2021年     めにうへ

●2021年12月31日(金)快晴

6時前に起きたらまだ真っ暗で、三日月が光っていた。
黒い影が丸く見える。
海も黒く、夜景が瞬いている。
今夜は、年越しの鐘の音(教会の)を聞きたいと思っているのに、こんなに早く起きてしまって大丈夫かな。
朝風呂に入りながら、お風呂場の掃除。
朝ごはんのあと、解凍しておいた黒豆で薄甘煮を作った。
お正月の花は、きのう「植物屋」さんでチューリップを2輪だけ買った。
緑や茜や薄紫が混ざった、オレンジ色の八重咲きチューリップ。
母と、一昨年亡くなった友人と、3人で新年を迎えようと思って。
朝見たら、1輪がしおれかけていた。
慌てて水切りし、窓辺に置いておいたら、葉がしゃんとして首もまっすぐ。
すごいなあ太陽は。
洗濯物を干しているとき、小雪が舞った。
海は白く輝いている。
さて、今日はスパイス棚と、リビング側の食器棚の掃除をしよう。
Pタイルの床にワックスも塗るつもり。
お雑煮のお汁(大根、里芋、白菜)と、ほうれん草もゆでておいた。
ひとりでもいそいそと、元旦の料理の支度をしている自分が可笑しい。
陽が沈むころに、屋上マラソン20周。
今は5時半。
西の空が真っ赤っか。
今年が終わりたくないみたいな夕焼けだ。
夜ごはんは、「紅白歌合戦」がはじまる前に。
春菊のごま和え、大根の紀ノ川漬け(ヒトミさんに教わったレシピで作ってみた)、蓮根の天ぷら、ごぼうのかき揚げ、かけ蕎麦(ねぎ、柚子皮)。
去年の日記を読み返してみたら、ゆでてあるお蕎麦と海老の天ぷらをスーパーで買ってきて、天ぷら蕎麦にしていた。
今年は生蕎麦をゆで、天ぷらも自分で揚げた。
かけ蕎麦にして、別々に食べた。

●2021年12月30日(木)曇りがちの晴れ

ぼんやりとした晴れ。
すべてが白い光に包まれている。
海の光っているところは、太陽が差すとパ――ッと銀色になる。 
寒いけれど、窓を開けている。
海は浅く、見渡す限り平ら。
なんか、厳かな感じのする景色。
静かな静かな年末。
そして、きのうも今日も、フォーレの「レクイエム」と「ラシーヌ讃歌」のCDを繰り返しかけている。
景色にぴったりなので。
今日は買い物に出ようと思う。
お正月にお餅くらいは食べたいから。
「MORIS」にも年末のご挨拶にいこう。
あと、「植物屋」さんでお花も買ってこよう。
夜ごはんは、ロールキャベツのグラタン(お麩を加えた)、春菊のごま和え風サラダ。

●2021年12月28日(火)

きのうの夕方、六甲に帰ってきた。
中野さん宅はとても寒く、子どものころの冬休みを思い出した。
帰りの神戸電鉄の中も、換気のために窓を少し開けてあって肌寒く、鈴蘭台ではホームにうっすら粉雪が積もっていた。
六甲駅も今にも雪が降り出しそうで、みなコートの衿を立てて足早に歩いていたけれど、うちに帰ってきたら暖かかった。
セントラル・ヒーティングの威力はすごいな(建物自体が暖かいのです)。
あと、帰ってきたら、柱時計が壊れていた。
ネジを巻いて、傾かないように気をつけても、振り子が自然に止まってしまう。
何度試してみてもだめ。
どこかに引っかかっているみたい。
ここで6年以上も働き続けてきたのだから、そろそろメンテナンスの時期なのかもしれない。
中野さんの家でのクリスマスは、今年もとっても楽しかった。
お姉さんたちの寝室に泊めてもらっていたので、隣で寝ているユウトク君、ソウリン君と、起き抜けにふざけ合ったり。
夕飯を食べてから、庭にできた小屋(中野さん、お義兄さん、ユウトク君が廃材で建てた。広さは1畳くらいだろうか。かしこまれば大人が3人、子どもがふたり、ぎゅうぎゅうで入れる)で星空を眺めたり、ユウトク君と冬休みの宿題をしたり。
ここからは、メモをしておいた3泊分の日記を書きます。

・12月24日(金)
新開地駅を9時52分発の神戸電鉄。
山の中を走り抜けてゆく。
神戸電鉄の駅は、前からいい名前が多いなあと思っていたのだけど、野や山、植物や鳥の名前が多い。
緑が丘、鈴蘭台、ひよどりごえ、三木、樫山、おしべ谷、小野……。
11時ころに到着。
家に入る前に、小屋に入ってみた。
中に入るとしーんとする。
なんだかお茶室みたい。
入り口が小さいところや、靴をそろえて入るところとか。
金曜日は子どもたちのスイミング・スクール。
そして、中野家の金曜はカレーの日なので、みんなが出掛けている間に私が作った。
デミグラスソース入り(冷凍しておいたのを持ってきた)。
大根がたくさんあったので、面取りをして加えてみた。
ルウを入れる前まで作っておいて、中野さんとスイミングを見学にいく。
夜ごはんは、カレーライス(牛こま切れ肉、大根、人参、じゃが芋、茹でブロッコリー添え)。

・12月25日(土)
6時半に起きた。
着替えていたら太陽が昇ってきたので、ユウトク君、ソウリン君と3人で朝の散歩。
あぜ道の植物は、霜で覆われて白くなっていたのが溶けはじめ、ぴかぴかしていた。
ハーッとすると白い息が出る。
寒いけど、気持いい。
あぜ道をぐんぐん歩き、早歩きしたり、走ったりの競争。
ユウトク君は用水路で立ち止まり、覗き込む。
「水、きれいで。前はここに、大きい魚がいたんで」
帰ってから朝ごはんを食べ、かるたをした。
ソウリン君がいちばん強い。
幼稚園の年長さんなのだけど、字が読めるみたい(と思ったら、絵と言葉を暗記しているらしい)。
2回目からは、私もけっこう取った。
お姉さんと買い物(「道の駅」みたいなところで野菜と生ガキ、甲イカ。肉屋さんで鶏の骨つきもも肉。スーパーで手羽先、海老)。
クリスマスのごちそうは、蒸しガキ(殻つき)、鶏のもも焼き(ひとり1本ずつ! にんにく入り甘辛ダレ)、ミニ南瓜の丸ごとグラタン(海老、マカロニ、ホワイトソース、チーズ)、クリスマスケーキ2種。
食後にプレゼント交換。
お姉さんから、オリーブ色の麻のエプロンをいただいた!
私からのプレゼントは、大人たちは冬の靴下、ユウトク君とソウリン君には、手編みの羊飼いのチョッキ。
中野さんは、お姉さんたちの家族に大きな絵を贈った。
朝焼けの空のもと、馬に乗ったユウトク君とソウリン君は、赤と白の羊飼いのチョッキを着て前に進んでいる。
最後に、ユウトク君から「ふくう食堂」の木の看板。
ソウリン君からは、サンタさんにもらったお菓子袋の中から、お菓子をふたつくれた(あとでお姉さんに聞いたのだけど、自分がいちばん好きなお菓子だそう)。

・12月26日(日)
朝、9時に出てドライブ(子どもたちと中野さんと4人で)。
西脇の「へそ公園」へ行った。
着いたときには誰もいなくて、小雪が舞っていた。
広々した外の遊具で思い切り遊ぶ。
長い石段を上って、くねくねロールすべり台(ちょっとしたジェットコースター。2回やった)。
アリ地獄(スケートボードができそうな、コンクリートの斜面)と、そのあとでロッククライミング。
子どもたちも中野さんも何でもなく上る。
私だけどうしても上れない。
諦めずに、ものすごく頑張って、ようやく上れた。
「うんてい」に挑戦したら、まったくできなかった。
子どものころには得意だったのに。
「へそ公園」から山道を散歩し、また戻ってきて、地図を見ながら「かもめ食堂」までドライブした。
空と山と川、田畑に囲まれた新しいお店。
新しい住い。
やっさんも律ちゃんも、六甲にいるときよりも生き生きとして、頬っぺたがつやつやで、とても元気そうだった。
帰ってきて、お昼ごはんのあと、ユウトク君と小屋で宿題。
書き取り、国語、引き算。
「寒い」という漢字、私はいつも点々の向きを間違えて逆方向に書いてしまうのだけど、「冬と同じやで」教わった。
小屋の外ではソウリン君が、中野さんに教わりながら板を切って、工作をしている。
3時くらいから、夕飯の支度(お姉さんとお義兄さんは掃除)。
今夜は串カツ。
海老のカラを剥くのをユウトク君が手伝ってくれた。
サラダと卵焼きもひとりで作った。
ミニカボチャのグラタンの残りを細かく刻んで、バターで炒め煮し、うらごし。スープの素を加えてポタージュを作った。
うらごしのざるに残ったペースト状のものに、じゃがいものマッシュを加えてまん丸なミニコロッケに。
掃除を終えて帰ってきたお姉さんと、どんどん衣をまぶしていった。
揚げるのはお姉さん。
中野さんが特製ソースを作った。
串カツ(海老、甲イカ、椎茸、ソーセージ)、ミニコロッケ、鶏のチューリップ唐揚げ(きのうのうちに、手羽先をお姉さんとチューリップ型にしておいた。山椒塩をつけて食べるのが人気だった)、ご飯、明太子、焼き海苔、大根の紀ノ川漬け(ヒトミさんにいただいた)。
夜ごはんのあと、みんなで小屋に入って星を見た。
お霧兄さんにコーヒーを持っていってあげ、今は、お風呂の順番を待っているところ。

●2021年12月24日(金)晴れ

6時に起きた。
7時10分くらいに陽の出。
靄の中から出てきた太陽は、オレンジ色のゼリーのよう。
ひと目見たらささっと起きて、お風呂に入り、朝ごはんを食べながら朝ドラを見た。
るいが大人になって、道頓堀のクリーニング屋さんで住み込みしながら働くことになった。
おもしろくなってきたぞー!
今日はこれから中野さんの家へ。
クリスマスをご家族と過ごす予定。
おみやげに、いつものパン屋さんで白パンをたくさん買った。
このパンに、クリームチーズとバナナをはさんで食べるのが最高。

●2021年12月22日(水)曇り一時晴れ

6時に起きた。
外はまだ真っ暗。
海も空も黒い。
夜景が瞬いている。
コーヒーをいれて戻ってきたら、空に色がつきはじめていた。
上空は青。
下から灰紫、紫、茜、オレンジ、黄色、クリーム色、白、水色、そして青へと続く。
メモしておこうと思って、ペンを取りに下りて戻ってきたら、さっきとはもう違う。
色が溶けていきながら、明るくなってゆく。
そのあと、すべてが乳白色に包まれた。
太陽が出て、また雲にもぐって、もうういちど出てきたとき、海に映った。
金色の太陽がふたつある。
今日は冬至。
一年の間で、光の時間がいちばん短い日だ。
台所の大掃除の続き。
今日は棚の方をやる。
お昼ごろ、晴れてきた。
窓を開け、棚の上の器をどけて雑巾がけ。
ずいぶん埃がたまっていた。
午後には台所の床にワックスも塗った。
3時半に、屋上マラソン20周。
風がとても強く、ぴーぷーと笛のような音がした。
吹き飛ばされそうになった。
大きな風にもみくちゃにされながら走るのは、とっても気持よかった。
夜ごはんは、ロールキャベツ(きのう作った。おじちゃんのキャベツで)、オムレツ(トマトソース&チーズ入り)、白菜と春雨のサラダ(ハム、玉ねぎ)、ロールパン。
柚子(朱実ちゃんが送ってくれた小粒)湯に入った。
そういえば今日は、お昼に南瓜を丸ごと蒸して食べたっけ。
アムたちが送ってくれたじゃがいもの箱に、小さな南瓜がふたつ入っていたから。

●2021年12月20日(月)晴れ

6時半に起きて、カーテンを開けた。
今年いちばんの寒さ……、な気がする。
雲が多い。
「今朝の大阪の陽の出は、7時です」とラジオで言っている。
空を見ながら、ベッドの上で編み物。
雲の上から顔を出したのは、7時12分。
とたんに部屋が暖かくなった。
眩しくて、もう編み物はできなくなった。
朝ごはんの前に、台所の大掃除をはじめてしまう。
まずはコンロの壁、タイルの壁、流しまわり、冷蔵庫の中は簡単に。
洗濯物を干し終わり、さあ、掃除の続きをやろう。
お掃除ソングは、樹くんの新しいCD「かもめ」。
海が金色で、眩しくて、窓の方を見ると目がくらむ。
リビングは普通の掃除をして、クリスマスの飾りつけをした。
今年はとっても地味。
姫白丁花の植木をツリーに見立て、3つだけ飾りをぶら下げたのと、アムとカトキチが送ってくれた、平沢の双子のモミの木の松ぼっくり。
母の祭壇に飾った。
4時くらいに屋上ランニング。
夕焼け空を見ながら、20周。
今日で3日目。
三日坊主になりませんように。
夜ごはんは、チャプチェ(椎茸、ほうれん草、蓮根、ニラ、玉ねぎ、牛コマ切れ肉)、ほうれん草のおひたし(柚子の絞り汁、薄口醤油)、メカブ納豆、味噌汁(大根、豆腐)、ご飯。

●2021年12月18日(土)晴れ

今朝の海は、きらきらちかちか。
風もなく、空気が澄んでいる。
なんだかとっても静かな日。
雨降りの日とはまた違う静けさ。
ぽっかり、ゆうゆうとした、元旦みたいな静けさだ。
中野さんはきのうの午前中に帰られた。
お見送りがてら私も坂を下りて、郵便局と「コープさん」に行ったので、しばらくは出掛けなくていい。
一緒に過ごしている間、教わりながら絵(蜂と柚子)を描いたのも楽しかったな。
あと、屋上に上り、ぐるぐると何周も走った。
私はすぐに運動不足になるから。
きのうは、樹くんがCDを送ってくれた。
台所の壁をぶち抜いてできた窓の、カンターのところでできた新曲の数々。
「このあいだ4人で遊んだ時の印象も入っていると思います」と、手紙に書いてあった。
手編みのチョッキをこの間送ったから、そのお礼なのだそう。
今日は、窓辺で編み物をしながら、CDをエンドレスで聞いている。
陽射しが強く、窓を開けていてもぽっかぽか。
太陽の当たっているところがじりじりし、髪の毛の中まで暑いくらい。
夜ごはんは、白パンサンド(ハム&白菜サラダ、粒マスタード&チーズ)、くったり白菜スープ。
お風呂上がり、月がまん丸。
満月は明日だろうか。
今夜は、ひさしぶりに本を読もう。
今読んでいるのは、新訳の『ハイジ』。

●2021年12月15日(水)晴れ


6時くらいに目覚めた。
中野さんはもうとっくに起きて、下の窓辺で空を見ている。
私はまたベッドに戻り、寝そべったり、起き上がったり。
オレンジ、茜紫、白、水色、青のグラデーション。
まだ暗く、夜景が瞬いている。
そのあと全部が白い靄で覆われ、飽和状態のようになった。 
雲のひとつが茜色に輝きはじめ、じりじりと広がって、太陽が昇った。
真下の海は茜色が混ざった金。
このひと月、中野さんは4時か4時半に起きて、空を見ていたのだそう。
だんだん色が変わっていく空を見ていたら、夕暮れとどこが違うんだろうと思ったんだそう。
そういう絵を描いていたとのこと。
きのう、そんな話をしていた。
今朝は、三宮で加奈子ちゃんと打ち合わせがあるので、9時過ぎに出掛けた。
私は掃除をしたり、洗濯したり、メールのお返事をしたり。 「FARMSTAND」で待ち合わせ、おいしいランチを食べるつもり。
ちりめんじゃこと椎茸を買いたいし、亜由美さんから合鴨の羽根(ワークショップのときの)もいただける。
10月と11月は忙しかったけど、こんなにゆったりとした年末が迎えられることが、うれしい。
では、そろそろ出掛けよう。
夜ごはんは、チゲ鍋(月曜日の鍋の残りに、牡蠣、白菜、ニラ、豆腐を加えた。〆はうどん)。

●2021年12月12日(日)曇り

窓の外はぼんやりとした曇り。
起きたら10時だった。
わざと寝坊した。
きのうの「ケハレ」での、合鴨をさばいて食べるワークショップは、とてもいい会だった。
私の体はたぶん、たくさんのことを吸収したんだと思う。
あったことすべて、忘れたくないので、今日は、思い出しながら日記を書こうと思います。
苦手な方は、読まないようにお願いします。

「うちのにわ」の辰ちゃん(真下辰一さん)が生まれたのは奈良の田舎で、家で飼っているニワトリを、子どものころから自分でしめていたんだそう。
はじめる前に、「僕は、生きてるところからします。僕の合鴨のさばき方は、おいしく食べるやり方です」と挨拶をした。
「まず、お湯を沸かしておきます。鴨の首の頸静脈を切ると、出血多量で亡くなるので、そうしたら熱湯の鍋に浸けて、羽をむしります」
道具は、よく研いだ刃先の尖った小振りの包丁と、赤いお椀(血が入ったとき、みんなをびっくりさせないように、赤にしたのだそう)だけ。
辰ちゃんはまず、雄の鴨からはじめた。
「ごめんな」と言って、鴨の体を左脇に挟んで抱き、左手で首をやさしくつかんで、指で目が隠れるようにした。
右手で首の羽を少しだけむしり取りながら、「脇をしっかりしめるのは、翼を動かして暴れんためやけど、苦しがるからあんまりぎゅっとしすぎんようにな。首の羽をむしるのは、刺す場所を間違わんようにするためと、あとで血も食べるので、血に羽が入らんようにするためです」
そのあとで、包丁の先を首にそっと刺し、小さな切り目を入れた。
鴨はみじろぎもせず、おとなしくしている。
声も出さない。
「鳴かないんですね」と誰かが聞いたら、「鳴かへんねん。目を隠してあげると、じっとしてる。ニワトリもそうや」
「鴨は何万キロも飛ぶ渡り鳥やから、しぶといねん。ちょっとやそっとでは、騒がへんねん」
首の切り口に指先をVの字に当て、そこから血がぽつぽつとお椀にしたたり落ちる。
ゆっくり、ゆっくり。
「鴨は、気を失ってるんやと思うねん」
辰ちゃんが包丁を入れた頸静脈というのは、頸動脈の上の方にある細い血管なのだそう。
頸動脈を切ると、大量の血がいちどに噴き出し、しめる方は楽だけど、辰ちゃんはそうしない。
途中から、生徒さんふたりが手を挙げて、首をひとり、体をひとりが抱え、手伝った。
体を抱えた生徒さん「心臓がトクトク動いています」「あたたかいです」
首を持った生徒さん「あ、痙攣してはる」
辰ちゃん「そうやろ。最期は体全部が波みたいに痙攣してなあ、それが何回か続いて、静かになって、亡くなるねん」
雄鴨はときどき翼を動かしていた。
私には、飛んでいる夢をみているみたいに見えた。
「亡くなるとな、瞳孔が開くねん」と辰ちゃんが言って、生徒さんたちは覗き込んでいたけれど、私は怖くて見られなかった。
次は雌の合鴨。
辰ちゃんが抱っこしたとき、雌はアーモンド型のとてもやさしい目をしていた。
また、頸静脈を差した。
血がお椀をめがけ、ぽた、ぽたと滴り落ちる。
途中から私も、辰ちゃんの格好の真似をして股を開き、脇と、腕と、太ももで抱かせてもらった。
雌鴨は羽を触ると温かく、大きさも、重さも、ちょうど猫を抱っこしているみたいだった。
痙攣が波のように連なって、だんだん静かになっていった。
雌鴨はなんだか、眠っているような感じがした。
そのあと、熱湯に浸け、取り出して羽根をむしった。
私も、小学4年生の男の子も手伝った。
熱くなかったので、ゴム手袋はせずに素手でむしった。
綺麗な羽根をみつけると、よけておいた。
「ケハレ」の幸江ちゃん(三宅康平くんの奥さん)が、顔の毛をむしり、くちばしの皮を指でこすってむいてくれた。
顔を半分に割って鴨鍋に入れると、だしが出ておいしいのだそう。
顔の毛がきれいに取れたとき、目の斜め上の方に、針金の先で開けたような小さな穴が空いていた。 「耳や、耳や!かわいいやろう?」と、辰ちゃんが言った。
羽根をすっかりむしって、裸になった鴨をまな板の上にのせ、こんどは肉の解体。
包丁の先でもものつけ根の皮に切り込みを入れ、内側から膜のようなものに切り目を入れたら、あとは手で引いてちぎるようにする。
「ニワトリと違ってな、鴨のもも肉はあんまり発達してないねん。歩かないからな。手羽も肉がついてないやろ?」
私「ほんとだ。じゃあ、どこを使って飛んでいるんですか?」
辰ちゃん「ここや、ここや、胸肉や」
本当に!
合鴨の胸は、黄色い脂肪のたっぷりついた皮と、赤い肉。
辰ちゃん「ニワトリは肉が白いけど、鴨は赤い筋肉や。何万キロも飛ぶ鳥やからな」
もも、ササミ、胸、ボンジリと、すべての肉を体からはがし取り、顔と首、あばら骨に囲まれた内臓だけになったとき、小学生の男の子は真上から顔を近づけ、じっと観察していた。
頭から首にかけて、食道と気管。お腹には心臓、砂肝、レバー、胆のう、卵(雄は精嚢)が、整然と収まっている。
「これをな、ひとつひとつ、あきらかにしていけばいいねん」
あばら骨の内側にペシャッと張りついている、赤ピンク色の網のようなのは肺なんだそう。
空気が入らないと肺は、ただの毛細血管の集まりなのだな。
辰ちゃんが雌鴨にかかりきっているので、私は雄の内臓を「あきらかにする」のを手伝った。
手つきをよく見て、真似をしようと思うのだけど、時間がかかりそうなので自分の感覚でやってみた。
膜のようなもの(スジだろうか?)に刃先で切れ目を入れ、ひとつひとつの内臓を手でしっかりとやさしく支え、順にはがし取る。
すべてが「あきらかに」なったら、台所に持っていって、こんどは水で流しながらきれいにする作業。
辰ちゃんは、食道や細い腸にまで包丁を差し込んで、平らに開き、水で洗ってきれいにしていた。
もつ煮込みにするのだそう。
コリッとした大きな玉のような砂肝は、半分に切ると、中に砂がぎっしり詰まっていた。
辰ちゃん「ニワトリもそうやねんけどな、鴨は歯がないから、食べたものをこの砂で細かくして消化すんねん」
私が手伝ったのはここまで。
肉を切り分けるのは、小学生の男の子のお母さんと辰ちゃんがやった。
そのあとで、鴨鍋を食べたのだ。
幸江ちゃんが昆布とにぼしでとった醤油味のだしに、鴨肉の脂が溶け出して、たまらなくおいしいスープになった。
そのスープで煮た葉野菜(白菜、春菊、ちんげん菜、小蕪の間引き菜)も、よく煮えた大きめに切った大根も葱も、みんな畑の野菜。
豆腐や餅巾着やマロニーも、スープを吸ってとてもおいしかった。
でも、肉は3切れ食べただけで、もう私は充分だった。
幸江ちゃんも、辰ちゃんの奥さんのむぎちゃんも、農家の奥さんたちはとても落ち着いて、当たり前のように手伝っていてかっこよかった。
むぎちゃんだったかが、「(生きていた鴨が)ある段階から、肉になんねんなー」と笑っていた。
いつから肉になるのか聞くのを忘れてしまったけれど……私は鴨が亡くなって、足を持ち上げたら硬くなっていたとき、肉として見はじめた気がする。
内臓の始末をしているときには、目の前の内臓と生きていた鴨とのつながりが、バッサリとなくなっていた。
はじめから「食べる」と決めていたので、感情を司る機能が働かなくなかったんだろうか。
でも、今朝私がどうしても起きられず、12時間近くも眠ったままだったのは、目や鼻や肌を通してたくさんのことを理解し、消化するのに必要な時間だったんだと思う。
そして、もうひとつ気づいたのは、写真を撮らずにじっと見たり、見ながら図を書いたりすると、目の奥に焼きついて忘れないみたい。
私は、辰ちゃんが合鴨を抱きながら首に刃先を差し、やさしく傷口に指を添え、血をしたたらせていた姿をずっと忘れないと思う。
あんなふうにさばけばいいのだったら、私にもいつか、できるかもしれないと思ったもの。
辰ちゃんのやさしいさばき方を見せてもらえて、本当によかった。
経験の伴った、厚みのある言葉が聞けて、本当にうれしかった。
もつ煮込みは生姜をきかせて、コンニャクと甘辛く煮てあり、兵庫のすじコンの味だった。
おいしかったのだけど、私はほとんど食べられなかった。
行きも帰りも一緒だった枝ちゃん(私の娘くらいに若くて可愛らしい女の子)は、腸も食道もぜんぶ食べたそうで、「コリコリしておいしかったです」と言っていた。
枝ちゃんが帰りのバスの中で、「鴨は、悟っているように見えました」とぽつりと言った。
私もそう思った。
あの雌鴨のやさしい目は、そういう目つきだったから。

長くなりました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
今日は、この日記を書いているうちに一日が終わってしまった。
夜ごはんは、カレー(いつぞやの大根カレーに、焼き蓮根と牛乳を加えた)。

●2021年12月11日(土)曇りのち晴れ

6時半にスッと起きられた。
カーテンの隙間の薄明かりで、目覚められるようになった。
いつもみたいにラジオを聞きながら、ベッドの上でだんだん起き、ニュースが終わったころに起き上がった。
今朝は曇り。
朝のうちはずっと、「なんでこんなに白いんだろ」というくらいに、窓の外はどこもかしこも白に包まれていた。
でも、お昼前から晴れてきた。
靄だったんだろか。
今日は、淡河の農家民宿「ケハレ」へ行く。
合鴨をさばいて食べる、「うちのにわ」の辰ちゃんのワークショップだ。
2時に三宮駅の広場で待っていたら、亜由美さんが車で連れていってくださる。
お昼ごはんは、カレー(明石のおじちゃんの大根でカレーを作り、牛肉とブロッコリーの炒めものを加えた。トマトと蒸したブロッコリー入り)&サフランライス。
サフランライス(「うちのにわ」のサフランを使った)がとてもおいしく炊けたので、小さいおにぎりにして持っていこうと思う。
夜ごはんは「ケハレ」にて。
合鴨鍋(大根、長ねぎ、白菜、春菊、ちんげん菜、小蕪の間引き菜、豆腐、餅巾着、マロニー)、きく芋入りの白和え、古漬けたくあんとじゃこのきんぴら、大根葉の塩麹和え、デザートは古代米の甘酒で作ったブラマンジェ。
帰りはバスで、10時過ぎに家に着いた。
ああ、とても楽しかった。
「ケハレ」の幸江ちゃんにいただいた野菜の始末をし、お風呂に入って、すぐに寝る。

●2021年12月7日(火)雨

広島が楽しくて、楽しくて。
たくさんのことがあったのだけど、なんだか日記に書けないや。
でも、ひとつだけ書こう。
斎藤くんの動画が、とてつもなかった!
「リーダンディート」の小部屋に入って、展示された写真を眺め、そのあとiPadの小さな画面の前に立っているうちに、眩しくて、儚くて、ほろほろと涙がこぼれた。
六甲の私の家での、ある冬の日から、翌年の初冬まで。
斎藤くんは、自分の撮った1万枚あまりの写真をつなげただけだと言うのだけれど。
あまりに枚数が多いので、1枚1枚がコマ送りのようになって、ぎくしゃくと動作がつみ重なり、突然に途切れ、またつながったり。
まるで古(いにしえ)の誰か無名の人が撮った、無声映画のようだった。
その映画の中には、かつて生きていた人たちが、光に包まれて、笑ったり、ものごとに向かったりしている。
でもそれはもう過去のことで、失われてしまった時間。
けれども、今見ている画面の向こうの窓には光が溢れ、車が行き交い、人が歩き、生きている。
そしてそこは、かつて原爆が落とされた広島で、相生橋の近くで。
私は「リーダンディート」に来る前に、光が反射する川面を、橋の上から見下ろしたのだ。
斎藤くんの動画は、いろいろなものごとを大きく、広く、超えていた。
あんなの、はじめて見た。
『自炊。何にしようか』の本とか、高山なおみとか、誰が料理を作って誰が撮ったのかも超え、人が手を使って料理して、食べること。毎日、毎日食べること。
そういう、生きものとして、どうしようもないところ。
大きくは全人類の、人間礼賛のようなものが映って見えた。
だから涙が出たんだと思う。

きのうは疲れが出て、3時まで寝ていた。
傷を恢復させる動物みたいに、ぐっすり眠った。
今朝からようやく、ここに帰ってきた感じがする。
静かに降り注ぐ雨、窓の外は真っ白。
いつまでもいつまでも。
たまっていたメールのお返事をしたり、「毎日のことこと」の校正をしたり。
午前中に、明石のおじちゃんから、畑の野菜(趣味でやっているとのこと)が届いた。
キャベツ、大根、大根の葉、白菜、里芋、さつま芋、赤い皮のじゃが芋。
どれもとても立派。
新聞紙で包み直し、玄関の涼しいところに置いた。
りうが送ってくれたレンコンで、お昼にきんぴらも作った。
ほんのりした塩味で、柚子の皮入り。
フライパンに張りついた焼き目も香ばしく、もちもちとした甘みが、とてもおいしい。
おじちゃんの大根葉は、ちりめんじゃこと薄味に炒めた。
おいしいな。
私は連日の呑み過ぎで、少しお腹を壊している。
午後は『帰ってきた 日々ごはん⑩』の、最後の校正。
夕暮れどき、外が不思議な色になっていた。
青と茜色と紫のグラデーション。
雨に濡れた赤や黄色の葉っぱが、きらめいている。
そしてまた、カラスの集会が今日もはじまった。
ああ、本当に私、六甲に帰ってきたのだな。
夜ごはんは、牛肉とブロッコリーの炒め物、スープ(いつぞやの残り・人参、セロリ、ワカメ、溶き卵)、ご飯(ゆかり)。

●2021年12月3日(金)晴れ

6時半に起きた。
今朝の陽の出は燃えるようで、オレンジピンクの強烈な光。
部屋の中までオレンジ色に染まった。
私は元気。
「毎日のことこと」を書上げたから。
あとは明日、広島へ出掛ける支度をゆっくりすればいいだけだから。
めずらしくコーヒーをいれて戻ってきて、朝陽を浴びながらしばし編み物をした。
山梨で地震のニュース。
スイセイは大丈夫かな。
そして9時半ごろ、神戸でも揺れた。
和歌山で大きな地震があったらしい。
息災を祈ります。
なんとなく心もとないけれど、午後から私は、携帯電話を新しくすることで六甲道と三宮に出掛ける予定。
夜ごはんは、ホッケの干物(ゆうべの残り)、白菜の鍋蒸し煮(ゆうべの残り)、鶏のレモン甘酢和え(「愛蓮」のお総菜)、スープ(人参、セロリ、ワカメ、溶き卵)、ご飯。
私は今日、スマホデビューをした。
小さめで薄い、黒の「iPhone」。
お風呂から上がって気がついた。
今日は1、2、3の日だ!
明日は広島だから、早く寝なければと思うのだけど、うちに「iPhone」があると思うと、なんかどきどきする。

●2021年12月2日(木)快晴

陽の出前に起きた。
カーテンを開けると、オレンジと水色のだんだら。
まだ暗い空に、三日月が光っている。
光っていないところ(地球の影?)も、黒く丸く、くっきりと見えた。
だんだんに空が明るんでくると、月は白く細くなっていった。
しばらくして、大きな太陽のお出まし。
雲に隠れていた月がまた現れ、糸のように細くなってからもなお、青い空にとどまっている。
私はベッドに寝たまま、月が空に消えていくまで見ていた。
ラジオを聞きながら。
朝ごはんを食べ、洗濯ものを干し……今は、海の真っ正面がきらっきら。
あんまり陽が当たるので、リビングの白いカーテンを窓半分2重にした。
それでもぽかぽかとして、暑いくらい。
さあ、きのうの続きの「毎日のことこと」を書こう。
3時には書き上げ、さっきお送りしたところ。
太陽が傾くと、とたんに冷え冷えとする。
そういば、このところ寝る前に読んでいる本がとてもおもしろい。
『植物と叡智の守り人』ロビン・ウォール・キマラー著。
ネイティブアメリカンの植物学者の女性のエッセイで、翻訳もとてもいい。
ゆうべ読んでいたのは、オノンダガ族に伝わる「すべてのものに先立つ言葉」。
お祈りのような、歌のような感謝のことばは……地球・水・水の中に住む魚・植物・ベリー・畑の作物・薬草・樹木・動物・鳥・風・雷のおじいさん・お兄さんの太陽と続き、月のおばあさんへと続く。
「心をひとつにして、夜空を照らす月のおばあさんに感謝します。世界中の女たちを導く月のおばあさんは、潮の満ち引きを起こします。満ち欠けするその顔で時の流れを知らせ、生まれてくる子どもたちを見守ってくれます。たくさんの感謝をひとつに集めて、グランマザーに見えるよう、よろこびとともに夜空に高く投げ上げましょう」
この月のおばあさんのところが、暗唱したいくらいに好きだ。
夜ごはんは、ホッケの干物、白菜の鍋蒸し煮(ちりめんじゃこ、柚子皮)、ワカメ(ポン酢醤油)、納豆(卵、ねぎ、かつお節)、みそ汁(かぶの葉、ワカメ、豆腐、ねぎ)、ご飯。

●2021年11月27日(土)晴れたり曇ったり

今、テレビの撮影をしている。
めっちゃ楽しい。
「ファーマーズ・マーケット」では、お天気雨が降った。
風がとても強く、寒くて。でも、風がなくなって晴れ間が出ると、ぽかぽかと暖かくて。
晴れたり曇ったりのめまぐるしいお天気。
空気は澄み渡り、景色がくっきりと見え、移動中に大きな虹も出た。
今は、『高山なおみの神戸だより 海の見える小さな台所から』の続編の撮影中。
濱田さんにいっぱい撮っていただいている。
夜ごはんはなし。

●2021年11月25日(木)晴れ

今朝の太陽の下は、金の細い帯だった。
お風呂から上がって戻ってきたら、こんどは金のまん丸い玉ができていた。
雲の穴から差す光がそのまま海に映るのだから、スポットライトと同じこと。
朝方はずいぶん冷えていたけれど、どんどん暖かくなってきた。
中野さんが来た日(月曜日、三宮で打ち合わせがあったのだそう)は雨だったのだけど、翌日から急に寒くなり、冬の光がもうひとまわり濃くなった。
驚くような海の光。
照り返しに目を細めながら見た。
さんざめく光。
帰る前の日、中野さんはリビングの壁に貼ってあるベニア板に大きな絵を描いた。
朝見ると朝の景色のように見え、夕方に見ると、夕方の景色に見えるような絵。
きのうは、お見送りがてら六甲道まで歩き、靴下を買いに住吉まで行ったり、美容院に行ったり。
帰ってきてすぐに、宿題をやった。
今日は、午後から「HERS」の取材で、鈴木さんと宮下さんがいらっしゃる。
東京からはじめてのカメラマンさんもいらっしゃる。
裏山の紅葉が見事なので、屋上にもご案内するつもり。
それまで集中して、宿題の続きを進めよう。
これは、「14歳の世渡り術」シリーズの中の1冊への寄稿文。
中学生に送る手紙のようなつもりで書いている。
だからか、このところ私は、自分の子どものころのことをよく思い出す。
夢にも出てくる。
あさってからテレビの撮影なので、なんとなくそのための支度もしているみたい。
撮影前の禊(みそぎ)というか、儀式というか……、ぴったりくる言葉はないのだけれど、ひとりだけの心の巣に戻っていく感じ。
そしてひとつ、またひとつと、頭の中に浮かんでくることを、そのままにしている。
立花くんたちとの料理本の、撮影の前と同じだ。
12月4日(土)のトークイベントでは、『自炊。何にしようか』の制作風景の動画を流す予定だそうです。
立花くんが撮影、編集をしたショートムービー。
自分のことは置いといて、立花くんの口からどんな言葉が飛び出すのか、楽しみでなりません。
何度も書いてしまいますが、オンラインでの参加もできるようですので、ぜひご応募ください。
そして、「リーダン・ディート」の展示会場では、斎藤圭吾くんの撮った映像も、会期中 ipadで常時流すんだそうです。
斎藤くんの動画!
楽しみだなあ。
夜ごはんは、かき卵うどん(ゆうべの残り)、セロリと牛肉のチャーハン、食後に京都の柿(宮下さんのお土産)。

●2021年11月21日(日)晴れのち曇り

このごろはとてもよく眠れる。
そして、おもしろい夢をいろいろみる。
目覚めてすぐに反芻すると、とても現実には起こりそうにない夢。
朝から『自炊。何にしようか』のサイン本作り。
お昼前に終わり、今ようやくお送りできた。
このところパタパタとしていて、ずいぶんお待たせしてしまった。
12月4日(土)の16時から、広島の「リーダンディート」という本屋さんで、立花文穂くんとトークをします。
立花くんとの対談は、『料理=高山なおみ』の刊行以来。
いったい、何を話せばいいんだろう。
どきどきするので、まだあまり考えないようにしている。
トークショーは30席なので、すでに満席だそうですが、オンラオンでも参加できるそうです。
立花くんとの対談など、めったにないことだと思いますので、ぜひ!
詳しくは「ちかごろの」をご覧ください。
「リーダンディート」では、『自炊。何にしようか』についての展示もされるそうです。
どんな本屋さんなのか、とても楽しみ。
そして当日は、赤澤さんや斎藤くんも駆けつけてくださるとのこと。
本屋さんのまわりも、あちこち散策してみたいな。
広島での小さな旅。
とても楽しみだ。
きのうは、『帰ってきた 日々ごはん⑩』のアルバムページや扉絵、三校の原稿など一式が届いた。
最後の大詰め。
集中していそしもう。
夜ごはんは、味噌ラーメン(セロリ、白菜、ゆで卵)、ブロッコリーサラダ(黒酢ドレッシング)の予定。

●2021年11月19日(金)晴れ

7時半に起きた。
寝坊した。
朝からベッドの上で編み物。
樹くんにプレゼントするチョッキを編んでいる。
羊飼いのチョッキ。
網戸のやぶれが気になり、管理人さんに伝えにゆくと、脚立とバケツを持ってすぐに来てくださった。
下の網戸のやぶれも伝える。
私はというと、上の階の方からいただいたクローゼットのひき出しをすべて出して、雑巾がけ。
ネジがゆるんでいるところを締め直したり、木目にオイルを塗り込んだり。
この間、朱実ちゃんの家で大工仕事をしていたときの、中野さんの手つきを思い出しながら、丁寧にやった。
管理人さんが、階段の踊り場まで運んでくださった。
とてもよく似合う。
網戸の方は、なかなか苦戦していらっしゃる。
とくに2階の窓のは、コーキングで直接貼りつけてあったらしく、30分くらいかかってようやくはずれた。
今の季節は蚊がいないし、蜂も入ってこないから、網戸はまた来年の春につけていただくことになった。
あちこち掃除機をかけ、絵や置物の配置も替え、きのうの続きの現金出納帳。
パソコンの表計算ソフトにも入力した。
夕暮れになり、カラスの集会。
そして、月食がはじまった。
暗い月。
右下が細く白く輝いている。
網戸がなくなったので、よく見える。
夜ごはんは、ビーツとじゃがいものサラダ(サワークリーム、マヨネーズ、ディル)、ケールのミルクスープ、白パン。
7時、月は下の方から光が戻ってきた。
今はお椀みたい。
というか、鈴カステラ。
中野さんも、夕方からちらちら、家族みんなで見ていたのだそう。
7時半、今は坊主の子ども。
ずいぶん満月に近づいてきた。
7時40分、球体の電気の笠。
暗いなか、木がぬめぬめと動いている。
さ、お風呂に入ってしまおう。

●2021年11月18日(木)曇りのち晴れ

今朝の太陽もでっかく、果物みたいだった。
陽の出は見えたのだけど、昇ってすぐに、上にあった雲に隠れてしまった。
お風呂から上がったら、厚い雲におおわれて床が冷たく、急に冬がやってきたみたいだったのだけど、朝ごはんを食べ終わるころに晴れ間が出てきた。
太陽が顔を出すと、とたんに暖かくなる。
今日は3時から「HARS」という雑誌のお打ち合わせ。
鈴木さんがいらして、東京の編集者さんと「ZOOM」打ち合わせだ。
それまで、現金出納帳をつけてしまおう。
夜ごはんは、鰯の塩焼き(オリーブオイルはかけなかったけれど、ポルトガル風のつもり)、トマトとビーツのスープ(ケールを加えた。ヨーグルトのクリーミーな部分をトッピング、ディル)、白パン。

●2021年11月17日(水)晴れ

6時過ぎに起きた。
カーテンを開けると、朝焼けの空。
水色と橙色のグラデーションがきれいで、明るくなるまで眺めていた。
窓を開けて。
ラジオからはバッハのコラール。
そのうちに陽の出。
大きなみかん色の太陽。
なんか、ジューシー(半透明なので)。
そのまま光を浴び、ニュースを聞いてから起きた。
ひさしぶりにあちこち掃除。
絨毯も出してきて、冬仕様にした。
さ、今日からまた『帰ってきた 日々ごはん⑩』のことに向かおう。
まず「おまけレシピ」の校正。
ぽかぽかと暖かい。
小春日和というよりも、春みたい。
海も街も白く霞んで、空との境目がない。
ぽわーんとした日。
まだ少しタンが絡まったりはするけれど、私は風邪が治ったのだな。
いつもだったらすぐに病院に行って、薬で治してしまうのだけど、熱が出たのは日曜日だったし、締め切り仕事もなかったので、消化のいいおじやを食べたり、蜂蜜湯を飲んだりしてひたすら寝ていた。
なんだか治り方がゆるやか。
体というのは予測不可能と、常々思っているのだけど、心当たりのある恢復の仕方だった。
今日は、「おまけレシピ」と「あとがき」の校正を終わらせ、現金出納帳の記入をした。 
9月の後半から休んでいたので、かなりひさしぶり。 
ひとまず9月いっぱいまで記入し、パソコンの入力も終えた。
明日は10月分をやるつもり。
夜ごはんは、麻婆茄子焼きそば、ほうれん草のじゃこ炒め。

ではここで、北九州の朱実ちゃんの家での日記を書きます。
11/10(水)
ゆうべの雨はものすごかった。
夜中に、ゴーーーッ、ガーーーーッという聞いたことのない音がして、地響きなのかな? と寝ぼけながら聞いていた。
電車が通り過ぎていくみたいな音。
でも、ちっとも怖くない。
音に抱かれているような安心感。
どうやら、雨だったみたい。
朝、コーヒーの匂いがしたので起きた。
下に下りると、樹くんがきのこを炒めていた。
コーヒーはフィルターにセットしてある。
「冷めちゃうから、みんなが起きてきてから淹れようと思って」と、朱実ちゃん。
若松にやってきてから、急に冬になったように寒い。
そしてこの家は、風通しをよくするために、あちこち窓を開け網戸にしてある。
私はスパッツをはき、靴下を2重に、首にはマフラー。
ずっと家にいるので、なんとなく山小屋にいるみたいな気持になる。
そして毎日、とても不思議な天気。
長いこと雨が降っていたかと思うと、パーッと光が差し、お天気雨になって、青空が広がり、そのうちまた暗くなる。
雨上がりの夕方、スーパーに買い出しにいった日には、教会の脇から大きな虹の柱が立った。
反対側の空は、赤茶色とどす黒い雲がうごめいていて、「怪獣が出てきそうな空」と朱実ちゃんが言った。
そのあと、私たちがスーパーに入っている間に、この世の終わりみたいな大雨が降ったそう(留守番をしていた中野さんが言っていた)。
月球儀(地球儀ではない)をはじめて見たのだけど、おもしろいな。
月も地球と同じように、海や入り江、土地の名前がついている。
詩の言葉のよう。
紙に書き出してみた。
湿りの海、雨の海、静かの海、氷の海、知られた海、雲の海、危難の海、泡の海、ゆたかの海、露の入り江。
イサーク、バロキワス、ヘリゴニウス、ケーニヒ、ファリエ……土地を発見した人の名前だろうか。
今日は、中野さんが先頭に立ち、台所の壁を四角くくり抜いている。
しばらく見学し、私はプリン(猫)と2階でお昼寝。
のこぎりの音や、板を打ちつける音が下から聞こえてくる。
なんか、落ち着く。
朱実ちゃんの本棚にあった、『ソーニャのめんどり』という絵本がとてもいい。
4時半くらいに、くり抜けた。
すごい!
窓ができた。
そのあとで、順番にお風呂。
私は、夕ごはんの支度。
今夜は、緑さんの主治医のゼチと、奥さんのマリリンがいらっしゃるので、気合いを入れた。
夜ごはんは、ごぼうのサラダ(すりごまたっぷり、マヨネーズ、辛子、マスタード)、アドボ風鶏手羽元の煮込み(八角、生姜、にんにく、ゆで卵)。長火鉢の炭で焼きながら食べたもの→ れんこん、ささ身の焼き鳥(樹くん担当)、ウインナーの串差し、ラム肉のカバブ(にんにく、玉ねぎのすりおろし、ちぎったローリエ、山椒塩、チリパウダー、クミンシード、コリアンダー、一味唐辛子)。
ラム肉は細かく切らずに、長いのをくねくねと差したのが、なんだか本格的だった。

●2021年11月16日(火)晴れ

7時半に起きた。
熱は、5度6分。
平熱に戻った。
まだ咳が出たり、タンが絡んだりするけれど、歯医者さんを予約しているので出掛けよう。
もしかしたら口を開け続けているのが辛いかもしれないし、先生に風邪をうつしてしまったら大変だから、受付で聞いてみて、無理そうだったら「コープさん」で買い物をして帰ってこようと思う。
青い海を見ながら、ゆらゆらと坂を降りた。
あちこちもうすっかり紅葉している。
黄色、黄土色、緑がかった黄土色、赤、赤茶……。
歩いている人は誰もいない。
秋の香ばしいいい匂いがする。
受付では、「鼻で息をするのが苦しいようでしたら、遠慮なさらずにおっしゃってくださいね」と、やさしく言われた。
歯石の除去をしてもらっているうちに、何だか元気になってきた。
それで、そのままバスに乗って、北野坂の「ファーム・スタンド」へ。
ディルの苗をくださった聖子ちゃんが、液体肥料を持ってお店に来ているそうなので。
けっきょく、亜由美さんとおいしいランチを食べ、野菜もいろいろ買って、ワインまで買って、海までドライブして、車で送っていただいた。
ちょっと粗療法だったけど、行ってきてよかったな。
海を見たら、風邪が退散してくれた。
帰ってすぐに、ビーツとじゃがいもを丸ごとゆで、夜ごはんの支度。
今日のカラスの集会は、いちばん数が多いような気がする。
ウワーーッとすごい数が飛んできたので、急いで2階に駆け上がるも、窓を通り過ぎてしまったあとだった。 
夜ごはんは、「ファーム・スタンド」で買ってきた野菜いろいろで、ケールのじゃこ炒め、椎茸焼いただけ、サフラン風味のごはん(冷やご飯をサフランミックススパイスで炒めた)、トマトとビーツのスープ(ソーセージ、椎茸、ディル)。
ケールは栄養のあるキャベツという感じで、気軽に使えそう。
こんど、焼きそばを作ってみよう。

●2021年11月14日(日)ぼんやりした晴れ

九州からはきのうの夕方に帰ってきた。
5泊6日の朱実ちゃん、樹くん、緑さんと過ごした日々、楽しいことがいっぱいあった。
中野さんはうちに1泊し、今朝帰られた。
私は、きのうからなんとなくどのがいがらっぽく、ゆうべ寝ているうちに完全に風邪っぴきとなる。
午後3時からのお打ち合わせを、キャンセルさせていただいた。
申しわけない。。
朝ごはんのおうどん(生姜をたっぷり擂り下ろし、薄いあんかけにした)を食べ、寝ているうちに熱が出てきた。
深くは眠れないし(多分興奮しているんだと思う)、まだ微熱なので、ベッドの上で編み物をして、また寝た。
起きたら、暮れかかった水色の空の真ん中に、白い月。
そのうちカラスの集会がはじまった。
熱は8度2分。
さ、ごはんを食べたらさっさと寝よう。
九州での日々のことは、1日だけ日記を書いた(走り書き)ので、元気になったらここに書きます。
このたびは、猫たちとも仲良くなれた。
タヌちゃんとプリン。
かわいかったなあああ。
まだ、ぬくもりが残っている。

ひとつだけお知らせです。
関西のNHKだけで放送された『神戸だより 高山なおみさんの海の見える小さな台所から”六度めの夏”』が、16日(火)の夜にBSで全国放送されるそうです。
どうぞみなさん、ご覧になってください。
〜放送日時:
BSP/BS4K 同時放送 
11月16日(火)23:15〜23:45(30分)
https://www.nhk.or.jp/osaka-blog/program/453839.html
夜ごはんは、おじや(ボイル帆立、リーク→青いところも刻んで加えた、溶き卵、味噌)。

●2021年11月7日(日)快晴

まだ薄暗いうちからカーテンを開け、もうひと眠り。
陽が昇って、太陽の光を浴びてから起きた。
今朝の海も金の鏡だ。
きのうは、テレビの打ち合わせを兼ね、ディレクターお二人と三宮のファーマーズ・マーケットに行ってきた。
この秋に出会った、そして先週須磨海岸でもお会いしたばかりの、亜由美さん、小泉さん、農家さんたちにまた会えた。
肉厚の椎茸、香菜、ビーツ、リーキを買った。
私は月曜日から福岡(朱実ちゃんと樹くんのところ)に行くので、今日子ちゃんとひろみさんのお土産だ。
そのあと、北野坂にある「FARMSTAND」まで歩いていって、おいしいランチを食べながら打ち合わせ。
食後には、「FARMSTAND」で買ったいちじくも食べた。
ぎゅっと詰まった時間だった。
さて、今日は「気ぬけごはん」の続きを書こう。
そうだ。
きのう、家に帰ってきたら、村上さんから『帰ってきた 日々ごはん⑩』のカバーと、大扉のデザインが届いていた。
たまらなく好きな絵だった。
この巻の内容にも合っているし、なんだか表がひなた、裏表紙は日影のよう。
生と死、現実と夢、私の現在と過去……みたいな感じもする。
それらが対になって、混ざり合っている。
スイセイは凄いな。
目と感覚が冴え渡っているな。
『帰ってきた 日々ごはん⑩』は、このまま順調に進めば来年の1月に発売だそうです。
どうかみなさん、楽しみにしていてください。
さあ!
「気ぬけごはん」をやってしまおう。
夜ごはんは、麻婆茄子(皮をむいた茄子、牛コマ切れ肉)、茄子の皮の即席しば漬け、みそ汁(大根、ワカメ)、ご飯。

●2021年11月4日(木)晴れ

ぐっすり眠って6時に起きた。
久しぶりに陽の出が見られた。
ずいぶん海の方に近寄ったんだな。
すっきとした青空。
雲も真っ白。
きのうに引き続き、朝から「おまけレシピ」を書いている。
ゆうべのうちに試作をしておいたので、どんどん言葉が出てくる。
2時には仕上げ、6ヶ月分を村上さんにお送りした。
続いて「あとがき」に向かう。
夕方、いいところまで書けたかも。
そして、今日から、カラスの集会がはじまった!
茜色の雲は、山脈みたい。
夜ごはんは、トマト鍋の〆のオムライス(残ったスープでトマト味の雑炊を作り、溶き卵をまわしかけ、ふたをして半熟に)。

●2021年11月1日(月)快晴

8時に起きた。
わざと寝坊した。
たっぷり眠って、きのうの疲れはちっとも残っていない。
今朝はなんだか小鳥たちが賑やかだ。
須磨海岸でのイベント「FARM to FORK 2021」が、きのうで終わった。
30日には砂浜に腰掛けて、きらきらと光る青い海を背景に、コージさんの絵が少しずつできていくのを見ていた。
コージさんはずっと指で描いていて、まるで指先から黒い絵の具が出て、絵がにゅるにゅると生まれてくるみたいだった。
ときどき、焚き火料理を見学にいっては、焼けていく鹿肉を煙に巻かれながら眺め、ファーマーズ・マーケットをのぞきに行き、クラフトビールを買って、またコージさんのところに戻ってきた。
そこにいると、いろいろな人たちがやってきて、とても久しぶりの人に会えたり、それほど久しぶりではないけれど、会いたかった人に会えたりもした。
みんなマスクをしているから、すぐには分からなくて、私ははじめ少し離れたところに座っていたのだけど、誰なのかが分かると、だんだん近寄っていったり。
コージさんの絵の脇の、日陰になった砂の上で、焚き火料理をみんなで食べた時間もとてもよかった。
なんだか、憧れの心で少し遠くから見ていた旅まわりのサーカスの一団が、「なおみさんも一緒にどうぞ」と、招き入れてくれたみたいだった。
私は少し緊張しながら、でも、砂浜にいるのが心地よくて、途中からは靴を脱いで裸足になり、けっきょく夕暮れまでいた。
海辺の時間と共にある、コージさんの大きな絵。
じわじわとときが移り、そこに集まるいろいろな様子の人たち。
私はちょっとぼうっとしながら、ぽっかりとした時間の中にい続け、けっきょく夕暮れを見てから帰ってきた。
きのうは、朝から雨が降っていて、どうなるのだろう……と思っていたのだけど、須磨駅に着くころには晴れ間が出てきた。
私のトークは10時半からで、亜由美さんにリードされながら、ちっとも緊張せずにおしゃべりできた。
とちゅうで雨が降ってきて、亜由美さんと相合い傘になったり、泊めていただいた淡河の農家民宿(「ケハレ」)の幸江ちゃんが、トークに加わってくれたり。
お客さんたちも、傘を差しながらみなこちらをじっと見て、ときどきうなずいたり微笑んでくださったりもして、私はどんどん楽しくなっていった。
大きな海の前でトークをするなんて、こんなに景色のいいところで、私はいったい何を喋ればいいんだろう……、と不安だったのだけど。
砂浜でのトークは、言葉が放たれた途端にその場で蒸発し、空や海や風、その場にいる人たちと混さり合っていくような感じがした。
中野さんのお姉さん家族も見にきてくれて、階段の端の方にソウリンくんの小さな顔が見えていて。
ユウトクくんは海で遊んでいていた(アサリを穫っていたらしい)。
トークが終わってからは、お姉さんたちとずっと一緒にいた。
揚げたてのポテトチップス(須磨の海苔をちぎって混ぜてあった)を並んで買って食べたり、ワインやビールを呑んだり(お義兄さんと私だけ)、ユウトクくん、ソウリンくんと、裸足になって波をまたいで遊んだり(ずっとやっていた)。
そのあと、お天気雨が降ってきた。
楽団が演奏しながら向こうの方からやってきて、ちりぢりになっていた人々も自然に集まり、コージくんはお面をかぶって、絵の前でくり広げられたフィナーレ。
東の空には虹まで出ていた。
そんな、日々だった。
今朝は「&プレミアム」の最終校正をし、お戻ししたところ。
ようやく日記が書けたので、今日は「毎日のことこと」の続きと、試作をしながら「おまけレシピ」を書こうと思う。
夜ごはんは、ハモの照り焼き(焼き椎茸添え)、若採り山東菜とじゃこのサッと炒め、焼き茄子の味噌汁、新米(中野さんが送ってくださった)の予定。

●2021年10月27日(水)ぼんやりした晴れ

ぐっすり眠って、夢もいろいろなのをみて7時に起きた。
外は、もう明るい。
今朝の海は、水平線がぽってりとした霧に覆われている。
太陽の真下の金色のところにも霧が立ち込め、光が湯気のよう。
湯気はそのまま空とつながっている。
24日の中野さんの誕生日会は、土鍋を出して、牛と豚のしゃぶしゃぶにした。
先にお肉をしっかり食べ、だしが出たスープでお豆腐、椎茸、えのき、大根(大きめに切り、肉よりも先に煮はじめた)、水菜、白菜。 
タレはポン酢醤油とごま味噌(にんにく、豆板醤、みりん、ごま油)、薬味は大根おろし、もみじおろし、葱。
お肉ももちろんおいしいのだけど、スープでしゃぶしゃぶした煮えばなの野菜が、たまらなくおいしかった。
翌日のお昼の雑炊(中野さん作、セロリの葉が刻み入れてあった)も、塩味だけでとてもおいしかった。
その日は雨降りで、私は『帰ってきた 日々ごはん⑩』の校正に向かい、中野さんは2階で絵を描いてらした。
ふたりとも夕方まで集中し、夕暮れのビール。
きのうはお見送りがてら10時ごろに三宮へ行き、中野さんは家族のお土産(きんつば)を、私は毛糸を買って帰ってきた。
駅の近くに、輸入毛糸のいいお店をみつけた。
帰ってからは、また仕事。 『帰ってきた 日々ごはん⑩』の「おまけレシピ」の試作もした。
今日もまた、試作をしながら朝から仕事。
「おまけレシピ」と、「毎日のことこと」を書きはじめた。
須磨海岸でのトークイベントの前に、いいところまで進めておかないと。
それに、30日には焚き火料理人の方が、鹿(丹波篠山の猟師「カーリマン」さんが仕留めた)を焼いたり、神戸で捕れた魚を焼いたり、パエリアを炊くそうなので、見にいけるかどうかは宿題のがんばり次第。
日暮れどき、2階の窓を開けて深呼吸。
秋は、香ばしいいい匂いがするな。
対岸の山の上には、今朝の海面の霧がそのままのぼってできたような、茜色の雲がたなびいている。
静かな夕方。
そういえばこの間、健康診断に出かけた朝、登校中の子どもたち大勢とすれ違いながら坂を下りてきたら、六甲駅の歩道橋の上に、金色に光る海が見えた。
六甲に住んで6年目、はじめて見る景色だった。
夜ごはんは、蓮根つくね、釜揚げうどん(ノブさんの手打ちうどん、おろし生姜、ねぎ)。

●2021年10月23日(土)晴れたり曇ったり

ゆうべはぐっすり眠った。
なんだか、無意識の泥沼に浸っている感じだった。
自分の意志ではどうにもできない大きなもの(それも自分なのだけど)に、何もかも任せ、安心して抱かれている感じ。
胃ガンの検診でバリウムを飲んだり、待ち時間によく歩いたり、終わってからもあちこち買い物をしたりして、きっとくたびれたんだと思う。
今日は、急に明るくなったり、暗くなったりのとても不思議な天気。
雲は厚いのだけど、風で流され、そのたびに強烈な太陽が顔を出す。
夕方から、中野さんがいらっしゃる。
明日がお誕生日なので。
それまで、『帰ってきた 日々ごんは⑩』の校正をがんばろう。
近ごろ私はなんとなくせわしい。
原稿もいくつか抱えているし、自分のすぐ後ろに追っ手がいるような。
ちょっと嬉しく、ありがたい忙しさ。
それでも遊ぶときには、しっかり遊ぼうと思う。
夜ごはんは、白菜と人参の塩もみサラダ(青いレモンの汁、ディル)、鹿肉のソーセージ(丹波篠山で猟師をしてらっしゃる「カーリマン」さんの。垂水のマーケットで買った)&マッシュポテト、ビール。

●2021年10月22日(金)快晴

ゆうべはうすら寒くて、夜中に冬の布団を出した。
6時に起きる。
まだ、薄暗い。
今日は、「兵庫県予防医学協会」の検診センターに行く。
市の無料検診に加え、肺と胃と腸のガン検診もオプションで受けることにした。
前に、スイセイから電話で「みいも、検診を受けられるとええのう」と言われていたし、自分でもずっと気になっていたので。
予約は8時15分。
王子公園駅から歩いて10分、はじめてのところなので、早めに家を出よう。
水も飲んでいないし、朝ごはんも食べていない。
なんか、すっきり。
空もきりっと晴れ渡っている。
太陽の真下の海も金。
朝の空気は気持がいいな。
7時15分。
では、行ってきます。
いろいろな用事をすませ、夕方に帰ってきた。
検診では骨密度や貧血についても調べてもらった。
結果は2週間後に分かるらしい。
血液検査の結果、私はちょっとコレステロール値が高いとのこと。
善玉コレストロールの値が高いので、それほど心配することはないそうだけど。
食生活、ちょっとだけ気をつけようかな。
夜ごはんは、秋刀魚(大根おろし、スダチ)、細長い南瓜の煮物、白菜と豚肉のすまし汁(セロリの葉)、ご飯。

●2021年10月20日(水)晴れ

朝起きてすぐ、カーテンを少しだけ開け、ゆうべの続きの読書。
本はユベール・マンガレリの『しずかに流れる川』。
同じ著者の『ゆうべの雪』ばかり読んでいて、とてもひさしぶりに読んだ。
やっぱり、大好きな世界。
本の紹介文を書くために、必要にかられて読んだのだけど、ああ、読んでよかった。
この世界を少し忘れていた。
ひと泣きして起きた。
今朝もまた金の海。
大きな空豆みたいな雲が縁を光らせ、ゆっくりと流れていく。
秋は、光も風も空気も特別だ。
さあ今日も、本についての原稿に向かおう。
これは「&Premium」に掲載されます。
夕方、どうしても体が動かしたくなったのと、セロリと牛肉の焼きそばがどうしても食べたくなって、買い物がてら「MORIS」へ。
今日子ちゃんたちに食べていただきたくて、農家さんでいただいた細長い南瓜を持っていった。
この南瓜は皮が黄色くて薄く、ひょうたんのような、へちまのような形。
セイロで蒸したら、お芋のあんこみたいに甘くて、とってもおいしかったので。
夜ごはんは、焼きそばのふわふわオムレツのっけ(牛コマ切れ肉、セロリ、熊本のソース)、オクラとツルムラサキの花芽のだし浸し(いつぞやの)。
近ごろ私はセーターを編みはじめた。
輪編みというのがおもしろく、時間を忘れて延々と編んでしまい、気づけば首があたたたた。
風呂上がり、今夜は満月だ。

●2021年10月17日(日)晴れ、風強し

今朝はゴーゴーという風のなか、ずっと寝ていた。
思う存分に眠って、10時に起きる。
私は今朝、心の筋肉痛。
心惹かれるいろいろな人たちにいっぺんに会って、たくさん刺激を受けたから。
きのうもとても楽しく、書き留めておきたいことはたくさんあるのだけど、とても追いつかない。
それに、垂水から帰って、釜揚げしらすや、白いとうもろこしなど「MORIS」にお土産を届けにいったら、江面旨美さんがバックの展示会をされていて……私はまた興奮し、うちにお誘いしたのだ。
ごはんは何も作れなかったけれど、ヒロミさんと今日子ちゃんと4人で、夜景を眺めながら、六甲のおいしい水(うちの井戸水)で乾杯した。
つまみは、農家さんにいただいたジャンボ落花生(今日子ちゃんにおすそわけしたら、塩ゆでにしたのを持ってきてくれた)。
江面さんは私の部屋をゆっくりと見てまわり、いろいろなところを、小さなことまで褒めてくださった。
嬉しかったなあ。
さあ、でも、とにかく今は、作文の続きを本気で進めないと。
窓の外をときどきちらっと見ながら、延々と書いていた。
木々が大きく揺れるほどの、台風みたいな強い風なのに、海は平らに光っている。
空にはラピュタのような雲が行進し、眩しい光でいっぱい。
大風で吹き飛ばされ、何もかもが新しくなっていくような空気。
途中、窓が白くなって、見ると、お天気雨!
さわさわと音を立て、シャワーみたいな光の粒が降っている。
2階に上って深呼吸し、作文の続き。
夕方、ようやく、いいところまで書けたかも。
まだ5時半なのに、外はもう暗い。
海のあちこちで、オレンジの光が灯りはじめている。
いつの間にこんなに日が短くなったんだろう。
夜ごはんは、ツルムラサキのにんにく炒め(いつぞやの残り)、スパイシー・ミートソース(いつぞやの残り)かけご飯。

●2021年10月16日(土)快晴

神戸の農家さんを巡る小さな旅からは、おとといの夕方に帰ってきた。
もう、楽しくて、楽しくて、言葉にするのがもどかしく(気持より言葉の方が遅いという意味)、日記がちっとも書けない。
きのうはひたすらぼーっとしていた。
でも、頭の中は興奮状態。
すごいスピードでぐるぐるぐるぐる。
たぶん私は、何かに出会えたのだと思う。 
こうしてキーボードを打っていると、指が震えるほど。
今日はこれから、垂水に出掛ける。
神戸の漁業を尋ねる小さな旅だ。
ファーマーズ・マーケットも開かれるので、おとつい出会ったみなさんにまた会える。
それが、とても嬉しい。
今朝は6時前に起きた。
目覚めたのはもっと前で、陽の出が6時15分。
なんだか私の方が、太陽よりも先に起き出してしまっている感じ。
垂水へは、六甲道からJRだ。
8時50分になったら、出掛けよう。

●2021年10月12日(火)曇りのち晴れ

6時に起きた。
ラジオをつけ、空を眺めたり目をつぶったり。
朝のヨーグルトを食べながら、海を見た。
今朝の天気はちょっと不思議。
水面はまっすぐで、空気が静かな色をしている。
とても綺麗。
波紋が見えるところだけ、雨が降り注いでいるのかもしれない。
晴れと雨が半分ずつある感じ。
玄関の郵便受けをのぞきがてら、外に出てみた。
山側の空は灰色。
肌では感じられないくらいの細かな水の粒が、空気中に混じっている感じ。
明日から私は、亜由美さんの案内で、神戸市の農家さんたちを尋ねてまわる。
淡河にある農家民宿にも1泊するので、簡単な荷物をリュックに支度した。
長靴と帽子は忘れずに。
これは、10月31日(日)に開かれるトーク「おいしいを見つける、海と田畑の神戸旅」の勉強のため。
私がゲストで、亜由美さんご夫婦と須磨海岸のステージでお喋りします。
会場ではスズキコージさんが、2日間かけてライブペイントもされるそう。
詳しくは「ちかごろの」をご覧ください。
さあ、作文の続きをやろう。
午後近くなって、晴れてきた。
今日も暑いな。
夜ごはんは、ツルムラサキのにんにく炒め、ハムエッグ、パスタのサラダ(スパイス入りミートソース・スパゲティーの残りをハサミで切って、マヨネーズで和えた)、ご飯。
明日は、朝8時半に亜由美さんが車で迎えにきてくださる。
早く寝よう。

●2021年10月11日(月)曇り

きのうまでたっぷり遊んだので、朝から仕事をする。
このところずっと向かっている、本についての作文の続き。
延々と書いていた。
中野さんと過ごした4日間は、夏が戻ってきたみたいな日々だった。
秋の太陽は低く、強烈な光が照りつける。
その光が、夏のように暑いのだ。
大阪の「itohen」でやっている、川原さんの展覧会にも出掛けた。
川原さんは鰺坂さんをはじめ、「itohen」のみんなにとてもよくしてもらっているみたいで、楽しそうだった。
マメちゃんにも会えた。
まだ明るいうちに帰ってきたのだけど、日焼けしたみたいにくったりとくたびれていた。
でも、楽しかったな。
中野さんともよく飲んで、よく喋った。
今日は打って変わって、太陽が雲に隠れている。
暑いことは暑いのだけど、しっとりと落ち着いた空気。
さ、もう少し作文の続きを書こう。
夜ごはんは、里芋と春菊の薄味煮(中野さんと食べた残り)、豚の生姜焼き&茄子とピーマンのオイル油焼き、焼きそば(いつぞやの残り)、スープ(白菜、えのき、豆腐)、ご飯。
お風呂上がりに窓を開けると、東の空に完璧な形の三日月が。

●2021年10月6日(水)曇りのち晴れ

スイセイは今日、退院する予定らしい。
それは、確実に順調だということ。
ああ、本当によかった。
朝から私は原稿書き。
紹介文とは別の、2400文字くらいの作文。
集中してやる。
まだまだ下書きのような状態だけど、半分くらい書けたかも。
「FARMSTAND」の亜由美さんにいただいた野菜が、おいしくておいしくてたまらない。
落花生も、いちじくも、四角豆も、オクラも。
椎茸は軸ごと4つに手で割ったのを、なたね油を薄く塗ったタークで焼いた。
塩も醤油も何もつけずに食べた。
でも、そればかりではもったいないので、お昼にチャプチェを作った。
昔、韓国人の知人に教わった作り方で。
まず、香ばしく炒ったごまをすり鉢でたっぷりすり、焼き肉のタレを混ぜ合わせておいて、そこに肉や野菜を1種類ずつ炒めては加え、和えていく。
牛肉、玉ねぎ、椎茸、パプリカ、ゆでた春雨(水でしめておく)、 ニラはゆでてから水気をよく絞って最後に加えた。
厚切りにし、炒めるというよりは焼きつけた椎茸がしこしこ、ぷりっぷり。
とてもおいしくでき、食べ過ぎた。
夕方、中野さんからメールがあり、明日画材屋さんの帰りにいらっしゃることになった。
海が青いから、ビールでも飲もうかと思っていたのだけど、明日までおあずけだ。
作文、もう少し頑張ろう。
夜ごはんは、チャプチェ、ふわふわ納豆(卵白)、サンラータン(えのき、オクラ、溶き卵)、ご飯。

●2021年10月3日(日)晴れ

6時少し前に起きた。
陽の出を見ることができた。
今朝も、猫森の木々の間から。
朝見たら、スイセイのツイッターがアップされていた。
きのうは、ツイッターの画面を開けっ放しにしておいたのだけど、まったく更新されず、原稿を書きながら何度も見ていた。
手術後は大変だったようだけど、どうにか順調に恢復している様子。
今朝届いた分の時間を調べると、きのうの夕方にアップされた記録がある。
どういうわけだったんだろう。
でも、ああ、よかった。
そして今日、急に決まったのだけど、ユウトク君の家族が4人でうちに遊びにくることになった。
きのうは何をやっても手につかず、扇風機や玄関の網戸の埃が気になって掃除したりしていたのは、このためだったのかも。
ノブさんが送ってくれた手打ちうどんと、おつゆを冷凍しておいたから、お昼にゆでてみんなで食べよう。
あとはコールスローと、かしわご飯(油揚げ、人参、細く切っただし昆布)を作ろう。
お昼ごはんを食べたあと、みんなで坂を下り、都賀川へ行った。
川沿いのゆるやかな坂道を延々と下り、ようやく河原につながる石段を下りたとたん、ユウトク君がお猿みたいに「きゃああああ」と叫んだ。
ジャンプして、体中で歓びを現していた。
私もくつを脱ぎ、川に入った。
「きゃー、冷たーい!」
ユウトク君は流れの早いところが怖いみたい。
ソウリン君はたいして怖がらず、ひとりで歩く。
「なおみさん、あっち行こう」「こんどはあっち」「あっちの方が水がきれいやで」などと言われるまま、ユウトク君と手をつないで、すべらないように気をつけながら、水の中をざぶざぶと歩くだけで楽しかった。
2時間近くそうしていたかも。
そのあとで、水道橋商店街をみんなで歩き、王子公園駅でお別れ。
六甲に帰ってきて、「いかりスーパー」でお寿司を買った。
夜ごはんは、のり巻き(サーモン、きゅうり、太巻き)&いなり寿司、味噌汁(油揚げ、ワカメ)。
食べ終わったころに、今日子ちゃんからメールが届いた。
今日は、7時発のサンフラワー号でふたりが大分へ行く日だ。
客室をひとまわりし、撮影した動画が届く。
すごい!
ホテルみたい。
プライベートデッキにはテーブルと椅子、バスルームには小さな窓もあり、海が見えるようになっている。
船着き場を離れ、ぐるりと方向転換するサンフラワー号。
もう真っ暗なのだけど、小さな窓のオレンジ色の灯りがテンテンテンと見える。
夜景の向こうを、じりじりと進む。
船体にある太陽マークは、暗くてまったく見えないけれど、煙突のあたりがボーッと明るく光っている。
うちの正面を通り過ぎるまで、双眼鏡でずっと見ていた。
あの灯りのどこかにふたりがいるんだと思うと、なんだか温かな気持が湧いてくる。
デッキから撮った写真を、今日子ちゃんが送ってくれた。
遠くで瞬く陸の夜景に目をこらすと、うちらしきマンションが山のふもとに白く光っている。
海の向こうからは、あんなふうに見えるんだ!
このところ私は、スイセイのことが心配で内にこもり、煮詰まっていた。
だから今日は、ユウトク君の家族と今日子ちゃん、ヒロミさんに、パーンと開けた場所に連れ出してもらえたような日だった。
そして明日は、北野にある「FARMSTAND」の亜由美さんが、お店の野菜を持ってきてくださる。
はじめてお会いするので、どきどきする。

●2021年10月1日(金)曇りのち晴れ

ゴーゴーと風が吹いている。
ゆうべも、ぴゅるるるるーっと鳴っていて、音を聞きながら寝た。
今日から新しくいただいた仕事に向かう。
本の紹介文(100文字)を、1冊ずつ、こつこつと書く。
書いては直し、直してはまた書く。
ようやく3冊書けた。
3時半ころ、スイセイのツイッターが更新されていた。
生還の知らせ!
ああ、しみじみと嬉しい。
ようやく、時間が動き出した。
ひさしぶりに坂を下り、銀行と「MORIS」へ。
買い物をして、夜ごはんは今日子ちゃん、ひろみさんと、六甲の「愛蓮」で中華料理を分けっこして食べた。
愛蓮サラダ(海老、焼豚、蒸し鶏入り)、水餃子(四川風のタレ)、牛肉と野菜のガーリック黒こしょう炒め、ネギそば。
どれもこれもおいしかったー。
牛肉がとても柔らかく、野菜もつやつや、ぷりっぷり。
脂っこくなく、コクがある。
中国料理というより、どこか異国の風が混ざっているような。
これが神戸の中華なのかな。
昔、ウーロン茶のCMをやっていたころに、上海の高級レストランでよくごちそうになっていた中華にも似ているような。
私は大好き。

●2021年9月29日(水)晴れ

6時50分に起きた。
陽の出を見逃してしまった。
それでも今朝は、海が金色に光った。
これは、夏が過ぎてからからはじめてのこと。
きっと昇った太陽が、低い角度から当たるせい。
秋の知らせだ。
スイセイからはまだ便りがない。
病室からのツイッターのページを開きっぱなしにして、確認しているのだけど。
1時半から、「週刊朝日」のインタビュー。
『自炊。何にしようか』について。
編集の方は、わざわざ東京からいらしてくれた。
神戸にご実家があるのだそう。
3時くらいに終わり、坂の途中までお見送りした。
風がなく、半分秋で半分夏みたい。
夕方、玄関を閉めようと廊下に出たら、ツバメがたくさん飛びまわっていた。
山の方の空にはいるのだな。
夜ごはんは、パエリヤ(海老、ミニトマト、焼き茄子)、人参の塩もみサラダ。

●2021年9月27日(月)晴れ

5時45分に起きた。
陽の出は、猫森の木々の隙間から。
木の葉が揺れ、橙色の光がちかちかとたなびいていた。
太陽が出てくるとき、堂々として立派だったから、スイセイは守られているな、と思った。
小鳥たちのさえずりと澄んだ風。
今朝の「古楽の楽しみ」は、関根敏子さんだ。
めずらしく、ベッドの上でコーヒーを飲んだ。
太陽はもう白く光っている。
さあ、私もそろそろ起き出そう。
今日、スイセイの手術は、朝8時からはじまり、3時間ほどかかるのだそう。
きのう私は、いつ病院から呼ばれてもいいように、2泊くらいの着替えをリュックに詰めた。
ヨーグルトを食べながら窓辺に立つ。
いつもより広範囲に海が光っている。
風があるのかな。
さざ波立っている。
洗濯物を干す。
あ、またツバメが2羽、飛びまわっている。
そういえばこの間、「MORIS」に行ったとき、ツバメのことを聞いてみた。
今日子ちゃんの家の方では、まだたくさん飛びまわっているのだそう。
ちょうど居合わせたお客さんが、「ツバメは、巣立ってからは、葦が密集しているような川辺に集まって、寝ぐらにしているみたいです。うちは、灘の方なんですけど、渡りはじめるのは毎年10月10日くらいやったと思います」と、教えてくださった。
そうか。
うちの窓から見えるツバメは、群から離れて川のこちら側に遊びにきている2羽なのか。
あんまり気持のいい風が渡るので、光る海を眺めながら、2階の腰掛けでお裁縫をすることにした。
ツクツクボウシの声が聞こえる。
長くは続かないけれど、しばらくするとまた聞こえてくる。
2時半ごろ、「毎日のことこと」が書き上がった。
締め切りはまだ先なのだけど、写真と共にお送りしてしまう。
スイセイの手術は、ぶじに終わっただろうか。
夜ごはんは、カレーライス(いつぞやのを温め直し、モロッコいんげんを加えた)、ゆで卵。
夜、寝る前にりうにメールをしてみた。
私「病院から何も連絡がないってことは、ぶじに終わったんだろうなと思ってる。りうのところにも、届いてない?」
り「私もそう思う。届いてない。全身麻酔かける、って言ってたし、早くても明日以降だよね。待ってみるよー」

●2021年9月26日(日)曇り

6時半に起きた。
今朝は曇り空。
それでも洗濯をする。
シミが気になる白いものは、漂白剤に浸け置きしながら。
きのうとは打って変わって、なんだか肌寒い。
ワンピースの下にペチパンツと長くつ下をはいた。
曇っているけど、どんよりではない。
海から山からさやさやと、やさしい風が吹いてくる。
きのうは、台所道具の撮影だった。
宮下さんと、はじめてお世話になる編集者の水嶋さん、このごろ何度も撮影してくださっているわたなべよし子さんと。
よし子さんはページとは関係のない写真も、たくさん撮ってらした。
撮りたくて仕方がないという感じで。
終わって、撮影した料理を窓辺で食べているときにも、帰り際、暗くなってからも玄関で。
カメラっ子みたいなこういうしつこい人、私は大好き。
蒸し暑く、なんだか夏が戻ってきたみたいな日だったな。
撮影は2時半からだったので、ぎりぎりまで「毎日のことこと」を書いていた。
原稿はいいところまで来ている気がする。
今日は涼しいので、窓辺でお裁縫。
今縫っているのは、使い込んだバスタオルの縁かがり。
バイヤステープで包んで、縫いつけている。
肌触わりがよく、心が落ち着く。
あ、雨が降ってきた。
夕方、ゴミを出しにいったら、霧のような雨。
そして日暮れどき、東の空に虹が出た。
明日はスイセイの手術。
どうか、お守りください。
夜ごはんは、ササミのハーブパン粉焼き、蒸し小松菜(手作りマヨネーズ)、具だくさん豚汁(おとといの残りに、牛乳を加えた)、ご飯はなし。
”野の編日誌”を読んでいる方は、すでにご存知かと思いますが、スイセイはこのたび肺にガンらしきものがみつかり、手術のために9月24日から入院をしています。

●2021年9月22日(水)ぼんやりした晴れ、のち雨

5時50分くらいに起き、カーテンを開けたら、山の上からちょうど太陽が昇ってきた。
ひさしぶりの陽の出。
ベッドの上に立ち上がって見る。
また寝そべり、明るくなっていく空を見ていた。
ラジオを聞きながら。
うんと遠くの方で、ツバメが2羽飛びまわっているのが、黒い点のように見える。
からまったりしながら、遊んでいる。
遊んでないで、早く南に渡った方がいいんじゃないかな。
ゆうべは、満月がものすごかった。
綺麗なんてもんじゃない。
目がくらみそうに眩しく、あんまり光っているので雲がかかっても普通に見え、月の後ろを雲が流れているみたいだった。
中秋の名月というのは、いつも満月というわけではないらしい。
ゆうべはちょうど重なった。
それは、8年ぶりとのこと。
月もすごいのだけど、移り変わる雲がまた美しく、ベッドに寝たまま2時間近く見ていた。
ラジオでは、ベートーベンのピアノ曲が延々とかかっていて、それもとてもよかった。
いちばんリラックスできるベッドの上場所で、観客は私ひとり。
スペクタクル・ショーを見ているみたいだった。
今日は、曇りというほどではないけれど、のんびりした感じの晴れ。
朝はあんなに晴れ渡っていたのに。
遠くでツクツクボウシが鳴いている。
そういえばきのう、ひさしぶりに坂を下りたら(『帰ってきた 日々ごはん⑩』の初校をコンビニに出しにいった)、ほんのり金木犀の匂いがしていた。
風が涼しく、リュックがパンパンだった(「コープさん」で買い物をした)割りには、帰りの坂道もけっこう楽に上れた。
さあ今日は、何をしようか。
お昼ごはんに、ノブさんが送ってくださった手打ちうどんをゆでた。
お出しをしっかりめにとって、干し椎茸の含め煮の煮汁と、蒸し鶏の蒸し汁も入れた。
みりんと醤油のこくのあるつけ汁。
しめじと、焼き茄子も加えてみた。
冷たい水できりっとしめたおうどんに、熱いつけ汁がおいしくて、食べ過ぎた。
夕方、音を立てて雨が降ってきた。
窓の外は真っ白。
地面が匂い立っている。
夜ごはんは、焼き肉(牛ランプ肉、大根おろし、青ねぎ、ポン酢醤油、七味唐辛子のタレ。島さんの黒い耐熱皿でお肉を焼き、食べ終わってから、同じ皿にごま油を足して茄子を焼いた)、ご飯。

●2021年9月19日(日)快晴

6時前に起きた。
すでに青空が広がっていて、雲だけ茜色。
その茜がだんだん黄色くなって、雲の上から太陽が昇ってきた。
昇る前、その雲の縁だけがダイヤモンドみたいに光っていたので、(あそこから昇るのだな)と分かった。
ひさしぶりに陽の出を見た。
この時間、いつもだったらベッドの上でごろごろしているのだけど、今日はテレビの日なのでもう起きてしまう。
朝風呂にも早めに浸かり、紅茶をいれてスタンバイ。
テレビは7時45分からなのだけど、そわそわするので、床にクイックルをしてまわった。
いったい、どんな番組になっているんだろう。
どきどきするなあ。
テレビが終わった途端、明石に住んでいるおじちゃん(母の弟)から電話がかかってきた。
大きな声で、開口いちばんに「やー、あんたはお母さんにそっくりやなあ」と笑っている。
「顔が?」と聞いたら、「そうなあ、顔もやけど、笑い方とかいろいろな。やあ、若いころの照ちゃん(母のこと)にそっくりで、いろんなことを思い出したわー」と、とても嬉しそうだった。
ああ、よかった。
こういうのがいちばん嬉しい。

テレビはとってもよかった。
濱田英明さんの映像は、世界に対して誠実だな。
時間、すき間、風が吹いたとき、光が当たったときの心……目に見えないものまで、すべてが的確に映っている。
濱田さんが撮ってくれたから当然なのかもしれないけれど、『日めくりだより』の紙の世界が、にょきっと立ち上がり、触れるようになったような。
風は風、水は水、光は光、枝豆は枝豆、私は私。
それぞれが温度と肌触りを持って、「生きている」感じ。
すごいなあ。
ディレクションも、ナレーターの声も言葉も、かすかな音楽も、映像に寄り添ってみな無理がない。
制作スタッフのみなさん、ありがとうございました。
今回は関西だけだったけど、再放送されるときには、同じ時間に全国で見られるようになるといいな。
(放送後2週間は、全国のみなさんもオンデマンドでいつでも見られるそうです。オンデマンドの登録も簡単らしいです)
屋上での撮影のとき、エンドレスでカメラを構えていた濱田さんが、「あーー、めっちゃいいのが撮れた!!」と叫んだときのことを思い出した。
濱田さんは撮っている最中、レンズを覗きながら体から発散しているものがある。
それが空気を動かし、私に届く。
だから、撮られていることが楽しくなる。
次の撮影も楽しみだなあ。
午後からは、きのうの続きで現金出納帳の記入など、税理士さんに教わった書類の書き直し。
今、ツクツクボウシが、忘れものを思い出したみたいに鳴いている。
そういえばこのごろは、ツバメも2羽くらいしか見なくなった。
みんなぶじに、南に渡っていったんだろうか。
夜ごはんは、鰈の干物のフライパン焼き(ムニエルみたいに焼いてみた。焼きトマト添え)、白和え(干し椎茸の含め煮、ゆで小松菜、みょうが)、ふわふわ納豆(卵白、ねぎ)、即席みそ汁(お椀にかつお節、味噌、乾燥ワカメ、刻んだみょうがを入れて熱湯を注いだ)ご飯。 

●2021年9月16日(木)晴れ

6時半に起きてカーテンを開けたら、空が真っ青だった。
小さな羊みたいな雲が、たくさん散らばっている。
眩い空。
しばらくベッドに寝そべったまま、大の字で太陽の光を浴びた。
両腕で顔だけ隠しながら。
締め切りはまだ先だけど、「毎日のことこと」を書きはじめる。
きのうは「気ぬけごはん」を仕上げてお送りしたし、「AERA」も直すところがほとんどない、すばらしい原稿だったので。
気づけばもうお昼。
ツクツクボウシがものすごく騒がしく鳴いていると思ったら、網戸に1匹張りついていた。
小さなツクツクボウシ。
生まれたばかりなんだろうか。
体をふるわせ、一心に鳴いている。
さて、お昼を食べたら坂を下りよう。
今日は、2時から税理士さんとの勉強会。 
帳面や銀行の通帳、パソコンも持っていく。
「スス」でさせていただくので、終わったら今日子ちゃん、ひろみさんと授賞式ごっこ(『自炊。何にしようか』の)をする計画。
賞状を持っていかなくちゃ。
夜ごはんは、ささやかなパーティー。自分用に買っておいた美〜なす(ビー茄子と読みます。白緑色の皮の大きくてやわらかな茄子)と豚肉を、「MORIS」の冷蔵庫にあるものと組み合わせ、今日子ちゃんが作ってくれた(南風荘ビールだけ私)。
献立は、南風荘ビール(おいしい小夏ジュースで)、冬瓜と豚肉の酸辣湯(おろし生姜、青唐辛子の酢漬け、ごま油)、美〜なすの天火焼き(半分に切ったものになたね油をたっぷりまわし、塩をパラパラふって230度のオーブンでこんがり焼く)、ピザ(牛肉、長ねぎ、ミニトマト、トマトペースト、米油をよく混ぜて、ピザ生地のすみずみにまでのせ、230度のオーブンでふっくら焼く)。デザートはプルーンの天火焼き(半分に切った種つきの上に、三温糖をふりかけて焼く)。

●2021年9月14日(火)小雨

ぐっすり眠って夢もみて、7時半に起きた。
ちょっと寝坊。
朝ごはんの前に、傘を差してポストまで散歩した。
雨が強くならないうちに。
半袖では寒いくらい。 
夏休みの坂道を通って帰ってきたら、もう完全に夏は終わっていた。
ゴーヤーの棚には、黄色い花がひとつふたつ残っていたけれど、南瓜も冬瓜ももうおしまい。
深紅のガクに包まれて、臭木の実が瑠璃色に染まりはじめていた。
しゃらしゃらと簪のように垂れ下がって咲く花は、まだ黄緑。
私が「きれい」と言いながら触ったら、「なおみさん。きれいやと思っても、すぐに触ったらダメやで。毒があるかもしれんからな。図鑑で調べてからにしてな」と、ユウトク君に諭されたっけ。
さあ今日は、「気ぬけごはん」の続きを書こう。
明日が締め切りなので。
今、試作をしながら書いている。
小雨が降り続ける、静かな静かな日。
降っているかいないか、分からないくらいの雨だけど、水たまりに波紋ができている。
こんな日は文を書く日和。
夕方、だいたい書けたかも。
同時に、朝日の森さんから原稿が届いた。
この間東京で『自炊。何にしようか』についてお受けした、「AERA」の取材原稿だ。
今日はもう仕事は終わり。
明日、ゆっくり確認しよう。
夜ごはんは、鰆の柚庵焼き、冬瓜のあんかけ煮、白和え(干し椎茸の含め煮、油揚げの甘辛煮)、塩むすび。

●2021年9月12日(日)小雨

今週はいろいろなことがありすぎて、ずっと動いていて、日記がちっとも書けなかった。
まず、火曜日には東京に行った。
どうしてかというと、授賞式があったから。
『自炊。何にしようか』が、「2021年料理レシピ本大賞」に入賞しました。
その日は、賞状をいただいたその足で荻窪の「Title」に出掛け、辻山さんとインスタライブ対談をした。
次の日の朝、取材をひとつ受け、お昼をごちそうになって、明るいうちに神戸に帰ってきた。
そして翌日、こんどは中野さんがやってきた。
福岡県大牟田市の「ともだちや絵本美術館」の方に、『たべたあい』と『おもいで』の原画をお渡しするために。
中野さんが帰る日には、私も車に便乗し、実家に遊びにいった。
それが、きのう。
きのうはなんだか、夏休み最後の、遊び納めみたいな日だったな。
ユウトク君、ソウリン君、私の3人で池までサイクリングし、広場でひたすら自転車を走らせたり、池に浮かんだ小島で肉や魚を焼くごっこ(ふたりが小枝を集めて別々の竃を作り、焼いてくれる)をしたり、私が船を操縦したり(池は海、船の甲板で肉や魚を焼いているという設定)。
気づいたら2時間も遊んでいた。
私は東京に行った日からずっと、眠りが浅かったのだけど、ゆうべ、中野さんの家でようやくぐっすり眠れた。
田んぼや畑、植物、川、地面の息吹。
真っ暗ななか、コオロギやカエルの声が、すぐ近くで聞こえていた。

そうしてさっき、お昼過ぎに六甲に帰ってきたというわけ。
さて、ここでお知らせです。
来週の日曜日の朝7時45分から30分ほど、夏に濱田英明さんに撮影していただいた(今、日記を遡ってみたら8月4日、5日だった)番組が、NHK総合で放送されます。
「高山なおみの神戸だより 海の見える小さな台所から」の夏編。
関西地方のみの放送ですが、「NHKプラス」の配信で14日間、全国の方も見られるそうです。
詳しくは、「ちかごろの」をご覧ください。
いったいどんな番組になったんだろう、どきどきするなあ。
さあ、明日から私は仕事をしなくちゃ。
夜ごはんは、冬瓜と豚肉の中華風煮込み(いつぞやのに豆腐を加えた)&ご飯、モロヘイヤときゅうりの三杯酢、たくあん。

●2021年9月4日(土)雨が降ったり止んだり

ぐっすり眠って、5時半に起きた。
なんとなく寝ていられなくて。
ゆうべも『小さな声、光る棚』を読んでから寝た。
すごくいい。
お昼前にスイセイから電話。
小一時間ほどおしゃべりをした。
そのあとで、洗濯ものを干す。
ツクツクボウシが弱々しく鳴いている。
小雨が降っているけれど、海に近い空は白くて明るい。
雲の後ろに太陽があるから。
急に決まったのだけど……9月7日(火)の夜8時半くらいから、辻山さんと対談をすることになりました。
お互いの本、『小さな声、光る棚』と『自炊。何にしょうか』についてお話します。
この様子は、オンラインでライブ配信されるそうです。
詳しくは、「ちかごろの」をご覧ください。
今、チイ、チイというひかえめな声がして、見ると小鳥が2羽、電線の離れたところにとまっている。
お腹はオレンジ、首のまわりが白い。
ヤマガラだ。
しばらくして、今度は玄関の方からツクツクボウシ。
1匹だけなのだけど、網戸に張りついて鳴いているみたいな、やけっぱちで鳴いているみたいな、ものすごく大きな声。
通路の窓に、西陽が当たっている。
夜ごはんは、冬瓜と豚肉の中華風煮込み(オイスターソース、黒酢、醤油、きび砂糖、にんにく、八角)、春巻き(いつぞやに揚げたのをフライパンで温めた)、人参のぬか漬け、春雨とミニトマトのトムヤムかき玉スープ、ご飯。

●2021年9月2日(木)曇りのち雨

今朝は6時に起きてラジオをつけ、猫森をぼんやり眺めていた。
枝が風で揺れている。
ラジオを消したら、葉のこすれ合う音が聞こえてきた。
カサカササワサワ。
空気が乾いて、もうすっかり秋の気配だ。
そのうち雨が降ってきた。
今日は、どうしても欲しい本があって、三宮の本屋さんに買いにいった。
近ごろ眼鏡の調子もあまりよくない(鼻に当たる部分がぴったりしすぎて、肌が赤くなる)ので、ついでに、眼鏡屋さんで見てもらった。
「ユザワタヤ」にも行った。
本は、『小さな音、光る本棚』。
荻窪にある書店「Title」の店主、辻山良雄さんの。
今月の「毎日のことこと」が載った日の神戸新聞に、この本の著者インタビューがあり、とてもおもしろかった。
それで、いてもたってもいられずに、どうしても読んでみたくなったというわけ。
六甲に帰ってきて、「MORIS」に寄って、『日めくりだより』のサインをした。
その様子を今日子ちゃんがスマートフォンで撮影してくださり、同時に配信もし、「突撃!ゲリラ インスタライブ」となった。
外は雨がざーざー降りでも、「MORIS」はひっそりと静か。
そして、温かな空気。
なんだか山小屋でサインをしているみたいだった。
夜ごはんは、カニカマ入り卵焼き、味噌汁(油揚げ、ニラたっぷり)、枝豆ご飯。
お風呂から上がって、ベッドの中で『小さな声、光る棚』を読み耽る。

●2021年9月1日(水)曇りのち小雨

ゆうべは寝る前に、秋の虫の声がした。
フィリリリリと、低い声でずいぶん長いこと鳴いていた。
1匹だけ。
クサヒバリだろうか。
今日から9月。
子どもたちは、新学期。
きのうより涼しいようだけど、湿気がある。
朝から、「毎日のことこと」の校正をして、お送りした。
ツクツクボウシが全盛のなか、チイ、チイ、チイととぎれとぎれに鳴く小鳥がいる。
そのたびに窓辺に立って目をこらすのだけど、姿は見えず。
2、3度そんなことがあった。
きのう、新しいワンピースが縫い上がったので、今日から『帰ってきた 日々ごはん⑩』の校正に向かおう。
あちこち掃除した。
午後、どうしても身が入らない。
けっきょくやめにして、玄関のクローゼットにしまい込んである『たべたあい』の原画(大きな箱に入っている)を出すことにした。
いらない物を全部出し、ゴミをまとめ、掃除機をかけた。
きれいにたたまれた新聞紙が袋に詰めてあったり、空きびんやシャンプーの容れ物がひとまとめにしてあったり。
すっかり忘れていたのだけど、いつか使うかもしれないと思ってとっておいたんだな。
汗だくだくになって、まだ4時だけどお風呂に入ってしまう。
はーー、スッキリした。
夜ごはんの春巻きを巻こう。
夜ごはんは、春巻き(豚コマ、干し椎茸、干し小海老、もやし、春雨)、獅子唐のおかか炒め、枝豆ご飯。
日暮れどき、風を孕んで少し膨らむカーテン。
霧に街の灯りが浮かび上がってとてもきれい。
しんみりと薄暗い、窓辺の写真を撮った。

●2021年8月29日(日)曇りのち晴れ

6時に起きたとき、空は厚い雲に覆われていた。
でもそれは下の方だけで、高いところには小さな青空があった。
その水色に向かって、広がってください……と寝そべったまま念じていた。
今日は、つよしさんが遊びにくるので。
きのうの朝は秋晴れみたいにいいお天気で、窓を開けたとたんに驚いた。
風が、あきらかに夏とは違う。
光も違った。
猫森の葉っぱの照り返しは、きらきらというよりぴかぴかだった。
こんな日に、つよしさんに会えたらいいなあと思ってメールをしたら、友だちの写真展があるとかで、それで今日になった。
お昼ごはんを一緒に食べる予定。
天然酵母のマフィンがちょうど今朝届くそうで、持ってきてくださる。
うれしいな。
さて、何をこしらえようか。
今、塩豚を厚めに切って、にんにく、黒こしょうをつぶしたすり鉢に入れ、オリーブオイルでもみ込んだところ。
玉ねぎも薄切りにした。
つよしさんが来たら、作りはじめよう。
そういえば、朝掃除機をかけていたとき、蜂は出てこなかった。
きっと、死んで、埃にまみれ、パックの中にいることだろう。
申しわけない。
メニューは、冷や奴の枝豆のせ(ごま油、塩)、枝豆のミニ春巻き、マフィン&塩豚とミニトマトのポットロースト・粒マスタード添え(玉ねぎを茶色くなるまで炒め、生バジルも加えた)、スイカの皮の塩もみサラダの予定。
つよしさんとの会は、とても楽しかった。
1時くらいから軽く呑みはじめ、つよしさんのおしゃべりをいっぱい聞いて、4時くらいにふたりで日傘をさし、てくてく歩いて川の上流へ行った。
この間、ユウトク君たちと行ったところ。
靴を脱いで川の中を歩いたり、石に腰掛け炭酸を飲んだり。
つよしさんも川に入ると子どもみたいになる。
夏休みの坂道を通ったとき、ゴーヤーと南瓜の棚はまだ元気で、黄色い花が咲いていた。
パッションフルーツがたくさんぶら下がっているのを、立ち止まってふたりで見たり。
門の外に黒い大きな犬がいて、前にゴーヤーをいただいたおじさんに挨拶をしたのも、なんだかよかった。
つよしさんは明日から学校なので、今日で夏休みが終わり。
だからかな、小学生の友だちどうしで川へ遊びにいったような、そんな散歩だった。
私たちは絵と絵本が好きな友だちどうしだ。
そのまま六甲駅まで坂を下り、オシロイバナの咲く線路沿いの小径(今日子ちゃんに教わったところ)を歩いて、お見送りして帰ってきた。
夜ごはんは、ネギトロ巻き(スーパーの)、しし唐のおかか炒め、スイカの塩もみ。

●2021年8月27日(金)快晴

きのうから久しぶりに晴れ続きなので、布団のカバーやシーツをはがし、洗濯大会。
布団もかわりばんこに干している。
きのうから書きはじめた「毎日のことこと」の続き。
午後に、アノニマの村上さんから電話があった。
『帰ってきた 日々ごはん⑩』のゲラが上がってきたので、アルバム写真と照らし合わせながら打ち合わせ。
村上さんは元気そうだった。
東京はとっても暑いのだそう。
きのう職場から帰ってきて、閉め切っていた2階の部屋に入ったら、熱気がこもって息ができないほどだったそう。
私のいるところも、夏が戻ってきたみたいに暑いけれど、海から山から風が吹いてくるので、わりと涼しい。
さあ、また続きに向かおう。
いいところまで書けている気がするので。
夕方、2階を掃除をしていて、網戸のところに大きな蜂がいたので、思わず掃除機で吸い取ってしまった。
そのあと、長い方の吸い口をはずし、窓の外に向けても出てこない。
吸い口の根もとをはずせば、飛び出してくるだろうけれど、へたにはずしたら向かってくるかもしれない。
怖い。
わー、どうしよう。
ひとまず掃除機の吸い口を床にふせ、そのままにしてある。
6時前。
今日は、海が青いな。
遠くの海を進む船。
西陽で黄色に光っている街。
ツクツクボウシ、ツクツクボウシ、ヒグラシ、シグラシ。
息を吸うと、地面の湿ったいい匂いが上ってくる。
夜ごはんは、塩豚のじりじり焼き(出てきた脂で焼き玉ねぎ、ツルムラサキ炒め、ミニちゃんが送ってくださった黒七味を添えた)、塩もみ人参(スダチ)、お昼のぶっかけ素麺の残り(豆腐、すりごま、オクラ)。

●2021年8月24日(火)薄曇り

ぐっすり眠って、7時半に起きた。
ゆうべは月が白く光っていた。
満月ではなかったけれど、カーテンを開けたまま寝ようとしたら、わさわさとして眠れなかった。
今朝はとても涼しい。
海から山から風が吹き抜け、部屋中の紙や布をハタハタさせている。
ゆうべも寝ながら、ユウトク君のことを考えていた。
六甲駅で待ち合わせをしたとき、ふたりはなかなかエスカレーターを上ってこなかった。
ユウトク君はいろいろなものが珍しいらしく、立ち止まってじっと見る。
中野さんちで散歩に行っていたときより、もっと、もっと。
それを見ているのが楽しくて、私もゆっくり歩いた。
中野さんはというと、何でもユウトク君に任せ、隣で同じものをみつめたり、離れたところから見守っていたり。
帰る日のお昼ごはんには、「ユウトク。タイ風のひき肉ごはんと、メキシコ風のパスタとどっちが食べたい?」と聞いていた。
自分はパスタが食べたいのに。
ずっと一緒にいると、私は知らない間にユウトク君の目で見よう、考えようとしている(自然にそうなる)ことにも気がついた。
ユウトク君は目の前のものをただじっとみつめ、それに反応して出てきた言葉をそのまましゃべる。
中野さんもそう。
私はふたりとは違って、理屈っぽいことをときどき言ってしまう。
そういうとき、自分の言ったことがものすごくつまらなく感じる。
自分はだめだなあと思う。
でも、自分はだめだなあと思うとき、体の皮がひと皮むけ、体の内側もぷっくり膨らんで、その膨らみに相手のおもしろさや、この世界のおもしろさがそのまま入ってくる。
だから、ふたりと一緒にいると、何をしていても楽しいんだと思う。
ひと晩泊まった翌朝、3人で川の上流に行こうとしていたときだったかな。
ユウトク君が聞いたことのない声を出した。
「ふうんんんんまげまいまいまいまい ふうんんんんまげまいまいまいまい」
同じフレーズを何度も繰り返す。
声というより、体が楽器になって、振動している感じ。
蝉が鳴いているみたいな声。
それが、たまらなくおもしろかった。
私も子どものころ、みっちゃんとその遊びをよくやった。
夜ごはんは、南瓜とじゃがいものポタージュ、 パン(川原さん作の粒マスタード、レバーペースト)

●2021年8月23日(月)曇り一時晴れ

6時半に目覚め、朝のラジオ。
曇り空でも洗濯をする。
風はひんやりなのだけど、太陽が顔をのぞかせると、そこだけ暑い。
暑いのと涼しいのが同時にある。
ゆうべから低温発酵させておいた生地で、パンを焼いた。
いつもの丸いのではなく、四角い型で。
中野さんとユウトク君が来たのはいつだっけ。
金曜日に来て、土曜日に帰ったんだ。
雨はほとんど降らなくて、晴れではないけれど、それだけで充分にありがたい日々。
わずか2日の間だったのに、とても長く感じた。
楽しかったなあ。
まだ余韻に浸っていたくて、しばらく掃除ができなかった。
今日は2階から掃除機をかけ、1階もやる。
雑巾がけをしながら、その場所にくると、ユウトク君の面影が浮かぶ。
そのたびに手が止まり、ボーッとしてしまうので、なかなか進まない。
2階から下ろしたユウトク君専用の腰掛けは、まだ置いてある。
午後になって、青空が出てきた。
シーツをはがして敷き布団を干した。
今、おとついから書いていた絵本の紹介コラムを仕上げ、お送りしたところ。
さて、現金出納帳をつけようかな。
夜ごはんは、焼き肉味の牛そぼろ丼(とうもろこしの炒り卵、キムチ)、もやし炒め、ツルムラサキとめかぶのぬるぬる和え、味噌汁(とうもろこし)。

●2021年8月19日(木)雨のち曇り

朝からとうもろこしの絵を描いていた。
これは、テレビのためのもの。
ああだこうだと描いていて、あっという間にお昼になってしまった。
1時半から打ち合わせ。
その場で文字を書いたり、小さな絵を描いたりして、3時くらいに終わった。

さて、中野さんのご実家でのこと、日記とはいえないようなメモをまたここに書いてみよう。

 ・8月13日(金)雨
ゆうべの夜ごはんは、ホットプレートで焼き餃子。
お姉さんと125個包んで、焼いた。
具は豚ひき肉、筍、椎茸、ニラ、キャベツ、おろしにんにく、おろししょうが、卵。
卵を入れるのに驚いた。
だからあんなにふっくら焼けるんだな。
そして具は、はみ出しそうなくらいにたっぷり包む。
包んだ餃子は、片栗粉を挟んで重ねるとくっつかないし、焼くときにうまいこと羽根ができる。
今朝は7時20分に起きた。
雨の音が近くて、山小屋で寝ているみたいだった。
朝ごはんのあと、中野さんの部屋でユウトク君と宿題。
漢字ドリル、割り算、日記をやった。
日記を書く前に、「毎日のことこと(神戸新聞の連載)」のゲラを持ってきたので、読んでもらった。
ところどころ、漢字のむずかしいところがあるのだけど、ゆうとく君はだいたい読める。
でも、「朝の冷やしそうめんに、日ひつじをもやしてポストまで手紙を出しにいくことにしました」と、ふざけるでもなく普通に読んだとき、私は手をたたいて喜んだ。
本当は「朝の涼しいうちに、日傘を差してポストまで手紙を出しにいくことにしました」だ。
宿題のあとで、リフォームのお手伝い。
2階の壁に、ローラーでボンドを塗った。
明日、珪藻土を塗るので、下塗りだ。
汗をびっしょりかいた。
夕方、お姉さんと夕飯の支度をしているとき、中野さんと子どもたちは、食卓でトランプの塔を建てていた。
倒れないよう慎重に、1枚ずつ乗せていく。
倒れてしまったら、また最初から。
そのうち奥の部屋から、お父さんとお母さんの御詠歌が聞こえてきた。
しばらくして、中野さんとユウトク君が仏壇の前へ。
途中から私も参加。
お姉さんも来た。
みんなで声を合わせ、低く歌う。
ユウトク君は歌わずに、腕をからませてきた。
私の二の腕はやわらかく、気持いいらしい。
いいお盆だな。
ニュースによると、コロナ感染者は今日、全国で2万人を超えたそう。
夜ごはんは、ちらし寿司(干し椎茸&かんぴょうの甘辛煮、きゅうりの塩もみ、カニカマ、錦糸卵)、ひじき煮(人参、油揚げ)、キクラゲの生姜炒め(かつお節)。
お風呂上がりに、子どもたちと中野さんと4人でしんけいすいじゃく(トランプ)。
そのあとで電気を消し、プラネタリウムを天井に映した。
お兄さん、ソウリン君、ユウトク君と床に寝そべって星座を見る。
お姉さんはお風呂、中野さんは食卓に座って見ていた。

 ・8月14日(土)小雨
お昼ごはんを食べ、お父さん、お姉さん、ユウトク君と志方牛を買いにドライブ。
ロース、赤身、ハラミ(前回の日記に、間違えてミスジと書いてしまった)、セセリ。
牛レバーと牛タンも買った。
帰ってきたら、中野さんがベニア板で、珪藻土をのせる道具を作っていた。
持つところもちゃんとついている。
お母さんをのぞいた家族全員で壁塗り。
ソウリン君は脚立に乗って、とても上手に塗る。
飽きずに、ずっとやっている。
私は、生まれてはじめて壁を塗った。
とても楽しい。
しばらく休憩し、隣の部屋の壁をやる。
珪藻土がなくなったので、続きはまたこんど。
汗びっしょりかいて、私がいちばんにシャワー。
さっぱりして、夜ごはんの支度。
夜ごはんは、ホットプレート焼き肉。
お風呂に入る前に、中野さん、子どもたちと夕暮れの散歩。
緑のあぜ道を歩いた。

 ・8月15日(日)晴れ
7時かと思って起きたら、8時半だった。
丹波篠山へドライブ。
お昼にお蕎麦を食べた。
夜ごはんは、ゴーヤーフライ、カニカマフライ、ポテトフライ、青じそ天ぷら、ココナッツミルクカレー(玉ねぎ、じゃがいも、人参)、スパイスチキン。
夜ごはんのあと、お兄さんと子どもたちと4人で夕暮れの散歩。
きのう中野さんと歩いたのと同じあぜ道を歩いた。
エンマコウロギ、スズムシ、フィリリリリが鳴いていた。
「フィリリリリーと鳴く虫はな、あだ名がフィリリリやけど、本当の名前はクサヒバリやで」とユウトク君が教えてくれた。
お風呂から出たら、テレパシーごっこ。
これは、中野さんが保育士のころによくやっていた、真剣な遊び。
まず、ひとりが紙に絵を描き、小さく折りたたんで相手に手渡す。
次に、相手のおでこに向かって、何の絵を描いたかを強く思う。
相手は、絵を描いた人の目をじっと見て、それを当て、紙に描く。
描けたら、みんなの前で両方の紙を開く。
この、浮かび上がってくる絵を、そのまま紙に写し取る感じは、中野さんが絵を描くときに少し似ているのだそう。

というわけで、夜ごはんは、豚こま切れ肉とツルムラサキの醤油炒め、干し椎茸の甘辛煮、青唐辛子みそ、スイカの皮の塩もみ、半熟ゆで卵(冷やご飯と共にセイロで蒸した)、とうもろこしの味噌汁、ご飯。
お風呂上がり、空のまん中にぴかぴかの月。
明日は、中野さんがユウトク君を連れて、うちに泊まりにくる。
これが4回目の夏休みだ。

●2021年8月18日(水)雨のち晴れ、のち雨

中野さんの家から帰ってきたら、六甲は季節が変わっていた。
とても涼しい。
肌寒いほど。
蝉の声もずいぶん弱くなった。
明け方にはヒグラシが聞こえていたけれど、朝はツクツクボウシが鳴いていた。
もう夏も終わろうとしているんだろうか。
今、チューイ、チューイという声がして、見ると、お腹がオレンジの小鳥。
頭と首の辺りが白い。
ジョウビタキかと思って調べてみたら、ヤマガラだ!
また雨が降ってきた。
中野家でのお盆の間も、ずっと雨だった。
雨降りの日に、家の中で子どもたちと過ごしていたら、自分の小さいころのことを思い出した。
雨戸が半分閉めてあり、電気をつけて遊ぶ感じ。
外の様子が分からなく、音がこもって聞こえてくるような感じ。
家や家族に守られている、温かな感じ。
日曜日だったかな、一日だけ晴れたので、丹波篠山にドライブをした。
帰る日に、ユウトク君とふたりで雨上がりの田んぼを散歩したのも楽しかったな。
ふさふさとした苔や、丈の低い植物を探してゆっくり歩いた。
あぜ道で、ニラの花が蕾になっていた。
葉をちぎって匂いをかぎ、確かめてみた。
やっぱりニラだ!
ハンミョウの幼虫は、ニラでつり上げられるんだそう。 「シロツメクサやツユクサも、きれいだと思う」と私が言うと、「花はひとつだけがええねん」とユウトク君は言って、小さな花のついた雑草を1本だけ摘んだ。
ユウトク君は川や水路があるたびにしゃがみこみ、水の中をじっと見て動かない。
小さな魚や貝、生き物の卵、水草なんかを見ているらしい。
私もしゃがんでみる。
魚や貝がいるのは見えるのだけど、何も感じない。
ユウトク君には、どんなふうに見えているんだろう。
帰って、お昼ごはん(ココナツカレーの残り、ソウリン君が作ったハムと紫ピーマンのケチャップ炒め)を食べ、縁側で蚊に刺されながらテラリウムを作った。
透明なガラスボウルを、目の高さに持ち上げて見ると、小さな森のよう。
その森には岩山があり、緑の湿原に薄いピンクの花が1輪だけ咲いていた。

3時くらいから少しずつ晴れてきた。
今は、青空が見えている。
さて、「コープさん」にとうもろこしを買いにいこう。
明日は午後から、ディレクターさんおふたりが打ち合わせにいらっしゃる。
夜ごはんは、鯖のみりん干し、ツルムラサキのおひたし、めかぶ、スイカの皮の塩もみ、ご飯。

●2021年8月12日(木)雨

夜中に大雨の音で目が覚め、あちこちの窓を閉めにいった。
ひさしぶりの雨。
とても涼しく、よく眠れた。
ゆうべは『趣味どきっ!』の「人と暮らしと、台所」にみどりちゃんが出ていて、見終わってすぐに寝たのだけれど、胸のあたりがずっと温かかった。
みどりちゃんは、いいなあ。
話している言葉にも、体にも贅肉がついていない。
かっこいいなあ。
昌ちゃんが作ったという、紙でできた家の模型にぐっときた。 
遠く離れて、何年も会えなくても、好きな人たちが元気でいるというのは、とても嬉しいことだな。
雨は強く降ったり、静かに降ったり。
今日は午後から、中野さんの家へ。
お盆休みをご家族と過ごす予定。
なので、あちこち念入りに掃除した。
帰ってきたときに、すっきりと気持がいいように。
これも、ずっと前にみどりちゃんから教わったこと。
では、行ってきます。

●2021年8月10日(火)晴れ

ゆうべは涼しかった。
クーラーをつけていないのに、つけているみたいだった。
夜中に起きて確かめたほど。
5時前にヒグラシで目が覚め、カーテンを開け、窓を開けたら秋みたいなひんやりした風が吹いていた。
きのう、中野さんが送ってくださったヒマワリの絵を、大きな画面でまた見ている。
いいなあ。
水色の空に、ヒマワリは茶色。
空があんまり眩しいから、影になって、本当に茶色く見えるんだと思う。
ソウリンが種を植えたヒマワリ。
もう5つも大輪の花が咲いたんだ。
絵の中に入り切らなくて、溢れてしまったような絵。
私はこういう絵が大好き。
さあ、今日は何をしよう。
蝉の声は、今日ちょっと弱くなっている気がする。
そうでもないんだろうか。
午後、郵便局へ。
「毎日のことこと」のために、蝉の小さな絵を描いて出しにいった。
銀行やコンビニをまわって、「MORIS」へ。
この間煮たひじきがおいしくできたので、おすそわけをしに。
ヒロミさんが、おもしろそうな本を貸してくださった。
夜ごはんは、蒸し寿司(この間のちらし寿司の残りをセイロで温め、まぐろの中落ちとねぎを和え、のせて食べた)、焼き茄子&焼きピーマン(お昼のぶっかけそうめんにのせた残り)。
夜ごはんのあと、夕焼けがきれいなので2階に上がったら、茜色が海に映っていた。
ふり向いたら、部屋の中まで夕焼け。
床が茜に染まっているのだ。

●2021年8月6日(金)薄曇り

8時に起きた。
疲れを取ろうと思って、わざと寝坊した。
ゆうべは12時ごろにクーラーを消し、窓を開けて寝ていたのだけど、ドラエモン扇風機だけでずいぶん涼しかった。
ぐっすり眠って、夢もいろいろみた気がする。
テレビの撮影は、きのうぶじに終わった。
毎日楽しかったなあ。
いつもの私の、いろんな場面を撮っていただいた。
濱田さんは、びっくりするほど重たいカメラで撮ってらした。 「これは片づけた方がいいですか?」と、台所の余計な物をどかそうとしたら、「いいえ、そのままで大丈夫」と濱田さんに言われた。 「高山さんがすることは、何でも正解です」とも。
なんだかずーっと、撮られていた。
でも、ちっともいやではなく、嬉しい感じ。 
濱田さんがトイレとかでいないときには、何も言わずにお手伝いの若者がカメラを回していたり(カメラは下に置いたまま、レンズだけ動かしていたので、最初は気づかなかった)。
台本はなく、濱田さんが撮った映像を見て、これから番組を組み立てるらしい。
そんな編集の仕方は、ディレクターさんもはじめてなのだそう。
「手探りだけど、楽しそうな気もするのでやってみます」と、打ち合わせのときにおっしゃっていた。
なんだかこの感じは、『自炊。何にしようか』の本作りにも似ている。
いったい、どんな番組になるんだろう。
秋の放送だそうです。
詳しいことはまだ書けないけれど、時期が来たら「ちかごろの」でお知らせします。
それにしても今日はずいぶん涼しい。
きのうはあんなに蒸し暑かったのに。
山からのひんやりした風が、玄関の通路を通って吹いてくる。
私はきのうとおとついのことを思い出しながら、あちこち掃除機をかけ、雑巾がけをした。
「みんな、お疲れさま」と声をかけながら。
みんなというのはこの家と、家にある物もの。
それから母と、去年亡くなった友人。
外のロケから帰ってきたとき、濱田さんが誰もいない家に向かって「ただいま」と言った。
「なんか、合宿みたいですね」とディレクターさんも言って、「ほんとやなあ」となった。
本当にこの2日間、スタッフ7人と私で、共同生活をしているみたいだった。
きのうのお昼は、「丸徳寿司」の細巻きパックと、太巻き2種。
私は冷蔵庫のものをあるだけ全部使って、みんなに賄いを作った。
焼き茄子、枝豆とひじき煮の白和え、しらすおろし、スイカの皮の塩もみ(青じそ)、ワカメと生姜のポン酢醤油和え……あとは何を作ったんだっけ。
なので冷蔵庫は今、すっからかん。
あっちゃんが送ってくれた山口のひじきで、しょうがと豚肉入りの塩味のひじき煮を作った。
あと、あぜつさんが送ってくださった大分の干し椎茸をもどし、甘じょっぱく煮はじめたところ。
干し椎茸の煮汁がたっぷりめだったので、どうしてもかんぴょうを加えて煮たくなり、散歩がてら「コープさん」に買いにいった。

お風呂上がり、虹が出た。
同時に紀伊半島の先の方で、スコールが降っているのが分かる(空は青く、雲につながって白くなっている)。
そのあとも、違う場所で出た。
ぜんぶで3回。
きのう出たら、濱田さんはきっと撮っただろうな。
でも、それではあまりに出来過ぎだ。
夜ごはんは、じゃがいものターメリック炒め、ひじきの塩味煮、南風荘ビール。

●2021年8月4日(水)快晴

ぐっすり眠って5時半に起きた。
熱も下がり、すっきりしている。
ゆうべ、夜中に目が覚めたとき、ジ、ジ、ジと小さな音がした。
規則的に繰り返し、ずっとなっていた。
小鳥が地鳴きをしているのかなと思って窓を開けたら、蝉だった。
まだ辺りは暗く、時計を見ると3時。
そのあとずいぶんたってから、いつものようにヒグラシが鳴きはじめた。
生まれたてのヒグラシが、鳴く練習をしていたんだろうか。
今日はテレビの撮影。
8時半にディレクターおふたりと、メイクさんがいらっしゃる。
それにしてもいいお天気。
海が真っ青。
きのうの雨と霧で、洗濯されたみたいな青だ。
濱田さんはきっと、晴れ男だな。

夕暮れのシーンを最後に、撮影は7時半に終わった。
明日の集合は10時。
部屋の隅に機材が集められ、黒い布がかかっている。
まだみんながいるみたいな感じ。
夜ごはんは、ロケ弁(「丸徳寿司」の太巻きと、お稲荷さん)の残り、きゅうりとピーマンの塩もみ(青じそ、ポン酢醤油)。

●2021年8月3日(火)雨のち曇り

ゆうべから降りはじめた雨は、まだ降っている。
緑が濡れて気持よさそう。
葉の先っぽまで、のびのびと伸ばしているみたいに見える。
霧に包まれているのも、とっても久しぶり。
空も海も街も真っ白だ。
でも、蝉は鳴いている。
ジャンジャンシャカシャカミンミンワンワン。
窓からはひんやりした風。
なんだか山小屋にいるみたい。
私は靴下を履いた。
さて。
今日は、ちくちくお裁縫と、明日からの撮影の支度をゆっくりやろう。
今縫っているのは、緑と白の縦縞の、夏のワンピース。
中野さんのお姉さんのワンピースから型紙をとった、アッパッパーみたいな簡単服。
あれ? 明るくなってきた。
霧の向こうから光が当たっているみたい。
蝉たちの声も、もうひとまわり賑やかになった。
お昼ごはんのあと、なんとなしに体が怠く、微熱が出てきた。
夏バテなのか、ワクチン接種のせいなのか。
今夜は早めに寝よう。
夜ごはんは、鯖の西京味噌漬け、ピーマンのセイロ蒸し(ポン酢醤油)、卵豆腐(ワカメ)、ひじき煮の白和え、ゆかりおにぎり。

●2021年7月30日(土)ぼんやりした晴れ

ヒグラシの声で目が醒めた。
まだ、5時半。
カーテンの隙間から、薄明かりが漏れている。
ラジオをつけ、6時半に起きた。
その時点ですでに、クマゼミの大合唱。
窓を開けると、耳の中で鳴っているみたい。
「スス」の窓に向かって、「おはよう」の挨拶。
川原さんはまだ寝ているかな。
午後から、「毎日のことこと(神戸新聞の連載)」を書きはじめた。
さて、そろそろ支度をして「MORIS」に出掛けよう。
宮下さんもいらっしゃるし、新しい川原さんの絵が、どんなふうに飾られているのか楽しみだ。
今日は、いくらか涼しいような気がする。
ドラエモン扇風機のおかげもあるのかな。
パタパタと音がして、何だろうと思ったら、大粒の雨。
お天気雨だ。
雨のなか、ヒグラシが鳴いている。
空が青いまましばらく降って、やんだ。

坂を下りるとき、濡れていた道路はもうすっかり乾いていた。
暑い暑い、こんどはクマゼミ。
夜ごはんは、元町の老舗の鰻屋さんで。
鰻重(みそ汁、漬け物)と肝。

●2021年7月29日(木)曇りのち晴れ

川原さんが来てから、あっという間の1週間だった。
なんだか、ずーっと日記が書けなかった。
毎朝、朝ごはんをふたりで食べ、洗濯ものをたっぷり干し、あちこち軽く掃除して。
あれこれおしゃべりのあと、10時近くになると川原さんは支度をし、「MORIS」に出掛けていった。
その間、私は自分の仕事をしたり、ちくちくお裁縫をしたり。
テレビの打ち合わせもあった。
コロナワクチンを受けにいったこともあったっけ。
「MORIS」の定休日の2日間は、ずっと一緒に過ごした。
ごはんを作ったり、お昼寝したりしている間、川原さんは絵を描いていた。
早い夕方から窓辺のテーブルで呑みはじめ、小さなおつまみをいろいろ作って、空の色が変わっていくのを眺めたり。
満月の1日前の月は、オレンジ色の大きいのが、空のずいぶん下の方にあったっけ。
時間がたってもほとんど動かず、大きいまま。
満月の日も大きかったけれど、予想外のところから昇ったり。
考えてみたら、この家で誰かと1週間を共に過ごすのは初めてだった。
川原さんは20年来の親友だし、ロシアやウズベキスタンの旅でも2週間くらい一緒にいた。
あのときもいろいろあったけど、今回は、なんだか新しい川原さんに出会い直したような感じもあった。
私自身も、ふだんは隠れている面倒くさい自分に気づいたり。
誰かと日常を過ごすって、一筋縄ではいかなくて、おもしろい。
今日から川原さんは、「MORIS」の上にある「スス」にお引っ越し。
私は8月4日、5日とテレビの撮影があるので、ぼちぼちひとりの生活に戻ろうと思う。
さて。
そろそろお昼だ。
朝ドラを見ながら、食べよう。
午後からは、半月分たまっていたレシートを整理し、現金出納帳に記入した。
朝、川原さんがていねいに掃除をしてくれたおがげで、どこの床を歩いてもさらっとして気持いい。
今は5時半。
蝉はミンミン、空はソーダアイスの色合。
今日からうちに、上下左右に回転するサーキュレーター(川原さんおすすめの)がやってきた。
1階はクーラーがないので、滞っていた空気が流れるようになった。
とっても涼しい。
頭がまん丸で胴体が小さく、なんとなくドラエモンみたいな形。
これからはドラエモン扇風機と呼ぼう。
夜ごはんは、ひじきの薄味煮(油揚げ、ズッキーニ)、モロヤイヤのおひたし(青じそ、みょうが、ポン酢醤油)、ふわふわ納豆(卵白、ねぎ)、焼き茄子、ご飯。

●2021年7月22日(木)快晴

今日も暑いな。
汗をかきながら、あちこち掃除した。
シャワーを浴びて着替えたら、いっぺんに涼しくなった。
海が青い。
さあ、今日から川原さんと共同生活。
早い夕方、夏の空に向かって窓辺で乾杯をしたいな。
夜ごはんは川原さんと。
ミニトマトのサラダ(白ごま油、塩)、ゆでオクラ、キクラゲとササミと青じそのポン酢醤油和え(ごま油)、焼売(冷凍しておいたいつぞやの)、混ぜこぜチャーハン(しめじトマトのバルサミコ酢炒め、青じそ)、缶チューハイ、ビール、ハイボール(川原さんのお土産の高級ウイスキーで)。

●2021年7月21日(水)快晴

中野さんの家から帰ってきたら、六甲がすっかり夏になっていた。
蝉も本格的に鳴いている。
海も空も真っ青だ。
そして、暑い!
飲んでも飲んでものどが乾く。
中野さんちも暑かったな。
毎日、毎日、外に出て遊ぶのはむりな暑さだった。
最後の日は、夕ごはんを食べてから、子どもたちに誘われて夕陽を見にいった。
オレンジ色に光る空の方に向かって、中野さんと子どもたちと4人で歩いた。
見事な夕空だったけど、草むらは蚊がいっぱいで、いちばん小さいソウリン君の頭のまわりに群がるのがかわいそうで、私は蚊を追い払いながらほうほうのていで帰ってきた。
帰り道、ユウトク君が「なおみさん、星見たい?」と聞いてきて、お風呂上がりにまた4人でベランダに上った。
遠くの空に、音のない稲妻が光っていた。
4泊5日の間につけていた、日記ともいえないようなメモを、ここに少し書き写してみます。
   ・
7月17日(土)快晴
7時起床。
ゆうべの夜ごはんは、スパイスたっぷりミートボールカレー。
子どもたちには、ハウスバーモントカレー甘口をプラス。
午前中に中野さん、お姉さん、子どもたちと志方町へドライブ。
志方東公園という、森の中にある自然公園で虫穫りをした。
ユウトク君はハンミョウを1匹つかまえた。
派手な色をしていない、ニワハンミョウという珍しい品種だそう。
あちこちに、いろいろな種類のキノコが生えていた。
食べられそうな肉厚のキノコの匂いを嗅いだら、椎茸そっくりだった。
タマゴダケをはじめて見た(殻をやぶって生えてくるところが、ゆで卵にそっくり)。
バードウォッチングの小屋の向こうに小川があり、みんなでせせらぎに下りた。
帰りに、牛肉屋さんでいろんな種類の肉を買った。
志方牛は有名なのだそう。
お昼ごはんは、牛肉屋さんの揚げたてのコロッケと、ホルモン串カツ(車の中で食べた)。
帰ってから、中野さんの部屋で、ユウトク君とふたりで漢字ドリルの宿題。
間違えて覚えている漢字がけっこうあり、自分でも驚いた。
私の方こそが勉強になった。
シャワーを浴びて、少し早めの夜ごはん。
キクラゲの生姜炒め(ごま油、酒、醤油)、ホットプレート焼き肉(ロース、赤身、ミスジ、セセリ、玉ねぎ、ゆでたオクラ、長芋、ピーマン、にんにく)。
ソウリン君が焼き肉屋のおやじさんみたいになって、次々焼いてくれた。
牛肉はどれもこれも、たまらないおいしさだった。
   ・ 7月18日(日)快晴
朝、時計の針が5時半かと思ったら、もう6時半だった。
ゆうべはぐっすり。
クーラーをつけているみたいに涼しかった。
カエルの声がずっとしていた。
田舎の夜は、騒がしい。
私「鳴いているのはカエルだけですか?」
中野さん「いいえ、いろんな虫が鳴いています」
やっぱり、どうりで重複音だった。
中野さん、お姉さん、お義兄さんは、今2階の部屋の天井貼りをしている。
トントントントンという音を聞きながら、私は下の台所でとうもろこし(3本分)をほぐしたり、お裁縫をしたり。
夜ごはんは、枝豆、生春巻き、とうもろこしのかき揚げ(3分の1はグリーンピース入り)、ご飯。
ユウトク君から「はい、なおみさん食べてみて」と渡される枝豆は、枝豆ではなくかき揚げのとうもろこしが3粒入っている。
   ・
7月19日(月)快晴
ゆうべはカエルの声がしなかった。
どうして?
怖い夢をみた。
自分の住んでいる家がなくなって、森の奥の難民キャンプのようなところにいるのだけど、みんなオシャレをしていて、私だけ着の身着のまま。
みな東京の人たちらしいのだけど、知っている人は誰もいない。
私は誰かに財布の中身を盗まれてしまい、とても困っている夢。
今日、ユウトク君は学校。
ソウリン君も幼稚園。
海の日だと思っていたのは、私だけ。
お姉さんは送り迎えで忙しい。
中野さんは、ひとりで2階の天井貼りの続き。
トントン音を聞きながら、私は台所仕事。
親戚の方にいただいた小松菜で、煮浸し(油揚げ入り)を作った。
トマトとミニトマトもたくさんいただいたので、細かく刻んで鍋いっぱいのトマトソースを作った。
夜ごはんは、トマトソースのパスタ(ズッキーニと茄子をオリーブオイルで焼いて、茄子はトマトソースに加えて軽く煮、ズッキーニは盛りつけてから添えた)、タンドリー・チキン風(パエリアミックススパイス、インドのミックススパイス、ヨーグルト、おろしにんにくを揉み込んで、オーブンで焼いた)。
タンドリー・チキン風が、ユウトク君に人気だった。
こういうの、子どもたちも大好きなんだな。
   ・
7月20日(火)快晴
朝の台所は果物の匂い。
お母さんが、みんなのヨーグルトを支度している。
加古川メロン、キウイ、スイカ、ブルーベリー(冷凍)。
日記メモはここまで。
この日は一学期最後の日。
私は、午後3時15分発の電車で帰ってきた。
学校から帰ってきたユウトク君、ソウリン君、お姉さん、中野さんが駅までお見送りしてくれた。
こうして、私の夏休み第一弾は終わった。
明日から川原さんが東京からやってきて、合宿がはじまる!
これが私の夏休みの第二弾。
川原さんは23日から「MORIS」で展覧会を開くので、明日はその搬入。
美容院の帰りに、私も手伝いにいくつもり。
今は5時半。
青いなあ、海。
蝉はシャンシャン、クマ蝉だけではない。
ミンミン蝉も、ヒグラシも鳴いている。
ツバメはスイスイ、トンボも瞬間移動みたいに飛んでいる。
蜂もビーーーッと、今横切った。
まだまだ明るいから、ビールを飲もうかな。
思い出したのだけど、今朝私は、歯医者さんと「コープさん」に行ったのだった。
なんだか一日が長く感じる。
中野さんちでも思ったのだけど、夏って一日一日の区切りが曖昧。
長い長い永遠の夏の一日は、まだはじまったばかりだ。
夜ごはんは、キクラゲとササミのポン酢醤油和え(青じそ)、しめじトマトのバルサミコ酢炒め。
お昼はちらし寿司をしっかり食べたので、ご飯はなし。

●2021年7月16日(金)雨のち薄い晴れ

5時半に起きた。
朝方、雨が降っていたけれど、すぐにやんだ。
今朝はとても涼しい。
対岸の山が青くくっきりと、紀伊半島の端までずっと続いている。
青い山脈。
朝ごはんのパンは、青い山を見ながら食べた。
海はなんとなく黄色い。
今日から私は、中野さんのご実家へ。
子どもたちはまだ夏休みの前だけど、月曜日が海の日なので3連休。
外で遊ぼう。
私の夏休み、第一弾。
では、行ってきます。

●2021年7月15日(木)雨のち晴れ

6時に起きた。
9時半からテレビの打ち合わせなので、いつもよりてきぱき動く。
起きたときには小雨が降っていて、またきのうみたいな雷雨になったらどうしようと案じていたのだけど、だんだん晴れてきた。
ああ、よかった。
お昼ごはんにチキンカレー(火曜日に作っておいた)を食べ、いつもの散歩道を案内し、川の上流までお散歩。
今日から夏になったみたいな暑さだった。
私はスカートをたくし上げ、しばしせせらぎに入った。
水がきれいで、冷たくて、気持よかったな。
そのまま3人でてくてく歩いて六甲まで下り、淡河の野菜を買って、六甲道で解散。
私は区役所で、県知事選挙の期日前投票をすませ、JRで元町に出て、生地屋さんにも行った。
六甲で「MORIS」に寄り、軽く買い物をして帰ってきた。
今日はよく歩いたな。
夏はやっぱり外が気持いい。
帰り道、ディレクターさんのひとりが、「今日は夏休みみたいでした」とおっしゃっていた。
本当にその通り。
夜ごはんは、トマト焼きプレート(玉ねぎ、にんにく、豚バラ薄切り肉、酒、醤油、バター)&ニラと青じその塩炒め、ご飯添え。

●2021年7月14日(水)晴れ一時雨

朝からお天気雨が降った。
けっこう盛大に降って、すぐに上がった。
降っているとき、地面のなまぐさい匂いが上ってきていた。
緑の濃い匂いもする。
こういうときって、どうしてか胸がいっぱいになる。
何でなのかは分からないのだけれど。
感情とは関係なしに、体が反応して、胸の内側が膨らむような感じ。
さ、今日も『帰ってきた 日々ごはん⑩』のパソコン校正だ。
明日はテレビの打ち合わせで、ディレクターさんおふたりがいらっしゃるので、なんとなく支度をしておこう。
お昼前、大きな雷が鳴って、窓を閉めに階段を駆上がった。
住吉の辺りだけ白くけぶって、幕を下ろしたようになっている。
あそこはきっと今、大雨が降っているのだ。
間もなく、こちらも降ってきた。
大粒の雨と、雷。
ものすごい音!
光ると同時に鳴り響く。
怖いので、パソコンをしまった。
午後、晴れ間が出てきたので、校正の続き。
10月まで終わった。
『帰ってきた 日々ごはん⑩』は、2018年6月から12月までの日記。
このころは本の種が続々と生まれ、育まれていた時期だったんだな。
『ふたごのかがみ ピカルとヒカラ』は、つよしさんの絵が生まれた。
そして、大雨が続いた日に『それから それから』の中野さんの絵が。
『自炊。何にしようか』、『本と体』、『日めくりだより』。
みんなこの時期だったんだ。
夜ごはんは、バナナとチーズの焼きサンド、サラダ(スイカの塩もみ、きゅうり、フレンチドレッシング)。

●2021年7月11日(日)晴れ

朝から洗濯ものをたっぷり干し、「気ぬけごはん」を書いていた。
よく晴れている。
4時。
どうやら書けたみたい。
暑い暑いと言いながら、あちこち掃除機をかけ、雑巾がけもした。
いろいろさっぱりしたので、お風呂にも早めに入ってしまう。
2階で涼んでいたら、ああ、きたきた。
ツバメがやってきた。
空を旋回し、どこかに飛んでいった。
数えたら15羽くらいいた。
これは、きのうの夕方からはじまった。
7時を過ぎたころにまた戻ってくると、うちの前の電線にとまって羽繕いをしたり、2羽でつつき合ったり。
そうして暮れかかった空を、楽しくてたまらないという感じで飛びまわる。
きっと、今年巣立った若いツバメたちだ。
それをきのうも、ビールを飲みながらずっと眺めていた。
そのあとでスイセイから電話があり、ひさしぶりに話した。
ほとんど雑談だったけど、スイセイは元気そうで、なんだか呑気な声を出していた。
それがとても嬉しかった。
考えてみたら、声を聞いたのは1年ぶりかも。
いや多分、2年ぶりくらいだろう。
いやいや、ビールなど呑みながら、あんなふうにくつろいで話せたのは、神戸に来てからはじめてのことだ。
今、この日記は2階の床にペタンと座って書いている。
海も空も青く、光る夏の雲がもくもく。
もうじき梅雨が明けるんじゃないだろうか。
ゴミを出しにいったとき、外の空気は完全に夏だったもの。
夜ごはんは、フライパン焼きサンド(マスタード、ハム、玉ねぎ、ペコリーノ・チーズ)、きゅうりとトマトのサラダ(フレンチドレッシング)。
日暮れ前、ツバメが6羽帰ってきた。
今日もまた、この夕空を飛んでいる自分の体が、気持よくてたまらないというふう。
風にのっていたかと思うと、パッと翻り、斜めになったまま猫森に向かって突っ込んだり。
見ている私のすぐそばまで飛んできて、羽の内側を見せてくれるツバメもいた。

●2021年7月9日(金)晴れのち

6時少し前に起きた。
雲は薄く、青空が見える。
母の命日。
病床日記の最後の日を読んだ。
姉の記録は15:30、18:00で終わっている。
今朝、お風呂から出て階段を上がっているとき、はじめて蝉の声がした。
まだ1匹。
シャンシャンと鳴く、クマ蝉だ。
中野さんちの方はもうとっくに鳴いていて、「うるさいくらいです」と、この間電話でおっしゃっていた。
母の祭壇に白い布をかけてみた。
前に実家からもらってきた、レース編みの縁飾りのある古いクロス。
私が子どものころ、教会の集まりがあると座卓にかけていた。
ロウソクのロウが落ちた跡や、こすれて穴が空いたところに、私が白い糸で刺繍をしたクロスだ。
11時。
いつ雨が降ってもおかしくないような空模様。
トネリコの花の匂いが、風とともに入ってくる。
さ、続きの仕事にとりかかろう。
今やっているのは、『帰ってきた 日々ごはん⑩』のパソコン上での校正。
夕方、雨上がりの散歩。
植物屋さんまで。
母のお花を買いに。
青い実のついたブルーベリーと、赤い小さな実の枝を買った。
中野さんは百合の花の絵を、川原さんはクレチマスとカラーをお花屋さんで買って写真を撮り、母のために送ってくれたので。
夜ごはんは、パッタイ風焼きそば(豚ひき肉、細めのもやし、ニラ、ミニトマト、オイスターソース、ナンプラー、スイートチリソース)。

●2021年7月6日(火)曇り

5時に起きた。
明るくなっていたので。
窓を開けると、トネリコの花の匂いでいっぱいだ。
いいなあトネリコ。
奥ゆかしくも、主張をしている匂い。
このところ私はまた、朝起きぬけに母の病床日記を読むようになった。
おとといは、夢をみた母が「けさ、ごてんばいった」「そして、あまなつかった」と、言った日。
「誰と?」と私が聞くと、「みんな」。
「食べたの?」
「うん、うん」と無言でうなずいた。
夕方に、また夢をみたらしい母は、「いま、みずまいた」「おおきなやおやへよった。リュックしょって」と言った。
今日の母は微熱が出て、体が怠いことを盛んに訴える
「かったるい」と言うので、姉が背中をさすってあげたら、「あした、またおねがい」と言った。
痛み止めの薬(カロナール)をすりつぶしたものを、とろみのついたお茶に混ぜ、飲みはじめたころだ。
きのう私は、コロナのワクチンを受けにいった。
処方してもらった痛み止めの薬を飲んだのだけど、母と同じカロナールだった。
くったりと眠くなったくらいで、あとは問題なし。
おつゆだけ作ってベッドに横になっていたら、夕方、ヒロミさんがちらし寿司を届けにきてくださった。
ワクチンを受けた日は、ごはんを作るのがおっくうになるから気遣ってくださったのだ。
こういうときのヒロミさんの押しの強さは、純真無垢なので、遠慮なんていうこちらの甘い気持などぶっ飛んでしまう。
お断りすることなど、とてもできない。
玄関口さっと手渡され、白いブラウスの裾を翻し颯爽と帰っていくヒロミさんは、六甲の女親分みたいだと思った。
私は、ありがたくてたまらない。
なんだか、お祝いをしてくださったような感じもする。
ぶじ、ワクチンを受けられたことへの。
外にタクシーを停め、ヒロミさんがこんな坂の上までひとりで来てくださったこと、私はずっと忘れないと思う。
ちらし寿司のふたを開けたら、あまりに美しかったので写真を撮った。
おいしくて、おいしくて、3分の2を食べ残しておいた。
それを今日はセイロで温め、お昼ごはんにいただく予定。
今朝は、左腕が上がらないくらいで、いつもと変わらない。
思い出した。
何日か前の日記で、「水道橋の市場」と書いてしまったのだけど、「水道筋の市場」の間違いでした。
ヒロミさんが気づき、すぐにメールで教えてくださった。
何から何まで本当に親分さんだ。
夕方になる前に、ポストまで散歩。
ひさしぶりに「夏休みの小径(前からこう呼んでいたろうか。いつだったか小学生の男の子ふたりが、夏草が繁るこの坂道を上っていたので)」の方から帰ってきた。
トネリコの花の木をみつけ、ひと枝いただいた。
母の祭壇に供えようと思って。
夜ごはんは、今年初のぶっかけそうめん(トマト、青じそ、みょうが、おろし生姜)、茄子と甘唐辛子の揚げびたし。

●2021年7月4日(日)ぼんやりした晴れ

海も街も霧がかかっているのに、空は明るい。
湿気はもりもり。
緑ももりもり。
でも、さわさわと風。
猫森がざわめいて、盛んに葉を翻している。
トネリコの花が咲きはじめた。
葉っぱの続きのように咲く、クリーム色の小さな花の集まり。
近くを通ると花粉みたいな、蝶の鱗粉みたいな匂いがする。
私はこの花が好き。
ゆうべのうちに冷蔵庫で発酵させておいたパン生地を、今ベッドの上で二次発酵中。
窓を閉めておくと、温室みたいになる。
湿気もほどいい感じ。
そうだ。
ゆうべは10時過ぎにカーテンを閉め、さあ寝ようと思ったら、イノシシの親子がちょうど下を歩いているところだった。
角のところで母親が地面の匂いをかぎ、うりぼうたちも真似をして、しばらくもたもたしていた。
今日も、窓辺でちくちくお裁縫。
空の高いところには灰色の雲がたれこめているのだけど、海との間は明るい。
今縫っているのは、夏のパンツ。
薄手の水色のギンガムチェック。
指触りがとてもいい。
ひんやりとした風が吹き抜ける。
山口から帰ってきて、もう1週間がたつのだな。
夜ごはんはピザ(パン生地1個分を丸く伸ばしてトマトペーストを塗り、ミニトマト、クリームチーズ、玉ねぎ、ペコリーノチーズ)、南瓜ノサラダ、赤い皮のじゃがいもサラダ、いつぞやのピーマン丸ごとオイル蒸し、アイスコーヒー。

●2021年7月3日(土)まあまあの晴れ

きのうは皮膚科に行って、「MORIS」をのぞいたら、ちょうどヒサコさんがいらした。
ヒサコさんはヒロミさんの二つ年上のお友だち。
おしゃべりしているうちに、今夜は急きょ、ヒサコさんの家におよばれに行くことになった。
この間、水道橋の市場で新鮮な川津エビ(淡路島産の小エビ)を買ってきて、ヒサコさんの家で三つ葉といっしょにかき揚げにして食べたら、ものすごくおいしかったという話をヒロミさんから聞いていて、それがとっても羨ましかった。
なので、もう、今日しかない!と思って。
全員一致で「そうしましょう」ということになり、それからが早かった。
ヒロミさんは魚屋さんに電話をして、エビを予約。
今日子ちゃんと私で、淡河の野菜を買いに出た。
戻ってきて、こんどはヒロミさんとバスに乗って水道橋の市場へ。
その間ずっと、雨はじとじと降り続いていたのだけれど、ものともせずに。
そしてまたバスに乗って、ヒロミさんの家で下ごしらえをし、食材を抱え、ご近所のヒサコさんの家に行ったのだった。
メニューは、牛肉とセロリの炒めもの(ヒロミさん作)、野ぶきの薄味煮&たたききゅうり(私作)、水なすのぬか漬け、川津エビと三つ葉のかき揚げ、とうもろこしのかき揚げ2種(黄色いとうもろこしはセロリの葉と、白い実のはモロッコいんげんと)、モロッコいんげんのフライ、ヒレカツ、ジンジャーエール(ウィルキンソンの)、炭酸。
ヒサコさんが卓上のフライヤーで揚げてくださったのが、天ぷら屋さんのカウンターに座っているみたいに次々出てくる。
ああ、食べた食べた。
どれもおいしかったなあ。
お腹いっぱいごちそうになった上、残りもいただいてきた。
それを今日は、お昼のお弁当にして食べたところ。
そういえば、3年ほど前に東京からみどりちゃんと昌太郎君が来たとき、ヒロミさんが家でお好み焼きパーテイーを開いてくださったことがあった。
あの日に前菜に出てきた、たまらなくおいしい〆鯖は、ヒサコさんがこしらえたものだったことが分かった。
今、日記を遡ってみたら、〆鯖(どなたか、お友だちの手作り)と書いてある。
ヒサコさんの〆鯖は、肉厚で、ドカンと大きくて、ヒロミさんが厚めにそぎ切りにしたのを白ワインといただいたら、イギリス料理のニシンのマリネみたいに感じたんだった。
ヒサコさんの家は、まさにスープが冷めない距離。
今日子ちゃんたちはよく3人でごはんを食べるらしく、この間はその〆鯖で、ヒサコさんがにぎり寿司を食べきれないほどこしらえたんだそう。
というわけで、今日は急いでやらなければならない宿題もないので、朝から掃除。
午後からは6月分のレシートを整理し、「現金出納帳」の記入と、エクセルに入力。 
夜ごはんは窓辺で、映画を見ながら。
ポークソテー(炒め玉ねぎのソース)、江戸崎南瓜のサラダ(セイロで蒸して、クリームチーズをちょっと混ぜた)、赤い皮の小粒じゃがいもサラダ(セイロで蒸したのを皮ごと半分に割り、熱いうちにフレンチマスタード、酢、オリーブオイルで和えた)、ビール。

●2021年7月1日(木)曇りときどき雨

ゆうべ、ベッドに入ってすぐのころに、「ミュチュミュチュ」という可愛らしい声がかすかに聞こえた。
もしや!と思い、窓からのぞくと、イノシシの親子が角を曲がろうとしているところだった。
暗がりでよく見えなかったのだけど、母親の足下にうりぼうが2匹か3匹、からまって歩いていた。
それほど体が大きくなかったから、まだ若い母親だったのかも。
可愛かったなあ。
そしてきのうは、『帰ってきた 日々ごはん⑨』のサインをしてから、今日子ちゃんとふたりで、八幡さまに行って茅の輪くぐりをした。
昼間、宮下さんに仕事のお電話したら、ちょうど茅の輪くぐりに向かうバスの中だった。
そのあとでいただいたメールに、「6月30日は1年の半分、ひと区切り。茅の輪をくぐってちょっとスッキリしました」とあった。
そういうの、いいなあと思って。
そうか、今年も半分まできたんだな。
ここまでぶじに過ごせたことを感謝しながら、私もくぐった。
そんな日に、「MORIS」でヒロミさん、今日子ちゃんと過ごせたことがなんだか嬉しかった。
今日は、朝からフル稼働。
湿気で床がぺたぺたしていたので、朝のうちから掃除機&雑巾がけ。
10時からは「天然生活」の記事の校正を、宮下さんとみっちり1時間ほどお電話。
幻冬舎の竹村さんに原稿の校正をお伝えし、「ことこと」の原稿に赤を入れてファックス。
午後からは、何をしていたんだっけ。
そうだ。
アノニマの村上さんと、NHKテレビのディレクターさんからも電話があった。
テレビのこと、少しずつ決まってきているみたい。
雨は、目に見えないくらいに細かいのが、降ったり止んだり。
ときどき青空も薄く広がり、2階の洗濯ものはけっこう乾いた。
ああ。山口でのことを早く日記に書きたいのだけど、なかなか書けないや。
夜ごはんは、トンテキ(豚ロース厚切り肉に、早めに塩をしておいた)の焼きトマト添え(バルサミコ酢&醤油&バターのソース)、ピーマンのオイル蒸し、スイカの皮の浅漬け(塩もみサラダみたい)。

●2021年6月29日(火)ぼんやりとした晴れ

これから先、いつ雨になるか分からないので、少しだけど洗濯をした。
インターネットの天気予報を見ると、あれ? 晴れではないか。
きのうから、「毎日のことこと」を書きはじめた。
でも、なんとなく違うような気がする。
やっぱり光浦さんの味噌工場を見学させてもらったことや、具だくさん味噌汁のことは、「気ぬけごはん」に書こうと思う。
「ことこと」の締め切りがもうすぐなので、朝からぐっと集中し、向かう。
今は4時。
なんとなく書けたかも。
ひと晩寝かして、明日からまた向かおう。
今日は一日中青空が見え、海も青かった。
だけど、洗濯物はパリッと乾かない。
空気が湿っているのだろうか。
さ、窓辺でビールでも飲もう。
夜ごはんは、ペンネ・サラダ(いつぞやのトマトペンネに、フレンチマスタードとマヨネーズを和えただけ)、スモークサーモン、アボガド、きゅうり、自家製マヨネーズ、ゆで卵(ちかごろ、セイロで蒸すのが私の流行)の盛り合わせ。
お風呂に入る前に、ゴミを出しに下りたら、今年はじめてヒグラシの声がした。

●2021年6月27日(日)曇りときどき晴れ

ゆうべは山口から9時半くらいに帰り着き、お風呂に入ってパタンと寝てしまった。
ものすごくよく眠れた。
夜中にトイレに起きても、またすぐに眠りに引きずり込まれた。
ひと晩中、やわらかないい夢をみていた気がする。
それは、山口の旅が楽しかったからだ。
トークの前の晩は、ホテルの部屋の温度調節がむずかしくて、よく眠れなかった。
窓を開けても、わずかな隙間だからほとんど風が入ってこなくて、クーラーをつけたり消したり。
でも私、ちょっと緊張していたのかもしれない。
けれどもそんな不安をよそに、トークのお相手の光浦さんは、とっても気落ちのいい青年だった。
会場の「防府天満宮」のお茶室も、広々として、緑がきれいで。
松富さん(3年前の9月に山口に行ったとき、「ブックストアー松」という本屋さんをやっていて、『帰ってきた 日々ごはん④』のイベントを開いた。いっぺんで仲良しになり、それからはヨシュカちゃんと呼んでいる)に、車でいろいろなところに連れていってもらい、いろいろな人に会って、山口のいいところをいっぱい感じた。
あっちゃんの家にも行って、ごはんをごちそうになった。
おいしかったなあ。
私はまだふわふわとしていて、ここに戻ってきていない感じがする。
日記がちっとも書けない。
でも、お昼ごはんに、光浦さんちのお味噌で具だくさん味噌汁を作っていたら、山口でのことを「毎日のことこと」に書きたくなってきた。
今日はゆっくりと休みながら、ひとつずつ仕事をやっていこうと思う。
まずは、今週の日記をまとめて、スイセイに送ること。
「群像」の作文の校正もこれで最後なので、気を引きしめてやらなければ。
夜ごはんは、卵豆腐をくずしておだしで温め、うっすらととろみをつけたものだけ。
なんとなく肌寒かったし、お昼ごはんが遅かったので。

●2021年6月25日(金)ぼんやりした晴れ

ゆうべは満月だった。
昇りはじめは雲のベールをかぶって、朧月。
橙色の電球みたいだった。
雲が多いから、そのまま隠れて見えなくなるだろうと思っていたら、そんなことはなかった。
ずっとオレンジ色の満月のまま。
カーテンを開けて寝た。
ときどき瞼を開け、「ある、ある」と思いながら寝ていたのだけど、なんとなく心がぼわぼわし、騒がしいような、畏いような。
意を決して起き上がり、カーテンを閉めた。
今朝は6時に起きた。
「古楽の楽しみ」は関根敏子さん。
『おにぎりをつくる』『みそしるをつくる』を声を出して読んだ。
もしかすると明日、トークショーで朗読をするかもしれないので。
窓を開けると、夏の山の匂い。
今朝は、パンを食べない。
ヨーグルトだけ。
玄関の腰掛けに座り、緑の夏山を眺めながら食べた。
スイカとメロンのヨーグルトはすばらしい。
赤と黄緑。
色合いもきれいだし、甘いスイカにメロンのういういしい酸味が加わり、かなりおいしい。
器の底に残ったヨーグルトが、ピンクに染まるところもいい。
夏がやってくる!っていう感じ。
今は9時半。
さ、そろそろ出掛けよう。
海を見ながら坂を下って。
では、山口に行ってきます。

●2021年6月23日(水)晴れときどき小雨

金曜日に山口に出掛けるので、朝からメールや電話。
すぐに落ち着いて、今日も窓辺でお裁縫。
続きのペチパンツは、裾を縫ったらもうでき上がりだ。
きのうは、アマゾン・プライムの『エリザベス』という映画を見ながら縫っていた。
片山令子さんの『惑星』に載っていたなと思って。
女の人たちの衣装の美しいこと。
腰を絞ることで、花のように膨らむスカート。
大きく空いた胸、百合の花のように広がる薄いグレーの張りのあるワンピース。
薄手の生地に施された繊細な刺繍や、背中から脇にかけての切り替えのおもしろさ。

窓の外で緑がさわさわ揺れている……と思ったら、タツ、タツ、タツと大きな音がして、見ると地面が湿っている。
お天気雨だ!
さっき、外に出たときには、雨らしい気配はまるでなかったけれど。
晴れていたところに雨が降ると、緑や地面がいっせいに匂い立つ。
暑くもなく、涼しすぎもせず、ほんのりとした湿気。
こんな梅雨だったら大歓迎だ。
さ、もう少しだから、縫ってしまおう。
さっきまで見ていた「鉄道運転士の花束』というロシア映画が、とてもよかった。
淡々として、ほんの少しの温かみ。
乾いた死生観。
私はこういうの、大好き。
ちょっと前に見た『ハロルドが笑うその日まで』というノルウェー映画も、とてもよかった。
夜ごはんは、トマトペンネ(フレッシュトマトソースの残りに、椎茸とズッキーニを加えてペンネを和えた)、ビール。
日暮れどき。
夜ごはんを食べながら仰ぐ空には、明日が満月の白い月。
東の空には、黒人のヘアースタイルみたいにもくもくと盛り上がった大きな雲。
茜色と水色のだんだらの空を、ツバメが3羽旋回している。
こんなふうになにげないけれど美しい夕空って、意外とない気がする。
そうして、よくよく目をこらすと、霧のように細かな雨が降っているのだった。
空は完全に晴れているのに。

●2021年6月21日(月)晴れ

7時少し前に起きた。
明け方肌寒く、タオルケットをもう1枚出して包まって寝た。
今日は夏至なんだそう。
陽が落ちるのが、1年でいちばん遅い日。
朝ごはんを食べ、あちこち掃除機。
海から山から、いい風が吹き抜ける。
玄関を網戸にしているので。
そういえばこの間、中野さんをお見送りがてら出掛けるときだったかな。緑の山を見上げながら靴がはけるって、なんていいんだろうと気がついた。
海は青く、のほほーんとしたお天気。
すぐにやらなければならない仕事もないので、窓辺でお裁縫。
どこかの部屋を工事しているらしく、遠くの方から管理人さんの声や、業者の方の車でかけているらしいラジオが聞こえたり。
チャコペーパーを買ってから私は、型紙を当てて布の裁断をするのがおっくうではなくなった。
裁ちバサミでザクッ、ザクッと切っていくときの小気味良さ。
印が正確につけられるので。
今は、スカートの下にはくパンツ(ペチコートではなくペチパンツというらしい)を縫っている。
ガーゼみたいな生地なので、指触りがいい。
そしてこの風。
なんて、気持がいいんだろう。
6時半を過ぎてもまだまだ明るい。
海は青く、空の高いところに白い月(もうじき満月みたい)。
夜ごはんは、ホッケの干物(焼き椎茸添え)、大根おろし、納豆(オクラ、みょうが)、スイカの皮の浅漬け、みそ汁(油揚げ、ワカメ)。
食べたあともお裁縫。
けっきょく、手もとが暗くなるまでやって、股上も股下も縫い終えた。
明日は縫いしろの始末をしよう。
お風呂上がり、晴れた夜空に雲の行進。
今宵は月夜だ。

●2021年6月18日(金)曇りのち

5時半に起きた。
カーテンを開けると、空が白い。
でも、ただの白ではない。
ぼわっと厚いところと、かすれて光が透けているところもある。
このごろはよく、起きてすぐにベッドの中で本を読んでいる。
起き抜けのぼんやりした頭で読むのが、なんか気に入っている。
今朝は『帰ってきた 日々ごはん⑨』。
ゆうべ読みはじめ、あっという間に2ヶ月が終わってしまった。
もっとゆっくりと読まないと。
今日は、中野さんがいらっしゃることになった。
大阪の画材屋さんの帰りに寄るとのこと。
美容院に行くつもりだったので、図書館でお待ち合わせ。
10時半くらいに家を出る予定。
郵便局へも寄ろう。
3時くらいに戻ってきた。
夜ごはんは、まだ明るい窓辺で、少しずつつまみを作って食べながら、白ワイン(イタリアの微発砲)から。
焼き枝豆、オードブル(スモークサーモン、南瓜のサラダ、きゅうりの塩もみ、自家製マヨネーズ、ディル)、ズッキーニのじりじり焼き(中野さん作)、砂肝の塩焼き(中野さん作)、赤ワイン。

●2021年6月17日(木)晴れ

6時前に起きてカーテンを開けたら、雲ひとつない青空。
と、思いながら窓を見ていて、二度寝したらもう7時半。
窓を開けると、緑がきらっきら。
海も青い。
梅雨の間は雨で洗われる分、晴れるとものすごく晴れるのかも。
朝ごはんはヨーグルトと果物だけ。
ちかごろは胃のあたりを触ってみて、張っているような気がしたらパンは食べない。
そうすると調子がいい。
前の晩に食べたものが、たぶんまだ、完全には消化ができていないんだと思う。
お腹を空かせてから食べるお昼ごはんのおいしいこと。
頭もスッキリ冴える気がする。
このところ、ひとつの原稿に没頭していて日記が書けなかった。
それは、「結婚について」という課題。
いちどはお断りしようと思ったのだけれど、ちょうどいいタイミングかもしれないと思い、しっかりと向き合った。
いちどお送りしたのに、また書き直したりして、けっきょく1週間くらいかかった。
きのうは、ひさしぶりに坂を下りた。
銀行に寄って通帳記入をし、「MORIS」で『料理=高山なおみ』にサインをした。
今日子ちゃんと淡河の野菜(ズッキーニ、きゅうり、ミニトマト、いんげん、甘唐辛子)をいっぱい買ってきて、さらに「いかりスーパー」と「オアシス」でもいろいろ買って帰ってきた。
ツバメのヒナは、ずいぶん大きくなった(1羽だけ頭がピョコッと飛び出していた)。
午後、『帰ってきた 日々ごはん⑨』のサイン用の本と見本が届いた。
青空の写真の表紙。
私には海の色にも見える。
海の深いところのような、宇宙にもつながっているような青。
ほんのちょっとだけ、哀しみの陰も混ざっているような。
これからはじまる今年の夏に、エールを送っているような。
そして、背表紙がまたすばらしい。
今夜、寝る前に読むのが楽しみだ。
今日はずっと、事務仕事を集中してやっていた。
間違って記入していたところを全部直した。
きのうヒロミさんに教えていただいたので、忘れないうちに、
あ――、すっきりした。
夜ごはんは、夏野菜カレー(いつぞやのラタトウユをカレーにした、その残り)、ズッキーニのステーキ(丸々1本を縦半分に切って皮に切り目を入れ、フライパンで焼いてからオーブンへ。にんにく醤油)。

●2021年6月11日(金)ぼんやりとした晴れ

ぐっすり眠って8時に起きた。
きのうはとても楽しかった。
佐藤さんも久保さんも若々しく元気そうで、これからお世話になる清水さんという方も、みんなとても温かく迎えてくださった。
11月に「にじのとしょかん」の料理室で、「おにぎりをつくってたべよう」というイベントを開こうとしていたのだけれど、コロナのいろいろで制限が出てきそうなので、けっきょく来年の春にしましょうということになった。
打ち合わせのあと、料理室を見学した。
ここでときどき、料理教室が開かれるそうだ。
入ってすぐ、大きな窓から緑が見えた。
この図書館は、懐かしい感じのする古くて頑丈な建物なので、ロシアのホテルの食堂を思い出した。
武田百合子さんや泰淳さん、銭高老人が泊まっていたハバロフスクの「セントラルホテル」。
外壁がゆで卵の黄身色のホテルだ(私が泊まったときには、サーモンピンクに塗り替えられていたけれど)。
教室みたいな四角い部屋に、ステンレスの調理台が整然と並んでいるところや、一面の窓から緑が見えるところが。
ここで子どもたちや、その家族の方たちと一緒におにぎりを作ったら、楽しいだろうな。
まだずいぶん先のことだけど、必要な調理器具や器をひとつずつ確認し、清水さんがメモをとってくださった。
そのあと図書室に戻り、私はひとり絵本の広場(畳敷きになっている)で読書。
前に来たときには左まわり(外国の作家のアイウエオ順)に読んだので、こんどは右まわり。
日本の作家のアから順に。
気になった絵や、タイトルの絵本を次々手に取っては、読んでいった。
ときどきクスッとなったり、ぷっと噴き出したり、じーんとしたり。
私は完全に読者のひとりになっていたので、「タ」で「たかやまなおみ」という黄色い背表紙と目が合い、はっ!と、驚いた。
え、この人誰だっけ?
『くんじくんのぞう』だと気づいたのは、5秒後くらい。
棚から取り出してはみたのだけど、恥ずかしいような何ともいえない気持ちになって、中は読むことができなかった。
『どもるどだっく』も『ほんとだもん』も『それから それから』も。
少し色が褪せ、誰かの手に触られたあとのある絵本たち。
たくさんのいろいろな絵本に挟まれた、私と中野さんの絵本。
なんだかとても照れくさかった。
自分の内面がはみ出しているような重くるしい絵本が、愛らしい、楽しい、やさしい言葉で綴られた他の絵本の中に並んでいていいのかな。
いいとか、悪いとかではなく、『おにぎりをつくる』と『みそしるをつくる』はちっとも恥ずかしくない。
それはどういうことなんだろう。
「ワ」の棚まで見て、すっかり満足。
帰り支度をしようと事務室に戻ると、清水さんがいろんなお土産を用意してくださってあった。
キムパ(以前日記に書いた、おいしい韓国料理屋さんの。ここでごちそうになった日のことは、もうじき発売される『帰ってきた 日々ごはん9』に載ります)、赤い皮のじゃがいも、和菓子いろいろ、揚げせんべい、玄米茶。
なんだか実家か親戚の家に里帰りをしたら、家にあるおいしいものを、あれもこれもと詰め合わせてくれたみたいで、懐かしかった。
私はとても嬉しく、あたたかな気持ちになって、帰りの駅のベンチで何度も中をのぞいてみた。
帰りは、信太山からわざと普通列車に乗った。
天王寺でも地下鉄に乗らず、JRの普通列車で大阪に出て、阪急電車。
途中、駅ビルのショッピングモールをのぞいたりしたせいもあるけれど、2時間半もかかって帰ってきた。
JRはボックス席だし、ずっとガラガラだった。
だから本当にひとりで遠足に出掛け、のんびり帰ってきたみたいになった。
今朝は、原稿の続きを書こうとしても気が入らない。
それでけっきょく、窓辺でずっとお裁縫をしていた。
サワサワシャワシャワと乾いた音がして、見ると緑が盛大に揺れている。
裏の葉の白っぽい緑を見せ、いっせいに揺れると、小鳥たちが何百羽もいっぺんに羽ばたいているみたいに見える。
老眼鏡をかけているので。
そう、きのうも電車に乗っていて、思ったんだった。
山の緑はいつの間に、こんなに深くなったんだろうと。
夕方、りうの南瓜をようやく切り分けた。
きのういただいた、赤い皮のじゃがいもと一緒に蒸して、サラダにした。
南瓜は蒸しただけで、皮までぽくぽくとして、たまらなくおいしかった。
夜ごはんは、生鮭の塩焼き(フライパンにくっつかないシートをしいて焼いた)、大根おろし(ポン酢醤油)、キャベツの塩もみ梅しそ和え、南瓜とじゃが芋のサラダ(クリームチーズ、フレンチマスタード、ねり辛子、自家製マヨネーズ)、ご飯。
何だかお腹が空かないなあと思ったら、蒸した南瓜を食べ過ぎたからだ。
今日は、母の誕生日だった。
生きていたら93歳。
そして中野さんの家では、田植えだったそう。

●2021年6月10日(木)快晴

5時45分に起きた。
ゆうべはよく眠れなかった。
今書いている文のことを考えながら寝ていたので、変な夢もみた。
東京にいたころに借りていた部屋の夢。
そこには、私が昔から大切にしてきた物たちが運び込まれている。
そこがまだ借りっ放しになっていたことが分かる夢。
家賃も滞納したままで。
その部屋の夢は、前にもみたことがある。
だから、現実なのかと思った。
朝陽を浴びながら、ベッドの上でストレッチ体操。
今朝は9時半から停電するそうなので、なんとなしに落ち着かない。
このアパート全体の、配水管の取り替え工事があるそうで、電気も電話も水道もすべて止るのだそう。
なので、お風呂に水をため、トイレ用にはバケツを用意してある(管理人さんが貸してくださった)。
朝ごはんを早く食べてしまわないとならないのに、「天然生活」のレイアウトの確認をしたり、メールを書いたり。
そのうち、電気がいっぺんに消えた。
そうか。
受電機能があるからパソコンは使えても、メールは送れないのか。
電気がないって、静かだな。
静かすぎて落ち着かないので、10時過ぎに家を出る。
今日も暑くなりそうだ。
では、行ってきます。

たっぷり遊んで、7時に帰ってきた。
なんだか遠足みたいで、楽しかったな。
「にじのとしょかん」でのことは、明日また書こう。
夜ごはんは、キムパ(お土産でいただいた、韓国ののり巻き)、キムチ、豆腐ともずくのサラダ(ミニトマト、塩もみ人参、きゅうり、青じそ)。
風呂上がり、晴れた夜空を雲がぐんぐん流れていく。
白いカーテンが風で膨らむ。
それを見ているだけで、幸せ。
私は今日、たくさん歩いて陽焼けをしたんだろうか。
くったりと力が抜け、肌もちょっとひりひりし、気持ちいいこと。
風はひんやり。

●2021年6月9日(水)晴れ

4時45分に目が覚め、ひさしぶりに朝焼けを見た。
陽の出は建物に隠れ、もう見えなくなってしまったけれど。
窓を開けると、夏の朝の新しい空気。
鳥たちも盛んにさえずっている。
朝ごはんの前に、台所のシンクを重曹で磨いた。
ちょっとこすっただけで、ぴっかぴかになった。
2階も掃除機をかけ、セスキ水で雑巾がけ。
朝風呂から上がって素足で歩いたら、なんとなくぺたぺたしたので。
きのうは何をするにもおっくうで、動きも鈍く、自分の体が自分でないみたいな感じだった。  
仕事らしいことをしたのは、名刺の引き出しを整理したこと。
これまでに雑誌や新聞の取材を受けた方のリストを作ってほしいと、アノニマの村上さんから伝えられていたので。
今日はすっきり、体が軽い。
どういうわけだったんだろう。
気圧の関係だろうか。
それとも、ひさしぶりに朝焼けを見たせいかな。
さて、もうひとつの原稿を書きはじめよう。
明日は、秋に開く予定のイベントの打ち合わせで、「にじのとしょかん」に出掛けることになった。
大阪の信太山という駅から歩いてすぐ。
六甲駅からは1時間半の、小さな旅だ。
マスクをして行こう。
佐藤さんや久保さんたちに会えるのが、とても楽しみ。
夜ごはんは、牛こま切れ肉と黒豆と小松菜の炒めもの(にんにく、醤油、黒酢)、塩もみ人参のサラダ(自家製マヨネーズ、ごま)、味噌汁(大根、油揚げ)、お昼をしっかり食べたのでご飯はなし。
風呂上がり、山から風が下りてきて、木の葉がそこだけ揺れている。
ひよひよひよひよ。
海が青い。

●2021年6月6日(日)曇り

今朝は5時前に目覚め、ラジオをつけたら「ラジオ深夜便」が終わるところだった。
6月6日の今日の花は、ネジバナ。花言葉は「思慕」だそう。
懐かしい声のするアナウンサーが、「今日一日、何かいいことがあるといいですね」と言って、静かに番組が終わった。
パソコンをベッドに運び、メモのように文を書きはじめる。
明け方思いついたフレーズを、忘れないうちに。
今私は、二つの文の宿題を抱え、そのうちの一つをきのう書きはじめた。
「群像」という雑誌のエッセイと、幻冬舎のブログのエッセイ。
まったく違う種類の内容だけど、このところ考えたり、感じたりしていることをそのまま書こうと思う。
同時に二つの袋を抱え、往ったり来たりしながら進めばいい。
朝ごはんの前に、汽笛がボーーーッと鳴った。
海には大きな貨物船が一槽しかない。
遠くの海に、阪九フェリーが見える。
きっとあの船が鳴らしたんだ。
「もうじき、港に着きますよ」の合図の汽笛なんだと思う。
ヨーグルトを食べていたら、阪九フェリーが近くなり、ぐんぐん進む。
ラジオからは吹奏楽。
フェリーが進むスピードに合わせたような、なんか、ぴったりな音楽。
今日も梅雨の中休みのようだけど、曇っているので洗濯はしない。
二つの宿題の文を、じわじわと進めよう。
今は1時半、「群像」の方ができたみたい!
晴れてきたし、ポストに郵便を出しがてら散歩にいこうかな。
夜ごはんは、とうもろこしチャーハン(冷凍をしておいたちまき風黒豆の炊き込みご飯に、とうもろこしをご飯より多めに加える)、餃子スープ(小松菜)の予定。

●2021年6月4日(金)雨

4時半に起きて、絵本のテキストをひとつ書いた。
忘れないうちに。
ベッドに戻り、もうひと眠り。
ラジオの音楽が遠くなったり、近くなったり。
7時のニュースも、遠くなったり、近くなったり。
7時15分にえいっと起きた。
紅茶をいれ、「ことこと」の写真も撮る。
ひさしぶりの雨。
しっかりと降っている。
11時に六甲道で待ち合わせなのだけど、タクシーで行こうかな。
買い物をして、帰ってきたら、お昼を食べて「天然生活」の撮影だ。
さて、どうなることやら。
夜ごはんは、撮影の残りの盛り合わせごはん(鶏の照り焼き、蒸し小松菜、トマトソースのペンネ、ゆで卵、山うどのきんぴら)、味噌汁(油揚げ)。

●2021年6月3日(木)晴れのち雨

今しがた、雨が降ってきた。
ジャスミンの花の匂いがして、窓辺に立った。
街の方から上ってきているみたい。
空の高いところでツバメが3羽、ゆうゆうと旋回している。
このところずっと、梅雨とは思えないお天気で夏のようだったから、雨が嬉しい。
そういえば六甲駅のツバメは、まだ巣立ってなんかいなかった。
親鳥が巣に入ってエサをあげているとき、雛の頭は見えるか見えないかくらい。
だからまだ、小さいんだと思う。
中野さんちのツバメも、同じくらいで(先週末、2泊で中野家に遊びにいっていた)、2羽の親ツバメがひっきりなしに飛んできて、順番に餌を上げては、また飛び立っていった。
ユウトク君にツバメの卵のカラをもらった。
孵ると親鳥が下に落とすらしく、「ユウトク、何羽おると思う?」と中野さんが聞いたら、「うーんと、4羽。いや5羽や」と答えていた。
中野さんの家では、向かいの原っぱ(いつも夕陽を見るところ)でコオロギをつかまえたり、いつもの池の用水路にはまっていた大きな鯉を助けたり。
今、中野家は改装中(大工さんが入る前に、ほとんどのことを自分たちでやっている)なので、その様子を見学したり。
天井板のペンキ塗りを、私も少しだけ手伝った。
虫カゴの前にお風呂上がりに寝転んで、電気を消し、コオロギの声をユウトク君と聞いた。
「なおみさん、また明日も寝る前にコオロギ聞く?」と誘われたり。
いろいろ楽しかったな。
帰ってからもまた、楽しいことがたくさんあって、ずっと日記が書けなかった。
書けなかったというより、書く気が起きなかった。
母の病床日記は、亡くなった日の最後の記録まで読み終えた。
読みながら、体ごとあのころに戻ったり、母の表情や体の動きを生々しく思い出したりしていた。
それで、どうにもぬけ出せず、いきいきと生きている人たちに会いたくなって、中野家に出掛けた。
中野さんちの家族も、家のまわりも、みな田植えの準備をしていて。
夏草のはびこる原っぱを歩くと、バッタの赤ちゃんが飛び出したり、土ガエルが跳ねたり。
太陽が近く、じりじりと肌が焼けた。
帰る日の夕方までたっぷり遊んで、体にいきいきとしたものを注入した。
さて、明日は「天然生活」の撮影なので、ゆるゆると支度をしているところ。
そうだ。
中野さんの部屋にあった長田弘さんの詩集の中から、 気になったところを書き写してきたんだった。
「ファーブルさん」という詩の一部。

言葉は、きめの細かな、単純な言葉がいい。
古い方言や諺や日用品のようによくなじんだ言葉。
すっきり筋のとおったものの言いあらわしかた。
言いたいことを、目に見えるように書くのだ。

夜ごはんは、チキンソテー(ズッキーニ添え、自家製マヨネーズ)、生トマトのトマトソース、ご飯、昆布の佃煮。
食べ終わると、明るい雨。
乾き切った地面が濡れ、埃っぽいような匂いと、緑とジャスミンの匂い。
どこかで虹が出ていそう。

●2021年5月27(木)雨のち曇り

5時半に起きた。
きのうから、起きぬけに母の病床日記を読んでいる。
もうじき亡くなって、3年になる。
病気が分かってからの日々を少しずつ追いかけ、重なろうと思って。
5月11日、退院した日の朝ごはんの献立表を切り抜いて貼ってある。
母が日記に貼りたがった日のことを思い出した。
実家の介護用ベッドに寝たきりの母は、「なおみ、ボールペンとハサミを取って」「セロテープを取って」などと、命令口調で私に頼んだ。
母の指差す引き出しは、いろいろな物が乱雑に入れてあり、探してもハサミはみつからない。
ボールペンの芯が出たままになっているから、文字が書けなくなっていて。
そういうのが何本も出てきて。
探している最中なのに、「なおみちゃん、電気つけなあ。つけないと、あんた、目が悪くなるで。つけなあ、電気」と、何度もしつこく言う。
引き出しの中が埃だらけでクシャミは出るし、私は我慢ができなくなって、「もう、そんな紙、貼らなくたっていいじゃん!」と大声を出した。
家事の苦手な母、掃除をしない母のことに嫌気が差し、もう、いつ亡くなるかも分からない母に向かって、私は怒った。
この日記帳には、入退院を繰り返し、少しずつ弱っていく母がすべてが記録されている(途中から姉と私が代わりに記した)。
今、ようやく分かった。
あのときの母にとっては、この日記帳だけが生きるすべてだったんだ。
だから退院をした日の朝ごはんを、どうしても記録しておきたかったんだ。
一時退院をした母は、5月31日に泊まっていた老人ホームで熱を出し、6月1日から再び入院。
闘病の末、7月9日に亡くなることになる。
今朝読んだのは、6月15日の日記(姉が書いた)。

7:40 みどり着。
眠っていたが、手が少し動いたので近づくと、気配で目を覚ます。
「おはよう、今日は雨だよ」
「おおあめ」と目を丸くして、両手を上げて言う。

ここまで読んで、たまらなくなってもう読むのをやめた。
あまりに母らしかったので。
若いころから母は、幼稚園児みたいなところがあって、私はそこが嫌いなのだか、好きなのだか、自分でも分からなかった。
若いころには、母のそういう姿を目の当たりにすると、気恥ずかしくて目を逸らした。
でも、今は、そういう子どもじみた純粋なところがとても愛しい。
自分の中にも、同じセンスがあるのを感じる。
今朝は、朝ごはんの前に屋上に上って、「ことこと」で必要な霧の写真を撮った。
仕事をしたのは、それだけ。
あと、きのうきれいに書き直した現金出納帳の数字を、エクセルに入力した。
早めの夕方、「コープさん」へ。
雨上がりの散歩。
しっとりと汗ばんだ。
夜ごはんは、ハムエッグ(トマトソース添え、醤油)、小松菜とターツァイの鍋蒸らし炒め、味噌スープ(大根、グリンピース、牛乳)、おにぎり(しそワカメふりかけ)。

●2021年5月25日(火)晴れ

6時にラジオをつけた。
うとうとと、惰眠をむさぼる心地よさ。
7時のニュースを聞きながら目を開け、流れる雲を見ていた。
今日は貴重な梅雨の晴れ間。
えいっ!と起きる。
黄砂が舞っているそうだから、窓は開けない。
洗濯物もしない。
きのうは朝から歯医者さん、郵便局、銀行、コンビニなど、いろいろな用事をすませて「MORIS」に行ったら、いい匂いをさせて今日子ちゃんお昼の支度をしていた。
荷物を置いて、淡河の野菜をひろみさんと買いにいき、帰ってきて3人でお昼ごはん。
私が持ち寄ったのは、北海道の山うどきんぴら、中国のおばあちゃんになったつもりで作った黒豆入りのちまき風炊き込みご飯(腸詰めに見立てチョリソーも加えたのに、おとついの日記には書き忘れた)。
今日子ちゃんが作ってくれたのは、空豆のちび春巻き、じゃがいものナムル(おいしい米油、ターメリック、粗びき唐辛子)、ズッキーニとしらすのサラダ(レモン汁)、半熟ゆで卵(自家製マヨネーズ)。
展覧会をしている、山口和宏さんという方の素敵な木の器に盛り合わせ、いただいた。
どれもこれも、おいしかったなー。
そのあとで、現金出納帳についての勉強会(私が教わる会)。
この間書き直したものは、また間違えていた。
また、はじめからやり直しだ。
失敗するのも覚えるのも、自分。
間違えたからこそ、ひとつ覚えることができる。
4歩進んで3歩下がる。
亀のスピードで、理解できているのが嬉しい。
今日は、朝から「ことこと」の仕上げをしていた。
書けたようなので、忘れないうちに現金出納帳に勤しもう。
そうだ。
六甲駅のツバメの巣は、3つとも空っぽだった。
やっぱり!
今年巣立ったツバメだったんだ。
パタパタとやけに羽ばたいていたもの。
まだ、飛ぶのに慣れていないからだったんだ。
夜ごはんは、トマトソース(生のトマトとミニトマト、新玉ねぎ、新にんにく)、鶏のソテー(おろしにんにく、バター)、小松菜炒め、ポテトサラダ(味噌マヨネーズ)。
風呂上がり、まだ明るさの残る空に白い月。
ずっと、目を離さないようにしながら身支度をした。
空が暗くなりにつれ、黄色に光る。
明日は満月。
月食なんだそう。
ゆうべは寝る前に窓を開けてみた。
しとしと雨が降っていて、夜景も見えず、あたりは静まり返り、深い緑と花の濃厚な香りがした。
ジャスミンと、スイカズラが混ざりあったような匂いだった。

●2021年5月23日(日)晴れ

8時15分前に起きた。
梅雨の貴重な晴れ間なのに、寝坊した。
なんだかとてもおもしろい夢をみていたので。
洗濯をたっぷり干したら、「ことこと」の続き。
きのうもやっていたので、ずいぶんいいところまで書けているのだけど、肝心なところがまだできていない。
もうひとがんばり。
お昼には、どうやら書けた模様。
朝、アムとカトキチから山うどが届いた。
富良野の「道の駅」の黒豆も送ってくれた。
この間、この黒豆をうす甘く煮たのをヨーグルトにのせたら、すっごくおいしかったので、「気ぬけごはん」に書いた。
そのことをメールしたから、送ってくれたんだと思う。
アイヌネギの醤油漬けも入っていた。
ダンボール箱を開けたとき、北海道の大地の匂いがした。
毎年置くってくれる、野生の山うどだ。
「ことこと」が書けたので、山うどの始末。
「気ぬけごはん」にはカトキチの箇条書きレシピが書いてあるので、読んでからやった。
テレビの前の机で、皮をむいて細切りにし、白い実もすべて細く切った。
よほど精が強いんだろうな、手の平がアクでペカペカした。
とても量が多いので、半分はレシピ通りに酒、みりん、醤油とだし汁で、もう半分は薄口醤油で薄目に味をつけた。
すりごまと、すってないごまもたっぷり。
うーん、ほろ苦い北海道の春の味。
すごくおいしい。
うどって、食べ過ぎたらいけないんだろうか。
夜ごはんは、黒豆入りのちまき風炊き込みご飯(豚もも薄切り肉、干し椎茸、黒豆、黒豆のゆで汁、酒、オイスターソース、醤油、ごま油、にんにく、生姜、八角)、山うどのキンピラ2種、ポテトサラダ(味噌マヨネーズ、ねり辛子、新玉ねぎ)。
日暮れどき、ツバメたちが気持ちよさそうに飛び交っている。
電線にとまっているツバメは、なんか小さい。
今年生まれたヒナが育ったんだろうか。
どうなんだろう。
六甲駅の巣のツバメ、この間見たときにはまだ盛んに餌を運んでいたけれど。
明日は、歯医者さん。
そのあとで、山うどのきんぴらを今日子ちゃんたちに届ける予定だから、駅でツバメの巣を見てみよう。
7時半、ぽっかりとした月。
ひさしぶりに月を見た。

●2021年5月21日(金)雨

ゆうべは窓に打ちつける雨の音がした。
風もめっぽう強く、嵐のようだった。
私が眠っているアパートごと、荒海に放り出され、波にもまれて航海しているみたいだった。
3時ごろだったかな、肌寒いので毛布をもう1枚出した。
中野さんが帰ってからいきなり梅雨がやってきて、仕事の電話やメールも急に増えた。
世の中はぐるぐる動いていて、山の上にいる私のところにもその波が連なってやってきているみたい。
書きものや、書類の確認やらなんだかんだとやることがあり、気づけばもう金曜日。
今朝は霧。
雨も風もあるけれど、静かな日。
「毎日のことこと」の3話目を書きはじめよう。
きのうは、新しく増刷された『気ぬけごはん』が届いた。
初版が2013年だから、8年ぶり?!
芥子色の表紙に、リーダーの線画の魚が1尾。
立花くんの装幀の、大好きな本。
ゆうべから寝る前に読みはじめた。
『気ぬけごはん2』とはまた違う、のんびりさ。
特にいちばん最初のころは、話があちこちに飛んで、今よりもずっと自由で、涼しい風が吹いている。 
おもしろいなあ。
お昼ごろから雨がやみ、薄陽が差してきた。
7時には茜色の夕焼け。
けっきょく今日は、「ことこと(これからはこう呼ぼう)」に集中できず、現金出納帳をつけていた。
間違えたところを棒線で消してあったり、あまりに乱雑だったので、4月分からもういちど書き直し。
ようやく書き方のツボがつかめてきた。
これまでの分はすべて終わった。
箱にレシートがたまっていない清々しさよ。
天気予報によると、明日は梅雨の中休みみたい。
夜ごはんは、タイ風春雨サラダ(豚ひき肉、新玉ねぎ、人参の塩もみ、パプリカ、春雨、香菜)。
サラダがすごい量で、お腹いっぱいになったので、ご飯はなし。

●2021年5月17日(月)雨

7時に起きた。
ぐっすり眠って、夢もいろいろなのをみた。
トイレに行っても、また続きをみられた。
なんか、長編大作のようなへんな夢だったな。
金曜日から中野さんが車できていた。
天気予報では梅雨入りするかもしれないと言っていたけれど、最初の2日はよく晴れて、緑がきれいだった。
何をしていたんだっけ。
ほとんど家にいて、私はワンピースの続きを縫っていた。
中野さんは1枚絵を描いた。
夕方になると窓辺でビールを呑みはじめ、暗くなるまでの時間、おしゃべりをして過ごした。
ふたりとも仕事の中休み、ずいぶん日が長くなったから、サマータイムみたいな夕方だった。
いちど、車でチーズ屋さんにマスタードを買いにいった。
中野さんはきのう、早めのお昼ごはんを食べて帰っていった。
天気図の雨の隙間をくぐるようにして。
今朝は、霧で窓が真っ白。
もう、いつ梅雨に入ってもおかしくない。
そして今日は、私の引っ越し記念日。
神戸に来てから5年が経った。
だからというわけではないのだけれど、たまたま年金事務所の相談会を予約しておいた。
2時からなので、少し早めに出かけよう。
雨の日のポートライナーはどんなだろう。
せっかく住吉まで行くのだから、図書館へも寄ろう。

暗くなる前に帰ってきた。
霧の中を通って坂を下りるのは、はじめてだった。
ポートライナーは……いつものようにいちばん後ろに座ったのだけど、山は裾野の方まですっかり霧に包まれ、海もぼんやり霞んでいた。
相談会が終わり、雨上がりの道を住吉川沿いに歩いて図書館へ。
図書館は休館日だったけれど、ざぶざぶどーどーと勢いよく流れる川添いを歩くのは爽快だったな。
住吉からJRに乗って、摂津本町へ。
「コープさん」で軽く買い物し、岡本から六甲へ。
小さな旅のようだった。
夜ごはんは、穴子めし弁当(「コープさん」の)、サラダ(レタス、青じそ、香菜、ミニトマト、豆腐、もずく酢、ポン酢醤油)、ターツァイのにんにく炒め、味噌汁(あさり、大根)。
お弁当の穴子がふわっふわで、たまらなくおいしかった。
どうやったらこんなのが作れるんだろう。

●2021年5月13日(木)晴れ

ひさしぶりの快晴。
きのうの雨で透明になった空気。
緑がぴかぴかしている。
きらきらではなく、ぴかぴか。
厚みを帯びた光。
風が強く、木々が揺れる。
すると光も揺れる。
朝ごはんのヨーグルトを食べながら、見とれてしまう。
空も真っ青、雲も真っ白。
明日からまた雨模様だそうなので、今日は出かけようかな。
あちこち掃除機をかけていたら、汗が出てきた。
今日はこれまででいちばん暑いかも。
坂を下りるとき、あちこちくっきり、ずいぶん遠くの緑まで見えた。
本当に、よほど空気が澄んでいるんだ。
まず銀行、そして美容院へ。
区役所に寄り、六甲道からバスに乗って阪神御影へ。
日傘を買いに。
4時すぎに帰り着き、早めの夜ごはん(お昼ぬきだったので)。
カレー(アイリッシュ・シチューのどきのスープに、カレールウを加えた)、レタスと青じそのサラダ(もずく、黒豆)。

●2021年5月12日(水)曇りのち雨

7時に起きた。
ゆうべも冒険チックな夢をみた気がする。
冒険というか、知らない世界に自分がいる夢。
知らないといっても、ふつうの日常の中の知らない世界。
細かいことは忘れてしまったけれど、私はそこで何か新しいことにぶつかるたびに、どきどきしながら、慣れるようにと自分に課し暮らしていた。
これって、神戸に来たばかりのころもそんなだった。
もうじき引っ越し記念日だから、そんな夢をみたんだろうか。
洗濯物を干しているとき、ウグイスの声がした。
「ホーホケキョ ヒョロロロロロ」
響きが熟練されている。
風が吹いて、猫森の緑が揺れている。
曇り空。
雨が近づいているような気がする。
『帰ってきた 日々ごはん9』のいろいろな確認は、朝のうちにすべて終わった。
今日はもう何もしなくていい日。
窓辺でワンピースの続きを縫おう。
黒豆をゆでながら。
そうだ。
きのうの夜ごはんは、少し肌寒かったので、この間の薄色薄味(塩と薄口醤油、みりんで味つけした)肉じゃがをとっておいたものでスープを作った。
まず、煮込み用の鍋で新玉ねぎと白菜を米油とバターで炒め、そこに小麦粉を少し加え、軽く炒め合わせてから肉じゃがを加えた。
多めの水と固形コンソメちょっと、ローリエ1枚を加えて。
ふだんならソーセージを加えるところだけど、冷凍しておいた生タラがあったので、凍ったまま一切れ上にのせ、煮ていった。
とちゅうでサフランミックス・スパイスをちょっと、オレガノ、バジルも加えた。
でき上がりは、肉じゃががベースだったとはとても思えない洋風さ。
新じゃが、新玉ねぎ、タラ、スパイスのおかげで、アイリッシュ・シチューみたいになった。
とろみがほどよくて、コクもあって。
いつか、「気ぬけごはん」に書けるだろうか。
こういうのをレシピとして伝えるのはむずかしいけれど、気ぬけの精神でやってみるといいのかもしれない。
作っているうちに、なんとなく「どこどこ風」に近づいていることに気づいたら、そっち方向に向かうよう、もうちょっとだけ何かを加える。
そうすると独り立ちするので、あとはまかせておけばそちらに歩いていってくれる食材たちの音楽。
ちょっと大げさにいうと、そんな感じ。
あ、降ってきた。
それからはずーーーっと、しとしと雨。
ときおり風に揺れながら、雨に身をまかせ濡れている緑。
気持ちよさそう。
夜ごはんは、酒粕みそ漬け豚肉の野菜炒め(新玉ねぎ、ピーマン)、白菜の塩もみ梅和え、浸し黒豆(ゆで汁に醤油&だし昆布でカンタンに)、大根の味噌汁、おにぎり(ちりめんじゃこ、ごま、山椒の葉を炒ったふりかけ)。

●2021年5月9日(日)晴れ

朝から『帰ってきた 日々ごはん9』の最後の確認。
ぎゅっと集中してやった。
お昼前には終わり、ファックスをお送りした。
さて、「気ぬけごはん」の続きをやろう。
金曜日から書きはじめ、いいところまできているので。
晴れているのだけど、空気がクリーム色っぽい。
たぶん黄砂が舞っているんだと思う。
風も強いな。
さ、もうひとがんばりだ。
『アースシーの風』はおとつい読み終わり、ゆうべからまた『帰還』を読みはじめた。
だからかこのところ、知らない世界を冒険しているような夢を毎晩みる。
いちどは、母も出てきた。
『アースシーの風』の最後の章で、テハヌー(幼いころに親からひどい目に遭わされ、顔と手に大やけどを負った別名テヌー)が言った言葉が忘れられず、いろいろなことに当てはめられそうな気がして、ずっと考えている。

「あたし、思うんだけど、」テハヌーが口を開いた。ふだんとちがう、やわらかな声だった。「死んだら、あたし、あたしを生かしてきてくれた息を吐いてもどすことができるんじゃないかなあ。しなかったことも、みんなこの世にお返しできるんじゃないかって気がする。なりえたかもしれないのに、実際にはなれなかったもの、選べるのに選ばなかったものもね。それから、なくしたり、使ってしまったり、無駄にしたものも、みんなこの世界にもどせるんじゃないかなあ、まだ生きている途中の生命に。それが、生きてきた生命を、愛してきた愛を、してきた息を与えてくれたこの世界へのせめてものお礼だって気がする。」

3時には「気ぬけごはん」が書けた。
締め切りは明日だから、ひと晩ねかせよう。
あちこち掃除機をかけ、すっきりしたところでお裁縫の続き。
緑はもうモッサモサ。
夜ごはんは、肉じゃが(新じゃが、新玉ねぎ、牛コマ切れ肉)、ひじき煮の白和え、小松菜と油揚げの煮浸し、かぶの梅和え、味噌汁(麩、ワカメ)、ご飯。
肉じゃがをだし汁、酒、みりん、きび砂糖、薄口醤油、塩で白っぽく、薄味に煮てみたらとてもおいしくできた。
小粒の新じゃがは、ほどよくねっとりしておいしいな。

●2021年5月6日(木)晴れ

5時半に起きて、窓を開けた。
隣の建物の屋根の上から陽の出。
もう、緑が光っている。
夏山の朝の匂いがする。
夏休みのラジオ体操というよりも、ハワイ島みたいな、なんだかちょっと甘い香りが混ざっている。
懐かしいな、ハワイ島。
白い三日月が空にある。
なかなか消えていかない。
今日は、午前中に家を出て「ユザワヤ」へ行こうと思う。
なのでてきぱき動く。
あちこち掃除機をかけ、送るものをお送りし(ゲラの修正など)、けっきょく12時の鐘が鳴ってから出た。
お昼ごはんも食べずに。
坂道のサツキは茶色くなって、もうおしまい。
三宮はいつもと同じくらいの人出。
アイロンが壊れてしまったので、電気屋さんにも寄りたかったのだけど、閉まっていた。
阪急電車は行きも帰りも空いていた。
帰りの電車で、ボケッとしてひと駅乗り過ごし、「御影」まで行ってしまう。
わざわざ駅の外に出て、ぐるっとひとまわり。
何の目的もなく、ただ歩くのって変な感じ。
ぶじ六甲に帰ってきて「MORIS」に寄り、今日子ちゃんが作ったルバーブ・ジャム(銀のティースプーンにのせてあった)とクッキーをごちそうになる。
うれしいお茶の時間。
窓の緑が光って、夏みたいだった。
今日子ちゃんもヒロミさんも、このごろよく歩いているのだそう。
今、神戸大学には白い花が咲いていて、とてもいい香りなんだって。
そんな話をしているうちに私も歩きたくなり、神戸大学の中を通って、せっせと坂を上り、汗をかいて帰ってきた。
シャワーを浴びて、窓辺で南風荘ビールと柿ピー。
夜ごはんは、ササミカツ(スーパーの)、新ごぼうと人参のサラダ、かぶの鍋蒸し、筍ご飯(冷凍しておいたのをセイロで温めた)、味噌汁(豆腐、ニラ)。 

●2021年5月5日(水)雨

5時に目覚めるも、ゆらゆらと眠りに落ちるの繰り返し。
6時になったのでラジオをつけ、また落ちる。
とても静か。
雨が降っているみたい。
そのうちまたぐっすり眠ってしまい、夢もみて、ようやく起きてカーテンを開けた。
もう7時半だ。
体の奥から、眠りの液がしたたり出てくるみたいだった。
連休中の宿題を、同時に3つくらい進めていたのがきのうで終わったから、ほっとしたんだな。
さ、今日は何をしよう。
少し怠けていた現金出納帳をつけよう。
窓の外は白。
若緑が霧に透けている。
ゆうべのうちから発酵させておいたパン生地を、今はベッドの上で二次発酵中。
午後から窓辺でお裁縫。
今は、夏のワンピースを縫っている。
夜ごはんは、焼き餃子(いつぞやに冷凍しておいた)、かき卵野菜スープ(この間の肉野菜炒めに、白菜、ニラ、しろ菜を加えた)、ご飯。
風呂上がりは霧で真っ白。
窓を開けると、雲の中にいるよう。
夜景がまったく見えないのは久しぶり。
雨が降っているのかどうかも分からない。
霧に包まれていると、音がこもって耳が遠くなる。
なんだか安心する。

●2021年5月2日(日)晴れたり曇ったり、一時雨

5時半に起きた。
ベッドの端っこに立ってのぞくと、太陽は昇ったばかり。
まだけっこう大きく、オレンジがかっている。
明け方に、絵本のいい考えが浮かんできた。
なので、忘れないうちにべッドの下の床でコンテを書いてみた。
うーん。
どうだろう。
お風呂の中でも考えていた。
今日も風が強い。
掛け布団を干そうと思ったのだけど、飛んでいきそうなのでやめにした。
猫森が大きく揺れている。
雲間から太陽が顔を出すたびに、緑がパーッと光る。
そしてまた翳る、の繰り返し。
ゴーゴーと風が鳴る。
緑の嵐だ。
『みどりのあらし』は”こんな子きらいかな?”シリーズの1冊だけど、いじめについて描いたのじゃない。
何かを強く信じている男の子たちのお話を書いていたら、自然とそうなった。
さあ、洗濯、洗濯。
このところ私は、寝る前に『ゲド戦記』を読んでいる。
引っ越しのたびに手放してしまったので、最後の2巻しかないのだけど。
『帰還』は、はじめて読んだみたいにおもしろかった。
今の自分が読みたがっている本だった。
最終巻の『アースシーの風』は、おとついから読みはじめた。
先々週の土曜日だったかな。
たまたまテレビをつけたら、『ゲド戦記』を翻訳された清水真砂子さんが出ていた。
20歳のころの私は、『ゲド戦記』シリーズに夢中だったので、清水さんは憧れの女の人だった。
どんな方なんだろうとずっと思っていた。
学生時代の清水さんは、いつもひとりでいて、女の子たちのふつうのおしゃべりに入っていけなかったのだそう。
清水さんの言葉はなめらかで、声も心地いい。
分かりやすく、とてもいいことをおっしゃるので、私はどんどんメモをとっていった。
「絵本というと、『心がやさしくなるよいものだから、読み聞かせをすると子どもたちのためにいい』などというふうに言われがちだけれど、私は、どうなのかしら?と思うのです」
「世界はいいことばかりではない」
「自分の中にも、恐ろしいものがあるかもしれない。あっていいんだと思う」
「よい物語というのは、読者が体を通して、その物語を生き切れるかどうかだと思うんです」
「物語の最後は、ゲドが、自分の中にある悪をしっかりと抱きしめて、終わる」 「『帰還』では、ゲドは魔法使いとしての力をすべてなくし、名前のない者となった。ゲドは、無名を勝ち取った」 「類の中に、類のひとつ、ひとつとして入っていくこと。自分が小さく、弱くなると、まわりのいろいろなものがよく見えてくる」
「無名を勝ち取った」という言葉に、私はとても惹かれる。
『アースシーの風』を読み終えたら、もういちど『帰還』をはじめから読もう。
夜ごはんは、新ごぼうと牛こまの炒り煮、肉野菜炒め(豚肉、生きくらげ、しろ菜、ニラ、ミニトマト)、ご飯はなし。

●2021年5月1日(土)晴れのち雨

今日から5月。
5時半に起きるも、太陽はもう昇ったあとだった。
朝のうちは、ぼんやり晴れ間が出ていたのだけど、だんだん雲が集まってきて、雨となる。
午後には雷も鳴った。
ラジオの天気予報で、「荒れ模様になります」と言っていた通りだ。
新しい絵本のことをしたり、『帰ってきた 日々ごはん9』のアルバムまわりのことをしたり。
どちらもこの連休中に終わらせればいいので、グリーンピースのさやをむいたり、薄皮をはがしたさやと油揚げを薄甘く煮て、卵とじを作ったりしながらのんびりと。
夕方、雨上がりに窓を開けた。
新茶みたいな匂いがした。
とってもいい匂い。
猫森の木立が風に揺れている。
盛んに葉を翻し、裏の色を見せている。
いろいろな色の緑。
たまらなくきれい。
小鳥たちも澄んだ声でさえずっている。
みずみずしい夕方だなあ。
きのうは、住吉駅からてくてく歩いて、年金事務所に行った。
帰りはポートライナーに乗って、六甲道の区役所で届け出をした。
少しずつだけど、独立の道を前に進む。
きのう、朝ドラ『おちょやん』の千代が、「また、一から出直しや」と言っていたのがとてもよかった。
夜ごはんは、混ぜこぜチャーハン(筍ご飯の残りで。ソーセージ、ちりめんじゃこ、グリーンピース、ひじき煮、香菜、ねぎ)、かぶの味噌汁。

●2021年4月27日(火)ぼんやりした晴れ

6時に起きた。
もうとっくに陽が昇っているのを知りながら、寝ていた。
中野さんの家でも、私はだいたい6時とか、6時半に起きていた。
朝ごはんを食べ、車で遠出するときは午前中に出掛けた。
お昼前には戻ってきて、仕事場から抜けてくるお父さん、お母さんとみんなで昼食。
午後も外に出てめいっぱい遊び(サイクリングなど)、私はお姉さんと夕飯の支度をしながら、ユウトク君、ソウリン君、中野さんとクローバー畑(レンゲはもう枯れていた)で夕陽を見て、夜ごはんを食べたらお風呂。
そして、もう寝る。
毎日がとても長く感じたのは、子どもたちと一緒にいたからかな。
とくに午前中がたっぷりあって、「まだ8時?まだ9時半?」という具合だった。
なんだか、いつもの10倍くらい「生きている」感じがした。
洗濯物を干すお母さんを手伝ったり、お姉さんとおしゃべりしながらごはんの支度をして、それをみんなでわいわい食べたり。
ユウトク君と作文の宿題をやったり、散歩したり、自転車に乗ったり。
私はひとりでいると、文ばかり書いているから、頭の中だけで生を完結してしまいそうになる。
家族と一緒にいると、私が思いもしない何かがいつも起こる。
とくに子どもたち。
言うことなすこと驚きで、おもしろくてたまらない。
そんな3泊4日だった。
日記を書くつもりではなかったので、何を食べたかくらいしか記録しなかったのだけど……どうしてもという発見だけ、メモをとっていた。
それを、書き出してみることにします。

(4月22日)
お昼ごはん。明太子スパゲティ、ハムを焼いたの、おにぎり(ここまですべてお姉さん作)、アスパラのフライパン焼き(私作)。
ユウトク君はスパゲティを口から何本もすだれのように垂らしながら、ふつうに食べる。のりがまぶされたスパゲティなので、とても可笑しい。でも、私は笑わない。
午後、お宮さんでドッジボール。
大人(お兄さん、中野さん、私)も子どもも、真剣に。
私は子どものころ、ドッジボールの球が飛んでくるのが苦手だったのだけど、もう怖くなくなっていた。
夕飯の支度があるので、私は途中で切り上げた。
ごはんができても、みんなは暗くなるまでやっていた。
朝ごはんが終わったときだったかな、「月曜日にな、絵本を描くで。透明なところに」。
(ユウトク君は、私があげた束見本に絵と言葉を描いている。絵だけのページもある。ちゃんと物語になっている)
白いところではなく、「透明なところ」とユウトク君は言った。
私も明日、自分の絵本の取材をするとき、頭を透明にしてやろう。
これからも、どんなことも(仕事でないことも)、頭も体も透明にしてやろう。
夜、寝る前に、ツバメの巣に親鳥の頭が見えた。
卵を温めているんだ。

(4月23日)
子どもたちは学校と幼稚園。
午前中に中野さんとドライブ。
「道の駅」で苺(熟している)、クレソン、ルッコラ、絹さや、スナップえんどう、わけぎ(白くて丸い根っこつき)、ビーツ、ソーセージ、巻き寿司などを買う。
12時を過ぎてしまい、帰るともうお昼ごはんが支度してあった。
そぼろご飯(お姉さんが私のレシピで作ってくれた)、明太子スパゲティ(きのうの残り)、巻き寿司。
午後に倉庫の奥を探検。
中野さんのおじいさん(ソロバン職人だった)が手で作った、たくさんの木の道具。
カンナや、板をまっすぐに切るためのものなど、たくさんの作りかけ。
古い板の数々。
緑の空き地(前は畑だった)まで散歩。
柿の木の根もとにミツが眠っている。
朽ちかけた掘建て小屋、雨ざらしの椅子。
中野さんのおじいさん、おばあさん、ミツを感じる。
見えないけど、見える。
お姉さんは子どもたちとプールなので、夜ごはんの支度は私がした。
アスパラのだし浸し、わけぎのぬた(辛子酢みそ)、きのこご飯(お姉さんが昼間のうちに支度しておいたのを、私が炊いた)、ソーセージと絹さや炒め(中野さん作、ほんのりウスターソース味)、豆腐汁。

今日は、「毎日のことこと」の2話目の仕上げをし、午後にはお送りすることができた。
さ、使い切れなかったビーツ(「道の駅」で買ったもの)をゆでて、ボルシチを作ろう。
夜ごはんは、ボルシチ(牛バラ肉、かぶ、人参、新玉ねぎ、キャベツ、ビーツ)、サラダ(キャベツ、きゅうり、ミニトマト、コーン)、トースト。
明日は『日めくりだより』のインタビューで、塩屋にある濱田さんのアトリエに行く。
宮下さん、鈴木さん、この間裏山に一緒に上ったカメラマンの女の子と駅で待ち合わせだ。
小さな旅のようで、楽しみ。
晴れるといいな。
でも雨が降るみたい。
風呂上がり、東の空の低いところに桃色の大きな満月。

●2021年4月21日(水)晴れ

きのうは楽しかったな。
パソコン教室の前に、料理の支度をしながらおしゃべりしていたのだけど、今日子ちゃんが郵便屋さんの真似をして、その人はうちにもよく来てくださる集荷の方だったので、涙が出るほど笑った。
声の出し方や、ちょっとした目つき、体の動かし方。
今日子ちゃんのもの真似は、絶品なので。
ああ、今思い出しても笑けてくる。
エクセルの表計算ソフトは、今日子ちゃんが完璧なものを自分のパソコンで作って、私のパソコンに入れてくれた。
あとは私が、日々数字を打ち込んでゆきさえすれば、正確な数字が加算されていく。
仕事机にふたりで並んでいるとき、パソコン画面の明るさが、私のはマックスになっていることが分かった。
今日子ちゃんのはかなり暗め、でないと目が痛くなるのだそう。
目が疲れるなあと感じていたのは、そのせいもあったのだな。
すぐに私も真似をしてみた。
だから今は、とてもいい感じ。
早く、書き物仕事をしたくなる。
今日は3時半から、神戸新聞連載の新しい担当の方が、ご挨拶にきてくださる。
それまでのぽかんと空いた時間、さて、何をしようか。
小さな穴が空いていたカーディガンを繕おう。
窓辺でちくちく。
緑を見ながら。
花のような、雪の結晶のようなものをチェーンステッチで刺し、飾ってみた。
今日子ちゃんのメールによると、下は夏なみに暑いのだそう。
ここは山が近いから、ちょっと肌寒いくらい。
首がすーすーするので、ストールを巻いている。
伊那の島ゆり子さんが、私の分までアスパラを送ってくださったので、「MORIS」にいただきにいく予定。
夜ごはんは、黒豆の炊き込みご飯のおにぎり(いつぞやのをセイロで温めた)、アスパラせいろ蒸し(辛子味噌マヨネーズ)、アスパラ焼いただけ、おから煮、浸し黒豆。
明日から、3泊4日で中野さんの家に行くことになった。
夜、電話で話しているうちに急に決まった。
まだ、詳しいことは書けないのだけれど、絵本のための取材をするのが大きな目的。

●2021年4月20日(火)晴れ

風がさわさわ。
緑はもうすっかり伸びて、気持ちよさそうに揺れている。
三宮の眼鏡屋さんで作ってもらった、新しい眼鏡(パソコン用)がとても調子いい。
近々両用というのだそう。
ブルーライトカットも、レンズ自体に混ざっているんだそう。
私は文章書きに夢中になると、首が前に出てくる。
書いていると、頭だけの人になってしまうみたい。
しかも、足を組むクセがあるので、腰にも相当悪いことをしている。
夢中になりすぎると、痛みに気づかず、立ち上がるときにアイタタタとなるのだ。
なので、椅子の高さも調節した。
背もたれに体を預け、両足を床に着けたまま、画面をまっすぐに見られるように。
今日は、3時から今日子ちゃんがうちに来て、エクセルの表計算ソフトについて教えてくださる。
夕方にはヒロミさんもいらして、3人でごはん会だ。
メニューは、菊菜と香菜のおひたし(自家製辛子味噌マヨネーズ)、浸し黒豆、新ごぼうと人参のサラダ(すりごま、ねり辛子、フレンチマスタード、玉ねぎドレッシング、マヨネーズ)、ちらし寿司(ごま、ちりめんじゃこ、かんぴょうと干し椎茸の甘煮、おから煮、かぶの甘酢漬け、サーモンと帆立のヅケ、焼き穴子の含め煮、清美オレンジ、青じそ、いり卵)の予定。
きのうのうちに、湊川の市場で焼き穴子とお刺身を買っておいた。
おからもかんぴょうも煮てある。
サーモンのお刺身はヅケにした。
清美オレンジも房から出してある。
ちらし寿司は、「天然生活」の撮影の日に作ったものに、できるだけ近づけるつもり。
感謝の気持ちを込めて。

●2021年4月18日(日)晴れ、ときどき雨

6時に起きた。
このごろはいつも、同じくらいの時間に目が覚める。
そして、ぐっすり眠れる。
お通じもいい。
青汁を飲みはじめたからかな。
朝ごはんを食べ、2階の部屋だけ掃除機をかけた。
窓をいっぱいに開け、雑巾がけもひさしぶり。
軽く拭いただけなのに、雑巾が薄茶色になって驚く。
私はこのごろ、何をしていたんだろう。
床がきれいになったところで、衣替え。冬ものと夏ものを入れ替えた。
洋服ダンスの中も整理した。
風が渡る。
緑がそよぐ。
晴れていたかと思うと、急に翳ったりする。
いつまでも見ていられる。
猫森の中から、小鳥が飛び出してきた。
つーっと空を舞う。
ツバメだ!
海の上の空には、灰色の雲がある。
細かく波立っているように見える。
雨が降っているのかも。
さ、『帰ってきた 日々ごはん9』の続きの校正をやってしまおう。
「あとがき」の仕上げも。
あとひと月分を残すところで、散歩に出た。
山に向かって、遠くの方の坂を上った。
遠くの山は、いろいろな緑がむくむくしている。
白いところは、花が咲いているんだろうか。
薄いピンクもある。
小雨が降ってきたけれど、気にせずに歩く。
あれよあれよと強くなってきたので、駆け足で帰った。
しばらくしたらまた晴れてきた。
あ、海が緑色だ。
そのあと、ざーっと音を立てお天気雨が降り、大きな虹が出た。
夜ごはんは、寄せ集めグラタン(ホタルイカとちりめんじゃこのオイル漬け、お麩、新玉ねぎ、ほうれん草、ひたし黒豆、ゆで卵、ホワイトソース、チーズ)。

●2021年4月16日(金)薄い晴れ、のち小雨

5時半に起きた。
ゆうべは8時にはベッドの中だった。
クナイプのお風呂にゆっくりめに浸かったら、すっかり脱力してしまい、目を開けていられなかった。
ゆらゆらと眠り、いろんな夢をみた気がする。
雨も降っていたみたい。
朝ごはんの前に、聞いたことのない小鳥の声がした。
ピー、ピー、ピーと、ひときわ高い声でゆっくりと啼く。
ヒバリだろうか。
声のする方を探しても、どこにも見えない。
きのうは「コープさん」まで散歩して、リュックをしょって帰ってきた。
近ごろなだらかな坂道をみつけたので、帰りは遠まわりのコース。
最後はいつもの急坂だけど。
サツキの蕾が、ずいぶん膨らんでいた。
濃いピンクも、桃色も、白も。
そっと触ると、ふかふかしていた。
風のない穏やかな日。
さあ、心を沈め、『帰ってきた日々ごはん9』の再校正に向かおう。
「あとがき」もいいところまできているような気がする。
陽暮れ前、翳りはじめたときの緑がしたたるよう。
西陽が当たってぱーっと輝いたり、急に翳って、憂いをおびたような色になる。
夜ごはんは、塩鯖、ひたし黒豆、ほうれん草のおひたし(じゃこ、ポン酢醤油、ごま油)、自家製なめたけ、筍姫皮のきんぴら(赤唐辛子)、納豆(卵白)、煮豆(黒豆を薄甘く煮てみた)、ご飯。
夜になって小雨。

●2021年4月13日(火)ぼんやりした晴れ、のち曇り

6時半に起きた。
ゆうべは少年が出てくる夢をみた。
中学生くらいの、すっとしたきれいな感じのする子だった。
その子は私のことを前から知っている……みたいな夢。
目を覚ましたときには、細かいところまでちゃんと覚えていたのに、二度寝したら忘れてしまった。
残念。
カーテンを開けたら、電線に水滴がついていた。
ゆうべ雨が降ったのだな。
地面も濡れている。
空が白い。
今朝の「古楽の楽しみ」は、バッハのコラール。
先週の日曜日は、夕方からつよしさんが遊びにいらした。
まだ明るさの残る窓辺で、食べたり呑んだり。
ひさしぶりにいろいろな話をした。
つよしさん、学校が忙しいようだけど、元気そうだった。
何を作ったんだっけ。
空豆の真っ黒焼き(さやごと鉄のフライパンで)、空豆のペコリーノチーズふりかけ(ゆでた豆になたね油と塩、黒こしょうをまぶし、上からチーズをおろした。食べはじめ、何かが足りないような気がしてなたね油と塩を追いがけしたら、いっぺんにおいしくなった)、蓮子鯛と海老のアクアパッツァ風(なたね油でにんにくを炒め、粉をまぶした蓮子鯛と海老をムニエルみたいにソテー。白ワイン、サフランピラフミックススパイス、ミニトマト。仕上げにディルとバターをたっぷり加え、焼き汁を乳化させた)。
アクアパッツァなんて、そんな洒落たものではないけれど、蓮子鯛と海老の火の通り方がちょうどよく、とてもおいしかった。
最近、試しに買ってみた「サフランピラフミックス」というスパイスは、鶏肉を焼くのにも、ターメリックご飯にも、サフランの風味がついてなかなかいい感じ。
朝ごはんを食べていたら、晴れ間が出てきた。
ゆうべから常温発酵させていたパン生地は、今、ベッドの上で二次発酵中。
さ、今日も『帰ってきた 日々ごはん9』の再校正と、「おまけレシピ」を試作しながら書こう。
思い出した。
つよしさんはあの日、「海が緑色ですね」と言った。
そのとき私は青にしか見えなかったのだけど、ずっと見ていたら、だんだんだんだん緑色というのが分かってきた。
つよしさんは、絵を描く人のいい目を持っている。
今朝の海は少し、黄土色がかっている。
二次発酵中のパンは、お昼にはふっくらと膨らんだ。
曇っているからちょっと心配だったけど、まったく大丈夫だった。
ずいぶん暖かくなったのだ。
夕方、ざーーーーっと音がして雨が降ってきた。
窓を開けると、たまらなくいい匂いがする。
木と、緑が濡れた、精油のような匂い。
山の中にいるみたい。
夜ごはんは、ひき肉と白菜のあんかけ丼(柚子こしょう風味)、スナップえんどうの味噌汁。
夜になって霧。

●2021年4月7日(水)晴れ

6時半に起きた。
ゆうべはよく眠れなかった。
自分がどこにいるのか、まだ分かっていないような感じだった。
今、窓の外にはいろいろな若緑がある。
若緑は日に日に伸び、もう少しで枝が隠れそう。
海も青い。
なんとなしに肌寒いので、窓は開けてない。
ヒノキ花粉も盛大に飛んでいるそうだし。
中野さんの家から帰ってきて、今日で何日目なんだろう。
私はここにいるけれど、心ここにあらず。
家族と一緒に過ごした日々が、あまりに楽しかったからだろう。
それでもきのうは、生命保険の方に来ていただいて、振込先の変更の手続きをした。
あ、ツバメ!
六甲のツバメたちも帰ってきたんだ。
今日は、『帰ってきた 日々ごはん9』の再校正が届いた。
ありがたい宿題。
また明日から、とりかかろう。
夜ごはんは、中国風鶏がゆ(手羽先、大根、白菜)、キムチ。

●2021年4月3日(土)晴れ

ユウトク君となめたけを作った。
おもしろい発見がいろいろあったので、彼が言ったことをみなメモした。
そして、中野さんが小学2、3年生のころに書いた作文が出てきて、お母さんが見せてくださった。
お父さんには絵を見せてもらった。
中野さんはやっぱり、子どものころから絵が上手い。
女の子が縦笛を吹いている絵。
笛を持っている手の向きとか、力の入り具合で節ばっている指とか。
絵が描ける人というのは、そのものの成り立ちを目で見て分かり、表すことができるんだな。
私が描くと、そのものに触れられない。
描けば描くほど、ぼやけるばかり。
午後から、近所の池へサイクリングに行った。
ユウトク君が先頭、私、ソウリン君、中野さんの順で1列に走る。
「なおみさんの好きな道からいくで。ついてきてな」と、やさしい声で言われた。
そこは畑に囲まれた、どこまでもまっすぐな道。
春の草花が咲き乱れている。
レンゲ、ムスカリ、カラスノエンドウ、タンポポ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、ペンペングサ、クローバー。
池の広場(夏に自転車でぐるぐるまわったところ)は、桜が満開だった。
いつもは誰もいないのに、おじさんがふたり本格的なカメラで写真を撮っていた。
池(水が干上がっていた)の向こう側に下り、ため池に向かって石投げをした。
驚いて、あちこちで亀が首を出す。
ユウトク君は三段投げができるようになっていた。
中野さんは十段くらい飛ぶ。
私がちっともできないので、投げ方をユウトク君が教えてくれた。
夕方、夕陽が沈むまでレンゲ畑に4人並んで座り、私は缶チューハイ、中野さんは缶ビール。
なかなか沈まなくて、子どもたちがかけっこはじめたり、ソウリン君がヒメオドリコソウをとってきて、蜜を吸ったり。
そのときに中野さんが言ったんだった。
「ここはよく、ミツと散歩にきていたところです。ほら、なおみさんの向こうのちょうどその辺に、ころんと横になっていました」
それで、ようやく気がついた。
レンゲ畑の左側には、柿の木がある。
絵本に描いてあったのと同じ木だ。
夕陽が沈む前、中野さんの顔はオレンジ色に照らされていた。
髪型も、絵本と同じ。
今日はミツの命日だから、ミツも一緒に見ていたかも。
夜ごはんは、ノブさんの手打ちうどん、オニオンリングフライ(「暮しの手帖」に載った私のレシピで)、南瓜の天ぷら、白菜の煮物。
手打ちうどんは、釜揚げとざるの2種類にした。
肌寒かったし、お父さんが少しやわらかめの方がいいようだったから。
薬味の大根おろしは、仕事帰りのお兄さんがたっぷりおろしてくれた。
多めにゆでたのに、子どもたちもツルツルとよく食べ、「コシがあっていいわあ」「おいしいなあ」とみなそれぞれに言いながら、ほとんどなくなった。
そうだ、忘れないように書いておこう。
ソウリン君が言っていた「赤ちゃんみたい」というのは、私の話し方が静かだからなのだそう。
声が小さいし、一言三言だけで、長いセンテンスをあまり話さないからかも。

●2021年4月2日(金)晴れ

6時過ぎに起きた。
朝のコーヒーを飲みながら、中野さんの新作絵本の絵を見せてもらう(部屋に並べたり、立てかけたりしてあったので)。
凄いことになっている。
少しは想像していたけれど、遥かに超えている。
ゆうべはよく眠れなかった。
やりたいことをいろいろ思いついてしまって。
ひとまず、今朝はユウトク君に苔(水槽で育てている)を見せてもらうことになっている(小さなキノコが1本生えている)。
中野さんの部屋の棚にあるうさぎの木の人形が、きのうからおじさんと姪に見えるようになった。
少し距離をおいて、腰掛けているうさぎ。
足をぶらぶらさせながら、ふたり並んで同じ景色を見ている。
朝ごはんを食べ、お父さん、お母さんは仕事。
お兄さんも仕事。
残りのみんな(コウタ君も)でドライブ。
西脇の「へそ公園」と、ずっと行ってみたかった服屋さんへ。
夜ごはんは、お寿司屋さんごっこ。
スーパーでお刺身をいろいろみつくろい、すし飯はお姉さん作。
ヒラメ、マダイ、サーモン、いかソーメン、甘エビ、海老、帆立、いくら、カニカマ、卵焼き(お姉さん作)、豚肉の甘辛炒め(私作)。
みんなの注文を聞きながら、中野さんとユウトク君が次々にぎってくれた。
豚肉の甘辛炒めのにぎりが、思いのほかおいしかった。
豚もものしゃぶしゃぶ用肉を3等分に切り、片栗粉をふりかけて2枚ずつ重ね、白ごま油で焼きつけた。
肉が縮まないよう、弱火と中火の間でじりじりと。
9割くらい焼けたら酒、みりん、きび砂糖、醤油を加えて強火で煮からめる。
あまり濃い味にならないように。
これをにぎりの上にかぶせ、ワサビをちょんとのせる。
ふっくらとやわらかで、つやもあり、穴子に負けないおいしさだった。
教わりながら、私もいちどだけ握ってみた。
手の平に酢水をつけ、パンパンとはたく。
すし飯は少なめに手に取り、いちどギュッと握ったら、次は軽く握ってもうおしまい。
すし飯を多くしすぎないのと、握りすぎないのがうまくいくコツみたい。
ユウトク君は、去年の夏にはこういうことができなかったような気がする。
ソウリン君も、自分が食べる分だけ握って(プラスチックの型で)お皿にのせ、もくもくと食べていた。
手先の器用さや、集中力や、自分を信じる力。
小さい人たちは新しいことを次々と獲得し、大人たちがぼんやりしている間に、どんどん成長していっている。
お寿司を食べているとき、ユウトク君が不思議そうな顔で「なおみさんは何で『平気』って言うん? どうして『大丈夫』って言わんのやろ」と聞いてきた。
これも私のクセ。
私は子どものころから、「だ」という音が出にくかった。
というより、出せなかった。
「へ」だったらすっと出る。
今は吃りもほとんど治っているので、言おうと思えば出てくるのだけど、なんとなくクセになっている。
あと、静岡県の方言もあるかもしれない。
「ほんとだ。 その通りだ。みんな、大丈夫って言うよね」
私たちの会話を聞いていたお父さんが、「平気いうのは、自分を軸に言っているような感じやな。大丈夫は、もう少し広いんやろな」と言った。
そうか。
ほんとだ。
「平気」は、わがままな感じがする。
私は少し、恥ずかしかった。自分の都合だけで言葉を使っていたことに。
これからは、「だ」が出にくいことがあっても、ちゃんと「大丈夫」と言うようにしよう。

●2021年4月1日(木)晴れ

届け出の用事をすませてから、税務署の隣の小さな公園で、桜を見上げながらおにぎりを食べた。
はじめての道、はじめての場所。
摩耶駅からJRに乗るのもはじめて。
元町に出て、お昼過ぎくらいに神戸電鉄に乗った。
新開地をぬけてしばらくすると、山の中を走る。
窓のすぐ外には、触れそうな緑。
通路に映った窓の形の木漏れ陽が、流れていく。
ちらちらちらちら。
電車は空いていて、ほとんどの人が目をつぶっている。
上を向いて寝ている人もいる。
眩しいのと眠たいのとで、私もとちゅうから目を開けていられなくなった。
桜の木の桃色が見えると、目を開ける。
見事な満開。
線路の両側に咲いているところは、桜のトンネルのよう。
駅に着いて、中野さんとまず肉屋へ行った。
合いびき肉を800グラム。
今日はハンバーグを作るのだ。
亜衣ちゃんのレシピをお手本にして、肉厚ジューシーなのを焼く予定。
いちど家に帰り、荷物の整理。
チキチキチュクチュクと、盛んにさえずっている声が聞こえる。
中野さんが言っていた通り、玄関の軒下の巣に、ツバメのつがいが戻ってきていた。
1羽が巣に入ると、交代でもう1羽がシュッと飛び出し、近くの電線で見張っている。
交代のときに、ペチャクチャやる。
中野「ほら、おしゃべりしてるでしょ」
私「ほんとね、去年巣立った若いツバメが、戻ってきているのかな」
中「そうだと思います。多分、相手をみつけて」
私「わー、ここからだとよく見える。のどのところ、ほんとにあんなに赤いんだ」
中「僕は、どっちのツバメの声なのか分かるようになりました」
冷蔵庫に何があるかを確認し、また車に乗ってスーパーへ。
軽く買い物し、アイスコーヒーを駐車場で飲んだ。
空の向こうまで、太い飛行機雲が3本交叉している。
風が気持ちいい。
この間来たのはクリスマスだったから、あちこち緑緑ですっかり春になった。
春というより、夏のはじめみたい。
お父さんたちの仕事場へも、アイスコーヒーを持っていく。
スーパーから戻ってきたら、お姉さん、ユウトク君、ソウリン君がちょうど帰ってきた。
友だちのコウタ君の家へ行ったり、牧場に行ったりしたのだそう。
牧場では生クリームを作ったのだそう。
今日は、コウタ君も泊まることになった。
子どもたちがつくしをつんできたので、居間に新聞紙を敷いてみんなでハカマ取り。
私はとちゅうで折れてしまったりするのだけど、子どもたちは指先をとがらせ、とても上手に取る。
ハカマを取ったものから、きれいに揃えて並べている。
そのあとでユウトク君、コウタ君がガス台の前に並び、それぞれつくし炒めを作った。
味つけはバター醤油。
歯ごたえも味も違って、どちらもおいしい。
私は夜ごはんの支度。
ハンバーグはなんと9人分!
玉ねぎもサラダのごぼうも、みんなお姉さんが切ってくれた。
ハンバーグはフライパンで表面だけ焼き、天板に並べてオーブンでいちどに焼き上げることにした。
赤ワインとケチャップ、ソース入りのトマトソースも作り、ふっくらと焼き上げたものを軽くからめる予定。
ハンバーグをオーブンに入れている間、夕陽を見にいった。
子どもたちと中野さんと5人、裏のレンゲ畑へ。
すでにもう、半分以上隠れてしまっていたけれど。
ここらは高い山がなく、ほとんど平地だから、ずっと遠くの丘のようなところに沈む。
明日もまた見たい。
ハンバーグは生焼けにならないよう気にしすぎて、ちょっと焼き過ぎたけれど、レストランのみたいになった。
夜ごはんは、生ワカメ(お刺身みたいにワサビ醤油で)&メカブ(ごま油とワサビ醤油、ポン酢醤油)、つくしのバター醤油炒め2種(ソウリン君とコウタ君作)、高塔山のつくしの佃煮(朱実ちゃんたちが送ってくれた。酒と醤油で軽く味つけしたのだそう)、新ごぼうのサラダ(すりごま、ごまドレッシング、マヨネーズ)、レストラン風肉厚ハンバーグ(ゆでブロッコリー添え)、ご飯。
生ワカメとメカブは、朱実ちゃんと樹くんが海で採って、すぐに食べられるようにしたのを送ってくれた。
ワカメもメカブもつくしも春の味。
どれも、粋な呑み屋で出てくるような本格的な味がして、大人たちはみんな舌鼓を打った。
出てくる前の日に、冷凍パックで届いたのだけど、持ってきてほんとによかった。
長テーブルにみんなで座り、賑やかに食べているとき、「なーみさん、何でおいしいとき、いちいちブルッてなるんや」とソウリン君につっこまれた。
それは私のクセ。
おいしい食べ物を飲み込むとき、驚いて体が震え、背筋が伸びるのだ。
食後のお茶を飲んでいるときには、「なーみさん、泣いてるやろ」と言う。
「え?そう? 花粉症だからかな」と私が答えると、「赤ちゃんみたい。変や」と言う。
「なんで?」と聞いても、にやにやするばかりで教えてくれない。
中野さんはユウトク君、ソウリン君、コウタ君と4人でお風呂。
私もそのあとで入り、髪を乾かして9時半に寝た。

●2021年3月31日(火)晴れ

6時に起きた。
太陽は昇ってしまったけれど、陽射しが気持ちいい。
今日は1時から「ポパイ」の撮影。
きのうは大変なことがあった。
黄砂が飛んでいたから、撮影の仕入れをしたらすぐに帰ってくるつもりだったのだけど、調子にのって神戸大学の中に入り、桜を眺め、坂を上ってやっこらやっこら帰ってきた。
その時点で夕方の6時。
急いで夜ごはんの支度をし、さあ食べようというときに、急に目が痒くなった。
こすっても痒みは収まらず、目薬をさしてもだめ。
それで、はじめて鏡を見た。
そしたら目が、とってもおかしな状態になっていた。
透明なゼリー状のものが、白目にぷくっと膨らんで、魚の目玉みたい。
もうちょっとで黒目を覆いそう。
めん棒でゼリーを拭おうとしても、取れない。
私は焦った。
慌ててタクシーを呼び、眼科へ行った。
このままゼリーが黒目を覆ったら、目が腫れて見えなくなるだろうし、撮影もできなくなるかもしれないと思って。
私の目を拡大鏡で覗いた先生は、「異物が目に入って、強いアレルギー反応を起こしています。鉄棒をすると指に豆ができるでしょう、それと同じで、水ぶくれのようなものです。ひどく目をこすったせいで、水がたまったんです。これは、それほど珍しいことではありません。アレルギーの目薬を出しておきますから、家に帰ってから一度、寝る前にもう一度さしておけば、明日にはずいぶんよくなっていると思いますよ」とおっしゃった。
散歩をしている間に、目のまわりに黄砂がついて、気づかずにこすったせいかも。
先生に目を洗ってもらったら、それだけでずいぶん楽になった。
帰って目薬をさし、お風呂から出たときにはずいぶん落ち着いて、ちゃんと眠れた。
今朝は先生のおっしゃった通り、本当によくなっていた。
電話をしたら、タクシーがすぐに来てくれて。
すぐに診てもらえる、信頼できるお医者さんもいて。
その病院は6時半までやっていてくれて。
とても古い建物で、薄暗いところだけれど、ヒロミさんも通っている信頼できる病院で。
私は、すべてが、本当にありがたかった。
さ。
もうじき1時。
そろそろみなさんがいらっしゃる。
今日の撮影は1品だけだから、スタッフの賄いに、かぶの蒸らし炒めを作っておこう。
もう、目はいつもと変わらない。

撮影は3時くらいにぶじ終わり、はじめてお世話になったカメラマンの女の子と、裏山に上って山桜を見た。
そのあと、気のぬけたビールで南風荘ビールを作り、春の空に乾杯した。
明日は、開業届を出しに川沿いを歩いて税務署へ行ったら、その足で中野さんのご実家へ泊まりにいく。
ユウトク君、ソウリン君たちと春休みだ。
子どもたちも私も、新年度。

●2021年3月29日(月)晴れ

黄砂が飛んでいるというので、ずっと窓を閉めていたのだけど、夕方、たまらなくなって散歩に出た。
桜の咲いている方へ、方へと誘われるように。
マスクをして、手紙を持って、ずんずん歩いた。
いつもとはまったく違う道。
そしたら、大月台公園というところに出た。
川に沿って長い石段があり、桜の古木が並んでいた。
見事な桜階段をゆっくり下り、そのままカーブ。
桜並木のゆるやかなスロープを下りきった橋のたもとに、ポストを発見。
手紙を出したら、こんどは別のコースから、桜階段に向かってもういちど歩いた。
とちゅうで、桜の花を3輪拾って帰ってきた。
去年亡くなった編集者の友人、お母さん、私の分。
帰り着き、すぐに顔を洗って、それぞれの祭壇に桜の花を活けた。
私の分の桜だけ持って2階へ。
窓を開け、缶ビール。
黄砂で霞む海と街を眺めながら。
おつまみは柿ピー(ワサビ味)。
暗くなるまで。
なんだか目に見えない二人と、お花見をしているみたいだった。
夜ごはんは、アジア風オムレツ(ホタルイカのペンネの残り、チーズ、サンバルソース)、新ごぼうのサラダ。

●2021年3月28日(日)小雨

朝から雨。
目に見えないくらいの。
でも、降っている。
陽の出は見えない。
でも太陽は、あの辺りにあると分かる。
うちの桜の小枝は、小さな花がひとつだけ開き、枯れてしまった。
朝ごはんを食べ、スイセイに送るレシートの整理をした。
あとは3月分を残すのみ。
来月からは、私が自分で「現金出納帳」を毎日つける。
きのうは、朝から皮膚科の病院へ行った。
花粉症のせいなのか、あごのあたりに発疹ができ、少しずつ広がってきていたので。
はじめてだったのだけど、とても感じがいい病院だった。
トイレの洗面所の山側の窓が開けてあり、明るくて清潔。
その自然の光や、窓から入ってくる風みたいに、爽やかな感じのする病院だった。
診察はささっと終わり、ローション(化粧水みたいなもの)と塗り薬をもらって、開店前の「MORIS」へ。
『日めくりだより』にサインし、ひろみさんと今日子ちゃんのおしゃべりに笑い、そのあと、阪急電車に乗って三宮にも行ってきた。
パソコン用の眼鏡を作ろうと思って。
眼鏡屋さんでは説明だけ聞いて、厨房用具屋さんをのぞき、生地屋さんのバーゲンものぞき、元町からJRに乗って六甲道へ。
美容院にも行った。
だから今日は、どこへも出かけなくてもいい。
急いでやらなければならない仕事もない。
これから、生のトマトでトマトソースを作ろうと思う。
しんとした日。
外が白い。
窓を開けると、けっこう降っている。
しとしとじみじみ。
枯れ木の若緑の葉がずいぶん出てきた。
朝よりもさらに、伸びているような気がする。
夜ごはんは、ホタルイカとほうれん草のトマトソースペンネ、新ごぼうのサラダ(すりごま、黒酢玉ねぎドレッシング、ディジョンマスタード、マヨネーズ)。
新ごぼうは今、生でも食べられそうなくらいに白く、みずみずしく、歯切れがいい。
ざーっと音を立ててひとしきり降った雨も、夜には止んだ。 

●2021年3月25日(木)雨のち晴れ

6時に起きた。
雨模様で、陽の出は見られず。
桜の蕾もきのうと変わらず。
朝ごはんの支度をしているとき、遠くの空に黒っぽい鳥が3羽。
一定の距離を空けたまま、縦に並んで飛んでいた。
ゆうゆうと、螺旋を描いている。
高いところから下りてきているのかな。
ずいぶん小さく見えるけど、多分カラスだ。
今日は手紙を書いたり、机まわりを整頓して税務の資料をそこに納めたり。
申告まわりのこと、今年から自分でしようと思うので。
『自炊。何にしようか』にサインもした。
夕方、雨上がりに桜見物の散歩に出た。
ポストと、「コープさん」へ。
いつもは行かない神社まで、足をのばした。
ずいぶん咲いている木と、まだ2分咲きのところと、いろいろいろいろ。
満開までにはもうしばらくありそうだ。
軽く買い物し、ゆっくりゆっくり坂を上って帰ってきた。
東の空には白い月。
暑くもなく、寒くもなく……帰り着いてすぐ、よく冷えた缶ビール。
いろいろなことがひと段落したので、坂を上っているときから決めていた。
白い月に乾杯!
もうじき6時、まだ明るい。
飲みかけのビールを持って台所へ移動し、夜ごはんの支度をした。
夜ごはんは、厚揚げのじりじり焼き(おろし生姜に醤油をちょっと)、ゆでブロッコリーのお焼き(フライパンに並べておろした長芋とチーズをのせ、丸く焼いた。ずっと前にヒロミさんに教わったレシピ)、ご飯はなし。
お風呂上がり、窓を開けると空の真上に光る月。

●2021年3月24日(水)晴れ

6時前に起きた。
ベッドの上に立ち上がって、陽の出を見る。
ここからでないと、もう見えなくなった。
気づけば、陽の出の時刻もじりじりと早まっている。
枯れ木の先にポッと浮かんだ太陽は、丸い花みたい。
朝ごはんの前にひと仕事。
『日めくりだより』のゲラの片づけを、ようやくはじめた。
税務のことも勉強中なので、資料を整理。
きのうは、パソコンで請求書をはじめて作った。
時間はかかったけれど、鈴木さんに助けてもらいながらなんとかできた。
この先、ひとりでもできるようにフォーマットを保存し、その続きでパソコンの整理もした。
いろいろ試しているうちに、これまで知らなかった機能が使えるようになった。
苦手とか、自分には向いていないとか、ぜったいできないとか。
私はずっと思い込んでいたんだな。
新しいことができるようになるのって、晴れ晴れしい気持ち。
そしてきのうは、『帰ってきた 日々ごはん9』の校正もした。
今日も続きをがんばろう。
暑い。
窓を開けると花粉症のくしゃみが出るので、玄関を開け、網戸にしている。
それでもなんとなく暑い。
きのうは肌寒く、カーディガンを羽織っていたのに。
母の祭壇に飾ってある桜の枝先3センチ(蕾が開きかかっているのが落ちていたので、忍びなく、拾ってきた)は、きのうよりも少しだけ膨らんできている。
夜ごはんは、野菜たっぷりミルクスープ(キャベツ、大根、ブロッコリー、ソーセージ、ペンネ)。
夜ごはんを食べ、2階の窓を開けて深呼吸。
白い半月(少し膨らんでいる)が、まだ青い真上の空に。
桜の蕾もずいぶん膨らみ、明日の朝には咲くかもしれない。

●2021年3月21日(日)降ったり止んだりの雨

窓は霧で真っ白。
ツクピーツクピー、チュクチュクチュクチュク。
小鳥たちの声がよく聞こえる。
海も街も霧に包まれているこんな日に、好きな仕事に向かえることが、じんわりと嬉しい。
きのうは、『日めくりだより』の本の中に登場いただいたお礼を伝えに、「植物屋」さん、「かもめ食堂」へ行った。
桜がちらほら咲いていて、ユキヤナギも満開で、上着を脱いで歩いた。
「MORIS」では、森本仁さんの展示会が開かれていて、私はお皿を1枚買った。
外の光に当てて眺めているうちに、そのお皿に盛りつけたい料理が目に浮かんできたので。
筍と新ワカメの薄炊き、蕗の薄味煮、緑の葉っぱのおひたし、白和え、白菜と夏みかんのサラダ、ローストポークと小粒じゃがいも、ハンバーグ、肉だんご……和洋中だけでなく、民族っぽい料理も受け止めてくれそうな器。
きのうはさっそく、カレイの煮つけを盛ってみた。
薄い色の煮汁が底に広がって、ワカメや生姜の色も、とてもよかった。
春先のカレイは身が白くやわやわで、脂も上品。
小さめの切り身だったけど、ひとりで2切れぜんぶ食べてしまった。
愛でながら、器ごと食べてしまったみたいな感じ。
さ、今日もまた『帰ってきた 日々ごはん9』の初校の続きをやろう。
午後から陽が差してきた。
風がとても強い。
雲よ、飛んでいけー。
今、ミニトマトを4つ割りにして、塩をまぶしておいている。
もう少し汁が出てきたら、なたね油とローリエを加えて煮、トマトペーストを補ってトマトソースにするつもり。
雨がまた降ってきた。
霧で真っ白。
夜ごはんは、ペンネのトマトソース(ホタルイカとじゃこのにんにくオイル漬け入り)、ロシアっぽいおからサラダ(マヨネーズ、クリームチーズ、ゆで卵、牛乳、粒マスタード、練り辛子、ディル)。
また、森本さんの器に盛った。

●2021年3月20日(土)晴れのち曇り

6時前に起きた。
外はもうほの明るい。
トイレに行って戻ってきたら、太陽が昇っていた。
きのうも今日も、線香花火みたい。
橙色の玉がじりじりと、霞の向こうに透けて見える。
ラジオを聞きながら、夢の体感を反芻していた。
ゆうべは寝る前に『ことり』を読み終えた。
もう、何度も繰り返し読んでいる本。
とても静かな物語なのだけど、終盤はものすごい勢いで、静の渦に巻き込まれるようになる。
「感動した」なんていう言葉には、とても収まらない。
これほどに汚れなく、清らかな物語を、私はほかに知らない。
読み終わってすぐにまたはじめから読み、とちゅうで閉じた。
自分の中にある音に、耳を澄ます。
そういうことが描かれているように思う。
そのまま眠ったから、本の中の空気を体感しているような夢をみたんだな。
さ、今日もまた『帰ってきた 日々ごはん9』の初校の続きをやろう。
お昼ごはんを食べたら、ひさしぶりに坂を下りる予定。
ポスト、コンビニ、クリーニング屋さん、「MORIS」へ。
夜ごはんは、カレイの煮つけ(だし汁多めの薄味、軽く煮たワカメ添え)、塩もみ人参とキャベツのサラダ(ハム、黒酢ドレッシング)、冷やご飯(お昼に炊いたのをお弁当箱に詰めておいた)。

●2021年3月18日(木)晴れ

たっぷり眠って、夢もいろいろなのをみて、7時半に起きた。
太陽はもうすっかり昇っている。
そういえば、朝陽が昇る場所がずいぶん東に移動した。
でも、猫森の枯れ枝の隙間から、広々と照り返している海がちゃんと見える。
火曜日からきのうまで、中野さんが泊まっていた。
画材屋さんの帰りだったとのこと。
2日目だったかな、その日私は役所の方にお会いしたり、『日めくりだより』のサインをしに、六甲の本屋さんへ出かけたり。
帰ってきて玄関を開けたら、とてもいい匂いがした。
中野さんが、じゃがいもとにんにくを鍋で蒸し焼きにしていたのだった。
ツルニチニチソウの小さな絵も描いてあり、仕事机の上に飾ってあった。
音楽は、最近私がよく聞いている、デンマークの歌曲集。
誰かがいる家に帰ってくるのはとても嬉しいのだけど、気恥ずかしくて変に浮かれてしまうような、不思議な気分。
まだ4時だったけど、じゃがいもが熱いうちに窓辺で乾杯。
「『日めくりだより』おめでとうございます」と、ささやかにお祝いしてくださった。
きのうの朝は、サインの続き。
私がサインした本を、床の上で中野さんが5冊ずつ紙で包み、プチプチでさらに包み、ダンボール箱へ。
箱の底にも、真っすぐになるよう厚紙が敷いてあった。
絵や立体をいつも包んでいるから、中野さんの手指の動きは流れるようだった。
おかげでとても丈夫な梱包で、販売部にお戻しすることができた。
お昼を食べて帰っていった中野さんは、今、新しい絵本のことをやっている。
描いているというより、手を動かしているんだそう。
今日から私は、『帰ってきた 日々ごはん9』の初校にいそしむ。
3時過ぎに、1月と2月が終わった。
コーヒーをいれ、もう少しがんばろう。
今は5時半。
3月まで終わった。
2018年の3月には、りうの次男がぶじ生まれ、翌日に私は沖縄のきこちゃんのところへ行ったのだった。
そうか。
もう、あれから3年が経ったのか。
海はまだ青く、なんとなしに霞んでいる。
今日はずっと窓を閉めていたのだけど(花粉症対策で)、開けたら、たくわんみたいな匂いがした。
なんか有機的な匂い。
春だから、地面が温まって、目に見えない生き物たちがうごめいているのかな。
夜ごはんは、鰆の味噌漬け、蒸し小松菜、しじみと豆腐の味噌汁、ゆかりおにぎり。
6時を過ぎても、まだ明るい。
ずいぶん日が伸びたものだ。

●2021年3月14日(日)晴れ

6時半に起きた。
ゆうべ練っておいたパン生地を、ベッドの上で二次発酵させながら、「天然生活」のユーチューブにのせるための動画を確認し、朝からレシピを書いていた。
この間の撮影の日に、みんなのお昼ごはんにこしらえた「具だくさんちらし寿司」。
このレシピは、雑誌の方にはもともと載せないつもりでいたし、動画の撮影も知らない間に急にはじまった。
手順がすべて撮られているわけではないけれど、あの日のそのままの時間が映し撮られていて、ゆるやかでいいなあと思う。
何人かお客さんが集まると、いつも床の絨毯の上に白いクロスを敷いて、ピクニックのようにそこでごはんを食べる。
だから、ちらし寿司もそこで作っていった。
ライターの宮下さんが、私のつぶやいたレシピをその場で記録し、ゆうべ覚書きを送ってくださったので、それをもとに書いている。
『日めくりだより』の刊行を記念して、来週か再来週にアップされるのではないかと思います。
ご興味のある方は、ぜひのぞいてみてください。
お昼も食べずに夢中でやっていたら、もう2時だ。
きのうのうちに掃除し、雑巾がけもしておいたので、今日は本にサインをしよう。
53冊あるから、ゆっくり、ゆっくりやろう。
白い紙が美しい、とても繊細な本だから、サインをするのは気が引ける。
さて、どこに書いたらいいのかな。
いよいよ、『日めくりだより』が全国の本屋さんに届けられます。
どうかみなさん、楽しみにしていてください。 
夜ごはんは、回鍋肉(ウー・ウェンさんの本のレシピで)、中華焼きそば(いつぞやの残り)。

●2021年3月12日(金)曇りのち雨

6時前に起きた。
雲が厚く、空も海も白っぽい。
今朝の「古楽の楽しみ」はミサ曲。
6時半になっても、薄暗いまま。
陽の出は見られなかった。
最近はまた、暗いうちからカーテンを開け、明けていく空を見るのが楽しみ。
おとついだったかな。
ううん、その前の日だ。
5時くらいにカーテンを開けたら、目の前に細い細い月が光っていた。
三日月よりも細い、羽根みたいな月。
あんまりきれいではっとした。
まだ夜景の灯っている暗い空に、ピンで止めたように、そこにあった。
ベッドに寝転ぶと、枕の位置からちょうど見えるので、陽が昇るまでずっと見ていた。
徐々に細く、銀の絹糸のようになり。
太陽が昇るにつれて空は青く、月は白く、もっと細くなった。
私は目をつぶったり、開けたりしながら、青空に消えてゆくまで見届けた。
今朝は、陽の出は見られなかったけど、めずらしくミルクティーをいれて戻ってきて、ベッドの上にかしこまり、きのうひろみさんにいただいた「暮しの手帖」の古い雑誌をめくった。
表紙には1957年発行とある。
私が生まれる1年前だ。
巻頭に台所研究の写真の記事があって、それをじっくり読んだ。
カラー写真ではないから、床や壁、流し台、棚などの色が書いてある。
ガスコンロの角ばったデザインも、昔ながらのオーブンも、窓も、和洋折衷のようなこの時代の台所。
木製の棚を塗ったペンキの匂い。
陶器を落とすと割れてしまう、白いタイルの流し。
そうか、こういう台所がいちばん好きなんだ!と気がついた。
朝ごはんを食べ、おとついから書きはじめた「気ぬけごはん」の続き。
窓の外が白いと思ったら、雨が降っている。
薄いセーターだけでは肌寒い。
4時には仕上がり、お送りする。
終わったー。
夜ごはんは肉厚ハンバーグ(亜衣ちゃんのレシピがお手本)のトマトソース煮(大根のバター煮、ゆで菜の花添え)、ご飯はなし。
ハンバーグはさらりとしたトマトソースでほんの少しだけ煮込んだのだけど、やわらかくジューシーで、たまらないおいしさだった。
表現は悪いけど、肉を飲んでいるみたい。
4つ作ったので、まだまだある。
風呂上がりの夜のラジオは、教会音楽。
今夜も雲に夜景のオレンジが映り込み、とてもきれい。

●2021年3月9日(火)曇り

6時半に起きた。
陽の出を見ることができた。
もうすっかり顔を出したあとだけど。
そして、山の上の雲からだったけど。
朝からゆっくりゆっくり動き、ある人に送るメールをずっと書いていた。
午後からは、神戸新聞の連載の作文の仕上げ。
写真も撮った。
とちゅうであちこち掃除。
おとついの撮影のことを思い出しながら。
「天然生活」の撮影では、朝から日暮れまで、濱田さんにたくさん写真を撮っていただいた。
私も自由に動き、そのままを撮ってもらった。
お昼ごはんのちらし寿司もおいしかったな。
いったい何種類の具を混ぜたのだろう。
おから煮(人参、コンニャク、油揚げ、ごぼう)、蕪の甘酢漬け(葉っぱも刻んで入れた)、かんぴょう煮、焼きあなごの含め煮、サーモンのお刺身(前の晩にヅケにしておいた)と、翌日そこに合わせ軽く浸けた帆立のお刺身、実山椒の佃煮、ちりめんじゃこ、炒り卵、夏みかん(休ミちゃんが送ってくださった)、青じそ。
まだ、あったかな。
こんなに混ぜたのに、ひとつひとつの味がちゃんとしてとてもおいしかった。
みんなおかわりをした。
濱田さんは4杯。
「すごい!食べるたびに違う。どう言えばいいんやろ。いろんなのが、それぞれの味をちゃんと持っていて、口の中で弾ける。その弾け方がひと口食べるたびに違う。こんなに入っているのに、全体は調和してます。なんでやろ?」とおっしゃった。
お昼を食べ、屋上に上ったら体を動かしたくなり、私は走った。
そしたら濱田さんも走りはじめ、追いかけっこになり、走る私を濱田さんが走りながら撮っていた。
最後、暮れゆく空を眺めながら、窓辺でごはんを食べる場面を撮ってもらっているときに気がついた。
濱田さんはまるで自分の眼がカメラみたいに、瞬きをするみたいにどんどん撮る。
フイルムがなくなって取り替えにいくとき、もとの立ち位置に戻ってくるとき、ゆっくりと静かに動く。
空気が動かないので、撮られていることが気にならない。
だから私も、同じようなポーズを何度もできる。
まったく関係のない動きをしても、またそれも撮られる。
決まりきっていない。
だから、すっごくおもしろい。
撮影が終わり、窓辺のテーブルでささやかに乾杯した時間も楽しかった。
もう何年も前からお世話になっているのに、私は濱田さんの話をはじめて聞いた。
文を書いてくださる宮下さんとは何度も呑んでいるけれど、鈴木さん(『日めくりだより』の編集者)とははじめて呑んだ。
濱田さんはお酒を呑まれない。
おもしろかったなー。
この撮影の様子は、『日めくりだより』の刊行を記念し、4月20日発売の「天然生活」に掲載されます。
巻頭ページに載るのだそうです。
どうかみなさん、楽しみにしていてください。
今日は、対岸の水平線が黄色い。
夕方になったら、海まで黄色くなってきた。
黄砂だろうか。
もしかして花粉?
夜ごはんは、グラタン(いつぞやの寄せ集めクリームシチューの残りに、ほうれん草炒めを加え、チーズをのせてオーブンで焼いた)。

●2021年3月7日(日)晴れ

6時半に起きた。
ひさしぶりに陽の出を見ることができた。
山の上の雲から出た。
今日はいよいよ「天然生活」の撮影。
朝、ゴミを出しにいくときに、大きく長い龍の雲が出ていた。
道路の方に出ると、小さいのも合わせて4つ。
おとついまでは曇りのち雨の予想だったのに、よく晴れてくれた。
濱田さんは晴れ男なのかな。
宮下さんも晴れ女?
ゆうべ練っておいたパンを成形し、今ベッドの上で2次発酵させている。
撮影は、ここからスタートだろうか。
濱田さんはコンテなどには関係なく、目に映ったものをどんどん撮っていってくださるから。
さて、どうなることだろう。
きっと、楽しい日になる気がする。
ちらし寿司の支度も万全だ。
あとは、野となれ山となれ。
そろそろみなさんがいらっしゃる。

●2021年3月6日(土)曇りのち晴れ

6時半に起きた。
今朝のクラシックは合唱曲。
最後のマタイ受難曲を聞きながら目をつぶり、天気予報を聞きながらストレッチ体操をして体を温めた。
寒いのかなと思ったら、4月の中旬並の気温なのだそう。
カーテンを開けるとどんよりした曇り。
さ、今朝は早くから行動しないと。
美容院と、撮影用の買い出しに出掛けるので。
まだ頭がぼんやりしているのに、動かなければならない。
ふだん私はそういう動き方をしていないから、気づかなかった。
お勤めの人たちも、家族を送り出すお母さんも、こういう朝が日常なのだな。
私はいつも、朝風呂に浸かって、ゆっくりゆっくり動いて、体の感じをつかんでいくもの。
それでだんだん、目覚めていく。
みなさん、ごくろうさまです。
8時に、朝ドラの1週間分のまとめを見ていたら、ぱーっと晴れ間が出て一瞬だけ空が明るくなった。
煙突から上る煙と、すぐ上の雲の輪郭が光っている。
一面ぼんやりとした霞がかかっているのに、そこだけ光っている。
春霞だ。
では、行ってきます。
夜ごはんは、お昼を抜いていたので4時に食べた。
おにぎり(「いかりスーパー」の)、おから煮、豚汁(ごぼう、大根、人参、玉ねぎ、ねぎ)。
食べてから、明日の仕込みをいろいろやった。
風呂上がり、雲に夜景のオレンジ色が映ってとてもきれい。

●2021年3月5日(金)曇り

7時に起きた。
いつもよりちょっと遅いけれど、ラジオをつけ、天気予報、ニュース、クラシック音楽の番組。
聞きながらベッドの上で体操。
しばらく日記が書けなかった。
気づけばもう金曜日。
中野さんが帰られたのは、いつだったっけ。
最後の日には私も新開地まで行って、市場をめぐり歩き、公園でお昼ごはんを食べた。
さつま揚げいろいろと、焼きそば(すじコン入り)と、穴子の箱ずし。
とてもいいお天気の日で、陽射しが眩しかった。
淡路島産のちりめんじゃこ(小さなホタルイカが混ざっている)や、グリーンピースを買って帰った。
ピチピチと跳ねる生きた魚を、ただ箱に入れて跳ねるまま売っている店や、ホタルイカもとても新鮮なのが2パックで200円とか。
湊川の市場はやっぱりおもしろいな。
朱実ちゃんと樹くんが遊びにきたら、連れていってあげたい。
今日は朝からめいっぱい動いていた。
あさってが「天然生活」の撮影なので、ページに載る作文を仕上げ、小さな試作をしてレシピを書き、お送りした。
電話もたくさんかかってきたし(2つだけれど)、あちこち掃除をしたりして。
みんなのお昼ごはんに、夏みかん、ちりめんじゃこ、おから煮を混ぜたちらし寿司をこしらえるつもりなので、かんぴょうを甘辛く煮た。
歯ごたえを残して、薄味に煮たかんぴょう。
おいしいなあ。
下ゆでしたかんぴょうをだし汁か薄目のコンソメで煮、グラタンにしてもきっとおいしいと思う。
お麩と合わせて。
和風グラタンだ。
きのうは、新しいテレビの仕事が決まるかもしれないという電話をいただいた。
ひとつがだめになったら、ひとつ新しいことが生まれる。
だめにならなかったら生まれなかったかもしれない、新しいこと。
偶然なのか、必然なのか……そういうものに感謝したくなるような、そんな感じのする日だった。
今、5時を過ぎたところ。
空と海は境がなく、海の水色が空に溶けている。
だからか、空がいつもより広々として見える。
遠くの灯りがともりはじめた。
今日もまた、いい夕方がはじまろうとしている。
夜ごはんは、寄せ集めシチュー(魚介入りトマトソースのペンネ、コンソメで煮た大根のさいの目切り、牛乳、チーズを少し、ディル)、キャベツの塩もみ炒め。

●2021年2月27日(土)晴れ

このごろ、朝起きられない。
なんとなく時差ボケのようになっている。
7時半にカーテンを開け、太陽の光を部屋中に入れ、もうひと眠り。
おかげでいい夢をみた。
去年の夏に亡くなった、編集者の若い友人が出てきた。
光がたっぷり入るベッドのまわりを、にこにこしながらふわふわと歩いていて、元気そうだった。
ピンクのTシャツから伸びた花模様のパジャマの足は、とても痩せていたけれど、おかっぱくらいの長さに切ったカールした茶色い髪が、ふわっと私の鼻をかすめ、シャンプーのいい匂いがした。
「ほんとはね、カツどんが食べたかったの。でも今日は、残さず食べたよ。地味なごはんを」と、あの懐かしい顔で笑った。
ちょっと流し目のようにしながら微笑む。
多分そこは病室で、彼女はあと数日で自分が亡くなるのを知っている。
私たちも知っている。
でも、ちっとも悲しくなくて、あたたかな光を部屋じゅうに放つ彼女のまわりで、私たちもふわふわと揺れていた。
最期を迎えようとしている人の、最後の光。
目覚めたとき私は、光を浴びながら目をつぶっていた。
体の中にも光が入り、ふくらんで、起きた。
朝ごはんを食べ、4月からはじまる神戸新聞の連載の文を書きはじめた。
もうじき5時。
もしかしたら、書けたかも。
締め切りはまだまだ先なので、寝かせておこう。
「ギャラリーVie」の展覧会も、残すところあと2日。
今日、また中野さんがいらっしゃる。
夜ごはんは、肉豆腐(牛こま、豚こま、しらたき、椎茸、もめん豆腐、水菜)、おから(ごぼう、油揚げ、コンニャク、人参)、納豆(卵、ねぎ)、大根の味噌汁の予定。 

●2021年2月26日(金)雨のち曇り

9時に起きた。
眠たくて、眠たくて、ちっとも起きられなかった。
きのうもたっぷり寝たのに。
私はくたびれているのかな。
雨が降っている。
静かな雨。
雲が薄いから、ぼんやりと明るい雨。
白州のみんなが集まった夜は、とっても楽しかった。
会わない間に、4年分だけ年をとった私たち。
それぞれが過ごしてきた時間を思いながら、食べたり、呑んだり、しゃべったり。
心おきない仲間たちとの会は、ささやかだけど、賜物のように幸せな時間だった。
加藤さんは泊まり、翌朝コーヒーを飲んで帰られた。
中野さんも同じ日の午後に帰った。
みんなの余韻を残しておきたくて、ずっとそのままにしていたのだけど、今日はようやくあちこち掃除機をかけた。
さて、きれいになったところで、『自炊。何にしようか』にサインをしよう。
夜ごはんは、焼き肉味の炒め物(牛こま、人参、キャベツ)、おからのポテサラ風(ゆで卵、ディル、マヨネーズ、クリームチーズ、ねり辛子、粒マスタード)、味噌汁(キャベツ)、ご飯。

●2021年2月23日(火)曇りのち晴れ

8時に起きた。
カーテンを開けると曇り空。
太陽は遠に昇り、雲の間から光がかすかに漏れている。
海に当たった先に、銀の原っぱがひとつ。
太陽の光の架け橋の幅が広がると、原っぱが増える。
見ている間にも刻々と変わる。
金の線、銀の線があちこちに伸びる。
金銀というよりも、白の中で白く光っている。
窓辺に立ってしばらく眺めていたら、私の頭の真上から光が降ってくるような感じになった。
中野さんも下の窓から見ているかな。
下に下り、「晴れた日よりも、暗いくらいの方が光るんですね」と言ったら、「そうですよ」と中野さん。
「ギャラリーVie」での展覧会も、折り返し地点を過ぎてしまった。
今日は、白州の仲間たちが展覧会を見にくるそうなので、うちにお誘いした。
中野さんはお昼ごはんを食べて出かけ、私はひとりで料理の仕込み。
佐渡島を一緒に旅した加藤さん、きんちゃん、なるみさんが集まる。
きんちゃんの娘みっちゃん(高校一年生)は、期末テストで来られない。
でも、みっちゃんの高校の先輩の、世奈さんという女の子が来るかもしれないとのこと。
台所でみんなの顔を思い浮かべながら、ときどき空や海を眺めながら、あれこれおいしいものを支度する。
こういうのがいちばん楽しいな。
献立は、生ワカメ(さっとゆでて、ワサビ醤油)、新ごぼうのサラダ(すりごま、練り辛子、粒マスタード、マヨネーズ、白味噌)、鳥肝の醤油煮(ゆで卵も加えてみた)、アルザス風大根のマリネ(レモン汁、ディル)、焼き帆立(島るり子さんの耐熱皿で、中野さんが焼いてくださる)、ひじき煮の白和え、ゆかりおにぎり、蕪の赤蕪漬けもどき。メインは辛い鶏鍋(つくね団子、手羽のスペアリブ、豆腐、ごぼう、豆苗、ニラ、コチュジャン、キムチ)の予定。

●2021年2月19日(金)曇りのち晴れ

6時半に起きた。
雲が厚く、陽の出は見えず。
でも、小鳥たちが盛んにさえずっていた。
きのうは管理人さんが、床のPタイルのはがれかけた4枚を、新しいのに取り替えてくださった。
きれいに剥がし、隙間にセメントを塗り込め、とても丁寧に。
オレンジと赤が加わった。
とても可愛らしい。
そして帰りがけに、「あ、そうや、高山さん。なにしょーかーいうの、買いましてん。うちの息子らがいろいろ見て、おいしいのを作ってくれますのん」と言われた。
はじめ、何のことなのか分からなかったのだけど、「サインをしてもろてもよろしいですか?」と言われ、ようやく分かった。
『自炊。何にしようか』だ。
『なにしょーかー』の本、嬉しいなあ。
Pタイルに重しをしておいたのをよけ、掃除をするところからはじめよう。
今、ピンポンが鳴って、『日めくりだより』の念校が届いた。
いよいよこれで最後だ。
コーヒーをいれていそしもう。
ゆっくりゆっくり読み込み、3時には終わった。
まだ明るいから、窓辺でお裁縫。
今やっているのは、靴下のダーニング。
雑巾もちくちく縫う。
だんだん暮れて、遠くの灯りがともりはじめた。
窓を開けると、キーンとした空気。
冬の山の匂いがする。
夜ごはんは、温かいものが食べたいな。
お出しをとって、ゆうべの牡蠣ご飯で雑炊にしよう。今日子ちゃんにいただいたほうれん草も入れて。

●2021年2月17日(水)雪のち晴れ

7時前に起きてカーテンを開けたら、小雪が散らついていた。
よく見ないと分からないくらいの、粉みたいな雪。
トイレに行って戻ってきたら、本格的に降っていた。
上から下から舞い踊る、薄く透けた雪。
『雪のひとひら』の英語読みは「SNOW FLAKE」というそうだけど、本当に、「フレーク」という音にぴったりな感じ。
雪は真っ白ではない。
空の方が白いので、灰色がかって見える。
あとからあとから降ってくる。
ずっと見ていると、遠くの方の雪は灰色の粉が舞っているよう。
小鳥の大群が舞っているよう。
ときおり、風に煽られて窓に貼りつくものもある。
そういうひとひらは、一瞬だけ結晶を見せ、すっと溶けてしまう。
7時前の天気予報、今朝は私の好きな天気予報士、萬木(ゆるぎ)敏一さん。
標準語なのだけど、関西弁のイントネーションが混ざった話し方で、聞く人の身になった予報を丁寧に伝えてくれる。
うそのない声だと感じる。
「今日は昼間になっても、4度から5度、上がっても6度くらいにしかなりません。風が強いので体感温度はさらに低く、冬のいちばん寒い日の服装でお出かけください」と言っていた。
今日は午後から歯医者さんを予約している。
行けるだろうか。
ひとしきり降った雪がやんで、晴れ間が出てきた。
朝ごはんのときにはもうどこもかしこも晴れ。
海には、光の帯が伸びている。
よかった。
歯医者さんをキャンセルしなくてすんだ。
朝から、「天然生活」の取材ページについての資料を作って、鈴木さんと宮下さんのお送りした。
写真を撮ったり、テキストをまとめたり。
気づけばすっかり晴れ渡っている。
海のあちこちに、白うさぎが飛んでいる。
よほど風が強いのだ。
窓を開けると、きーんとした空気。
寒いけれど気持ちいい。
さ、そろそろ出掛けましょ。
なたね油が届いたそうなので、「MORIS」にも寄る予定。
歯医者さんが終わって、遠まわりをしてしばし散歩。
「MORIS」では今日子ちゃんが焼き菓子をいろいろ焼いていて、とてもいい匂いがしていた。
ヒロミさんも帰ってらした。
クツキーのはしっこと、アール・グレイの香りのお茶と。
弾むおしゃべりと。
あー、楽しかった。
帰りのタクシーがなかなか来ず、みんな「寒いですねえ」と声を掛け合いながら待っていた。
萬木さんのおっしゃる通り、暖かめの格好をしてきてよかった。
夜ごはんは、大急ぎでクリームシチュー(ささ身、しめじ、長ねぎ、パセリをたっぷり刻んで煮込んだ。ポルトガルのお米の形のミニパスタのつもりで、冷やご飯をぱらぱらと加えた)を作って食べた。

●2021年2月15日(月)雨のち曇り、のち晴れ

雨の音を聞きながら寝ていた。
7時にラジオをつけて、ニュースを聞き、クラシックの番組を聞き終わり、そのあとゆらゆらと眠った。
胃袋の上に手のひらを重ねてのせ、寝ていた。
ゆうべ、夜ごはんのあとにお菓子(ポテチや柿の種)を食べたから、なんとなくお腹が苦しかったし、私はくたびれているのだ。
目が覚めてからは、『帰ってきた 日々ごはん8』をベッドの中でゆっくり読んで、12時に起きた。
まだ雨が降っている。
こんな日は、休息の日。
メールを送ったり、日記を書いたり。
ゆっくり。ゆっくり。
その間に、窓の外はいろいろに移り変わっていった。
3時半ごろ、ザーーーーーと大きな音がして雨が降った。
2階から見ようと思って階段を上ったら、もうやんでいた。
今はカラスが盛んに鳴いている。
何ともすがすがしい空。
どこかで虹が出ていそうな空。
と思って見たら、東の空の雲の間に小さな虹。
チ、チ、チ、チと、とぎれとぎれに鳴く小鳥が、木に遊びにきている。
なんだか今日は、空のあちこちで曇りと晴れと雨とがいちどにあるようなお天気だった。
夜ごはんは、カレーライス(いつだったか冷凍しておいたものに、ブロッコリーを加えた)、らっきょう、トマトサラダ(玉ねぎドレッシング)。

●2021年2月13日(土)晴れ

ぐっすり眠って、夢をいくつもみて、7時過ぎに起きた。
カーテンを開けると、すっかり太陽が昇っている。
太陽の下の海は、幻みたいに光っている。
ラジオからはピーター・バラカン。
部屋中が黄色くなってきた。
えいっと起きる。
なんとなく、頭がぼんやりしたまま朝ごはんを食べ、たっぷり洗濯。
今朝は海の水が膨らんでいる。
きのうが新月だったことと、関係があるんだろうか。
『帰ってきた 日々ごはん9』の校正。
しばらく間が空いていたから、確認のためにもういちど最初から読み込みながらやった。
4月まで終わった。
今は、5時少し前。
絵本を投函しに、ポストまで散歩した。
海を眺めながらゆっくり下って、遠まわり。
今日の海は、やっぱり水かさが多いような気がした。
帰り道、坂のとちゅうで、燃えるような茜色の花の蕾を拾った。
カラカラに乾いた蕾。
たぶん、クチナシの実だと思う。
手のひらをそっと開いて、見るたびにハッと驚く色。
昇ったばかりの太陽みたいな色。
帰ってから、母の祭壇に供えた。
夜ごはんは、鶏むね肉とじゃがいもの塩炒め、サラダ(レタス、パセリ、ロースハム)。

●2021年2月12日(金)曇り

朝ごはんを食べ、中野さんをお見送りがてらクリーニング屋さん、郵便局、「コープさん」へ。
歯医者さんも予約してきた。
「コープさん」では兵庫産のピチピチの小鯵をみつけ、南蛮漬けが食べたくなって買った。
帰りの坂道は、コートを脱いでも暑い、暑い。
もう、春みたいな陽気。
この一週間は楽しいことがいっぱいで、めまぐるしく、ちっとも日記が書けなかった。
日曜日には、「ギャラリーVie」でばったり会った加藤休ミちゃんをうちにお誘いした。
中野さんを展覧会場に残し、ふたりで先に帰ってきた。
私は、六甲のスーパーで買った缶チューハイの小さいのを呑んだだけで、もうすっかりいい気分になってしまった。
窓辺のテーブルで、台所で、よくおしゃべりしたなあ。
休ミちゃんに手伝ってもらいながら、カレーを作ったのも楽しかった。
よく炒めた玉ねぎと、いろんなスパイスが混ざり合った焦げ茶色のところに、トマトペーストの赤いのをちゅるっと絞り出し、ふたりで中をのぞきこんだ。
そのときお鍋の中の様子が、休ミちゃんのクレヨン画に見えた。
水曜日には、小野さんと洋子さんがいらっしゃった。
その日は中野さんも家にいて、私は昼間からのんびり料理の仕込みをしていた。
夕暮れがはじまったころ、ちょうどふたりがやってきて、窓辺のテーブルでお土産のワインをいただきながら、ごちそうをいろいろ作って食べた。
話したいこと、聞きたいことがたくさんあって。
なんだか、4人の間を流れる川に、身をまかせているような楽しさだった。
というか、川に浮かべた小舟に4人が乗り込み、大きな景色を眺めながら、おいしいものを食べたり呑んだりしながら、どこまでも流されていくような。
なかでもいちばんのハイライトは、中野さんの新作絵本『ゆめ』を小野さんが胸に抱え、ゆっくりとページをめくりながら感想(評論のようだった)を話してくださった時間。
そのひとことひとことを記憶にとどめておきたくて、でも、その場で消えていってしまいそうで。 
私は、小学生くらいの、ひとりの女の子になって聞いていたと思う。
そうだ。
「天然生活」で紹介される、『日めくりだより』の本の取材も受けた。
宮下さんがインタビューをしてくださったので、終わってから一緒に坂を下り、「ギャラリーVie」に行った。
そのあと中野さんと3人で焼き肉屋さんへ。
コロナだからとても空いていて、お酒のラストオーダーも7時まで。
8時前にはお店を出て、帰ってきた。
そんなお祭りみたいな1週間の間に、中野さんとの新作絵本、『みどりのあらし』も届いたのだった。
届いた日の翌朝、私は本を抱えて2階に上り、陽光がさんさんと降り注ぐベッドの上で声に出して読んだ。
自分が書いたことも忘れて。
絵をじっくり眺め、紙をさすりながら。
この絵本は、昆虫が大好きな小学生の男の子が主人公。
ユウトク君に描いてもらった絵もある。
カバーの題字も、中に挟まっている大切な場面の字もユウトク君だ。
だから、3人の力が集まってできた絵本。
今日は、『みどりのあらし』を姉や友人たちに送る荷物を作ったり、手紙を書いたり。
たまっていたメールの返事を送って、夜ごはんの支度をしただけで、もう夕方だ。
水平線にオレンジ色の帯が伸び、水色に溶けている。
2階の窓を開けた。
もう、今日が終わってしまう。
夜ごはんは、小鯵の南蛮漬け(人参、玉ねぎ、揚げ南瓜)、南瓜のポクポク煮、しろ菜の鍋蒸し炒め(なたね油、塩、かつお節)、味噌汁(切り干し大根)、白菜漬け、ご飯。

●2021年2月6日(土)快晴

ぐっすり眠って、8時半に起きた。
ものすごくいいお天気。
中野さんは今日から展覧会。
初日はたいてい雨か曇りで、こんなに晴れたのははじめてだそう。
早お昼(帆立と椎茸のトマトソース・スパゲティ)を食べ、11時半くらいに出掛けられた。
あんまりよく晴れているので、私も坂のところまでお見送り。
空も海も真っ青で、きらきらしていた。
ゆうべは、ワインを呑みながら中野さんといろいろ話した。
この間『帰ってきた 日々ごはん9』の粗校正をしていて、母のことを思い出し、その先ができなくなった話をした。
私「亡くなる間際のことは、毎日くらいに思い出す。息を引き取る前の顔とかね。そういうのは、いくら思い出しても平気なのに、どうして元気だったころの母を思うと、悲しくなるんだろう」
そしたら、じっと聞いていた中野さんが言った。
中「それは、なおみさんが生きているからだと思います」
私「そうか。死んだ人は変わらないから、悲しいんだ」
中「いいえ。死んだ人も、死んだときのままではなくて、変わっていくんだと思います。なおみさんが生きているから」
それを聞いて、私はとても嬉しかった。
お母さんの思い出は、これからも私の中で変化していく。
生きている人が変わっていくということは、この世にいない人も、生きている人の中で変わっていく。
つまり、お母さんは生き続けている。
そうか。
人が生きていること、死ぬということ。
その境目は、私が思っているほどくっきりと分かれているものではないのかもしれない。

私が泣いた『帰ってきた 日々ごはん9』の2018年1月7日の日記を、引用してみようと思います。
・・・・・
1月7日(日)晴れ
今朝は8時に起きた。
夜中に何度か目が覚めたけれど、あとはぐっすり眠れた。
夢もいくつかみた。
神戸に帰ってきたのは4日の夕方、ようやく自分がどこにいるのか分かってきたみたい。
帰ってからはずっと、『たべもの九十九』の校正にいそしんでいた。
それが楽しくてたまらなかった。
きのうも朝から夢中でやって、午後にはひと通り終わり、美容院と図書館に行ってきた。
冷蔵庫に野菜が何もなかったので。
坂を下り、いつもの神社でお参りもした。
ああ、やっと帰ってこれたなあと思いながら。
帰ってすぐのころには、台所で洗いものをしていると、実家の洗いものカゴの感じがふーっと蘇ってきて、重なったりもしていた。
あの感じは、いったい何だろう。
実家での日々が、それなりに濃かったのかもしれない。
帰る日には、シンクを掃除した。
いくら掃除をしても、それほどにはピカピカにならなくて、母がそこで過ごしてきた年月を思った。
ひとりの人が生き続けていくことの、垢のようなものも感じた。
私が昼寝をして、台所に下りてきたら、ひじきと切り干し大根の煮物の残りにおからを混ぜ、お焼きのようなものを作っていた母。
楕円形にまとめたのに粉をまぶし、溶き卵をからませて、フライパンで焼こうとしていた。 
手をべたべたにして。
母は強火で焼いていて、中まで火が通っていないのに、裏返した。 「ふたをして弱火で焼かないと、中まで火が入らないよ」と私が言うと、「やーだ、そう? ひじきもおからも火が通ってるだから、冷たくてもいいのかと思ったさや」と、力なく笑った。
そういうときの母の表情や、体の傾け方、手に絡まってしたたり落ちる卵のどろどろ。
私の話を聞くときに、口もとを凝視する(耳が遠いから)まっすぐな目も、よく蘇ってきていた。
あれ 、今これを書いていたら涙が出てきた。
いやだなあ。
さーて、そろそろ『たべもの九十九』の続きをやろう。
夜ごはんは、ひさしぶりにご飯を炊いて、ひとり鍋(鶏肉、豆腐、白菜、えのき茸、ねぎ)の予定。
西京味噌を買ってきたから、白味噌仕立てにしよう。
・・・・

そろそろ4時。
中野さんは6時過ぎくらいまでいて、帰ってくるとのこと。
展覧会の初日、お客さんはたくさん見にきているかな。
私はいそいそ、夜ごはんの支度。
今、だしをとっているところ。
大根を煮ようと思って。
中野さんは8時に帰ってらした。
缶チューハイの小さいので、ささやかに乾杯。
夜ごはんは、大根の薄味煮(干し椎茸、油揚げ、だしをとったあとの昆布を細く切ったもの。片栗粉でとろみをつけ、ゆでた小松菜添え)、塩鯖(大根おろし)、焼き肉(おとついの残りのお肉を焼いた)、きんぴらごぼう(いつぞやの)、大根の皮の即席漬け(柚子こしょう)、味噌汁(豆腐、ねぎ)、ご飯。
明日は、中野さんの家族が展覧会にいらっしゃるので、私も見にいく。
ユウトク君やソウリン君に、また会える。

●2021年2月4日(木)曇ったり、晴れたり

6時に起きた。
朝焼け。
カーテンを開けたとき、空の真上にちょうど月があった。
黄色に光る半月。
ラジオでは、ミサ曲。
「古楽の楽しみ」が終わり、天気予報を聞いても、ニュースを聞いても、何も頭に入ってこない。
どうしてだろう。
今日は、不思議なお天気。
薄明かりが差したかと思うと、ぱーっと晴れる。
そしてまたすぐに曇る。
雲がよく流れているのだ。
トネリコの実を食べに集まるヒヨドリたち。
また、別の木の実が熟したのだな。
ゆうべ練っておいたパン生地は、ビニール袋の中でパンパンに発酵していた。
とてもいい具合。
あちこち掃除をしたり、ふと思いついて打ち合わせの支度をしたり。
パンはとてもうまく焼けた。
さ、お昼を食べたら、打ち合わせだ。鈴木さんがいらっしゃる。
2時間ほどで終わり、お見送りがてら、最近の散歩コースを案内した。
鈴木さんがみつけてくれたおかげで、メジロとジョウビタキを見ることができた。
それから今日は、ずっと待っていたメールが届いた。
なんとなく春の兆し。
きのうが立春だったし。
土曜日から元町の「ギャラリーVie」で、『ゆめ』の原画展がはじまるので、今日は中野さんは飾りつけ。
終わったら、うちにいらっしゃる。
中野さんはうちから通うため、1週間の共同生活がはじまる。
とても楽しみ。
夜ごはんは、焼き肉(牛の赤身、玉ねぎ)、ほうれん草のおひたし(ごま油、薄口醤油)、白菜の塩もみ(炒りごま、じゃこ、ポン酢醤油)、味噌汁(絹さや)、キムチ、ご飯。

●2021年2月2日(火)曇りのち晴れ

ゆうべは8時には寝た。
なんとなく目と頭(脳みそ)がくたびれているような気がして。
ぴちゃぴちゃという雨の音を聞きながら寝ていたのだけど、そのうち風が強くなってきた。
ガタガタ揺れる窓。
ゆうらゆうらと眠りの波に揺れながら、まどろんでいた。
今朝は、空じゅうが雲に覆われ、陽の出は見られなかったけれど、バッハを聞きながらベッドの上で体操した。
ぐっすり眠ったから、私は元気。
それに、春みたいに暖かい。
朝いちばんでパソコンまわりを片づけ、さっぱりさせた。
さあ、『帰ってきた 日々ごはん9』に向かおう。
3時半。
ぐっと集中し、3月までできた。
体を動かしたくなり「コープさん」へ。
行きは神社の中を通って石段を下り、さらにぐるっとまわって遠まわりした。
歩くのが気持ちよくて。
節分なので、鰯を買ってきた。
ピチピチの新鮮なのが、とても安かった。
帰りは暑くて、カーディガンを脱いだほど。
夜ごはんは、鰯のムニエル(フライパンで焼いたのを、にんにく醤油にからめた)舞茸のバター炒め添え、クリームシチュー(節分なので、ゆでた黒豆を解凍し、ゆうべのシチューの残りに加えた)、ご飯。

●2021年2月1日(月)曇り

6時半に起きて、カーテンを開けた。
朝焼けがとてもきれい。
ラジオではミサ曲がかかっていて、母が入院していたころのことを思い出した。
私のパソコンに入っていた曲を、母に聞かせていたときのこと。
仰向けになって寝ていた母は、立てた膝をふらふらと動かし、音楽に合わせて踊っているみたいに見えた。
窓からいい風が入ってきていた。
何日も眠り続け、目を覚ましたばかりのころだ。
脳をやられて言葉が出なくなっていた母は、赤ん坊みたいにあどけなく、心地よさそうにしていた。
私はずっと見ていたっけ。
今朝の陽の出は、雲と雲の間から。
雲の瞼から、紅い目玉がのぞいているみたいだった。
今朝もまた、磨りガラスがみかん色に染まった。
壁の母の絵に当たり、息を引き取る直前の表情も思い出した。
えいっと起きる。
ちょっと肌寒いな。
今日から2月。
佐川さんからのメールで知ったのだけど、今年は明日が節分なのだそう。
もう、春も間近だ。
鼻がぐずぐず。
そういえば今日はスギ花粉が舞うと、朝ラジオで言っていた。
午後からコーヒーをいれ、いよいよ『帰ってきた 日々ごはん9』の粗校正に向かう。
今度の巻は2018年のお正月からはじまるのだけど、それはまだ、母が元気なころで、校正をしながらいちいち思い出してしまう。
記憶がまだ生々しい。
この1年後の3月に病気がみつかり、入院生活がはじまった。
1月7日の日記で、ついに涙が吹き出し、何もできなくなってしまう。
それは、私が実家に帰ったときに見た母のある場面を、神戸で思い出している日記。
ああ、だからか。
それでなかなか、『帰ってきた 日々ごはん9』に向かえなかったのか。
生きていた母を思うとき、どうしてこんなに悲しみがこみ上げてくるんだろう。
亡くなる直前の母のことは、穏やかな気持ちで思い出せるのに。
どっぷりとした曇り空。
窓の外が白っぽい。
こういうときはお裁縫。
窓辺に腰掛け、枕カバーをもう1枚縫った。
夜ごはんは、クリームシチュー(豚肉、大根、玉ねぎ、白菜、人参、じゃがいも、蕪の葉、お麩)。
寒いから、野菜たっぷりの温かいものが食べたかった。

●2021年1月29日(金)晴れ

陽の出前に起きた。
カーテンをいっぱいに開ける。
このところ、ずっとそう。
そうすると夜明け空が移り変わっていくのが見える。
ゆうべはなんだかとてもくたびれて、8時にはベッドに入った。
『雪のひとひら』を読んでいるうちに、たまらなく眠たくなり、布団の国にさらわれるように眠った。
風がとても強く、窓をガタガタ揺らしていたのも、子守唄みたいだった。
今朝の陽の出は雲の上からだから、控えめの光だったけれど、窓の下のすりガラスがすみずみまでみかん色に染まった。
天井に吊るしてある鳥とクリスタルの玉に当たり、絵に当たり、私の顔にも当たるころ、えいっと起きた。
まだ7時前。
下の部屋もみかん色。
朝ごはんを食べ、毎朝のお楽しみ「高山なおみハッシュタグ」のインスタグラムを見ていたら、『はなべろ読書記』の感想を書いてくださっている投稿をみつけた。
読んですぐに私はプッ!と吹き出した。
とてもうれしいコメントだったので、ご本人の承諾を得、引用させていただきます。

「この方は料理家ですが、私にとってはもはやほとんどロッケンローラーです。
見た目や話し方はとても穏やかですが、生き方は内田裕也の次くらいにロックな方です(笑)。
食べ物に分け隔てがないところもロッカーたるゆえんです。
マーガリンを塗ったパンもマックのポテトも皮から手作りした餃子も、それを食べている情景を丸ごと慈しみながら食べている。
トランス脂肪酸を気にしているようじゃロッカーとは言えません。
『どんなものでも匂いを嗅いで口に入れてみる。
それは言われてみれば私が子どものころからつちかってきた、世界を確かめるやり方です。(高山なおみ)』
情報の洪水の中にいると時折何を信じていいのか分からなくなることがありますが、そんな時は自分の「鼻」と「べろ」を信じろ、ってことですね。
ロッケンロール!」

書いてくださった方、ありがとうございました。
さ、『日めくりだより』の校正の見直しをしよう。
心を澄まして集中し、3時過ぎにはすべて終わった。
もう思い残すことは何もない。
荷物を作り、急いで身支度し、コンビニへ。
坂を下りるとき、海が青く光っていた。
夜ごはんは、カキと青菜のペンネ(カキに小麦粉をまぶし、にんにくのみじん切りを炒めた多めのなたね油で焼きつけた。菜の花、かぶの葉を加えて炒め、アンチョビソースをちょっと。カキを戻し入れ、お酒をふりかけ、ペンネのゆで汁で乳化させた)。
兵庫産の大粒カキ、最高!

●2021年1月27日(水)曇りのち晴れ

ゆうべは強い風が吹いていて、音を聞きながら寝た。
とてもよく眠れたみたい。
夢もみた。
今朝は雲が厚く、陽の出は見られなかったけれど、カーテンをいっぱいに開け、寝そべったまま空を見ていた。
白がぶ厚い。
そのうち白と水色の層になってきた。
クリーム色が加わり、白の薄くなったところから光が透けている。
あそこに太陽があるのだ。
晴れていなくても、早朝の空はみずみずしい。
お風呂のお湯をためにいって戻り、またベッドへ。
ぼんやり空を眺めながら、きのういただいた新しい仕事について考えていた。
あ、まずい! お湯がいっぱいになってしまう。
ぎりぎりセーフだった。
ゆうべ練っておいたパン生地は、室温にひと晩置いたら、ビニール袋がパンパンに膨らんでいる。
これまででいちばんうまくいった。
12時からは、『日めくりだより』の装幀のことで、川原さん、鈴木さんと「ZOOM」ミーティング。
1時間ほどやって、続きはまた明日。
川原さんは『日めくりだより』の内面の世界を、本という手で触れるものに表すために、いろいろなことを試してくださっている。
本の大きさ、手で持った感じ、開き加減、紙の肌触り、紙の色味……。
私は、本と同じ形のゲラを開きながら、写真や挿絵を見ながら、自分の文を読み返し校正を重ねているのだけれど、なんだかこの本は、絵本や詩画集(写真が絵)みたいだなあと感じる。
小さな音楽を聞いているみたいな文。
すでに私の書いたものではないような感じがするところも、絵本に似ている。
『日めくりだより』は「天然生活の本」として、扶桑社から3月に刊行される予定です。
東京時代から長い間お世話になってきた、「天然生活」の八幡さんが出版してくださることもとても嬉しい。
どうかみなさん、楽しみにしていてください。
明日は、10時半から急きょ鈴木さんがうちに来てくださることになった。
ふたり(鈴木さんと私)対ひとり(川原さん)で、「ZOOM」打ち合わせをする予定。
遅いお昼ごはん(鶏胸肉、白菜の葉、椎茸入り。ソース味の中華焼きそば)を食べ、『日めくりだより』の校正の仕上げをした。
息が詰まってきたので、手紙を出しにポストまで散歩。
腕をまわしながら歩く。
夕暮れの海を見ながら坂を下り、山を仰ぎながら上って帰ってきた。
上着を羽織らなくても、セーターで充分暖かかった。
もう、春みたい。
帰りの坂道(去年の夏に新しくみつけた小径)を上っていたら、タチタチピュルルーと澄んだ鳥の声がした。
何の鳥だろう。
夜ごはんは、親子どんぶり(鶏胸肉、玉ねぎ、卵、紅しょうが、焼き海苔)、味噌汁(玉ねぎ、油揚げ・おとついの残り)。

●2021年1月26日(火)晴れのち曇り

7時少し前に起きた。
陽の出は7時10分。
山の上の雲からこじんまりした太陽が、ぽっかりと顔を出した。
宅急便の集荷を8時から12時までの間にお願いしたので、しゃきっと起きて動く。
よく晴れて、春のような陽射し。
とても暖かい。
きのうは、朝早くから「口笛文庫」の尾内さんが、古本を引き取りにきてくださった。
短い間だったけれど、壁に貼ってある中野さんのライブペインティングの絵を見ながら、紅茶を飲みながら、おしゃべりした。
絵本『ゆめ』をお見せしたら、独自な感想をいっぱい言ってらした。
中野さんが聞いたら、喜ぶだろうな。
そして午後は、『日めくりだより』の表紙まわりのことで、メールのやりとりをずっとしていた。
鈴木さんと川原さんと私の空を、びゅんびゅんと行き交うメール。
電話もたくさんかかってきた。
たくさんといっても3本だけれど。
その合間に、『日めくりだより』の校正にむかい、原稿もひとつ書いた。
書きたいことが決まっていると、すーっと書ける。
気づけばもう夕方だ。
昼間は窓を開けていても大丈夫だったのに、陽が落ちたらひと息に寒くなってきた。
夜ごはんは、白菜と鶏肉のせん切り こしょう風味炒め(ウー・ウェンさんの本『料理の意味とその手立て』を見ながら作った。とてもおいしくできた)、切り干し大根煮(油揚げ、人参、だし昆布)、きんぴらごぼう、味噌汁(玉ねぎ、油揚げ・ゆうべの残り)、ご飯はなし。

●2021年1月23日(土)明るい雨

雨でも洗濯。
干しながら外を見る。
ヒヨドリたちが木に集まって遊んでる。雨でもへっちゃらなんだな……と思って見ていたら、実をついばんでいるのだった。
トネリコの黒い実。
もう、ほとんど残っていない。
さてと。
今日は何をしよう。
作文の宿題がひとつあるけれど、締め切りは1週間先。
かといって、『帰ってきた 日々ごはん9』の粗校正に向かうのも、まだ少し早い気がする。
けっきょく掃除をしたり、枕カバーをちくちく縫ったり。
枕カバーは、とても可愛らしいのができた。
古シーツの上下の生地が丈夫なままだったので(真ん中は薄くなってしまった)、そこを利用して袋状にしたのだけど、使い込まれた木綿はやわらかく、肌触りがとてもいい。
脇を青い刺繍糸で折りふせ縫いにしたら、表側に自然とステッチができた。
なんか、物を大切にする修道女の枕カバーみたいな仕上がり。
夜ごはんは、煮豚どんぶり(ころころに切った煮豚と大根の上に白菜の葉をかぶせ、セイロで温め、ご飯の上にのせた)、みそ汁(具なし)。
洗いものを終え、またパンを練った。
今夜は常温で発酵させてみる。

●2021年1月22日(金)雨 

霧で真っ白。
空も海も街も見えない。
あんまり白いので、朝起き抜けに本や雑誌を読んでいた。
暖房をつけて。
裏の山も霧に覆われている。
街の方から見たら、山ごと霧に包まれているんだろうな。
こんな日は、ゆっくりゆっくり動こう。
きのうの続きのレシートの整理と、『帰ってきた 日々ごはん』9巻の粗校正をしよう。
「ユーチューブ」で『おさるのジョージ』を見ながら、延々とレシート整理をしていた。
種類別にホッチキスで止め、ファイルにまとめる。
とても静かでほっとする。
去年の12月までが終わった。
けっきょく仕事は何もしなかった。
こんな静かな日は、何もしない方が豊かな気がして。
夜ごはんの支度にはまだ早いので、お裁縫。
枕カバーをちくちく縫っている。
夜ごはんは、中華風の焼きそば(煮豚、長ねぎ、スナップエンドウ、生姜、煮豚のタレ、目玉焼き)、もやしスープ。
焼きそばがとてもおいしかった。
今日子ちゃんにいただいた、細くて茶色い「いかりスーパー」の蒸し中華麺。
この麺が香ばしく、くせになる味。

●2021年1月20日(水)曇りのち晴れ

8時に起きた。
わざと寝坊した。
ぽっかりとした暖かな日。
ゆうべ粉を練って冷蔵庫で発酵させていたパン生地が、いまいち膨らみが悪い。
冷たくなっているし。
図書館で借りた本の通りに、野菜室に入れていたのだけど、7度以下だったのかもしれない。
それで、その本に書いてあるように、ビニール袋に入れたまま40度のお湯に5分ほど浸して温めてみた。
触ると、反対側がまだ冷たい。
お湯を替え、裏返してもういちど浸してみる。
生地に温かみとやわらかさが戻ってきた。
やった!
袋から出して、もういちど生地を丸め直してもどし、袋の口をしばって常温に置いておけば、またパンパンに膨らんでくるのだそう。
陽当りのいい2階のベッドの上に置いておいたら、本当に膨らんできた。
イースト菌は生き続けているんだ。
もういちど本を確かめてみると、冬は冷蔵庫には入れず、朝まで部屋に放置しておけばいいらしい。
というわけで、さっきベンチタイムを終え、6個に分けたのをコロンと丸めてまたベッドの上で二次発酵中。
写真の通りにタッパーを逆さにし(ふたの部分に生地をのせ、上にかぶせる)、やってみている。
いい調子。
パン生地は乾燥さえしなければ、常温でも必ず発酵するみたい。
頼もしいなあ。
小学生のころ、「かがく」という雑誌の付録についてきたお饅頭の生地を練り、押し入れで発酵させた。
あのころには発酵なんて言葉も知らないから、「膨らむ」のをじっと待った。
でも、待っても待ってもちっとも膨らまず、堅い生地を蒸し器で蒸して食べたんだった。
それでもなんか、おいしかった。
薄甘い味に、イーストがほんのり香っていて。
みっちゃんは残していたけど、私はぜんぶ食べた。
自分の手で作ったものが食べられることに、胸が高鳴り、それだけでおいしかった。
きのうの朝は、中野さんが帰る日で、陽の出と雪が重なった。
オレンジ、朱色、ピンクなどいろいろに移り変わる光を受け、ひらひらふらふらと降ってきては、上ったり、下りたりしていた。
花びらか、羽毛みたいに透ける雪。
ひとつひとつの結晶が見えそうだった。
階下で中野さんがコーヒー豆をひいている音と、窓を開ける音がした。
中野さんも見ているなと思いながら、布団をかぶって私も見ていた。
朝ごはんを食べ、帰宅する中野さんの車に乗せてもらって坂を下り、郵便局へ行った。
『帰ってきた 日々ごはん8』を、お世話になった友人たちに12冊送った。
そして「MORIS」へ。
表紙や扉の絵を描いていただいたお礼を、今日子ちゃんにお伝えしに。
開店前だったので、雑巾がけを手伝ったり、おしゃべりしたり。
いちごのショートケーキをごちそうになったり、『自炊。何にしようか』にサインしたり。
1時過ぎに帰り着いたら、中野さんから絵が届いていた。
帰ってからすぐに描かれたのだな。
工作とライブペイントと雪と陽の出。
この5日間にあったことが、混ざり合ったような絵だった。
そのあとで私は猛然と料理。
豚肩ロース肉のブロックで煮豚を作り(とちゅうで大根を加えたので、角煮のようになった)、ワンタン(合いびき肉でやってみた。ねぎもたっぷり、オイスターソースの隠し味)を作り、大根を皮ごと半月切りにしてざるに並べて干し(丸ごと1本買ったので)、パンを練ったのだった。
今日はのんびり。
時間がゴムのようにのびて、なかなか夕方にならない。
誰かと一緒にいる時間もいいけれど、ひとりもまたとてもいい。
けっきょくパンは、パン屋さんで買ったみたいにふわふわで、とってもおいしいのが焼けた。
夜ごはんは、ワンタン・チャーシューメン(煮豚、ワンタン、煮卵、コーン、もやし、水菜)。

●2021年1月17日(日)晴れのち曇り

金曜日から中野さんがいらしている。
さっき、お昼ごはんのパスタがとってもうまくできた。
豚のひき肉が残っていたので、そこにソーセージスパイス、クミンシード、オレガノ、バジル、ちぎったローリエ、カイエンヌペッパーをもみ込んで、たっぷりのオリーブオイルでにんにくと炒めた。
さらにしめじを加え軽く痛め、アンチョビソースもちょっと。
パスタがゆで上がるころにバターを落とし、ゆで汁を加えて乳化させ……パスタを和え、器に盛って、紫玉ねぎのスライスを添えた。
食べるときに紫玉ねぎを混ぜ、チーズを好きなだけおろし、すだちを絞って食べた。
なんとなく、地中海の田舎風というか、レバノン風というか。
民族っぽい味がした。
あ、もうじき2時だ。
壁には大きな紙が2枚貼ってある。
「まもなく開演です」と、中野さん。
今日は、これからうちでライブ・ペインティングがはじまる。
東京で行う予定だった同じ時間に。
きのうはきのうで工作。
針金を曲げて和紙を貼って、ある物をこしらえた。
私も教わりながら、ひとつ作った。
東京に行っていたら、「のぞき箱」作りのワークショップの日だったので。
さ、もうはじまる!
夜ごはんは、麻婆豆腐(牛コマ切れ肉、豚ひき肉、白菜)、大根の塩もみ(柚子絞り)、キムチ、ご飯、ビール。

●2021年1月14日(木)晴れ

6時半に起きてカーテンを開けると、海も街も空も、白い靄におおわれている。
太陽は雲に隠れている。
やわらかい明かり。
今朝は陽の出が見られないのかなと、ぼうっと見ていた。
すると、ぽっかりと顔を出した。
障子越しみたいな太陽。
でも輪郭はぼやけていない。
まるで昇ったばかりの満月みたい。
みかん味のグミみたい。
ずっと見ていたら、そのうち空の丸い穴から、光が漏れてくるように見えてきた。
今朝はきのうより暖かいけれど、暖房を入れた。
『日めくりだより』のゲラ(本の形になっている)をベッドに持ち込んで、起き抜けの頭で読んだ。
気づいたところに赤を入れる。
このくらいの頭の方が、冴えるべきところが冴える気がする。
さ、朝ごはんを食べたら、続きの校正に向かおう。
それにしても、今日はとても暖かい。
もやっているのも、なんか、春霞みたい。
3時過ぎに仕上がり、宅配便にのせるためコンビニへ。
坂を下りているとき、どこからか甘い花の香りがした。
早春と間違えてしまいそう。
クリーニング屋さん、パン屋さん、「コープさん」で軽く買い物し、ひさしぶりに坂を上って帰ってきた。
暑くてコートを脱いだ。
しっとりと汗をかいて、帰り着く。
ああ、いい気持ち。
まだ、日暮れまでには時間があるので、窓辺でお裁縫。
テーブルクロスの穴に刺繍した。
中野さんの展覧会とイベントに合わせ、私も仕事を入れて、15日(金)から上京する予定だったのだけど、やめにした。
そのおかげで、たっぷりとした時間が生まれた。
『日めくりだより』も、入校前にみっちりと向かい合えた。
これは、ちゃんとやっておかなければならないことだった。
夜ごはんは、寄せ集めグラタン(ゆうべのポトフの残りに、しめじ、下仁田ねぎ、麩を加え、生クリーム。バターと小麦粉でとろみづけ)、白菜の塩もみサラダ(浸し黒豆、ごま黒酢ドレッシング)。
明日、中野さんがいらっしゃることになった。

●2021年1月12日(火)雪のち曇り、のち晴れ

7時に起きた。
いつもより暗かったので。
カーテンを開けたら、雪。
ヒマラヤ杉にも道路にも積もっている。
あんまり寒いので、暖房をつけた。
クーラーはいつもつけているけれど、暖房にしたのははじめてのこと。
灰色の空から、白いふわふわしたのがあとからあとから降ってくる。
それをベッドに寝そべったまま見ていた。
今日は、ずっとこうしていたいな。
ハーブティーをいれて、戻ってきた。
前に、長いコードを買っておいたので、繋げて、引っ張って、ベッドにパソコンを持ち込んでみた。
インターネットもできる。
メールを書いて送って……そのうち明るくなってきた。
もうやんでしまいそう。
さ、今日は「気ぬけごはん」の締め切りなのだから、続きを書いてしまおう。
いつの間にやら雪はやみ、杉の木のも道路のも、お昼にはもう溶けてしまった。
3時過ぎ、書けたみたい。
晴れ間が出てきたので、山の入り口まで散歩した。
外はわりかし暖かい。
けど、空気が清冽。
流れる水の音が、いつもより大きい気がする。
雪解け水だろうか。
そんなことはないか。
体を動かすのが気持ちいい。
ちょっと、「コープさん」まで行ってこようか。
けっきょく、買いたいものがなかったので、もうひとつの山の入り口に向かって歩き、途中で急坂を下り、平地を少しだけ歩き、また同じ坂を上って帰ってきた。
遠くの山々が、うっすらと雪化粧していた。
今年はじめてかも。
夜ごはんは、カレーうどん(大根、人参、玉ねぎ、豚バラ薄切り肉)、赤大根の甘酢漬け。

●2021年1月7日(木)曇り一時雪、晴れのち曇り

6時に起きた。
いつもの朝の時間が戻ってきた。
小雪が舞っている。
雲が厚く、陽の出は見られなかったけれど、きのう行ったのはどのへんなんだろうと、窓を見ていた。
カーブした白い橋が大きく右手に見えていたから、そのすぐ左が六甲ライナーの線路だろう。
そうか。
夜になるといつも、ディズニーランドのお城みたいな夜景になる辺りだ。
起き抜けに絵を描いた。
きのう、花森さんの表紙の原画を間近で見て、描いてみたくなった。
クレヨンを重ね、ヒロミさんにいただいたガラスのペンでひっかく。
うまくいかないなあ。
朝風呂から出てきたら、中野さんから絵が届いていた。
ゆうべ写真を撮ってお送りした、臙脂色とサーモンピンクの大輪の菊の花。
すごくいい。
にくらしいほどいい。
私もさっき、この花の絵を描いていたのだ。
朝ごはんのとき、灰色の雲が海に向かっていっせいに下りてきているのに、海面だけ金色。
その上に太陽があるのだと分かる。
ラジオではラベルの「ボレロ」。
どんどん盛り上がってきた。
粉雪もどんどん強くなる。
外は、暗くなったり明るくなったり。
寒い、寒い。
スパッツはいて、レッグウォーマーを重ねていても、スカートの下まで冷えてくる。
きのうの展覧会で感じたこと。
ずいぶん昔に私は、銀座かどこかのデパートでやった向田邦子さんの展覧会(というのかな?)に行ったことがある。
出版された本、ラジオやテレビの脚本、書きかけの原稿などを一通り見て、奥の部屋に入ると、向田さんが愛用していた鉢や豆皿、ワンピースやコートや靴が展示してあった。
服は、さっきまで着ていたみたいに膨らんでいた。
靴も履いていた足の形になっていた。
ガラスケースに入っているのに、なんだか匂いまでしてきそうでドキドキした。
なぜだろう、書きかけの原稿用紙の文字や赤字を見ても、そういう気配は感じられなかったのに。
ワンピースや靴には、向田さんがなまなましく生きていた。
生きていたことが物に刻まれ、私の目の前で今も生きていた。
きのうの展覧会場でも、同じようなことを感じた。
花森さんが綴った、「暮しの手帖」の創刊号に向けた文も読んだ。
何度も読んでいるはずなのに、はじめて読んだみたいだった。
物を作ることの意気込みのような、といより、それ以前。
この情けない世の中を、愉快に生きていく宣言のような文だった。
「暮しの手帖」は、紙でできた「生きていくこと」そのものなんだなと思った。
花森さんがその言葉を書いたのは、表紙の絵を描いたのは、戦後間もない遥か昔だったかもしれないけれど。
歴史も、時間も、生きている感じがした。
あのころも今も変わらない。
世間はぐらんぐらんと動いているようだけど、そう見えるだけなのかもしれない。
夜ごはんは、煮込みハンバーグライス(ハンバーグの残りのタネを4つに丸めて焼き、赤ワイン入りのソースで煮込んだ。れんこんのフライパン焼き、ご飯添え)。
夜、お風呂から出たら、絵本の編集者さんからメールが届いていた。
新しい絵本のテキスト、みっつとも喜んでくださったみたい!

●2021年1月6日(水)晴れ

いいお天気だったので、午後から外出。
六甲ライナー(モノレール)に乗って、埋め立て地の六甲アイランドにある「神戸ゆかりの美術館」に行ってきた。
「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」という展覧会。
井伏鱒二や棟方志功など、昔の文人や画家たちが寄稿した掲載誌(ページを拡大して貼ってある)を端から読んでいった。
そこに添えられた花森さんのペン画は、拡大してあるせいで、線の震えも見えた。
日本画家の小倉遊亀さんのは台所についての文章で、掲載誌とは別に、手書きの間取り図が額に入って見られるようになっている。
その線が鮮明で、さっき描かれたばかりみたい。
花森さんの表紙の原画もじっと見た。
絵筆やペン、クレヨンをけずったあとなどが、ちっとも色あせずに目の前にある。
さっき描いたばかりみたい。
どんな画材で描いているかが、「画用紙、油性クレヨン、鉛筆、色鉛筆」「キャンバス地、グワッシュ」などとプレートに記してあるのもおもしろかった。
花森さんが愛用していた絵筆や鉛筆(陶器のビールジョッキに差してあった)、木箱に入ったちびたクレヨンが展示してあるガラスケースも、あちこちの角度から見た。
棟方志功の文章のページには、版画の挿絵があった。
その原画(版画に白や銀で彩色してあった)も並べてあるのだけれど、こんな立派な絵を小さなモノクロの印刷物にしてしまうなんて、花森さんたちはなんと贅沢な本作りをしていたんだろう。
会場にはお客さんがほとんどいなくて、1枚1枚ゆっくりと、ひとりじめしながら見ることができたのもとてもよかった。
閉館の1時間前に行ったので、時間が足りなかったな。
もういちど行こうと思う。
六個ライナーはご機嫌な乗り物だった。
行きはいちばん後ろ、帰りも先頭の席に乗ったので、六甲の山々がよく見渡せた。
遠くに見えるうちのアパートメントを「あれだ!」と確かめたり、海を見たり、三宮の方角を見たり、あっという間に着いてしまうので、あちこち首を動かしながら。
軽く買い物をして、5時過ぎに「MORIS」に寄ったら、ハッピーバースデイの歌を、今日子ちゃんがマスクをしたままオペラみたいに歌ってくれた。
歌に合わせ、ひろみさんがぐるぐるまわして手渡してくれたのは、大きなビンに入ったおみかんジャム。
ありがたく嬉しい気持ちと、もらってばかりで申しわけない気持ちでいっぱいとなる。
ヒロミさんからは、ガラスでできた素敵なペンもいただいてしまった。
そのあと、大晦日の話になった。
「除夜の鐘は聞こえましたか?」と私が聞いたら、「神戸は船が汽笛を鳴らすんです」とヒロミさん。
今年はいつもより大きな音で、あちこちの船から聞こえてきたらしい。
そして、教会の鐘も鳴り響いたそう。
いかにも神戸らしいニュー・イヤーのお祝いだ。
私は10時には寝てしまったから、まったく気づかなかった。
よほどぐっすり眠りこけていたんだ。
夜ごはんは、白みそ味の雑炊(豚バラ薄切り肉、大根、人参、菊菜、冷やご飯)。
「MORIS」からの帰り道、ヒロミさんにお雑煮の話を聞いたから、白みその味が食べたくなったんだな。

●2021年1月5日(火)曇り

朝から曇り空。
海も空も白く霞んで、今にも雪が降りそうな。
きのうは、テレビのディレクターさんと打ち合わせだった。
打ち合わせといっても、何かがすぐにはじまるわけではない。
だから、お茶を飲みながらおしゃべりしていただけ。
いろんな資料をお見せしながら、2時間ほど過ごし、お見送りがてら坂を下りた。
体を動かしたくなったので。
歩きながら木を見上げたり、広々とした海を見下ろしたりしながらぽつりぽつりとおしゃべりし、六甲道の鍼灸院を教えていただいたり、向かいの中華屋さんがおいしいという話を聞いたり。
図書館が閉まっていたので、下の階の私がよく行くスーパーを見てまわり、私はだし昆布とお麩を買い、彼女はヨーグルトを買った。
ただ、それだけのことなのだけど、何だかこれまで知らなかった彼女のいいところがたくさん見えたような、そんな打ち合わせだった。
もう、何年も前から仕事をご一緒している方なのに。
はじめて出会えたような。
そういうことってあるんだな。
胸の辺りがあたたかくなるような気持ちで、帰ってきた。
今日は、急いでする仕事が何もないので、朝からなんとなく絵本のテキストを書いていた。
つらつらとやっていたら、みっつできた。
生まれたまんまの言葉と音、流れ。
書いているときには子どもの目線になっているから、大人の私から見ると理不尽なような気がしたり。
だから、恥ずかしいのだけれど、勇気を出して新年のご挨拶がわりエイッとお送りした。
編集者さんには、「年が明けましたら、次の絵本のご相談をゆるやかに」とだけメールで伝えられていて、方向性とか内容についてとか何も聞いていない。
本当に次の絵本を作ってくださるのかさえ、確かではないのだけれど。
夜ごはんは、ハンバーグ、春雨サラダ(人参、マヨネーズ、フレンチマスタード、ねり辛子、ゆで卵)、ご飯はなし。 
今日子ちゃんの真似をして、大根おろしをたっぷり添え(厚さ5センチほどもあるハンバーグと同じ大きさにこんもりとまとめた)、ポン酢醤油であっさりと。
おいしかった!
3個分の肉ダネを作ったので、1個分だけ焼いて、残りは冷蔵庫へ。
近々、煮込みハンバーグにしようと思って、炒めた玉ねぎ(ハンバーグに入れた残り)に赤ワイン、トマトピューレ、ウスターソース、醤油、ハンバーグの焼き汁、水、コンソメスープの素を加え、ひと煮立ちさせておいた。
今夜は、中野さんの家もハンバーグなのだそう。

●2021年1月1日(金)晴れ

明けまして、おめでとうございます。
今朝は6時半に起きた。
カーテンをいっぱいに開けると、オレンジと青の朝焼け。
明けの明星が黄色く光っていた。
夜景って、遠くの方のはぶるぶると瞬いているんだな。
星といっしょだ。
新しい年の陽の出は、雲の上から。
太陽が顔を出す前、山脈みたいな雲の峰々がオレンジに光り、どんどん濃くなっていった。
つるんと出た太陽は思ったより小さく、でも強烈な光をため込んだ珠のよう。
枕もとの母の絵が最高に紅く染まったとき、「お母さん、明けましておめでとう」と声をかけた。
朝ごはんの前に、クレンザーで流しまわりを磨いた。
朝ごはんは、ヨーグルト(りんご、みかん)と紅茶だけ。
早めのお昼にお雑煮を食べようと思って。
ひとりのお正月は静かだな。
柱時計の振り子の音しかしない。
新年のごちそうは、赤かぶの甘酢漬け、紅鮭の石狩漬け、浸し黒豆、塩もみ大根の柚子絞り(すりごま)、伊達巻き、お雑煮(大根、白菜、柚子皮)、磯部巻き、京番茶。
祝い箸はないけれど、誕生日プレゼント(中野さんのお姉さんにいただいた)のお箸がある。
なんだか初々しく、清潔な感じのする食卓。
写真を撮り、空の方を向いて食べた。
年賀状をポストに取りに行ったら、待ちに待った荷物が。
ヨナス・メケスのリトアニアのDVD、『Reminiscences of a Journey Lithuania』。
フランスからアマゾン経由でようやく届いた。
ひたすら見ながら、靴下の繕い。
やっぱり大好きな映像。
字幕が英語かフランス語なのだけど、まったく大丈夫。
2度見た。
夜ごはんは、ケールのチーズ入りオムレツ(浸し黒豆添え)、パン。
『ハウルの動く城』を見ながら食べた。
食べ終わったら、また靴下の繕い。
私は去年の暮れから、「ダーニングきのこ」にすっかりはまっている。

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めにうへ