおいしくて、バリバリと食べたからだ。
明日になっても取れなかったら、耳鼻科に行った方がいいんだろうか。 

●2020年10月24日(土)快晴

ゆうべは11時ごろに帰ってきた。
なかなか新神戸に着かなくて、東京はやっぱり遠いなあと思いながら。
タクシーを下りたとき、マンションの玄関で強い風にビューーーッと煽られ、髪の毛が翻った。
これは六甲ならではの風。
「おかえり」と迎えられた感じがした。
今朝は8時半に起きた。
眠れたような、眠れなかったような。
東京での余韻が体に残り、ずっとどこかが昂ってもいるようで、おかしな夢をたくさんみた。
それにしても、今朝の海の光り方は尋常じゃない。
広い範囲でさざ波立っている。
気持ちのいいこと。
東京への旅のお供は、『犬の話』という文庫本だった。
いろいろな作家が犬についての思い出を書いている。
私は多分、20年くらい前にこの本を買ったのだけど、幸田文さん、佐野洋子さん、武田百合子さんのだけしか読んでいなかった。
今回は新幹線の中で、最初から順番に読んでみた。
ひとりひとり、皆いろいろで、それがとてもよかった。
百合子さんのは、『富士日記』に出てくるポコが死んだときの日記だ。
それを、帰りの新幹線で読んだ。
何度も読んでいるから暗記しているほどの文。
ひさしぶりに読んだら、永遠な感じがした。
読んでも読んでも終わらないような。
くり返し続いていくような。
それは、日記というものが持つイメージというか。
人が生きていくことのイメージというか。
百合子さんは、自分のことだけしか書かない。
エゴとか、自我とか、そういう匂いのする文のようにも見える。
でも違う。
大きく超えている。
やっぱり百合子さんのは別格だった。
今日は午後から、『帰ってきた 日々ごはん8』の校正。
集中が切れると立ち上がり、海を見て、首をまわし、また続き。
4時前にはひと通り終わった。
締め切りはまだ先なので、しばらくねかせておこう。
明日から、『気ぬけごはん2』の最終校正にとりかかる予定。
夜ごはんは、白菜と水菜のサラダ(玉ねぎドレッシング、生の金ごまたっぷり&ちりめんじゃこを炒って和えた)、牛すじカレー。

●2020年10月23日(金)雨

明け方から雨の音が聞こえていた。
カーテンを開けると薄暗い。
海も空もけぶっている。
ゆうべはとてもよく眠れた。
ベッドの上で体がのびのびしていた。
朝ごはんを食べ、のんびり支度する。
『エール』も見た。
さて、もうちょっとしたらタクシーのお迎えがくる。
今日はブロンズ新社で、長野くん、寄藤さん、私で『みそしるをつくる』についての鼎談をする。
「絵本ナビ」というサイトの取材だそう。
佐川さんも参加してくださるみたい。
子どものころの写真を持っていく。
さて、どんなことになるだろう。
終わったら軽く打ち上げをしてくださるそうなので、どこへも寄らずに新幹線で帰ってくる。
小さな旅のようで楽しいな。
では、行ってきます。

●2020年10月22日(木)晴れのち曇り、夕方になって小雨

静かな朝。
海の白く光っているところを見ながら、柿のヨーグルト。
柿はヨーグルトに合うなあ。
猫森の葉がずいぶん黄ばんできている。
玄関にまわると、裏山も紅葉がはじまっている。
もう、秋のまん中だ。
洗濯物を干してから朝の散歩。
手紙を出しにポストまで下りた。
ススキやカヤの銀茶に混ざり、黄色のセイタカアワダチソウ。
金木犀だけでないほんのりとした花の香り。
秋はいい匂いがするんだな。
植物全体の香ばしい匂い。
つやつやした赤い実をひとつ拾い、ゆっくり坂を上って帰ってきて、母の祭壇に供えた。
さて、きのうの続きの『帰ってきた 日々ごはん8』の校正をがんばろう。
残すところあと二月分だけど、しばらく間が空いたので、今日は最初から通してやろうと思う。
お昼前、ピンポンが鳴って、『気ぬけごはん2』再校正のゲラが届いた。
明日はまた東京。
帰ってきたら、こんどは『気ぬけごはん2』だ。
夜ごはんは、湯豆腐(絹ごし豆腐、水菜、大根おろし、ポン酢醤油)、とろろ芋(アカモク、ねぎ醤油)、きのこの炊き込みご飯(干し椎茸、舞茸、にんじん)。
食後、残った炊き込みご飯をおにぎりに。
明日、新幹線の中で食べようと思って。

●2020年10月18日(日)曇り

6時半に目覚め、ベッドのなかでうろうろ。
7時に起きた。
きのうは、美容院の帰りに「MORIS」に寄って、今日子ちゃんとヒロミさんと3人で夕焼けを見た。
私の神戸ライフ。
雲を染めるオレンジ色みたいに、ほんのり幸せ。
今日は、筒井くんと絵本の打ち合わせだ。
京都から出てきてくださる。
中野さんは、ひと足先に11時半くらいにいらした。
きのうのうちに原画も届いている。
この絵本の打ち合わせで、東京の編集者と筒井くんがうちにいらしたのは、いつだったっけ。
まだ、コロナの声など聞こえなかったころだったかな。
絵もテキストも、もう送り出すところまでできているので、終わったら、ささやかに乾杯するつもり。
今、牛すじカレーの支度をしているところ。
打ち合わせの前のお昼ごはんは、ミニ牛すじカレー(福神漬)、コールスロー(キャベツ、人参、玉ねぎドレッシング)。
終わってからの乾杯メニューは、枝豆(京都の大粒)のフライパン焼き、ホタルイカの干物、小松菜のお浸し(辛子酢みそ)、ブリカマ塩焼き(かぼす)、ドフィノア(じゃがいものクリーム焼き)、卵チャーハン(中野さん作)。ビール、赤ワイン。

●2020年10月17日(金)快晴のち曇り、一時雨

ゆうべは風が強く、音を聞きながら寝た。
うっすらと目醒めてはゆらゆら、夢をみてはまたゆらゆら。
起きたら8時だった。
いくらでも眠れそうだった。
東京の疲れが、まだ体のどこかに固まっているのかも。
風もなく、穏やかなお天気。
海も光っているけれど、木の葉がキラキラチカチカ。
秋の陽射しだ。
なんか、運動会日和。
さて、今日から『帰ってきた 日々ごはん8』の初校をはじめよう。
午後から曇ってきた。
東京では、このたびもまた川原さんちに泊めてもらった。
一緒にいると話が尽きず、私が出かけるときに玄関でも話していた。靴をはきながら。
帰ってから思う。
川原さんとはかれこれ18年くらいになるのだけど、東京にいたときよりも親密になってきている。
離れていても、近くにいても、同じ時間を一緒に生きている感じがする。
幸せなことだ。
東京では「title」に毎日通い、カフェのテーブルで仕事をさせていただいた。
「暮しの手帖」の村上さんがいらして、『気ぬけごはん2』の校正のつき合わせをしたり、アノニマの村上さんと『帰ってきた 日々ごはん8』の打ち合わせをしたり。
初日には、朝日新聞出版社の森さんが、刷り上がったばかりの『自炊。何にしよう』を雨のなか届けてくださった。
私は肌身離さず持ち歩き、カフェでひとりコーヒーや紅茶を飲みながら「はじめに」から読み耽った。
「title」という本屋は、ひとつの家(家庭だろうか)みたいだった。
レジまわりのちょっとした空間(小さな部屋みたい)には辻山さんがいつもいて、パソコンで何かを打ち込んでいる音がし、カフェのキッチンには奥さんのあや子さんがいつもいて、何かをしながら動いていて。
2階のギャラリーでは、中野さんが絵に囲まれている。
3人の気配を感じながら、私はカウンターの隅っこにいる。
ときおり、辻山さんがお客さんと話している声がかすかに聞こえたり、階段を上る音がしたり。
そんな落ち着いた時間。
『自炊。何にしようか』を読みながら、私は、神戸に来てよかったのだなと思った。
はじめて深く、体で思った。
赤澤さん、斎藤くん、立花くんのおかげ。
そして、私が出ていくことを、放っておいてくれたスイセイのおかげ。
中野さんのおかげ。
ありがたくてたまらない。
東京に向かった日の朝、神戸は雨が強かった。
台風に押されるようにして新幹線で運ばれ、着いたら東京は小雨で、台風は逸れていた。
初日は一日中雨で、お客さんはほとんど来なかった。
それもまたよかったし、翌日晴れ間が出てきたら、本屋さんにもギャラリーにもぽつりぽつりとお客さんがやってきた。
みな、急いでいる感じはなく、ゆっくりと本を選び、ゆったりと絵を眺める。
ときどき、年配の人がカフェでコーヒーを飲みながら、買ったばかりの本を読んでいた。
あや子さんのチーズケーキや、カステラ。アイスクリームがぽこんとのったいい匂いのするフレンチトースト。
彼女たちは「title」で過ごす休日のその時間を、きっと、愉しみにしている。
そこに自分がいられるのも、幸せだった。

ああ、東京でのこと、少しだけ書けた。
今は5時半。
肌寒い。
辺りは薄暗く、もうオレンジ色の灯りがずいぶんついている。
日が短くなってきたな。
夜ごはんは、納豆そぼろチャーハン(卵白、小松菜、いりごま)、キムチ鍋(ゆうべの残り)。

●2020年10月15日(木)快晴

ぐっすり眠って8時に起きた。
ゆうべは8時半にはベッドにいたから、12時間近く眠ったことになる。
東京から帰ってきたのは、いつだっけ。
12日の夜だ。
中野さんは2泊して、きのう帰られた。
今朝、カーテンを開けたら、海がいつもに増してかきらきら光っていて。
それでようやく、帰ってきたんだなあ……という気持ちになった。
今はもう夕方なのだけど、海が青い。
今回の東京も楽しかったな。
落ち着いたら、少しずつ書いていこうと思います。
(パソコンを持っていかなかったので、今週は日記をアップできずにごめんなさい)

今日はひさしぶりにあちこち掃除をした。
『帰ってきた 日々ごはん8』の初校が届いたので、座卓を出し、絨毯も秋用に取り替えた。
ふと思いついて、衣替えもした。
そうそう。
東京から帰ってきた日、島さんから嬉しい荷物が届いていた。
長野のりんごジュースと、お手製のプラムのシロップ煮と、無農薬の生の金ごまと、粉引の鉢。
その鉢を今日ようやく、お米の研ぎ汁で煮ることができた。
乳白色の器を冷めてから取り出し、水で洗っているとき、つき立てのお餅の匂いがした。
幸せの匂い。
なんか……家庭や、人の気配を纏っているような。
校正、明日から勤しもう。
夜ごはんは、キムチ鍋(大根、白菜、豚肉、豆腐)、酢の物(ワカメ、ピーマン、らっきょう)、アカモク(朱実ちゃんと樹くんが送ってくれた)、ご飯。

●2020年10月7日(水)晴れのち曇り一時雨

7時に起きた。
海がよく光っている。
今日もまた、『気ぬけごはん2』の校正。
曇ってきた。
天気予報によると、これから雨が降るらしい。
校正は午後には一通り終わった。
リス族のパンツも最後の仕上げ。
ムーミンを見ながらやった。
ざざざざという音がして、雨かな? と思って外を見ると、葉擦れの音。
そんなことが何度もあった。
なんとなしにのどかな日。
金曜日から東京へ行く(荻窪の本屋「Title」で『それから それから』の原画展&中野さんの新作の展覧会です)ので、荷物の支度をのんびりやっていたら、「かもめ食堂」のふたりが来た。
撮影でのり巻きをたくさん作ったそうで、おすそわけにと持ってきてくださった。
わーい。
京番茶を飲みながら、ひさしぶりにおしゃべり。
ふたりとも元気そうだった。
外に出て、ふたりをお見送りしていたら、ぽつりときた。
でも、ほとんど降っていない。
みずみずしいような、清々しい夕方。
太巻きがとってもきれいに巻いてあったので、スパッと切りたくて包丁を研いだ。
夜ごはんは、太巻き(律ちゃん作)、きのこ蕎麦(ササミ、椎茸、小松菜、お蕎麦は半分)。
律っちゃんの太巻き、とってもおいしかった!
雨はけっきょく降らなかった。

●2020年10月5日(月)曇りのち、ぼんやりした晴れ

窓を開けたら、空気の中に甘い香りが混ざっていた。
ほんのりと。
そっちの方を向いて、くんくん。
どこかで金木犀が咲いているんだ!
朝から掃除機をかけ、『気ぬけごはん2』の校正の続き。
落ち着いた気持ちでじわじわと進んでいる。
干し椎茸と昆布とにぼしを水に浸け、おだしをとった。
夏に東京に行く前、豆腐の小さなパックを冷凍しておいたのを、ゆうべのうちにもどしておいたので。
パックから出すと、予想以上に高野豆腐みたいになっている。
手で挟んで水けをしぼり、干し椎茸と、だしをとったあとの昆布も細く切って薄味で煮含め、お昼に食べようと思う。
このところ、適当なごはんばかり作って食べていたからというのもあるだろうけれど、『気ぬけごはん2』の校正をしていると、ちゃんと料理をしたくなる。
さっき、中野さんから絵のメールが届いた。
秋の空気が描いてある。
うっとりするような絵。
なんていいんだろう。
「習作」と書いてあるけれど、展覧会には出さないんだろうか。
今日の海は霞んでいる。
でも薄日が差して明るく、風も穏やか。
さ、続きをがんばろう。
あっ、晴れてきた。
近ごろは、昔の『ムーミン谷の仲間たち』をYouTubeでみつけ、見ているのだけど、とってもいい。
ムーミンの声が岸田今日子さん。
ということは、私が小学生のころのだ。
ストーリー展開が思い切っているし、けっこうシリアス。
というか意地悪。
ムーミンが振り返るだけの静止シーンがあったりして、見る方に考えさせる。
表現に深みがある。謎は謎のまま終わる。
スナフキンの孤独さも、際立っている。
ひとつだけ気になるのは、ミーの声が甲高いこと。
あと、ムーミンママが、ちょっとだけ昭和のお母さん風なところ。
夜ごはんは、ナシゴレン風チャーハン(合いびき肉、卵、しめじ、椎茸、サンバルソーシ)、白菜と豚肉の重ね蒸し(大根おろし、ポン酢醤油、七味唐辛子)。食後にメロン。

●2020年10月3日(土)晴れのち曇り

朝風呂から上がって、身支度をしながらふと窓を見た。
驚くほどの見事な秋空。
秋の空が広々として見えるのは、きっと雲のせいだ。
ちぎれ雲が横に長く、どこまでも大きく広がっている。
10時ごろから曇ってきた。
でも、『気ぬけごはん2』の校正をするにはちょうどいい。
部屋の空気が落ち着いている。
座卓の上に広げ、はじめて読むつもりになってやる。
こんどの巻は、2013年の冬に「暮しの手帖」で掲載されたものから、2020年のつい最近まで。
もうずいぶん前のことなので、ああ私、こんなふうに暮らしていたこともあったのだなと、人ごとのように感じる。
でも、文の中に私は確かにいる。
いろいろな気持ちが交叉する。
ひとの人生って、何が起こるか本当に分からない。
集中が切れると、窓辺でお裁縫。
今縫っているのは、秋冬用のリス族のパンツ。
元町の生地屋さんのバーゲンで買った、濃紺の麻布で。
ステッチの白がきいている。
おとつい、『自炊。何にしようか』の印刷が終わったそうだ。
ゆうべ、斎藤くんがインスタに上げていた写真と、印刷しているところのムービーをみつけ、惚れ惚れしながら何度も見た。
『みそしるをつくる』の最終校正も、最高の仕上がりでおとつい届いた。
神戸に来なければ生まれなかった本が、次々と完成し、世に出ていくこと。
たくさんの人たちにお礼を言いたくて、ゆうべは満月に向かって「ありがとうございます」と頭を下げた。
夜ごはんは、春雨炒め(合いびき肉、しめじ、えのき、ねぎ)、マカロニサラダ(人参、キャベツ、コーン、フレンチマスタード、マヨネーズ)、ご飯。

●2020年10月1日(木)快晴

7時5分前に起きた。
『古楽の楽しみ』を聞き逃してしまった。
今週は関根敏子さんなのに、まだ一度しか聞けてない。
ゆうべは寝ながら、何やら考えていた。
考えていたというより、思いを巡らせていた。
半分寝ぼけながら。
私の体の中身は、生まれてから過ごしたいろいろが積み重なってできている。
地層のように重なっているというより、粒粒になって、上になったり下になったり動いている。
40歳の私も、20歳の私も、50歳の私も、小学生の私も、4歳の私も、同時にある。
そのうち、小さかったころの感覚の片鱗が浮かんできた。
私は、いろんなことが曖昧で、大人たちに何かを聞かれても答えられなかった。
黙って、ぼんやりしていた。
急かされたり、答えを強要されたりすると、不安と怒りが混ざった塊が止められない勢いで上ってきた。
黙っていたのは、吃りだったからだけではない気がする。
それよりももっと根源的な理由で黙っていた。
どうして曖昧だったんだろう。
気持ちや感覚はれっきとあるのに。
まわりが遠くて、自分に当てはまるものがなかったのかな。
これは今の私にも関係のあることだから、文に書いてみよう。そうだ、あの白いノートに書こう。
などと思いながら寝ていた。
でも、朝起きたらずいぶん忘れてしまっている。
ちゃんと文章のようになっていて、パソコンで打っているみたいに考えながら、言葉が浮かんでいたのに。
今朝は、ヨーグルト(梨とブドウ)を食べながら眺める空の高いこと。
高いだけでなく、広いこと。
朝の海が広場みたいに光る季節が、またやってきた。
このところ、島さんにいただいた耐熱の黒い小さなお皿でパンを焼いている。
縁がほどよく黒く焦げるところが好き。
山小屋の薪ストーブの上で焼いたみたいな味になる。
今朝はバターをのせてホイルをかぶせ、溶けかかったところに今日子ちゃんの栗ジャムをのせて食べた。
こたえられない香ばしさ。
香りのいいおいしいものを食べるときって、鼻から息が漏れるのだな。
今日もまた、お裁縫。
明日は『気ぬけごはん2』の単行本の初校が届くので、やることがないのを味わうのも今日までだ。
そして、満月は明日だけれど、今夜は中秋の名月だそう。
夜ごはんは、具だくさんサッポロ一番塩ラーメン(ウインナー、ワンタン、小松菜、ワカメ、コーン)、ひじき煮の白和え。
具だくさんラーメンは、欲張りすぎて失敗。
インスタントラーメンは、具なしがいちばんおいしいのを忘れていた。

●2020年9月29日(火)晴れ

涼しい涼しい秋の風。
もう、夏とはすっかり空気が入れ替わった。
今日もきのうにひき続き、やることがない。
洗濯物を干しながら、そのことに驚き、海を見た。
きらきらといつになく眩しい。
ああ、何もしなくていいって変な感じだな。
しばらく休んでいたお裁縫をしよう。
お昼の支度を早めにしておいて、パジャマのズボンのほころびを繕おうと思う。
『エール』が愉しみだ。
午後、郵便局と「コープさん」へ。
涼しかったし、荷物も少なめだったので、ひさしぶりに坂を上って帰ってきた。
帰り着いたら汗びっしょり。
早めにお風呂に入ってしまう。
東の空に白い月。
見ている間に光りはじめた。
もうじき満月なのだな。
夜ごはんは、きのこ蕎麦(しめじ、えのき茸、ワカメ、ねぎ)。
食後に梨をむいて食べた。

●2020年9月27日(日)晴れ

眠くて眠くて、とても起きれない。
もっと寝ていたい……という夢をみていた。
夢の中の感じでは、もうお昼をとおに過ぎていたのだけれど、まだ7時。
よかった。
今朝はきのうよりさらに涼しい。
半袖のTシャツでは寒いので、七分袖。
スパッツもはいた。
もう、陽射しの色は完全に秋だ。
下に下りたら、 朝陽を浴びてユリの花が開きかけている。
レースのカーテンの影が壁に映って、清々しい。
写真を撮って中野さんにお送りする。
雨の間、部屋干ししていた洗濯ものをもういちど洗って干した。
布団も干した。
海がきらきら光っている。
午後、散歩がてら坂を下りて「MORIS」へ。
ヒロミさん、今日子ちゃんとベランダに3人並んで、至福の時間。
天高く透明な秋空を仰ぎながら、今日子ちゃんの焼いたタルトとお茶をごちそうになった。
プルーンのタルトもまた、秋の色、秋の味。
私は今日、島さんの耐熱の大きな器をいただいてしまった。
この間の調理教室のお礼だとおっしゃるのだけど、どうしよう、どうしよう……と思って返答できずにいたら、島さんからお昼に電話があったのだ。
「いいのようー、なおみさん。感謝の気持ちでいっぱいなんだから。もらってね。畑の野菜をあげるようなもんよお」と笑ってらした。
私、大切に使おう。
夜ごはんは、カニちらし(スーパーの)、ひじき煮の白和え、小松菜のおひたし(かつお節、醤油、ごま油)、みそ汁(豆腐、貝割れ)。

●2020年9月25日(金)雨

月曜日に中野さんがいらして、きのうまで過ごした。
『それから それから』のポスターを持って、三宮のギャラリーや本屋さんを巡ったり、その次の日は画材屋さんに行ったり。
長い時間電車に乗るのも、大阪も、本当に久しぶり。
画材屋さんの帰りには、『本と体』のフェアをしてくださっている、西宮の本屋さんにも挨拶に行った。
朝ごはんを食べて、早めに出て、電車に揺られ帰ってきて、買い物をして。
まだ明るいうちに窓辺で軽く呑みはじめ、お肉を焼いたり野菜を焼いたり。
知らない間に、ずいぶん日が短くなったのだな。
画材屋さんでは、新しい絵の具(12色の顔料)と白いハードカバーのノートを買った。
ノートというよりスケッチブックなのかな。
とても厚い。
白いリボンのしおりもついている。
そこにこれから私は文を書いていく。
詩かもしれないし、俳句かもしれないし、もっと短い言葉かもしれない。長い文かもしれない。
何でも書く。
真っ白っていいな。
表紙に、中野さんに絵を描いてもらった。
ロシアで買った鳥笛の小さな絵。
こすると手についてしまいそうなので、上からセロファンをかぶせて貼ってくださった。

今朝は雨。
薄暗い。
雨の音しかしない。
もうじき7時。
なんだか山小屋にいるみたいなので、カーテンを開けずに小さい電気だけつけて、川原さんの本『山とあめ玉と絵具箱』を読みはじめた。
送られてきた日に、いくつか読んでしまっていたのだけど、もういちどはじめから。
すごくいい。
ゆっくり、ゆっくり、ひとつ読んで。
また、もうひとつ読む。
読むごとに、鈍行電車でとことこ進んだり、小さな山を登っているみたいな気持ちになる。
白パンにバナナを挟んで、ベッドの上で朝ごはんにした。
ホットミルクも。
また続きを読む。
絵もたくさん載っている。
ところどころに挟まれている山の絵が私は好き。
遠くの山、空、澄んだ空気。
山から帰ってきて、東京で生活をしながら、ときおり思い出す頭の中の風景みたいにも見える。
深呼吸したくなるような、ひろびろとした絵だ。
11時過ぎに朝風呂に浸かって、ようやく動き出した。
きのう、「コープさん」で買ったユリの花の蕾は、今朝見たら電球みたいに膨らんでいた。
口をぎゅっと結んで、花の色が透けている。
肌色のような、オレンジのような、ピンクのような。
薄い緑色のすじが血管みたい。
今がいちばん綺麗かもしれないので、白いノートの1ページ目に、ユリの蕾の絵を描いた。
顔料なんかはじめて使った。
うまく描けないので、やぶいてしまおうかと思ったのだけど、しばらくたってから見たら、誰か知らない人が描いたみたいになっていた。
もう少し筆を入れてみる。
赤澤さんは今日、編集部で最終校正の作業。
メールが届くのを待ちかまえ、ひとつひとつを確認していくのが今日の私の大きな仕事。
私たちの5年ぶりの料理本は、立花くんの閃きでタイトルが新たになりました。
『自炊。何にしようか』。
10月末に発売となります。
ユリの蕾の写真を撮って、朝いちばんにお送りしておいたら、中野さんから絵が届いた。
ひゃー。
すごい。
夜ごはんは、ごった煮スープ(モンゴル風豚コマと小松菜の辛子炒めに、人参、ソーセージ、枝豆を加えて煮込んだ)、パン。

●2020年9月21日(月)快晴

と、ここまで書いて、その先は書けずに一日が終わってしまいました。

●2020年9月19日(土)快晴のち曇り

ひさしぶりにすっきりとした晴れ。
洗濯物を干すとき、よく晴れていても床が熱くならなくなった。
裸足で立つと、ちょうどいいぬくもり。
部屋干ししていた洗濯ものを取り込み、床に広げてたたんだ。
ぺたんと座った窓に、秋の空が広がっている。
底抜けに青い空。
どうして秋は、空が高くなるんだろう。
ゆうべは寝ながら、料理のことをずっと考えていた。
ああでもないこうでもないと、レシピを組み立てていた。
なんだかちっとも眠れなかった。
明日はいよいよ、島るり子さんの器をいろいろ使って「MORIS」で調理実習をするのです。
島さんが送ってくださった伊那(長野)のきのこいろいろ、玉ねぎ、にんにく、生の金ごま(無農薬だそう)……あと、何だっけ。
今日子ちゃんが買っておいてくれた、淡河(兵庫)の茄子、小さめピーマン(緑と赤)、伏見唐辛子。
あとスダチ。
きのうは準備のため、美容院の帰りに「MORIS」に寄った。
島さんの器が、四方の棚から溢れんばかりに並んでいて(積み重なっているものもある)、いつもの「MORIS」に熱が生まれていた。
骨太で、堅くて、丈夫そうな器。
その造形美には、目で見てもほれぼれしてしまうのだけど、裏返したり、撫でさすったりしていると、重み、肌触りが体にしみ入ってくる。
盛りつけたら美しいだろうな、おいしそうだろうな、という料理の色や質感が目に浮かぶ。
島さんから電話がかかってくると、「なおみさん? 島です」と、張りのある声が受話器から間髪入れずに聞こえてくる。
「もしもし」なんて言わない。
元気の粒が詰まったような艶のある声。
かといって、キンキンしているのではない。
懐が大きく、少女みたいな可愛らしさも混ざっている声。
そういういろいろが器に漲っている。
島さんのエネルギーが詰まっている器たち。
だからきっと、私は興奮して眠れなかったんだと思う。
島さんの焼き締めの鉢は、すり鉢ではないけれど、ごまがすれる。
まず一品は、生の金ごまを耐熱の片口で炒って、焼き締めの大鉢ですって、ひじき煮の白和えを作ろうと思う。
ひじき煮はもう作ってあるし(この間東京に行ったとき、ポレポレ坐のカフェで買った祝島のひじきで)、彩りに枝豆も買っておいた。
あと、島さんお手製の漬け物(きゅうりの辛子漬け、きゅうりとミョウガのカリカリ漬け、根菜の甘酢醤油漬け)も送ってくださった。
きのうちょっと味見をしたら、味も色も歯ごたえもまったく違う3種類で、とってもおいしかった。
あ、青じそのみそ漬けもあったっけ。
島さんのは漬け物屋さんが開けるくらいのプロの味。
ずっと前に、みどりちゃんから「島さんのお漬け物、おいしいよ〜」と教えてもらったお漬け物だ。
私は昔、銀座のデパートかどこかで開かれた個展のときに行って、ごちそうになったことがある。
きっと、長い間くり返し作り続けているんだと思う。
ほんと、おいしかった。
今思い出してもよだれが出る。
明日は、今日子ちゃんに手伝ってもらって実習をする。
お客さんは8名。
ソーシャル・ディスタンスを守って、ゆったりと。
土鍋でご飯を炊いて、塩むすびもにぎる予定。
あとでお皿の絵を描いて、何を作るか書き出してみよう。
緊張するけど、とても愉しみ。
それにしても涼しいな。
山からの風は、半袖のTシャツでは寒いほど。
午後からは、『帰ってきた 日々ごはん8』の粗校正。
3時過ぎ。
バンザーイ、終わったー!
5時にお風呂に入って、缶チューハイで夕空に乾杯。
夜ごはんは、モンゴル風豚と小松菜の辛子炒め(豚コマ切れ肉、玉ねぎ、粒マスタード、フレンチマスタード、クミンシード)、パン、白ワイン。

●2020年9月15日(火)晴れ

ゆうべは夜中に目が醒め、『本と体』を読んでいた。
筒井くんとの対談ページ。
とてもおもしろい。
話があちこちに途切れなく飛び回る。
そうか、こんなことも話していたんだっけ! という感じ。
あの日のことを思い出した。
夜中の1時に目が醒めて読みはじめ、読み終わったら4時だった。
私はゆっくりと言葉を追い、筒井くんの声を聞くように読んでいた。
ほとんどリアルタイムで、対話の時間を過ごしていたみたい。
不思議な本だなあ。 『本と体』というタイトルは、とても迷って、最後にこれしかないと思ってつけた。
人と本で体。
20数年前、立花くんに出会うきっかけとなった、展覧会のタイトルから引用させていただいた。
と、私は思っているのだけれど、「べつに僕が発明した言葉ではないので、気になさらずに」と立花くん。
そうだ。
読んでいる途中でカーテンを開けたら、上ったばかりの月が空の下の方に出ていた。
もうじき新月を迎える、細い細い月。
白く鋭く光って、影になっているところも黒く丸く、オリオンもくっきり出ていた。
空気が澄んできたんだな。
もう、夏とは確実に違う空気。
夜は窓を開け、カーテンを引いて寝ているのだけど、寒いくらい。
クーラーなんてとんでもない。

朝、中野さんから花の絵が届いた。
房藤空木(フサフジウツギ)の花。
いいなあ、いいなあ。
ワインのビンに活けてあるせいか、どこか外国の匂いもしてくる。
朝ごはんを食べ、すぐに原稿に向かった。
11時から、鈴木さんがいらして、『日めくりだより』の打ち合わせ。
細かな決めごとをしたあと、ゆったりと話ができた。
おにぎりを作って食べ、お土産のケーキとコーヒー。
とてもいい時間だった。
打ち合わせが終わり、ふと思い立って夙川の洋裁の方のアトリエへ。
長年着ている紺色のノースリーブのワンピースに、フレンチ・スリーブの袖をつけてもらうことになっていて、その試着。
急いで行って、超特急で帰ってきた。
夕方に、赤澤さんから校閲さんの戻しの確認があるので。
帰りに「植物屋」さんで花を買った。
トルコキキョウ、ヒヨドリソウ、ホトトギス。
なんとなくみな紫がかった色の花になった。
秋の色だ。
夜ごはんは、夏野菜のモズク酢やっこ(オクラ、トマト、青じそ)、南瓜の塩蒸し、ピーマンのオイル蒸し、タイカレー(レトルトのを買ってきた)、ゆで卵、ご飯。

●2020年9月13日(日)曇りのち晴れ

朝から曇天。どんてん。
濁点のつくその音がぴったりの、重たげな空。
ツクツクボウシが密かに鳴いている。
さあ、朝風呂に浸かったら、今朝も『自炊。』に向かおう。
試作もひとつする予定。
10時ごろ、晴れ間が出てきた。
ツクツクボウシも最後の夏を謳歌している。

2時半。
終わった!
あとは野となれ山となれ。
荷物を作り、コンビニまで坂を下った。
ああ、またひとつ、大きな仕事が終わってしまったなあ。
この本は、10月の半ばに本屋さんに並ぶ予定。
どうかみなさん、愉しみにしていてください。
軽く買い物し、涼しかったので、ひさしぶりに坂を上って帰ってきた。
汗びっしょりとなり、お風呂。
夕暮れの空を眺めながら、おつかれさまのビール。

今、あまり見たことのないおじさんが、仔犬を散歩させている。
まるで、小さな恋人といるように、たいへん仲がいい。
茜色と藤色が混ざった空の下、おじさんと仔犬がふたりきり。
上から見下ろしているのが、はばかれるほど。
夜ごはんは、ピーマンと茄子のオイル蒸し、フジッリのクリームソース(キャベツ、溶けるチーズ)。

●2020年9月12日(土)晴れ

5時半に起き、朝風呂に浸かって、すぐに『自炊。』の校正。
脇目もふらずに向かう。
色校なので、くっきりと見える。
いろいろなものがそぎ落とされたあとの原稿だからかな。
そして、斎藤くんの写真が、とにかく素晴らしい。
でも、心は静か。
部屋の空気も落ち着いている。
午前中がとても長い。
「え、まだ9時?!」「え、まだ10時?!」ということが何度かあった。
『自炊。』の中に入り込んでいるから、ちがう時間軸なんだろう。
1時にはひと通り終わり、お昼ごはん(焼いておいたホットケーキとバナナ)を詰め込んで、1時半から赤澤さんとリモート打ち合わせ。
主には私からの相談ごとや、確認だ。
赤澤さんは、1冊分を暗記しているのではないかというくらいの、すごい集中力。
打てば響くような反応が、本当にありがたい。
そして、赤澤さんの向こうには、立花くんがスタンバイしている。
同じ時間軸のなかにみんないる。
士気が上がる。
これぞ料理本作りの真骨頂。
打ち合わせは1時間ほどで終わり、「コープさん」へ。
明日、試作しておきたい料理の材料を買いにいった。
お風呂から上がって、「檸檬堂(最近気に入っている缶チュウハイ)」。
夏の終わりの空を眺めながら。
ツクツクボウシの声も、ずいぶん弱々しくなった。
弱くなったというより、もう、生きているセミが2、3匹しかいなくなった。
そういう声。
つまみはピーマンのオイル蒸しと、柿ピー。
ほろ酔いとなり、夜ごはんはなし。

●2020年9月11日(金)晴れのち曇り

今朝もまた、昇ったばかりの太陽を見ることができた。
窓をいっぱいに開け、変わりゆく空を見た。
蒼、青、水色、藤色、紫、オレンジ……いろんな色が混じり合う。
コーヒーをいれに台所に下り、戻ってきたら、もうすっかりふつうの朝の空になっていた。
今日はやることがいろいろある。
インタビュー記事の校正、単行本『気ぬけごはん』の内容確認。
午前中に、電話の用事が2本。
あと、1時からは『日めくりだより』のリモート打ち合わせ。
そしていよいよ、待ちに待った『自炊。』の色校正が届く。
明日中には確認し、赤澤さんにお送りしなければならない。
なんだか、息が浅くなっているような感じがする。
心を下に置いて、あちこち掃除機をかけた。
部屋を清め、自分を清め、色校正を迎え入れよう。
リモート打ち合わせは、30分ほどで私だけ退出し、校正をはじめたいと思う。
ごはんを食べ、お風呂に入ったら、もうぐったり。
くったくたで、てろんてろんで、立ち上がるのもおっくう。
校正の戻しの予定が1日伸びたので、続きは明日、朝早くから向かおう。
夜ごはんは、記録するのを忘れました。

●2020年9月9日(水)雨が降ったり、止んだり

今、お風呂上がりにこの日記を書いている。
このところ毎日、毎日、何かしら文を書いていて、今日やっとひと心地ついた。
いくつ書いたんだろう。
1、2、3……5つだ。
毎朝、5時半くらいに目覚め、6時を過ぎると起きて動き出していた。
いちど、陽の出に近い空を見たっけ。
上ってからわりとすぐの太陽。
オレンジ色の大きいの。
6時10分前だった。
陽の出の時刻も、知らぬ間に遅くなってきたのかもしれない。
今日は、「気ぬけごはん」を書いていた。
頭が詰まってきたので、途中で散歩に出た。
中野さんに花の写真を送ってあげようと思って。
傘も差さずに、小雨のなかを歩いた。
もうひとつの山への入り口を目指し、坂道をゆらゆらと。
白い花(仙人草)、紫の花(房藤空木)、黄色い花(月見草)を、1枝ずついただいてきた。
登山口の近くに、老人ホームができているらしいことは知っていたけれど、ここまで歩いたのはずいぶん久しぶり。
前には工事中だった広い土地に、新しい家がずいぶん建っていた。 
そして、いちばん驚いたのは、登山道への入り口が閉鎖されていたこと。
何も知らないで、ここまで上ってきた山登りの人たちは、残念がるのではないかなあ。
夜ごはんは、牛肉と茄子とピーマンの炒め物(即席で作った焼き肉のタレ)、冷や奴(ごま油、雪塩)、ホッケ(昨夜の残り、スダチ)、キムチ、ご飯。

●2020年9月6日(日)快晴のち雨

ゆうべの嵐はほとんど風だけだったけれど、大阪のはずれの空で、稲妻が何度も光っていた。
よく見るようなギザギザのものではなく、山の上の空が、オレンジや銀色に照らし出される。
音のない一瞬の光が、何度も何度もやってくる。
遠雷というのかな。
ベッドに寝そべり、しばらく見物していた。
夜中にもカーテンを開けて見た。
まだ、光っていた。
空が怒っているようで、なんだかよく眠れなかった。
今朝は5時に起きた。
コーヒーをいれている間に、眩しいほどの青空となる。
雲はもう夏のものではない。
起きぬけに、『本と体』にサインをした。
献本をする方たちへの小さな手紙も書いた。
ツクツクボウシの声を聞きながら。
涼しい頭と体で。
『本と体』は、ゆうべお風呂に入ってから箱を開け、寝る前に読みはじめた。
やわらかいものと、硬いもの、甘いもの、辛いもの……いろいろな風味の言葉が重なり合っている。
撫でさすりたくなる紙。
がっしりとした造りで分厚い。
なんだか本当に、人の体みたいな本。
頼もしい体、という感じがする本。
今日も原稿書きの続き。
どうやら2つ、書けたかも。
3時過ぎに2階に上がったら、海が黒々していた。
大阪の空は霧がかぶさっている。
向こうから雨がやってくるのを、椅子に腰掛け眺めた。
あー、きたきた。
大風と、窓を打つ雨。
大粒の雨。
夜ごはんは、きつねうどん(お揚げさん、ワカメ、みょうが、ねぎ)、焼き茄子(生姜醤油)。
ひさしぶりに、『機関車トーマス』を見ながら食べた。

●2020年9月5日(土)晴れたり曇ったり、のち嵐

朝からきのうの続きの原稿書き。
締め切りはまだ先だけど、鰻についての作文を書いている。
おとつい、今日子ちゃんとひろみさんと、元町の鰻屋「青葉」に行ったときのことを、忘れないように書いている。
書いているうちに、煙の香ばしい匂いや、味が蘇ってくる。
おいしかったなあ、脂がのっていて。
あの晩は、帰ったら酔っぱらったようになっていて(呑んでないのに)、体が火照り、ベッドに横になったらもうぐっすり。
朝までいちども目覚めなかった。
やっぱり鰻はすごい。
確実に体が反応する。
お昼ごろにテレビが届いた。
取扱説明書を見ながら、ゆっくりと落ち着いてセットした。
初期設定もうまくいった。
DVDデッキも難なくつなげ、「ムーミン」もちゃんと見られるようになった。
古いテレビ(アナログのものに地デジチューナーをつないでいた)は、もっと落ち着いた音で、画面もしっとりとしていた。
ガシャガシャした音なのは、デジタルのせいだろうか。
色具合や、音声の調整もしてみた。
とてもよくなった気がする。
午後、『本と体』の見本が届いた。
でも、まだ箱を開けない。
『気ぬけごはん2』の単行本のゲラも届いた。
でも、まだ開けない。
夕方5時まで、夢中で原稿を書いていた。
暗くなり、窓を見るとまた虹が!
とても大きい。
晴れているのか曇っているのか、不思議な空の色。
地面をめくったような、生ぐさい匂いがする。
どこかで雨が降っているんだ。
そのうち虹も消え、薄暗くなってきた。
雲行きはずんずん怪しくなり、海の方から強い風。
部屋中の紙が舞い上がる。
嵐がやってくる。
あ、雷!
そして大粒の雨。
夜ごはんは、モロヘイヤのお浸し(釜揚げしらす、スダチ、ポン酢醤油、ごま油)、ゆでオクラ(たたき梅、醤油)、茄子焼き(なたね油とごま油、スダチ、塩)、ビール。
テレビを台所に向け、「ムーミン」を見ながら料理を作り、食べた。
いままで目が悪かったみたいに、くっきりとよく見える。
画面も大きくなったし。
愉しみがひとつ増えた。
『エール』も14日から再開するらしい。
間に合った!

●2020年9月1日(火)晴れ

今日から9月。
このところ明け方が涼しくなったので、クーラーを消すようになった。
窓を開けると、本物のクーラーみたいにひんやりした風が入ってくる。
それでも日中はまだまだ暑いけれど。
きのう私は、『帰ってきた 日々ごはん8』の校正をパソコンでやっていた。
3年前の7月と、8月。
日記の中と同じ暑さなのが心地よく、ずいぶんはかどった。
気づけば汗がじっとり。
最近気に入っているセスキ水を、シュッシュッとスプレーし、台所と寝室を雑巾がけした。
ツクツクボウシの声がうわんうわん。
窓から首を出すと、サラウンドのスピーカーみたいに、ぐるぐると宙をまわって聞こえる。
まだ4時くらいだったけど、早めにお風呂に入った。
風呂上がり、虹が出ていた。
海から上っている。
目を離さないようにしながら着替え、髪を乾かし、1階から椅子を運び込んで眺めていた。
白ワインの炭酸割りを飲みながら。
虹はしばらくして消えてしまったけれど、そのあとの夕暮れが凄かった。
ようやく空が蒼くなったころ、爪の先みたいな光がのぞいた。
まさかと思ったら、月だった。
夏の夕暮れは目が離せない。
今日も、早めにお風呂に入ってしまおう。
過ぎゆく夏の空に乾杯だ。
今日は、『日めくりだより』の書き下ろしが1つ書けた。
お風呂上がり、また今日も虹!
今日子ちゃんにメールをしたら、おとついも出ていたのだそう。
3日連続だ。
夜ごはんは、きゅうりとトマトのサラダ、イカすみフジッリ。
首を出すと、今日もまたツクツクボウシの声がまわっている。
吸い込まれそう。
椅子に腰掛け、見物。
東の空の、思ってもみないところから、オレンジの丸い月(満月は明日)が出た。

●2020年8月30日(日)晴れ

今日も暑いな。
台所の天井の水漏れは、おかげさまで治まっている。
壁の1点から漏れてくる水は、豆腐のパックを天井に張りつけ(中野さんのアイデア)、受けている。
天井からも1カ所染み出ているところがあるので、そこにもパックを張りつけた。
もしかすると、上の階の水道管にヒビが入っているかもしれないらしく、火曜日に工事をするとのこと。
うちにもまた業者さんが入る。
なので、流しの下のものは出したまま。
お昼ごはんのお弁当(「コープさん」のレトルトハンバーグ、ピーマン炒め、ゆで卵、ゆかりご飯)を作り、こうして日記を書いている。
食べ終わったら、2階に机とパソコンを運んでクーラーを入れ、『帰ってきた 日々ごはん8』の粗校正をはじめようと思う。
午後、頭がぼんやりしてきた。
シャワーを浴びて涼んでいたら、中野さんから電話。
近況を報告し合う。
夜ごはんは、冷やしつるつるワンタン(えび、豚ひき肉、長ねぎ、生姜、青じそ、酢醤油)、卵豆腐(ワカメ、みょうが)。お昼をしっかりめに食べたので、ご飯はなし。 「キチム」の店主原田奈々さん(なーちゃん)が、『Live-rally ZINE』という本を出しました。
今年の春、緊急事態宣言が出たころのことを、「キチム」にまつわる20名の人たちが思い思いに綴っている。
東京から帰ってきて何日かたった日の夜、私はベッドの中で、この本をひと息に読んだ。
じーんとしたり、くすっと笑ったりしながら。
いろいろな気持ちになって、途中でやめることができなかった。
ひとりひとりが、自分のコロナをそのまま言葉にしている。
何のおごりもなく書いている。
そのひとの体を流れる血と同じ仲間の言葉で書いているので、そのひとのコロナが私に入ってくる。
私もなーちゃんから宿題をいただいて、寄稿した(そのときのことは6月30日の日記に書きました)。
でも、私だけ「文」を書こうとしている。
肩書きも「文筆家・料理家」になっている。
なんだかとても恥ずかしい。
『Live-rally ZINE』は、私の知っている限り、吉祥寺の「キチム」と本屋「百年」、荻窪の本屋「Title」で販売しています。
偉そうなことは言えないけれど、たぐいまれな本だと思う。

●2020年8月27日(木)晴れ、一時お天気雨

5時半に起きた。
よく眠って、すいっと目覚めた。
疲れも取れたみたいだし、そろそろいつもの生活に戻れるかな。
東京から帰ってきた日の夜、台所の天井の水漏れがあり、中野さんが天井板をはずしてくださった。
設置してあった容器は、もう水でいっぱいになっていて、まわりに染み出ていた。
それから毎日、大家さんが来て、応急処置をしてくださった。
私は疲れが出て、滞っていたメールの返事を送るだけでせいいっぱいだった。
それが3日間続いた。
今朝は、寝ている間に沸いてきた言葉を書いてみる。
『みそしるをつくる』の背表紙の文。
朝ごはんを食べ、また向かう。
お昼前には仕上げ、佐川さんにお送りした。
しばらくして、電話がかかってきた。
佐川さんの声は弾んでいて、とても喜んでくださっている様子。
ああ、よかった。
そのあとは、テレビのディレクターと打ち合わせ。
そして『日めくりだより』(「リンネル」で連載していたものが単行本になります)の打ち合わせ。
電話を切り、すぐに「まえがき」を書きはじめる。
その間、ノブさんのレシピで、油揚げを甘辛く煮ていた。
きつねうどんにのっている「お揚げさん」。
干し椎茸とだしをとった昆布入り。
煮汁をたっぷり吸って、ふっくらと、とてもおいしく煮えた。
明日はいよいよ、天井の水漏れの工事。
まだ、原因が分からないので、ひとまずの処置なのだけど、業者さんが来てくださることになっていので、調理台の上を片づけ、流しの下の細々したものも出しておいた。
今日は、よく動いたなあ。
3時くらいだったかな。
さわさわさわさわと音がして、お天気雨が降った。
粒の細かいシャワーのような雨。
海も、木も、建物も、みな喜んでいるように見えた。
どこかに虹が出ていそうな気がして探したけれど、みつからなかった。
そして今日は、村上さんから『帰ってきた 日々ごはん8』のテキストデーターが届いた。
夜ごはんは、お揚げさん、モロヘイヤのだし浸し(みょうが、青じそ)、豚バラと厚揚げとニラの炒めもの(ゆうべの残り)、とうもろこしの混ぜご飯(ゆでたとうもろこし、じゃこ、白いりごま)。

●2020年8月26日(水)晴れ

東京から戻ってきたのは23日。
中野さんはそれから2泊して、帰られた。
コロナの夏、暑い暑い東京。
このたびはいろいろなことがあって、刺激的だった。
川原さんちでの共同生活も、別行動の日があるんじゃないかと思っていたのに、けっきょくほとんどの時間を3人で過ごした。
一緒にいるのが楽しかったし、それが当然のように思えた。
ライブペインティングやトークイベントのことでも、川原さんが積極的に手を貸してくれた。
中野さんと川原さんが出かけ、ひとりで留守番をしていたこともあった。
洗濯したり、ごはんを食べたり、呑んだり、しゃべったり、お風呂に入ったり。
夜になると、大きな机を挟んだこちら側に布団を敷いて、川原と私さんが眠った。
中野さんは机の向こう側。
寝袋やマットをたたんで敷き布団のようにした万年床のまわりに、リュックや着替え、本などがきれいに並べてあって、旅芸人が間借りしているみたいだった。
私はたくさんの人に会い、体の外も中も、ぐるぐるとめまぐるしかった。
取材に打ち合わせ。
ライブペインティングのに日も、急きょトークをしたので、全部でトークは3回。
『それから それから』ができたとき、この本はいったい何だろう?!と思った。
言葉にならない靄みたいな気持ち。
それだけで満ち足りていた。
なのに、取材やトークを重ねているうちに、私は説明しはじめた。
言葉にしたり、分けたり、意味をつけたり。
まだ、体を通した言葉になっていないのに、つるつると口から出てきた。
どうして今私が神戸にいるのか。
越してから5年目になることを、何かの節目みたいに感じているのか。
東京から帰って、中野さんと話しているうちに気がついた。
もしかすると私は、不安なのかもしれない。
夜ごはんは、どうしても思い出せない(この日記は後から書いています)。

●2020年8月18日(水)晴れ

「のぞみ10号」10時10分発の新幹線で、東京へ。
私たちはいつもの通り自由席。
新幹線の中は消毒薬の匂いがして、お客さんはほとんど乗っていない。
3人席は陽が当たるので、2人席に中野さんと並んで腰掛けた。
とても清潔な感じがする。
おしゃべりをしている人は誰もいない。
私たちも、口をつぐんでいる。

ここからは、新幹線の中で書いています。
きのう、中野さんと話していて、自分について気づいたことのメモ。
「ものを書くことについて」
目の前にあるもの、見えるもの、その感じについて。
かみ合う言葉、言葉の流れ、文体が、いつまでたってもみつからないから、ただ書き続けているのかも。
私は、ひとつのことしか見ることができない。
ぐっと近寄って見てしまう。
対象から離れることができない。
「離れることができる」というのはすでにそれだけで、何も書かずにいても、「言葉にできている」ということ?

東京駅に着いたら、荷物を持ったまま「キチム」に行って、『それから それから』の原画の飾りつけをする。
「リトルモア」のみかんちゃんが手伝いに来てくれる。
さて、ひさしぶりの東京は、どんなだろう。
「キチム」のなーちゃん、私の友人たち、仕事仲間はみな、元気にしているだろうか。
中野さんのライブペインティングも、私のトークショーも、いくつか予定している取材や打ち合わせも、何事もなく無事に行えますように。
コロナに加えて危険な暑さの続く中、マスクをして吉祥寺まで足を運び、集まってくださる人たちに、少しでも喜んでもらえますように。
今回は私だけでなく、中野さんも川原さんの家に泊めていただくことになっている。
なんだか、アーティスト・イン・レジデンス(アーティストがその土地に滞在しながら作品制作を行えるようにする事業)の宿泊先として、無償で自宅を提供してもらっているみたい。
5泊6日の共同生活。
これは、川原さんでなければできないことだ。
ありがたいなあ。

●2020年8月17日(月)晴れ

5時半に起きた。
もうずいぶん明るい。
7時過ぎ、朝ごはんの前にゴミを出しにいった。
山へと続く坂を見上げると、ピンクの夾竹桃の花が満開だ。
いつの間にこんなに咲いていたんだろう。
山の方から涼しい風が吹いてくる。
でも海側は暑い、暑い。
朝だというのに、太陽の照り方がもう違う。
このごろ、ラジオのニュースや天気予報で、「危険な暑さ」という言葉をよく聞くようになった。
静岡県のどこか(浜松だったかな)では、きのう39度以上になったそう。
今日は神戸も37度と言っている。
「真夏日」、「猛暑」、「酷暑」、「危険な暑さ」となってしまったこの先には、いったいどんな暑さの表現が待っているんだろう。
来年の夏は、日本はどうなっているんだろう。
けれどまだ、ウズベキスタンの暑さには及ばないだろう。
私たちが行ったのは、6月くらいだったけれど、ウズベキスタンはもう真夏だった。
炎天下、太陽の熱が肌に当たって痛いから、川原さんも私も外を歩くときには長袖のシャツを着たり、頭から布をすっぽりかぶったりしていた。
砂漠なんて、とんでもなかった。
多分、40度はとうに超えていただろう。
飲んでも飲んでものどが乾いて、飲んだそばから水分が蒸発していくのが分かった。
私たちが泊まったテント(パオみたいなところ)から食事をする小屋まで、砂の上を歩いていくのだけど、熱風で息ができなかった。
それでも小屋に入れば、太陽を遮ることができ、涼しく、心地よかった。
夕方になれば空気が冷え、外の長椅子の上で寝そべって、満天の星を眺めることもできた。
人々は、そんな場所でも、昔から生き続けてきたんだものな。

下にはいられないので、はじめて2階の部屋に昼間からクーラーを入れてみた。
掃除機をかけ、雑巾がけ。
そしてベッドの上で、お裁縫。
最初は窓を閉め切っていたのだけど、なんだか息苦しくなってきたので開けてみた。
ツバメが3羽。
あ、4羽だ。
きのうはまったく見かけなかったのに。
みんな、電線に乗って、山の方を見たまま動かない。
暑くてぼーっとしているのかな。
今、1羽が電線からずり落ちそうになった。
ツバメも暑くて大変だな。
私にはクーラーがあって、本当にありがたい。
ときどき、白いカーテンが風を孕んで膨らむのを見ながら、はぎれを縫い合わせて座布団カバーを2枚こしらえた。
中野さんは今、電車に乗ったらしい。
3時ごろに到着するとのこと。
中野さんが着いたちょうどそのとき、ツバメの変化に驚いた。
背中に、オレンジがかった褐色の斑点がある。
しかも、双眼鏡で覗いてみたら、褐色なのは背中だけでなく、顔も、だった!
中野さんに尋ねると、「リュウキュウツバメです」とのこと。
夜ごはんは、ソーセージとにらの炒め物(中野さん作)、とうもろこしとじゃこのカリカリお焼き(「きょうの料理」のテキストの真似をして作ってみた)、スパイシー・チキン(コリアンダー、チリパウダー、クミンシード、おろしにんにくをもみ込んで焼いた)。

●2020年8月16日(日)晴れ

6時に起きた。
朝ごはん前の涼しいうちに、『気ぬけごはん2』のまえがきを仕上げ、お送りした。
あさってから東京なので、なんとなしに支度をする。
それにしても暑い。
1階にはクーラーがないので、じっとしていても汗がふき出してくる。
すぐにのどが乾くので、冷たい水をぐいぐい飲んでいたのだけど、ふと、ポカリスエットもどきを作ってみた。
レモン汁、きび砂糖、塩を冷たい水に混ぜて冷蔵庫へ。
塩入りのレモネードだ。

いよいよ19日(水)から、『それから それから』の原画展が「キチム」ではじまります。
22日の私のトークショーは、応募してくださった方にお願いし、昼と夜の二部構成になった。
奈々ちゃんによると、昼が26名、夜が23名とのこと。
ちょうどいい人数だ。
そして今日、朱実ちゃんから電話があり、もろもろの事情でやっぱり東京には行けなくなってしまったとのこと。
なので、20日の「ライブペインティングと音楽の夕べ」は、樹くんの演奏はなしで、中野さんの独演会となります。
どんなことになるのか、とても愉しみ。
まだ少しお席があるようなので、元気な方はHPをご覧になってみてください。
https://kichimu.wixsite.com/2020
原画展は27日(木)まで。
絵本よりもずっと大きい原画の迫力を、ぜひ味わいにいらしてください。
夜ごはんは、炒め蕎麦(豚ひき肉、椎茸、納豆、みそ、コチュジャン)、冷たい味噌汁。
うちには今、醤油が1滴もない。
そして、テレビも壊れたまま(正確にはチューナーが壊れた)。
明日は中野さんがいらっしゃることになった。

●2020年8月12日(水)晴れ

6時前に起きた。
このところ、夜中にクーラーをつけたり消したりしているので、眠れているんだか、どうなんだか。
でも、目覚めはいつもスッキリ。
きのうおとついと、立て続けに取材だったのだけど、どちらもぶじに終わった。
なんか、両方とも汗をいっぱいかいて、体をよく使った感じ。
だからかとてもすっきりしている。
「古楽の楽しみ」を聞きながら、朝の涼しい頭で、『本と体』の最終ゲラを確認した。
ベッドの上で。
アノニマの村上さんのきめ細かな編集作業に、背筋が伸びる。
朝ごはんの前に、どうしても直していただきたい箇所をおふたりにメールした。
さ、今日は何をしよう。
お裁縫をしようかな。
と思いながらも、気づけばまたゲラを読み返している。
お昼ごはんを食べ、村上さんと電話でやりとり。
これですべて終わった!
ああ、ついに終わってしまったなあ……という一抹の淋しさ。
さ、お裁縫だ。
5時ごろ無風となり、あんまり暑いのでお風呂に入ってしまう。
風呂上がり、電線にツバメが10羽。
空にも5羽飛び交っている。
よかった、まだいるんだ。
中野さんのところではここしばらく見かけないそうなので、うちのツバメももうどこかに渡ってしまったのかと思った。
夜ごはんは、スパイシー・チキン(鶏もも肉に塩、黒こしょう、おろしにんにく、コリアンダー、チリパウダー、クミンシードをなじませておき、フライパンでじりじり焼いた。トマト&きゅうり添え)、パン。

●2020年8月9日(日)晴れ

きのうの夕方に、帰ってきた。
中野さんの住んでいるところは、なんだか別の国のよう。
子どものころの夏休みみたいな国だ。
最後の夜は、お風呂上がりに水族館ごっこをした。
部屋中の電気を消して。
リビングの青く塗られた壁の一角には、マンボーやらクラゲやら、ユウトク君と中野さんがこしらえた魚の立体がいろいろ吊るしてある。
そこに向かって、ステンドガラス越しに懐中電灯を当てると、台所の壁、窓、天井に魚の影が映し出される。
ステンドグラスは表面に凹凸があるので、光が揺らめいて、波のようにもサンゴ礁のようにも見える。
懐中電灯を当てるのは、ソウリン君かユウトク君。
それをリビングのいろんな場所から、家族中で眺めた。
きのうは、帰る前にまた、4人でサイクリングに行った。
こんどはウォーター・サークルという広場を、自転車で走り回った。
ときどき、中央にある丸い大きな水たまりみたいところを自転車で渡る。
スピードを緩めずに、足を広げてそこを渡ると水しぶきが立つ。
とっても爽快!
そのあとでまた、緑の田んぼに挟まれたあぜ道を走り、池に行った。
ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、リュウキュウクマゼミ、アオスジアゲハ、カラスアゲハ、モンキチョウ、シジミチョウ、ツマグロヒョウモン、モロコ、シマエビ、カメ。
腹ぺこで帰りつくと、お姉さんがホットプレートでそばメシ(焼きそばの残りで)を作ってくれてあり、お母さんは大量の洗濯物にアイロンを当てながらたたんでいた。
中野さんちは7人家族。
日々育っていく子どもたちを中心に、みな誰かのことを思いながら生きている。
何か問題が起こると、家族中で考え、ひとつひとつ解決していく。
私は長い間、自分のことを軸に生きてきたから忘れていたけれど、思い出してみれば、私の子どものころも中野さんちみたいだった。
父が柱となり、家族がひとつになって動くことを大切にしていたから。
あのころの夏の思い出は、今でも色あせない。
61回目の私の夏。
六甲では、今日はじめてツクツクボウシの声が聞こえた。
そして、ツバメの姿が消えた。
夜ごはんは、納豆チャーハン(合いびき肉、ひじき煮)ふわふわ卵焼きのせ、ゴーヤーのおかか炒め。

●2020年8月7日(金)雨のち晴れ

明け方、まだ暗いうちから雨の音がしていた。
中野さんちの雨音は、うちとは少し違う。
セミの声も違う。
ユウトク君はきのう、図鑑を見ながら台所のテーブルで絵を描いていた。
私は向かい側に座って、玉ねぎやにんにくの皮をむいたり、刻んだりしていた。
カレーを作ろうと思って。
玉ねぎが茶色くなるまで、じっくりじっくり炒めている間も、ユウトク君は絵を描いていた。
ときどき、テーブルの脇の床(長方形のちょっとした広場になっている)で、二回連続で側転し、そのままくるっとひと回り。
その側転がすごい。
キレがいい。
鳥の絵が描き上がると、こんどは昆虫の図鑑を持ってきて、「なおみさん、どれを描いてほしい?」なんて言う。
私「じゃあ、蝶にしようかな。オオムラサキは? すごくきれいだもの」
ユ「えー、むずかしいで」
私「じゃあ、これは?」
それは水色の縁取りのある小さな羽の蝶。
下の羽がレースみたいに透けている、ヤマトシジミ。
中野さんが部屋から下りてきて、ユウトク君の隣に座った。
でき上がっていく絵を一緒に見た。
あめ色になった玉ねぎをふたつの鍋に分け、大人はスパイスたっぷり(私の家で調合してきた)のミートボールカレー、子ども用には人参入りのミートボールカレー(ハウスバーモントカレー甘口)。
カレーを煮込むのを途中で切り上げ、近所の池まで4人(中野さん、ユウトク君、ソウリン君)でサイクリングに行った。
自転車なんて5年ぶり。
乗れるかどうか心配だったけど、サドルにまたがったらスイッと乗れた。
ときどき立ち漕ぎをしながら、あぜ道をまっすぐに走った。
ソウリン君のはとても小さな自転車なのに、ペダルを素早く回転させ、私たちと同じスピードで走る。
空き地でぐるぐるぐるぐる、それぞれが好きなように自転車を走らせたのも、イルカみたいで楽しかったな。
今日は、ユウトク君は学校に行った。
ソウリン君の幼稚園はもう休み。
小学校は明日から夏休みなので、子どもたちとお母さん方がお昼ごはんに集まることになっている。
私は小さなおにぎり(たらこ、枝豆&じゃこ)を、中野さんはホットプレートで焼きそばを作る予定。
おにぎりをにぎっているとき、音楽をかけ、ソウリン君と中野さんが踊りを見せてくれた。
「おもちゃのチャチャチャ」、「となりのトトロ」、「アナ雪」など5曲くらい。
ふたりとも真剣で、とても上手く踊る。
リズムにのっている。
「おもちゃのチャチャチャ」では、中野さんがソウリン君を放り投げ、キャッチして、ふたり同時にパタンと倒れた。
人形のゼンマイが切れたのだ。
「アナ雪」は、なよなよとした動きがふたりともどことなく女っぽく、可笑しいったら。
夜ごはんは、家族全員で(お母さん、お父さん、お姉さん、お義兄さん、ユウトク君、ソウリン君、中野さん)。蒸し鶏のパリパリ揚げ(キャベツとレタスの細切りを下にしき、甘酢をかけた)、ゴーヤー&きゅうり&みょうがのポン酢醤油、即席しば漬け、白なすのオイル焼き、鶏の蒸し汁の炊き込みご飯。

●2020年8月5日(水)晴れ

6時前に起きた。
電線にツバメが3羽。
あ、4羽になった。
丸々と太っていること!
双眼鏡で覗いてみた。
嘴を羽に突っ込んだり、羽を広げたりしている。
あれは毛繕いをしているのだな。
ツバメの羽はペンギンに似ている。
下の電線には、見たことのない小鳥がいる。
顔が白と黒。
尾が少し長めの小さな鳥。
こちらも毛繕いをしている。
朝ごはんを食べ、あちこち掃除機をかけた。
帰ってきてから気持ちがいいように。
今日から、3泊4日で夏の旅に出る。
中野さんのご実家へ。
この日のために、いろいろな仕事を終わらせた。
今日もまたクマゼミの多重大合奏。
もうちょっとしたら出かけよう。
パソコンを持っていこうと思っていたのだけど、やっぱりやめにした。
では、行ってきます。

六甲から新開地へ出て、各駅停車の電車でとことことことこ、中野さんの家は、山の中を1時間あまり走ってようやく着く。
ふだんは忘れているけれど、この電車に乗るたびに思う。
こんなに遠いところから、よく来てくださっているなと。
電車に揺られている時間は、ただの1時間ではない。
時の過ぎ去る感覚が変わって、ちょこちょことした細かなことを気にして過ごすのが、ばからしいような気持ちになる。
山が近い。
乗客はみんな、目をつぶっている。
冷房がよく効いているから、マスクをしていても苦しくない。
猛々しい夏の植物に窓を触られそうになりながら、走る。
雨が降らなくても、元気でいられるような緑色の濃い植物たち。
今、「しじみ」という駅に着いた。
志が染みると書いて、しじみと読む。
また、緑の中をひた走る。
ガタンゴトンゴトンガタン ガタンガタン……。
いつまでもいつまでも走る。
でも、ずーっと乗っていれば、いつかは着く。
私も眠たくなってきた。
夜ごはんは、お父さん、お母さん、中野さんと私の4人で。
スーパーのお寿司いろいろ、畑のトマト。

●2020年8月4日(火)晴れ

ゆうべは2時ごろに目が覚め、カーテンをめくってみたら、魚の目玉みたいな満月が白く光っていた。
4時半に起きた。
なんとなく寝ていられなくて。
電線にはツバメが7羽。
そして、ヒグラシの声。
窓を開け、ツバメの鳴き真似をしてみた。
近くの電線にいた1羽が首をきょときょとさせて、探している。
チュクチュクツクツクジュクジュク。
いろんな声でやってみた。
唾がたまっていると、うまく鳴ける。
ふと目をそらした瞬間、上の方から1羽、目の前をひらり羽ばたいて通り過ぎていった。
お腹を見せて。
近くの電線にはもういない。
わ! あのツバメだ。
そのあとも、小一時間ほどそんなことをしていた。

6時からは窓辺でお裁縫。
今朝の「古楽の楽しみ」は、バッハのカンタータ。
カンタータとクマゼミ、聖と俗の大合唱。
息がぴったり。
そのうち、どちらが聖でどちらが俗なのだか分からなくなる。
カンタータはいかにも神聖そうだけど、俗ともいえる。
人が頭を使ってこしらえたものだから。
今日は午後から夙川へお出かけ。
洋裁の方のアトリエへ行く。
長いこと着ている紺色の大好きなワンピースに、小さな袖をつけていただこうと思って。
あと、夏のワンピースをもう1着縫っていただく予定。
お昼ごはんを食べたら出かけよう。

夕方5時前に帰ってきた。
あー、暑かった。
ベランダ栽培のゴーヤーと青じそ、バジルをたくさんいただいた。
嬉しいな。
夜ごはんはゴーヤーずくし。
ゴーヤーのなたね油炒め(厚めに切って焼き目がつくまで炒め、酒と醤油をちょっとまわした)、ゴーヤーの黒酢漬け、きのうの炊き込みご飯(干し椎茸、舞茸、ごぼう、油揚げ、ひじき煮)にゴーヤーと豚バラ薄切り肉、青じそを加えて炒め、チャーハンにした。
このゴーヤーは、売っているものより色が薄く、黄緑色。炒めるとねっちりしてとてもおいしい。

●2020年7月31日(金)晴れ一時雨


このごろ、うまく眠れない。
午前中にメールの返事をあちこち送ったら、今日はもう何もしない。 『本と体』も、料理本も、ようやく手が離れたので。
2階の部屋に掃除機をかけ、シーツをとりかえ、寝転んだ。
目をつぶる。
窓の外で、子どもたちが縦笛の練習をしている。
賛美歌だ。
ふざけながらもそれぞれのパートを練習し、合わせたりしている。
蜂がブーンと部屋に入ってきて、すぐにブーンと出ていった。
電線にはツバメが6羽。
首をかしげ、縦笛の合奏を聞いているみたいに見える。
3時ごろ、台所に下りてひじきを煮た。
ちょっと濃い味になってしまった。
空が暗くなったかと思ったら、土砂降りの雨。
今日もまた夕立だ。
雷が鳴り、大慌てで窓をしめてまわった。
もしかして、もう梅雨明けしたのだろうか。
夜ごはんは、スパイシーチキンカレー(川原さんが泊まった日に作ったもの。数えたら2週間も冷蔵庫に入ったままになっていた。でも、とてもおいしい。スパイスの力はすごいな)、キャベツの塩もみサラダ(レモン汁)、ごぼうのサラダ(きのうのにチクワを加えた)。

●2020年7月30日(木)晴れ


7時半に起きた。
晴れ間が見えるので、朝から洗濯大会。
洗濯物を干すときに見たら、小さなツバメが電線に2羽とまっていた。
片方は羽を広げるでもなく、不器用そうに膨らませ、ぶつぶつぶつぶつ啼いている。
隣のもう1羽の方を気にしながら。
弟が、お兄ちゃんに羽の動きを見せているような感じ。
お兄ちゃんは、すっと飛び立ってしまった。
弟はまだぶつぶつぶつぶつ啼いている。
かわいらしいなあ。
2階にクーラーを入れ、ベッドの上で『本と体』の最後の校正。
場所が変わると、ぐっと集中してやれる。
飲み物を取りに台所に下りたら、ラジオから緊急地震速報が流れた。
関東や東海、新潟の方に向けて、大きな揺れに注意してくださいと、何度も言っている。
いつもなら、こういうときにはすぐに震源地や揺れの大きかった地方の情報が流れるのに、「大きな揺れに注意してください」と繰り返すばかり。
テレビをつけてみた。
千葉の海の近くをトラックが走っていた。
画面は揺れていない。
けっきょく、2分くらいあとに、大きな揺れは観測されなかったと放送があった。
私はこの2分あまりの間に、いろいろな気持ちになった。
まず、関東や佐渡島の友人たち、実家の人たちのことを案じた。
どうか、大きな地震ではありませんように……。
そして、大きな安堵に体の力が抜けた。
けっきょく、何かの間違いがあって、誤った予報が流されただけなのかもしれないけれど、なんだか、このところの不穏な空気への気象庁からのプレゼントのような気がした。
気象庁というよりは、観測している機械なのか。
さらにはもっと大きなものからの。
さ、2階に上って続きをやろう。
2時くらいにすべて終わり、もういちど見直した。
もう、思い残すことはない。
散歩がてら坂を上ったり下ったりして、神戸大学内のコンビニへ。
荷物を送ったあと、すぐに土砂降りとなり、校舎のベランダのようなところで雨宿り。
外に近い場所なので、雨が入ってくる。
動きようがないので、小一時間そうしていた。
雨や空だけを見て、何にもせずにぼーっとしているこんな時間、このところしばらくなかった気がする。
小雨となり、六甲駅まで下りてパンを買い、タクシーで帰ってきた。
汗をかいたのでお風呂。
リトルモアから『それからそれから』のポスターとチラシのデザインが届いた。
なんて明るく、広々とした、すがすがしい絵だろう。
雨上がり、太陽が当たった対岸の建物が白く光っている。
まるで、ポスターと同じ風景がここにある。
夜ごはんは、買ってきたパンでサンドイッチ(ハム、チーズ)、ごぼうサラダ。
今日もまた、ヒグラシが鳴いている。
ツバメが何羽も飛び交うのを2階から見上げた。
みごとな夕焼け。

●2020年7月27日(月)小雨が降ったりやんだり

6時半に起きた。
やることがあるので。
まず、朝風呂に浸かる前にリビングの掃除。
雑巾がけもした。
土曜日の『みそしるをつくる』の撮影では、たくさんの人たちが床を歩いたから。
撮影のことを思い出し、ときどき思い出し笑いをしながら雑巾がけ。
あの日のことを書きたいのだけど、今日はとにかく忙しい。
朝ごはんを食べ、この間の続きの料理本の校正を確認した。
1時半から、赤澤さんとリモートつき合わせ。
間に5分の休憩を入れ、5時前には1冊分すべて(驚くべきページ数)が終わった。
ふー。
楽しかったなあ。
赤澤さんは根っからの明るい人だから。
私はアイスコーヒーに、ミルクティー、ビスケット。
赤澤さんは途中でチョコをつまんだり、お手製の杏のシロップ煮を食べていた。
ちょっと首がくたびれた。
そろそろ5時半、空はまだ明るく、遠くの夜景がぽつりぽつり灯りはじめた。
さ、ごはんの支度をしよう。
夜ごはんは、夏野菜のフジッリ(豚バラ肉、ズッキーニ、トマト、トマトペースト、ケチャップ、チーズ)。食後にパイナップル(きこちゃんが送ってくさった沖縄の)。
窓からは涼やかな風。
ヒグラシ、ヒグラシ、今日も一日が終わる。

●2020年7月24日(金)曇りのち雨

8時に起きた。
たっぷり寝ているはずなのに、なんとなく体が怠く、なんだか目覚めが悪かった。
ゆうべ、クーラーをつけて寝たからかも。
へんな夢をいくつもみた。
朝ごはんを食べ、雨が降る前に「コープさん」へ。
体を動かしたら、すっきりするかなと思って。
坂を下りているうちに、小雨が降ってきた。
明日は『みそしるをつくる』の絵本の撮影で、東京から寄藤さんとアシスタント、長野くん、佐川さんたちがいらっしゃる。
きのう試作をしてみたら、関西の油揚げはふっくら厚みがあり、お椀いっぱいに膨らんでしまうので、薄めのものを買いにいった。
ちょうどいいのをみつけた!
ああ、よかった。
雨のおかげで涼しい風の吹く坂道を、ゆらゆらと上って帰ってきた。
それでも汗をたっぷりかいた。
すぐにシャワー。
おかげで体もすっきり。
『本と体』、料理本、気ぬけごはんの校正。
やることはたくさんあるのだけど、明日の支度に専念しよう。
ここ何日か、荷物や手紙がたくさん届く。
それはとてもありがたいことなのだけど、私のまわりは今、なんとなくわさわさしているみたい。
さあ、ひとつひとつ、雨の窓をいっぱいに開け、ゆっくり動いた。
掃除。
クロスにアイロンがけ。
みんなの賄いのおかず。
試作をしながら、だしも2回とった。
夜ごはんは、チキンカレー(この間、川原さんと食べた残りに、ゆでたオクラを加えた)。
夕方、ヒグラシの声と、シャワーみたいな雨が同時に空から降ってきた。
海と街は、うっすらと霧に覆われている。
山からひんやりした空気が届く。
今夜は早く寝よう。

●2020年7月22日(水)晴れ

ゆうべはこれまででいちばん蒸し暑く、寝苦しかった。 
朝からクマゼミが、ぐわしぐわしと鳴いている。
暑いなあ。
それでも、きのうよりは風が涼しい。
さらにおとついよりも、うんと涼しい(おとついはそよりとも風が吹かなかった)。
きのうは神戸新聞の取材だった。
絵本『それから それから』について、いろいろ話した。
ゆったりとした感じの方で、私のどんな話にも耳を傾けてくださるので、ずいぶん寄り道してしまい、たくさん喋った。
1時からはじまって、3時半まで。
お昼を食べそこね(取材が2時からだと思い込み、『エール』を見ながらお弁当を食べはじめたところだった)、お腹が空きすぎていたせいもあるだろうけれど、終わったらぐったりとくたびれていた。
喋りすぎた。
今朝は、『本と体』の最終校正。
カバーのデザインも、束見本もすべて上がってきた。
すごくいい。
もう、ほっくほくの仕上がり。
心はひろびろ、大舟に乗ったつもりで校正ができる。
半分まで終わり、お昼を食べて、こんどは料理本のゲラに向かった。
今日は2時から、校閲さんの赤字を確認しながら、赤澤さんとまたつき合わせをする。
リモートで。
「ズーム」のこと、私は何度も「ズーモ」と言いそうになる。
川原さんのお母さんがそう呼んでいるらしく、私にもうつってしまった。
さて、もうじきはじまる。
5時半までやって、残りはまた来週。
夜ごはんは、塩サバのムニエル(ズッキーニ、山芋を隣で焼いて、トマトを加え、バルサミコ酢)、ご飯はなし。

●2020年7月20日(月)晴れ

5時半に目覚め、6時まで待って、ラジオ。
今週の「古楽の楽しみ」は、関根敏子さんだ。
聞きながらうとうとするつもりが、途中で起きてしまう。
きのうはお昼ごはんを食べてから、川原さんと坂を下り、新神戸駅行きのバス停までお見送りした。
そのままてくてく歩いて、私は美容院へ。
図書館に寄ったり、スーパーで買い物したり、スニーカーのかかとに穴が空いていたのを直してもらったりしているうちに、すっかり遅くなってしまった。
川原さんはもうとっくに東京に着いているだろうな、と思いながら帰ってきた。
今日は朝から、珍しくコーヒーをいれ、滞っていたメールの返事を書いたり、先週の日記を書いて、送ったり。
川原さんとの5泊6日の日々を思い出しながら。
毎日よく晴れて、いちども雨が降らなかった。
散歩もたくさんした。
川に行って水浴びし(足だけ)、そのまま神戸大学の古い方のキャンパスを歩き、おいしいパン屋さんに行って……その日は、川原さんの大学のリモート式授業があって、私も参加した。
ちょうどカレーを作りはじめていたので、レシピをお伝えしながら、実況中継のようになった。
どんなところに住んでいるのか見せたくて、玄関を入るところから映した。
リビングの部屋をぐるりと映したり、階段を上って2階も見てもらった。
次の日には「ズーム」のやり方を川原さんから教わり、リモート打ち合わせができるようになった。
料理本の校正のつき合わせを、赤澤さんと4時間くらいぶっ続けでやり、1冊分が終わった。
声もよく聞こえるし、表情もはっきり見えるから、隣に赤澤さんが本当にいるみたいで、休憩のとき、冷蔵庫を開けながら「お茶、飲みますか?」と聞きそうになった。
なんだか吉祥寺にいるようだった。
脳みそが、そうなっていたみたい。
リモートって、すごいものだなあ。
川原さんとの日々は、夏休みみたい……というか、ふたりで旅行をしているようだった。
毎日毎日よく遊び、よく仕事し、夕方になると、なんとなくビールやワインを呑みはじめ、いろんな話をするのだけど、話し足りなくて。
最後の夜は、本を朗読し合った。
私の好きな本の、好きな箇所の話をしていたら、川原さんが突然音読をしはじめたのだった。
それが、すっごくよかった。
誰かに読んで聞かせようとしているのではなく、自分に向けて読んでいるだけの、静かな声。
むずかしい言葉や、何度も聞きたいところがあると、「もう一回読んで」と私はせがんだ。

今日からまた、ひとりの日々がはじまる。
今朝は、いろいろな書類が続々と送られてきた。
川原さんがいなくなった途端に。
さ、順番に宿題をやっていこう。
まずは「気ぬけごはん」の校正から。
夕方になるにつれ、曇ってきた。
いつ雨になってもおかしくないような空。
ヒグラシが、雨が降るみたいに鳴いている。
湿気が多く、風もなく、ものすごい蒸し暑さ。
夜ごはんは、牛コマとツルムラサキ炒め(オイスタースース、豆板醤)、トマトのもずく酢のっけ、水なす(手で割って塩をふり、ごま油をたらり)、胡瓜の漬け物、
ごはんを食べ終わり、夕暮れの雲は茜色。

●2020年7月14日(火)雨

ゆうべは雨の音を聞きながら寝た。
けっこう降っていて、風も強く、ときどきピシャ、ピシャッと、窓に当たる音がした。
明け方、雨漏りが気になって1階に下りてみたのだけど、大丈夫だった。
ラジオではずっとカンタータがかかっていて、うとうとしながら聞いていた。
窓の外では雨の音。
次に目が醒めたら、もう8時半だった。
朝ごはんを食べ、「気ぬけごはん」の仕上げをし、お送りした。
そして台所の天井は、水滴が落ちる範囲が少しだけ広がり、ペンキを塗ってある壁に水ぶくれができてきた。
11時ごろ、大家さん(不動産屋の方)が見にきてくださる。
水ぶくれに小さな穴を開け、水を逃がしてくださった。
また同じことが起こっても、これなら私にもやれそう。
業者さんは木曜日にいらっしゃるとのことなので、それまで様子をみることになった。
台所の床も、洗い場の前の床がへこみ、Pタイルにヒビが入ってきている。
でも、4年間もここに住み続けているのだから、いろいろな場所に不具合が出てくるのは当たり前。
うちの建物はとても古いけれど、管理人さんも大家さんも、連絡すればすぐに見にきてメンテナンスをしてくださる。
とてもありがたい。
さ、今日は夕方に川原さんが来るぞー!
雨が小降りになったら、買い物に行こうと思うのだけど、ざんざん降り。
霧も出ている。
午後、雲が切れ、晴れ間が出てきた。
川原さんは、予定より早めの4時半くらいに新神戸着とのこと。
それで、駅からはバスで来てもらって、「コープさん」で落ち合うことになった。
川原さんは晴れ女だなあ。
さあ、あちこち掃除をしよう。
川原さんがやってきた。
「コープさん」で買い物し、隣のおいしいケーキ屋さんでチーズケーキとシュークリームを買い、雨上がりのすがすがしい坂道を上って帰ってきた。
ところが、ドアを開けようとしたら鍵がない。
どこかに落としてしまったかもしれないと思い、もういちど海の見える公園(荷物を置いて水を飲んだので)まで探しながら下り、また、上ってきた。
「コープさん」とケーキ屋さんに電話をしたら、めぼしいところを探してくださったのだけど、やっぱりみつからない。
仕方がないので、大家さんに電話をし、合鍵を持ってきていただくことになった。
待っている間、玄関の通路で山を眺めながら川原さんと過ごしていたら、なんだかふたりでロシアに旅に行ったときのことを思い出した。
ふたりの珍道中は、たいてい私が舞い上がってヘマをし、川原さんがあとから冷静に対処してくれた。
けっきょく鍵は、部屋の中のいつもの場所に置いてあった!
やっぱり。
そんな気がした。
みなさんに迷惑をかけてしまったけれど、通路の椅子に腰掛け、シュークリームを半分こして食べたのも楽しかったな。
川原さんもまた、こういうアクシデントや偶然を一緒に楽しんでくれる人だから。
夜ごはんは、窓辺で暮れゆく空を眺めながら、ピスタチオと赤ワイン。
おしゃべりに花が咲き、ずいぶんたってからハム、チーズ(オランダのモッツァレラ)、黒パン(川原さんのお土産)&マスタード、レタスサラダ。
またずいぶんたってから、「コープさん」で買った新鮮なブリのアラの塩焼き。
川原さんがまだ食べれるというので、残りのブリを生姜醤油に漬けておいたのを、また焼いた。
10時半、川原さんが先にお風呂に入り、私はこうして日記を書いている。
なんだか本当に、ロシアとウズベキスタンの旅をした日々が戻ってきたような感じ。

●2020年7月13日(月)雨

朝から雨。
しとしとしとしと、静かな日。
緑の中から小鳥の声がする。
さ、今日は「気ぬけごはん」に勤しもう。
ここ何日か、台所の天井から水滴が落ちるようになった。
ぽとん、ぽとんと。
流しの真上なので、ちょうどシンクに落ちるから、それほどには気にしていなかったのだけど、管理人さんが見にきてくださった。
応急処置をしてくださるとのこと。
ところが、「あら? これはどうなっとるんじゃろ。ネジじゃないんか?」とひとりごとを言いながら、天井板をカッターで切ってはずそうと格闘しているうちに、ポタポタポタポタと、急にたくさん落ちてきた。
私は心配になり、業者さんにきていただくまで、このままにしておくことになった。
さっき、洗い物をしようとして、頭に1滴落ちた。
わ!
どこに落ちてくるのか見当がついたので、それからは天井を見張りつつ、体をよじって流しを使うようになった。
明るめの雨が降り続いている。
夕方、「気ぬけごはん」はそろそろ書けたもよう。
本当は今日が締め切りなのだけど、一日延ばしていただいた。
明日、朝いちばんで仕上げをし、お送りしよう。
夜ごはんは、中華そば(煮卵&豚バラ薄切り肉、キャベツ、ピーマンをすべて細切りにし、にんにくと炒めてのせた)。

●2020年7月12日(日)薄い晴れ

朝起きて、雨が降っているかな?と思いながらカーテンを開けたら、降っていなかった。
雲は多いけど晴れ間もあるし、対岸の青い山が見える。
窓をいっぱいに開け、ベッドの上でストレッチ。
洗濯機にあれもこれもと放り込んだ。
蝉がシャンシャンワシワシ鳴いている。
今年はじめてのクマゼミだ。
あ、もう鳴きやんだ。
そしてぐんぐん晴れてきた。
なんだか、清々しいお天気。
5月の新緑みたいな、みずみずしい葉っぱの匂いがする。
クーラーの中を消毒液で拭いたり(変な匂いがしていたので)、布団を干したり、2階だけ掃除機をかけたり。
けっきょく今日は、「気ぬけごはん」を書きながら、太陽に当てて乾かしたい関係の家事をしていた。
洗濯も3回戦やった。
乾いたのを取り込んでは、新しいのを洗って干し、シーツも2枚洗った。
「今だ!」と思って。
14日から、打ち合わせがてら川原さんが泊まりにくるので。
「気ぬけごはん」が1話だけ書けたところで、『機関車トーマス』。
夜ごはんは、ちょこちょこと残っているおかずを盛り合わせ、ワンプレートにした。
夏野菜カレー(いつぞやの)ライス&カニカマ入りオムレツ、トマトソースのスパゲティ(いつぞやのにウインナーと茄子を加えて炒め直した)。レタスサラダ(自家製マヨネーズを酢とオリーブオイルで伸ばした。これは、今日子ちゃんに教わった)。

●2020年7月11日(土)雨が降ったり止んだり

ぐっすり眠って、8時に起きた。
カーテンを開けると、窓は水滴だらけ。
水族館のようになっている。
中野さんはきのう帰られた。
きのうの朝、コーヒーを飲んでいたときだったかな、「いろんな雨を見ましたね」。
ぽつりとおっしゃった。
毎日、毎日、本当にいろんな雨が降っていた。
向こうが見えないくらいの、ざーざー降りの雨。
すべてが霧で覆われ、何も見えなくなったり、雲が切れてお天気雨になったり。
音のない霧雨が、二日間降り続いたこともあった。
今朝は、霧の向こうで猫森の緑が揺れるのを見ながら、ヨーグルトを食べた。
さあ、今日からまた、ひとりの日々がはじまる。
まずは、料理本のゲラに向かおう。
これが楽しくてたまらない。
落ち着いて読み込んでいるだけなのに、ときどきぞぞーっと鳥肌が立つ。
斎藤くんの写真も、立花くんのデザインもすばらしく、ぐーの音も出ない。
そして、私が書き連ねた原稿を、微妙に組み代えてくださった赤澤さん。
こういうのを、本を編むというのだろうな。
もしかするとこれは、私の料理本の処女作といえるかも。
私の体そのものの料理本という意味で。
ずっと向かっていたいのだけど、そろそろ「気ぬけごはん」も書きはじめなくては。
今、霧が晴れてきた。
水たまりが揺れている。
雨は少しだけ降っているのかな。
玄関にまわると、山は霧で覆われて見えない。
さ、そろそろはじめよう。
夜ごはんは、塩サバ、網焼きピーマン(いつぞやの)、茄子のくったり煮、みそ汁(えのき茸、豆腐、モロヘイヤのおひたしを加えた)、納豆(卵、ねぎ)、ご飯。食後にミニ水ようかん。
夕方、中野さんから電話があった。
ユウトク君の話や、生まれたてのカナヘビの赤ちゃんの話。
空は少しずつ蒼くなる。

●2020年7月9日(木)薄明るい曇り

8時すぎに起きた。
ゆうべは映画を観て、12時くらいに寝たから。
夜、雨が降っていたのかな。
中野さんがいらしてから今日で5日目。
今朝はぼんやりした晴れだけど、『それからそれから』みたいに、本当に毎日毎日、雨が降っていた。
いちど夜中に大嵐になり、雨漏りが心配で、私は1階の窓際にバケツやらボウルやら並べたこともあった。
でも、熊本の大変な大雨に比べたら、なんでもない。
晴れた日も1日だけあったし。
朝ごはんのヨーグルトを食べ、中野さんは布団に戻った。
私は、ついに届いた料理本のゲラ(立花くんがデザインした)を読み込んで過ごす。
夜ごはん用のトマトソースを煮ながら。
幸せな時間。
お昼は、茄子のくったり煮、ピーマンの網焼き、卵焼き、冷やご飯、お味噌汁(豆腐、えのき茸)。 
食べ終わり、中野さんはまた寝床に戻られた。
「いくらでも眠れます」とのこと。
疲れが出たのかもしれない。
3時ごろ、下りてきた。
散歩がてら街へ買い物。
夜ごはんはトマトソースのスパゲティにするつもりだったのだけど、歩いているうちにお寿司が食べたくなる。
「照子さんは、どちらが喜ぶでしょう?」
母がホームに通っていたころ、「西友」のお寿司を食べたがり、私が買いに行ったことを思い出した。
それで、お寿司にすることになった。
今日は母の命日。
なんとなくかもしれないけれど、中野さんは朝からずっと、白いTシャツに白いズボン。
私は上だけ白、下はハワイの明るい柄のスカート。
買い物から帰り着き、早めのお風呂。
私が出てきたら、中野さんは窓辺のテーブルで紫陽花の絵を描いていた。
夜ごはんは、テイクアウトのお寿司(詰め合わせの折り、磯巻き→しめ鯖と胡瓜のおぼろ昆布巻き)、ピーマンの網焼き、ビール(中野さん)、南風荘ビール(私)。
母の祭壇にもビール。
暗くなってから、東京に行ったときに川原さんからもらった和蝋燭を立てた。
ゆっくりと燃えゆく炎をじっと見た。
もう消えるかなと思ってからが、長かった。
ときおりジリジリと、線香花火みたいな音を立てながら、大きくなったり小さくなったり、揺らめきながら燃えていた。
私「しぶといねえ、お母さんみたい」
中野「その照子さんから生まれたので、なおみさんもしぶといです」
台所の方から見ると、夜景の灯りのひとつみたい。
最後に炎は吸い込まれるように消え、シュッとひとすじ煙が細く上った。
白い龍が天に上っていったみたいだった。

●2020年7月4日(土)雨のち曇り

ゆうべの雨は凄まじかった。
夜中に土砂降りの音で目覚め、雨漏りがしていないか下を見に行ったりして、よく眠れなかった。
雨音に混じって、聞き慣れない音も聞こえ、少し怖かった。
多分、山から流れてくる川の音だったんだと思う。
今朝もすごい勢いで流れている。
きのうは、束の間だったけど、本屋さんでのサインが楽しかった。
美容院に行って、ものすごい量の買い物をして、最後に本屋さんに寄って花束を受け取った。
帰りに棚を見たら、話題の本棚に、私の本が「サイン本」がビニールに包まれて並んでいた。
じんわりと嬉しくなった。
私、神戸に住んでいるんだなあと思って。
書店員さんが花束をくださった。
芦屋で庭師をしている友だちが、お庭の花だけ集めてこしらえたそうで、それはそれはすてきな花束だった。
いろいろな種類の紫陽花を中心に、見たこともない草花やハーブらしきものも混ざっている。
両手で抱えないと持てないほどの花束。
それを今日は、花瓶に分けた。
ああでもない、こうでもないと、ずーっとやっていた。
部屋中のあちこちを花で飾ろうと思って。
絵を描く台の端と端に活けた花を置いたら、なんだか祭壇のようになった。
母の命日までこうしておこうと思う。
母は紫陽花が好きだったから。
お昼前に、今日子ちゃんが本屋さんの棚の写真を撮って送ってくれた。
「サイン本」と書かれた紫の本が、並んでいる。
うれしいな。
夜ごはんは、変わり餃子(合いびき肉、にんにく、ねぎ、生姜、玉ねぎ、青じそ、甘唐辛子)をゆでて、スープ仕立てにした(もやしたっぷり)。
風呂上がり、まだ青白い空に大きな月。
雲に隠れたり、半分になったり、また隠れたり。
満月は明日だそう。
そして明日、中野さんがいらっしゃることになった。

●2020年7月3日(金)雨のち曇り

このところ、涼しくてよく眠れる。
夢もいくつもみる。
朝ごはんの前にいつものストレッチ、掃除機をかけた。
今日は午前中から出かけるし、たぶんお昼は抜きになるだろうから、しっかりめの朝ごはん。
ハムエッグとサラダつき。
パンも2切れ焼いた。
六甲駅にある本屋さん「ブックファースト」が、私の本のコーナーを作ってくださった。
それで、「帰ってきた 日々ごはん7』のサインをしに行く。
関西方面のアノニマの営業の方と11時にお待ち合わせ。
近所の本屋さんで、そういうことをしてくださるのがとても嬉しい。
今朝は海も空も白いな。
サインが終わったら、美容院にも行く予定。
買い物もしなくっちゃ。
10時半には出かけよう。
今、窓を見たら、地面が濡れている。
目に見えないくらいの雨が降っているのだ。
緑に沁みるような雨。
さわさわと音がする。
夜ごはんは、ラタトウユを作っているうちに、夏野菜のカレー(ズッキーニ、茄子、トマト、ミニトマト、甘唐辛子、南瓜)になった。タラのムニエル、ご飯(らっきょう、胡瓜のピクルス添え)。

●2020年7月2日(木)快晴

梅雨の晴れ間。
きのうからの計画で、マットを洗濯しているところ。
今朝のヨーグルトの果物は、バナナとピンクグレープフルーツ。
玄関の椅子に座って食べた。
山の空気が下りてきて、ひんやりと肌寒いほど。
どんぐりの緑色の丸い実は、帽子になる部分なのだな。
去年の今ごろ、母はどんなだったかなあと思い、あのころにつけていたメモの束を棚から出してきた。
流動食のころだ。
7月2日、呼びかけても目を覚まさない。
お腹の上で手を組み(お祈りしているみたいな形)、薄目を開けてまどろんでいる母に、私は本を読んであげた。
「聞いているのかいないのか。聞いてないように見えるし、どこか、母の深いところで聞き耳をたてている母がいるような気がしながら読んだ。私も読みたいので」
本は、母の本棚にあった『その故は神を知りたもう』。
「彼女はもう苦しみはしなかった。平和にまどろんでいて、ただときどき、自分がまだそこにいるのに驚いていた」
今にも亡くなりそうな人に、私はそんな残酷な言葉を読んだんだな。
日記には書かなかったけれど、メモには走り書きが残してあった。
さて今日も、宿題の作文の続きを書こう。
いいところまできているので、仕上げるつもりで。
それにしても、海が青い。
2時過ぎに仕上がり、なーちゃんに送った。
今日の海は水が少ない感じがする。
さ、窓辺でちくちく。カレンシャツのステッチをしよう。
夕方、川原さんと電話した。
私は氷入りのビールを呑みながら。
暮れはじめた海と空を眺めながら。
サンフラワー号に西陽が当たって、白く光っていた。
水色の空に、ぷっくりした白い月。
川原さんのところでは、もう白く光っているのだそう。
高いところでツバメが旋回している。
まっすぐ行ったかと思うと、風に逆らいキュッと方向転換。
あ、6羽だ!
夜ごはんは、春雨のピリ辛炒め炒め(牛肉、玉ねぎ、ピーマン、えのき茸、トマト、柚子こしょう)、しらすおろし(オクラ入り)、レタスサラダ(自家製マヨネーズ)、ご飯。

●2020年6月30日(火)雨

明け方、夢に彼女が出てきた。
彼女はうちに遊びにきていて、もう帰ろうとしていた。
私はお土産をみつくろっていた。
うちにある中でいちばん上等な絨毯(どこかの国で買ったもの)、本など。
あと、塩も。
塩の粒を小鍋に入れ、水を加えて煮溶かして広口の小さなビンに流したら、だんだん固まってきた。
肌色がかった薄いピンクの、とてもきれいな塩の結晶。
艶があり、桜貝みたいな色だった。
この塩は削って使う。
折りたたんだ絨毯や本を小脇に抱えていた彼女が、「高山さん、もうこれだけで十分」と笑い、私は「うん。じゃあ、この塩はお母さんにあげて」と答えた。
それだけの夢なのだけど、なんかリアルだった。
彼女がもうすぐ死ぬことを、私は知っている。
彼女も知っている。
そんな夢。
起きてカーテンを開けたら、雨が降っていた。
まだ5時くらいなのかと思っていたら、もう7時だった。
慈雨という感じの雨。
雨の日は時間が分からなくなるな。
さて、今日はきのうの続き。
朝ごはんを食べたら、「キチム」のなーちゃんに頼まれている作文をやろう。
10時ごろ、しっかりとした雨。
海も街もまっしろけ。
2階に上って窓を開けたら、電線にツバメが6羽とまっていた。
上の電線にとまっている3羽は、上向き加減で胸を張り、じっとしたまま雨に濡れている。
下にとまっている3羽は、少し小さい。
羽を大きく開いたり、しきりに尾を降ったり、飛び回ったりと忙しい。
もしかして家族かな。
夜ごはんは、きのう「コープさん」で買っておいた鯵で南蛮漬け、南瓜の煮物、納豆、豆腐と油揚げの味噌汁、ご飯。

●2020年6月28日(日)曇りのち晴れ、一時雨

きのう、寝室に大きな蜂(5センチくらいある)が迷い込んできた。
寝るときはさすがに怖いので、窓を閉め、網戸とガラスの間に閉じ込めておいた。
「ごめんね」と声をかけながら。
でも、ゆうべはいちども羽音がしなかった。
蜂も夜は眠るのだな。
そのままにしておけば、いつかは弱って死んでしまうだろうから、放っておこうとも思ったのだけど、朝風呂から上がったとき、勇気を出してバスタオルでふんわり包み、窓の外で振ってみた。
前に管理人さんがやっていたように。
ブーーーーンと飛んでいった。
木に向かって。
ああ、よかった!
朝ごはんを食べ、油でベタベタになっていたガスコンロの脇を掃除。
台所の床もセキス水をスプレーしてこすり、雑巾がけした。
リビングも掃除機をかけ、窓辺のテーブルの下のマットをはずした。
あちこちすっきり、夏使用になった。
さて、文の仕事をはじめようかな。
2時ごろにザーッと音を立て、シャワーみたいな雨が降ってきた。
外はほの明るく、すぐに上がった。
雨上がり、ゴミを出しがてら山の入り口まで上る。
風はそよとも吹かず、驚くばかりの蒸し暑さだった。
夜ごはんは、タイカレー(いつぞやの。蒸したささ身、えのき茸、トマトを加えた)、塩もみ人参とレタスサラダ。

●2020年6月26日(金)

海も山も霧に包まれている。
まっ白け。
朝からずっと。
空気もひんやり。
ラジオで北欧の音楽がかかっているのだけど、霧のせいなのかすぐに雑音が入る。
それもなんかいい。
外国にいるみたい。
「MORIS」まで、歩いていけるかな。
今日は展示会のお手伝いをしにいく。 
11時ごろ、霧が晴れてきた。
風も涼しくて、お出かけ日和だ。
今、ピンポンが鳴って管理人さんがいらっしゃった。
これから1時間ほど停電だそう。
「電気も、水も、これ(呼び鈴のこと)も、みな止まります。よろしくお願いします」
扇風機が止まり、停電いなったのが分かった。
パソコンの画面はつくのだけど、ネットがつながらなくなった。
びっくりするほど静か。
しーんとしている。
私はこんなにも電気に囲まれながら、生活しているんだな。
この静けさをもうしばらく味わっていたいのだけど、なんか、落ち着かない。
そろそろ出かけよう。
夜ごはんは、蒸し穴子のお寿司(スーパーの)、レタスと青じそのサラダ(自家製マヨネーズに酢を加えてのばした)。

●2020年6月25日(木)曇りのちときどき雨

今日から雨が続きそうなので、きのうのうちに毛布を洗っておいた。
絹毛布だから、洗濯機にかけられる。
おかげでふんわりやわらかく、とってもよかった。
いい匂いに包まれて寝た。
もっと早くに洗えばよかった。
今週の「古楽の楽しみ」は関根敏子さん。
曲について話す声が、揺れたりかすれたりする。
やっぱりいい声、朝にぴったりの声。
そして番組の終わりに、ほかの人たちはたいてい「それでは、今日もよい一日を」などと言うのだけど、関根さんはそんなことは言わない。
そこも好き。
このところ、朝のヨーグルトを玄関の椅子で食べるようになった。
ヨーグルトの果物は、きのうのうちにむいておいたオレンジと、プラム(今日子ちゃんのお土産)。
そしてまた、ここ三日連続の朝のお楽しみは、梅のジュレ(今日子ちゃん作)。
バターを溶かしたトーストの上から、とろりとかける。
甘酸っぱく、ほんのり梅の香りがして、梅の花の蜂蜜みたい。
梅の種から作ったそう。
トーストも玄関で食べた。
どんぐりの花はすっかり散って、青くて堅い小さな実(まん丸)ができはじめている。
今朝は、山のてっぺんに霧が少しかかっている。
いつ雨が降り出してもおかしくないようなお天気。
今日は、『帰ってきた 日々ごはん7』のサインをしよう。
50冊届く前にあちこち掃除機をかけ、雑巾がけをして向かえよう。
いま、ザーーーッと音を立て、雨が降りはじめた。
窓の外は真っ白。
風で雨が入ってくる。
慌ててあちこちの窓を閉めてまわる。
このところずっと、晴れの日が続いていたけれど、梅雨だもの、どんどん降ってもらわなくては。
そのあとすぐに止み、もう雨は降らなかった。
そういえば、このところ『帰ってきた 日々ごはん7』を、寝る前に毎晩愉しみに読んでいる。
今回は、神戸に引っ越してきて、季節がひとまわりしたころ。
よく外に出かけているし、家にいるときにも窓からの景色にいちいち驚き、感じ入っている。
なんだか旅をしているときの日記みたい。
みずみずしい感性。
もう、自分の書いたものとは思えず、少しずつしか前に進めない。
今の私は、あのころとは違う。
ずうずうしいくらいに、ここでの生活そのものを楽しんでいる感じがする。
夜ごはんは、鶏の塩焼き(出てきた脂で豆苗を炒めた)、冷やしトマト(塩)、ご飯(黒ごま塩)、昆布の佃煮。

●2020年6月23日(火)快晴

今朝のヨーグルトは、玄関の通路の椅子で食べた。
緑の山を見ながら。
きのうヒロミさんが、「MORISS(4階にできたスペース。ススと呼んでいる)」から見えるうちの写真を送ってくださった。
緑の山がもりもりと写っていた。
しかも、とても高い。
緑深い大きな山に抱かれているようにして、うちのアパートがぽつんとある。
坂の下からは、こんなふうに見えるんだ。
と思って、改めて眺めた。
でも、ここから見える山は、やっぱりそんなには高くない。
地図を調べてみた。
もしかしたら、奥にある山が重なって写っているのかも。
そうか、うちは本当に山に守られているんだな。
おとついから、中野さんの絵がぽつりぽつりと送られてくるようになった。
私は絵を眺め、なんとなくできた俳句を詠んでお返事すると、しばらくして採点のメールが届く。
楽しい!
ゆうべは絵とは関係のない句もでき、朝お送りしたら、93点だった。
最高得点だ。
窓辺でズボンをチクチクしたり、「キチム」のイベントのことで、なーちゃん、中野さんと電話をしたり。
朱実ちゃんと樹くんにメールを送ったり。
4時ごろ、『帰ってきた 日々ごはん7』が届いたので、もうお裁縫はおしまい。
あとでベッドにごろんして、読もう。
それにしても今日は海が青いな。
夜ごはんは、焼き塩サバ、大根おろし、夏野菜のもずく酢かけ(トマト、塩もみピーマン、みょうが)、ゆかりおにぎり。
お風呂上がりに、白くま(かき氷のアイス)。
夜景を見ながら食べた。
冷たくて、鼻のつけ根がツーン。

●2020年6月21日(日)薄曇り

5時半に目が覚めた。
窓を開け放ち、空を眺める。
なんとなく寝ていられず、6時に起きてしまう。
朝風呂に入ったついでに、バスルームの床を水で流してタワシでこすった。
こんなことをしたのは、引っ越してきてから多分2回目。
あんまり汚れて見えないので、いつもは掃除機をざっとかけるだけなのだ。
とってもスッキリ。
もっと早くにやればよかった。
窓辺でちくちくしたり、掃除をしたり。
今朝はバナナチーズサンドをしっかり食べたので、お腹が空かない。
メールをしているうちに、今日子ちゃんとひろみさんが急にごはんを食べにいらっしゃることになった。
ああ、だからか。
おふたりを迎えるために、バスルームの掃除なんかしたんだな。
今日は夏至の新月。
夕方の4時くらいから日食もはじまるんだそう。
見られるだろうか。
午後、曇ってきた。
太陽が隠れてしまった。
海も白っぽい。
きのうはあんなに青かったのに。
今日は、あるものでお迎えする。
マヨネーズをこしらえ、南瓜とじゃがいもを蒸してサラダを作った。
サフラン入りのトマトソース(小エビを入れた)があるので、パスタにしよう。
あとは、きゅうりとピーマンの塩もみに、トマトを加え、ごま油をまわしたさっぱりサラダ、浸し黒豆(アムが送ってくれた北海道の黒豆で)、新玉ねぎを厚切りにしてタークで焼く予定(けっきょく今日子ちゃんが焼いてくれた。厚切りではなく、頭のとんがりをつけたままくし形の4つ割り。油はフライパンの底に塗るくらいで、じりじりと気長に焼いて、香ばしい焦げ目をしっかりつけてから、はじめてホイルをかぶせ蒸し焼きに。塩も何もふりかけずに食べたのだけど、果物みたいにジューシーで、たまらなくおいしかった)。
3時ごろ、中野さんから写真つきのメールが届いた。
ついさっき、ツマグロヒョウモンがまた1羽、羽化したとのこと。
羽からしたたる赤い汁は、水槽を伝い、底にたまっている。
本当に、血にしか見えない。
今日は風がそよとも吹かない。
日食の前だからかな。
そろそろおふたりがいらっしゃる。
そうだ!
アノニマ・スタジオの村上さんが、『帰ってきた 日々ごはん7』の発売を記念して、楽しい試みをはじめました。
「読者参加企画で、『♯私の日々ごはん』をつけて、あなたの日々ごはん(ごはんやおやつ)、高山さんの好きなレシピ、好きな巻、ことばや思い出、いろいろなーんでも、ぜひご投稿ください。高山なおみさんにもご覧いただきます! 愛読者の方もはじめての方も、『日々ごはん』ワールドにたっぷりと浸かってください」とのことです。
インスタグラムを開けるようになったので、私も愉しみに待っています。

●2020年6月20日(土)晴れ

6時半に起きた。
ゆうべは肌寒かったな。
夜中に何度か目が覚めたけど、毛布をかぶってうつらうつらしているうちに朝がきた。
月曜日から中野さんが車でいらっしゃり、きのうまで一緒にいた。
ものすごく久しぶりだったけれど、会えばすぐいつもの空気にすーっと包まれた。
どちらかがごはんを作って食べ、移りゆく空を眺めながら呑んで、眠り、朝起きてコーヒーを飲み、お裁縫して、買い物して。
雨の日には傘をさして散歩した。
川へも行った。
4泊だけだったのに、1週間くらい一緒に過ごしていた感じがする。
梅雨の晴れ間と雨の数日、そんな、なんでもない日々を過ごしていたのだけど。
なんというのだろう。
人が生きていくのに大切な養分というか。
ふだんは体の奥深く、根っこの先だけがかすかに触れているもの。
多分それは、生きることにまつわる悲しみや歓び。
言葉になる前の、ごちゃまぜの感情。
中野さんといると、そういうものが表に出てきて、手で触れそうになる。
火曜日の朝には、「口笛文庫」のご夫婦が古本を8箱ほど(中野さんが車でうちに運び込んだ)引き取りにきてくださった。
その日だったかな、植物屋さんに行って、白と桃色の芍薬を1本づつとホサキシモツケ、ハゼランを買って生けた。
亡くなった仕事仲間の彼女と母のために。
そうそう。
私ははじめて俳句を作った(週刊漫画の表紙句の仕事をいただいたので)。
ひと晩寝ているうちに3つできた。
俳句はおもしろいな。
母が寝たきりになったとき、よくノートに書きつけていたけれど、寝ながら言葉をゆらゆらと浮かべ、頭を遊ばせるのにぴったりだ。
私が詠み上げると、「80点」とか、「91点」とか、即座に中野さんに採点されるのも、ゲームみたいで楽しかった。
今日は、あちこち掃除して、「キチム」のトークイベントのことでなーちゃんと電話。
玄関の椅子に腰掛け、山を見ながら話した。
まだ、いつになるか分からないけど、何か楽しいことができそうな予感。
それにしても、海が青いなあ。
縫いかけていたスカートを仕上げ、ズボンも途中までちくちく。
3時ごろ、体の小さいツバメがぐんぐん空を横切り、急降下して、猫森に入っていった。
きっと今年生まれたヒナだと思う。
夜ごはんは、エビトマトライス(サフランと小エビ入りのトマトソースにケチャップを加え、冷やご飯を炒めた。エリンギ、玉ねぎ、ピーマン)、目玉焼き、きゅうりのピクルス。
7時。
海の一カ所だけ、オレンジ色に光っている。
光はじりじりと大きくなり、縦に伸びてゆく。
消えはじめたらあっという間。
いま、太陽が山に沈んだんだ。
7時半ごろ、中野さんから電話があった。
今日はユウトクくんたちと一日じゅう池のほとりで遊んで、なんと亀の産卵を見たのだそう。
あと、ナマズを2匹つかまえた。
ソウリンくんが飼育していたツマグロヒォウモンが、羽化した。
蛹から出てくるとき、血らしきものが水槽に流れたんだそう。

●2020年6月13日(土)降ったり止んだりの雨

今日も霧。
窓が白い。
今朝は5時半に目覚めた。
ゆうべもよく眠れなかったな。
でもこれは、物理的なこと。
お風呂から出たら、ものすごくムシッとしていたので、クーラーを送風にして寝たのがいけなかった。
寒いやら、消すと暑いやらで。
私の体や脳みそは、神戸にいることを知っているらしいのだけど、東京に行く前と帰ってからの暑さの変化があまりに大きく、ついていけないんだと思う。
きのうから、うちの祭壇の小さな水のグラスがふたつになった。
母のと、彼女のと。
「おはよう」と声をかけ、新しい水とかえる。
日めくりカレンダーをめくり、私の一日がはじまる。
東京に行く前、私は何をして過ごしていたんだっけ。
午前中にひとつ、テレビの仕事の電話がかかってきて、1時間も長話ししてしまった。
そして、東京にいる間、朝ドラを見逃した日があったので、お昼ごはんを食べながら1週間分の『エール』を見て、また泣いた。
お腹はぴーぴー。
こうやって少しずつ、神戸の私に戻ろうとしているんだと思う。
午後は、何をしていたかというと、インスタの言葉が読めるように登録をするのをやってみた。
これまで何度試してもつながらなかったのだけど、すんなりできた。
そして、亡くなった彼女のインスタをずーっと読んでいた。
そしたら、おすすめの料理本を紹介するリレーというのがあって、彼女のほかにもいろんな方が私の本を紹介してくださっていた。
それを読んで、胸がいっぱいとなる。
みなさん、こんなふうに、利用してくださっていたんだ。
ありがたいなあ。
あ、また雨が降ってきた。
今日は、そんな日。
夜ごはんは、いつか食べようと思って、ずいぶん前から買っておいたカップヌードル(味噌味)、小松菜とちくわの炒め物。

●2020年6月12日(金)雨のち曇り

6時に目覚め、いつもみたいにラジオを聞いて、7時20分に起きた。
霧で窓が白い。
雨は降ってないみたいだけど。
湿気が多く、たまっていた埃が床に張りついてペタペタする。
さっき、あちこち掃除機をかけ、雑巾がけをしたところ。
これですっきり。
仕事の電話もふたつ受けた。
夕方には、筒井くんからもお電話いただき、進行中の絵本の話をした。

長いこと、日記が書けなかった。
遡ってみたら10日も間が空いている。
親しくしていた若い仕事仲間が急に亡くなり、しばらく東京に行っていました。
知らせを聞いたのが5日で、次の日には新幹線に乗って東京にいた。
帰ってきたのはおとつい。
きのうは、何をしていたんだろう。
何をするにもゆっくりで、気づけばぼんやり。
夜も、まだうまく眠れない。
ゆうべは3時ごろに窓を開けたら、霧が膨らんで、白いのが道の方まできていた。
雨もなく、風もなく、木々はみな枝葉をだらんと下し、じっとしていた。
東京では川原さんの家に泊めてもらい、ずっと一緒に過ごしていた。
マスクをして誰かに会いにいったり、偶然誰かに会えたり。
お通夜も告別式も、近親の方たちだけで、みんな参列はできなかったのだけど。
毎日よく晴れて、川原さん、友人たち、いろんな人の口から彼女の思い出話を聞いて、関係ない話もたくさんし、笑い、食べて、呑んだ。
川原さんちには小さな時計しかなくて、今が何時なのかいつも分からず、でも時間のことは気になりもしなかった。
何の約束もない、夜更かしと朝寝坊の日々。
朝、というか昼、どちらかが起きたらなんとなく目を覚まし、パジャマのまま喋り合い、どっちかが紅茶かコーヒーをいれ、お腹が空いたらごはん(だいたい私が作っていた)を食べ、まただらだらとお喋り。
話したいことはいくらでも出てきた。
川原さんの散歩コース(玉川上水沿いの小径)をマスクして歩き、少し陽焼けして、夕暮れとともに帰り、その日は餃子を作って食べたっけ。
酔っぱらって、川原さんと泣きながら、誰もいない雨上がりの道を歩いて帰った夜もあった。
新神戸に着いたとき、土砂降りだったのだけど、駅で豚まんを買っている間に止んで、わーっと晴れた。
うちに帰ってきて窓を開けたら、空も海もまっ青で、境がなかった。
ここは、なんてひろびろとしたところなんだろう……と驚いた。
でも、もしも私がここにひとりでいたら、悲しみを抱えきれず、つぶれてしまっていただろう。
毎日毎日蒸し暑く、街には人が多くてごみごみし、人が立てる音に溢れていたけれど、私は川原さん、友人たち、東京という場に慰められ、帰ってきたんだと思う。
見送るために旅をして、帰ってきた。
そうそう。
今朝は、玄関の通路に置いたイスに腰掛け、山を見ながら朝ごはんの紅茶を飲んだ。
ざあざあ降りの雨だったけど、どんぐりのクリーム色の花が満開で、雨なんかに関係なく小さな蛾たちが乱舞していた。
ひらひらふらふら。
夜ごはんは、寄せ集め春雨炒め(牛肉とズッキーニ炒めの残り→東京に出かける前に冷凍しておいたもの、茄子、新玉ねぎ、ピーマン、春雨)、もずく酢冷や奴(きゅうり、トマト、青じそ、じゃこ)、山ウドのきんぴら、みそ汁(茄子、ズッキーニ)、おにぎり(ゆかり、黒ごま塩、青のりのミックス)。

●2020年6月2日(火)晴れ

8時に起きた。
寝坊した。
このごろは、よく歩くようになったからなのか、とても深く眠れる。
いくらでも眠れる。
ゆうべもベッドで本を読んでいるうちにたまらなく眠たくなり、9時半には寝たというのに。
『帰ってきた 日々ごはん7』のアルバムキャプションの校正が終わったら、もう、することがなくなった。
きのう『本と体』のゲラをお送りしてしまったので、手もとには何も原稿がない。
『帰ってきた 日々ごはん7』は、いよいよ入校間近。
今巻は、神戸に越してきて1年がたったころの、冬から今ごろにかけての日記。
6月末に発売だそうです。
どうかみなさん、愉しみにしていてください。
さーて、今日は何をしよう。
午後から、カレンシャツ(直線断ちでとても簡単)を縫うことにする。 
今は、ラジオを聞きながら、窓辺でちくちく。
とてもいい風が入ってくる。
海が青いなあ。
2階に上がったら、茶色とオレンジ、紫のスジが入ったきれいな蛾が、窓のところにいた。
また戻ってきたんだ。
私が近づくと、パタパタと慌てて逃げようとするので、さっきそっとつかまえて窓から逃がしてあげたのだけど。
もしかして、お母さん?
きのうから6月。
そういえば母が再入院をしたのは、去年の今ごろだった。
もう、ビールを飲んでしまおう。
青い空、白い月の前を、ツバメが滑空。
と思ったら、大きな蜂が一直線に飛んで目の前を横切っていった。
小さな白い蝶や、灰色の蛾もふらふら飛んでいる。
今はあちこちで、生きものたちがうごめいているのだな。
夜ごはんは、おつまみ3種盛り合わせ(新ごぼうとちくわのサラダ、新ごぼうのきんぴら、切り干し大根煮)、夏野菜たっぷりもずく酢奴(塩もみきゅうり&ピーマン、ゆでオクラ、トマト、みょうが、絹ごし豆腐、柚子こしょう)、鰯のオリーブオイル塩焼き(きのうの残り)。

●2020年5月30日(土)晴れ

ぐっすり眠って、5時前に目が覚めた。
6時に窓を開け、ラジオを聞きながら空を眺める。
リスと子どもが手をつないでいる。
そのようにしか見えない雲。
子どもの手がじわじわと長くなり、ふたつの体はたなびきながらひとつになった。
そのうち青い空に溶けた。
おとついは、ヒロミさん、今日子ちゃん、エミさん(前に淡路島に一緒にいった方)と元町の生地屋さんに行った。
電車に乗ったのは、何ヶ月ぶりだったんだろう。
電車は空いていたけれど、三宮のアーケードは人がいっぱいいた。
私たちもそうだけど、みんなマスクをして歩いていた。
今日もまた、午後から電車に乗って夙川へ行く。
冬のコートを仕立てていただいたアトリエへ。
東京にいたころに買った水玉模様のワンピースの丈が短かく、ずっと着られなかったのを、お直ししてもらう。
夙川から帰ってきたら、「MORIS」と歯医者さんへ行く予定。
それまで、『本の本(仮)』の校正に集中しよう。
アノニマから夏に出る予定の、この本のタイトルが決まった。
『本と体』といいます。
去年の春から夏にかけてうちで開いた3人(筒井くん、陽道くん、中野さん)との対談と、感想文の数々を1冊にまとめました。
きのうは、中野さんとの新作絵本『それから それから』の最終校正も届いた。
デザインは祖父江さんがしてくださった。
神戸に越してきて、このような絵本ができたこと。それだけで感無量だ。
いよいよ6月に発売されます。
『本と体』もまた、私がここにひとりで暮らすようにならなければ、生まれなかった本だと思う。
お母さんに見せたかったな。
どうかみなさん、愉しみにしていてください。
夜ごはんは、肉豆腐(牛肉、白たき、菊菜、豆腐)。
お豆腐をいっぱい入れたので、ご飯はなし。食後にわらび餅。 
蒼闇の中、今とつぜん汽笛が鳴った。
ボオーーーー、ボオーーーー!
お腹に響く音。

●2020年5月27日(水)曇りのち晴れ

5時半に起きた。
窓を開けると、地面が濡れている。
ゆうべは雨が降っていたのか。
音はしなかったけど。
きのうは鳥たちの声で5時前に目醒めた。
すでに明るかった。
このごろの陽の出は、何時くらいなんだろう。
隣の建物に隠れ、もう見えなくなってしまった。
今朝の「古楽の楽しみ」は、18世紀のイタリアの音楽。
ベッドの上でコーヒーを飲みながら聞いた。
窓の方を向いて。
湿気をたっぷり含んだ空気は、朝の山の匂い。
青い草葉の匂い。
ゆうべ、中野さんから電話があり、久しぶりに声を聞いた。
中野さんは今、部屋の荷物を片づけたり、絵を描く部屋と寝室との間に柱を立て、ステンドグラスをつけたりして大改造しているのだけど、この前聞いたときよりもさらに進化していた。
こんどは分解した古い襖の枠で、青い扉を作ったのだそう。
柱をまた立て、ステンドグラスのこちら側に取りつけた。
ステンドグラスとの間はスコンと空いているので、扉を開けなくても出入りできる。
役には立たないのだけど、「どこでもドア」みたいで楽しいのだそう。
朝はいつも、ユウトク君たちと原っぱにコウロギをつかまえにいって、カナヘビの夫婦(飼育している)にあげている。
そのコウロギは若いけれど、もう鳴くのだそう。
まだへたくそで、「チ、チ、チ」「チュ、チュ、チュ」と、雀みたいな声に聞こえるんだそう。
ゆうべ私は、その声を思いながら寝た。
夜に鳴く、若いコウロギのかすかな声。
今朝は、朝ごはんのトーストにチョコをのせてみた。
うまいぐあいに溶けて、とってもおいしい。
いつもみたいにフライパンで片面を焼き(ホイルをかぶせて)、焼き目がついたらひっくり返して、バターのかわりにチョコをひと欠けのせ、またホイルをかぶせる。
裏面にも焼き色がつくころ、チョコは溶けている。
今日は、アノニマから届いた『本の本(仮)』の初校に勤しもう。
夜ごはんは、タイ風焼きそば(新玉ねぎ、牛肉、人参、ピーマン、青じそ、レモン)。

●2020年5月26日(火)曇りのち雨

5時に起きた。
ゆうべは本を読んで9時に寝たので。
この時間はもう明るいんだな。
いつものようにベッドでうとうとしながらラジオを聞いて、7時に起き上がった。
午前中に、アノニマからいろいろな書類が届く。
まず、『帰ってきた 日々ごはん7』の最終校正を済ませ、ポストに出しにいった。
小雨のなか、傘をさして。
歩きはじめたら気持ちがよく、近所でこの間みつけた新しい坂道を下ってみた。
そこは、登山口の方に向かってしばらく坂を上り、石碑のところで下る小径。
夏草がのびのびと茂り、「ここはどこなんだろう……」というような、家や畑に挟まれた田舎っぽい道だった。
その細い急な坂道を、小学生の男の子がふたり、お喋りしながら上ってきた。
地図にはない道。
なんだか子どものころの夏休みみたいな、懐かしい小径だった。
さらに歩いてまた神戸大学へ。
今日は第一キャンパス。
正門から入って、すばらしい佇まいの古い校舎をゆっくり歩いて見てまわった。
雨だから散歩の人は誰もいない。
大きな木がいくつもあり、お茶みたいな青い匂いもする。
緑の中には、甘い香りがほんのりと混ざっていた。
あちこちでスイカズラの花が咲いていたから、その匂いだったのかも。
透明のビニールの傘に、パラパラと当たる雨音だけ聞きながら気ままに歩くのは、とっても気持ちよかった。
帰って、夜ごはんの支度をし、お風呂にも入ってしまう。
夜ごはんは、カラスガレイのムニエル(マスタード&バター醤油ソース)、山ウドのきんぴら、みそ汁(切り干し大根、青じそ)、ご飯。

●2020年5月24日(日)晴れ

起きたら7時半だった。
このごろは寝るのが遅いから、どうしても寝坊してしまう。
夜、アマゾン・プライムの映画やドラマを見るのがやめられない。
ゆうべとおとついは、『ミス・マープル』を見た。
ひとつの物語が完結するまで2話、3話と続くのだけど、犯人が知りたくて、つい最後まで見てしまう。
ゆうべは同じのを2回続けて見た。
犯人が分かった上で見る、というのがまたおもしろい。
何日か前に見た『僕をさがしに』というフランス映画も、とってもよかった。
ああ、ひさしぶりにいい映画を見たなあ。
このところの私の日課は、午後の早い時間に仕事を切り上げ、神戸大学に散歩にいくこと。
今日子ちゃんとヒロミさんも毎日歩いているらしく、情報交換をするのもとても楽しい。
それに、一緒に歩くのではなく、ちがう日、ちがう時間に同じ道を歩いている……というのがなんかいい。
キャンパス内を出てからも坂が多いので、うちに帰り着くともう汗びっしょり。
だから、夜ごはんの前にお風呂に入る。
そして、ワインを呑みながら支度をし、窓辺のテーブルで食べ、あと片づけをしたら映画やドラマ鑑賞。
寝るのは11時とか12時。
今日は、あちこち念入りに掃除。
すっきりしたところで、『帰ってきた 日々ごはん7』のアルバムのキャプションを書いた。
まだ、3時半。
海が青緑。
赤ワインを開け、『幸せなひとりぼっち』というスウェーデン映画を見た。
これは、川原さんのおすすめ。
とてもとてもよかった。
ワインを呑みながらまだ明るいうちから映画を見て、暮れゆく窓辺で夜ごはんを食べる。
ここに住んで5年目の幸。
夜ごはんは、絹さやたっぷりのソース味の焼うどん(牛肉、絹さや、ねぎ。きのうヒロミさんに教わった)。

●2020年5月21日(木)晴れ

少し肌寒い。
今日は仕事をしない日と決めた。
『サラメシ』を見ながらお昼を食べ、『エール』を見て、ちょっと泣いて、支度して出掛けた。
ちょうどポストに、「球体」の号外(號外と書いてある)が立花くんから届いていたので、それを持って。
銀行の用事をすませ、きのうヒロミさんに教わった小径をてくてく上って、神戸大学へ。
左は石垣と夏草、右は海と街の景色に挟まれた細い坂道。
いつも行っているコンビニの脇に、こんなにいい道があったとは。
大学内のコンビニでアイスコーヒーを買って、日陰のベンチで「球体」を広げて読んだ。
いいなあ。カッコいいなあ。おもしろいなあ。
今回の号外は、「家について」。
いろんな人が短文を寄せている。
私も書いた。
4月21日に書いていた作文は、これです。
帰り道、「ウリボーロード」を歩いていたら、はじめて見る鳥がいた。
ひとことで言うと青だけど、青に藤色と、灰色を混ぜたような、なんともいえない美しい色の羽、お腹はオレンジがかった茶。
尾羽が長く、同系色が折り重なっている。
シュッとしたスマートな鳥。
みみずか何か、細長い虫をついばんでいる。
ゆっくり静かに近づいても、逃げない。
5メートルくらいのところで飛び立った。
その飛び方も、優雅。
なんて綺麗な鳥だろう。
帰ってからネットで調べたら、イソヒヨドリというのだそう。
画像を見ていて思い出したのだけど、3月だったか、うちの2階の窓のところにとまっていた鳥だ。
帰り着いたら5時。
もうお風呂に入ってしまう。
今日はよく歩いたな。
風呂上がりに窓辺でビール。
青い海を眺めながら。
夜ごはんは、夏野菜とモズクの冷や奴(オクラ、トマト)、山ウドと鶏肉のきんぴら風炒め、ご飯、みそ汁(新玉ねぎ、油揚げ、山ウドの葉)。

●2020年5月19日(火)霧雨のち晴れ、風強し

6時半に起きた。
カーテンを開けると、外は真っ白。
霧が前の道まできていた。
海も街もまったく見えない。
ゆうべはずいぶん雨が降っていたからな。
朝ごはんのヨーグルトを食べているとき、霧はさらに深まり、猫森も隠れた。
今はもう窓の近くまできている。
霧の日はいつもと音が違って聞こえる。
車が通っても、郵便屋さんのバイクが通っても、霧に吸い込まれやわらかい音になる。
窓を開けると、小鳥のさえずりがアマゾンの密林みたい。
息を吸うと、ミストみたいな微細な水滴が入ってくる。
そしてずっと見ていると、目が眩しいような感じになる。
白いからかな。
と思ったら、じわじわと明るくなってきた。
霧の向こうに太陽があったんだ。
きのう、北海道のカト&アムから山ウドが届いた。
朝のうちに穫って、送ってくれたとのこと。
野生の山ウド。
今、台所で水に浸けているのだけど、そこに平沢の森があるみたいになっている。
あとできんぴらを作ろう。
そして、あちこち掃除機をかけたら、今日も『気ぬけごはん』の校正に向かおう。
山ウドのきんぴらが、とってもうまくいった。
カトキチのレシピは最高。
ほろ苦い春の味。
このレシピは、『気ぬけごはん』の単行本に載ります。
それにしても今日は風が強い。
昼間、ちょっと外に出たら木々は枝葉を翻し、私まで吹き飛ばされそうになった。
今日は散歩はなし。
夜ごはんは、マカロニグラタン(白菜入り)、山ウドのきんぴら。

●2020年5月16日(土)雨

6時半に起きた。
ラジオは合唱曲。
朝ごはんのあと、『気ぬけごはん』の続き。
しとしと雨。
霧も出ている。
雨が降ると、緑が匂い立つ。
宮下さんにメールをお送りしたら、京都は窓の外が見えないほどの雨だそう。
こちらはとても静かな雨。
ときどき窓を開けて、緑の匂いを吸い込みながらやった。
午前中だけでずいぶん進んだ。
3時には終わった。
と思ったら、新しい宿題がアノニマの村上さんから届いた。
これは明日ゆっくりやろう。
今はもう、何もかもが霧に包まれている。
校正をしながらパンを焼いた。
ちかごろは、バスルームで発酵させるのが気に入っている。
洗濯機の上にタオルを敷いて、その上にボウルを置く。
生地はビニール袋をかぶせ、ときどき霧を吹いてやると、時間はかかるけれどちゃんと膨らむ。
4時にパンが焼き上がった。
オーブンがせっかく温まっているので、夜ごはんのドリアも焼いてしまう。
ちょっと早いけれど4時半に夜ごはん。
ドリア(黄色いご飯、ミートソース、パン粉と粉チーズをふりかけバターをのせて焼いた)、人参と白菜とちくわのサラダ(辛子マヨネーズ)。
YouTubeで『ムーミン谷の仲間たち』をみつけたので、大きな画面に映し、窓辺のテーブルで夜ごはんを食べながら見た。
ずっと前に川原さんがDVDにしてくれたのより、もっと前のものらしい。
1話から順番に見る。
「姿の見えないお友達(ニンニという女の子の話)」が、とってもよかった。
明日も続きを見よう。

●2020年5月14日(木)晴れ

今日は、もうひとつの絨毯を洗った。
この間の絨毯は化学染料で染めたもので、27歳くらいのころに織った。
こっちは草木染めをしていたころのだから、25歳くらいに織った。
どちらもスイセイに会う前、国分寺の家に住んでいたころ。
そして吉祥寺の家ではいちども使わなかった。
その織物が今こうしてここにあり、冬の間はなくてはならないものになっている。
そして、織ったころとほとんど変わらずにここにある。
そのことが不思議。
でも、そんなことを言ったら、私が毎朝毎晩扉を開けて、中にある化粧水やクリームを取り出し、顔に塗り、またしまったりしてお世話になっているのは、幼稚園のころから実家に合ったライティングデスクだ。
これは祖父が作った。
上京したころからずっと使っているのだから、いったい何年になるんだろう。
もうひとつ、最近不思議だなあと思うこと。
それは、母のことを一日として思わない日がないことだ。
入院していたころや、子どものころの母を、生々しく思い出したりする。
目に見えるものと、見えないもの。
両方ともがとても近くにある。
午前中はずっとお裁縫。
何をしているかというと、この間、中野さんにいただいたハギレで座布団カバーを縫っている。
あと、ズボンのウエストがほつれていたのを繕った。
午後からは『気ぬけごはん』の単行本の校正。
集中して4時までやった。
今日は海が青いな。
ワインの炭酸割りでも飲もうかな。
夜ごはんは、くみ上げ湯葉(ねぎ醤油)、塩もみきゅうり、チャーハン(焼豚、卵、水菜)、スプリッツァー。
お風呂上がり、もう、体がくったり。
窓を開けると、深々とした緑にスイカズラみたいな甘い香りも混じっている。

●2020年5月13日(水)晴れ

5時半に起きた。
陽の出は見逃した。
今朝はミサ曲がずっとかかっていた。
うとうとして、7時のニュースを聞いて起きた。
朝ごはんのあと、バスタブにお湯を張って絨毯を洗った。
イタリアかどこかの洗濯女の気分で。
ウール用の洗剤を溶かし、足踏をしているうちに、お湯が泥水みたいに茶色くなって驚いた。
そうか、そんなに汚れていたのか。
ここに越してきて5月17日で丸4年、はじめて洗った。
さて、今日も『気ぬけごはん』の単行本の校正をやろう。
きのうからのんびりした気持ちで読み込んで、どうしてものところだけ赤を入れているのだけど、よくもまあこんなに書いたもんだと感心する。
レシピもたくさん。すっかり忘れている。
また作ってみたいものがいくつも出てきた。
まずは、「ヤンソンさんの誘惑」と「クリスマスの鍋焼きチキン」を作ってみたい。
今回は、東京にいた2013年の冬から、現在までの分を1冊にまとめる予定。
タイトルと発売日が決まったら、またお知らせします。
どうかみなさん、愉しみにしていてください。
牛乳とヨーグルトがなくなってしまったので、あとで、「コープさん」に買い物にいってこよう。
3時に行ってきた。
サツキの花ももうおしまい。ずいぶんしなだれているけれど、下生えの夏草は伸び盛り。
「コープさん」でたっぷり買った。
帰り道、山の緑はさらにむくむくと膨らんでいる。
この間、中野さんが言っていたのだけど、ほんとに山が近くに見える。
そんな山を見ながら坂を上るのは、気分がよかった。
汗をかいた。
夜ごはんは、小鰯のかば焼き、小松菜と水菜のセイロ蒸し、いんげんとスナップえんどうのおかか炒め、きゅうりの塩もみ、おにぎり(牛そぼろ、青じそ)。
夜ごはんを食べ、手もとが暗くなるまで窓辺でお裁縫。 
7時でもまだ明るい。
ずいぶん日が長くなったな。
今、遠くの方から夜景がついてきた。

●2020年5月11日(月)晴れ

ラジオをつけたら、ちょうど7時だった。
ニュースを聞いて、起きる。
中野さんはきのう、お昼ごはんを食べて帰られた。
今日からまた、私ひとりの生活がはじまる。
一緒にいる間、部屋を片づけた。
新しくなったのは、台所のカウンターのペンキを塗ったこと。
いらなくなった缶や紙箱を捨て、出ていたものをすべて画材入れにしまい、とてもすっきり。
中野さんんは絵を描く用に張り巡らされたベニア板も、白く塗った。
私はその下に白いマットを敷き、きのうからごはんを食べるのも、テレビを見るのもそこでするようになった。 
よけいなものは何も置かず、そこだけひろびろと白い。
なんとなく神棚みたい。
ちょうど『気ぬけごはん』の単行本用のゲラが届いた。
今日からここに、ひろみさんにいただいた黒檀の坐机を置いて、仕事をしよう。
その前に、次の号の「気ぬけごはん」を仕上げてお送りしなくては。
中野さんがいる間にやっておいたので、もうほとんど下書きができている。
海は霞がかかっているけれど、よく晴れて、穏やかなお天気。
ピチピチパスパスと小鳥たちがあちこちでさえずっている。
風もなく、緑はつやつや。
さ、はじめようかな。
と思ったら、今ピンポンが鳴って、『帰ってきた 日々ごはん7』の三校と、アルバムのレイアウト案が届いた。
わ。先にこっちをやってしまおう。
夜ごはんは、ピリ唐チャーハン(牛そぼろのおにぎりで。小松菜、焼豚、スイートチリソース、生玉ねぎ、香菜、レモン)、きゅうりとレタスのサラダ。

●2020年5月7日(木)快晴

きのうから、中野さんが車でいらしている。
また、絵本の原画(新しい絵が何枚かある)を持ってきてくださった。
今日はお昼前に買い物に行った。
新在家にある地元野菜の大きなスーパー(「めぐみの郷」が移動したところ)へ、久しぶりに行くことができた。
沖縄のきゅうりにいんげん、淡路島の新玉ねぎ、スナップエンドウ、レタス、トマト、レモン、小粒メイクイン、水菜、小松菜、人参、いちごを買った。
道ゆく人はみなマスクをしていたけれど、一時期よりもずっとたくさんの人たちが歩いていた。
そして、車も多かった。
ちょうどお昼どきだったからか、食堂もドアを開け放って営業していた。
六甲に戻ってきて、八幡さまの駐車場に車を停め、「六珈」さんでコーヒー豆を買った。
「MORIS」のベランダでは、今日子ちゃんとひろみさんがテーブルを出してランチ中だった。
大きく手を振り合う。
「いかりスーパー」と「オアシス」でもたっぷり買い物し、トイレットペーパーやティッシュも買えた。
六甲駅周辺は、少しだけのんびりしたムードが戻ってきたような気がした。
八幡さまの緑は、青空を背景に黄緑色に透けていた。
窓を開け放ち、五月の風を受けながら、緑がむくむく膨らんでいる山に向かって走るのはとても気分がよかった。
ほしかった物もすべて買えたし。
近所だけだけど、とってもいいドライブだったな。
帰ってから、遅いお昼ごはんにタイ風ピリ辛焼きそば(鶏肉、新玉ねぎ、きゅうり、トマト、レモン、香菜、赤唐辛子の酢漬け、ナンプラー、スウィートチリソース)を作って食べた。
海は青く、緑はもくもく。
ラジオではテレサ・テンがかかっていて、焼きそばを食べながら、「タイにいるみたいです。歌もタイ語に聞こえてきました」と中野さんが言った。
中野さんが遊びにきてくれたおかげで、きのうから私のゴールデン・ウィークがはじまった。
このところ二週間以上、『本の本(仮)』と『帰ってきた 日々ごはん7』のことを根を詰めてやっていたから。
今日は夕方から、アマゾン・プライムの『真珠のボタン』という映画を見ようということになっている。
それまでに「気ぬけごはん」を書きはじめようかな。
夜ごはんは、中野さん作。小松菜のアンチョビにんにくソース(きのうのパスタの残りのソース)炒め、ホタルイカのオリーブオイル炒め、ハワイのビール、ご飯、海苔の佃煮(ウニ味)、スナップエンドウのみそ汁(これだけ私作)。

●2020年5月5日(火)曇りのち晴れ

7時に起きた。
寝坊した。
窓を開けると、今朝もまたイノシシの糞が落ちている。
コロコロした小さいのはウリボウだろうな。
このところ4日連続。
毎晩、イノシシたちは山に帰る前にここで用をたす。
どうして山でしないんだろう。
ゴールデン・ウィークでお休みだというのに、管理人さんは毎朝やってきて、道路を掃除し、帰られる。
ご苦労さまです。
朝は曇っていたけれど、洗濯物を干している間にぐんぐん晴れてきた。
今朝は緑の匂いがしない。
葉っぱがつやつや光っている。
ピスピスピスと小鳥たちもよく啼いている。
飛行機雲が空の端から端へと、ぐんぐん伸びていっている。
今、先っぽが西の雲に隠れた。
さて、きのうひと通り推敲し終わった『本の本(仮)』を、今日は見直し。
「はじめに」も書きはじめよう。
午前中、村上さんから電話があり、しばしテレワーク。
そのあと宮下さんとも電話でお話した。
ふたりとも声に張りがあり、とっても元気そうだった。
電話ってありがたいな。
ゆっくりと見直しをし、「はじめに」も書き終えた。
すべての原稿をまとめ、村上さんにお送りする。
まだ明るいけれど、もう5時半だ。
すっきりした気持ちで、あちこち掃除機をかけ、雑巾がけをした。
今日はちょっと動くと、しっとりと汗をかく。
それが気持ちいい。
今年はじめてのアイスコーヒーを飲んだ。
ああ、おいしい。
中野さんは今日、お姉さんの家の庭でみんなしてバーベキューをするんだそう。
今ごろきっとやっているんだろうな。
羨ましいなあ。
気持ちのいい夕方でよかった。
夜ごはんは、塩サバのムニエル(焼きトマト、バルサミコ酢、ディル)、塩もみサラダ(キャベツ、人参、ピーマン、マヨネーズ)、トースト。
風呂上がり、真上の空に朧月。

●2020年5月4日(月)ぼんやりした晴れ

ゆうべは雨が降っていたのかな。
地面が濡れている。
雨上がりの朝は、緑と木の匂いが強い。
ああ、いい匂い。
何度も窓辺に立ち、吸い込みながらやっているのは『本の本(仮)』のパソコン上での推敲。
このところ、海が霞に覆われている日が続いていたけれど、今日は青い。
緑もますます濃くなっている。
夕方になっても、お風呂から上がっても、まだ匂い立っていた。
こういうのはきっと、今の時季だけ。
夜ごはんは、人参とキャベツと鶏胸肉のスープ(牛乳、ディル)、炊き込みご飯(干し椎茸、油揚げ、ごぼう、人参、鶏肉。ゆうべの残り)。

●2020年5月1日(金)快晴

今朝の陽の出は見られなかった。
曇っているようだった。
ラジオの天気予報によると、今日は八十八夜。
立春から数えて八十八日目なのだそう。
♪夏も近づく八十八夜 野にも山にも 若葉が茂る。
朝から『帰ってきた 日々ごはん7』の「あとがき」の続き。
きのう書上げたつもりでお送りしたのだけれど、村上さんの電話の声を聞いて(どこがよくないとか、感想をおっしゃったわけではない)、まだまだなことが分かったので。
ぐっと集中して書く。
できたみたい。
2時に村上さんにお送りし、マスクをして「コープさん」まで散歩。
牛乳がなくなってしまったので。
うちの方は山が近いからか、それほどには暑くなかったのだけれど、半袖のTシャツで犬の散歩をしている人がいた。
もう、初夏の陽気。
この間、坂を下りたときに咲いていた花々はみな、もう盛りを過ぎていた。
サツキは今が花盛り。濃いピンク、薄いピンク、白も満開。
白いのをひとつ、母にもらって帰ってきた。
ゆらゆらと坂を上って帰り着く。
日傘がないと、もう陽焼けをする季節になったのだな。
海の見える公園で、「コープさん」で買ったりんごジュースを飲んでいるとき、『ロシア日記』を思い出した。
ウズベキスタンの砂漠の帰りだったかな、百合子さんたちはみんなバスを下り、橋の上で風に吹かれながらりんごの味のする水を飲んだ。
その場面だけ切り取ったように、写真みたいに、私の頭に残っている。
永遠に、時間が止まったまま。
夜ごはんは、お弁当(卵焼き、プレスハム、ほうれん草炒め)、豆腐サラダ(塩もみキャベツ、みょうが、青じそ、しらす、辛子酢味噌)、チゲミルクスープ(きのうのチゲスープの残りに牛乳をちょっと加えた)。
まだ明るいうちにお風呂に入った。
上がってパジャマに着替えていても、まだ明るい。
今日は、一日じゅう海に靄がかかっていたな。

●2020年4月28日(火)晴れ

6時に起き、カーテンを開けた。
もう太陽はとっくに昇っている。
今朝も「古楽の楽しみ」。
朝いちばんにやったのは、スピーカーのこと。
おとついあたりから、シバッちが作ったスピーカーが鳴らなくなった。
それで、ネジをはずして分解してみたのだけど、コードがちゃんとつながっていて悪いところはない。
左側のスピーカーのコードをはずし、デッキの右側につなげたら、音が鳴らない。
それで、デッキ自体がおかしいことが分かった。
シバッちのスピーカーを左側につないでみると、とってもいい音。
やった!
スピーカーはひとつでも十分だ。
朝ごはんを食べ、洗濯機を回しながら2階の窓辺でストレッチ。
今朝の緑は眩しいな。
小鳥たちも盛んにさえずっている。
朝みつけたのだけど、YouTubeで”くちぶえ一座のうた”と検索すると、「オペレーション・テーブル」での様子が出てくる。
”くちぶえ一座のうた”よろしかったら、見てみてください。
このごろは、ひとりで家にこもっているのにも慣れてきた。
みんながそうしていると思うと、なんとなく心が落ち着く。
日々のくつろぎタイムは、お昼ごはんを食べながら見る朝ドラ『エール』と、お風呂上がりに見るアマゾンプライムの映画。
外国のアニメーションがとてもいい。
夜ごはんは、春雨と豚肉とトマトのピリ辛炒め、大豆と昆布の煮たの、自家製しば漬け、みそ汁(浅蜊)、ご飯。

●2020年4月27日(月)晴れのち曇り、一時雨

近ごろは陽の出を見て、カーテンを開け、朝の光のなかでラジオを聞きながらぼんやりする。
6時から「古楽の楽しみ」を聞いて、空を眺めたりして、そのうち眠くなってきたら二度寝する。
カンタータがかかっていた。
今週はまたあの方、関根敏子さんの担当だ。
そのあと7時のラジオを聞き、えいっと起きる。
きのうは、ひさしぶりに街に下りた。
六甲道でたっぷり買い物し、お店は休んでいるけれど「MORIS」にも寄った。
「MORIS」では、今日子ちゃんがこれまでずっとやりたかった通販のことを、少しずつはじめているんだそう。
ふたりとも元気そうで嬉しかった。
3人ともマスクをしたまま、自然に距離をとって話したり、笑ったりしているのもなんか可笑しかった。
2時半、さーーっと音がして、雨が降ってきた。
東の空だけ水色で、晴れている。
さっき、タオルケットを干しておいたのを取り込んでおいてよかった。
窓を開けると、鶏小屋みたいな匂いがする。
4時半まで『帰ってきた 日々ごはん7』の校正をやり(3月まで終わった)、おまけレシピの推敲も3月分までやり、今日の仕事は終わりとする。
雨上がり、窓を開けたらハーブのような青くみずみずしい香り。
いい匂いを吸い込みながら、柵に足をかけストレッチ。
空は晴れ上がっている。
ツバメが2羽空を飛び交っているな、と思って見ていたら、3羽、4羽……5羽だ!
それぞれに距離をとり、身を翻しては大きく大きく。
あんまり気持ちがいいから、今日はビールを呑んじゃおう。
夜ごはんは、ブロッコリーと長いもとチーズの天火焼き、半熟ゆで卵、ビール。
窓辺のテーブルで、「オペレーション・テーブル」の記録映像を見ながら食べた。
みんな、冬の格好をしている。
あれは1月の末だったから、まだ3ヶ月もたっていないというのに、もうずいぶん前のことみたいに懐かしい。
みんなに会いたいな。

●2020年4月23日(水)ぼんやりした晴れ

起きたらちょうど陽の出だった。
5時半。
ベッドの端に立って見た。
冬の間は対岸の大阪の山から昇っていたのだけど、このごろはずっと六甲山から昇るようになった。
まだ、ぎりぎり見える。
風はひんやりしているけれど、穏やかなお天気。
猫森の葉は、風が吹くとあちこちで小鳥が羽ばたいているみたいに見える。
朝いちばんに、中野さんから絵本の原画の写真が送られてきた。
これまでのものと、見たことのない新しい絵が、絵本のページ順にすべて届いた。
大きい画面に並べ、テキストの最新のものを声に出して読みながら、1枚1枚映し出していった。
絵本をめくるように。
いいなあ、すごーくいいなあ。
そのあと電話をいただいた。
私は興奮していたので、受話器を持ったまま部屋を歩きまわって、ハアハアしながらしゃべりたいだけしゃべり、自分が騒がしかった。
中野さんは「僕は今日、静かに過ごします」と、とても冷静。
今日はアノニマの村上さんからも電話があった。
『本の本(仮)』のことで、1時間近い打ち合わせ。
お昼ごはんと朝ドラ休憩を挟んで、午後にもまたやった。
村上さんも家にいて、なんだかテレワークみたいだった。
ときどき、遠くで子どもたちの声がした。
お昼ごはんにはお弁当を作っておいたのだそう。
なんか、そういうの、いいな。
やっていることはいつもと変わらないのだけど、そういえば中野さんとのやりとりもテレワークみたい。
夜ごはんはお昼をしっかり食べた(私もお弁当だった)ので、ミネストローネスープ(人参、大根、青大豆とそのゆで汁、ソーセージ)と、茄子をタークのフライパンで焼き、醤油をジュッと落としたものだけ。

●2020年4月21日(火)曇り

肌寒い。
朝からずっと作文を書いていた。
これはきのういただいた宿題。
お風呂の中でも、ベッドの中でも考えていたので、するすると書きたいことが出てくる。
今は3時。
できたかも。
締め切りはまだ先なので、寝かせておこう。
今日は風が冷たい。
猫森の新緑はきのうよりもさらに伸び、枝がほとんど見えなくなっている。
ゆわゆわと緑の重なりを揺らし、ところどころで葉が裏返っている。
気持ちよさそう。
私も窓辺の柵に足をかけ、太ももの筋を伸ばした。
一通りストレッチ。
きのう「コープさん」でおからのパックを買ってきたので、今日はおからハンバーグを作ろうと思う。
合いびき肉が冷凍してあるので。
玉ねぎをバターで炒め、おからに牛乳を加えたものと、卵、ナツメグ、塩、こしょう。
つけ合わせは粉ふきいもと人参グラッセ、ほうれん草炒め。
お昼におにぎり(黒ごま塩)をふたつ食べたので、まだお腹がいっぱいだから、ご飯はなし。
さて、2階で『本の本(仮)』の続きをやろう。
夜ごはんは、おからハンバーグ(粉ふきいも、人参グラッセ、ほうれん草炒め)、浸し青大豆、おから(ゆうべの残り)。
お風呂から出たらまだ明るく、空が蒼かった。
もう7時なのに。
ずいぶん日が長くなったな。

●2020年4月20日(月)雨、晴れ、曇り

朝起きたらシャワーのように雨が降っていた。
緑が気持ちよさそうにしている。
対岸の山は青く、空が明るい。
向こうは晴れているんだな。
朝ごはんを食べ終わり、パソコンに向かっていたら、そのうち東の空だけパーッと晴れてきた。
雨で洗われた三宮の街がくっきり見える。
もう長いこと行っていないけど、どんな様子だろう。
きのうの夕方、中野さんから絵本の原画(写真)が届いた。
そのたびに大きい画面に映して眺める。
今朝もどんどん送られてくる。
気が気ではないのだけど、私も『本の本(仮)』の原稿の読み込みを窓辺の机でやっている。
さて、今日は買い物に行こうか、どうしようかな。
4時過ぎに散歩がてらマスクをして出かけた。
空気は清々しく、いろんな花が咲いていた。
サツキ、ツツジ、ドウダンツツジ(パフスリーブみたいな可愛らしい白い花)、ハナミズキ、八重桜、小手毬、むらさきはなな(うちのおばあちゃんが名づけた)、カラスノエンドウ、サクラソウ、カタバミ(紫色の)。
何日ぶりの買い物だったんだろう。
行ってきてよかったな。
けっこう汗ばんだ。
「コープさん」はほどよく空いていて、とてもありがたい。
夜ごはんは、おから(舞茸とニラを刻んでごま油で炒め、あらめと切り干し大根の炒り煮を加えた。黒七味たっぷり)、ひたし青大豆、鶏肉とうずらの卵の串カツ(コープさんの)、おにぎり(黒ごま塩)、みそ汁(青大豆とゆで汁、豆腐、ニラ)。

●2020年4月18日(土)小雨のち晴れ

6時半に起きた。
朝から『それから それから』の帯文。
できたかもしれない。
ゆうべはずっと雨が降っていた。
何度か目覚め、まだ降ってる、降ってると思いながら深く眠った。
夜中の雨はいい。
包まれる感じ。
朝方浮かんできた長めのフレーズを、忘れないようにメモしておいたので、そのまま打ち込んでいった。
それにしても、今日は不思議な色のお天気だ。
小雨がぱらついて薄暗いのだけど、明るさも混じっていて、クリーム色がかったピンクの空。
空というか空気。
緑も少し入っているような。
かと思うと、急に陽が差して半分だけ黄色くなったり。
どこかで虹が出ているかもしれないような。
午後からは、『本の本(仮)』のゲラをベッドの上で読みはじめた。
まだ文字を組んだだけの原稿なので、校正はしなくていいのだけど、ひさしぶりなのでまっさらな目で読める。
気づいたところに少しだけ赤を入れている。
夜ごはんは、あらめと切り干し大根の薄味煮(油揚げ、人参、菜の花)、目玉焼き、菜の花のセイロ蒸し、味噌汁(豆腐)、おにぎり(黒すりごま、青のり)。

●2020年4月17日(金)ぼんやりした晴れ

4時にトイレで起きた。
カーテンを開けると、まだ夜景が煌めいていて、空の低いところにオレンジがかった三日月がくっきりと出ていた。
まわりがぼうっと霞んでいる。
息をハーッと吹きかけた窓の曇りのところに、指で描いたみたいな月だ。
ゆうべは寝る前ぎりぎりまで、『それから それから』の帯文を書いていたので、頭が昂っているみたい。
言葉が浮かんできたので、暗いなかメモをする。
ラジオをつけたり消したりしながら、明るくなるまで待って、起きた。
5時半くらいに陽の出。
今朝のはオレンジの味のグミみたいなのが、ぷっかんと浮かんでいた。
朝からまた帯文の続き。
ああでもないこうでもないとずっとやっていた。
途中でカレーを煮込みながら。
スパイスたっぷりの、本格的なチキンカレー。
しょうがもたっぷり入った、疫病蔓延なんかぶっ飛ばせカレー。
トマト缶がなかったので、トマトペースト2袋でやってみた。
あまり煮込まずにサラサラにしようと思う。
今、大根を加えようと思ってセイロで蒸しているところ。
夜ごはんはチキンと大根のカレー、サラダ(キャベツ、レタス、トマト、ピーマン、玉ねぎドレッシング+ごま油、醤油)。
カレーはめちゃくちゃスパーシーでおいしかった。
ルウを使っていないから、たっぷりかけても太らないし。

●2020年4月16日(木)晴れ

とても暖かい。
見ている間にも、もわもわと伸びていく新緑。
海も穏やか、春霞。
今、2階だけ掃除機をかけ、洗濯ものを干してきたところ。
ここ何日か窓の近くにいた小さな蜂は、どこかに行ってしまったみたい。
日曜日に中野さんが車でいらっしゃり、きのうまで一緒に過ごした。
新しい絵本(筒井くんたちとやっている)の原画を眺めながら、私のテキストが動いて、新たなダミー本を中野さんが作ったり。
マスクをして「コープさん」に車で買い出しにいったり。
いちど、屋上に上ってお弁当を食べたこともあった。
裏山は緑が増え、山桜が挿し色のようにほんのり。
緑といっても黄緑も、黄色も、蛍光色の黄緑も、オレンジがかった緑もある。
『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』を掲げ、前に立つのもやってみた。
やっぱりふたりの姿は、それぞれの鏡にぼんやり映っていた。
そうだ。
この間の日記で、「鏡泊」と書いてしまったけれど、「鏡箔」の間違いでした。

さて、今日からまたひとりの生活がはじまる。
熊谷さんとやっている中野さんとの新作絵本も、新しいデザインが上がってきた。
これは『それから それから』という題名の絵本です。
中野さんから大きなダンボールが届き、壁じゅうに原画を立てかけていた日々のことは、去年の11月3日と4日の日記に書いた。
このままぶじに進んでいけば、リトルモアから6月に発売されるそうです。
どうかみなさん、愉しみにしていてください。
この絵本のもとができたのは、日記を遡ってみたら、2018年の7月5日と6日のことだった。
豪雨が続いて窓際の天井が雨漏りし、電車が止まってしまった日。
うちの方でも避難勧告が出されたけれど、あちこちで山崩れや洪水の被害があった。
アノニマの村上さんと作っている『本の本(仮)』も、目に見える形になってきた。
『帰ってきた 日々ごはん7』も順調に進んでいる。
料理本のことも、私のテキストと斎藤君の写真を照らし合わせながら、赤澤さんが粛々と進めてくださっている。
私は今までみたいに家にこもり、自分にもぐりながらひとつひとつ宿題をやっていこう。
パソコンの大きな画面を買っておいてよかった。
いままでと変わらないけれど、ごはんをちゃんと食べ、よく眠って元気をなくさないようにしよう。
買い物に出るときにはヒロミさんのマスクをしよう。
このマスクをしていると、やさしく守られているような気持ちになる。
夜ごはんは、焼きそば(豚バラ薄切り肉、キャベツ、生卵)、キャベツサラダの焼き油揚げのっけ(みょうが、青じそ、玉ねぎドレッシング、醤油)。
キャべツのサラダは「おまけレシピ」の試作。
焼きそばは、この間テレビで見た通りに麺を茶色く焼きつけるやり方で作ってみた。
キャベツはいつもよりたっぷり。
これはご飯のおかずになりそうな、クセになる味。
忘れたくないし、これから何度も作りたいので、「気ぬけごはん」に書こう。

●2020年4月10日(金)ぼんやりした晴れ

ちょっと肌寒い。
花冷えだ。
9時から水道工事がはじまるので、今朝は5時40分に起きた。
雲間から、太陽が昇っている。
陽の出の位置がずいぶん東に移ったので、ベッドの上に立ち上がって窓の際からのぞき見た。
もうじき建物の影に隠れてしまう。
早めに洗濯し、大きなボールに水をためておいた。
今日もまた山小屋だ。
『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』の見本が届いた。
ミルクティーを飲みながら、ゆっくりとページをめくった。
つよしさんの絵(銅版画に彩色されている)は、静けさが目に見えるよう。
夜の森に咲く花が立てる、かすかなもの音。
木漏れ陽が照り返すせせらぎの水音。
葉ずれの音。
しんしんと降り積もる雪の日には、音が吸い込まれる。
そして最後、海に沈むまん丸な太陽の絵が、きのうの朝私が見た陽の出にそっくりだった。
むきたての丸い果物から、光の汁がしたたっている。
というより太陽の方こそが、たまたま、つよしさんの絵に似てしまったような。
きのうの朝は、そんなふうに見えた。
小野さんに見守っていただきながら、つよしさんとふくらませてきた世界が、三年近くかかってようやく形になりました。
「あかね書房」の榎さんのおかげです。
カバーに描かれているピカルとヒカラは、鏡の部分に銀色のインクが使われている。
「鏡泊」というのだそう。
窓辺に立って見ると、私の顔がぼんやり映る。
すごい!ほんとの鏡みたい。
色校正のときには、絵と文を確認するのに一心で試してみなかった。
母はこの絵本が出ることをとても愉しみにしていたので、祭壇に供えた。
「お母さん、お待たせ。できたよ」
『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』は、4月18日ごろから全国の店頭に並ぶ予定ですが、コロナウィルスの影響で本屋さんが閉店しているところも多いようです。
ご興味のある方は、ぜひこちらを覗いてみてください。

https://www.akaneshobo.co.jp/search/info.php?isbn=9784251051011

そしてもし、手に取っていただけることがあれば、カバーのピカルとヒカラの鏡に向かって、誰かとふたり並んで立ってみてください。
さて、どんなふうに映るのでしょう。
私もまだ試してないので、分からないのだけれど。
美容院を予約した。
今日はひさしぶりに、六甲道まで歩いてみようと思う。
図書館がやっていなくて、淋しいな。
まだ明るめの夕方、桜が風に舞う坂道をゆっくり上って帰ってきた。
帰ってきてリュックを下ろしたら、ずっしり重くてびっくりした。
歩いているときにはそれほど重さを感じない。
鍛えられたのかも。
夜ごはんは、レバーの醤油煮、釜揚げしらすおろし、小松菜のセイロ蒸し(ごま油、塩)、アサリの味噌汁(この間の残りに、細かく刻んだ春菊を加えた)、おにぎり(ゆかり)。食後にりんごのバターケーキ。

●2020年4月9日(木)晴れ

トイレに起きたら、明るくなりはじめていたので起きてしまう。
5時45分。
太陽はちょうど昇りはじめたところ。
今朝のは、包丁で丸く皮をむいたばかりのオレンジのまわりに、汁がしたたっているみたいな、みずみずしい太陽だった。
そういえばゆうべの満月もすごかったな。
昇りはじめはもちろん、空の上でも大きいままで、桃色だった。
川原さんが「スーパームーンだよ」とメールをくれた。
「なんか、色っぽい月」とも書いてあった。
ほんと。うまいこと言うな。
お風呂上がりに窓を開け、私は長いことぽけーっと眺めていた。
今日もとてもいいお天気。
猫森の新緑が、日に日に伸びている。
9時から水道工事がはじまることを、管理人さんが知らせにきてくださった。
今日の施行は明日のための準備だそうだけど、壁に穴を開けるらしく、「ものすごう大きな音がします。電話もできないくらいに大きな音ですのん。えらいすんません」とのこと。
10時くらいにまたピンポンが鳴って、水道を流すのもいけないのだそう。
洗濯機を急いで止めた。
覚悟はしていたけれど、それほどには大きくない。
電話の声もちゃんと聞こえる。
水はボウルにためておいて、ケチケチ使うようにした。
そして私は食パンも焼いた。
不便だけれど、山小屋みたいでちょっと楽しい。
それにしても今日は、珍しく電話が多かったな。
時間の流れも、なんだかおかしかった。
早く作りはじめてしまったので、夜ごはんはまだうんと明るいうちに、5時に食べた。
夜ごはんは、鶏肉の辛いトマトソース煮(いつぞやの残りに、バターで炒めたしめじを加えた)、南瓜とじゃがいものサラダ、焼きたて食パン。

●2020年4月7日(火)晴れ

6時半に起きた。
今朝の「古楽のたのしみ」は、バッハのマルコ受難曲。
マルコさんのはなんか、ゆるやかなような気がする。
そういえば去年の今ごろ、母が入院していたころに、「今は受難節だから、私もエスさまと同じように、苦しみを受け入れることになっているんだと思う」と言っていた。
春も盛りのイースター礼拝の日に、母のかわりにみっちゃんと教会に行き、カラフルなゆで卵をもらって帰ってきたっけ。
コロナのことで東京がたいへんそうなので、朝、川原さんに電話をしてみた。
私も川原さんも家にこもって仕事をしていて、ほとんど出かけずにいるのは普段と変わらないのだけど。
川原さんはとても元気で、声に張りが合った。
お互いにしゃべりたいだけしゃべる。
電話ってすごいな。
遠く離れているのに、すぐそばにいるみたい。
いつものように掃除機をかけ、洗濯物を干し終わったころ、荷物が届いた。
パソコン用の大きなモニター(21インチ)。
これは長い間ずっと欲しかったもの。
私のパソコンはノートタイプで、持ち運びには便利なのだけど、気づくと首が前にせり出し、ものすごく変な姿勢で画面を見ている。
だから首や肩がいつも凝っている。
大きな画面に映すことができたら、文字も拡大されるから、老眼鏡をかけなくてもできるもの。
つなぎ方をインターネットで調べ、試しているうちに、できた!
東京にいたころには、パソコンのことは苦手だからとスイセイに頼りっぱなしだったけど、落ち着いてやれば案外自分でもできるんだな。
時間はとってもかかるけど。
これで、プライム会員の特典映画が、大きな画面で見られるようになる。
(会員に登録するのもひと苦労だったのだけど、いろいろ調べて試しているうちにできた)
午前中は映画。
『西の魔女が死んだ』を見ていて、どうしてもサンドイッチが食べたくなった。
おばあさんがパンに挟んでいたのは、黄色っぽいポテトサラダのようなのと、ハム、レタス。
うちには今、クリームチーズが入った南瓜とじゃがいものサラダがある。
作りたい、食べたい!
牛乳も切らしていたので、買い物に下りた。
「MORIS」で今日子ちゃんのおいしいケーキとお茶をごちそうになり、ひろみさんには手作りのマスクもいただいた。
手持ちのマスクがあと2枚しかなかったので、とてもありがたい。
布の肌触りもいいし、細いストライプの素敵な柄だ。
帰りに「いかりスーパー」で大粒のアサリを買った。
あと、ももハムとレタス。
パン屋さんは定休日だったから、自分で焼くことにしよう。
仕事にまつわるコロナの影響というのはほとんどないのだけど、外に出たくなってしまう。
そして、誰かとおしゃべりしたくなる。
物を買いたくなる。
コロナのもうひとつの影響は、引っ越し当時からちっともできなくて、いつかやろうと思っていた用事が何んでもなくできていること。
自分が載っている雑誌の記事をファイルにまとめたり(引っ越しのときに切り抜きだけ持ってきた)、机まわりをすっきりと片づけたり、ズボンの穴を繕ったり。
夜ごはんは、ハムエッグ、ブロッコリーのおひたし(かつおぶし)、アサリの味噌汁、おにぎり(ゆかり)。
アサリがものすごくおいしくて、驚いた。 
身のひだひだが二重、三重になっているみたい。殻の縁ぎりぎりまで詰まっている。
今が食べどきだ。

●2020年4月4日(土)晴れ

6時に起きた。
太陽は昇ったばかり。
今朝は、カーテンをいっぱいに開けてみることにした。
ラジオではバッハのヨハネ受難曲がずっと流れている。
雲が流れていく。
ゆっくり、ゆっくりと流れ、青空が広がってきた。
大画面の映画を見ているよう。
空は、でっかいな。
ラジオはコロナのニュースになった。
今朝の太陽は、日食みたいに白く光っている。
と思ったら、また雲に隠れた。
『帰ってきた日々ごはん7』の校正は、きのうで一通り終わった。
今日は、もういちど最初から見直そう。
いつもみたいに、雑巾がけをして部屋を清めてから。
3時くらいに休憩。
あと1ヶ月で終わるので、続きは明日やることにする。
「気ぬけごはん」の校正もした。 
台所でトマトソースを作っていたら、青い海をボートがスーッとすべっていくのが見えた。
あんまり気持ちがいいので、ビールを呑むことにした。
窓辺に立つと、お腹がオレンジの小鳥がスギの木に遊びにきている。
ヤマガラの雄だ!
東の空には白い月。
夜ごはんは、チキンの辛いトマト煮(ゆでた菜の花、自家製マヨネーズ)&ライス。

●2020年4月2日(木)晴れたり曇ったり

6時に起き、ラジオを聞きながら目を覚ます。
ベッドの中でストレッチ体操。
今日は、晴れたり曇ったり。
とても不思議なお天気。
部屋の中も、明るくなったり暗くなったりせわしない。
空を見ると雲が厚いところと薄いところがあり、流れている。
薄い方の雲が太陽にかぶさると、隙間からピカーッと顔を出し、明るくなるのだ。
シーツを洗濯して窓辺に干した。
いちど、部屋がとても不思議な色になり、2階に上がった。
一面乳白色。
空の色と部屋の中の色(シーツも含む)がひとつになっている。
さて、『帰ってきた 日々ごはん7』の校正の続きをやろう。
そして今日は坂を下りよう。
牛乳がなくなってしまったので。
ゆうべでレシートの整理も終わったので、スイセイに送ろう。
このごろの私の毎日は、校正、掃除、ストレッチ体操、お裁縫でできている。
きのうは、ずっと前にリーダーに縫ってもらったスカートをほどいて、エプロンにした。
藤色の地にひな菊の模様の、可愛らしいのができた。
今朝から腰に巻き、台所の洗い物や掃除なんかしている。
空を突っ切る黒っぽい小鳥が2羽。
あ、ツバメだ。
六甲にもツバメが帰ってきた!
帰ってきて、続きの校正を少しやる。
夜ごはんは、大根の黒酢醤油煮、ホタルイカと菜の花の辛子酢味噌、味噌汁(豆腐、ねぎ、刻んだだし昆布)、おにぎり(ゆかり)。

●2020年3月31日(火)曇りのち晴れ

6時半に起きた。
今週の「古楽の楽しみ」の案内はまた、声が揺れるあの方だ。
関根敏子さん。
カーテンを開け、目をつぶって聞いていた。
そのあと7時のニュースと天気予報を聞きながら、ベッドの中でストレッチ体操。
えいっと起きた。
朝、映画のコメントをお送りしたら、リトルモアの福桜さんからすぐにお返事が届いた。
とても喜んでくださったみたい。
ああ、よかった。
ほっとした。
赤澤さんにも、心機一転した料理本のテキスト(はじまりと最後を少し直した)をお送りした。
天気予報は曇りの予想だったけど、青空が見えている。
穏やかな春の風。
洗濯物を干し、あちこち掃除機をかけた。
さて、今日も心を下に置いて、『帰ってきた 日々ごはん7』の校正をやろう。
とちゅうでりんごのバターケーキを焼いた。
夜ごはんは、カレーうどん(鶏肉、大根、ねぎ)、ミニトマトのだし浸し。
桜は今夜も、階段の上の薄やみでひっそりと七分咲き。

●2020年3月30日(月)晴れのち曇り

7時に起きた。
今朝はちょっと肌寒い。
郵便局に急ぎの用事をしに、お昼前に出かけた。
おとついの大嵐で散ってしまったんじゃないかと心配していたのだけど、桜はまだ蕾をつけたまま、ちゃんと咲いていた。
今年はなぜか、坂の上の方が開くのが早い。
いつも、いちばん遅くに咲くおじいちゃんの木(と呼んでいる)が、もう七分咲きだ。
神社の桜はまだ4分咲きくらいだった。
ゆっくりゆっくり、深呼吸しながら歩いた。
歩いている人は誰もいない。
せっかく坂を下りたので、パン屋さんへ(なかなか混んでいた)。
「コープさん」でいちごと強力粉を買って帰ってきた。
とちゅうの公園でひと休み。
水飲み場でいちごをひとつ、洗って食べた。
そのおいしいこと。
木いちごみたいに濃い甘み。
帰り道、風で折れた桜が側溝に落ちているのを2枝拾った。
まだ蕾が開きかけ。
首がしなだれかかっているけれど、元気になるかな。
帰り着き、すぐに水切りをして花瓶にいけた。
さて、『帰ってきた 日々ごはん7』の校正の続きをやろう。
夕方、桜の花が開いてきている。
やった!
夜ごはんは、マッシュポテトのグラタン(玉ねぎ、合いびき肉、ブロッコリー)、ミニトマトのだしびたし。
夜、桜は半分の蕾が開いた。
階段の上の薄闇で、ひっそりと咲いている。 

●2020年3月29日(日)快晴

ゆうべの風は凄まじかったな。
窓を揺らす暴れん坊の風に、大きく包まれているような長い夜だった。
ちっとも怖くなかったのだけど、うつらうつらしながらずっと何かについて考えていて、柱時計がひとつ鳴り、ふたつ鳴り、よっつ鳴ったころにようやく眠れた。
何を考えていたかは定かではないのだけど、多分、おとつい見た映画を反芻していたんだと思う。
おかげで起きたのが10時だった!
カーテンを開けたら、ものすごく眩しい。
パジャマのお尻に当たる光が暑い。
ああ、すっかり寝坊した。
それにしてもピーカンの空。
大風で清められたような空。
掛け布団を干そうとしたら、強風に煽られてひっくり返った。
今日もまた掃除機をかけ(このごろ毎朝かけている)、運動不足解消のために、腰を上げてタッタッタと雑巾がけ。
部屋がきれいになったところで、『帰ってきた 日々ごはん7』の1回目の校正をはじめる。
2時から『きらクラ!』(ラジオ)の再放送があるのも愉しみ。
夜ごはんは、太刀魚の塩焼き(大根おろし)、ごぼうのきんぴら(黒七味)、チンゲンサイのおひたし(ごま油、かつおぶし)、納豆、大根と青じそのみそ汁、ご飯。

●2020年3月27日(金)雨

ゆうべから降り続いていた雨は、朝には止んでいた。
朝ごはんを食べ終わってから見ると、地面が濡れている。
水たまりに小さな波紋ができているので、また降り出したことが分かる。
静かな静かな雨。
そのうち窓が白くなってきた。
霧だ。
水玉のワンピースの刺繍は、きのうで終わってしまった。
さて、何をしよう。
ずっと前に、リーダーが作ってくれたスカートをほどいて、エプロンに仕立て直そうと思う。
けれど私がやらなければならないことは、本当は、決まっている。
コメントをお願いされている、『僕は猟師になった』のDVDを見なければ。 
でもおとつい、冒頭を見たただけで、その先が見られなくなってしまった。
ワナにかかったイノシシの怯えた目を見たら、もうだめだ。
見るのが辛いから、もうコメントの仕事はお断りしようかとここ何日か迷っていたのだけど、3時ごろ、意を決して見る。
姿勢を正して、まっすぐに見ているうちに、どんどん引き込まれていった。
最後は、えーん えーんと声を出して泣いた。
体ごと5歳のなみちゃんに戻ってしまったような感じだった。
しばらく動けなかった。
これは、とてつもない映画だと思う。
どうしよう。
とてもじゃないけど、言葉になどできない。
やっぱりお断りした方がいいんだろうか。
夜ごはんは、チャーハン(いつぞやの混ぜご飯で)、餃子スープ(チンゲンサイ)。
映画を見終わったときには、しばらく肉を食べられなくなるかもしれない……となっていたのだけど、やっぱり食べよう!と思い、解凍しておいた豚肉をチャーハンに加えた。
夜、言葉が出てきた。
すぐにパソコンに書き出した。
言葉にできないことを言葉にするのが、私の仕事だもの。

●2020年3月25日(水)晴れ

6時10分に目が醒めた。
カーテンを開けると、もう陽が昇ったあとだった。
冬に比べたら1時間ほど早くなった。
隣の建物にはまだ隠れてないけれど、ずいぶん移動したな。
陽が長くなるというのは、太陽の軌跡の距離が長くなるっていうことなんだろうか。
きのう公園にいた小鳥のことを、インターネットで調べてみたら、ジョウビタキの雌だというのが分かった。
雄はお腹がオレンジで、尾羽が長い。
なので、帰り道の桜の木にいたのは、ヤマガラだということも分かった。
「チー チー」と、途切れ途切れに、透き通った声で啼く。
今朝はちょっと肌寒い。
それでも朝からなんとなしに衣替え。
衣装箱の整理などする。
厚手のセーターも手洗いした。
そして、刺繍をちくちく。
この間から、買ったばかりの紺色のワンピースの、黒い大小の水玉模様に沿って、青系統の糸で刺している。
相変わらずチェーンステッチで。
窓辺に腰掛け、ときどき海を見ながら。
小鳥の声がすると窓を開ける。
「ツクピー ツクピー」
シジュウカラだ。
お昼前に中野さんから絵が送られてきた。
いろんな花や鳥たちがいる。
朱実ちゃんちで見たムスカリやサボテンもある。
春の光が、女の人の頭の上に降ってくる。
中野さんの家では、もうツバメが帰ってきたのだそう。
そうか、早いなあ。
でも、私は驚かない。
おとついくらいに読んでいた『家庭ごよみ』に、ツバメのことが書いてあったから。

ーツバメの渡来ー
まだ寒い春ですが、それでも関西以西の暖かい地方では、
ツバメがぼつぼつ姿を見せはじめています。
ツバメが姿を現すときは、平均気温が八〜九度になったころです。
桜が咲くのは平均気温が十度くらいになるといわれているので、
ツバメが姿をあらわすと間もなく、桜の花が咲き出すということになりましょう。

4時ごろ、山の入り口まで散歩した。
森に近づくにつれ、小鳥たちのさえずりが大きくなった。
今年も満開になった紫色の花を、1枝もらって帰る。
この花は、ええと…… 紫ニチニチソウだったかな。
思い出した。
ツルニチニチソウだ。
夜ごはんは、納豆&まぐろの中落ちスパゲティ、チンゲンサイのにんにく炒め。
今日は早めにお風呂に入って、コメントの仕事をいただいている映画のDVDを見よう。

●2020年3月24日(火)晴れ

今日もとってもいいお天気。
小鳥たちがチュルチュルさえずっている。
海も、きらきら。
朝いちばんで、『みそしるをつくる』のテキストのことをやる。
あちこち掃除し、運動不足解消のために雑巾がけをした。
腰を上げて、足でしっかり床を蹴って。
この間、子どもニュースでやっていた通りに。
息が上がり、しっとりと汗ばんだ。
お昼ごはんにご飯を炊いて、混ぜご飯。
かんぴょうと干し椎茸を甘く煮たのが、冷蔵庫にあるのをずっと気にしていたので。
いり卵を作り、いりごまをたっぷりと水菜をゆでて細かく刻んで混ぜた。
あとで朝ドラの再放送を見ながら食べよう。
そして今日は、午後から苦楽園(阪急の駅)に行く。
冬のコートが仕上がったそうなので、仕立ててくださった方のアトリエへ。
川沿いを歩いていくつもり。
桜は咲いているかな。
行ってきました。
六甲の桜は”ちら”、夙川の桜は”ちらほらちら”くらい。
風が冷たかった。
約束の時間にはまだ早かったので、公園のベンチに腰掛けていたら、生け垣に見たことのない小鳥が遊びにきていた。
お腹は黄土色、オレンジ色がかった尾羽が長い、ぷっくりとした可愛らしい小鳥だ。
丸い種をつけたみたいな目が、くりっとしてとても愛らしい。
あっちに行ったかと思うと、またすぐに戻ってくる。
帰りは「MORIS」に寄って、ひろみさんと今日子ちゃんにコートを見せ、バスに乗って、坂を上って帰ってきた。
桜の木にジョウビタキが2羽。
私が見上げていても、ちっとも逃げない。
おかげで姿をよく見届けることができた。
お腹全体がオレンジ色で、尾羽は短い。頭は黒と白に分かれている。
夜ごはんは、ちらし寿司もどき(お昼の混ぜご飯に、塩もみきゅうりとマグロの中落ちをのせた)、水菜のおひたし、お吸い物(今日子ちゃんの新潟土産の銀葉藻)。

●2020年3月22日(日)ぼんやりした晴れ

7時半に起きた。
少しずつ、六甲のいつもの生活に戻ってきているみたい。
今朝は、いろんな小鳥たちがさえずっている。
あ、ウグイスもいる(まだあんまり上手に啼けない)。
朝いちばんに、窓辺のテーブルで「気ぬけごはん」の校正をした。
「オペレーション・テーブル」のことを書いたので、すーっと入っていけた。
掃除をしたり、食器を洗ったり、セーターを手洗いしたりしながら、ぽつりぽつりと思い出すのは旅の場面。
朱実ちゃんが、重ねておいたお茶碗を五つまとめて割ってしまったとき、一瞬の無言のあと、その器は真喜子さんのお気に入りだったのに、金継ぎをした器をいくつも出してきて、「私、金継ぎが好きなのよ。だから、細かい欠片も何でもとっておいて」と笑い飛ばしたときのこと。
神戸に帰る日の朝、朱実ちゃんちの屋根に布団を並べて干してあるのが、山小屋みたいだなあと思ったこと。
ずいぶんたって見にいったら、干してある布団の上で朱実ちゃんが寝ていて、パッと起き上がったとき、しっかりと寝起きの顔だったこと。
そのとき樹君は、向こうの屋根のてっぺんに体育座りをし、遠くを眺めながら風に吹かれていた。
それがなんだか、スイスの山の岩で、羊たちを放牧しながら雲を見ているペーターみたいだったこと。
「オペレーション・テーブル」の展覧会場に石油ストーブ(火鉢のような丸い形)を運び込み、鶏のモミジをくつくつ煮込んでいたときのこと。
そのとき、私たちはテーブルの方でちびちび呑んでいて、モンゴルのパオの中にいるみたいだなと思ったこと。
そしたらキナコちゃんがやってきて、ストーブの前に屈み、蒸しパンをもぐもぐ食べながら、鍋の中を見ていたこと。
私だったらお玉で混ぜたり、味見をしたり、モミジをつついたりしながら煮え加減をみるのに、キナコちゃんはただじーっと、ずいぶん長いこと、煮えている様子を見ていたこと。
そして、いなくなったなと思ったら、醤油を持って台所から現れ、ほんのちょっと加えていたこと。
キナコちゃんは煮汁の色や、煮込まれ立てている泡の大きさや動き、モミジの色づき加減を見ていたのかな。
こんなふうに視覚だけで確かめる人もいるんだなあ……と、目から鱗が落ちるほど感心したこと。
旅から帰ってきたら、絵本に関するうれしいことがふたつあった。
ひとつは、『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』の色校正が、とても素晴らしい仕上がりになっていたこと。
『おにぎりをつくる』が3刷りになったこと。
とてもとてもありがたい。
夕方、中野さんから新しい絵が送られてきた。
ソウリン君が描いた絵。
生きものがたくさん。
山も水路もある。
花も咲いている。
夜ごはんは、具沢山のピリ辛みそ雑炊(かぶ、えのき茸、水菜、ごぼ天、コチュジャン、温泉卵、焼き海苔)、はっさく(「オペレーション・テーブル」のお客さんにいただいた)。
『機関車トーマス』を見ながら食べた。

●2020年3月21日(土)

9時に起きた。
まだ眠れる、まだ眠れると思いながら。
目を開けたら、カーテンの隙間から黄色っぽい光が漏れていた。
これまでとははっきり違う明るさ、眩さ。
春の光。
北九州からはおとついの夜に帰ってきた。
楽しい楽しい5泊6日の旅だった。
「オペレーション・テーブル」には3泊し、朱実ちゃん&樹くんの家に2泊した。
なんだか文化も景色も違うふたつの国を、旅して帰ってきたような感じ。
今朝は、起きぬけ早々に、中野さんの絵が次々送られてきている。
見たことがある絵、ない絵。
夕方、新しい絵が届いた。
満開のハクモクレンが、空に向かって立っている。
電灯みたいな花。
「オペレーション・テーブル」のハクモクレンだろうか。
紫色のモクレンも、少し混ざっている。
きのう中野さんをお見送りがてら下りたとき、六甲の横断歩道のところの紫のモクレンが満開だった。
信号が変わるまでのしばらくの間、私は見上げていた。
あのときはじめて、紫色の花弁の内側があんなに白いことに気づいたのだった。
まるで内がハクモクレンで、外が紫のモクレンみたいだと思った。
見たものが絵となって、目の前に在る。
そこにずっととどまっている。
なんともいえない幸福。
今はまだ、頭も体もぼんやりしていているけれど、北九州でのこと、これからゆっくりゆっくり書こうと思う。
夜ごはんは、鯖のみそ煮、かぶの葉のおひたし、あかもく&めかぶとろろ(朱実ちゃんちの近所の魚屋さんで買った。ねばりが強く、たまらなくおいしい)、みそ汁(かぶ)。

●2020年3月16日(月)晴れ

おとついからまた、中野さんと「オペレーション・テーブル」に来ている。
「キチム」でのトークイベントが延期になってしまったので。
きのうは、展覧会の最終日で、早めの夕方からぽつりぽつりとお客さんたちが集まり、閉幕の宴がささやかにはじまった。
どのくらいの人が来てくださるのか分からなかったのだけど、私は昼間から、なんとなしにごちそうを支度していた。
何を作ったんだっけ。
まず、「うらんたん文庫」のおふたりが持ってきてくださった巨大椎茸(育てたもの)は、大きめに切って、にんにくとたっぷりのオリーブオイル、アンチョビペースト、白ワインで炒めたら、見た目も歯ごたえもアワビみたいになった。
あとは、じゃがいものお焼き(クリームチーズ入り)、アジアンつくね(むきエビ入り、クレソン添え、自家製スイートチリソース)、アボガドやっこチャイナ(オイスターソース、醤油、ごま油)、キャベツとクレソンとミニトマトのサラダ(自家製マヨネーズ)。
朱実ちゃんが若松で買ってきてくれたきのこ類と、真喜子さんの冷蔵庫にあった小振り椎茸で、いろいろきのこの中国風炒め(椎茸、しめじ、ひらたけ、エリンギ、にんにく、ごま油、オイスターソース、醤油)。
若松産直カキの殻焼き&自家製ベーコンは、樹君作。
ハモ(「黄金市場」で仕入れた)の湯引きは、真喜子さん作。
お客さんは10人ほど(私たちを入れて15人くらい)で、1月にやったイベントの記録映像を見ながら、自由に食べたり呑んだり、おしゃべりしたり、笑ったり。
最後に生姜、にんにく、スパイスたっぷりの「コロナなんかぶっとばせカレー」を食べ、お開きとなった。
今日は、それぞれがそれぞれのことをして過ごしている。
真喜子さんは朝早く、病院へ。
樹君はギター教室があるので、朝ごはんを食べて11時半くらいに出かけていった。
中野さんは絵の搬出作業を、ひとりでこつこつとやってらっしゃる。
ときどき、朱実ちゃんが手伝ったりもしているみたい。
私は冷蔵庫にあるもので、晩ごはんのためにこちょこちょと料理。
何を作ったかというと、刺身コンニャク、コンニャクの炒り煮、白菜と油揚げの薄味炊き。
あと、空き地に自生している若いフキの葉をゆでて刻み、フキみそを作った。
今日は、朱実ちゃんの幼なじみのキナコちゃんが食材持参でやってきて、何か作ってくれることになった。
とても愉しみ。
夜ごはんは、刺身コンニャク(ワサビ醤油&にんにく醤油)、コンニャクの炒り煮、白菜と油揚げの薄味炊き、連子鯛の塩焼き(樹君がお腹を出して新鮮なうちに塩をし、冷蔵庫に入れておいたもの。大根おろし、橙)、モミジの台湾風煮込み(キナコちゃん作。鶏の足首から下を、紹興酒、醤油、砂糖、根深ねぎ、生姜、にんにく、八角でトロトロに煮込んであった。豚足に似た味でとてもおいしかった。煮汁はご飯にかけて食べた)。

●2020年3月11日(水)晴れ

今朝の海は、白銀のスケートリンクだなと思って、今見たら金の海。
太陽が顔を出したから。
さて、今日は何をやろう。
急いでしなければならない宿題は、すべて終わった。
ひとつだけ、急がない原稿書きがあるので、そのことを思いながら繕いものでもしようかな。
あと、あちこち念入りに掃除をしよう。
心静かに。
のつもりだったのだけど、冬のコートのお仕立てを頼んでいる方が、「MORIS」にいらっしゃるとのこと。
だので急きょ、私も出かけることにした。
お散歩週間だから、帰りは歩いて上ろう。
急いで着替え、11時に坂を下りた。
横断歩道のところの大きな木蓮の木は、まだ1分咲き。
ああ、よかった。
「MORIS」では、今日子ちゃんのおいしいマーブルケーキとお茶をいただいた。
思いがけないティータイム。
薬屋さんにティッシュが売っていたので、買った。
坂を上っているとき、さすがに足腰がわなわなした。
「コープさん」からだったら、スイスイ上れるんだけどな。
2時前に帰ってきて、仕事の資料の箱を片づけをした。
空は青く、窓からいい風が入ってくる。
お昼前に外出し、さっと帰ってくるのってなかなかいいな。
夜ごはんは、クリームシチュー(コーン、豆腐入りミートボール、ソーセージ、人参、じゃがいも、菊菜)、ご飯。

●2020年3月10日(火)小雨が降ったりやんだり

8時15分前に起きた。
寝坊した。
ゆうべは夜中に目が醒め、それからはずっと薄く眠っていた気がする。
朝ごはんを食べ、「気ぬけごはん」の続き。
きのうから北九州の「オペレーション・テーブル」で作った料理のことを書きはじめ、いいところまできている。
3時には仕上げ、村上さんにお送りした。
このところ運動不足なので、散歩。
ポストまでのつもりが、女子大を通り越し、川まで歩いた。
今日も散歩。
クリーニング屋さんに寄って、「コープさん」へ。
木蓮の白い花があちこちで満開。
ユキヤナギも咲きはじめた。
桜の蕾もふくらみ、割れているのもあった。
去年の今ごろは、『うさぎの子』を書いていたんだな。
そして、母はまだ入院していなかった。
帰り道、小雨が降ってきた。
気持ちがいいので、しばらく濡れながら歩く。
傘を開いたら、さわさわさわさわと傘に当たる。
その音を聞きながら、霧のかかった山に向かって坂を上った。
夜ごはんは、豆腐ハンバーグ(粉ふきいも、人参グラッセ、菜の花炒め)、みそ汁(お麩、青じそ)、ご飯。
豆腐入りのハンバーグ生地は、半分残してミートボールにしておいた。
クリームシチューにして、明日食べる予定。
夜、ものすごい大風。
ヒマラヤ杉が踊り、空では雲がぐんぐん流れる。

●2020年3月6日(金)晴れ

ゆうべは8時半にベッドにいた。
本を読んで、寝た。
とてもよく眠れた。
最近はよく、母が夢に出てくる。
夢の中で私はいつも、(お母さん、もう死んだはずなのに。生き返ったんだな)と思いながら、不思議でなく一緒にいる。
ゆうべは私の職場(小さなレストランだった)の休憩部屋にいた。
移動式の黒いソファーベッドに横になって、キッチンにいる私たちに大きな声で話しかけていた。
私は羊の乳をよく煮詰め、サフランを加えて作るねっとりしたゼリーのようなのを、しおりちゃん(「クウクウ」時代の私の右腕)に教えてもらいながら作っていた。
母はとても元気で、しおりちゃんと私に肌着をプレゼントしてくれた。
しおりちゃんのは桜色、私のは白いレースつき。
なぜかそこはアラブの国だった。
へんな夢。
今日は、午後から京都に出かける。
アノニマの村上さんが東京から宮下さんに会いにいらっしゃるというので、急きょ私も加わることになった。
去年からずっとやってきた『本の本(仮)』の打ち合わせだ。
料理本のテキストも終わったし、『帰ってきた 日々ごはん7』の粗校正も、あと1ヶ月を残すところだし。
「メリーゴーランド」で待ち合わせ。
愉しみだな。
出かけるまで、レシートの整理をした。
これは、おとつい辺りからはじめた。
5月、6月、7月と、病院の売店で小さな買い物をよくしている。 
コンビニにもよく行っている。
6月1日のセブンイレブンのレシートには、アイスコーヒーのR(ラージサイズ)と「みかんの牛乳寒天」と打ってある。
それは、母のおやつに買った。
でも母は、半分だけ食べると「なおみちゃん、食べな」と身振りで私に伝えてよこしたんだった。
毎朝、売店に寄ってポカリスエットを買ってから、エレベーターに乗って病室に向かった。
同じ日に何度も、売店、コンビニ、病院の近くのスーパーに通っていておかしかった。
外の空気を吸いにいきがてら、散歩のようなことをしていた。
懐かしい。
あのころ母はまだ生きていた。
私も生きていた。
では、行ってまいります。
早めに出て、「MORIS」に寄ろう。

7時半くらいに帰ってきた。
ああ、楽しかった。
昼間からやっている「百練」で、つまみ(ポテトサラダ、牛すじ煮込み、椎茸焼き、ホルモンとキャベツの炒め物、季節の漬け物盛り合わせ)をおかずに、ご飯セット(大根と油揚げの煮物、みそ汁、漬け物)をしっかり食べ、 錦小路を歩いて、黒七味やだし昆布、漬け物、さつま揚げを買い、「イノダコーヒー」の本店でカフェオレを飲みながら打ち合わせした。
帰り道、烏丸の駅に向かって、「大丸デパート」の地下を歩いていたら、なんとお絹さんに会えた!
とっても元気そうだった。
「メリーゴーランド」では潤ちゃんにも会えたし。
なんか、いい日だったな。
夜ごはんは、「551」の豚まん半分、ごぼうの薄味煮、ごぼうと人参のサラダ(辛子マヨネーズ)。

●2020年3月4日(水)曇りのち雨

6時半に起きた。
雲がかかっていて、陽の出は見られなかったけど、山の稜線がオレンジ色に光ったとき、「フィトフィフィ フィトフィフィ フィトフィトフィ」と澄んだ声がした。
ラジオでは聖歌隊の音楽がかかっていたのに、はっきり聴こえた。
猫森の枯れ枝のてっぺんに、小さな鳥がとまっている。
窓を開けると、口笛みたいに大きく響く。
前に、中野さんが言っていた、「ひとひとり」と啼く小鳥だ。
とっても澄んだいい声。
トイレに行ってもどってきても、まだ同じところにいる。
望遠鏡でのぞいたら、尾羽を広げたりしながら啼いている。
灰色がかった小鳥。
顔の下に白いところがあるみたい。
いちど、枝から枝へちょんちょんと移動し、こんどは向きを変え、さえずっている。
六甲じゅうの人たちに、朝を知らせているよう。
「ひとひとり ひとひとり ひとひとり」。
『アイヌ神謡集』で、フクロウの神さまが人間界の空を飛びながら、「銀の雫降る降るまわりに、金の雫降る降るまわりに」と歌うみたいに。
けっきょく、同じ枝の上で30分以上も啼き続け、西の森へ羽ばたいた。
朝風呂から上がったら、雨。
静かな雨。
今日も『帰ってきた 日々ごはん7』の粗校正をしよう。
きのうで2月(2017年)が終わったので、今日から3月にとりかかる。
ずっと雨。
窓は霧でまっ白け。
夜ごはんは、手羽先とゆで卵の中華風煮(ゆで小松菜添え)、みそ汁(豆腐)、おにぎり(紅しょうが)。

●2020年3月3日(火)晴れ

5時半過ぎにトイレに起きたら、朝焼けがもうはじまっていた。
カーテンを開ける。
ラジオをつけると、「夜明けの歌」がちょうどかかっていた(これは間違いで、あとで調べてたらショパンの「別れの曲」だった)。
6時からは「古楽のたのしみ」。
今週は男の人。
わりと静かな声の人。
イタリアの古い教会音楽が延々とかかっていた。
いつもみたいに、布団を肩までかぶり、ベッドに腰掛けてみていたら、山の上の色がじわじわと移り変わっていく。
太陽が顔を出す直前、山と雲との間がオレンジ色の湖みたいになった。
今朝の陽の出は6時半。
ぬるーりぬるーりと出て、姿を現すと、それからはぽーんと昇っていった。
ボールみたいに。
なんだか軽そうだった。
さて、今日からまたひとりの日々がはじまる。
朝ごはんを食べたら洗濯して、『帰ってきた 日々ごはん7』の粗校正に勤しもう。
ラジオでニュースを聞きながら、いつものように家でこつこつ仕事ができることのありがたさ。
そうだ。
アムとカトキチがこれまでうんとがんばってきた「エゾアムプリン製造所」を3ヶ月ほどお休みし、海外旅行に出かけようと決めたのは、一昨年くらいだったかな。
その日からじわじわと旅の支度をはじめていたふたりの様子が愉しみで、私はときどきホームページの「アムプリンの冒険!」を開いては、ときに笑い、ときに驚きながら読んでいた。
旅に出るのが決まるとすぐ、アムは英語の勉強に毎日励んでいた。
そして、ロシアのなんとかいう特殊なビザを取るのは、代理店にお金を払ってお願いをするのが普通なのだけど、カトキチは自力で取ろうとがんばって、ロシア語の書類をグーグルで翻訳しながら、何ヶ月もかかってようやく取得できた。
その喜びのアムの文を読んだのは、つい最近だった。
それなのに……コロナウィルスの影響で、旅は来年に延期することにしたのだそう!
そこで、みなさんにお知らせです。
アム、カトキチ、ムラと3人でがんばっても、一日24個しかできない、正直者たちがこしらえるおいしいプリン。
いつもだったら、半年先の予約までいっぱいの「エゾアムプリン」ですが、このたび4月、5月、6月の分の受付をはじめたそうです。
詳しくは、こちらを見てください。
http://www.amupurin.com/ezoamu/327.html

今日は雛祭り。
前にほのちゃん(佐渡島のあすかちゃんの長女)が折り紙でこしらえた、お雛さまを箱から出して飾った。
なぜか、お内裏さましかない。
あ、思い出した。
女のお雛さまは、ほのちゃんが持って帰ったんだ。
ほのちゃんたちがうちに泊まりに来た日の日記は、今校正をしている『帰ってきた 日々ごはん7』に出てくる。
夕方、ゴミを出しに行ったら、真上の空に半月が。
北風が山からビューッと吹いてきた。
そういえば、知らぬ間にずいぶん日が長くなったな。
本当はちらし寿司を作って食べたいところだけど……
夜ごはんは、アジの南蛮漬け(玉ねぎ、人参、水菜)、海苔の佃煮(生海苔で作った)、みそ汁(長芋、青じそ)、卵かけご飯。

●2020年3月1日(日)薄い晴れ

朝は、明日香ちゃんの佐渡のりんごとヨーグルト。
早めのお昼ごはん(納豆、菊菜のおひたし、みそ汁)を食べ、中野さんは2階で絵(ラフスケッチ)を描いてらっしゃる。
きのうも絵のおかげでテキストが新しくなり、絵本はずいぶんいいところまでいっている。
数枚の絵を描こうとしているのか、それともすべてを描き直そうとしてらっしゃるのか、中野さんはなかなか下りてこない。
私は今日から、『帰ってきた 日々ごはん6』のパソコン上での粗校正をはじめた。
料理本テキストが終わり、今朝、赤澤さんと立花くんにお送りしたので。
コロナウィルスには生姜やにんにく、こしょうや唐辛子がいいらしいと姉が教えてくれたので、きのうは玉ねぎと生姜をよく炒め、スパイスもいろいろ入れた「コロナぶっ飛ばせカレー」を作った。
本格的でとてもおいしいインドカレーができた。
今日は、生姜たっぷりの、「コロナぶっ飛ばせ生姜焼き」にする予定。
夜ごはんは、豚の生姜焼き(玉ねぎと炒めた。水菜のサラダ添え、自家製マヨネーズ)、油揚げの甘辛煮、みそ汁(かぶ)、ご飯。
それから、お知らせです。
3月14日(土)に予定していた「キチム」のトークショウにご予約くださった方、ありがとうございました。
今朝、奈々ちゃんと相談し、お話会を延期することになりました。
ご予約くださった方へは、奈々ちゃんからご連絡がいくと思います。
私からも短い挨拶文を書いたので、最後に載せさせてください。

・・・・・  みなさんにお会いできるのを、とても愉しみにしていたのですが、
3月14日(土)のトークイベントは延期することになりました。
ごめんなさい。

春はもうすぐそこ。
近いうちにまた、神戸からとことこと出向きます。

ーーよくねむって、元気をなくさないこと。
あたたかい春になったら、そのさいしょの日に、
ぼくはまたやってくるよーースナフキンの手紙『ムーミン谷の冬』より

       高山なおみ

●2020年2月27日(木)曇りのち晴れ(雹、小雪)

さっき、いきなり暗くなったかと思ったら、パラパラと大きな音がして雹が降ってきた。
慌てて階段を上り、布団を取り込んだ。
しばらく降り続いていた雹は、霙に変わり、西の空に青空が見えたと思ったら、そのあとパーッと明るくなってみるみる広がった。
今は晴れている。
雹も霙も、漢字がむずかしいけれど、雨を包むのが「ひょう」、雨に英で「みぞれ」。
英という字にはどんな意味があるんだろう。 「銀の雫降る降るまわりに、金の雫降る降るまわりに」
これはゆうべ、寝る前に読んだ本『アイヌ神謡集』の中で、フクロウの神さまが歌っていた歌。
今朝は、5時に目が醒めてしまい、6時からカーテンを開けてラジオを聞いていた。
「古楽のたのしみ」の今週は、私の好きなあの人。
曲の紹介をするときに声の音程がかすかに揺れる、静かな声の人。
これから朝になろうとしている時間、でもまだ、夜は明け切らない鎮まった時間にぴったりな声。
関根敏子さんという方らしい。
ゆうべはなんとなく、よく眠れなかった。
きのう起こったある出来事で、水面下にあった問題が見えてきた。
それは私の長年の課題だったんだと思う。
これまでも何かが起こるたび、姿を現してはいたのだけど、私はずっと逃げ腰だった。
今だったら、向かい合えそうな気がする。
ひとつひとつ解決して、前に進んでいこうと思う。
中野さんがお昼ごろにいらっしゃり、午後から絵本のことをやった。
これは、東京の編集者さんと筒井君から宿題をいただいていた絵本。
中野さんは私のテキスト通りに順を追って描いてくださっているのだけど、画用紙に描かれたラフスケッチを見ながら、合うものに私のテキストを当てはめ、並び替えていくうちに、隠れていたものが浮かび上がってきた。
それは、この物語の要になるような大事なひと欠片(ピース)。
そうか、これはこういうお話だったんだ、という大事なところ。
夜ごはんは、お鍋(鶏肉、鶏つくね、絹ごし豆腐、菊菜、水菜、えのき茸、大根おろし、ポン酢醤油、ねぎ、ゆずすこ)、〆の卵雑炊。

●2020年2月22日(土)曇りのち雨のち晴れ

トイレに起きたら、朝焼けがはじまっていた。
カーテンを開け、肩まで布団をかぶって、ベッドの上で陽の出を待つ。
しばらくすると、山の稜線のひとつところにオレンジ色の線が光り、ぬるーっと出てきた。
6時40分。
まん丸な姿を現すとすぐ、太陽は上の雲に吸い込まれた。
天気予報によると、今日は雨が降るのだそう。
いつもよりこぢんまりとした大きさで、それほど眩しくなかったのは、雲のせいなんだな。
ベッドに寝そべって、しばらく空を眺めていた。
太陽は隠れたまま。
東の方から次々雲がやってきて、重なり、厚ぼったくなっていく。
朝なのに夕方みたいに暗い。
でも、暖かい。
エイヤッと起きて、朝風呂に。
こんな日は物を書くのにぴったりだ。
今日も料理本のテキストをやろう。
今は雨。
ひっそりと降っている。
霧も出てきた。
料理本のテキストは、もうひと息。
午後には晴れてきた。
風が強い。
流れゆく雲の影が、建物の屋根に映っている。
ゆうべ煮ておいたりんごの半分をフードプロセッサーにかけ、軽く煮詰めてジャムにした。
夜ごはんは、焼き餃子、あらめの煮物、大根のみそ汁、りんご。

●2020年2月21日(金)晴れ

7時に起きた。
カーテンを開けると、すでに昇ったあとだったけど、太陽はまだオレンジ色だった。
そのうち眩しい光で部屋がいっぱいとなる。
布団をめくり、体いっぱいに浴びた。
朝ごはんを食べ、今日もまた料理本のテキスト。
いちばんはじめから進む。
夕方、きのう書いたところまでようやく届いた。
なめるようにしながらじわじわと進んでいる。
ナメクジみたいに。
最初のころは、1冊分がとてつもない長さだと感じていたのだけど、今はひとつの大きなかたまりとして捉えられる。
かたまりはやわらかく、やればやるほど白くなる。
ひとつ変わると、すべてをつらね、ぬくもりのあるものに変化していく感じがする。
不思議な感触。
私は今、とても楽しい。
今日は、真喜子さんからプレゼントが届いた。
なんと、「オペレーション・テーブル」のゲストルームにあった、草の匂いのするあのシャンプーだ。
テキストをがんばっているお祝いに開けようと思う。
今使っているシャンプーとトリートメントは、しまっておいて。
夕方、ずいぶん進んだ。
もうじき終わりそう。
そして、中野さんから絵の画像が送られてきた。
たまらなく好きな絵だった。
澄んだ目を持っている人にしか描けないような絵。
夜ごはんは、ひき肉かけご飯(キムチ、目玉焼き)、中華スープ(豆腐)。
真喜子さんのシャンプーとトリートメントを使った。
そうそうこの匂い。
ひと息に、「オペレーション・テーブル」の楽しかったあの日々へ。
夜、りんごを砂糖で煮た。

●2020年2月20日(木)晴れ

6時半に目覚めたのだけど、目をつぶっているうちに太陽が昇ってしまった。
このごろは、陽の出の時間が少し早くなったのかな。
7時に起きた。
朝ごはんを食べ、インタビュー記事の校正。
お戻し時間のぎりぎりまでかかってしまう。
今日は料理本のテキストを休もう。
校正原稿は3時にお戻し、コープさんまで買い物に出た。
外の空気を吸いたくて。
運動不足だし。
佐渡のりんごでジャムを作りたいのだけど、きび砂糖を切らしているので。
帰り道、リュックを背負ってせっせと坂を上った。
上着を着ていかなかったのに、しっとりと汗をかいた。
あちこちで花の香りがしていた。
夜ごはんは、サーモンのムニエル(バター醤油ソース)、ポテトサラダ、春巻き(ずいぶん前に冷凍しておいたのを、なたね油を多めにしてフライパンで焼いてみた)、みそ汁(玉ねぎ、生のり)、ご飯。
明日はりんごを煮る予定。
引き続き、料理本のテキストをがんばろう。

●2020年2月18日(火)晴れ

うちは今、甘酸っぱい匂いがする。
佐渡の明日香ちゃんが、島のりんごをたくさん送ってくださったので。
ゆうべも寝ながら、ずっといい匂いがしていた。
そして、ゆうべは風がとても強かった。
雪が降るかもしれないという予報だったので、毛布を1枚増やして寝た。
朝起きたら、雪が舞っているかもしれないと思って愉しみにしていた。
寒いことは寒いのだけど、降っていない。
朝ごはんを食べているとき、とてもよく晴れていて、目をこらすとちらちらちかちか。
金色の粉が舞っていた。
粉雪にもならないような、霙のような粉に太陽が当たっているんだろうか。
2階に上って見ても、やっぱり舞っている。
きのうあたりから、料理本のテキストが大詰めに入ってきた。
思うぞんぶんとり組んでいる。
雪が降ったら、2階のベッドの上でやろうと思っていたのにな。
3時からは『おにぎりをつくる』のインタビューで、「リンネル」の方がいらっしゃる。
それまでがんばろう。
夜ごはんは、イカスミオムパスタ(イカスミスパゲティーに人参とソーセージを加えて炒め、ケチャップを混ぜ、卵で巻いた)、小松菜の塩炒め、りんご。
佐渡のりんごは酸味がしっかりあって、おいしいな。

●2020年2月15日(土)曇り

肌寒い。
ゆうべは寝ようとしたら、ベッドに当たっている肌がかゆくなり、ちりちりとして眠れなくなった。
おかしいなと思ったら、太もものまわりがみみずばれのようになっていた。
最初はベッドに虫がいるのかと思って、シーツを取り替えたり、パジャマを着替えたりしていたのだけど、どんどんひどくなるばかり。
気にすれば気にするほどかゆくなり、体中がちりちりした。
はじめてのことだから、不安だった。
ネットで検索しているうちに、じんましんかもしれないということが分かり、皮膚科でもらった薬が冷蔵庫に保管してあったのを思い出し、塗ってみた。
かゆみはすぐに治まったけど、夜中に目覚めたらまだ腫れていた。
でも、朝起きたらきれいになっていた。
何事もなかったみたいに。
じんましんはストレスや疲れでもなるらしい。
不思議だな。
いつもと違うことは何もしていないのに。
仕事もバリバリやって、元気だし。
変わったことといえば、夜ごはんの前にチーズ味のポテトスナックを食べ過ぎたことくらい。
おかしいな。
季節の変わり目だからかな。
今日は午後から『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』の打ち合わせ。
ゆうべ、榎さんから連絡があり、急に決まった。
つよしさんもいらっしゃる。
それまで、料理本のテキストをがんばろう。
つよしさんが早めに来てくれたので、じんましんのことを話した。
うん、うんと聞いてくださっていて、ポテトスナックのことを言ったとたん、「それやね」と言った。
夜ごはんは、鯖の薫製(ひろみさんのイギリス土産)の炊き込みご飯(ごぼう入り)、大かぶらとワカメのみそ汁、ほうれん草とウィンナーのバター炒め。
炊き込みご飯がとてもおいしくできた。

●2020年2月13日(木)曇りのち晴れ

春のように暖かい。
というか、初夏のよう。
玄関を網戸にしておくと、風が通ってちょうどいい。
朝起きたときには霧が出ていて、どこもかしこも真っ白だったのに。
天気予報によると、20度あるのだそう。
朝、お風呂に浸かっているとき、新しい絵本の冒頭が歌のはじまりみたいに転がり出てきた。
これは、佐川さんからお願いされている、『おにぎりをつくる』の次の絵本。
メモしておいてパソコンの前に座ったら、揺れながら、リボンみたいにつながって出てきた。
このテキストは、本当はもうずい分前にできかけていて、佐川さんにお送りしていた。
でも、あんまりよくないなあと思っていた。
できないかもしれないと思っていた。
でもゆうべ、中野さんにテキストを朗読してもらったことで、どこがよくないのか分かった。
中野さんをお見送りがてら神社まで散歩した。
どこからか花の香り。
ツクピー ツクピーとシジュウカラも鳴いている。
神社でお参りし、せっせと坂を上って帰ってきた。
しっとりと汗をかいた。
中野さんがいらしてから、世界が動きはじめた感じがする。
体の中もよく動いている。
『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』もそうなのだけど、神戸に来てからぽつりぽつりと生まれた物語が、ようやく目に見える形となって、ひとつ、またひとつと私のもとに戻ってきている。
そのことがじんわりと、嬉しい。
ゆうべはそんな話をしながらごはんを作って食べた。
熊谷さんに見ていただいている、中野さんとの新作絵本も、きっともうすぐ。
つよしさんとの絵本はたしか3年前、中野さんとの絵本は2年前に生まれた。
今日は、2時から『おにぎりをつくる』のインタビューで、朝日新聞の方と佐川さんが東京からいらっしゃる。
終わったら、次の絵本の打ち合わせもする予定。
佐川さんは終電までゆっくりされるとのこと。
あ、タクシーが止まった音がする。
いらしたかな。
夜ごはんは、じゃがいものドフィノア、あらめの煮もの、大かぶらの浅漬け(橙を搾った)、鶏の塩焼き、大かぶらの薄味煮、オレンジワイン。

●2020年2月11日(火)晴れ

8時少し前に起きた。
中野さんがいらしている。
きのうは大丸で待ち合わせをし、新鮮なスルメイカ(皮がまだピンクだった)やブリのお刺身を買って帰り、窓辺でごちそうを食べた。
ひさしぶりにワインを呑み、日本酒も呑み、たくさんおしゃべりした。
朝ごはんを食べ、私は料理本のテキストの続き。
ピンポンが鳴って、つよしさんとやっている『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』のデザインが上がってきた。
す、すごい。
思ってもみなかったデザイン。
でも、とってもすんなりくるデザイン。
つよしさんの絵も、みずみずしく光っている。
すばらしい。
デザイナーさんは、物語を深いところまで読み込んでくださっている感じがする。
私がこしらえたダミー本を、お見せしないでおいてよかったな。
言葉の配置や、微妙な隙間のニュアンスが、物語の世界を立ち上がらせる。
ああ、こういうことだったのか……と、気づかせてくださるようなデザインだった。
お昼ごはんに中野さんがイカスミスパゲティーを作ってくださった。
食べ終わったころ、中野さんは熱があることに気づいた。
37度1分。
風邪ではないようだけど、たまった疲れが出たのかな。
2階で寝てらっしゃる間、私は料理本のテキストをひたすらやっていた。
気づけばずいぶん進んでいる。
ひとりでいるときよりも、集中してやれるのはどうしてだろう。
夜ごはんは、だし巻き卵、小松菜の塩炒め、ハムを焼いたの、ワカメと豆腐のみそ汁、納豆、自家製なめたけ、ご飯。
冷蔵庫にあるものをかき集めて、ていねいに作った。
こういうごはんがいちばんおいしい。
食べてすぐにお風呂に入り、中野さんは先に休んだ。
私はひとり、こうして日記を書いている。
静かな夜。

●2020年2月9日(日)晴れ

6時半に目覚め、カーテンを開けた。
ベッドに寝そべったまま空を見る。
今朝は雲が多いな。
高い方のは青灰色がかっている。
のったりとした大きな青灰色が、薄い灰色と交差する。
そのうち、下の方の雲が茜色に輝き、山の稜線が金色になってきた。
オレンジの光が見えたと思ったら、じりじりと昇り、つるん、ぷりんっと勢いよく出てきた太陽。
眩い光の玉。
玉というか、丸い形の反射板のよう。
反射板の中はうねうねと動き、オレンジなのか、青なのか、黒なのか、分からない色に見えてくる。
こういうの、じっと見ていてはいけないんだろうな。
朝ごはんを食べ、パソコンに向かった。
ピンポンが鳴って、書類が届いた。
12月に撮影していただいた、斎藤くんの写真の束だった。
すごくいい。
冬の光に包まれている。
根を詰めて書いていたテキストの活字の世界と、あの日の実物の世界。
そのずれを前に、ぽかんと立ち尽くしてしまう。
言葉がとてつもなくつまらないものに思えてくる。
海の手前の煙突の煙がまっすくに上り、そのまま雲につながっている。
煙突の向こうは、白銀にさんざめく海。
今朝は風がないのだな。
料理本のテキスト、しばし休もうと思う。
午後、東京新聞に寄稿する短文を書き、仕上げて村上さんにお送りした。
今は5時。
海がまだ青い。
夜ごはんは、豚肉(ロースの厚切り)のみそ漬け、小松菜炒め添え、ひと口がんもどきと菜花の薄味煮(おとついの残り)、みそ汁(豆腐、ねぎ)、ご飯。

●2020年2月8日(土)曇り

6時半にカーテンを開けた。
ラジオを聞きながら、陽の出を待った。
太陽は7時少し前に、ちゃんと顔を出した。
隣のマンションに隠れてもう見えないと思っていたのだけど、あの日はもう昇ったあとだったんだな。
よかった。
今日も今日とて、料理本のテキスト。
窓辺の木の机を、それほどには陽が当たらないところまで移動し、パソコンをのせてみた。
場所が変わると、新しい気持ちでテキストに向かえる。
気づけば4時。
ぐっと集中できた。
夜ごはんは、トマトスープ(人参、ゆり根、小松菜)だけ。
ごはんの前に、塩せんべいをバリバリ食べてしまったし、お昼にはひろみさんの炊き込みごはん(お土産にいただいた)をセイロで温め直し、たっぷり食べたので。
ここでお知らせです。
3月14日(土)に、吉祥寺の「キチム」でトークショーを開くことになりました。
詳しくは「ちかごろの」を開いてみてください。
久しぶりの東京は、どんな様子だろう。
また、川原さんちに泊めてもらえる。
3泊ほどして、赤澤さんたちと料理本の打ち合わせもする予定。

●2020年2月6日(木)快晴、お天気雪

8時15分に起きた。
窓を開けたら、前の建物の屋根にうっすらと雪が積もっていた。
明け方に降ったのかな。
あったかい布団にくるまってぐっすり眠っていたから、ちっとも気づかなかった。
今朝も海が眩い。
太陽が当たっているところが、海から発光しているみたいに見える。
きのうのもそうだった。
海から王冠みたいに光のしぶきが上がっている。
さ、今日もまた料理本のテキストをがんばるぞ。
また2階のベッドの上でやろう。
快晴の青空。
夢中でやっていてふと窓を見ると、小雪がふらふら舞っている。
雪虫みたいな小さいの。
こんなによく晴れているのに。
何度見ても舞っていた。
青空に、雪虫。
たまらなくなり、屋上に上ってみた。
舞ってる、舞ってる。
そのまま階段を下り(運動不足なので)、玄関から外に出た。
舞ってる、舞ってる。
夕方のラジオで、「兵庫県は今日、風花が舞いましたね」と言っていた。
そうかあれは、風花というのか。
夜ごはんは、トンテキ(小さめの豚ロース厚切り)、お土産でいただいた春菊のオイル蒸し&パースニップの塩ゆで、みそ汁(豆腐、ねぎ)、自家製なめたけ、ご飯。

●2020年2月5日(水)晴れ

朝ごはんを食べ、料理本のテキストの続き。
「スカーレット」を見ながらお昼を食べ、1週間ぶりに坂を下りた。
美容院に行き、てくてく歩いて遠くのチーズ屋さん(閉まっていた)へ。
輸入ものばかり売っている大きな酒屋や、銀行、区役所にも行った。
区役所には確かめたい用件があって行ったのだけど、いざフロアーに立ってみたら、ふわふわしてしまい、何をどう聞きたかったのか分からなくなった。
前に来たときと窓口の配置がずいぶん変わっていて、その様子にまず驚いた。
ふわん、ぽかんとしていたら、「今日は何のご用事ですか?」とおじさんが声をかけてくださる。
そんなふうに窓口に案内をしてくれる係の人が、3人くらい立っているのだ。
ますますわけが分からなくなる。
それでも3つの窓口をまわって、聞きたかった用件のひとつは確かになった。
最後に、年金の窓口に行ったのだけど、いつも持っている肩掛けバッグがない。
真っ青になって、さっき寄ったトイレに見にいこうとしたら、さっきのおじさんが声をかけてくださった。
「もしかしたら、お探し物をしてはりますか? 」
「はい」
「それは、厚い布の、茶色いような小さいバックですか?」
「はい、そうです!そうです!」
「お忘れもんみたいやったから、どなたんかなあと思っとったんです」
係の女の人が、ちゃんと預かっていてくださった。
今日に限って、銀行の通帳も入っていたから、ひやっとした。
たっぷり買い物をして、夕暮れのなかてくてく歩き「MORIS」へ。
イギリス帰りのひろみさんが、お土産の鯖の薫製(黒こしょうがまぶさっている)で炊き込みご飯を、今日子ちゃんがパースニップ(白人参)の塩ゆでと、カリフラワーのお焼き(カリフラワーをフードプロセッサーで粉々にして塩を少し、小麦粉を混ぜて団子にし、なたね油でじっくり焼いた)、春菊のオイル蒸しを作ってごちそうしてくださった。
ひろみさんの炊き込みご飯には、ごぼうや人参、れんこんも入っていて、私だったらごぼうはささがき、人参も細く切ってしてしまうのに、ひろみさんのはころころに切ってあった。
大きすぎず、小さすぎず。
ごぼうの香りが立って、鯖の薫製の香ばしさとも合わさって。
薄味で。
すごーくおいしかった。
今日子ちゃんの野菜料理も、じんわりと胸にきた。
3人でたわいないおしゃべりをし、よく笑った。
私はここ1週間、誰ともおしゃべりをしていなかった。
中野さんとは電話で2度ばかしお話ししたけど。
帰ってきたら、足がつっぱらかっていた。
運動不足、おしゃべり不足、人との対面不足。
お風呂に入ってもみほぐしながら、体の中の流れも詰まっていたのかなと思った。

●2020年2月4日(火)晴れ

窓を開けていても春のように暖かい。
ゆうべは、「オペレーション・テーブル」にいる夢をみた。
何度か目覚め、また眠ると同じ夢の続き。
朝ごはんを食べ、料理本のテキストに向かう。
私はもう、何日も外に出ていない。
こもりっきりでずっとテキストを書いている。
数えたらちょうど1週間だった。
途中で、「あー、つまんないよー!」と声を上げた。
「オペレーション・テーブル」での1週間が、あんまり楽しかったから。
気を取り直し、肩の体操をしてまた向かう。
2階のベッドの上に文机をおいてパソコンをのせ、資料をまわりに集めてみた。
今日は海が青いな。
気が散ると、窓を開けて肩の体操。
青い空にはお椀のような白い半月。
今は5時。
ずいぶん進んだ。
もしかしたら私、半分以上書けたかもしれない!
夜ごはんは、トンコツ味の棒ラーメン(煮卵、明太子、ねぎ)、白菜、人参、椎茸、豚こま切れ肉のおかか炒め。

●2020年1月31日(金)曇りときどき晴れ

6時半に起きた。
カーテンを開けると、もう薄明るい。
しばらく見ていなかった間に、太陽の昇る位置もずいぶん動いた。
もうじき隣のマンションに隠れて、見えなくなりそうだ。
そうか、もうそんな季節になったのか。
今朝は、空の光の具合がくるくる変わる。
急に暗くなったなと思ったら、雨まじりの小雪が舞っていた。
寒い、寒い。
そしてまたすぐに光が溢れ、眩いばかりとなる。
窓辺に洗濯物を干しているので、暗くなると窓を閉めにいったりしながら、朝から「SとN」の校正を夢中でやった。
12時を過ぎたころ、今日もまた、まっぷたつに分かれた空。
大阪の街(東)は灰色の雲に覆われているのに、三宮の街(西)の上は見事な青空。
雲は白銀、海も白銀。
手前の海だけ、緑がかっている。
どこかで虹が出ていそうなお天気だ。
「SとN」の校正は、2時くらいに終わった。
記憶が遠くにいかないように、旅のことを記しておこう。
北九州で私は何をしていたかというと、旅芸人の”くちぶえ一座”の団員として、台所を厨房用に整え、みんなのためにごはんを作っていた。
でも、私ばかりが作っていたのではない。
朝いちばんに起きてきた人が洗い物をはじめ、珈琲を淹れ、なんとなく誰かが掃除をしたり、ゴミ出しをしたり。
手の空いている人、作りたい人がいつも勝手に作っていた。
イベント用の料理も、朱実ちゃんと樹くんがずいぶん手伝ってくれた。
私はよく寝坊して、ベッドでうとうとしていると、どこかで誰かが立てる音が聞こえてきた。
中野さんが歯を磨いている音、展示会場を掃除しているらしい音。
どこかで絵を描いてらっしゃるような気配。
3階の部屋で、樹くんがギターの練習をしている音。
朱実ちゃんが下りてきて、「おはようございます!」と明るい声。
私は1階のゲストルームにこもり、動き出したみんなの音を聞いてから、朝風呂に浸かるのが日課だった。
窓から陽光が射込むバスタブには、自分で買ったクナイプ(ハーブの香りの入浴剤)の袋を毎朝少しずつ分けて入れていた。
ゆっくりお湯に浸かりながら、”くちぶえ一座”のテーマソング(「東京キッド」の替え歌)の歌詞を考えたり、今日は何の料理を仕込もうかしらとぼんやり頭を巡らせたり。
広い家(3階建て)のどこかにはいつも誰かがいるのだけど、互いに干渉せず自分のやりたいことを静かに遂行している感じは、十代のころ住み込みのアルバイトをしていた山小屋の空気にも似ていた。
ずっと雨が降って、空気が冷たく清冽で、台所の足下がいつも冷えていたせいもあるのかな。
何の料理を作ったかも、思い出してみよう。
1日目の賄いは、真喜子さんの台所の冷凍庫にぎっしりたまっていた肉類(ハム、ベーコン、豚肉、鶏肉、鴨肉など)をミンチにし、樹くん&朱実ちゃんが玉ねぎを刻んで炒め、スパイスを駆使した「謝肉祭のカレー」を作った。
あ、それは2日目だ。
1日目のディナー(晩ごはんという感じではない)は、樹くんのトマト味のスープ(じゃがいも、人参、樹くん作のベーコン)が鍋に残っていたので、冷凍庫にあった茹でマカロニを朱実ちゃんが加えて煮込み、私がホワイトソースをこしらえてグラタンにした。
バターがなかったので、ホワイトソースはオリーブオイルで作った。
それから、冷凍庫に点在していたイカスミと、炊き込みご飯やおにぎりを集めて真喜子さんがこしらえたのは、真っ黒なイカスミリゾット(にんにくとオリーブイルがたっぷりで、濃厚で、絶品だった!)。
あと、朱実ちゃんたちが若松のスーパーで買ってきた新鮮なハマチのお刺身と、海鮮のり巻き。
翌日は、「謝肉祭のカレー」に、タイのアラ(若松のスーパーで買ったもの)でスープをとって(引き出しの奥からブーケガルニのパックをみつけ出した)、ハマチのお刺身の残りをミンチにして加えたら、なんとなくフランスの漁師町のスープになり、真喜子さんが「マルセイユ風漁師のスープ」と名づけてくれた。
その後、「マルセイユ風漁師のスープ」の残りに何かの肉(忘れてしまった)と、パプリカの粉やクスクスのミックススパイスなど加え、栗原さん(こんど3月に若松で開く、おにぎりのイベントを企画してくださった方)の差し入れのキャベツを刻んで煮込み、「ハンガリアン・グヤーシュ」に。
「ハンガリアン・グヤーシュ」は、料理ライブの日にお客さんに出したら、あっという間に鍋が空っぽになり、鍋の底に残ったのをパンにつけて子どもたちが食べてくれた。
ライブの日に合わせ、毎日こつこつと冷凍できる料理(シガラボレイ、モンゴル餃子)を作り、ソーセージも3種類仕込んだ。
スパイス違い、肉違いを豚腸で2種。羊腸のもはじめてやってみた。
腸が乾くまで、玄関の中野画伯の絵の前に吊るした。
「オペレーション・テーブル」は動物病院だったので、ソーセージからしたたり落ちる肉汁は、もう何十年も前にメスや注射を揃えていただろう銀色のワゴンの、ステンレスのトレイで受けた。
ぶら下げたソーセージは、サーカスの踊り子がお化粧をしている絵にもよく似合っていた。
私が台所でこつこつと仕込みをしているとき、樹くんのギターや朱実ちゃんの歌声が聞こえてきた。
中野さんはいつもどこかで絵を描いていた。
真喜子さんは2階の自分の部屋で、大学の講義のための準備をしていた。
それはまさしく、私がまだ吉祥寺に住んでいたころに、紙版画を教わりに朱実ちゃんの家に行った日そのものだった。
2015年の10月14日、あの日の日記にはこんなふうに書いてある。

みんな、別々の体(指や耳や鼻や目や)と心を持っているのに、目に見える場所ではいっしょにいて、それぞれのものを好きなように作り出している。

あれから朱実ちゃんと樹くんは、緑さん(朱実ちゃんのお母さん)と若松の実家に移住し、私は東京を離れてひとりになり、中野さんともときどき過ごすようになった。
その間の歳月は5年近くあるのだけれど、なんだか紙版画の日のあくる日みたいでもあった。
1月24日、旅芸人のライブペイント ”荒野にて”。絵・中野さん&ギター・樹くん&声と歌・朱実ちゃんの興行。
1月26日は、”くちぶえ一座”のまかないと音楽。私の料理&朱実ちゃん&樹くんの興行。
お客さんに向けて作った料理は、その場に合わせ、自由に変わっていった。
今思うと、私の料理もライブのひとつだったんだな。
ライブ料理のメニューを思い出して書いてみよう。
シガラボレイ(トルコの春巻き)、ハンガリアン・グヤーシュ、パン(当日、厨房の手伝いをしてくださったあんべさん作)、チキンとミートボールのカレー(樹くん作)、平パン(練った生地を、展示会場の手術台の上で伸ばし、中華鍋で焼いた。ふきのとう味噌添え←平パンはカレーに添えるつもりだったのだけど、すでにお客さんのお腹に入り、鍋が空っぽになっていたので)、ソーセージ3種(酢キャベツ添え)、モンゴル餃子&モンゴルだれ(網焼きトマト、にんにく、黒こしょう、レモン汁、オリーブオイル)、鍋焼きローストポーク(豚ロース塊肉はにんにくとローズマリーを突き刺して、粗塩をなすりつけ、冷蔵庫でねかせておいた。肉の周りに玉ねぎと人参をぎっしり並べて鍋蒸し焼き。最後に肉だけオーブンに入れ、脂身をカリッと焼いた)、大かぶらと大根の塩もみ(柚子こしょう、甘口醤油、ごま油)、トマトのサラダ(薄く輪切りにし、おいしい塩をふりかけただけ。朱実ちゃんの友だちのキナコちゃんが作ってくれた)、鯖のマリネ(真喜子さんが塩をしておいた鯖を酢に浸け、にんにくたっぷりのオリーブオイルをかけた。黒と緑のオリーブ添え。残ったオイルはパンに浸して食べてもらった。鯖は、バスに乗ってふたりで出かけた黄金市場でとても新鮮なのを買った)。
これで全部だったかな。
私たちの日々のごはんでは、殻つきのカキもよく食べた。
オリーブオイルににんにくの香りをつけ、白ワインで蒸し焼きにしたもの。
若松のカキはびっくりするほど安い。
殻は小さめなのに身がぷりっと大きく、こたえられないおいしさだった。
真喜子さんは若いころ美術館で学芸員をしていて、今は大学で美術を教えてらっしゃる。
だからか、外国にもよく出かけていたらしい(今もかな?)。
そして「オペレーション・テーブル」は、オープンしてから10年が経つ、古くて頑丈な建物。
これまでいろんなアーティストが展覧会やイベントを開き、ゲストルームにもたくさんの人たちが泊まった。
もと動物病院(今は亡きお父さんが医師だった)の手術室は、タイルも壁も昔のままを活かし、空色(真喜子さんはオペレーション・ブルーと呼んでいる)に塗られている。
ゲストルームの壁もオペレーション・ブルーだし、ベッドのシーツも空色と白の水玉。
バスルームは白タイルにひとつだけ柄のタイルがはまっていて、ポーランドとか、ロシアとか、北欧かどこかのホテルみたい。
シャンプーもどこかの国のもので、髪にやさしく、若草みたいないい香りがした。
真喜子さんの台所は、見た目は日本の懐かしい造りなのだけど、やっぱり外国みたい。
珍しいスパイスが棚や引き出しのあちこちに隠れていて、調味料も鍋もフライパンも本格的なものが何でも揃っている。
物がいっぱいに溢れ、混沌としている(真喜子さんごめんなさい!)台所のおかげで、私はどんな場面でも、そこにあるものを駆使し、即興でおいしい料理を作れるように鍛えられた。
これまで隠れていた、もうひとつの料理の眼が開いたような気がする。
「オペレーション・テーブル」に刺激され、体のなかからずるずるどーーっと出てきたみたい。
夜ごはんは、スパイシー手羽先(新幹線で帰る前に、小倉駅の地下スーパーで買った。手羽先は平らに開いてある)のフライパン焼き、キムチ雑炊(鍋焼きうどんのスープを水で薄め、冷やご飯、卵、溶けるチーズ)ゆで絹さや(大根おろしのせ)。

●2020年1月30日(木)快晴

9時半まで寝ていた。
まだ眠れる、まだ眠れると思いながら。
カーテンを開けると、白銀に光る海。
太陽はもうずいぶん上。
青空に雲がぽかんと浮かんでいる。
北九州の旅からは、おとついの夜に帰ってきた。
中野さんは1泊し、きのうの朝10時ごろに家を出てタクシーで坂を下り、新開地の駅までお見送りした。
本当に、楽しい楽しい1週間の合宿だった。
毎日、いろんなところでいろんなことが起こり、歓びを感じるだけでいっぱいで、どんどん日が過ぎ去っていった。
なんだか毎日が、境目なく続いている感じがずっとしていた。
楽しくてたまらない長い一日を過ごしているみたいに。
真喜子さん(「オペレーション・テーブル」のオーナー)の台所や、中野さんの絵の展示会場のテーブル(ステンレスの手術台)で、朝、昼、晩(ときどき朝と昼が一緒になったけど)とみんなでごはんを食べ、コーヒーを飲み、夕方になると食事の支度をしながらワインを呑みはじめ、お風呂に入り、寝て起きて、1日1日を過ごしていたはずなのに。
展示会場には、歴代のサーカス団員の絵がぎっしり飾られていて、私たち5人もその仲間の団員のようだった(団長は真喜子さん)。

そんなわけで日記がちっとも書けませんでした。
ホームページを開いてくださった方、ごめんなさい。
これから少しずつ、北九州で何をしていたか書いていこうと思います。

今日からやっと、神戸に戻ってきたような気がするので、いつもの仕事に向かおうと思う。
まずは「SとN」のゲラ校正から。
終わったら、また料理本のテキストに向かうつもり。
それにしても海が青いな。
夕方5時過ぎ、オレンジと青が混ざったような不思議な色が部屋まで入っていきた。
外を見ると、まっぷたつに分かれた空。
霧のような雨が、西の方角だけに降っている。
右はオレンジ、左は青。
青の方角に首をまわすと、そこには大きな虹が出ていた。
虹は海から上っているように見える。
雨雲がゆっくりと、青の方に流れていき、靄が晴れた。
すると、海から翼が現れた。
真っ白な雲が、海から立ち上っている。
あそこだけお天気雨が降っているんだろうか。
西を見ると、夕陽の照り返しで、オレンジに縁取られた貨物列車の雲が連なっている。
あんまりでっかい景色なので、写真を撮った。
夜ごはんは、キムチ味の鍋焼きうどん(小倉駅地下のスーパーで買った。豚肉、白菜、キャベツ、人参、ニラ入り。卵を落とし、半端に残っていた溶けるチーズを加えた)、塩むすび。

●2020年1月18日(土)快晴

7時に起き、カーテンを開けた。
今朝は濃い雲がかかって、陽の出を見ることができなかった。
でも、雲の下には濃厚なオレンジの帯。
空の雲にも、そのオレンジが反射している。
窓を開け、ベッドに寝そべったまましばらく眺めていた。
眩しい朝だ。
洗濯物がよく乾きそうなので、タオルケットを洗った。
きのうは朝のうちに病院にいってきた。
もしかすると、アレルギーが関係している咳ぜんそくの気があるかもしれないとのこと。
今は、私のような人がとても多いのだそう。
今年の冬は温暖で秋のようだから、花粉を飛ばす植物が枯れずにそのままあるせいではないかと先生がおっしゃっていた。
新しい薬をもらって帰ってきた。
おかげでゆうべは、それほど咳が出なかった。
今日もまた、料理本のテキスト書き。
これまで見えなかったものが、少しずつ、少しずつ、やればやるほど見えてくる。
点と点がつながって、線路のようなものが見えてきた。
それがおもしろくてたまらない。
去年の撮影の前の日に、立花くんがメールでくださった言葉がある。
「まだ先が見えない暗闇のなかでの動きになるかと思いますが、よい光がさしてくるはずなので信じて進みましょう。不安ですが楽しみもあります」
載せる料理が何になるかも、どんな文を書くかも、台割も何も決まっていない。
ゴールを決めると、出てくるものも出てこなくなるので、何も決めずにただその日のお天気を感じ、作りたい料理をこしらえ、次々撮影していただいた。
赤澤さんは私の口からこぼれる言葉を逃さずメモし、斎藤くんは目に映るすべてを写真に撮り、立花くんは遠くから何かを見通していた。
うん。
立花くん。
私、少し光が見えてきたかもしれない。
迷いながらなので遅々として進まず、まだまだだけど。
明日もがんばろう。
夜ごはんは、ハマチの塩焼き(ゆうべの残り)と焼き椎茸のおろし煮、かぶの葉と豚こま肉の炒め物、ご飯、干し大根の甘酢漬け。

●2020年1月16日(木)曇りときどき晴れ

さっき、いつもの神社まで中野さんをお見送りし、坂を上っていたら、「LUCA (今日子ちゃんに教わった六甲の洋服屋さん)」の店主にばったりお会いした。
「姫路から送られてきた大根と柑橘を、もらってください」とおっしゃる。
マンションの外で待っていたら、長ねぎと、葉っぱがゆさゆさの太った大根、姫柑、紅はっさくを紙袋に詰めて持ってきてくださった。
嬉しくも重たい紙袋を抱え、えっさえっさと坂を上って帰ってきた。
すぐに、料理本のテキストをやりはじめる。
赤澤さんから最後の撮影のメモが届いたので、ちょうどいいタイミング。
点と点がつながって、線路のようなものが見えてきた。
気が散ると台所に立ち、いただいた長ねぎを刻んでごま油でねっとり炒めてみた。
塩をひとふりだけ。
ねぎの油蒸し炒めというところだろうか。
ビンに詰めて、北九州に持っていこうと思って。
調味料として何かと使えそう。
大根に包丁を入れると、みずみずしくて驚いた。
大根を下ゆでした煮汁までおいしいので、半分残し、そこに昆布だしを加えて油揚げと薄味に煮た。
きのう今日子ちゃんがイギリスから帰ってきたから、「MORIS」に持っていってあげようと思って。
残りの1本の半分は、いちょう切りにしてざるに広げて2階に干した。
ここ何日か、いろいろな楽しいことがあった。
中野さんとの新作絵本の打ち合わせもぶじに終わり、宿題をいただいた。
風邪もずいぶん治った。
でも、明日はもういちど病院に行ってこようと思う。
北九州の旅までに、すっかり治しておきたいから。
ここでお知らせです。
北九州の八幡市にある「オペレーション・テーブル」というところで、中野さんは今”くちぶえサーカス”という展覧会をしているのだけど、友人の山福朱実さん&樹くん、私も加わってイベントをします。
朱実さんのツイッターに、詳しいことが書いてあります。
朱実さんのツイッター

「オペレーション・テーブル」はゲストルームもあるので、4人で合宿のように泊まり込む予定。
私と中野さんは21日(火)に神戸を出る。
夜ごはんは、大根と油揚げの薄味煮、九州とんこつラーメン(煮卵、ほうれん草、ねぎの油炒め)、かぶの塩もみ。

●2020年1月10日(金)快晴

きのう1泊だけして、中野さんは北九州に旅立った。
いよいよ明日から、「オペレーション・テーブル」で展覧会がはじまるので。
朝、私も一緒に坂を下り、お見送りがてら「コープさん」へ。
まっ青な空。
旅の空だ。
帰りはゆっくり足もとだけ見て、小股で坂を上った。
セーター一枚だったのに、春のようにあたたかく、しっとりと汗をかいた。
まだ少し咳は出るけれど、ずいぶん体が動くようになった。
風邪が治ったんだな。
帰ったら、りうからメールが届いていた。
午後いっぱいかかって返事を書き、送る。
夕方、りうから返事が届いた。
胸が苦しくなる。
また返事を書いて、送った。
夕闇に夜景のオレンジが瞬いている。
夜ごはんは、カラスガレイのみそ漬け焼き(かぶの厚切り焼き添え)、青じそふりかけのおにぎり(お昼の残り)、じゃがいものみそ汁。

●2020年1月1月7日(火)雨

ゆうべも咳でよく眠れなかった。
もしかしたら、気管支炎にかかっているかもしれないと思って。
それで、朝の受付時間に間に合うように、タクシーを呼んで病院に行ってきた。
ただの風邪だった。
薬をもらったから、もう大丈夫。
熱もないし。
帰ってきてすぐ、きのう作ったかぶの鍋蒸し煮の鍋に、カツレツに添えたゆでじゃがいもと人参、ささ身を加えてクリームシチューを作って食べた。
きっと私は、母の遺品の片つけや掃除を、がんばりすぎたんだと思う。
お正月は休むためにあるのに、ごちそうもいろいろ作って、ふだんよりうんと動いていたから。
今日は薬を飲んで、おとなしく寝ていよう。
静かな雨が降っている。
夜ごはんは、クリームシチュー(お昼の残り)、いちご。

●2020年1月6日(月)晴れ

7時半に起きた。
おとついもきのうも、咳でよく眠れなかった。
寝ようとすると気管が詰まって、息がしにくくなる。
枕を3つ重ねて上半身を斜めにし、膝を曲げると少しはいいので、その姿勢のまま目をつぶっていた。
うとうとしながら私は、新しい絵本の言葉を考えていた。
くり返し、くり返し。
まだ覚えていたので、朝起きてすぐに書き出した。
お昼ごはんを支度しながら外を見ると、窓いっぱいに海が光っている。
金色にさざ波立っている。
ああ私、やっと神戸に帰ってきた。
実際に帰ってきたのは、4日の夜。
お正月に私がやりたかったことは、みっちゃんの孫たちと遊ぶのと、母の遺品を片づけること。
主には衣類の片づけだ。
3日は姉とふたりでやったので、とてもはかどった。
2階の和室が母の衣装部屋になっているのだけど、タンスにも、衣装箱にも、バザーで買ったらしい見慣れない化繊の服がこれでもかと詰まっていた。
しかもたたまずに。
どうしてこんなにため込んでいたんだろう。
父が生きていたころには、もっとずっと質素で、お気に入りの同じ服ばかり着ていたのに。
母が介護ベッドで寝ていたころ、そのなかから私がホームに通う服を選んできて見せると、「ううん、それは首が苦しいからいや」とか、「派手すぎるからいや」とか、「肌ざわりがよくないの」とか言っていた。
多分、いちども袖を通したことのない服がほとんどだったんだと思う。
まだ着られそうなのはリサイクルのゴミ袋に。肌着やくつ下、スカーフ、手編みのマフラー、ハンカチはゴミ袋に。
けっきょく全部で20袋になった。
着られるかどうかも分からない服をため込んでは、また新しく買っていた母。
おしゃれをすることに憧れがあったんだろうか。
もしかしたら母には、何か充たされないものがあったのかな。
母の部屋はできるだけそのままにしておきたいので、目についたところだけ片づけた。
教会用(二カ所)、図書館用など、どこかに出かけるための手提げがいくつも分けてあり、ペン入れや室内履きがそれぞれに入っていた。
靴下の上に履く分厚い靴下や、ティッシュ、使いかけのマスクまで。
教会の手提げには、父の写真と私の若いころの写真が、賛美歌に挟まれていた。
本に書き込まれた棒線、押し花のしおり、おすすめ本の新聞の切り抜き。
割り箸が入っていた袋に、造花やシールが貼つけてあるのも大量に出てきた。
教会学校の子どもたちと作ったんだろうか。
うちわや花火のシールのもあったから、季節に合わせて食事会をしたときのをもらってきて、集めていたのかもしれない。
紙風船、バラの花のロウソク、カルタ、おはじき、ひ孫からの手書きのカード。
母の部屋は壁の上から下まで、うっすらと埃をかぶっていた。
私はマスクをして掃除機をかけながらやった。
呆れたり、ほろっとしたり、笑ったりしながら。
私の知らない母が、荷物のなかに見えてくる。
そこに生きていた母の、確かな記録。
遺品の片づけはおもしろい。
姉は、母の服をずいぶんもらって帰った。
私がもらってきたのは、教会のクリスマス会など外出のたびに着ていたウールの懐かしいワンピース。
ちょうど今の私くらいの歳に着ていたのかな。
どこも痛んでいないし、今の私に似合いそうだったので。
あと、クリスマスツリーの小さな飾りと、サンタがいるスノーボールも。
夜ごはんは、鶏ひき肉のカツレツ(粉ふきいも、ゆで人参)、かぶとかぶの葉の鍋蒸し、たくあん、昆布の薄味佃煮、ご飯。

●2020年1月1日(水)晴れのち曇り

あけまして、おめでとうございます……と、言っていいのかどうか分からない。
喪中なので。
でも母は、そういうことに頓着なかったから、いいんだと思う。
なんだか日記がまったく書けない。
自分の用事ではない、いろいろなことのために動くのが楽しくて。
買い物やごはんの支度をしたり、みっちゃんの孫たちと遊んだり。
その喜びといったら。
咳は出ているけど、わりかし元気だ。
帰省したのは30日。
大掃除をする気満々で帰ってきたのだけど、みっちゃんがすでにやってくれていた。
玄関も、台所も、お風呂場も。
二階の和室も、母がいたころよりずっと整理され、きれいになっていて驚いた。
リビングの祭壇には母の遺影が飾ってあった。
まだ、髪を染めていたころの母。
おしゃれして、にっこり笑っている。
写真というのはやっぱりすごいな。
母がそこに座っているような気がして、何度も振り返ってしまう。
きのうはお昼から、姉の家の餅つき大会に行った。
搗き立てのお餅をちぎり、大根おろしやきなこ、煮切った酒とだし醤油を合わせたタレにつけるのを手伝った。
とてもいいお天気で、眩しくてたまらないなか、庭先で炭焼きの鶏肉や魚(タイやマアジ。朝釣ったのだそう)の頭の塩焼きをつついたり、生ビールをごちそうになったり。子どもたちの成長に驚いたり。
洗い物を手伝って、3時くらいに帰ってきた。
夕方からは、みっちゃんの子供たちとの忘年会。
今年はミホ(次女)の家族と、リカ(長女)の夫の紳君が来られなかったので、リカと娘のリコ、生まれて3ヶ月のアンナちゃん。
ヒロキ(長男)と奥さんのヒロミさん、ユリ、サキ。
ごちそうは、豚の角煮(ゆで卵、にんにく、しょうが)、モツ煮込み(白モツ、コンニャク、大根、人参、ごぼう、豆腐)、 キャベツときゅうりの塩もみ(いりごま)、赤大根の柚子香漬け、たたきごぼう、ごまズケ(ブリ、サーモン、万能ねぎ)、ちらし寿司(自家製おぼろ、干し椎茸の甘辛煮、錦糸卵)、じゃがいものお焼き。
じゃがいものお焼きは、ヒロキに手伝ってもらいながら、子どもたちと作った。
丸ごとゆでたじゃがいもをすり鉢でつぶすのも、クリームチーズを加えて混ぜるのも、もうじき7歳になるユリはとてもうまくやる。
ころころ転がしておだんごにし、コロッケよりも薄くて小さい楕円形に丸めるのは、リコとサキもやりたがった。
リコは今年で3歳、サキは4歳。
小さい子でもなかなかうまいことできるもんだな。
手につかないのがいいみたい。
ふたりとも食べながらやっていた。
おいしいんだ!
これは新発見。
フライパンで焼いてあげたら、喜んで食べている。
ユリは「焼くとこ見たーい!」と言って、私にはりついていた。
いつか子どもたちを集め、「じゃがいものお焼き教室」をしてみたいな。
ゆうべは、なっちゃん(兄の長女)が姉の家に子どもたちを預け、忘年会に参加してくれたのも嬉しかった。
おばあちゃん(遺影)に会いにきた。
そのときだったかな、ヒロミさんがねずみの帽子をかぶった写真をスマホで撮ってくれた。
私もユリたちに混ざって唇をとがらせ、両手を顔の前で握り、「チュー」と言いながら。
そしたらなんと、遺影の母もねずみの帽子をかぶって映っていた。
ちょっと首をかしげ、笑っている。
スマホのこの写真は、実際よりもかなり若く映るので、私も20代くらいになっていた。
遅くなってからだけど、舞美(三女)が来れたのも嬉しかった。
紅白が終わり、「ゆく年くる年」を3人で見て、新年の挨拶をした。
私が寝たあとも、みっちゃんとふたりで積もる話をしたらしい。
今日は、夕方から紳君が来るので(リカたちは泊まった)、ヒロキの家族もまた遊びにくることになった。
ヒロキはきっと、男同士で呑みたいんだと思う。
今夜のごちそうは、帆立のお刺身、しめ鯖、ごまヅケ(細かく刻んで青じそとねぎを混ぜ、なめろうのようにしてみた)、数の子、なます(大根、人参、柚子)、たたきごぼう、赤大根の柚子香漬け、じゃがいものお焼き、大根煮(豚角の残りの煮汁で煮た)、モツ煮込み、ほうれん草のおひたし、鶏の塩焼き(フライパンで表裏を下焼きし、仕上げはグリルで。こうすると皮がパリパリに焼ける)、牛ステーキ(リカ作)、サラダ(リカ作)、炊き込みご飯(干し椎茸、鶏肉、人参)の予定。

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